(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0443 20140101AFI20241108BHJP
H01L 31/0445 20140101ALI20241108BHJP
H01L 31/075 20120101ALI20241108BHJP
【FI】
H01L31/04 522
H01L31/04 530
H01L31/06 500
(21)【出願番号】P 2023195620
(22)【出願日】2023-11-17
【審査請求日】2024-03-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523111201
【氏名又は名称】株式会社PXP
(73)【特許権者】
【識別番号】322009206
【氏名又は名称】株式会社SOLABLE
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】杉本 広紀
【審査官】丸橋 凌
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-214270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0247959(US,A1)
【文献】国際公開第2011/114781(WO,A1)
【文献】特開2021-082819(JP,A)
【文献】特開2013-026363(JP,A)
【文献】特開平05-160425(JP,A)
【文献】特開2005-268719(JP,A)
【文献】特開2014-157877(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2023/0187568(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0025778(US,A1)
【文献】国際公開第2011/106902(WO,A2)
【文献】特開2000-228529(JP,A)
【文献】特開2004-179637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電性基板に形成された発電素子層を有する複数個の太陽電池セルと、
第2導電性基板に形成されたダイオード素子層を有する1個以上のバイパスダイオードと、
を備え、
前記複数個の太陽電池セルにおける各発電素子層は、前記第1導電性基板の一面側に配置され、
前記1個以上のバイパスダイオードにおける各ダイオード素子層は、前記第1導電性基板の他面側に配置され、
前記複数個の太陽電池セルが直列に接続されて形成される1組のストリングにおいて、1個以上の前記太陽電池セルに、前記1個以上のバイパスダイオードが並列に接続されて1組の並列回路が形成されており、
前記発電素子層及び前記ダイオード素子層がカルコパイライト化合物を含
み、
前記太陽電池セルの許容電流密度が標準試験条件で生成される短絡電流密度の[n]倍であるとき、前記1組の並列回路の一部を形成する前記1個以上のバイパスダイオードの合計面積が1個の前記太陽電池セルの面積の1/[n]以上である、
太陽電池モジュール。
【請求項2】
第1導電性基板に形成された発電素子層を有する複数個の太陽電池セルと、
第2導電性基板に形成されたダイオード素子層を有する1個以上のバイパスダイオードと、
を備え、
前記複数個の太陽電池セルにおける各発電素子層は、前記第1導電性基板の一面側に配置され、
前記1個以上のバイパスダイオードにおける各ダイオード素子層は、前記第1導電性基板の他面側に配置され、
前記複数個の太陽電池セルが直列に接続されて形成される1組のストリングにおいて、1個以上の前記太陽電池セルに、前記1個以上のバイパスダイオードが並列に接続されて1組の並列回路が形成されており、
前記発電素子層及び前記ダイオード素子層がカルコパイライト化合物を含み、
前記複数個の太陽電池セルは、短辺の長さが実質的に等しい矩形状をなし、かつ、前記1個以上のバイパスダイオードは、長辺の長さが実質的に等しい矩形状をなし、
前記太陽電池セルの標準試験条件における開放電圧がS(V)であり、前記太陽電池セルの許容逆電圧が-X(V)であるときに、前記バイパスダイオードの長辺の長さは、前記太陽電池セルの短辺の長さの[X/S]倍以下である、
太陽電池モジュール。
【請求項3】
第1導電性基板に形成された発電素子層を有する複数個の太陽電池セルと、
第2導電性基板に形成されたダイオード素子層を有する1個以上のバイパスダイオードと、
を備え、
前記複数個の太陽電池セルにおける各発電素子層は、前記第1導電性基板の一面側に配置され、
前記1個以上のバイパスダイオードにおける各ダイオード素子層は、前記第1導電性基板の他面側に配置され、
前記複数個の太陽電池セルが直列に接続されて形成される1組のストリングにおいて、1個以上の前記太陽電池セルに、前記1個以上のバイパスダイオードが並列に接続されて1組の並列回路が形成されており、
前記発電素子層及び前記ダイオード素子層がカルコパイライト化合物を含み、
前記複数個の太陽電池セルは、短辺の長さが実質的に等しい矩形状をなし、かつ、前記1個以上のバイパスダイオードは、長辺の長さが実質的に等しい矩形状をなし、
