(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】電動機及び電気機器
(51)【国際特許分類】
H02K 13/00 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
H02K13/00 S
H02K13/00 X
(21)【出願番号】P 2021545520
(86)(22)【出願日】2020-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2020033755
(87)【国際公開番号】W WO2021049452
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2019164797
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中野 圭策
(72)【発明者】
【氏名】浅野 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】従野 知子
(72)【発明者】
【氏名】遠矢 和雄
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-259582(JP,A)
【文献】特開2017-034741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するロータと、
前記回転軸に取り付けられた整流子と、
前記整流子に接する複数の通電ブラシと、
前記整流子に接する複数の補助ブラシとを備え、
前記整流子は、前記回転軸の周方向に沿って設けられた複数の整流子セグメントを有し、
前記複数の通電ブラシは、第1通電ブラシと第2通電ブラシとを含み、
前記複数の補助ブラシは、第1補助ブラシと第2補助ブラシとを含み、
前記第1補助ブラシは、前記複数の整流子セグメントのうち前記第1通電ブラシが離れた直後の整流子セグメントと第1電位で同電位となる整流子セグメントに接するように配置され、
前記第2補助ブラシは、前記複数の整流子セグメントのうち前記第2通電ブラシが離れた直後の整流子セグメントと第2電位で同電位となる整流子セグメントに接するように配置されて
おり、
前記複数の整流子セグメントには、前記第1電位で同電位となる整流子セグメント及び前記第2電位で同電位となる整流子セグメントの各々が3つ以上含まれており、
前記第2補助ブラシは、前記第2電位で同電位となる3つ以上の整流子セグメントのうち、前記第1補助ブラシが接する整流子セグメントと前記ロータの周方向に沿って最短距離となる整流子セグメントに接している、
電動機。
【請求項2】
前記第1補助ブラシと前記第2補助ブラシとは、ダイオードを介して電気的に接続されている、
請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記複数の整流子セグメントには、同電位となる整流子セグメントがn個ずつ(nは
3以上の自然数)含まれている場合、前記複数の通電ブラシの数は、2(n-1)である、
請求項1
又は2に記載の電動機。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の電動機を用いた電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動機及び電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機は、電気掃除機に搭載される電動送風機等の種々の製品に用いられている。電動機としては、ブラシと整流子とを用いた整流子電動機(整流子モータ)、又は、ブラシと整流子とを用いないブラシレス電動機が知られている。
【0003】
整流子電動機は、例えば、ステータと、ステータの磁力によって回転するロータと、ロータの回転軸(シャフト)に取り付けられた整流子と、整流子に摺接する通電ブラシとを備える。整流子は、ロータの回転軸の周方向に沿って等間隔に設けられた複数の整流子セグメントを有する。複数の整流子セグメントの各々には、ロータのコアに巻回された複数の巻線コイルが電気的に接続されている。
【0004】
整流子電動機では、通電ブラシと整流子とでロータの複数の巻線コイルの各々に通電を行っている。この場合、整流子の回転によって通電される巻線コイルが切り替わる際に、通電ブラシと整流子セグメントとの間にスパークが発生することがある。このようなスパークが発生すると、通電ブラシの磨耗が早まるので、電動機の寿命が低下する。
【0005】
そこで、従来、スパークを抑制して通電ブラシの長寿命化を図るために、スパークによるアーク電圧を吸収する電子部品が接続された補助ブラシを設ける技術が提案されている(例えば特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-179807号公報
【文献】特開2011-4582号公報
【文献】特許第6512981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、補助ブラシと通電ブラシとが近い距離に位置しているので、通電ブラシと補助ブラシとの間にブラシ摩耗粉が堆積し、異常スパークが発生して通電ブラシが摩耗したり、ブラシ摩耗粉が通電ブラシに固着して通電ブラシの移動が阻害されて通電不良になったりするおそれがある。この結果、電動機の長寿命化が阻害されてしまう。また、特許文献1に開示された電動機のように、一対の補助ブラシ同士が離れて配置されていると、一対の補助ブラシに接続される配線の引き回しが複雑になり、電動機の小型化が阻害される。
