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特許7584070寝相判定装置、寝相判定方法、判定装置、判定方法、およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】寝相判定装置、寝相判定方法、判定装置、判定方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20241108BHJP
   A61B 5/113 20060101ALI20241108BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A61B5/11 110
A61B5/113
A61B5/107 300
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023179121
(22)【出願日】2023-10-17
(62)【分割の表示】P 2019039710の分割
【原出願日】2019-03-05
(65)【公開番号】P2023179727
(43)【公開日】2023-12-19
【審査請求日】2023-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2018104098
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】井上 謙一
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-207935(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136400(WO,A1)
【文献】特表2015-533567(JP,A)
【文献】米国特許第7567200(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/11-5/113
A61B 5/107
A61B 5/08
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの非接触センサを用いて対象者を測定することにより得られた測定結果を前記少なくとも1つの非接触センサから受信する受信器と、
前記測定結果から前記対象者の呼吸信号を抽出する抽出回路と、
前記呼吸信号のレベルに関する基準情報を保持しているメモリと、
前記対象者の前記呼吸信号のレベルと前記基準情報との比較に基づいて前記対象者の寝相を判定する判定回路と、
前記測定結果から前記対象者の回転動作を検知する回転検知回路と、を備え、
前記判定回路は、さらに、前記呼吸信号のレベル及び前記回転動作の検知結果に基づいて、前記対象者の異常の有無を判定する、
寝相判定装置。
【請求項2】
前記抽出回路は、前記測定結果によって表される前記対象者の周期的な体動を前記呼吸信号として抽出する、
請求項1に記載の寝相判定装置。
【請求項3】
前記基準情報は前記呼吸信号のレベルのしきい値であり、
前記判定回路は、
前記対象者の前記呼吸信号のレベルが前記しきい値以上のとき、前記対象者の寝相が仰向けであると判定し、
前記対象者の前記呼吸信号のレベルが前記しきい値未満のとき、前記対象者の寝相が仰向け以外であると判定する、
請求項1または2に記載の寝相判定装置。
【請求項4】
前記対象者の寝相が仰向けであると判定されたときに抽出された前記対象者の前記呼吸信号を用いて新たな基準情報を生成し、前記メモリに保持されている前記基準情報を前記新たな基準情報で更新する更新回路をさらに備える、
請求項3に記載の寝相判定装置。
【請求項5】
前記回転検知回路は、前記測定結果に含まれるドップラースペクトルから前記対象者の回転動作を検知する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の寝相判定装置。
【請求項6】
少なくとも1つの非接触センサを用いて対象者を測定することにより得られた測定結果を前記少なくとも1つの非接触センサから受信する受信器と、
前記測定結果から前記対象者の呼吸信号を抽出する抽出回路と、
前記呼吸信号のレベルに関する基準情報を保持しているメモリと、
前記対象者の前記呼吸信号のレベルと前記基準情報との比較に基づいて前記対象者の寝相を判定する判定回路と、を備え、
前記少なくとも1つの非接触センサは複数の非接触センサを含み、前記複数の非接触センサは前記対象者に対して互いに異なる方向に設けられ、
前記受信器は、前記複数の非接触センサの各々から前記測定結果を受信し、
前記抽出回路は、前記測定結果から前記複数の非接触センサごとに前記対象者の呼吸信号を抽出し、
前記基準情報は、前記呼吸信号のレベルの前記複数の非接触センサ間での関係に関する基準情報であり、
前記判定回路は、前記対象者の前記呼吸信号のレベルの前記複数の非接触センサ間での関係と前記基準情報との比較に基づいて、前記対象者の寝相を判定する、
寝相判定装置。
【請求項7】
前記基準情報は、仰向け、横向き、及びうつ伏せを含む複数の寝相の各々に対応して、前記呼吸信号のレベルの前記複数の非接触センサ間での関係を表し、
前記判定回路は、前記基準情報との比較に基づいて、前記対象者の寝相が、前記複数の寝相のうちいずれであるかを判定する、
請求項6に記載の寝相判定装置。
【請求項8】
前記対象者の寝相が仰向け以外の寝相であると判定された場合、前記寝相の判定結果をユーザーに通知する通知器をさらに備える、
請求項1から7のいずれか1項に記載の寝相判定装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの非接触センサはドップラーレーダーである、
請求項1から8のいずれか1項に記載の寝相判定装置。
【請求項10】
コンピュータが実行する寝相判定方法であって、
少なくとも1つの非接触センサを用いて対象者を測定することにより得られた測定結果を前記少なくとも1つの非接触センサから受信すること、
前記測定結果から前記対象者の呼吸信号を抽出すること、
前記呼吸信号のレベルに関する基準情報を参照して、前記対象者の前記呼吸信号のレベルと前記基準情報との比較に基づいて前記対象者の寝相を判定すること、
前記測定結果から前記対象者の回転動作を検知すること、及び、
前記呼吸信号のレベル及び前記回転動作の検知結果に基づいて、前記対象者の異常の有無を判定すること、
を含む寝相判定方法。
