(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20241108BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20241108BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20241108BHJP
H01L 21/337 20060101ALI20241108BHJP
H01L 29/808 20060101ALI20241108BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241108BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20241108BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/80 C
H01L29/78 301B
H01L21/265 V
H01L21/265 601J
H01L21/265 601A
(21)【出願番号】P 2021536835
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2020024734
(87)【国際公開番号】W WO2021019969
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2019141234
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】大来 英之
(72)【発明者】
【氏名】引田 正洋
(72)【発明者】
【氏名】柳原 学
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-095640(JP,A)
【文献】特開2014-099523(JP,A)
【文献】特開2013-235873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 29/808
H01L 21/338
H01L 21/337
H01L 21/336
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に形成された
、C(カーボン)濃度が1E+18cm
-3
以上である高C(カーボン)濃度の窒化物半導体層と、
前記高C濃度の窒化物半導体層の上に形成され、前記高C濃度の窒化物半導体層に比べC濃度が低い、窒化物半導体層からなるチャネル層と、
前記チャネル層上に直接接触して形成され、前記チャネル層と比べてバンドギャップが大きく、窒化物半導体層からなるバリア層とを含む半導体積層構造体を備え、
前記半導体積層構造体には、不純物が注入された素子分離領域が形成され、
前記素子分離領域は、前記半導体積層構造体の上面側から前記高C濃度の窒化物半導体層に達しており、
前記チャネル層の深さにおける前記不純物の最大濃度が、前記高C濃度の窒化物半導体層と前記チャネル層との界面の深さにおける前記不純物の濃度の70倍以下である
窒化物半導体装置。
【請求項2】
基板と、
前記基板の上に形成された
、C(カーボン)濃度が1E+18cm
-3
以上である高C(カーボン)濃度の窒化物半導体層と、
前記高C濃度の窒化物半導体層の上に形成され、前記高C濃度の窒化物半導体層に比べC濃度が低い、窒化物半導体層からなるチャネル層と、
前記チャネル層上に直接接触して形成され、前記チャネル層と比べてバンドギャップが大きく、窒化物半導体層からなるバリア層とを含む半導体積層構造体を備え、
前記半導体積層構造体には、不純物が注入された素子分離領域が形成され、
前記素子分離領域は、前記半導体積層構造体の上面側から前記高C濃度の窒化物半導体層に達しており、
前記バリア層と前記チャネル層との界面の深さにおける前記不純物の濃度が、前記高C濃度の窒化物半導体層と前記チャネル層との界面の深さにおける前記不純物の濃度の40倍以下である
窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記チャネル層の前記不純物の最大濃度が、6E+19cm
-3以下である
請求項
1又は
2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記バリア層と前記チャネル層との界面の深さにおける前記不純物の濃度が、3E+19cm
-3以下である
請求項
1又は
2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記半導体積層構造体は、さらに、前記バリア層の上の一部に形成され、p型窒化物半導体からなるゲート層を含み、
前記不純物が前記ゲート層内にも存在する
請求項
1~4のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
前記ゲート層の直下における前記不純物の深さと、前記ゲート層がない領域における前記不純物の深さとが、同一である
請求項
5に記載の窒化物半導体装置。
【請求項7】
前記高C濃度の窒化物半導体層と前記チャネル層との界面の深さにおける前記不純物の濃度が、5E+17cm
-3以上である
請求項
1~6のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項8】
前記高C濃度の窒化物半導体層のC濃度が1E+18cm
-3以上であり、
前記チャネル層のC濃度が1E+18cm
-3未満である
請求項
1~7のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項9】
前記不純物は、H,He,B,C,O,F,Mg,Cl,Ar,Ca,Ti,Cr,Fe,Cu,Zn,As,Ruの内の一つ以上の元素である
請求項1~
8のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項10】
基板を用意し、前記基板の上に
、C(カーボン)濃度が1E+18cm
-3
以上である高C(カーボン)濃度の窒化物半導体層を形成し、前記高C濃度の窒化物半導体層の上に窒化物半導体層からなるチャネル層を形成し、前記チャネル層の上に前記チャネル層と比べてバンドギャップが大きい窒化物半導体層からなるバリア層を形成することによって、半導体積層構造体を形成する工程と、
前記半導体積層構造体の上から、不純物を注入して素子分離領域を形成する工程とを含み、
前記素子分離領域を形成する工程では、
前記素子分離領域が、前記半導体積層構造体の上面側から前記高C濃度の窒化物半導体層に達するように、前記不純物を注入し、
前記チャネル層の前記不純物の最大濃度が、前記高C濃度の窒化物半導体層と前記チャネル層との界面の深さにおける前記不純物の濃度の70倍以下になるように、前記不純物を注入する
窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項11】
基板を用意し、前記基板の上に
、C(カーボン)濃度が1E+18cm
-3
以上である高C(カーボン)濃度の窒化物半導体層を形成し、前記高C濃度の窒化物半導体層の上に窒化物半導体層からなるチャネル層を形成し、前記チャネル層の上に前記チャネル層と比べてバンドギャップが大きい窒化物半導体層からなるバリア層を形成することによって、半導体積層構造体を形成する工程と、
前記半導体積層構造体の上から、不純物を注入して素子分離領域を形成する工程とを含み、
前記素子分離領域を形成する工程では、