【0008】
また、特許文献2に開示された技術では、通電ブラシと補助ブラシとが一体に構成されているが、通電ブラシと補助ブラシとの摩耗速度が異なるため、通電ブラシ及び補助ブラシのいずれかが整流子セグメントに接触せずに接触不良が生じるおそれがある。この結果、電動機の長寿命化が阻害されてしまう。
【0009】
また、特許文献3に開示された技術では、補助ブラシと通電ブラシとをシャフトの軸心方向にずらして配置しているので、整流子セグメントがシャフトの軸心方向に長くなる。このため、電動機の小型化が阻害される。
【0010】
このように、補助ブラシを用いた従来の整流子電動機では、長寿命化及び小型化の両立を図ることが難しいという課題がある。
【0011】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、補助ブラシを用いる場合であっても、長寿命化及び小型化の両立を図ることができる電動機及びこれを備えた電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本開示に係る電動機の一態様は、回転軸を有するロータと、前記回転軸に取り付けられた整流子と、前記整流子に接する複数の通電ブラシと、前記整流子に接する複数の補助ブラシとを備え、前記整流子は、前記回転軸の周方向に沿って設けられた複数の整流子セグメントを有し、前記複数の通電ブラシは、第1通電ブラシと第2通電ブラシとを含み、前記複数の補助ブラシは、第1補助ブラシと第2補助ブラシとを含み、前記第1補助ブラシは、前記複数の整流子セグメントのうち前記第1通電ブラシが離れた直後の整流子セグメントと第1電位で同電位となる整流子セグメントに接するように配置され、前記第2補助ブラシは、前記複数の整流子セグメントのうち前記第2通電ブラシが離れた直後の整流子セグメントと第2電位で同電位となる整流子セグメントに接するように配置されている。
【0013】
また、本開示に係る電気機器の一態様は、上記電動機を用いた電気機器である。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、補助ブラシを用いた場合であっても、長寿命化及び小型化の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る電動機の断面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る電動機において、均圧線による整流子セグメント同士の接続関係と通電ブラシ及び補助ブラシの配置例とを模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、整流子の回転により通電ブラシと整流子セグメントとが摺接する様子を説明するための図である。
【
図4】
図4は、比較例に係る電動機において、均圧線による整流子セグメント同士の接続関係と通電ブラシ及び補助ブラシの配置例とを模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、変形例に係る電動機において、均圧線による整流子セグメント同士の接続関係と通電ブラシ及び補助ブラシの配置例とを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0017】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0018】
(実施の形態)
まず、実施の形態に係る電動機1の全体の構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、実施の形態に係る電動機1の断面図である。
図2は、実施の形態に係る電動機1において、均圧線22aによる整流子セグメント31同士の接続関係と通電ブラシ40及び補助ブラシ50の配置例とを模式的に示す図である。
【0019】
電動機1は、整流子電動機であり、
図1及び
図2に示すように、ステータ10と、ステータ10の磁力により回転するロータ20と、ロータ20のシャフト21に取り付けられた整流子30と、整流子30に接する通電ブラシ40と、整流子30に接する補助ブラシ50と、ステータ10及びロータ20を収納するフレーム60とを備える。
【0020】
本実施の形態における電動機1は、直流により駆動する直流電動機(DCモータ)であり、ステータ10として磁石11が用いられているとともに、ロータ20として巻線コイル22を有する電機子が用いられている。
【0021】
なお、本実施の形態における電動機1は、種々の電気機器に用いることができる。例えば、電動機1は、電気掃除機又はエアタオル等に搭載される電動送風機に用いることができる。また、電動機1は、自動車に搭載される電装機器又は電動工具等に用いることもできる。以下、電動機1の各構成部材について詳細に説明する。
【0022】
ステータ10(固定子)は、ロータ20に作用する磁力を発生させる。ステータ10は、周方向に沿ってロータ20とのエアギャップ面にN極とS極とが交互に存在するように構成されている。本実施の形態において、ステータ10は、複数の磁石11(マグネット)によって構成されている。磁石11は、トルクを発生するための磁束を作る界磁石であり、例えばS極及びN極を有する永久磁石である。複数の磁石11の各々は、上面視において、厚さが略一定の円弧形状である。複数の磁石11は、フレーム60に固定されている。