【請求項11】
前記回転動作は、前記測定結果に含まれるドップラースペクトルから検知される、
請求項10に記載の寝相判定方法。
【請求項12】
寝相を判定するためのコンピュータが実行可能なプログラムであって、
少なくとも1つの非接触センサを用いて対象者を測定することにより得られた測定結果を前記少なくとも1つの非接触センサから受信すること、
前記測定結果から前記対象者の呼吸信号を抽出すること、
前記呼吸信号のレベルに関する基準情報を参照して、前記対象者の前記呼吸信号のレベルと前記基準情報との比較に基づいて前記対象者の寝相を判定すること、
前記測定結果から前記対象者の回転動作を検知すること、及び、
前記呼吸信号のレベル及び前記回転動作の検知結果に基づいて、前記対象者の異常の有無を判定すること、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項13】
前記回転動作は、前記測定結果に含まれるドップラースペクトルから検知される、
請求項12に記載のプログラム。
【請求項14】
コンピュータが実行する寝相判定方法であって、
少なくとも1つの非接触センサを用いて対象者を測定することにより得られた測定結果を前記少なくとも1つの非接触センサから受信すること、
前記測定結果から前記対象者の呼吸信号を抽出すること、及び、
前記呼吸信号のレベルに関する基準情報を参照して、前記対象者の前記呼吸信号のレベルと前記基準情報との比較に基づいて前記対象者の寝相を判定すること、を含み、
前記少なくとも1つの非接触センサは複数の非接触センサを含み、前記複数の非接触センサは前記対象者に対して互いに異なる方向に設けられ、
前記受信することでは、前記複数の非接触センサの各々から前記測定結果を受信し、
前記抽出することでは、前記測定結果から前記複数の非接触センサごとに前記対象者の呼吸信号を抽出し、
前記基準情報は、前記呼吸信号のレベルの前記複数の非接触センサ間での関係に関する基準情報であり、
前記判定することでは、前記対象者の前記呼吸信号のレベルの前記複数の非接触センサ間での関係と前記基準情報との比較に基づいて、前記対象者の寝相を判定する、
寝相判定方法。
【請求項15】
寝相を判定するためのコンピュータが実行可能なプログラムであって、
少なくとも1つの非接触センサを用いて対象者を測定することにより得られた測定結果を前記少なくとも1つの非接触センサから受信すること、
前記測定結果から前記対象者の呼吸信号を抽出すること、及び、
前記呼吸信号のレベルに関する基準情報を参照して、前記対象者の前記呼吸信号のレベルと前記基準情報との比較に基づいて前記対象者の寝相を判定すること、
をコンピュータに実行させ、
前記少なくとも1つの非接触センサは複数の非接触センサを含み、前記複数の非接触センサは前記対象者に対して互いに異なる方向に設けられ、
前記受信することでは、前記複数の非接触センサの各々から前記測定結果を受信することをコンピュータに実行させ
前記抽出することでは、前記測定結果から前記複数の非接触センサごとに前記対象者の呼吸信号を抽出することをコンピュータに実行させ
前記基準情報は、前記呼吸信号のレベルの前記複数の非接触センサ間での関係に関する基準情報であり、
前記判定することでは、前記対象者の前記呼吸信号のレベルの前記複数の非接触センサ間での関係と前記基準情報との比較に基づいて、前記対象者の寝相を判定することをコンピュータに実行させる
プログラム。
【請求項16】
少なくとも1つの非接触センサを用いて対象者を測定することにより得られた測定結果を前記少なくとも1つの非接触センサから受信する受信器と、
前記測定結果から前記対象者の呼吸信号を抽出する抽出回路と、
前記測定結果から前記対象者の回転動作を検知する回転検知回路と、
前記呼吸信号のレベル及び前記回転動作の検知結果に基づいて、前記対象者の異常の有無を判定する判定回路と、を備える
判定装置。
【請求項17】
コンピュータが実行する判定方法であって、
少なくとも1つの非接触センサを用いて対象者を測定することにより得られた測定結果を前記少なくとも1つの非接触センサから受信すること、
前記測定結果から前記対象者の呼吸信号を抽出すること、
前記測定結果から前記対象者の回転動作を検知すること、及び、
前記呼吸信号のレベル及び前記回転動作の検知結果に基づいて、前記対象者の異常の有無を判定すること、
を含む判定方法。
【請求項18】
コンピュータが実行可能なプログラムであって、
少なくとも1つの非接触センサを用いて対象者を測定することにより得られた測定結果を前記少なくとも1つの非接触センサから受信すること、
前記測定結果から前記対象者の呼吸信号を抽出すること、
前記測定結果から前記対象者の回転動作を検知すること、及び、
前記呼吸信号のレベル及び前記回転動作の検知結果に基づいて、前記対象者の異常の有無を判定すること、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触センサを用いた寝相判定装置、寝相判定方法、記録媒体、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
乳幼児が睡眠中に突然死するSIDS(Sudden Infant Death Syndrome:突然死症候群)と呼ばれる病気がある。SIDSの発症リスクを低減するために、乳幼児をうつ伏せに寝かせないことが有効であることが分かっている。例えば、保育所では、乳幼児の午睡の際、保育士が乳幼児を定期的に監視することで、SIDSのリスクを低減している。
【0003】
対象者の寝相を機械的に判定する技術の一例として、特許文献1には、寝具の下、内部、または表面に所定の分布で設置された感圧素子が出力する複数の荷重信号に基づいて、就寝者の呼吸信号、寝姿、および体重を求める生体モニタシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-070256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、取り扱いの簡便性に優れた寝相判定装置、寝相判定方法、記録媒体、およびプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る寝相判定装置は、少なくとも1つの非接触センサを用いて対象者を測定することにより得られた測定結果を前記少なくとも1つの非接触センサから受信する受信器と、前記測定結果から前記対象者の呼吸信号を抽出する抽出回路と、前記呼吸信号のレベルに関する基準情報を保持しているメモリと、前記対象者の前記呼吸信号のレベルと前記基準情報との比較に基づいて前記対象者の寝相を判定する判定回路と、前記測定結果から前記対象者の回転動作を検知する回転検知回路と、を備え、前記判定回路は、さらに、前記呼吸信号のレベル及び前記回転動作の検知結果に基づいて、前記対象者の異常の有無を判定する。