前記素子分離領域が、前記半導体積層構造体の上面側から前記高C濃度の窒化物半導体層に達するように、前記不純物を注入し、
前記バリア層と前記チャネル層との界面の深さにおける前記不純物の濃度が、前記高C濃度の窒化物半導体層と前記チャネル層との界面の深さにおける前記不純物の濃度の40倍以下になるように、前記不純物を注入する
窒化物半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体装置及びその製造方法、特に電界効果トランジスタ等として用いることができる窒化物半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
III族窒化物半導体は、そのバンドギャップの広さから高い絶縁破壊電圧を有する。またAlGaN/GaN等のヘテロ構造を容易に形成することが可能であり、AlGaNとGaNの格子定数差から発生するピエゾ電荷とバンドギャップとの差によりAlGaN/GaN界面のGaN層側に高移動度、かつ高濃度な電子チャネル(二次元電子ガス)を発生させることができる。この二次元電子ガスを制御することにより高電子移動度トランジスタ(HEMT、High Electron Mobility Transistor)を形成することが可能となる。これらの高耐圧、高速、大電流の特徴により、III族窒化物半導体はパワー用途の電界効果トランジスタ(FET)やダイオード等の電子デバイスへの応用がなされている。
【0003】
特許文献1の
図1~
図4に記載されている半導体装置では、基板となるSiCの上に、バッファ層となるi-GaN層、バックバリアとなるInGaN層、電子走行層(チャネル層)となるi-GaN層、中間層となるAlN層、電子供給層(バリア層)となるInAlGaN層、キャップ層となるGaN層を順次エピタキシャル成長した半導体積層構造体を用いている。半導体積層構造体では、電子供給層/中間層と電子走行層のバンドギャップ差と、電子供給層/中間層のピエゾ電荷により電子走行層内の中間層側に二次元電子ガス層が発生する。電子供給層の上には、それぞれ離間して第2のIII族窒化物半導体層にオーミック接触するソース電極とドレイン電極とがあり、ソース電極とドレイン電極との間にそれぞれ離間してゲート電極がある。上記半導体装置は、ソース電極とドレイン電極との間を、二次元電子ガス層を介して流れるドレイン電流を、ゲート電極部に印加する電圧で制御することができるFETである。FETの活性領域外の不活性部には、Ar等の注入により、半導体積層構造体の上面側から基板に達する(特許文献1の
図1の(b)参照)素子分離構造が形成されている。また、バックバリアとなるInGaN層に炭素(カーボン、以下、単に「C」と記す)を含有し、一部C濃度が高くなっている。
【0004】
特許文献1によれば、バックバリア層にCを含むことにより、Cがアクセプタ準位として作用し、伝導帯のポテンシャルを高め、バッファ層側への電子拡散を抑制しつつ、ショートチャネル効果の抑制、及びドレインリーク電流の低減が可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で記載した半導体装置には以下の課題がある。
【0007】
つまり、特許文献1の
図1~
図4に記されている構造では、バックバリア層(膜厚が5nm以下のInGaN)が非常に薄いため、パワー半導体で用いられるような高電圧動作・高温動作時では、バッファ層側にドレインリーク電流(ドレイン・ゲート間、ドレイン・ソース間、ドレイン・基板間のリーク電流の和)やソースリーク電流(ドレイン・ソース間のリーク電流)が漏れ出し、信頼性が悪化する。また、素子分離構造を不純物(Ar)の注入により形成するとあるが、不純物の注入量や深さ分布次第で、特にパワー半導体で用いられるような高電圧動作・高温動作時では、ドレイン電極から素子分離領域へのリーク電流が発生し、それにより信頼性が悪化する。
【0008】
そこで、本発明は、リーク電流が抑制された窒化物半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る窒化物半導体装置は、基板と、前記基板の上に形成された、C(カーボン)濃度が1E+18cm
-3
以上である高C(カーボン)濃度の窒化物半導体層と、前記高C濃度の窒化物半導体層の上に形成され、前記高C濃度の窒化物半導体層に比べC濃度が低い、窒化物半導体層からなるチャネル層と、前記チャネル層上に直接接触して形成され、前記チャネル層と比べてバンドギャップが大きく、窒化物半導体層からなるバリア層とを含む半導体積層構造体を備え、前記半導体積層構造体には、不純物が注入された素子分離領域が形成され、前記素子分離領域は、前記半導体積層構造体の上面側から前記高C濃度の窒化物半導体層に達しており、前記チャネル層の深さにおける前記不純物の最大濃度が、前記高C濃度の窒化物半導体層と前記チャネル層との界面の深さにおける前記不純物の濃度の70倍以下である。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る窒化物半導体装置の製造方法は、基板を用意し、前記基板の上に、C(カーボン)濃度が1E+18cm
-3
以上である高C(カーボン)濃度の窒化物半導体層を形成し、前記高C濃度の窒化物半導体層の上に窒化物半導体層からなるチャネル層を形成し、前記チャネル層の上に前記チャネル層と比べてバンドギャップが大きい窒化物半導体層からなるバリア層を形成することによって、半導体積層構造体を形成する工程と、前記半導体積層構造体の上から、不純物を注入して素子分離領域を形成する工程とを含み、前記素子分離領域を形成する工程では、前記素子分離領域が、前記半導体積層構造体の上面側から前記高C濃度の窒化物半導体層に達するように、前記不純物を注入し、前記チャネル層の前記不純物の最大濃度が、前記高C濃度の窒化物半導体層と前記チャネル層との界面の深さにおける前記不純物の濃度の70倍以下になるように、前記不純物を注入する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る窒化物半導体装置及びその製造方法によれば、リーク電流が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る窒化物半導体装置の断面構造、及び、素子分離領域における不純物濃度と深さとの関係を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る窒化物半導体装置の素子分離領域における不純物濃度と深さとの関係を詳細に説明する図である。
【
図3】
図3は、実施の形態の第1および第2の変形例に係る窒化物半導体装置の断面構造、及び、素子分離領域における不純物濃度と深さとの関係を示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態の第1および第2の変形例に係る窒化物半導体装置の素子分離領域における不純物濃度と深さとの関係を詳細に説明する図である。
【
図5】
図5は、実施の形態の第1の変形例に係る窒化物半導体装置の特性を示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態の第2の変形例に係る窒化物半導体装置の特性を示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態の第3の変形例に係る窒化物半導体装置の特性を示す図である。
【
図8】
図8は、実施の形態の第4の変形例に係る窒化物半導体装置の特性を示す図である。
【
図9】