【0023】
ステータ10を構成する複数の磁石11は、周方向に沿ってN極とS極とが交互に均等に存在するように配置されている。したがって、ステータ10(磁石11)が発生する主磁束の向きは、シャフト21の軸心Cの方向と交差する方向である。本実施の形態において、複数の磁石11は、ロータ20を囲むようにして周方向に沿って等間隔で配置されており、ロータ20におけるロータコア23の径方向の外周側に位置している。具体的には、N極及びS極が着磁された複数の磁石11が、N極の磁極中心とS極の磁極中心とが周方向に沿って等間隔となるように配置されている。
【0024】
ロータ20(回転子)は、ステータ10に作用する磁力を発生させる。本実施の形態において、ロータ20が発生する主磁束の向きは、シャフト21の軸心Cの方向と交差する方向である。ロータ20は、回転軸であるシャフト21を有する。また、ロータ20は、電機子であり、巻線コイル22及びロータコア23を有する。本実施の形態において、ロータ20は、インナーロータであり、ステータ10の内側に配置されている。具体的には、ロータ20は、ステータ10を構成する複数の磁石11に囲まれている。また、ロータ20は、ステータ10とエアギャップを介して配置されている。具体的には、ロータ20(ロータコア23)の外周面と各磁石11の内面との間には微小なエアギャップが存在する。
【0025】
シャフト21は、軸心Cを有する回転軸であり、ロータ20が回転する際の中心となる長尺状の棒状部材である。シャフト21の長手方向(延伸方向)は、軸心Cの方向(軸心方向)である。シャフト21は、ベアリング等の軸受けによって回転自在に保持されている。詳細は図示されていないが、例えば、シャフト21の一方の端部である第1端部21aは、フレーム60に固定されたブラケットに保持又はフレーム60に直接保持された第1軸受けに支持され、シャフト21の他方の端部である第2端部21bは、フレーム60に固定されたブラケットに保持又はフレーム60に直接保持された第2軸受けに支持されている。ブラケットは、例えば、フレーム60の開口部を覆うようにしてフレーム60に固定される。
【0026】
シャフト21は、ロータ20の中心に固定されている。シャフト21は、例えば金属棒であり、ロータコア23を貫通する状態でロータコア23に固定されている。例えば、シャフト21は、ロータコア23の中心孔に圧入したり焼き嵌めしたりすることでロータコア23に固定されている。
【0027】
巻線コイル22(ロータコイル)は、電流が流れることでステータ10に作用する磁力を発生するように巻回されている。巻線コイル22は、インシュレータ24を介してロータコア23に巻回されている。インシュレータ24は、絶縁樹脂材料等によって構成されており、巻線コイル22とロータコア23とを電気的に絶縁する。巻線コイル22は、ロータ20のスロットごとに設けられており、整流子30と電気的に接続されている。具体的には、巻線コイル22は、整流子30の整流子セグメント31と電気的に接続される。
【0028】
ロータコア23は、複数の電磁鋼板がシャフト21の長手方向に積層された積層体である。ロータコア23は、例えば、複数のティースを有する。複数のティースの各々に巻線コイル22が巻き回されている。つまり、巻線コイル22は、複数設けられている。なお、ロータコア23は、電磁鋼板の積層体に限るものではなく、磁性材料によって構成されたバルク体であってもよい。
【0029】
整流子30は、シャフト21に取り付けられている。したがって、整流子30は、ロータ20が回転することでシャフト21とともに回転する。本実施の形態において、整流子30は、シャフト21の第1端部21aに取り付けられている。
【0030】
図2に示すように、整流子30は、複数の整流子セグメント31を有する。複数の整流子セグメント31は、シャフト21の周方向に沿って設けられている。具体的には、複数の整流子セグメント31は、シャフト21を囲むように円環状に等間隔で配列されている。本実施の形態において、整流子30は、24個の整流子セグメント31を有する。
【0031】
図1に示すように、複数の整流子セグメント31の各々は、シャフト21の長手方向に延在する整流子片である。複数の整流子セグメント31の各々は、例えば、銅等の金属材料によって構成された導電端子であり、ロータ20の巻線コイル22と電気的に接続されている。一例として、整流子30は、モールド整流子であり、複数の整流子セグメント31が樹脂モールドされた構成になっている。この場合、複数の整流子セグメント31は、表面が露出するようにモールド樹脂32に埋め込まれている。
【0032】
また、複数の整流子セグメント31は、互いに絶縁分離されているが、複数の整流子セグメント31同士は、電気的に接続されている。例えば、
図2には図示されていないが、隣り合う2つの整流子セグメント31同士(セグメント間)は、巻線コイル22によって接続されている。さらに、本実施の形態では、複数の整流子セグメント31のうちの少なくとも2つの整流子セグメント31は、均圧線22aによって互いに同電位(均圧)となるように電気的に接続されている。具体的には、複数の整流子セグメント31には、均圧線22aによって同電位になっている3つ以上の整流子セグメント31が複数組存在している。本実施の形態において、整流子30には24個の整流子セグメント31が設けられており、均圧線22aによって互いに同電位にされた3つの整流子セグメント31が8組存在している。
