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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】矯正具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
A61B17/70
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021530014
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2020025521
(87)【国際公開番号】W WO2021002323
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2019122920
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000193612
【氏名又は名称】ミズホ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】江原 宗平
【審査官】段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0316475(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0228516(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊柱の各椎骨にそれぞれ固定される椎骨固定具と、該椎骨固定具に連結されるロッド部材と、を備えた脊柱変形矯正固定システムにて脊柱変形を矯正固定する際に、その矯正固定を補助する矯正具であって、
前記椎骨固定具に着脱自在に取り付けられ、該椎骨固定具に近接して配置されるクランプ部材と、
該クランプ部材に着脱自在に取り付けられ、脊柱変形を矯正するための矯正部材と、
を備え
前記クランプ部材は、前記椎骨固定具の頭部を挟み込むように支持する、互いに近接・遠退自在に設けられる一対の支持片を有して、
前記一対の支持片は、前記ロッド部材の延びる方向に対して平面視で略直交する方向にそれぞれ延び、
前記一対の支持片を互いに近接させることで、該一対の支持片により、前記椎骨固定具の、前記ロッド部材を受け入れる溝部よりも下方の部位を挟み込むようにクランプすることを特徴とする矯正具。
【請求項2】
前記クランプ部材は、溝部を有し、
前記矯正部材は、前記クランプ部材の溝部に係合可能な補助ロッド部材であることを特徴とする請求項1に記載の矯正具。
【請求項3】
前記クランプ部材は、前記補助ロッド部材を前記クランプ部材の溝部に固定するための固定具を備えていることを特徴とする請求項に記載の矯正具。
【請求項4】
前記矯正具は、前記脊柱変形矯正固定システムにより脊柱変形が矯正固定された状態で、体外に取り出される手術器具として前記椎骨固定具から取り外し可能に構成されることを特徴とする請求項1~いずれかに記載の矯正具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊柱変形矯正固定手術の際、複数の椎骨にそれぞれ固定される椎骨固定具と、該椎骨固定具に連結されるロッド部材と、を備えた脊柱変形矯正固定システムにより脊柱変形を矯正固定する際に、その矯正固定を補助するための矯正具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脊柱は、正常な状態では、後方から見ると概ね真っ直ぐであり、側方から見ると頚椎と腰椎とが前彎して、胸椎と仙椎とが後彎する、略S字状を呈するものである。一方、脊柱に異常をきたす脊柱変形症は、脊柱が変形した疾患であり、例えば、脊柱側彎症や、脊柱後彎症、脊柱側後彎症などがある。脊柱側彎症は、脊柱が側方へ彎曲しつつ、脊柱がねじれる疾患である。また、脊柱後彎症は、胸椎後彎の角度が極端に大きくなったり、腰椎の前彎が失われて後彎に変形する疾患である。さらに、脊柱側後彎症は、側彎症と後彎症とが合併したものである。
【0003】
このような脊柱変形症の治療に際して、脊柱変形矯正固定手術が広くに行われている。この脊柱変形矯正固定手術は、後述の脊柱変形矯正固定システム(体内埋没材、いわゆるインプラント)により、変形した脊柱を、正常な状態、或いはそれに近い状態に矯正して固定する手術であり、後方矯正固定術、または前方矯正固定術が適用される。特に、後方矯正固定術は、以下のようにして行われる。すなわち、後方矯正固定術は、患者を手術台上に腹臥位にて位置決めして、患者の背中の正中に手術創、または低侵襲である経皮的手術創をおいて、脊柱の後方の要素を展開する。続いて、脊柱に対して、脊柱変形矯正固定システム(例えば、特許文献1参照)を装着することで、脊柱変形を3次元的に矯正して、その状態で固定する術式である。
【0004】
一般に、脊柱変形矯正固定システムは、例えば、脊柱の各椎骨の椎弓根を介して椎体にねじ込まれる複数のスクリュー部材、各椎骨の椎弓根や、椎弓、横突起等に引っ掛けるフック部材、及び各スクリュー部材及び各フック部材の、例えばトップオープン溝部に連結され、脊柱の軸方向に沿って延び、また患者の左右方向に間隔を置いて配置される一対のロッド部材等を備えたものが採用されている。
【0005】
例えば、側彎症の患者に対して、後方矯正固定術として、上述の脊柱変形矯正固定システムを脊柱に装着して脊柱変形を矯正固定する手術の際には、まず、スクリュー部材及びフック部材を、矯正すべき複数の椎骨にそれぞれ固定する。続いて、ロッド部材を、スクリュー部材やフック部材のトップオープン溝部に係合する。このとき、脊柱は変形した状態であるが、ロッド部材は直線状に延びているために、当該ロッド部材を、スクリュー部材及びフック部材のトップオープン溝部に係合させることが非常に難しい。そのために、術者により、専用の手術器具を用いて、ロッド部材を脊柱の側彎変形に沿って湾曲をつけた状態とする。続いて、この湾曲したロッドを、各椎骨に固定されたスクリュー部材やフック部材のトップオープン溝部に係合して、ロッド部材が、各スクリュー部材やフック部材のトップオープン溝部から抜けないように、当該トップオープン溝部にセットスクリューを仮止めする。
【0006】
続いて、ロッド部材の外周面を、ペンチ相当の専用の手術器具により挟持して、当該手術器具を略90°回動させることで、ロッド部材を、その軸心を中心に略90°回動させて、脊柱のねじりを含む側彎変形を矯正する操作が行われる。またその他、専用の手術器具を使用して、例えば、脊柱の軸方向(頭尾方向)に沿って配置される複数のスクリュー部材等、及び脊柱の軸方向に沿って配置された隣接するスクリュー部材等に対して、互いに圧縮荷重を付与したり、引張荷重を付与することで、脊柱の側彎変形を矯正する操作が行われる。このような矯正操作を行った後、セットスクリューを本締めすることで、ロッド部材と、各スクリュー部材及び各フック部材とを強固に連結して、脊柱を矯正して固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-213625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の、脊柱変形矯正固定システムによる矯正固定方法では、ロッド部材を患者の側彎変形に沿って湾曲させて、各スクリュー部材や各フック部材のトップオープン溝部に係合しているが、脊柱はねじれを含む側彎変形しているために、ロッド部材を湾曲させた状態としても、当該ロッド部材を各スクリュー部材やフック部材のトップオープン溝部に係合させることは非常に難しい。しかも、脊柱変形矯正固定システムによる矯正固定範囲が長ければ長いほど、ロッド部材を、各スクリュー部材やフック部材のトップオープン溝部に係合させることが難しくなる。