図9は、実施の形態の第5の変形例に係る窒化物半導体装置の特性を示す図である。
【
図10】
図10は、実施の形態及びその変形例に係る窒化物半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図11】
図11は、実施の形態及びその変形例に係る窒化物半導体装置の平面構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態に係る窒化物半導体装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、ある物の「上」/「下」とは、「接触する」等の特段の限定がない限り、ある物に接する「上」/「下」の位置だけでなく、ある物に接しない「上方」/「下方」の位置も含まれ得る。また、ある物の「上」/「下」とは、図示された状態における相対的な位置関係を示すものであり、重力に対する絶対的な位置関係を示すものではない。
【0014】
図1は、実施の形態に係る窒化物半導体装置の断面構造(
図1の(b))、及び、素子分離領域における不純物濃度と深さとの関係(
図1の(a))を示す図である。窒化物半導体装置は、
図1の(b)に示されるように、基板1と、基板1の上に形成された窒化物半導体層からなるチャネル層3と、チャネル層3上に直接接触して形成され、チャネル層3と比べてバンドギャップが大きく、窒化物半導体層からなるバリア層4とを含む半導体積層構造体を備える。本実施の形態では、より詳しくは、半導体積層構造体は、下層から、基板1、バッファ層2、チャネル層3、二次元電子ガス層5、バリア層4、及び、ゲート層8を含む。バリア層4上には、ソース電極6及びドレイン電極7が形成されている。半導体積層構造体には、不純物が注入された素子分離領域10(左上がりハッチングの領域)が形成され、
図1の(a)に示されるように、素子分離領域10の不純物の濃度の、半導体積層構造体の上面からの深さ方向における一つのピーク12が、バリア層4とチャネル層3との界面13の深さよりも深い位置にあり、界面13の深さにおける不純物の濃度がピーク12の濃度よりも低いことを特徴とする。
【0015】
つまり、窒化物半導体装置では、不純物が注入された素子分離領域10において、素子分離領域10の不純物濃度の、深さ方向におけるピークの一つ12が、バリア層4とチャネル層3との界面13よりも上面側から見て深い(
図1で言う下方向の)位置にあり、バリア層4とチャネル層3との界面13の深さにおける素子分離領域10の不純物濃度が、不純物濃度の、深さ方向におけるピーク12の濃度よりも低いことを特徴とする。
【0016】
本半導体積層構造体は、より詳しくは、適宜なSi等の基板1(他にも例えばSapphire、SiC、GaN、AlN等の基板)の上に、適宜なバッファ層2(例えばIII族窒化物半導体であるGaN、AlGaN、AlN、InGaN、InN、AlInGaN等の単層もしくは複数層)を有し、その上に、GaNからなるチャネル層3(他にも例えばIII族窒化物半導体であるInGaN、InN、AlGaN、AlInGaN等)を有し、その上に、AlGaNからなるバリア層4(他にも例えばIII族窒化物半導体であるGaN、InGaN、AlGaN、AlN、AlInGaN等)を有する。バリア層4は、チャネル層3よりもバンドギャップが大きい。バリア層4がAlGaN、チャネル層3がGaNであるとした場合、AlGaNとGaNが格子定数差から発生するピエゾ電荷と、バンドギャップの差により、バリア層4とチャネル層3との界面13近傍のチャネル層3側に高濃度の二次元電子ガス層5が発生する。
【0017】
バリア層4やチャネル層3等の各種III族窒化物半導体層を有機金属化学気層法(MOCVD法)等のエピタキシャル成長技術を用いて成長させた場合、トリメチルガリウム(TMG)等の有機金属原料に含まれる炭素(C)がIII族窒化物半導体結晶中に取り込まれる。III族窒化物半導体層中のCは、結晶中でアクセプタ準位として作用し、伝導帯のポテンシャルを高め、III族窒化物半導体を高抵抗化させる。しかしながら、チャネル層3は、電子を効率よく流す必要があるため、余計な準位は少ない方が良く、C濃度は低い方が望ましい。具体的には、チャネル層3内のC濃度は、1E+18cm-3未満、可能なら5E+17cm-3以下であることが望ましい。なお、「nE+m」は、n×10mを意味する。また、チャネル層3は、単層である必要はなく、例えば、低C濃度のGaN層の下に低C濃度かつ低Al組成のAlGaN層を組み合わせた、所謂ダブルへテロ構造のような複数層構造でも良い。これにより、キャリアをチャネル層3の上部に閉じ込めることにより、ピンチオフ特性が向上する。
【0018】
バリア層4の上には、ソース電極6及びドレイン電極7がそれぞれ離間して形成されている。ソース電極6及びドレイン電極7は、二次元電子ガス層5、バリア層4、チャネル層3のいずれかにオーミック接触するTi、Al、Mo、Hf等の金属を1つもしくは2つ以上組み合わせた電極からなり、二次元電子ガス層5に電気的に接続されていれば良い。ソース電極6及びドレイン電極7は、例えば、バリア層4の上面上に有っても良く、また、既知のオーミックリセス技術を用いて、二次元電子ガス層5、バリア層4、チャネル層3のいずれかに接していても良い(図示せず)。
【0019】
本半導体積層構造体は、バリア層4の上であって、ソース電極6及びドレイン電極7の間、かつ、ソース電極6及びドレイン電極7から離間して、p-GaNからなるp型の不純物(Mg、Zn、C等)を含み、選択的に形成されたゲート層8(他にも例えばIII族窒化物半導体であるp-InGaN、p-InN、p-AlGaN、p-AlInGaN等)を有する。ゲート層8は、Mgが含まれるp-GaNであっても、C等が含まれるi-GaN(Insulated-GaN)(他にも例えばIII族窒化物半導体であるi-InGaN、i-InGaN、i-InN、i-AlGaN、i-AlInGaN等)であっても、Si等のn型不純物が含まれるn-GaN(他にも例えばIII族窒化物半導体であるn-InGaN、n-AlGaN、n-InN、n-AlInGaN等)であっても良い。また、ゲート層8は、
図1で示すように、ソース電極6及びドレイン電極7の間以外にあってもよい。バリア層4の上の、ソース電極6及びドレイン電極7から離間した領域のゲート層8の上の一部には、ゲート電極9が形成されている。ゲート電極9は、
図1で示すようにゲート層8の上にあっても良く、ゲート層8がない場合にはバリア層4に直接接触する所謂MES(MEtal-Semiconductor)構造(図示せず)を構成していてもよい。MES構造の場合のゲート電極は、バリア層4にショットキ接触する電極となる。また、ゲート電極9下のゲート層8の代わりに、SiNxやSiOx、AlOx等の絶縁膜を挟んだ所謂MIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造やMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)構造でも良い(図示せず)。
【0020】