図2において、整流子セグメント31で囲まれた領域内に示される直線が均圧線22aを示しており、本実施の形態では、8個置きに配置された3つの整流子セグメント31同士が均圧線22aによって同電位となるように接続されている。具体的には、24個の整流子セグメント31において、ある1つの整流子セグメント31は、均圧線22aによって、8つ隣りの整流子セグメント31と16個隣りの整流子セグメント31とに接続されている。
【0033】
一例として、
図2に示すように、24個の整流子セグメント31を整流子30の回転方向に沿って順に1番から24番の番号を付したときに、1番の整流子セグメント31と9番の整流子セグメント31とが均圧線22aによって接続されており、9番の整流子セグメント31と17番の整流子セグメント31とが均圧線22aによって接続されている。また、2番の整流子セグメント31と18番の整流子セグメント31とが均圧線22aとが接続されており、10番の整流子セグメント31と18番の整流子セグメント31とが均圧線22aによって接続されている。また、3番の整流子セグメント31と11番の整流子セグメント31とが均圧線22aによって接続されており、3番の整流子セグメント31と19番の整流子セグメント31とが均圧線22aによって接続されている。なお、その他の整流子セグメント31についても同様である。
【0034】
均圧線22aは、ロータ20のスロットごとに設けられた巻線コイル22(本巻線)と一体に構成されている。つまり、均圧線22aと巻線コイル22とは、途中でカットされることなく連続する1本の導電線である。この場合、均圧線22aは、1本の導電線のうち、2つの巻線コイル22同士を接続する部分(渡り線)の一部であってもよいし、巻線コイル22を巻き始める前の部分であってもよいし、巻線コイル22を巻き終わった後の部分であってもよい。
【0035】
整流子30には、通電ブラシ40及び補助ブラシ50が接している。具体的には、通電ブラシ40及び補助ブラシ50は、整流子30の整流子セグメント31に摺接する。図示されていないが、通電ブラシ40及び補助ブラシ50は、ブラシホルダによって保持されている。例えば、通電ブラシ40及び補助ブラシ50は、ブラシホルダに収納されている。この場合、通電ブラシ40及び補助ブラシ50は、ブラシホルダの内部を摺動する。また、図示されていないが、電動機1には、通電ブラシ40及び補助ブラシ50を整流子30に押し当てるためにコイルバネ又はトーションバネ等のブラシバネが設けられている。ブラシバネは、バネ弾性を利用して通電ブラシ40及び補助ブラシ50に押圧を付与する。通電ブラシ40及び補助ブラシ50の各々は、ブラシバネからの押圧力を受けて常に先端部の表面が整流子30の整流子セグメント31に接触する状態になっている。通電ブラシ40及び補助ブラシ50の各々と整流子セグメント31とが摺れ合う面は摺動面となる。なお、ブラシバネは、1つの通電ブラシ40ごと及び1つの補助ブラシ50ごとに設けられているが、これに限らない。
【0036】
通電ブラシ40及び補助ブラシ50は、導電性を有する導電体である。一例として、通電ブラシ40及び補助ブラシ50は、カーボンによって構成された長尺状の略直方体のカーボンブラシである。具体的には、通電ブラシ40及び補助ブラシ50は、銅等の金属を含むカーボンブラシである。例えば、通電ブラシ40及び補助ブラシ50は、黒鉛粉と銅紛とバインダー樹脂と硬化剤とを混錬した混錬物を粉砕して直方体に圧縮成形して焼成することで作製することができる。
【0037】
通電ブラシ40は、整流子30に接することでロータ20に電力を供給する給電ブラシである。具体的には、通電ブラシ40の先端部分が整流子30の整流子セグメント31に接する。したがって、通電ブラシ40には、電源70から供給される電流が流れる電線が接続されている。例えば、通電ブラシ40は、ピグテール線等の電線を介して、電源70からの電力を受電する電極端子と電気的に接続されている。具体的には、一方の端部が電極端子に接続されたピグテール線の他方の端部が通電ブラシ40の後端部に接続されており、通電ブラシ40が整流子セグメント31に接触することで、ピグテール線を介して通電ブラシ40に供給される電機子電流が整流子セグメント31を介してロータ20の各巻線コイル22に流れる。
【0038】
通電ブラシ40は、隣接する2つの整流子セグメント31を跨って接触する状態が存在するように構成されている。つまり、ロータ20の回転方向における通電ブラシ40の幅の長さは、隣接する2つの整流子セグメント31の間隔の長さよりも大きくなっている。これにより、通電ブラシ40は、2つの整流子セグメント31の間に接続された巻線コイル22を短絡させることができる。
【0039】
例えば、
図3の(a)に示すように、1番と2番の隣り合う2つの整流子セグメント31の両方に1つの通電ブラシ40が接している状態からロータ20の回転により整流子30の回転が進むと、
図3の(b)に示すように、通電ブラシ40は、2番の整流子セグメント31から切り離されて、隣り合う2つの整流子セグメント31のうち回転方向の後方に位置する1番の整流子セグメント31のみに接する状態になる。この結果、1番の整流子セグメント31と2番の整流子セグメント31との配線経路に接続された巻線コイル22を短絡させることができる。
【0040】