【0009】
また、従来の、脊柱変形矯正固定システムによる矯正固定方法では、ロッド部材の外周面を、ペンチ相当(ロッドグリッパーなど)の専用の手術器具により強固に挟持して、ロッド部材を略90°回動させることで、脊柱のねじりを含む側彎変形を矯正する操作を行っているが、患者の側彎変形に沿って湾曲させたロッド部材をその軸心を中心に略90°回動させた場合、そのロッド部材の湾曲が患者の後彎及び前彎に置換されることになる。しかしながら、このロッド部材の湾曲は、患者の生理的な後彎及び前彎に合致していないために他の不都合が生じる虞がある。
【0010】
さらに、従来の、脊柱変形矯正固定システムによる矯正固定方法では、ロッド部材の外周面を、ペンチ相当の専用の手術器具で強固に挟持して90°回動させるために、ロッド部材の外周面で、ペンチ相当の手術器具で挟持した部位が損傷する虞がある。さらには、ロッド部材は、各スクリュー部材や各フック部材のトップオープン溝部にセットスクリューにより仮止めされているために、ロッド部材を回動させた際、ロッド部材の外周面で、セットスクリューとの接触部位をも損傷する虞がある。その結果、これら多くの損傷部位が、体内に留置した後のロッド部材の折損を誘発する箇所になっている。
【0011】
そして、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、脊柱変形矯正固定システムによって脊柱変形を矯正固定する際、ロッド部材への損傷を抑制して、適切に脊柱変形矯正固定システムによる脊柱変形の矯正を補助することができる矯正具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の態様)
以下に示す発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項分けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0013】
(1)脊柱の各椎骨にそれぞれ固定される椎骨固定具と、該椎骨固定具に連結されるロッド部材と、を備えた脊柱変形矯正固定システムにて脊柱変形を矯正固定する際に、その矯正固定を補助する矯正具であって、前記椎骨固定具に着脱自在に取り付けられ、該椎骨固定具に近接して配置されるクランプ部材と、該クランプ部材に着脱自在に取り付けられ、脊柱変形を矯正するための矯正部材と、を備え、前記クランプ部材は、前記椎骨固定具の頭部を挟み込むように支持する、互いに近接・遠退自在に設けられる一対の支持片を有して、前記一対の支持片は、前記ロッド部材の延びる方向に対して平面視で略直交する方向にそれぞれ延び、前記一対の支持片を互いに近接させることで、該一対の支持片により、前記椎骨固定具の、前記ロッド部材を受け入れる溝部よりも下方の部位を挟み込むようにクランプすることを特徴とする矯正具(請求項1の発明に相当)。
【0014】
(1)項に記載の矯正具では、脊柱変形矯正固定システムにより脊柱変形を矯正固定する際、クランプ部材及び矯正部材により、その矯正を補助することができる。すなわち、各椎骨に椎骨固定具を固定した後、各椎骨固定具にクランプ部材を取り付け、さらに各クランプ部材に矯正部材を取り付ける。続いて、矯正部材を操作することで、各クランプ部材及び各椎骨固定具を介して脊柱変形を適切に矯正して、その矯正状態を維持しておく。続いて、各椎骨固定具にロッド部材を連結して、脊柱を矯正した状態で固定する。続いて、矯正部材及び各クランプ部材を各椎骨固定具から取り外して、体外へ取り出す。このように、脊柱変形矯正固定システムによって脊柱変形を矯正固定する際、従来のように、脊柱変形矯正固定システムのロッド部材を、ねじれを含む側彎変形の各椎骨に固定された各椎骨固定具に係合させる必要がなく、また、脊柱変形矯正固定システムのロッド部材を、専用の手術器具にて湾曲させたり、専用の手術器具を用いて強固に挟持して回動(回旋)させるなどの操作が必要ない。その結果、体内埋没材であるロッド部材の損傷を抑制することができる。しかも、矯正具を用いることで、脊柱変形矯正固定システムのロッド部材を各椎骨固定具に容易に係合(連結)させることができ、容易に脊柱変形を矯正することが可能になり、手術自体が容易となり、手術時間の短縮にも貢献することができる。
【0015】
また、(1)項に記載の矯正具は、脊柱変形矯正固定システムによる矯正固定範囲が長い場合に、特に有効になる。すなわち、脊柱変形矯正固定システムによる矯正固定範囲が長い場合には、例えば、各椎骨に固定された椎骨固定具に対して、選択的にクランプ部材を取り付けると共に各クランプ部材に矯正部材を取り付け、これらクランプ部材及び矯正部材により、変形した脊柱に対して部分的に矯正して、その状態を維持した後、各椎骨固定具にロッド部材を連結して、脊柱を矯正した状態で固定することができる。
さらに、(1)項に記載の矯正具は、クランプ部材を、その一対の支持片により椎骨固定具の頭部を挟持するように支持して取り付けることができ、また、椎骨固定具の頭部頂面に設けられた、ロッド部材を係合させるトップオープン溝部を外部に露出させることができる。その結果、クランプ部材及び矯正部材により、脊柱変形を矯正してその状態を維持した後、ロッド部材を、各椎骨固定具のトップオープン溝部に容易に係合させることができる。また、クランプ部材の一対の支持片により、椎骨固定具の頭部両側方から強固に支持することができるので、クランプ部材からの矯正力を、適切に椎骨固定具を介して椎骨に伝達することができ、脊柱変形を適切に矯正することができる。
【0016】
(2)(1)項に記載の矯正具であって、前記クランプ部材は、溝部を有し、前記矯正部材は、前記クランプ部材の溝部に係合可能な補助ロッド部材であることを特徴とする矯正具(請求項2の発明に相当)。
【0017】
(2)項に記載の矯正具では、脊柱変形矯正固定システム(体内埋没材)のロッド部材に代わって、補助ロッド部材を側彎変形に沿って湾曲させて、各椎骨にそれぞれ固定されるクランプ部材の溝部に係合させることができる。そして、この補助ロッド部材を使用することで、クランプ部材及び椎骨固定具を介して脊柱変形を矯正することができる。その後、矯正具による矯正が完了してその矯正が維持された状態で、体内埋没材であるロッド部材を各椎骨固定具に連結することで、脊柱変形矯正固定システムにより脊柱変形を矯正した状態で固定することができる。その結果、体内埋没材であるロッド部材の損傷を抑制することができ、ひいては、体内に留置した後のロッド部材の折損を容易に抑制することができる。
【0022】
(3)(2)項に記載の矯正具であって、前記クランプ部材は、前記補助ロッド部材を前記クランプ部材の溝部に固定するための固定具を備えていることを特徴とする矯正具(請求項の発明に相当)。
【0023】
(3)項に記載の矯正具では、固定具により、補助ロッド部材を各クランプ部材の溝部に仮止めした状態で、補助ロッド部材を操作することで、各クランプ部材を介して脊柱変形を容易に矯正することができる。また、固定具により、補助ロッド部材を各クランプ部材の溝部に強固に固定することで、クランプ部材及び補助ロッド部材により、脊柱変形を矯正した状態で維持することができる。
【0026】
(4)(1)項~(3)項いずれかに記載の矯正具であって、前記矯正具は、前記脊柱変形矯正固定システムにより脊柱変形が矯正固定された状態で、体外に取り出される手術器具として前記椎骨固定具から取り外し可能に構成されることを特徴とする矯正具(請求項の発明に相当)。
【0027】