パワー半導体は安全性の観点から、ノーマリオフ動作が望まれる。ゲート層8がp型のIII族窒化物半導体である場合、ゲート層8直下には、p-n接合が形成され、ゲート電極9にゲート電圧が加わっていない状態で二次元電子ガス層5が空乏化されてノーマリオフ状態となる。その際のバリア層4は、設定するしきい値電圧(Vth)によって異なるが、バリア層4がAlGaNである場合、ゲート層8直下の一部において、バリア層4のAlGaNのAl組成が20%では、AlGaNの膜厚が10nm以上25nm以下の範囲内、望ましくは20nm程度である必要がある。また、その際、ゲート層8がp-GaNである場合、膜厚は50nm以上500nm以下の範囲内、望ましくは100nm程度であれば良く、p型の不純物がMgである場合、ドーピング濃度は1E+19cm-3以上10E+19cm-3以下の範囲内、望ましくは5E+19cm-3であれば良い。尚Mgを5E+19cm-3程度ドーピングしたp-GaNのキャリア濃度は、Mgの活性化率は数%以下と非常に低いために、実質1E+17cm-3以上5E+17cm-3以下程度である。
【0021】
ゲート電極9は、Ti、Ni、Pd、Pt、Au、W、WSi、Ta、TiN、Al、Mo、Hf、Zr等の金属を1つもしくは2つ以上組み合わせた電極であれば良い。ゲート層8がp型である場合、ゲート電極9はゲート層8にオーミック接触してもショットキ接触しても良いが、オーミック接触した方が、ゲート電極の信頼性が高いため、コンタクト抵抗の低い金属であるNi、Pt、Pd、Au、Ti、Cr、In、Sn、Al、等の金属を1つ、もしくは2つ以上組み合わせた電極を用いることが望ましい。
【0022】
本半導体積層構造体は、バリア層4からバッファ層2に掛けてのIII族窒化物半導体層の一部に、不純物を注入して結晶欠陥を引き起こし、不活性化して、高抵抗化させた素子分離領域10を有する。素子分離領域10は、平面視でIII族窒化物半導体装置の活性領域(FET領域)を囲うように形成される(
図11参照)。素子分離領域10に注入する不純物は、III族窒化物半導体層を高抵抗化させる元素を用いる。具体的には、H,He,B,C,N,O,F,Mg,Cl,Ar,Ca,Ti,Cr,Fe,Cu,Zn,As,R等の内一つ以上の元素であることが望ましい。また、素子分離領域10の不純物は、イオン注入法により注入した場合、深さ方向の分布は均一ではなく、不純物濃度の、深さ方向におけるピーク12を持ち、そのピーク12を中心に深さ方向におおよそ正規分布のような分布を持つ。また、この不純物濃度の、深さ方向におけるピーク12は、一つである必要はなく、2つ以上あっても良い。むしろバリア層4等の上面側から、バッファ層2等の深い領域まで均等に高抵抗化させて不活性化するためには、2つ以上の不純物濃度の、深さ方向におけるピーク12を持つことが望ましい。例えば、不純物濃度の、深さ方向におけるピーク12が2つある場合の、不純物濃度の深さ方向の分布は、
図1の(a)に示すような分布になる。それぞれのピークを中心に深さ方向におおよそ正規分布のような分布を持ち、重なる部分は不純物濃度の和となる。尚、
図1の(a)に示される不純物濃度と深さの関係図では、不純物濃度の軸は対数スケールである。素子分離領域10の深さの定義を、不純物濃度が1E+17cm
-3以上となる深さとする場合、ゲート層8の上面からバッファ層2に達するように素子分離領域10を形成するには、素子分離領域10は少なくとも500nm以上の深さ、望ましくは800nm以上の深さが必要である。
【0023】
尚、
図1に示されるように、ゲート層8にも素子分離領域10を形成する場合には、ゲート・ソース(基板)間容量の低減、ゲートリーク電流の低減の観点から、ゲート層8にも不純物を注入して結晶欠陥を引き起こし、不活性化して、高抵抗化させることが望ましい。ゲート・ソース(基板)間容量を低減するとデバイスの高速動作化が可能となる。また、ゲート層8がある場合の不純物の注入は、ゲート層8の上から、バッファ層2まで一括して形成する方が、注入工程が1回になりコスト低減になる。その際の素子分離領域10の不純物の注入深さは、結果としてゲート層8直下でも、それ以外のゲート層8がない領域でも、一括して注入を実施するため、同一の深さとなる(
図1)。ここで、「同一の深さ」とは、一つのプロセスで不純物を注入した場合における、異なる箇所での不純物の注入深さのばらつき範囲内の深さを意味し、具体的には、一方の深さが他方の深さの±20%以下、好ましくは、±10%以下、さらに好ましくは±5%以下である。尚、
図1では、素子分離領域10のゲート層8が、同一断面上にあるように記載しているが、素子分離領域10のゲート層8は同一断面上に有る必要はなく、
図11で示すように、90°回転して配置しても良く、その他の角度に回転して配置しても良い。
【0024】
素子分離領域10のチャネル層3の深さにおける不純物濃度に関しては、不純物の注入量をある程度抑えて、結晶欠陥を減らす必要がある。チャネル層3に結晶欠陥が多すぎると、高電圧動作時や高温動作時にチャネル層3内の結晶欠陥を伝うリーク経路が形成され、ここを流れるリーク電流が経時的に増大し、信頼性不良を引き起こす。従って、チャネル層3内、特にチャネル層3の中でも二次元電子ガス層5が形成されるバリア層4とチャネル層3との界面13近傍のチャネル層3側(つまりチャネル層3の上側)の深さにおける素子分離領域10の不純物の注入量を抑える必要がある。しかしながら、バッファ層2の不純物の注入量を下げすぎると、今度はバッファ層2を介した、もしくは素子分離領域10の、チャネル層3の下部の深さに対応する箇所を介した、ドレインリーク電流(ドレイン・ゲート間、ドレイン・ソース間、ドレイン・基板間のリーク電流の和)やソースリーク電流(ドレイン・ソース間のリーク電流)が増大する。これらの相反する課題を解決するためには、不純物濃度の、深さ方向におけるピーク12を、バリア層4とチャネル層3との界面13より深い位置に設定し、バリア層4とチャネル層3との界面13の深さにおける素子分離領域10の不純物濃度を不純物濃度の、深さ方向におけるピーク12の不純物濃度より下げ、尚且つ、バッファ層2の不純物濃度をある程度確保する。
【0025】
図2は、実施の形態に係る窒化物半導体装置の素子分離領域における不純物濃度と深さとの関係を詳細に説明する図である。不純物濃度の、深さ方向におけるピークの一つ12は、
図2の(b)に示すように、チャネル層3内にあっても良いし、
図2の(c)に示すように、チャネル層3の下のバッファ層2にあっても良いが、
図2の(a)で示すように、バリア層4とチャネル層3との界面13よりも上にあることは望ましくない。
図2の(a)のような分布では、バッファ層2の不純物の注入量が下がりすぎ、バッファ層2を介したドレインリーク電流やソースリーク電流が増大してしまう。
【0026】
次に、本窒化物半導体装置の動作を説明する。窒化物半導体装置がゲート層8にp-GaNを用いたノーマリオフ動作するFETである場合、窒化物半導体装置は、ゲート電極9への印加電圧が0Vではゲート層8直下にp-n接合による空乏層が広がっているため二次元電子ガス層5が存在せず、オフ状態である(
図1)。ソース電極6を接地して、ドレイン電極7に正の印加電圧を付加した状態で、ゲート電極9に正のゲート電圧を印加していくと、ゲート層8直下のp-n接合による空乏層が縮小して、ゲート電圧がしきい値電圧(Vth)を超えるとソース・ドレイン間電流が流れ始め、窒化物半導体装置はオン状態となる(図示せず)。つまりゲート電極9への印加電圧により、ソース・ドレイン間電流を制御することができる。
【0027】
次に、本窒化物半導体装置が奏する効果について説明する。本窒化物半導体装置が備える半導体積層構造体により、高電圧動作時や高温動作時において、バッファ層2を介した、もしくは素子分離領域10のチャネル層3の下部を介した、ドレインリーク電流やソースリーク電流の増大を抑制する。また、チャネル層3内の結晶欠陥を伝う、経時的に増大するリーク電流を抑制し、窒化物半導体装置の信頼性特性を改善することができる。
【0028】