図2に示すように、本実施の形態において、通電ブラシ40は、複数設けられている。複数の通電ブラシ40の各々が整流子30に接している。具体的には、複数の通電ブラシ40は、一対の通電ブラシ40として、第1通電ブラシ41と第2通電ブラシ42とを含んでいる。第1通電ブラシ41と第2通電ブラシ42とは、整流子30を挟持するように対向して配置される。つまり、第1通電ブラシ41と第2通電ブラシ42とは、シャフト21の軸心Cを中心に線対称に配置されている。第1通電ブラシ41及び第2通電ブラシ42の各々は、シャフト21の軸心Cと直交する方向(ラジアル方向)で整流子30の整流子セグメント31に接している。第1通電ブラシ41及び第2通電ブラシ42は、電源70に接続されている。本実施の形態において、電源70は、直流電源である。一例として、第1通電ブラシ41は、陽極側ブラシであり、第2通電ブラシ42は、陰極側ブラシである。
【0041】
補助ブラシ50は、通電ブラシ40と整流子セグメント31とが切り離されて発生するスパークを抑制するためのスパーク抑制ブラシである。本実施の形態において、補助ブラシ50には、電源70から供給される電流が流れる電線が接続されていない。つまり、補助ブラシ50には、電源70から供給される電流が直接流れることはなく、通電ブラシ40及び整流子セグメント31を介して電源70から供給される電流の一部が流れる。
【0042】
本実施の形態において、補助ブラシ50は、複数設けられている。複数の補助ブラシ50の各々が整流子30に接している。具体的には、複数の補助ブラシ50は、一対の補助ブラシ50として、第1補助ブラシ51と第2補助ブラシ52とを含んでいる。第1補助ブラシ51及び第2補助ブラシ52の各々が整流子30に接している。
【0043】
第1補助ブラシ51と第2補助ブラシ52とは、ダイオード80を介して電気的に接続されている。つまり、第1補助ブラシ51と第2補助ブラシ52との間の配線経路に、ダイオード80が挿入されている。具体的には、ダイオード80の一方の端子は、第1補助ブラシ51に接続されており、ダイオード80の他方の端子は、第2補助ブラシ52に接続されている。第1補助ブラシ51及び第2補助ブラシ52の各々とダイオード80とは、例えば導電線等の配線によって接続されている。
【0044】
補助ブラシ50は、通電ブラシ40が切り離されてスパークが発生する整流子セグメント31と同電位(均圧)になっている別の整流子セグメント31に接するように配置されている。
【0045】
具体的には、第1補助ブラシ51は、複数の整流子セグメント31のうち複数の通電ブラシ40に含まれる第1通電ブラシ41が離れた直後の整流子セグメント31と第1電位で同電位となる整流子セグメント31(均圧セグメント)に接するように配置されている。本実施の形態において、第1補助ブラシ51は、第1通電ブラシ41が離れた直後の整流子セグメント31と同電位になっている整流子セグメント31のみに接するように配置されている。
【0046】
例えば、
図2に示すように、第1通電ブラシ41が2番の整流子セグメント31から切り離されて1番の整流子セグメント31のみに接している状態において、第1補助ブラシ51は、第1通電ブラシ41が切り離された直後の2番の整流子セグメント31と同電位になっている10番の整流子セグメント31に接するように配置されている。
【0047】
同様に、第2補助ブラシ52は、複数の整流子セグメント31のうち複数の通電ブラシ40に含まれる第2通電ブラシ42が離れた直後の整流子セグメント31と第2電位で同電位となる整流子セグメント31に接するように配置されている。本実施の形態において、第2補助ブラシ52は、第2通電ブラシ42が離れた直後の整流子セグメント31と同電位になっている整流子セグメント31のみに接するように配置されている。
【0048】
例えば、
図2に示すように、第2通電ブラシ42が14番の整流子セグメント31から切り離されて13番の整流子セグメント31のみに接している状態において、第2補助ブラシ52は、第2通電ブラシ42が切り離された直後の14番の整流子セグメント31と同電位となっている6番の整流子セグメント31に接するように配置されている。
【0049】
本実施の形態では、第1通電ブラシ41が1つの整流子セグメント31のみに接すると同時に第2通電ブラシ42が1つの整流子セグメント31のみに接している場合に、第1補助ブラシ51は、第1通電ブラシ41が切り離された直後の整流子セグメント31と同電位になっている整流子セグメント31のみに接すると同時に、第2補助ブラシ52は、第2通電ブラシ42が切り離された直後の整流子セグメント31と同電位になっている整流子セグメント31のみに接している。
【0050】
なお、第1補助ブラシ51が接している整流子セグメント31の第1電位と、第2補助ブラシ52が接している整流子セグメント31の第2電位とは、異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0051】
また、本実施の形態では、第1電位で同電位となる整流子セグメント31及び第2電位で同電位となる整流子セグメント31は、それぞれ3つである。この場合、第1補助ブラシ51と第2補助ブラシ52とが近い位置に配置されるように、第1補助ブラシ51及び第2補助ブラシ52が整流子セグメント31に接している。
【0052】