(4)項に記載の矯正具は、手術器具として位置付けられるので、チタン合金やコバルトクロム合金など生体親和性に優れた材料を使用する必要がなく、使用する材料が限定されず、コスト低減に繋がる。
【0028】
(5)(2)項~(4)項いずれかに記載の矯正具であって、前記補助ロッド部材の外径は、前記ロッド部材の外径と同一であることを特徴とする矯正具。
(5)項に記載の矯正具では、その全体をコンパクトに構成することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る矯正具により、脊柱変形矯正固定システムによって脊柱変形を矯正固定する際、ロッド部材への損傷を抑制して、適切に脊柱変形矯正固定システムによる脊柱変形の矯正を補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る矯正具であって、本矯正具によってスクリュー部材をクランプした状態を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係る矯正具が適用される、脊柱変形矯正固定システムのスクリュー部材の斜視図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係る矯正具が適用される、脊柱変形矯正固定システムのフック部材の斜視図である。
図4図4は、本発明の第1実施形態に係る矯正具に採用されるクランプ部材の斜視図である。
図5図5は、本発明の第1実施形態に係る矯正具に採用されるクランプ部材であって、図4とは別方向からの斜視図である。
図6図6は、本発明の第1実施形態に係る矯正具のクランプ部材に採用される、第1ギヤ、第2ギヤ及び回動部材等を示す斜視図である。
図7図7は、本発明の第1実施形態に係る矯正具を使用して、脊柱変形矯正固定システムにより脊柱変形を矯正固定する様子を示す段階図である。
図8図8は、図7から続く段階図である。
図9図9は、本発明の第2実施形態に係る矯正具であって、本矯正具によってスクリュー部材をクランプした状態を示す斜視図である。
図10図10は、本発明の第2実施形態に係る矯正具に採用されるクランプ部材の斜視図である。
図11図11は、本発明の第2実施形態に係る矯正具のクランプ部材の構成である主ボディ本体の斜視図である。
図12図12は、本発明の第2実施形態に係る矯正具のクランプ部材の構成である主ボディ本体であって、図11とは別方向からの斜視図である
図13図13は、本発明の第2実施形態に係る矯正具のクランプ部材の構成である副ボディ本体の斜視図である。
図14図14は、本発明の第2実施形態に係る矯正具のクランプ部材の構成である楔状スライド部材、操作用ねじ部材及び規制用プレート部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態を図1図14に基づいて詳細に説明する。
まず、本発明の第1実施形態に係る矯正具1Aを図1図8に基づいて詳しく説明する。
本発明の第1実施形態に係る矯正具1Aは、脊柱変形矯正固定システム2(図8(f)参照)にて脊柱変形を矯正固定する際に、その矯正固定を補助するものである。脊柱変形矯正固定システム2は、脊柱の各椎骨の椎弓根を介して椎体にねじ込まれる複数のスクリュー部材3(図1及び図2参照)と、各椎骨の椎弓根や椎弓、横突起等に引っ掛ける複数のフック部材4(図3参照)と、各スクリュー部材3の溝部10及び各フック部材4の溝部24に連結され、脊柱の軸方向に沿って延びるロッド部材5(図1参照)と、を概略備えている。これらスクリュー部材3及びフック部材4が、椎骨固定具に相当する。なお、脊柱変形矯正固定システム2には、一対のロッド部材5、5を架け渡すようにコネクタ部材(図示略)等、他の構成部材も採用される。また、図8(f)に示す、脊柱変形矯正固定システム2では、複数のスクリュー部材3と、一対のロッド部材5、5とが示されている。
【0033】
スクリュー部材3、フック部材4及びロッド部材5は、チタン合金等の生体親和性に優れた材料にて形成されている。図1に示すように、ロッド部材5は、断面円形状に形成される。ロッド部材5の長さは、患者の脊柱変形の程度に伴って適宜設定される。図1及び図2に示すように、スクリュー部材3は、脊柱の後方から各椎骨の椎弓根を介して椎体にねじ込まれるものである。該スクリュー部材3は、一般に、ペディクルスクリュー(椎弓根スクリュー)とも称される。スクリュー部材3は、ロッド部材5を受け入れる溝部10を有するロッド受入部11(頭部)と、該ロッド受入部11に連結され、椎骨の椎弓根を介して椎体にねじ込まれるスクリュー部12と、を備えている。
【0034】
ロッド受入部11は、平面視にて、一対の平面部15、15及び一対の円弧部16、16を有するブロック状に形成される。ロッド受入部11には、スクリュー部12側とは反対側の面を開放したU字状の溝部10が、ロッド部材5の軸方向に沿って形成される。この溝部10は、一対の平面部15、15を突き抜けるように形成される。当該溝部10にロッド部材5を受け入れることができる。ロッド受入部11において、溝部10を境に対向する壁部の内壁面には、雌ねじ部17、17がそれぞれ形成される。この雌ねじ部17、17に、セットスクリュー20がねじ込まれる。ロッド受入部11の各平面部15、15であって、頂部に近接する位置には、一対の凹部22、22が形成される。また、ロッド受入部11の各円弧部16、16の外周面には、頂部に近接する位置に周方向に沿う係合溝部23、23が形成される。スクリュー部12は、ロッド受入部11に対して溝部10の延びる方向に沿って揺動自在にロッド受入部11に連結されている。スクリュー部12のロッド受入部11に対する揺動範囲は、中心から片側略25°(全揺動範囲:略50°)の範囲である。
【0035】
図3に示すように、フック部材4は、脊柱の後方から椎骨の椎弓根や椎弓、横突起等に引っ掛けることで、椎骨に係合されるものである。フック部材4は、ロッド部材5を受け入れる溝部24を有するロッド受入部25(頭部)と、該ロッド受入部25に一体的に接続されるフック部26と、を備えている。ロッド受入部25は、平面視にて、一対の平面部30、30及び一対の円弧部31、31を有するブロック状に形成される。ロッド受入部25には、フック部26側と反対側の面を開放したU字状の溝部24が、ロッド部材5の軸方向に沿って形成される。この溝部24は、一対の平面部30、30を突き抜けるように形成される。このU字状の溝部24にロッド部材5を受け入れることができる。
【0036】
ロッド受入部25において、溝部24を境に対向する各壁部の内壁面には、雌ねじ部32、32がそれぞれ形成される。この雌ねじ部32、32に、セットスクリュー35がねじ込まれる。ロッド受入部25の各平面部30であって、頂部に近接する位置には、一対の凹部37、37が形成される。また、ロッド受入部25の各円弧部31、31の外周面には、頂部に近接する位置に周方向に沿う係合溝部38、38が形成される。なお、フック部材4には、フック部26と対向するように配置され、軸方向に移動自在の挟持体39を備えたものがある。この挟持体39とフック部26とによって、横突起等を強固に挟持することができる。
【0037】
次に、本発明の第1実施形態に係る矯正具1Aを、図1図4図6に基づいて詳細に説明する。なお、図1図4図6において、説明の便宜上、図1に示すスクリュー部材3のスクリュー部12側を下側として、ロッド受入部11側(スクリュー部12側と反対側)を上側として説明する。本発明の第1実施形態に係る矯正具1Aは、脊柱変形矯正固定システム2(図8(f)参照)により脊柱変形を矯正固定した後、体外に取り出される手術器具として位置付けられる。図1に示すように、第1実施形態に係る矯正具1Aは、スクリュー部材3のロッド受入部11(頭部)に着脱自在に取り付けられ、該スクリュー部材3のロッド受入部11に近接して配置されるクランプ部材50Aと、該クランプ部材50Aに着脱自在に取り付けられ、脊柱変形を矯正するための矯正部材としての補助ロッド部材51と、を備えている。