【0007】
本開示の別の一態様に係る寝相判定装置は、少なくとも1つの非接触センサを用いて対象者を測定することにより得られた測定結果を前記少なくとも1つの非接触センサから受信する受信器と、前記測定結果から前記対象者の呼吸信号を抽出する抽出回路と、前記呼吸信号のレベルに関する基準情報を保持しているメモリと、前記対象者の前記呼吸信号のレベルと前記基準情報との比較に基づいて前記対象者の寝相を判定する判定回路と、を備え、前記少なくとも1つの非接触センサは複数の非接触センサを含み、前記複数の非接触センサは前記対象者に対して互いに異なる方向に設けられ、前記受信器は、前記複数の非接触センサの各々から前記測定結果を受信し、前記抽出回路は、前記測定結果から前記複数の非接触センサごとに前記対象者の呼吸信号を抽出し、前記基準情報は、前記呼吸信号のレベルの前記複数の非接触センサ間での関係に関する基準情報であり、前記判定回路は、前記対象者の前記呼吸信号のレベルの前記複数の非接触センサ間での関係と前記基準情報との比較に基づいて、前記対象者の寝相を判定する。
【0008】
なお、本開示の全般的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の寝相判定装置によれば、呼吸信号のレベルが対象者の寝相に応じて異なることを利用して、呼吸信号のレベルと基準情報との比較に基づいて対象者の寝相を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態1に係る寝相判定装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、実施の形態1に係る非接触センサの測定結果の一例を示す図である。
図3図3は、実施の形態1に係る測定状況の一例を説明する概念図である。
図4図4は、実施の形態1に係る寝相判定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、実施の形態1に係る測定結果の一例を示すグラフである。
図6A図6Aは、実施の形態1に係る寝相の一例を説明する概念図である。
図6B図6Bは、実施の形態1に係る寝相の一例を説明する概念図である。
図7図7は、実施の形態1に係る寝相に応じた呼吸信号の一例を示すグラフである。
図8図8は、実施の形態2に係る寝相判定装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図9図9は、実施の形態2に係る寝相判定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、実施の形態3に係る寝相判定装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図11図11は、実施の形態3に係る寝相判定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図12A図12Aは、実施の形態3に係る回転検知の考え方の一例を説明する概念図である。
図12B図12Bは、実施の形態3に係る回転検知の考え方の一例を説明する概念図である。
図13図13は、実施の形態4に係る寝相判定装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図14図14は、実施の形態4に係る寝相判定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図15A図15Aは、実施の形態4に係る寝相に応じた呼吸信号のレベルの複数の非接触センサ間での関係の一例を説明する概念図である。
図15B図15Bは、実施の形態4に係る寝相に応じた呼吸信号のレベルの複数の非接触センサ間での関係の一例を説明する概念図である。
図15C図15Cは、実施の形態4に係る寝相に応じた呼吸信号のレベルの複数の非接触センサ間での関係の一例を説明する概念図である。
図15D図15Dは、実施の形態4に係る寝相に応じた呼吸信号のレベルの複数の非接触センサ間での関係の一例を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見)
特許文献1の生体モニタシステムでは、寝具の下、内部、または表面に所定の分布で感圧素子を設置するため、感圧素子は、直接または寝具を介して対象者と接触する。そのため、特許文献1の生体モニタシステムを保育所における乳幼児の寝相の監視に用いた場合、対象者の快適性を損なう懸念があり、また、感圧素子の消耗による取り換え及び日常的な消毒などによる保育士及びスタッフの負担が大きい。
【0012】
電波レーダー及び超音波ソナーなどの非接触センサを用いれば対象者の位置及び動きを非接触で測定することは可能であるが、そのような非接触センサの測定結果から対象者の寝相を判定する有効な技術は、従来知られていない。
【0013】
本発明者は、非接触センサの測定結果から抽出される呼吸信号のレベルが、対象者の寝相に応じて異なることを見出した。本発明者は、この知見に基づき、非接触センサで対象者を測定して得た測定結果から対象者の寝相を判定する寝相判定装置、寝相判定方法、記録媒体、およびプログラムを提案する。
【0014】
本開示の一態様に係る寝相判定装置は、少なくとも1つの非接触センサを用いて対象者を測定することにより得られた測定結果を前記少なくとも1つの非接触センサから受信する受信器と、前記測定結果から前記対象者の呼吸信号を抽出する抽出回路と、前記呼吸信号のレベルに関する第1の基準情報を保持しているメモリと、前記対象者の前記呼吸信号のレベルと前記第1の基準情報との第1の比較に基づいて前記対象者の寝相を判定し、前記寝相の判定結果を出力する判定回路と、を備える。
【0015】
このような構成によれば、呼吸信号のレベルが対象者の寝相に応じて異なることを利用して、抽出された呼吸信号のレベルと第1の基準情報との比較に基づいて対象者の寝相を判定できる。呼吸信号は、非接触センサによる対象者の測定結果から抽出されるので、接触センサを用いる場合と比べて、対象者の快適性が損なわれることがなく、また、感圧素子の消耗による取り換え及び日常的な消毒などによるユーザーの負担を軽減できる。その結果、取り扱いの簡便性に優れた寝相判定装置が得られる。