前記太陽電池セルの標準試験条件における開放電圧がS(V)であり、前記太陽電池セルの許容逆電圧が-X(V)であるときに、前記バイパスダイオードは、最大[X/S]+1個の前記太陽電池セルに亘って跨設される、
太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記複数個の太陽電池セルは、各太陽電池セルの一部が順に積層するように接続される、
請求項1
乃至3の何れか記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記1個以上のバイパスダイオードは、各バイパスダイオードが少なくとも2個の前記太陽電池セルに跨って配置される、
請求項1又は2記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記1個以上のバイパスダイオードは、各バイパスダイオードが前記複数個の太陽電池セルの積層方向に沿って重なるように配置される、
請求項
5記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
前記1個以上のバイパスダイオードは、各バイパスダイオードが前記複数個の太陽電池セルの少なくとも1つに隣接するように配置される、
請求項
5記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
前記1個以上のバイパスダイオードは、各バイパスダイオードの前記ダイオード素子層に切欠部が形成されており、かつ、各バイパスダイオードが前記切欠部において、前記複数個の太陽電池セルの少なくとも1個に接続される、
請求項
6記載の太陽電池モジュール。
【請求項9】
前記1個以上のバイパスダイオードは、各バイパスダイオードが導電性架橋部材により前記複数個の太陽電池セルの少なくとも1個に接続される、
請求項
7記載の太陽電池モジュール。
【請求項10】
[n]=11である、
請求項
1記載の太陽電池モジュール。
【請求項11】
[X/S]=4である、
請求項
2又は3記載の太陽電池モジュール。
【請求項12】
前記複数個の太陽電池セルは、短辺の長さが実質的に等しい矩形状をなし、かつ、前記1個以上のバイパスダイオードは、長辺の長さが実質的に等しい矩形状をなし、
前記1個以上のバイパスダイオードがk個(k≧1)のとき、前記1個以上のバイパスダイオードは、前記太陽電池セルの長辺の垂直2k等分線の奇数番目の仮想線に沿って延在するように並置される、
請求項1
乃至3の何れか記載の太陽電池モジュール。
【請求項13】
前記太陽電池セルと前記バイパスダイオードとは、電気的接点以外において絶縁されている、
請求項1
乃至3の何れか記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数個の太陽電池セルと1個以上のバイパスダイオードとを備える太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数個の太陽電池セルが直列に接続されたストリングの一部が、例えば壁面や車載等の影で覆われると、その部位の発電が停止して電流が遮断されてしまい、何ら手段を講じなければ、ストリング全体の発電が停止してしまう。また、影で覆われた部分の抵抗が増加し、局所的に発熱することに起因して、故障等の不具合が生じるおそれがある。このような悪影響を防止するべく、発電電流を迂回させるためのバイパスダイオードを太陽電池セルやストリング単位で組み込む必要がある。特に、影の影響を多く受ける環境に設置される太陽電池モジュールでは、バイパスダイオードを比較的多く組み込むことが望ましい。
【0003】
このような要望に応えるべく、例えば特許文献1には、受光面側となる透明基板上に形成された太陽電池セルと、その上に重ねて形成されたバイパスダイオードとを備える太陽電池モジュールが記載されている。このような構成により、太陽電池セルの受光面積の低下を防止しつつ、バイパスダイオードの面積を比較的大きくして電流集中による発熱を抑制することが企図されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の太陽電池モジュールでは、太陽電池セル上にバイパスダイオードを積層形成するため、大面積のバイパスダイオードを設けるには製造工程を十分に簡素化することができず、製造コスト及び材料コストの十分に低減するができなかった。また、上記従来の太陽電池モジュールの構成は、受光面を確保するために不透明基板を用いることができないため、デバイス構造や用途の多様化及び汎用化に十分に対応することができないという問題もあった。
【0006】
そこで、本開示は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、太陽電池セルの受光面積を損なわずにバイパスダイオードの大面積を実現することにより、発電面積の減少やバイパスダイオードへの電流集中を解消しつつ、製造コスト及び材料コストの低減を十分に図ることができる太陽電池モジュールを提供することを目的とする。また、本開示は、併せて、デバイス構造や用途の多様化及び汎用化に十分に対応することが可能な太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一例に係る太陽電池モジュールは、第1導電性基板に形成された発電素子層を有する複数個の太陽電池セルと、第2導電性基板に形成されたダイオード素子層を有する1個以上のバイパスダイオードとを備える。そして、複数個の太陽電池セルにおける各発電素子層は、第1導電性基板の一面側に配置され、1個以上のバイパスダイオードにおける各ダイオード素子層は、第1導電性基板の他面側に配置される。また、複数個の太陽電池セルが直列に接続されて形成される1組のストリングに、1個以上のバイパスダイオードが並列に接続されることにより、1組の並列回路が形成されている。