【0038】
なお、本実施形態において、図1に示すように、第1実施形態に係る矯正具1Aのクランプ部材50Aは、スクリュー部材3のロッド受入部11に取り付けられているが、図3に示すフック部材4のロッド受入部25にも着脱自在に取り付けることもできる。補助ロッド部材51は、断面円形状に形成される。補助ロッド部材51の外径は、脊柱変形矯正固定システム2のロッド部材5の外径と略同じである。
【0039】
図1図4図6に示すように、第1実施形態に係る矯正具1Aに採用されるクランプ部材50Aは、スクリュー部材3のロッド受入部11を支持すべく、互いに間隔を置いて配置される一対の支持片111、111を有するスクリュー支持部54と、上面を開放したU字状の溝部63を有するロッド受入部55と、該ロッド受入部55内に配置される第1ギヤ56と、該第1ギヤ56に噛み合い、スクリュー支持部54内からロッド受入部55内に至って配置される第2ギヤ57と、該第2ギヤ57に噛み合い、スクリュー支持部54の一対の支持片111、111の先端を架け渡すように回動自在に支持される回動部材58と、備えている。なお、スクリュー支持部54の、一対の支持片111、111及び回動部材58がリング状部に相当する。
【0040】
スクリュー支持部54及びロッド受入部55は、単一部品から形成される。図5から解るように、スクリュー支持部54とロッド受入部55とは、互いに一部が重なるようにして一体的に接続されて、平面視で上下方向に沿って並ぶようにそれぞれ配置されている。ロッド受入部55は、上面を開放したU字状の溝部63を有する。該溝部63は、ロッド部材5の延びる方向に沿って形成される。ロッド受入部55の溝部63を介して一方の壁部は、その外周面が円弧状を呈する円弧状壁部65に形成される。また溝部63を介して他方の壁部は、全体としてブロック状を呈するブロック状壁部66に形成される。円弧状壁部65とブロック状壁部66との対向面には、雌ねじ部67、67がそれぞれ形成される。この雌ねじ部67、67に、セットスクリュー70(図1参照)がねじ込まれる。該セットスクリュー70が固定具に相当する。
【0041】
ロッド受入部55の溝部63の底部には、図示は省略するが、該底部に開放してなる円形凹部と、該円形凹部の底部に同心状に設けた貫通孔と、が形成されている。該円形凹部に第1ギヤ56(図6参照)が回転自在に支持される。図5から解るように、第1ギヤ56の径方向中心には、多角形孔部72が貫通して形成されている。この多角形孔部72に専用の手術器具を嵌合して、当該手術器具を操作することで、第1ギヤ56を回転させることができる。なお、第1ギヤ56上にはCリング73が配置されている。該Cリング73は、ロッド受入部55の溝部の63の底面より若干突出している。
【0042】
ブロック状壁部66は、ブロック本体部75と、ブロック本体部75から上方に突設される支持壁部76とから構成される。支持壁部76からブロック本体部75に至る範囲に、上述の雌ねじ部67が形成される。図4から解るように、ブロック本体部75であって、スクリュー支持部54側の面には、スクリュー部材3のロッド受入部11の一方の円弧部16(図2参照)を支持するための支持凹部78が形成される。支持凹部78の底面には、スクリュー部材3のロッド受入部11における円弧部16の外周面に設けた係合溝部23(図2参照)と係合する係合凸部80が形成される。支持凹部78を境に溝部63の延びる方向に一対の柱部79、79が形成される、該各柱部79にその上面が開放される雌ねじ孔(図示略)がそれぞれ形成される。各雌ねじ孔に、後述する固定用ねじ部材100が螺合される。ブロック本体部75であって、各雌ねじ孔の間には、平面視略台形状の支持壁部76がブロック本体部75から上方に突設される。
【0043】
ブロック本体部75と支持壁部76との間であって、スクリュー支持部54側に僅かな隙間82(図4参照)が設けられている。この隙間82に、板状のストッパ部材83が配置されている。このストッパ部材83は、2本のねじ部材85、85により、この隙間82に固定されている。このストッパ部材83は、平面視で、溝部63の延びる方向に沿って細長い形状に形成されている。このストッパ部材83の長手方向両端部には、ブロック本体部75の雌ねじ孔の一部周縁の僅かな部分を塞ぐように配置される凹状ストッパ部84、84がそれぞれ形成されている。これにより、後述する固定用ねじ部材100を、抜ける方向に過度に回転させても、固定用ねじ部材100の雄ねじ部105が、ストッパ部材83の凹状ストッパ部84に干渉するために、固定用ねじ部材100が、ブロック本体部75の各雌ねじ孔から抜脱されることはない。
【0044】
図4及び図5に示すように、ブロック本体部75の各柱部79、79には、各雌ねじ孔と交差するように、外側から支持凹部78に向かって上方に傾斜して延びる断面矩形状の支持空間部88、88が貫通するようにそれぞれ形成されている。支持空間部88は、柱部79のスクリュー支持部54側を開放するように形成される。図6も参照して、各支持空間部88内には、ストッパ爪部92が往復運動可能にそれぞれ支持されている。ストッパ爪部92は、板状で平面視略矩形状に形成される。ストッパ爪部92には、長手方向に沿って延びる長孔93が貫通するように形成される。この長孔93に、後述する固定用ねじ部材100が挿通される。ストッパ爪部92の先端には、幅方向端部に長手方向に沿って突出する爪部94が形成される。そして、後述するが、ストッパ爪部92は、その先端部の爪部94がブロック本体部75の支持凹部78内に出没可能となっている。
【0045】
図6に示すように、固定用ねじ部材100は、六角穴付き頭部101と、雄ねじ部105を有する軸部102とから構成される。軸部102は、頭部101側から先端部に向かって順に、小径軸部104と、雄ねじ部105と、大径軸部106と、テーパ軸部107と、最小径軸部108とから構成されている。小径軸部104の外径は、雄ねじ部105の外径よりも小径である。大径軸部106の外径は、雄ねじ部105の外径より小径であり、小径軸部104の外径よりも大径である。テーパ軸部107は、大径軸部106から最小径軸部108に向かってその外径が次第に小さくなるように形成されている。
【0046】
図4図6に示すように、固定用ねじ部材100の雄ねじ部105が、ブロック本体部75の柱部79の雌ねじ孔にねじ込まれて、そのテーパ軸部107が、各柱部79の支持空間部88内に配置されるストッパ爪部92の長孔93内に挿通される。そして、固定用ねじ部材100をねじ込み、固定用ねじ部材100を軸方向に沿って移動させると、固定用ねじ部材100のテーパ軸部107がストッパ爪部92の長孔93の内壁面に接触しつつ移動するために、ストッパ爪部92がブロック本体部75の支持凹部78内に対して進退自在になる。
【0047】
図5から解るように、スクリュー支持部54は、ロッド受入部55と上下方向に沿って重なるように接続されるギヤ収容部110と、該ギヤ収容部110から一体的に分かれるように延び、またロッド受入部55のブロック本体部75における各柱部79、79の下端部から一体的に延びる一対の支持片111、111と、を備えている。ギヤ収容部110はその下方が開放されており、該ギヤ収容部110内に第2ギヤ57(図6参照)が収容される。一方、一対の支持片111、111にも、下方を開放した収容凹部(図示略)がそれぞれ形成されている。そして、ギヤ収容部110を横切るように一対の支持片111、111の収容凹部内に回動部材58が配置される。スクリュー支持部54には、ギヤ収容部110内の第2ギヤ57、及び一対の支持片111、111内の回動部材58を下方から覆うように略C字状のカバー部材115が配置されている。