【0016】
また、前記抽出回路は、前記測定結果によって表される前記対象者の周期的な体動を前記呼吸信号として抽出してもよい。
【0017】
このような構成によれば、測定結果の時系列から、ローパスフィルタ及びトレンド除去フィルタなどの具体的な手法を用いて、対象者の呼吸信号を容易に抽出することができる。
【0018】
また、前記第1の基準情報は前記呼吸信号のレベルのしきい値であり、前記判定回路は、前記対象者の前記呼吸信号のレベルが前記しきい値以上のとき、前記対象者の寝相が仰向けであると判定し、前記対象者の前記呼吸信号のレベルが前記しきい値未満のとき、前記対象者の寝相が仰向け以外であると判定してもよい。
【0019】
このような構成によれば、対象者が仰向けに寝ているときの呼吸信号のレベルが、対象者が仰向け以外の寝相で寝ているときの呼吸信号のレベルに比べて大きいことを利用して、抽出された呼吸信号のしきい値との比較により、対象者の寝相を判定できる。
【0020】
また、前記対象者の寝相が仰向けであると判定されたときに抽出された前記対象者の前記呼吸信号を用いて新たな第1の基準情報を生成し、前記メモリに保持されている前記第1の基準情報を前記新たな第1の基準情報で更新する更新回路をさらに備えてもよい。
【0021】
このような構成によれば、対象者固有の呼吸信号のレベルおよび呼吸信号のレベルの時間変動に応じて第1の基準情報が更新されるので、対象者の寝相をより高精度かつ安定的に判定できる。
【0022】
また、前記測定結果から前記対象者の回転動作を検知する回転検知器をさらに備え、前記判定回路は、前記第1の比較及び前記回転動作の検知結果に基づいて、前記対象者の寝相を判定してもよい。
【0023】
このような構成によれば、回転動作の検知により対象者に寝返りなどの寝相の変化があったか否かを認識して、対象者の寝相をより正確に判定することができる。これにより、例えば、回転動作を伴わずに呼吸信号のレベルが低下した場合など、対象者の呼吸停止などの異常が疑われる事態を、寝相の変化とは区別して検出することも可能になる。
【0024】
また、前記少なくとも1つの非接触センサは複数の非接触センサを含み、前記複数の非接触センサは前記対象者に対して互いに異なる方向に設けられ、前記受信器は、前記複数の非接触センサの各々から前記測定結果を受信し、前記抽出回路は、前記測定結果から前記複数の非接触センサごとに前記対象者の呼吸信号を抽出し、前記メモリは、前記呼吸信号のレベルの前記複数の非接触センサ間での関係に関する第2の基準情報をさらに保持しており、前記判定回路は、前記対象者の前記呼吸信号のレベルの前記複数の非接触センサ間での関係と前記第2の基準情報との第2の比較に基づいて、前記対象者の寝相を判定してもよい。
【0025】
このような構成によれば、呼吸信号のレベルの複数の非接触センサ間での関係が対象者の寝相に応じて異なることを利用して、抽出された呼吸信号のレベルの複数の非接触センサ間での関係と第2の基準情報との比較に基づいて対象者の寝相をより正確に判定できる。
【0026】
また、前記第2の基準情報は、仰向け、横向き、及びうつ伏せを含む複数の寝相の各々に対応して、前記呼吸信号のレベルの前記複数の非接触センサ間での関係を表し、前記判定回路は、前記第2の比較に基づいて、前記対象者の寝相が、前記複数の寝相のうちいずれであるかを判定してもよい。
【0027】
このような構成において、例えば、対象者の真上および斜め上にある非接触センサの測定結果から抽出される呼吸信号のレベルは、対象者の仰向け、横向き、うつ伏せを含む複数の寝相の各々において特有の大小関係を示す。このことを利用して、抽出された呼吸信号のレベルに成り立つ大小関係に応じて、対象者の寝相を判定できる。
【0028】
また、前記対象者の寝相が仰向け以外の寝相であると判定された場合、前記判定結果をユーザーに通知する通知器をさらに備えてもよい。
【0029】
このような構成によれば、対象者の寝相をユーザーに通知することにより、寝相に応じた適切な対処を促すことができる。例えば、保育所にあっては、乳幼児が仰向け以外の寝相となっていることを保育士に通知することにより、乳幼児をSIDSの発症リスクがより低い仰向けの寝相に戻すよう促すことができる。
【0030】
また、前記少なくとも1つの非接触センサはドップラーレーダーであってもよい。
【0031】
このような構成によれば、ドップラーレーダーを用いることにより、対象者を安定的に測定できるので、寝相の判定性能に優れた寝相判定装置が得られる。
【0032】
本開示の一態様に係る寝相判定方法は、少なくとも1つの非接触センサを用いて対象者を測定することにより得られた測定結果を前記少なくとも1つの非接触センサから受信すること、前記測定結果から前記対象者の呼吸信号を抽出すること、及び前記呼吸信号のレベルに関する基準情報を参照して、前記対象者の前記呼吸信号のレベルと前記基準情報との比較に基づいて前記対象者の寝相を判定し、前記寝相の判定結果を出力すること、を含む。
【0033】
このような方法によれば、呼吸信号のレベルが対象者の寝相に応じて異なることを利用して、呼吸信号のレベルと基準情報との比較に基づいて対象者の寝相を判定できる。呼吸信号は、非接触センサによる対象者の測定結果から抽出されるので、接触センサを用いる場合と比べて、対象者の快適性が損なわれることがなく、また、感圧素子の消耗による取り換え及び日常的な消毒などによるユーザーの負担を軽減できる。その結果、作業の簡便性に優れた寝相判定方法が得られる。
【0034】
本開示の一態様に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、寝相を判定するためのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、前記プログラムが前記コンピュータによって実行されるときに、少なくとも1つの非接触センサを用いて対象者を測定することにより得られた測定結果を前記少なくとも1つの非接触センサから受信すること、前記測定結果から前記対象者の呼吸信号を抽出すること、及び前記呼吸信号のレベルに関する基準情報を参照して、前記対象者の前記呼吸信号のレベルと前記基準情報との比較に基づいて前記対象者の寝相を判定し、前記寝相の判定結果を出力すること、が実行される。