次に、実施の形態の第1の変形例に係る窒化物半導体装置について説明する。
図3は、実施の形態の第1の変形例である、窒化物半導体装置の断面構造(
図3の(b))、及び、素子分離領域における不純物濃度と深さとの関係(
図3の(a))を示す図である。本変形例に係る窒化物半導体装置は、基本的に、
図3の(b)に示されるように、基板1と、基板1の上に形成された高C(カーボン)濃度の窒化物半導体層(高C層)11と、高C層11の上に形成され、高C層11に比べC濃度が低い、窒化物半導体層からなるチャネル層3と、チャネル層3上に直接接触して形成され、チャネル層3と比べてバンドギャップが大きく、窒化物半導体層からなるバリア層4とを含む半導体積層構造体を備える。本実施の形態では、より詳しくは、半導体積層構造体は、下層から、基板1、バッファ層2、高C層11、チャネル層3、二次元電子ガス層5、バリア層4、及び、ゲート層8を含む。半導体積層構造体には、不純物が注入された素子分離領域10が形成されている。素子分離領域10は、
図3の(a)に示されるように、半導体積層構造体の上面側から高C層11に達しており、チャネル層3の深さにおける不純物の最大濃度が、高C層11とチャネル層3との界面14の深さにおける不純物の濃度の70倍以下であることを特徴とする。なお、「高C濃度」とは、相対表現であり、チャネル層でのC濃度よりも高いC濃度を意味する。
【0029】
つまり、バッファ層2とチャネル層3の間に高C濃度のIII族窒化物半導体層である高C層11があり、素子分離領域10は、上面側から高C層11に達しており、チャネル層3の深さにおける最大の不純物濃度が、高C層11とチャネル層3との界面14の深さにおける不純物濃度に比べ、70倍以下であることを特徴とする。なお、本変形例ではIII族窒化物半導体を用いて記述しているが、本発明は、それに限定されるものではない。また本半導体積層構造体は、最小の構成を示しており、これに限定されるものではない。
【0030】
本半導体積層構造体は、
図1~
図2にて示した実施の形態と比べ、バッファ層2とチャネル層3の間に高C層11(他にも例えば高CのIII族窒化物半導体であるGaN、AlGaN、AlN、InGaN、InN、AlInGaN等の単層もしくは複数層)を有する点が異なる。III族窒化物半導体層中のCは、結晶中でアクセプタ準位として作用し、伝導帯のポテンシャルを高め、III族窒化物半導体を高抵抗化させる。そのため、この高C層11は高抵抗である。また、本半導体積層構造体では、
図1~
図2にて示した実施の形態の内、不純物を注入して高抵抗化させた素子分離領域10が、上面側から高C層11に達しており、また、「チャネル層3の深さにおける最大の不純物濃度」が、「高C層11とチャネル層3との界面14の深さにおける不純物濃度」に比べ、70倍以下である点が異なる。
【0031】
チャネル層3は、
図1~
図2にて示した実施の形態で示したように、電子を効率よく流す必要があるため、余計な準位は少ない方が良く、C濃度は低い方が望ましく、具体的には、チャネル層3内のC濃度は、1E+18cm
-3未満、可能なら5E+17cm
-3以下であることが望ましい。それに対して、高C層11は、ドレイン・基板間リーク電流を低減させるために、C濃度は、1E+18cm
-3以上、可能なら1E+19cm
-3以上であることが望ましい。これによりバッファ層2側へのリーク電流を抑制することができる。また、高C層11は、チャネル層3よりもバンドギャップが大きいIII族窒化物半導体を用いても良い。それによりキャリアをチャネル層3に閉じ込めて、ピンチオフ特性が向上される。
【0032】
図4は、実施の形態の第1の変形例に係る窒化物半導体装置の素子分離領域における不純物濃度と深さとの関係を詳細に説明する図である。素子分離領域10の不純物濃度の、深さ方向におけるピークの一つ12は、
図4の(b)に示すように、チャネル層3内にあっても良いし、
図4の(c)に示すように、チャネル層3の下の高C層11にあっても良いが、
図4の(a)で示すように、バリア層4とチャネル層3との界面13よりも上にあることは望ましくない。
図4の(a)のような分布では、高C層11の不純物の注入量が下がりすぎ、高C層11やバッファ層2を介したドレインリーク電流やソースリーク電流が増大してしまう。尚、素子分離領域10の底面は、高C層11でとどまっている必要はなく、
図4の(c)で示すように、バッファ層2まで達していても良く、その場合、さらにドレインリーク電流やソースリーク電流を低減できる。
【0033】
図5は、実施の形態の第1の変形例に係る窒化物半導体装置の特性を示す図である。より詳しくは、
図5は、「チャネル層3の深さにおける最大の不純物濃度」と、「高C層11とチャネル層3との界面14の深さにおける不純物濃度」の比(分子はチャネル層3の深さにおける最大の不純物濃度)と、信頼性寿命との相関を示す。この比が小さい程、「高C層11とチャネル層3との界面14の深さにおける不純物濃度」に比べて、「チャネル層3の深さにおける最大の不純物濃度」が低いことを示す。ここで言う信頼性寿命とは、オフ状態(ゲート層8直下の二次元電子ガス層5の一部が空乏化した状態)での、高温動作(例えば、150℃以上)時、かつ高電圧動作(例えば、ドレイン電圧600V以上)時での加速試験の寿命である。
図5から、この不純物濃度の比が小さい程、信頼性寿命が増加し、70倍以下では大幅に向上することが分かる。これは、チャネル層3への不純物の注入量を抑制することにより、チャネル層3内の結晶欠陥を抑制することができ、チャネル層3内の結晶欠陥を伝う経時的に増大するリーク電流を抑制し、結果、窒化物半導体装置の信頼性特性が改善できたことを示す。
【0034】
本半導体積層構造体を用いることにより、第1の実施の形態の効果と同等の効果を得ることができる。また、本半導体積層構造体では、素子分離領域10が、上面側から高抵抗な高C層11に達しているため、素子分離領域10以外の活性領域が、横方向は素子分離領域10に囲まれ、縦(下)方向は高抵抗な高C層11に囲まれ、全方位が完全に囲まれているため、実施の形態に比べ、さらにバッファ層2や高C層11を介した、もしくは素子分離領域10のチャネル層3の下部を介した、ドレインリーク電流やソースリーク電流を抑制することができる。また、チャネル層3の深さにおける最大の不純物濃度が、高C層11とチャネル層3との界面の深さにおける不純物濃度に比べ、70倍以下であるため、チャネル層3の結晶欠陥を抑制することができ、結果、素子分離領域10内のチャネル層3の結晶欠陥を伝う経時的に増大するリーク電流を抑制し、窒化物半導体装置の信頼性特性を第1の実施の形態に比べ、さらに改善することができる。
【0035】
次に、実施の形態の第2の変形例に係る窒化物半導体装置について説明する。尚、ここでは第1の変形例と同じ図面を用いて説明する。
図3は、実施の形態の第2の変形例である、窒化物半導体装置の断面構造(
図3の(b))、及び、素子分離領域における不純物濃度と深さとの関係(
図3の(a))を示す図である。本変形例に係る窒化物半導体装置は、基本的に、実施の形態の第1の変形例に係る窒化物半導体装置と同様の構成を備える。ただし、窒化物半導体装置が備える素子分離領域10は、
図3の(a)に示されるように、半導体積層構造体の上面側から高C層11に達しており、バリア層4とチャネル層3との界面13の深さにおける不純物の最大濃度が、高C層11とチャネル層3との界面14の深さにおける不純物の濃度の40倍以下であることを特徴とする。
【0036】