【0048】
図6を参照して、カバー部材115には、開放部位と径方向反対側に径方向外方に突出する突出部116が形成される。第2ギヤ57は、突出部116から立設された支持ピン117に回転自在に支持されている。第2ギヤ57は、スクリュー支持部54のギヤ収容部110からロッド受入部55の底部内で第1ギヤ56に近接する部位に至って配置され、該第1ギヤ56に噛み合っている。該第2ギヤ57は、回動部材58のギヤ部118にも噛み合っている。一対の支持片111、111間の距離は、該一対の支持片111、111間に、スクリュー部材3のロッド受入部11に設けた一対の平面部15、15が当接して嵌合できる距離に設定されている。
【0049】
回動部材58は、C字状に形成される。回動部材58は、ギヤ収容部110を横切るように、一対の支持片111、111内の収容凹部に延び、一対の支持片111、111の先端を架け渡すように回動自在に支持される。回動部材58の外周面にはギヤ部118が形成される。該ギヤ部118が第2ギヤ57と噛み合っている。回動部材58の内径は、スクリュー部材3のロッド受入部11の一対の円弧部16、16(図2参照)の外径と略一致する。そして、第1ギヤ56を専用の手術器具で回転させることで、第2ギヤ57及び回動部材58を回動させることができる。その結果、回動部材58の回動により、スクリュー支持部54の一対の支持片111、111間を開閉することが可能になる。
【0050】
そして、図1図4図6を参照しながら、クランプ部材50Aをスクリュー部材3のロッド受入部11に取り付ける際には、ロッド受入部55の溝部の63の底部内に配置した第1ギヤ56の多角形孔部72に専用の手術器具(図示略)を嵌合させて、一方向に回転させることで、第1ギヤ56、第2ギヤ57及び回動部材58を回動させて、スクリュー支持部54の一対の支持片111、111間を開放した状態とする。続いて、クランプ部材50Aのロッド受入部55におけるブロック状壁部66のブロック本体部75に設けた支持凹部78内に、スクリュー部材3のロッド受入部11における一方の円弧部16を配置しつつ、クランプ部材50Aのスクリュー支持部54における一対の支持片111、111を、スクリュー部材3のロッド受入部11における一対の平面部15、15の、溝部10よりも下方の部位に当接させる。なお、スクリュー部材3のロッド受入部11における一方の円弧部16が、クランプ部材50Aのロッド受入部55における支持凹部78内に配置されると、スクリュー部材3のロッド受入部11における一方の円弧部16の外周面に設けた係合溝部23(図2参照)が、クランプ部材50Aのロッド受入部55における支持凹部78に設けた係合凸部80(図4参照)に係合されることで、クランプ部材50Aのスクリュー部材3に対する上下方向の移動が規制される。
【0051】
続いて、再び、ロッド受入部55の溝部63の底部内に配置した第1ギヤ56の多角形孔部72に専用の手術器具(図示略)を嵌合させて、他方向に回転させることで、第1ギヤ56、第2ギヤ57及び回動部材58を回動させて、回動部材58により、スクリュー支持部54の一対の支持片111、111間を閉鎖した状態とする。その結果、回動部材58の内周面が、スクリュー部材3のロッド受入部11における他方の円弧部16の外周面に当接されて、回動部材58により、スクリュー部材3のロッド受入部11を拘束しつつ、スクリュー部材3(ロッド受入部11)の溝部10が外部に露出する。
【0052】
続いて、各固定用ねじ部材100の六角穴付き頭部101に専用の手術器具(図示略)を嵌合させて、手術器具を一方向に回転させることで、各固定用ねじ部材100をねじ込み、各固定用ねじ部材100を軸方向に沿って前進させる。すると、各固定用ねじ部材100のテーパ軸部107が、各ストッパ爪部92の長孔93の内壁面に接触しつつ前進するために、各ストッパ爪部92がブロック本体部75の支持凹部78内に向かってそれぞれ前進する。その結果、各ストッパ爪部92の爪部94が、スクリュー部材3のロッド受入部11の各平面部15に設けた凹部22を押圧することで、一対のストッパ爪部92、92により、スクリュー部材3のロッド受入部11が一対の平面部15、15側から強固に挟み込まれて固定される。このように、クランプ部材50Aをスクリュー部材3のロッド受入部11に取り付けると、クランプ部材50Aは、スクリュー部材3のロッド受入部11に近接して配置される。
【0053】
一方、クランプ部材50Aをスクリュー部材3のロッド受入部11から取り外す際には、取り付ける際と同様に、各固定用ねじ部材100の六角穴付き頭部101に専用の手術器具(図示略)を嵌合させて、手術器具を他方向に回転させることで、各固定用ねじ部材100を軸方向に沿って後退させる。すると、各固定用ねじ部材100のテーパ軸部107が後退するために、各ストッパ爪部92が自重で支持空間部88内を滑動する。その結果、各ストッパ爪部92の爪部94が、スクリュー部材3のロッド受入部11の各平面部15に設けた凹部22から離れ、各ストッパ爪部92によるスクリュー部材3のロッド受入部11の挟持作用が解除される。
【0054】
また、ロッド受入部55の溝部63の底部内に配置した第1ギヤ56の多角形孔部72に専用の手術器具(図示略)を嵌合させて、一方向に回転させることで、第1ギヤ56、第2ギヤ57及び回動部材58を回動させて、スクリュー支持部54の一対の支持片111、111間を開放した状態として、スクリュー部材3のロッド受入部11からクランプ部材50Aを取り外すことができる。
【0055】
次に、第1実施形態に係る矯正具1Aを用いて、脊柱変形矯正固定システム2にて脊柱変形を矯正固定する際に、その矯正固定を補助する方法を図7及び図8に基づいて、適宜図1及び図4も参照して説明する。なお、図7及び図8では、脊柱変形矯正固定システム2として、単に、複数のスクリュー部材3及び一対のロッド部材5だけで脊柱変形を矯正固定しているが、これは第1実施形態に係る矯正具1Aによる矯正固定を補助する方法を解り易く説明するためであって、実際には、必要に応じて、スクリュー部材3の他、フック部材4やコネクタ部材(図示略)等を使用して、さらに一対のロッド部材5、5の他に、更にロッド部材も追加して使用することもある。
【0056】
まず、側彎症等の脊柱変形において、図7(a)に示すように、脊柱の矯正固定範囲(例えば、図にて10個の椎骨)の各椎骨に対して、スクリュー部材3を脊柱の後方からその椎弓根を介して椎体にねじ込む。続いて、例えば、図7に示すような、シングルカーブの場合、カーブの頂部から頂部付近に至る範囲の、例えば5個の椎骨にそれぞれねじ込まれた各スクリュー部材3のロッド受入部11にクランプ部材50Aをそれぞれ取り付ける。この方法では、クランプ部材50Aを、そのロッド受入部55がスクリュー部材3のロッド受入部11に対して患者の左右方向外側に配置されるように取り付けている。なお、スクリュー部材3のロッド受入部11に、クランプ部材50Aを取り付ける方法は、上述しているためにここでの説明は省略する。
【0057】