【0035】
本開示の一態様に係るプログラムは、寝相を判定するためのコンピュータが実行可能なプログラムであって、少なくとも1つの非接触センサを用いて対象者を測定することにより得られた測定結果を前記少なくとも1つの非接触センサから受信すること、前記測定結果から前記対象者の呼吸信号を抽出すること、及び前記呼吸信号のレベルに関する基準情報を参照して、前記対象者の前記呼吸信号のレベルと前記基準情報との比較に基づいて前記対象者の寝相を判定し、前記寝相の判定結果を出力すること、をコンピュータに実行させる。
【0036】
このような構成によれば、上述と同様の効果を有する寝相判定方法を、コンピュータに実行させることができる。
【0037】
本開示において、回路、ユニット、装置、部材または部の全部または一部、またはブロック図における機能ブロックの全部または一部は、例えば、半導体装置、半導体集積回路(IC)、またはLSI(large scale integration)を含む1つまたは複数の電子回路によって実行され得る。LSIまたはICは、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップを組み合わせて構成されてもよい。例えば、記憶素子以外の機能ブロックは、1つのチップに集積されてもよい。ここでは、LSIまたはICと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(very large scale integration)、もしくはULSI(ultra large scale integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、Field Programmable Gate Array(FPGA)、またはLSI内部の接合関係の再構成またはLSI内部の回路区画のセットアップができるreconfigurable logic deviceも同じ目的で使うことができる。
【0038】
さらに、回路、ユニット、装置、部材または部の全部または一部の機能または操作は、ソフトウェア処理によって実行することが可能である。この場合、ソフトウェアは1つまたは複数のROM、光学ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録され、ソフトウェアが処理装置(processor)によって実行されたときに、そのソフトウェアで特定された機能が処理装置(processor)および周辺装置によって実行される。システムまたは装置は、ソフトウェアが記録されている1つまたは複数の非一時的記録媒体、処理装置(processor)、および必要とされるハードウェアデバイス、例えばインターフェースを備えていてもよい。
【0039】
以下、本開示の一態様に係る寝相判定装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0040】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0041】
(実施の形態1)
図1は、寝相判定装置10の機能的な構成の一例を示すブロック図である。図1には、寝相判定装置10とともに、非接触センサ70が示されている。非接触センサ70は、寝相判定装置10に含まれてもよい。
【0042】
まず、非接触センサ70について説明する。非接触センサ70は、検知エリア内にある対象者までの距離と対象者の動きとを非接触で測定する。非接触センサ70は、例えば、ドップラーレーダーで構成される。ドップラーレーダーは、検知エリアへ向けて探知波である超音波または電磁波を送信し、対象者からの反射波を受信することによって対象者までの距離と対象者の動きとを非接触で測定する。
【0043】
図2は、非接触センサ70の測定結果の一例を示す図である。図2に示されるように、非接触センサ70の測定結果110は、レンジビン111ごとの反射強度112と位相回転量113とで構成される。
【0044】
レンジビン111は、非接触センサ70から対象者までの距離の離散的な計測結果を表し、探知波の送信から反射波の受信までの片道時間に対応する。レンジビン111の幅、すなわち距離の分解能は、例えば、探知波がパルス幅0.5ナノ秒のミリ波帯の電波である場合、7.5センチメートルである。反射強度112は、反射波の強度であり、対応するレンジビンに対象者が存在する確度を表す。位相回転量113は、反射波の探知波に対する位相の変化量であり、その時間変化は対象者の相対速度(例えば、対象者の呼吸による体動)に対応する。ここで、対象者の相対速度とは、非接触センサ70から対象者を見た視線方向の速度成分を意味する。
【0045】
図1を参照して、寝相判定装置10は、受信器11、抽出回路12、メモリ13、判定回路14および通知器15を備えている。
【0046】
受信器11は、非接触センサ70により検知エリア内の対象者を測定して得た測定結果を受信する。測定結果は、対象者までの距離と対象者の動きとを表してもよい。抽出回路12は、受信された測定結果から呼吸信号を抽出する。メモリ13は、呼吸信号のレベルに関する基準情報を保持している。判定回路14は、抽出された呼吸信号のレベルと基準情報との比較に基づいて対象者の寝相を判定し判定結果を出力する。通知器15は、対象者の寝相が仰向け以外の寝相であると判定された場合に判定結果をユーザーに通知する。ここで、ユーザーとは、例えば、対象者の健康状態を監視している保育士、看護師などである。
【0047】
寝相判定装置10は、例えば、プロセッサ、メモリ、通信回路などを有するコンピュータシステムで構成される。図1に示される寝相判定装置10の個々の構成要素は、例えば、プロセッサがメモリに記録されたプログラムを実行することによって果たされるソフトウェア機能であってもよい。
【0048】
次に、上述のように構成された寝相判定装置10の動作を、測定状況の具体例に基づいて説明する。
【0049】
図3は、測定状況の一例を説明する概念図である。図3は、天井Eに非接触センサ70が配置され、床Fに対象者Sがいる状況を模式的に示している。図3において、隣接する同心円の間の領域はレンジビンを表し、同心円の径方向に付された数字はレンジビンの番号を表している。レンジビンは、立体的には、全方位に広がる同心球殻状の領域である。図3では、簡明のため非接触センサ70を対象者Sの真上に図示しているが、非接触センサ70は対象者Sの斜め上に配置されていても構わない。