具体的には、第2補助ブラシ52は、第2電位で同電位となる3つの整流子セグメント31のうち、第1補助ブラシ51が接する整流子セグメント31とロータ20の周方向に沿って最短距離となる整流子セグメント31に接している。また、第1補助ブラシ51は、第1電位で同電位となる3つの整流子セグメント31のうち、第2補助ブラシ52が接する整流子セグメント31とロータ20の周方向に沿って最短距離となる整流子セグメント31に接している。
【0053】
例えば、
図2において、第1通電ブラシ41が離れた直後の2番の整流子セグメント31と同電位になっている整流子セグメント31は、10番の整流子セグメント31と18番の整流子セグメント31とが存在し、また、第2通電ブラシ42が離れた直後の14番の整流子セグメント31と同電位になっている整流子セグメント31は、6番の整流子セグメント31と22番の整流子セグメント31とが存在しているが、第1補助ブラシ51と第2補助ブラシ52との周方向の距離が最短となるように、第1補助ブラシ51及び第2補助ブラシ52が整流子セグメント31に接している。つまり、第1補助ブラシ51は、18番の整流子セグメント31ではなく10番の整流子セグメント31に接しており、第2補助ブラシ52は、22番の整流子セグメント31ではなく6番の整流子セグメント31に接している。
【0054】
なお、第1補助ブラシ51が18番の整流子セグメント31に接し、かつ、第2補助ブラシ52が22番の整流子セグメント31に接するように、第1補助ブラシ51及び第2補助ブラシ52を配置しても、第1補助ブラシ51及び第2補助ブラシ52は最短距離となる。
【0055】
このように構成される通電ブラシ40及び補助ブラシ50は、同一平面上に配置されている。具体的には、通電ブラシ40及び補助ブラシ50は、シャフト21の軸心Cの方向と直交する同一平面上に配置されている。本実施の形態では、第1通電ブラシ41、第2通電ブラシ42、第1補助ブラシ51及び第2補助ブラシ52が、フレーム60内において、シャフト21の軸心Cの方向にずれることなく、同一平面上に配置されている。
【0056】
フレーム60は、ステータ10及びロータ20等の電動機1を構成する部品を収納する筐体(ケース)である。フレーム60は、例えば、円筒形状の円筒部を有する。フレーム60は、例えば、アルミニウム等の金属材料によって構成されている。ステータ10(磁石11)は、フレーム60の内周面に沿ってフレーム60に取り付けられている。なお、フレーム60は、底部を有する有底円筒形状であってもよい。
【0057】
以上のように構成される電動機1では、通電ブラシ40に供給される電流が電機子電流(駆動電流)として整流子30を介してロータ20の巻線コイル22に流れることで、ロータ20に磁束が発生する。そして、このロータ20に生じた磁束とステータ10から生じる磁束との相互作用によって生成された磁気力がロータ20を回転させるトルクとなる。このとき、整流子セグメント31と通電ブラシ40とが接する際の位置関係によって電流が流れる方向が切り替えられる。つまり、転流が生じる。このように、電流が流れる方向が切り替えられることで、ステータ10とロータ20との間に発生する磁力の反発力と吸引力とで一定方向の回転力が生成される。これにより、ロータ20は、シャフト21を回転中心として回転する。
【0058】
次に、本実施の形態に係る電動機1の特徴について、本開示の技術に至った経緯も含めて説明する。
【0059】
整流子電動機では、通電ブラシと整流子セグメントとの間に発生するスパークを抑制して通電ブラシの長寿命化を図るために、通電ブラシとは別に補助ブラシを配置して、この補助ブラシに、スパークによるアーク電圧を吸収する電子部品を電気的に接続することが行われている。
【0060】
例えば、
図4に示される比較例の電動機1Xでは、通電ブラシ40と整流子セグメント31との間に発生するスパークを抑制するために、ダイオード80が接続された一対の補助ブラシ50を設けている。
図4に示される比較例の電動機1Xと上記実施の形態に係る電動機1とは、補助ブラシ50の配置のみが異なる。具体的には、比較例の電動機1Xでは、補助ブラシ50は、通電ブラシ40が離れた直後の整流子セグメント31に接するように配置されている。
【0061】
しかしながら、
図4に示される比較例の電動機1Xの構成では、通電ブラシ40と補助ブラシ50とが近接して配置されているので、通電ブラシ40と補助ブラシ50との間にブラシ摩耗粉が堆積し、異常スパークが発生して通電ブラシ40が摩耗したり、ブラシ摩耗粉が通電ブラシ40に固着して通電ブラシ40の移動が阻害されて通電不良になったりするおそれがある。この結果、電動機1Xの長寿命化が阻害されてしまう。また、
図4に示される比較例の電動機1Xでは、一対の補助ブラシ50が離れて配置されている。つまり、第1補助ブラシ51と第2補助ブラシ52とが離れて配置されている。このため、第1補助ブラシ51及び第2補助ブラシ52に接続される配線の引き回しが複雑になり、電動機1Xの小型化が阻害される。
【0062】
また、通電ブラシと補助ブラシとを一体した電動機も提案されているが、通電ブラシと補助ブラシとでは摩耗速度が異なるため、通電ブラシと補助ブラシとを一体にすると、通電ブラシ及び補助ブラシのいずれかが整流子セグメントに接触せずに接触不良が生じるおそれがある。この結果、電動機の長寿命化が阻害されてしまう。
【0063】
また、補助ブラシと通電ブラシとをシャフトの軸心方向にずらして配置する電動機も提案されているが、このような構成では、整流子セグメントがシャフトの軸心方向に長くなる。このため、電動機の小型化が阻害されてしまう。