次に、補助ロッド部材51を1本用意して、当該補助ロッド部材51を、脊柱の側彎カーブに沿うように、専用の手術器具(図示略)を用いて湾曲をつける。続いて、図7(b)に示すように、補助ロッド部材51を、各クランプ部材50Aのロッド受入部55の溝部63にそれぞれ係合させる。続いて、専用の手術器具(図示略)を用いて、セットスクリュー70を各クランプ部材50Aのロッド受入部55の雌ねじ部67、67にねじ込み、各補助ロッド部材51を仮止めする。なお、このとき、セットスクリュー70により、補助ロッド部材51が各クランプ部材50Aのロッド受入部55の溝部63の底面に押し付けられた際には、第1ギヤ56上に配置されたCリング73が第1ギヤ56をロッド受入部55の円形凹部の底部に押し付けるために、第1ギヤ56の回転が規制され、ひいては回動部材58によるスクリュー部材3のロッド受入部11(頭部)への拘束状態が維持される。
【0058】
次に、図7(b)の状態から、専用の手術器具(図示略)を使用して、補助ロッド部材51を把持して回動させたり、各クランプ部材50Aを近接する方向または遠退する方向に移動させる操作を行って、ねじれを含む脊柱変形を矯正する。続いて、図7(c)に示すように、第1実施形態に係る矯正具1Aのセットスクリュー70を本締めして、補助ロッド部材51を各クランプ部材50Aのロッド受入部55の溝部62に強固に固定する。これにより、第1実施形態に係る矯正具1Aにより脊柱変形を矯正してその状態を維持することができる。続いて、図8(d)に示すように、クランプ部材50Aを取り付けていない左側の、全てのスクリュー部材3(10個)のロッド受入部11の溝部10にロッド部材5を係合して、専用の手術器具(図示略)を用いて、セットスクリュー20を各スクリュー部材3のロッド受入部11の雌ねじ部17、17(図2参照)にねじ込み本締めして、ロッド部材5を各スクリュー部材3のロッド受入部11の溝部10に強固に固定する。このとき、ロッド部材5において、必要であれば、患者の(生理的)正常な前彎及び後彎に沿うように若干の湾曲をつけ、その状態で、全てのスクリュー部材3(10個)のロッド受入部11の溝部10に係合することもできる。
【0059】
次に、図8(e)に示すように、クランプ部材50Aを取り付けている右側の、全てのスクリュー部材3(10個)のロッド受入部11の溝部10にロッド部材5を係合させて、セットスクリュー20を各スクリュー部材3のロッド受入部11の雌ねじ部17、17(図2参照)にねじ込み本締めして、ロッド部材5を各スクリュー部材3のロッド受入部11の溝部10に強固に固定する。
次に、図8(f)に示すように、各クランプ部材50Aのロッド受入部55からセットスクリュー70を取り外して、補助ロッド部材51を各クランプ部材50Aから取り外す。続いて、各クランプ部材50Aを各スクリュー部材3のロッド受入部11から取り外して、脊柱変形矯正固定システム2(複数のスクリュー部材3及び一対のロッド部材5)による脊柱変形の矯正固定が完了される。なお、クランプ部材50Aをスクリュー部材3のロッド受入部11から取り外す方法は、上述しているためにここでの説明は省略する。
【0060】
なお、図7及び図8に示す方法では、クランプ部材50Aを、そのロッド受入部55がスクリュー部材3のロッド受入部11に対して患者の左右方向外側に配置されるように取り付けているが、クランプ部材50Aを、そのロッド受入部55がスクリュー部材3のロッド受入部11に対して患者の左右方向内側に配置されるようにスクリュー部材3のロッド受入部11に取り付けてもよい。また、図7及び図8に示す方法では、患者の左右方向右側の各スクリュー部材3のロッド受入部11にクランプ部材50Aをそれぞれ取り付けているが、左右方向左側の各スクリュー部材3のロッド受入部11にクランプ部材50Aを取り付けてもよく、左右方向両側の各スクリュー部材3のロッド受入部11にクランプ部材50Aをそれぞれ取り付けてもよい。
【0061】
このように、図7及び図8に示す方法に限らず、術者の意向に沿って、選択されたスクリュー部材3のロッド受入部11にクランプ部材50Aをそれぞれ取り付けて、当該各クランプ部材50A及び補助ロッド部材51により矯正操作を行って、脊柱変形矯正固定システム2による脊柱変形の矯正固定を補助するようにしてもよい。要するに、第1実施形態に係る矯正具1Aを用いて、図7及び図8に示す方法に限ることなく、術者の意向に沿って、図7及び図8に示す方法とは他の方法を採用することが可能である。
【0062】
以上説明したように、本発明の第1実施形態に係る矯正具1Aでは、脊柱変形矯正固定システム2の、例えばスクリュー部材3のロッド受入部11に着脱自在に取り付けられ、該スクリュー部材3のロッド受入部11に近接して配置されるクランプ部材50Aと、該クランプ部材50Aのロッド受入部55に着脱自在に取り付けられ、脊柱変形を矯正するための補助ロッド部材51と、を備えている。
【0063】
これにより、複数のスクリュー部材3にクランプ部材50Aをそれぞれ取り付け、さらに各クランプ部材50Aのロッド受入部55の溝部63に補助ロッド部材51を取り付ける。続いて、補助ロッド部材51を操作することで、各クランプ部材50A及び各スクリュー部材3を介して脊柱変形を適切に矯正して、その矯正状態を維持しておくことができる。続いて、各スクリュー部材3のロッド受入部11の溝部10にロッド部材5を連結して、脊柱を矯正した状態で固定する。続いて、補助ロッド部材51及び各クランプ部材50Aを各スクリュー部材3から取り外して、体外へ取り出す。
【0064】
このように、脊柱変形矯正固定システム2によって脊柱変形を矯正固定する際、従来のように、脊柱変形矯正固定システム2のロッド部材5を、ねじれを含む側彎変形した各椎骨に固定された各スクリュー部材3やフック部材4に係合させる必要がなく、また、脊柱変形矯正固定システム2のロッド部材5に側彎変形に沿うように湾曲をつけたり、ペンチなどの専用の手術器具を用いて強固に挟持して回動させるなどの操作が必要ない。その結果、体内埋没材であるロッド部材5の損傷を抑制することができる。しかも、第1実施形態に係る矯正具1Aを使用することで、脊柱変形矯正固定システム2のロッド部材5を、各スクリュー部材3(フック部材4)のロッド受入部11(25)の溝部10(24)に容易に係合(連結)させることができ、その結果、脊柱変形矯正固定システム2により、容易に脊柱変形を矯正することが可能になり、手術自体が容易となるので、手術時間の短縮にも貢献することができる。
【0065】
また、本発明の第1実施形態に係る矯正具1Aに採用したクランプ部材50Aは、スクリュー部材3のロッド受入部11の外周を取り巻くように支持する、リング状部として、スクリュー支持部54の一対の支持片111、111と、一対の支持片111、111の先端間を開閉するように回動自在に支持される回動部材58と、を備えている。これにより、スクリュー部材3のロッド受入部11に設けられた、ロッド部材5を係合させるための溝部10を外部に露出させることができる。その結果、クランプ部材50A及び補助ロッド部材51により、脊柱変形を矯正してその状態を維持した状態で、ロッド部材5を、各スクリュー部材3の溝部10に容易に係合させることができる。
【0066】
さらに、本発明の第1実施形態に係る矯正具1Aに採用したクランプ部材50Aは、補助ロッド部材51をクランプ部材50Aのロッド受入部55の溝部63に固定するセットスクリュー70を備えている。このセットスクリュー70により、補助ロッド部材51を各クランプ部材50Aの溝部63に仮止めした状態で、補助ロッド部材51を操作することで、各クランプ部材50Aを介して脊柱変形を容易に矯正することができる。矯正後は、セットスクリュー70により、補助ロッド部材51を各クランプ部材50Aのロッド受入部55の溝部63に強固に固定することで、クランプ部材50A及び補助ロッド部材51により、脊柱変形を矯正した状態で維持することができる。
【0067】