【0050】
図4は、寝相判定装置10の動作の一例を示すフローチャートである。
【0051】
寝相判定装置10は、図3の測定状況において、図4のフローチャートに従って、次のように動作する。
【0052】
受信器11は、非接触センサ70から測定結果を受信する(S121)。
【0053】
図5は、図4の測定状況に対応する測定結果の一例を表すグラフである。図5の例では、第7のレンジビンにおいて、対象者Sからの反射波による反射強度と、対象者Sの呼吸による体動に由来する位相回転量とがそれぞれ検知されている。
【0054】
抽出回路12は、受信された測定結果から呼吸信号を抽出する(図4のS122)。呼吸信号は、測定結果の時系列に含まれる対象者の呼吸に由来する十数Hz前後の周波数成分である。抽出回路12は、例えば、対象者が存在する距離(図5の例では、第7のレンジビン)における位相回転量の時系列から、ローパスフィルタまたはトレンド除去フィルタを用いて呼吸信号を抽出してもよい。
【0055】
また、非接触センサ70の距離の分解能が十分に高ければ、反射強度のピークを有するレンジビンの変動から対象者の体表の変位を把握することもできる。この場合、抽出回路12は、対象者の体表の変位の時系列、つまり、反射強度のピークを有するレンジビンの変動に含まれる十数Hz前後の周波数成分を、呼吸信号として抽出してもよい。抽出される呼吸信号のレベルは、対象者の寝相に応じて異なる。
【0056】
図6A及び図6Bは、それぞれ対象者の寝相の一例を説明する概念図であり、図6Aは仰向けの寝相、図6Bはうつ伏せの寝相をそれぞれ表している。図6Aにおける放射状の長い矢印で示すように、仰向けの寝相では対象者Sの胸・腹部に放射状に拡縮する動きが生じ、図6Bにおける平行な短い矢印で示すように、うつ伏せの寝相では対象者Sの背部全体に比較的小さい鉛直方向の平行な動きが生じる。
【0057】
図7は、寝相に応じた呼吸信号の一例を示すグラフである。図7では、対象者Sの真上または斜め上に設置した非接触センサ70による測定結果から抽出される呼吸信号を、対象者の寝相が仰向けの場合(実線)およびうつ伏せの場合(点線)について示している。
【0058】
寝相に応じた対象者の動きの違いにより、仰向けの場合にはうつ伏せの場合と比べて高いレベルの呼吸信号が抽出される。ここで、呼吸信号のレベルとは、呼吸信号の大きさを表す適宜の数値であり、一例として、呼吸信号の振幅の所定時間(例えば数秒間)にわたる二乗平均平方根が用いられる。
【0059】
図7では、仰向けおよびうつ伏せでの呼吸信号のレベルをそれぞれL1、L2と表記している。仰向けの寝相では、対象者の体の部位のうち呼吸に伴う動きが最も大きい胸・腹部が上方に開放されることから、うつ伏せ及び図示していない横向きなどの他のどの寝相と比べても高いレベルL1の呼吸信号が抽出される。
【0060】
したがって、対象者の寝相が仰向けのときの呼吸信号のレベルより小さいしきい値THを設定し、呼吸信号の現在のレベルとしきい値THとを比較することによって、対象者の現在の寝相が仰向けか仰向け以外かを判定することができる。
【0061】
しきい値THは、特には限定されないが、一例として、寝相判定を開始する前の測定結果から設定してもよい。例えば、対象者の寝相が仰向けのときの呼吸信号のレベルをあらかじめ求めておき、求めたレベルに1未満の係数を乗じて得た値をしきい値THとしてもよい。また、仰向けのときの呼吸信号のレベルと仰向け以外のときの呼吸信号のレベルをあらかじめ求めておき、求めたレベルの中間的な値をしきい値THとしてもよい。
【0062】
設定されたしきい値THは、呼吸信号のレベルに関する基準情報として、メモリ13に保持される。
【0063】
判定回路14は、メモリ13からしきい値THを参照し、最近の測定結果から抽出した呼吸信号のレベルとしきい値THとを比較することによって、対象者の現在の寝相が仰向けか仰向け以外かを判定する(図4のS123)。判定回路14は、例えば、呼吸信号のレベルがしきい値TH以上のとき、対象者の寝相が仰向けであると判定し、前記抽出された呼吸信号のレベルが前記しきい値未満のとき、前記対象者の寝相が仰向け以外であると判定し、判定結果を出力する。
【0064】
対象者の寝相が仰向けと判定された場合(S124でYES)、ユーザーに寝相が通知されることなく、寝相判定装置10は寝相の判定を続行する。なお、ユーザーに通知しなくとも、判定された寝相を記録として保存するようにしてもよい。
【0065】
対象者の寝相が仰向け以外と判定された場合(S124でNO)、通知器15はユーザーに寝相を通知する(S180)。通知器15は、例えば保育所にあっては、携帯端末または保育所内に設置された表示器などを介して、音、振動、光などの適宜の態様で、乳幼児が仰向け以外の寝相になっていることを保育士に通知してもよい。これにより、乳幼児をSIDSの発症リスクがより低い仰向けの寝相に戻すよう、保育士に促すことができる。なお、通知器15による通知は、保育所に限ることなく、例えば病院及び老人ホーム等の施設であっても、上記と同様にして、看護師及び管理人等に通知することができる。
【0066】
このように、寝相判定装置10によれば、呼吸信号のレベルが対象者の寝相に応じて異なることを利用して、呼吸信号のレベルと基準情報との比較に基づいて対象者の寝相を判定できる。呼吸信号は、非接触センサによる対象者の測定結果から抽出されるので、接触センサを用いる場合と比べて、対象者の快適性が損なわれることがなく、また、感圧素子の消耗による取り換え及び日常的な消毒などによるユーザーの負担を軽減できる。その結果、取り扱いの簡便性に優れた寝相判定装置が得られる。
【0067】
(実施の形態2)
実施の形態2では、仰向けと判定されたときの呼吸信号を用いて基準情報を更新する寝相判定装置について説明する。なお、先行する実施の形態で説明した構成要素およびステップと同一の構成要素およびステップは同一の符号で参照し、重複する説明を適宜省略する。
【0068】
図8は、実施の形態2に係る寝相判定装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。図8の寝相判定装置20では、図1の寝相判定装置10と比べて、更新回路26が追加される。
【0069】
更新回路26は、対象者の寝相が仰向けであると判定されたときに抽出された呼吸信号を用いて新たな基準情報を生成し、メモリ13に保持されている基準情報を前記新たな基準情報で更新する。