つまり、バッファ層2とチャネル層3の間に高C層11があり、素子分離領域10は、上面側から高C層11に達しており、バリア層4とチャネル層3との界面13の深さにおける不純物濃度が、高C層11とチャネル層3との界面14の深さにおける不純物濃度に比べ、40倍以下であることを特徴とする。また、本変形例ではIII族窒化物半導体を用いて記述しているが、本発明は、それに限定されるものではない。また本半導体積層構造体は、最小の構成を示しており、これに限定されるものではない。
【0037】
本半導体積層構造体は、
図1~
図2にて示した実施の形態と比べ、バッファ層2とチャネル層3との間に高C層11(他にも例えば高CのIII族窒化物半導体であるGaN、AlGaN、AlN、InGaN、InN、AlInGaN等の単層もしくは複数層)を有する点が異なる。III族窒化物半導体層中のCは、結晶中でアクセプタ準位として作用し、伝導帯のポテンシャルを高め、III族窒化物半導体を高抵抗化させる。そのため、この高C層11は高抵抗である。また、本半導体積層構造体では、
図1~
図2にて示した実施の形態の内、不純物を注入して高抵抗化させた素子分離領域10が、上面側から高C層11に達しており、また、バリア層4とチャネル層3との界面13の深さにおける不純物濃度が、高C層11とチャネル層3との界面14の深さにおける不純物濃度に比べ、40倍以下である点が異なる。
【0038】
チャネル層3は、
図1~
図2にて示した実施の形態で示したように、電子を効率よく流す必要があるため、余計な準位は少ない方が良く、C濃度は低い方が望ましく、具体的には、チャネル層3内のC濃度は、1E+18cm
-3未満、可能なら5E+17cm
-3以下であることが望ましい。それに対して、高C層11は、ドレイン・基板間リーク電流を低減させるために、C濃度は、1E+18cm
-3以上、可能なら1E+19cm
-3以上であることが望ましい。これによりバッファ層2側へのリーク電流を抑制することができる。また、高C層11は、チャネル層3よりもバンドギャップが大きいIII族窒化物半導体を用いても良い。それによりキャリアをチャネル層3に閉じ込めて、ピンチオフ特性が向上される。
【0039】
素子分離領域10の不純物濃度の深さ方向におけるピークの一つ12は、
図4の(b)に示すように、チャネル層3内にあっても良いし、
図4の(c)に示すように、チャネル層3の下の高C層11にあっても良いが、
図4の(a)で示すように、バリア層4とチャネル層3との界面13よりも上にあることは望ましくない。
図4の(a)のような分布では、高C層11の不純物の注入量が下がりすぎ、高C層11やバッファ層2を介したドレインリーク電流やソースリーク電流が増大してしまう。尚、素子分離領域10の底面は、高C層11でとどまっている必要はなく、
図4の(c)で示すように、バッファ層2まで達していても良く、その場合、さらにドレインリーク電流やソースリーク電流を低減できる。
【0040】
図6は、実施の形態の第2の変形例に係る窒化物半導体装置の特性を示す図である。より詳しくは、
図6は、「バリア層4とチャネル層3との界面13の深さにおける不純物濃度」と、「高C層11とチャネル層3との界面14の深さにおける不純物濃度」の比(分子はバリア層4とチャネル層3との界面13の不純物濃度)と、信頼性寿命との相関を示す。この比が小さい程、「高C層11とチャネル層3との界面14の深さにおける不純物濃度」に比べて、「バリア層4とチャネル層3との界面13の深さにおける不純物濃度」が低いことを示す。尚、ここで言う信頼性寿命とは、オフ状態(ゲート層直下の二次元電子ガス層5の一部が空乏化した状態)での、高温動作(例えば、150℃以上)時、かつ高電圧動作(例えば、ドレイン電圧600V以上)時での加速試験の寿命である。
図6から、この不純物濃度の比が小さい程、信頼性寿命が増加し、40倍以下では大幅に向上することが分かる。これは、チャネル層3、特に、チャネル層3の内、バリア層4に近い領域、つまり電子が流れやすい二次元電子ガス層5領域への不純物の注入量を抑制することにより、この領域の結晶欠陥を抑制することができ、結果、素子分離領域10内のチャネル層3の結晶欠陥を伝う経時的に増大するリーク電流を抑制し、窒化物半導体装置の信頼性特性が改善したことを示す。
【0041】
本半導体積層構造体により、実施の形態の効果と同等の効果を得ることができる。また、本半導体積層構造体では、素子分離領域10が、上面側から高抵抗な高C層11に達しているため、素子分離領域10以外の活性領域が、横方向は素子分離領域10に囲まれ、縦(下)方向は高抵抗な高C層11に囲まれ、全方位が完全に囲まれているため、実施の形態に比べ、さらにバッファ層2や高C層11を介した、もしくは素子分離領域10のチャネル層3の下部を介した、ドレインリーク電流やソースリーク電流を抑制することができる。また、バリア層4とチャネル層3との界面13の深さにおける不純物濃度が、高C層11とチャネル層3との界面の深さにおける不純物濃度に比べ、40倍以下であるため、チャネル層3の内、バリア層4に近い領域の結晶欠陥を抑制することができ、結果、チャネル層3内の結晶欠陥を伝う経時的に増大するリーク電流を効果的に抑制し、窒化物半導体装置の信頼性特性を実施の形態に比べ、さらに改善することができる。
【0042】
次に、実施の形態の第3の変形例に係る窒化物半導体装置について説明する。本半導体積層構造体は、
図1~
図4にて示した実施の形態において、素子分離領域10では、チャネル層3の深さにおける最大の不純物濃度が、6E+19cm
-3以下であることを特徴とする。また、本変形例ではIII族窒化物半導体を用いて記述しているが、本発明は、それに限定されるものではない。また本半導体積層構造体は、最小の構成を示しており、これに限定されるものではない。
【0043】
図7は、実施の形態の第3の変形例に係る窒化物半導体装置の特性を示す図である。より詳しくは、
図7は、素子分離領域10におけるチャネル層3の深さでの最大不純物濃度と、信頼性寿命との相関を示す。
図7から、チャネル層3の深さでの最大不純物濃度が小さい程、信頼性寿命が増加し、最大不純物濃度が6E+19cm
-3以下では大幅に向上することが分かる。これは、チャネル層3への不純物の注入量を抑制することにより、この領域の結晶欠陥を抑制することができ、結果、チャネル層3内の結晶欠陥を伝う経時的に増大するリーク電流を抑制し、窒化物半導体装置の信頼性特性が改善したことを示す。尚、ここで言う信頼性寿命とは、オフ状態(ゲート層直下の一部にキャリアがいない状態)での、高温動作(例えば、150℃以上)時、かつ高電圧動作(例えば、ドレイン電圧600V以上)時での加速試験の寿命である。
【0044】
本半導体積層構造体により、実施の形態、第1の変形例、第2の変形例の効果と同等の効果を得ることができる。また、チャネル層3の深さにおける最大の不純物濃度が、6E+19cm-3以下であるため、チャネル層の結晶欠陥を抑制することができ、結果、チャネル層3内の結晶欠陥を伝う経時的に増大するリーク電流を効果的に抑制し、窒化物半導体装置の信頼性特性を実施の形態、第1の変形例、第2の変形例に比べ、さらに改善することができる。
【0045】
次に、実施の形態の第4の変形例に係る窒化物半導体装置について説明する。本半導体積層構造体は、
図1~
図4にて示した実施の形態において、素子分離領域10では、バリア層4とチャネル層3との界面の深さにおける不純物濃度が、3E+19cm
-3以下であることを特徴とする。また、本変形例ではIII族窒化物半導体を用いて記述しているが、本発明は、それに限定されるものではない。また本半導体積層構造体は、最小の構成を示しており、これに限定されるものではない。