さらにまた、本発明の第1実施形態に係る矯正具1Aに採用したクランプ部材50Aは、スクリュー支持部54の一対の支持片111、111、及び一対の支持片111、111の先端間を開閉するように回動自在に支持される回動部材58の他、スクリュー部材3のロッド受入部11を挟持する一対のストッパ爪部92、92を備えている。この一対のストッパ爪部92、92により、クランプ部材50Aをスクリュー部材3に対してさらに強固に固定することができる。その結果、クランプ部材50Aからの矯正力を、適切にスクリュー部材3を介して椎骨に伝達することができ、脊柱変形を適切に矯正することができる。
【0068】
さらにまた、本発明の第1実施形態に係る矯正具1Aでは、スクリュー部材3の平面部15には、ストッパ爪部92の爪部94先端を支持する凹部22が形成され、クランプ部材50Aをスクリュー部材3に取り付けた際、クランプ部材50Aのストッパ爪部92がスクリュー部材3の凹部22に係合することで、クランプ部材50Aをスクリュー部材3に取り付けた際の、クランプ部材50Aのスクリュー部材3に対するガタを極力無くすことができる。
【0069】
なお、第1実施形態に係る矯正具1Aでは、矯正部材として、クランプ部材50Aのロッド受入部55の溝部63に係合される補助ロッド部材51を採用しているが、当該矯正部材として、クランプ部材50Aに着脱自在に取り付けられ、クランプ部材50Aから体外に向かって延びるシャフト部材等を採用してもよい。このシャフト部材を採用する場合には、術者が、体外に突出された各シャフト部材を把持して操作する、または手術器具を用いて操作することで脊柱変形を適切に矯正することができる。また、各シャフト部材の先端部に、矯正状態を維持させるための矯正維持部材等を装着することも可能である。
【0070】
また、第1実施形態に係る矯正具1Aは、脊柱変形矯正固定システム2により脊柱変形を矯正固定した後、体外に取り出される手術器具として位置付けられているが、体内にそのまま留置することもできる。その場合には、第1実施形態に係る矯正具1Aを、脊柱変形矯正固定システム2の、スクリュー部材3、フック部材4及びロッド部材5等と同じように、チタン合金等の生体親和性に優れた材料にて形成する必要がある。これにより、脊柱変形矯正固定システム2全体としての剛性を向上させることができ、ロッド部材5等の折損等を抑制することができる。
【0071】
次に、本発明の第2実施形態に係る矯正具1Bを図9図14に基づいて詳細に説明する。第2実施形態に係る矯正具1Bを説明する際には、第1実施形態に係る矯正具1Aとの相違点のみを説明する。第2実施形態に矯正具1Bでは、採用したクランプ部材50Bの構造が、第1実施形態に係る矯正具1Aに採用したクランプ部材50Aの構造と相違するために、クランプ部材50Bの構造を詳細に以下に説明する。
【0072】
図9図10及び図14に示すように、クランプ部材50Bは、スクリュー部材3のロッド受入部11を支持すべく、互いに近接・遠退自在に設けられる一対の支持片160、170と、該一対の支持片160、170のうち、一方の支持片160に一体的に接続され、上面を開放したU字状の溝部167を有するロッド受入部162と、上下方向に移動することで一対の支持片160、170のうち、他方の支持片170を一方の支持片160に対して近接・遠退自在に移動させる楔状スライド部材152と、を備えている。言い換えれば、クランプ部材50Bは、それぞれ単一部品で構成される、図11及び図12に示す主ボディ本体150と、図13に示す副ボディ本体151と、図14に示す楔状スライド部材152と、図14に示す操作用ねじ部材153と、図14に示す規制用プレート部材154とが連結、一体化されて構成される。
【0073】
図11及び図12に示すように、主ボディ本体150は、一方の支持片160と、主ボディ本体部161と、ロッド受入部162とが一体的に接続されて構成される。一方の支持片160は、主ボディ本体部161の下端から、ロッド受入部162の溝部167の延びる方向に対して略直交する方向に延びている。また、一方の支持片160は、主ボディ本体部161の下端であって、ロッド受入部162の溝部167の延びる方向に沿う一端側から延びている。主ボディ本体部161の正面(一方の支持片160側の面)には、一方の支持片170と連続するように円弧状のスクリュー当接面163が設けられる。該スクリュー当接面163に、図9に示す、スクリュー部材3のロッド受入部11に設けた一方の円弧部16が当接される。主ボディ本体部161の背面側(一方の支持片160とは反対側の面)にロッド受入部162が一体的に接続されている。
【0074】
主ボディ本体部161内には、上面を任意形状にて開放すると共にロッド受入部162の溝部167の延びる方向他端側を開放して、且つ正面(一方の支持片160側の面)においてロッド受入部162の溝部167の延びる方向に沿って略矩形状で開放する収容中空部165が形成される。この収容中空部165には、後で詳述する副ボディ本体151の副ボディ本体部171と楔状スライド部材152とが、副ボディ本体部171に設けた傾斜空間部178に、楔状スライド部材152に設けた楔状突出部182が係合した状態で収容される。主ボディ本体部161の上面であって、一方の支持片160側の一端には、収容凹部164が形成される。
【0075】
ロッド受入部162は、上面を開放したU字状の溝部167を有する。該溝部167は、ロッド部材5(図9参照)の延びる方向に沿って形成される。ロッド受入部162の溝部167を介して対向する壁部166、166の内壁面には雌ねじ部168、168がそれぞれ形成される。これら雌ねじ部168、168に、図9に示すセットスクリュー169がねじ込まれる。このセットスクリュー169が補助ロッド部材51をクランプ部材50Bの溝部167に固定する固定具に相当する。
【0076】
ロッド受入部162、すなわちその壁部166、166は、図11に示すように、主ボディ本体部161の上面、また図10に示すように、当該主ボディ本体部161の上面を覆うように固定される規制用プレート部材154よりも上方に突出される。これにより、この壁部166、166の突出した部分に、補助ロッド部材51(図9参照)をロッド受入部162の溝部167内に挿入する操作を補助するための棒状の手術器具(図示略)の先端を装着することが可能になる。図11に示すように、ロッド受入部162の溝部167の底面は、一方の支持片160より上方に位置している。また、図13に示すように、副ボディ本体151は、他方の支持片170と、副ボディ本体部171とが一体的に接続されて構成される。他方の支持片170は、副ボディ本体部171の下端から、ロッド受入部162の溝部167の延びる方向に対して略直交する方向に延びている。また、他方の支持片170は、副ボディ本体部171の下端であって、ロッド受入部162の溝部167の延びる方向に沿う他端側から延びている。
【0077】
副ボディ本体部171は、所定幅の板状でロッド受入部162の溝部167に延びる方向に沿って立った状態で設けられる板状本体部174と、該板状本体部174の背面(他方の支持片170とは反対側の面)に一体的に接続される一対の傾斜大コマ部175A及び傾斜小コマ部175Bと、を備えている。副ボディ本体部171の板状本体部174の下方には、間隔をあけて、他方の支持片170と連続するように円弧状のスクリュー当接面172が設けられる。該スクリュー当接面172に、図9に示す、スクリュー部材3のロッド受入部11に設けた一方の円弧部16が当接される。一対の傾斜大コマ部175Aと傾斜小コマ部175Bとの間には、所定幅で下方に向かって他方の支持片170側(他端側)に傾斜する傾斜空間部178が形成される。一端側の傾斜小コマ部175Bの厚みは、他端側の傾斜大コマ部175Aの厚みよりも薄く形成される。この傾斜空間部178に、楔状スライド部材152に設けた楔状突出部182(図14参照)が係合される。