【0070】
図9は、寝相判定装置20の動作の一例を示すフローチャートである。図9に示される寝相判定装置20の動作では、図4の寝相判定装置10の動作と比べて、ステップS190が追加される。
【0071】
寝相判定装置20では、寝相判定装置10と同様、呼吸信号のレベルと基準情報との比較に基づいて対象者の寝相が判定され、寝相が仰向け以外であればユーザーに通知される(S121からS124、S180)。ステップS110からS124、S180の内容および適用される測定状況は、実施の形態1で説明したとおりである。
【0072】
寝相判定装置20では、対象者の寝相が仰向けであると判定されたとき(S124でYES)、呼吸信号のレベルを更新回路26で収集する。更新回路26は、例えば、最近に収集された所定個数の呼吸信号のレベルの平均値に1未満の係数を乗じることにより新たなしきい値を生成し、メモリ13に保持されているしきい値を、新たなしきい値で更新する。
【0073】
このように、寝相判定装置20によれば、寝相判定を行う中で、仰向けと判定されたときの呼吸信号を用いて、基準情報を逐次に更新する。これにより、基準情報が、対象者固有の呼吸信号のレベルおよびレベルの時間変動に応じて更新されるので、対象者の個人差及び体調変動に応じて、対象者の寝相をより高精度かつ安定的に判定できる。
【0074】
(実施の形態3)
寝相の判定には、さらに、寝返りに代表される対象者の回転動作を考慮してもよい。
【0075】
実施の形態3では、対象者の回転動作を検知することにより、対象者の寝相を判定する寝相判定装置について説明する。なお、先行する実施の形態で説明した構成要素およびステップと同一の構成要素およびステップは同一の符号で参照し、重複する説明を適宜省略する。
【0076】
図10は、実施の形態3に係る寝相判定装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。図10の寝相判定装置30では、図1の寝相判定装置10と比べて、判定回路14に代えて判定回路34が設けられ、回転検知器37が追加される。回転検知器37は、測定結果から対象者の回転動作を検知する。
【0077】
図11は、寝相判定装置30の動作の一例を示すフローチャートである。図11に示される寝相判定装置30の動作では、図4の寝相判定装置10の動作と比べて、ステップS131が追加され、ステップS123、S124に代えて、ステップS133、S134が設けられる。
【0078】
寝相判定装置30では、寝相判定装置10と同様、測定結果が受信され(S121)、測定結果から呼吸信号が抽出される(S122)。寝相判定装置30では、さらに、回転検知器37により、対象者の回転動作が検知される(S131)。
【0079】
図12A図12Bは、回転検知の考え方の一例を説明する概念図である。対象者Sが回転動作として寝返りを打つとき、腕など体側の一部を支点Pとして回転しようとする。
【0080】
図12Aは、仰向けまたはうつ伏せの状態から横向きに遷移する回転動作を、時計回りの白矢印で模式的に示している。この動作では、対象者Sの体のほとんどの部位が非接触センサ70に近づく方向(この方向の動きの速度を正の相対速度とする)に動き、その相対速度も、上向きの黒矢印で示すように部位毎に異なる。その結果、右枠内に示すような正に偏った相対速度の分布(以下、ドップラースペクトルと言う)が測定される。
【0081】
図12Bは、横向きの状態からうつ伏せあるいは仰向けに遷移する動作を、反時計回りの白矢印で模式的に示している。この動作では、対象者Sの体の多くの部位が非接触センサ70から遠ざかる方向(この方向の動きの速度を負の相対速度とする)に動き、その相対速度も、下向きの黒矢印で示すように部位毎に異なる。その結果、右枠内に示すような負に偏ったドップラースペクトルが測定される。
【0082】
ドップラースペクトルは寝返りの状態に応じて時々刻々変化する。例えば、対象者Sが仰向けから横向きを経てうつ伏せ(またはその逆)に寝相を変える場合には、時系列で観測すると、まず正の相対速度が支配的な分布が現れ、その後、負の相対速度が支配的な分布が現れるようなパターンとなる。
【0083】
そこで、回転検知器37は、ドップラースペクトルの測定結果から、対象者の回転動作を検知する。
【0084】
判定回路34は、呼吸信号のレベルと基準情報との比較に加えて、回転動作の検知結果を用いて、対象者の寝相を判定する(図11のS133)。判定回路34は、例えば、対象者の寝相が仰向けと判定されている状態で回転動作が検知された場合には、呼吸信号のレベルがしきい値以上であっても、対象者の寝相が仰向け以外になったと判定してもよい。また、回転動作を伴わずに呼吸信号のレベルが低下した場合など、対象者の呼吸停止などの異常が疑われる事態を、寝相の変化とは区別して検出することも可能になる。
【0085】
通知器15は、対象者が仰向き以外の寝相であることの通知に加えて、対象者の異常が疑われる事態をユーザーに通知する(S180)。
【0086】
このように、寝相判定装置30によれば、呼吸信号のレベルと基準情報との比較に加えて、回転動作の検知結果を用いて、対象者の寝相を判定するので、対象者の寝相をより正確に判定することができる。その結果、呼吸信号のレベルと基準情報との比較だけでは検出できない寝相の変化及び異常事態を適切に検出し、ユーザーに通知できる。
【0087】
(実施の形態4)
対象者の寝相の判定に用いる非接触センサは1つとは限られない。寝相の判定には、複数の非接触センサを用いてもよい。
【0088】
実施の形態4では、複数の非接触センサで対象者を測定して得た測定結果を用いて対象者の寝相を判定する寝相判定装置について説明する。なお、先行する実施の形態で説明した構成要素およびステップと同一の構成要素およびステップは同一の符号で参照し、重複する説明を適宜省略する。
【0089】
図13は、実施の形態4に係る寝相判定装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。図13の寝相判定装置40では、図1の寝相判定装置10と比べて、メモリ13、判定回路14に代えてそれぞれメモリ43、判定回路44が設けられる。また、対象者に対して互いに異なる方向(例えば、真上および斜め上)に設けられた複数の非接触センサ70a、70b、70cが用いられる。複数の非接触センサ70a、70b、70cは、寝相判定装置40に含まれてもよい。複数の非接触センサは2台または4台以上であってもよい。