【0046】
図8は、実施の形態の第4の変形例に係る窒化物半導体装置の特性を示す図である。より詳しくは、
図8は、素子分離領域10におけるバリア層4とチャネル層3との界面の深さにおける不純物濃度と、信頼性寿命との相関を示す。
図8から、バリア層4とチャネル層と3の界面の不純物濃度が小さい程、信頼性寿命が増加し、不純物濃度が3E+19cm
-3以下では大幅に向上することが分かる。これは、チャネル層3への不純物の注入量の内、特にチャネル層3の内のバリア層4に近い領域、つまり電子が流れやすい二次元電子ガス層5領域や、バリア層4とチャネル層3との界面への不純物の注入量を抑制することにより、この領域の結晶欠陥を抑制することができ、結果、チャネル層3内の結晶欠陥を伝う経時的に増大するリーク電流を抑制し、窒化物半導体装置の信頼性特性が改善したことを示す。尚、ここで言う信頼性寿命とは、オフ状態(ゲート層直下の一部にキャリアがいない状態)での、高温動作(例えば、150℃以上)時、かつ高電圧動作(例えば、ドレイン電圧600V以上)時での加速試験の寿命である。
【0047】
本半導体積層構造体により、実施の形態、第1の変形例、第2の変形例の効果と同等の効果を得ることができる。また、バリア層4とチャネル層3との界面の深さにおける不純物濃度が、3E+19cm-3以下であるため、チャネル層内の二次元電子ガス層5領域の結晶欠陥を抑制することができ、結果、チャネル層3内の結晶欠陥を伝う経時的に増大するリーク電流を効果的に抑制し、窒化物半導体装置の信頼性特性を実施の形態、第1の変形例、第2の変形例に比べ、さらに改善することができる。
【0048】
次に、実施の形態の第5の変形例に係る窒化物半導体装置について説明する。本半導体積層構造体は、
図3~
図4にて示した実施の形態の変形例において、高C層11とチャネル層3との界面14の深さにおける不純物濃度が、5E+17cm
-3以上であることを特徴とする。また、本変形例ではIII族窒化物半導体を用いて記述しているが、本発明は、それに限定されるものではない。また本半導体積層構造体は、最小の構成を示しており、これに限定されるものではない。
【0049】
図9は、実施の形態の第5の変形例に係る窒化物半導体装置の特性を示す図である。より詳しくは、
図9は、素子分離領域10における高C層11とチャネル層3との界面14の深さにおける不純物濃度と、高温・高電圧下のソースリーク電流との相関を示す。尚、ここで言う高温・高電圧は、例えば、オフ状態、150℃以上、かつドレイン電圧600V以上である。
図9から、高C層11とチャネル層3との界面14の深さにおける不純物濃度が小さい程、ソースリーク電流が増加し、不純物濃度が5E+17cm
-3以下では大幅に増加してしまうことが分かる。これは、素子分離領域10の内、高C層11とチャネル層3との界面14の近傍への不純物の注入量や深さが不十分であるため、素子分離領域10内のチャネル層3の下部領域まで十分に不活性化・高抵抗化されておらず、高温・高電圧下では、素子分離領域10内のチャネル層3の下部領域を経由してソースリーク電流が発生してしまう。従って、高C層11とチャネル層3との界面14の深さにおける不純物濃度は5E+17cm
-3以上であることが望ましい。
【0050】
本半導体積層構造体により、第1の変形例、第2の変形例、第3の変形例、第4の変形例の効果と同等の効果を得ることができる。また、高C層11とチャネル層3との界面14の深さにおける不純物濃度が5E+17cm-3以上であるため、高温・高電圧下でのチャネル層3の下部領域を経由して流れる、ソースリーク電流の発生を抑制し、窒化物半導体装置の信頼性特性をさらに改善することができる。
【0051】
次に、
図1~
図4にて示した窒化物半導体装置の製造方法を示す断面図を
図10に示す。尚、本製造方法は最小の構成を説明しており、これに限定されるものではない。また、本製造方法の順序はこれに限定されるものではない。尚、
図1~2で示した窒化物半導体装置の製造方法は、
図10で示す製造方法において、高C層11をバッファ層2とチャネル層3の間にエピタキシャル成長しない製造方法に相当する(図示せず)。
【0052】
まず、適宜な(111)面のSiの基板1(他にも例えばSapphire、SiC、GaN、AlN等の基板)を用意し、その基板1の上に、既知のMOCVD法等のエピタキシャル成長技術を用いて、適宜なバッファ層2(例えばIII族窒化物半導体であるGaN、AlGaN、AlN、InGaN、InN、AlInGaN等の単層もしくは複数層)を形成し、その上に高C層11(他にも例えば高CのIII族窒化物半導体であるGaN、AlGaN、AlN、InGaN、InN、AlInGaN等の単層もしくは複数層)を形成し、その上に、GaNからなるチャネル層3(他にも例えばIII族窒化物半導体であるInGaN、InN、AlGaN、AlInGaN等の単層もしくは複数層)を形成し、その上に、AlGaNからなるバリア層4(他にも例えばIII族窒化物半導体であるGaN、InGaN、AlGaN、AlN、AlInGaN等)を形成する。その上にp-GaNからなるキャップ層15(他にも例えばIII族窒化物半導体であるp-InGaN、p-InN、p-AlGaN、p-AlInGaN等)を形成する(
図10の(a))。
【0053】
尚、キャップ層15は、Mgが含まれるp-GaNであっても、C等が含まれるi-GaN(Insulated-GaN、他にも例えばIII族窒化物半導体であるi-InGaN、i-InN、i-AlGaN、i-AlInGaN等)であっても、Si等のn型不純物が含まれるn-GaN(他にも例えばIII族窒化物半導体であるn-InGaN、n-InN,n-AlGaN、n-AlInGaN等)であっても良い。チャネル層3は、電子を効率よく流す必要があるため、余計な準位は少ない方が良く、C濃度は低い方が望ましく、具体的には、チャネル層3内のC濃度は、1E+18cm-3未満、可能なら5E+17cm-3以下であることが望ましい。それに対して、高C層11は、高抵抗化させて、ドレイン・基板間リーク電流を低減させるために、C濃度は、1E+18cm-3以上、可能なら1E+19cm-3以上であることが望ましい。III族窒化物半導体層中のC濃度は、成長温度や、成長レート、成長圧力やガス流量等を変えることにより調整する。また、キャップ層15がp型のIII族窒化物半導体である場合、キャップ層15直下には、p-n接合が形成され、ゲート電極9にゲート電圧が加わっていない状態で二次元電子ガス層5が空乏化されてノーマリオフ状態となる。その際のバリア層4は、設定するしきい値電圧(Vth)によって異なるが、バリア層4がAlGaNである場合、ゲート層8直下の一部において、バリア層4のAlGaNのAl組成が20%では、AlGaNの膜厚が10nm以上25nm以下の範囲内、望ましくは20nm程度である必要がある。また、その際、キャップ層15がp-GaNである場合、膜厚は50nm以上500nm以下の範囲内、望ましくは100nm程度であれば良く、p型の不純物がMgである場合、ドーピング濃度は1E+19cm-3以上10E+19cm-3以下の範囲内、望ましくは5E+19cm-3であれば良い。尚Mgを5E+19cm-3程度ドーピングしたp-GaNのキャリア濃度は、Mgの活性化率は数%以下と非常に低いために、実質1E+17cm-3以上5E+17cm-3以下程度である。
【0054】
次に、既知のフォトリソグラフィ技術を用いてレジストパターン16を形成し、既知のイオン注入技術を用いて、キャップ層15の上面側の一部に不純物17を注入して結晶欠陥を引き起こし、不活性化して、高抵抗化させた素子分離領域10を形成する(