【0078】
図14に示すように、楔状スライド部材152は、板状部180と、該板状部180の一端部に一体的に接続される円筒状部181と、を備えている。該楔状スライド部材152は、その全体が主ボディ本体150の主ボディ本体部161に設けた収容中空部165内に収容される。板状部180は立った状態で設けられ、板状部180の正面には、円筒状部181側とは反対側の他端に楔状突出部182が突設される。楔状突出部182は、所定幅で下方に向かって取付ボルト193側(他端側)に傾斜する、正面視略平行四辺形状に形成されている。楔状突出部182は、副ボディ本体151に設けた傾斜空間部178に係合されるもので、それぞれの幅長が略一致している。円筒状部181の内周面には雌ねじ部(図示略)が形成される。該雌ねじ部に操作用ねじ部材153の雄ねじ部190が螺合される。
【0079】
操作用ねじ部材153は、上面に六角穴188を有する頭部189と、該頭部189から軸方向に沿って連続して設けられる雄ねじ部190と、から構成される。この雄ねじ部190が、楔状スライド部材152の円筒状部181の内周面に設けた雌ねじ部に螺合される。操作用ねじ部材153の頭部189は、主ボディ本体150の主ボディ本体部161の上面に設けた収容凹部164に収容される。操作用ねじ部材153の頭部189上には、操作用ねじ部材153の上下方向の移動を規制する規制用プレート部材154が配置される。すなわち、図10に示すように、操作用ねじ部材153は、その頭部189が主ボディ本体150(主ボディ本体部161)の収容凹部164と規制用プレート部材154との間に挟持されることで回転自在に、且つ上下方向に沿って移動不能に支持される。
【0080】
規制用プレート部材154には、操作用ねじ部材153の頭部189に設けた六角穴188が外部に露出するように、操作用ねじ部材153の頭部189に対応する位置に開口部192が形成される。そして、図10に示すように、当該規制用プレート部材154は、主ボディ本体150の主ボディ本体部161の上面、及び操作用ねじ部材153の頭部189を覆うようにして、取付ボルト193により主ボディ本体150に固定される。なお、上述したように、規制用プレート部材154には開口部192が形成されているので、操作用ねじ部材153の頭部189に設けた六角穴188は外部に露出することになる。
【0081】
そして、副ボディ本体151の副ボディ本体部171と楔状スライド部材152とが、副ボディ本体151に設けた傾斜空間部178に楔状スライド部材152に設けた楔状突出部182が係合された状態で、主ボディ本体150の収容中空部165内に配置される。このとき、楔状スライド部材152は上下方向に沿って移動自在に収容されると共に、副ボディ本体151は、ロッド受入部162の溝部167の延びる方向に沿って移動自在に収容される。その結果、図10に示すように、主ボディ本体150の一方の支持片160と、副ボディ本体151の他方の支持片170とが対向するように配置される。
【0082】
また、主ボディ本体150の収容中空部165内には、操作用ねじ部材153の雄ねじ部190が楔状スライド部材152の円筒状部181の雌ねじ部に螺合された状態で配置される。操作用ねじ部材153の頭部189は、主ボディ本体150(主ボディ本体部161)の収容凹部164に収容され、頭部189の上面と、主ボディ本体150(主ボディ本体部161)の収容凹部164を除く上面とが略同一平面上に配置される。さらに、規制用プレート部材154が、主ボディ本体150の主ボディ本体部161の上面、及び操作用ねじ部材153の頭部189を覆うようにして配置され、取付ボルト193により主ボディ本体150に固定される。このようにして、第2実施形態に係る矯正具1Bに採用されるクランプ部材50Bが完成する。
【0083】
そこで、当該第2実施形態に係る矯正具1Bのクランプ部材50Bを、スクリュー部材3のロッド受入部11に取り付ける際には、図示しない専用の手術器具を操作用ねじ部材153の頭部189の六角穴188に装着して、当該専用の手術器具を一方向に回転させることで操作用ねじ部材153を一方向に回転させる。その結果、操作用ねじ部材153は上下方向に移動不能に支持されているので、楔状スライド部材152が上方に移動する。その結果、楔状スライド部材152に設けた楔状突出部182と、副ボディ本体151の副ボディ本体部171に設けた一対の傾斜大コマ部175A及び傾斜小コマ部175Bとの間の楔効果により、副ボディ本体151に備えた他方の支持片170が、主ボディ本体150に備えた一方の支持片160から遠退する方向に移動する。
【0084】
続いて、クランプ部材50Aを、その一対の支持片160、170が、スクリュー部材3のロッド受入部11における一対の平面部15、15であって、溝部10よりも下方の部位にそれぞれ対向するように配置する。このとき、スクリュー部材3のロッド受入部11の一方の円弧部16が、クランプ部材50Aの主ボディ本体150側のスクリュー当接面163、及び副ボディ本体151側のスクリュー当接面172にそれぞれ当接される。
【0085】
続いて、再び、図示しない専用の手術器具を操作用ねじ部材153の頭部189の六角穴188に装着して、当該専用の手術器具を他方向に回転させることで操作用ねじ部材153を他方向に回転させる。その結果、楔状スライド部材152が下方に移動することで、楔状スライド部材152に設けた楔状突出部182と、副ボディ本体151の副ボディ本体部171に設けた一対の傾斜大コマ部175A及び傾斜小コマ部175Bとの間の楔効果により、副ボディ本体151に備えた他方の支持片170が、主ボディ本体150に備えた一方の支持片160に近接する方向に移動する。
【0086】
その結果、クランプ部材50Bの一対の支持片160、170により、スクリュー部材3のロッド受入部11における一対の平面部15、15であって、溝部10よりも下方の部位を両側方から挟み込むように強固にクランプすることができる。このとき、クランプ部材50Bの一対の支持片160、170により、スクリュー部材3のロッド受入部11における一対の平面部15、15であって、溝部10よりも下方の部位を挟み込むので、スクリュー部材3(ロッド受入部11)の溝部10を外部に露出させることができる。
【0087】
そして、本発明の第2実施形態に係る矯正具1Bに採用したクランプ部材50Bにおいては、互いに近接・遠退自在に設けられる一対の支持片160、170を備えているので、該一対の支持片160、170により、スクリュー部材3のロッド受入部11における一対の平面部15、15であって、溝部10よりも下方の部位を両側方から挟み込むように強固にクランプすることができる。その結果、スクリュー部材3のロッド受入部11に設けた溝部10を外部に露出させることができる。これにより、クランプ部材50B及び補助ロッド部材51により、脊柱変形を矯正してその状態を維持した状態で、ロッド部材5を、各スクリュー部材3の溝部10に容易に係合することができる。
【符号の説明】
【0088】
1A、1B 矯正具,2 脊柱変形矯正固定システム,3 スクリュー部材(椎骨固定具),4 フック部材(椎骨固定具),5 ロッド部材,11 ロッド受入部(頭部),50A、50B クランプ部材,51 補助ロッド部材(矯正部材),58 回動部材(リング状部),63 溝部,70 セットスクリュー(固定具),92 ストッパ爪部,111 支持片(リング状部),160、170 支持片
図1
図2
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