【0090】
メモリ43は、呼吸信号のレベルの複数の非接触センサ70a、70b、70c間での関係に関する基準情報を保持している。判定回路44は、抽出された呼吸信号のレベルの複数の非接触センサ70a、70b、70c間での関係と、メモリ43に保持されている基準情報との比較に基づいて、対象者の寝相を判定する。
【0091】
図14は、寝相判定装置40の動作の一例を示すフローチャートである。図14に示される寝相判定装置40の動作では、図4の寝相判定装置10の動作と比べて、ステップS111、S141が追加され、ステップS123、S124に代えてステップS143、S144が設けられる。
【0092】
寝相判定装置40では、複数の非接触センサのうちの1つ選択し(S111)、選択した非接触センサの測定結果から呼吸信号を抽出する処理(S121、S122)を、すべての非接触センサが選択されるまで繰り返す(S141)。
【0093】
すべての非接触センサについて呼吸信号が抽出されると(S141でYES)、判定回路44は、抽出された呼吸信号のレベルの複数の非接触センサ間での関係と基準情報との比較に基づいて、対象者の寝相を判定する。
【0094】
抽出される呼吸信号のレベルの複数の非接触センサ間での関係は、対象者の寝相に応じて異なる。
【0095】
図15Aから図15Dは、寝相に応じた複数の呼吸信号のレベルの関係の一例を説明する概念図である。図15Aから図15Dは、非接触センサ70a、70b、70cでの測定結果から抽出される呼吸信号のレベルLa、Lb、Lcの関係を、対象者Sの寝相が仰向け、うつ伏せ、右横向き、および左横向きである場合について示している。非接触センサ70a、70b、70cは、対象者Sの真上、左斜め上および右斜め上にそれぞれ設置されている。
【0096】
図15Aに見られるように、仰向けの寝相では、呼吸により対象者Sの胸・腹部に放射状に拡縮する動きが生じる。胸・腹部の放射状の動きは、非接触センサ70a、70b、70cのいずれから見ても等方的であるため、呼吸信号のレベルLa、Lb、Lcは略同一である。つまり、呼吸信号のレベルLa、Lb、Lcには、Lb≒La≒Lcなる関係がある。
【0097】
また、図15Bに見られるように、うつ伏せの寝相では、呼吸により対象者Sの背部全体に鉛直方向の平行な動きが生じる。背部の動きは、非接触センサ70b、70cで斜めから見ると、非接触センサ70aで真上から見るよりも小さく見えるため、呼吸信号のレベルLb、Lcは、呼吸信号のレベルLaよりも小さい。つまり、呼吸信号のレベルLa、Lb、Lcには、Lb<La>Lcなる関係がある。
【0098】
また、図15C図15Dに見られるように、右横向きおよび左横向きの寝相では、呼吸により対象者Sの胸・腹部に放射状に拡縮する動きが生じるとともに、背部全体に水平方向の動きが生じる。対象者Sの背部の動きは胸・腹部の動きよりも小さく、体側の動きは背部の動きよりもさらに小さい。
【0099】
図15Cの例では、非接触センサ70a、70b、70cは、対象者Sの体側、背部、胸・腹部をそれぞれ測定する。そのため、非接触センサ70cでの呼吸信号のレベルLcが最も大きく、非接触センサ70bでの呼吸信号のレベルLbが次に大きく、非接触センサ70aでの呼吸信号のレベルLaが最も小さい。つまり、呼吸信号のレベルLa、Lb、Lcには、Lb>La≪Lcなる関係がある。
【0100】
図15Dの例では、非接触センサ70a、70b、70cは、対象者Sの体側、胸・腹部、背部をそれぞれ測定する。そのため、非接触センサ70bでの呼吸信号のレベルLbが最も大きく、非接触センサ70cでの呼吸信号のレベルLcが次に大きく、非接触センサ70aでの呼吸信号のレベルLaが最も小さい。つまり、呼吸信号のレベルLa、Lb、Lcには、Lb≫La<Lcなる関係がある。
【0101】
図15Aから図15Dに例示する呼吸信号のレベルLa、Lb、Lc間の関係は、呼吸信号のレベルの非接触センサ間での関係の一例である。
【0102】
メモリ43は、呼吸信号のレベルLa、Lb、Lc間の関係を、例えば、上述した関係式で表し、寝相と対応付けて保持する(図示せず)。
【0103】
判定回路44は、現在の呼吸信号のレベルLa、Lb、Lcの関係と、メモリ43に保持されている基準情報との比較に基づいて、対象者の寝相を判定する。具体的には、判定回路44は、メモリ43において、現在の呼吸信号のレベルLa、Lb、Lcについて成り立つ関係式に対応して保持されている寝相を、対象者の寝相として判定する。
【0104】
このように、寝相判定装置40によれば、呼吸信号のレベルの複数の非接触センサ間での関係が対象者の寝相に応じて異なることを利用して、抽出された呼吸信号のレベルの複数の非接触センサ間での関係と基準情報との比較に基づいて対象者の寝相を判定できる。これにより、単純なしきい値比較と比べてより多くの種類の寝相をより正確に判定することが可能になる。
【0105】
なお、本開示の実施の形態のいずれにおいても、非接触センサは、対象者の真上または斜め上に設置した例を示したが、これに限定されない。必要に応じて信号の補正を行うなどして、対象者の真上および斜め上以外の位置に設置してもよい。
【0106】
以上、本開示の実施の形態に係る寝相判定装置、寝相判定方法、およびプログラムについて説明したが、本開示は、個々の実施の形態には限定されない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、及び異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の一つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本開示の寝相判定装置、寝相判定方法、記録媒体、およびプログラムは、例えば、保育所などにおける乳幼児の見守りシステムなど、寝相を判定する応用に広く利用できる。
【符号の説明】
【0108】
10、20、30、40 寝相判定装置
11 受信器
12 抽出回路
13、43 メモリ
14、34、44 判定回路
15 通知器
26 更新回路
37 回転検知器
70、70a、70b、70c 非接触センサ
110 測定結果
111 レンジビン
112 反射強度
113 位相回転量
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D