図10の(b))。素子分離領域10に注入する不純物17は、III族窒化物半導体層を高抵抗化させる元素を用いる。具体的には、H,He,B,C,N,O,F,Mg,Cl,Ar,Ca,Ti,Cr,Fe,Cu,Zn,As,Ruの内一つ以上の元素であることが望ましい。イオン注入は、注入する不純物17を結晶格子や結晶原子に当てて結晶中に留めさせるために、III族窒化物半導体結晶のc軸方向から10°弱のチルトをつけて注入することが望ましい。また注入深さは、キャップ層15の上面側から、高C層11に達するように(
図1~2で示した構造の製造方法は、バッファ層2に達するように(図示せず))注入エネルギーと注入ドーズ量を調整する。素子分離領域10の深さの定義を、「不純物濃度が1E+17cm
-3以上となる深さ」とする場合、キャップ層15の上面から高C層11に達するように素子分離領域10を形成するには、素子分離領域10は少なくとも500nm以上の深さ、望ましくは800nm以上の深さが必要である。そのためには、かなり高エネルギーで注入する必要があり、100keV以上、望ましくは180keV以上の注入エネルギーが必要である。イオン注入法により不純物17をIII族窒化物半導体層に1回注入した場合、深さ方向の分布は均一ではなく、不純物濃度の、深さ方向におけるピークを持ち、そのピークを中心に深さ方向におおよそ正規分布のような分布を持つ。従ってキャップ層15等の上面側から、高C層11等の深い領域まで均等に高抵抗化させて不活性化するためには、2つ以上の不純物濃度の、深さ方向におけるピークを持つことが望ましい。各、ピークは1回のイオン注入で形成されるため、同じレジストパターン16を用いて、注入エネルギーやドーズ量を変えて、複数回イオン注入を実施する。例として、50keVで1E+14cm
-3、100keVで3E+14cm
-3、200keVで5E+14cm
-3というように3回注入する。
【0055】
続いて、既知の酸素アッシング技術や有機のレジスト除去技術等を用いてレジストパターン16を除去する(図示せず)。次に、既知のフォトリソグラフィ技術を用いてレジストパターン18を形成し、既知のドライエッチング技術を用いてキャップ層15を選択的に除去し、ゲート層8(他にも例えばIII族窒化物半導体であるp-InGaN、p-AlGaN、p-AlInGaN、i-GaN、i-InGaN、i-InGaN、i-AlGaN、i-AlInGaN、n-GaN、n-InGaN、n-AlGaN、n-AlInGaN等)を形成する。(
図10の(c))。
【0056】
続いて、既知の酸素アッシング技術や有機のレジスト除去技術等を用いてレジストパターン18を除去する(図示せず)。
【0057】
続いて、ゲート層8にp型不純物であるMgを含む場合、Mgを活性化させるため、窒素ガス中、800℃の温度において、30分程度の活性化アニールを実施する(図示せず)。この活性化アニールにより、p型元素であるMgを不活性にしている水素の結合を切り、Mgの活性化率が向上し、p型の不純物を含むゲート層8がp-n接合により空乏層を形成し、直下の二次元電子ガス層5を空乏化させる。これにトランジスタのゲートとして作用するゲート層8のしきい値電圧は正になり、ノーマリオフ動作となる。
【0058】
続いて、既知のフォトリソグラフィ技術や蒸着技術やリフトオフ技術、スパッタ技術、ドライエッチング技術等を用いて、ゲート層8から離間してソース電極6及びドレイン電極7を形成する(
図10の(d))。ソース電極6及びドレイン電極7は、二次元電子ガス層5、バリア層4、チャネル層3のいずれかにオーミック接触するTi、Al、Mo、Hf等の金属を1つもしくは2つ以上組み合わせた電極からなり、二次元電子ガス層5に電気的に接続されていれば良い。ソース電極6及びドレイン電極7は、例えば、バリア層4の上面上に形成しても良く、また、既知のオーミックリセス技術(図示せず)を用いて、二次元電子ガス層5、バリア層4、チャネル層3の一部に接していれば良い。ソース電極6及びドレイン電極7は、コンタクト抵抗の低減のためアニール処理を施しても良い。
【0059】
最後に、既知のフォトリソグラフィ技術や蒸着技術やリフトオフ技術、スパッタ技術、ドライエッチング技術等を用いて、ゲート電極9を形成する(
図10の(e))。ゲート電極9は、Ti、Ni、Pd、Pt、Au、W、WSi、Ta、TiN、Al、Mo、Hf、Zr等の金属を1つもしくは2つ以上組み合わせた電極であれば良い。ただしゲート層8がp型である場合、ゲート電極9はゲート層8にオーミック接触してもショットキ接触しても良いが、オーミック接触した方が、ゲート電極の信頼性が高いため、コンタクト抵抗の低い金属であるNi、Pt、Pd、Au、Ti、Cr、In、Sn、Al、等の金属を1つ、もしくは2つ以上組み合わせた電極を用いることが望ましい。
【0060】
次に、
図1~
図4にて示した窒化物半導体装置の平面構造を示す平面図を
図11に示す。
図11は、
図1~
図4を上方向から見た平面図であり、ソース電極6及びドレイン電極7まで形成した、
図10の(d)時点における上から見た平面図である。尚、本説明で用いているゲート層8はp-GaNを用いており、ノーマリオフ動作するFET構造である。本窒化物半導体装置は、最小の構成を示しており、これに限定されるものではない。
【0061】
ゲート層8は、ソース電極6を囲うように形成されている。これによりソース・ドレイン間にノーマリオフするp-n接合をゲート層8直下に形成ことにより、オフ時にソース・ドレイン間のリーク経路を遮断して、ソース・ドレイン間リーク電流を低減している。またゲート層8は、ゲート集約部19で集約されている(図で言う左側に集約)。ゲート集約部19は素子分離領域10のゲートパッドに接続される(図示せず)。素子分離領域10は、ソース電極6、ドレイン電極7及びゲート層8の外側にあるが、集約されたゲート層8(図で言う左側)の端の一部と、ゲート集約部19とは素子分離領域10となっている。ソース電極6及びドレイン電極7は
図11で示すように繰り返し複数セット形成されるが、最も外側の電極(
図11で言う上側と下側)はソース電極6としたほうが、素子分離領域10外との電界分布を緩和できるため信頼性上好ましい。
【0062】
以上、本発明に係る窒化物半導体装置及びその製造方法について、実施の形態及び変形例1~5に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態及び変形例1~5に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態及び変形例1~5に施したものや、実施の形態及び変形例1~5における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、窒化物半導体装置として、特に、半導体装置の高温・高電圧下のドレインリーク電流やソースリーク電流を低減し、信頼性を改善し、もってパワーデバイスの性能を向上させた窒化物半導体装置として、利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 基板
2 バッファ層
3 チャネル層
4 バリア層
5 二次元電子ガス層
6 ソース電極
7 ドレイン電極
8 ゲート層
9 ゲート電極
10 素子分離領域
11 高C層
12 不純物濃度の、深さ方向におけるピーク
13 バリア層とチャネル層との界面
14 チャネル層と高C層との界面
15 キャップ層
16、18 レジストパターン
17 不純物
19 ゲート集約部