【0064】
このように、これまでの技術では、補助ブラシを用いた整流子電動機の長寿命化及び小型化の両立を図ることが難しかった。
【0065】
そこで、本願発明者らが鋭意検討した結果、補助ブラシの配置を工夫することによって、補助ブラシを用いた整流子電動機であっても、長寿命化及び小型化の両立を図ることができることを見出した。
【0066】
具体的には、本実施の形態に係る電動機1では、
図2に示すように、通電ブラシ40が切り離されてスパークが発生する整流子セグメント31と同電位(均圧)になっている別の整流子セグメント31に接するように補助ブラシ50を配置している。
【0067】
より具体的には、第1補助ブラシ51は、複数の整流子セグメント31のうち第1通電ブラシ41が離れた直後の整流子セグメント31と同電位となる整流子セグメント31に接するように配置されている。同様に、第2補助ブラシ52は、複数の整流子セグメント31のうち第2通電ブラシ42が離れた直後の整流子セグメント31と同電位となる整流子セグメント31に接するように配置されている。
【0068】
この構成により、通電ブラシ40が切り離された直後の整流子セグメント31と通電ブラシ40との間にスパークが発生したときに、通電ブラシ40が切り離された直後の整流子セグメント31と同電位になっている整流子セグメント31に補助ブラシ50が接しているので、この補助ブラシ50によってスパークを抑制することができる。つまり、スパークによるアーク電圧を、補助ブラシ50に接続されたダイオード80で吸収することができる。
【0069】
具体的には、第1通電ブラシ41と整流子セグメント31との間に発生するスパークについては、第1通電ブラシ41が切り離された直後の整流子セグメント31と同電位になっている整流子セグメント31に接する第1補助ブラシ51によって抑制することができる。また、第2通電ブラシ42と整流子セグメント31との間に発生するスパークについては、第2通電ブラシ42が切り離された直後の整流子セグメント31と同電位になっている整流子セグメント31に接する第2補助ブラシ52によって抑制することができる。
【0070】
しかも、本実施の形態に係る電動機1では、通電ブラシ40が切り離されてスパークが発生する整流子セグメント31と同電位になっている別の整流子セグメント31に接する補助ブラシ50を用いてスパークを吸収しているので、通電ブラシ40と補助ブラシ50との距離を離すことができる。具体的には、第1通電ブラシ41と第1補助ブラシ51との距離を離すことができるとともに、第2通電ブラシ42と第2補助ブラシ52との距離を離すことができる。
【0071】
このように、補助ブラシ50を用いて通電ブラシ40と整流子セグメント31との間に発生するスパークを抑制しつつ、通電ブラシ40と補助ブラシ50との距離を離して通電ブラシ40と補助ブラシ50とを遠ざけることができる。
【0072】
これにより、通電ブラシ40と補助ブラシ50との間にブラシ摩耗粉が堆積して異常スパークが発生したりブラシ摩耗粉の目詰まりが発生したりすることを回避できるとともに、ブラシ摩耗粉が通電ブラシ40に固着して通電ブラシ40の移動が阻害されて通電不良が発生することを回避できる。また、通電ブラシ40のスパークによって補助ブラシ50が摩耗することも回避できる。したがって、電動機1の長寿命化が阻害されてしまうことを抑制できる。
【0073】
さらに、第1補助ブラシ51と第2補助ブラシ52とを近づけて配置することができるので、第1補助ブラシ51及び第2補助ブラシ52に接続される配線の引き回しを簡素化することができる。これにより、電動機1の小型化を図ることができる。
【0074】
以上、本実施の形態に係る電動機1によれば、補助ブラシ50を用いた場合であっても、長寿命化及び小型化の両立を図ることができる。
【0075】
また、本実施の形態に係る電動機1において、第1補助ブラシ51と第2補助ブラシ52とは、ダイオード80を介して電気的に接続されている。
【0076】
この構成により、通電ブラシ40と整流子セグメント31との間に発生するスパークによるアーク電圧をダイオード80で吸収することができる。これにより、スパークによって通電ブラシ40が摩耗することを効果的に抑制できるので、通電ブラシ40の寿命が低下することを抑制できる。したがって、さらに電動機1の長寿命化を図ることができる。
【0077】
また、本実施の形態に係る電動機1において、第2補助ブラシ52は、第2電位で同電位となる3つの整流子セグメント31のうち、第1補助ブラシ51が接する整流子セグメント31とロータ20の周方向に沿って最短距離となる整流子セグメント31に接している。同様に、第1補助ブラシ51は、第1電位で同電位となる3つの整流子セグメント31のうち、第2補助ブラシ52が接する整流子セグメント31とロータ20の周方向に沿って最短距離となる整流子セグメント31に接している。
【0078】
つまり、第1通電ブラシ41及び第2通電ブラシ42が切り離されてスパークが発生する整流子セグメント31と同電位になっている別の整流子セグメント31に接するように第1補助ブラシ51及び第2補助ブラシ52が配置されているという条件を満たしつつ、第1補助ブラシ51が接する整流子セグメント31と第2補助ブラシ52が接する整流子セグメント31とが最短距離となる位置に配置されている。
【0079】
これにより、第1補助ブラシ51と第2補助ブラシ52とを接続する配線の引き回しを少なくすることができる。したがって、さらに電動機1の小型化を図ることができ、コンパクトなモータを実現することができる。また、本実施の形態における電動機1では、第1補助ブラシ51と第2補助ブラシ52との間の配線が、通電ブラシ40と電源70との間の配線(電源線)を跨がなくてすむので、配線間ショートのリスクを軽減することができる。
【0080】
(変形例)
以上、本開示に係る電動機1について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0081】
例えば、上記実施の形態では、1つの整流子30において、均圧線22aにより同電位になっている整流子セグメントの数は3つであったが、これに限らない。具体的には、同電位になっている整流子セグメントの数は2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。つまり、同電位になっている整流子セグメントの数は複数であればよい。
【0082】
また、上記実施の形態では、通電ブラシ40が2つで、補助ブラシ50が2つであったが、これに限らない。例えば、
図5に示される電動機1Aのように、2つの補助ブラシ50に対して、4つの通電ブラシ40を設けてもよい。具体的には、
図5に示される電動機1Aでは、陽極側ブラシである第1通電ブラシ41が第1の第1通電ブラシ41aと第2の第1通電ブラシ41bとによって構成されており、陰極側ブラシである第2通電ブラシ42が第1の第2通電ブラシ42aと第2の第2通電ブラシ42bとによって構成されている。
図5に示される電動機1Aは、
図2に示される電動機1に対して、第2の第1通電ブラシ41bと第2の第2通電ブラシ42bとが追加された構成になっている。なお、通電ブラシ40の数は、4つに限らず、5つ以上であってもよい。
【0083】
このように、通電ブラシ40が4本以上の場合であっても、補助ブラシ50の数を2つで構成することができる。つまり、本開示の技術を用いることで、通電ブラシ40の数が補助ブラシ50の数よりも多くすることができる。以下、このことについて説明する。
【0084】
通電ブラシの数を倍にすると1つの通電ブラシで発生するスパークが半減するので、通電ブラシの寿命が飛躍的に伸びる。しかしながら、補助ブラシを用いた従来の電動機の構成では、通電ブラシの数が増えると、補助ブラシ及びダイオードの数も増やさないといけなければならなかった。これに対して、
図5に示される電動機1Aは、一対の補助ブラシ50の間にダイオード80を接続する構成ではあるが、通電ブラシ40が切り離されてスパークが発生する整流子セグメント31と同電位になっている別の整流子セグメント31に接するように補助ブラシ50を配置しているので、長寿命化のために通電ブラシ40の数を増やしたとしても、補助ブラシ50及びダイオード80の数は増やさなくてもよい。これにより、補助ブラシ50及びダイオード80の数の増加に伴って電動機が大型化することを抑制できる。つまり、さらに長寿命化を図りつつも、小型の電動機を実現することができる。
【0085】
なお、通電ブラシ40の数と補助ブラシ50の数との組み合わせについては、
図5に示される場合に限らない。具体的には、複数の整流子セグメント31に同電位となる整流子セグメントがn個ずつ(nは2以上の自然数)含まれている場合、複数の通電ブラシ40の数は、2(n-1)であればよい。この場合、nは、3以上であるとよい(n≧3)。つまり、同電位となる整流子セグメント31は、3つ以上であるとよい。この場合、通電ブラシ40の数が2(n-1)としても、補助ブラシ50の数は2である方がよい。つまり、通電ブラシ40が増えても(nが増加しても)、補助ブラシ50は2本のみとした方がよい(増えない方がよい)。
【0086】
また、上記実施の形態において、ステータ10は、磁石11によって構成されていたが、これに限らない。例えば、ステータ10は、ステータコアとステータコアに巻回された巻線コイルとによって構成されていてもよい。
【0087】
また、上記実施の形態において、ロータ20は、コアを有していたが、これに限らない。つまり、上記実施の形態における電動機1は、コアを有さないコアレスモータに適用することもできる。例えば、上記実施の形態における電動機1は、ステータ10及びロータ20の磁束がシャフト21の軸心Cの方向に発生する扁平型のフラットモータであるコアレスモータに適用することができる。
【0088】
その他、上記実施の形態に対して当業者が思い付く各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本開示は、電気掃除機又は自動車等をはじめとして、電動機が搭載される種々の製品に利用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1、1A 電動機
10 ステータ
11 磁石
20 ロータ
21 シャフト
21a 第1端部
21b 第2端部
22 巻線コイル
22a 均圧線
23 ロータコア
24 インシュレータ
30 整流子
31 整流子セグメント
32 モールド樹脂
40 通電ブラシ
41 第1通電ブラシ
41a 第1の第1通電ブラシ
41b 第2の第1通電ブラシ
42 第2通電ブラシ
42a 第1の第2通電ブラシ
42b 第2の第2通電ブラシ
50 補助ブラシ
51 第1補助ブラシ
52 第2補助ブラシ
60 フレーム
70 電源
80 ダイオード