【0008】
かかる構成を有する太陽電池モジュールでは、太陽電池セルの発電素子層が設けられた第1導電性基板の一面側から受光して発電が行われる。また、その第1導電性基板の他面側(非受光面側)にバイパスダイオードのダイオード素子が配置されるので、バイパスダイオードによって太陽電池セルへの入射光が遮られることなく、受光面積の減少が抑止される。また、そのような構造により、バイパスダイオードの大面積化も平易となり、バイパスダイオードへの電流集中を有効に解消することができる。その結果、建物の壁面や車載用途等の影の影響を受け易い環境下においても、光エネルギーを有効に利用することができる。さらに、太陽電池セル上にバイパスダイオードを積層する必要がないので、製造コスト及び材料コストをともに十分に低減することができる。加えて、そのような構造により、第1導電性基板及び第2導電性基板として不透明基板を用い得るので、デバイス構造や用途の多様化及び汎用化に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の太陽電池モジュールによる第1実施形態における太陽電池セルの構成の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本開示の太陽電池モジュールによる第1実施形態におけるバイパスダイオードの構成の一例を示す概略断面図である。
【
図3】本開示の太陽電池モジュールによる第1実施形態の構成の一例を示す(A)概略側面図及び(B)概略平面(底面)図である。
【
図4】本開示の太陽電池モジュールによる第2実施形態の構成の一例を示す(A)概略側面図及び(B)概略平面(底面)図である。
【
図5】本開示の太陽電池モジュールによる第3実施形態の構成の一例を示す(A)概略側面図及び(B)概略平面(底面)図である。
【
図6】本開示の太陽電池モジュールによる第4実施形態の構成の一例を示す(A)概略側面図及び(B)概略平面(底面)図である。
【
図7】本開示の太陽電池モジュールによる第5実施形態の構成の一例を示す概略平面(底面)図である。
【
図8】本開示の太陽電池モジュールによる第6実施形態の構成の一例を示す概略平面(底面)図である。
【
図9】本開示の太陽電池モジュールによる第7実施形態の構成の一例を示す概略平面(底面)図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<用語の定義等>
以下、添付図面を参照して、本開示の好適な実施形態に係る太陽電池モジュールについて説明する。なお、本書では、便宜上、太陽電池モジュールにおける太陽電池セル及びバイパスダイオードの何れにおいても、基板を基準にして各層が積層される向きを上方と称し、その逆向きを下方と称し、その座標軸方向を上下とする(図示の上下と異なる場合がある)。また、図示向かって左側を単に「左側」又は「左」と、図示向かって右側を単に「右側」又は「右」と称する。さらに、本書において、各層、又は各層に含まれる半導体を、ある化合物の名称で表現した場合、純粋な当該化合物そのものだけでなく、その化合物の特性を失わない範囲で、微量の元素や化学種等がドープされた化合物も包含するものとする。また、本書において、各層における元素が、異なる酸化状態で存在し得るため、全ての酸化状態は、特に明確に記載されない限り、その元素の名称で呼ばれる。例えば、「水素元素」及びその化学記号「H」は、水素原子、水素イオン、水素化物イオン、水素ラジカル、化合物の状態の水素、及び単体の状態の水素を意味し得るものとする。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、本開示の太陽電池モジュールによる第1実施形態における太陽電池セルの構成の一例を示す概略断面図である。
図1に示すとおり、太陽電池モジュール1における太陽電池セル10は、電極11,13と、それらの間に設けられた発電素子層12を有する。このような積層構造を有する太陽電池セル10は、典型的には、電極13の上面側から受光して発電する。
【0012】
(電極11)
電極11は、導電性基板111(第1導電性基板)と、その上に形成された下部電極層112から構成されている。導電性基板111の形成材料は、特に限定されず、例えば、チタン箔やステンレス箔、アルミ箔等の金属基板、導電性樹脂フィルム等が挙げられ、その厚さは、例えば、10~500μm程度であることが好ましい。また、下部電極層112としては、特に限定されず、例えば、Mo、Cr、Ti等からなる金属導電層、金属以外の導電性無機化合物導電層、導電性有機化合物導電層等を用いることができる。下部電極層112の厚さも、特に限定されず、例えば、200~800nm程度であることが好ましい。
【0013】
(発電素子層12)
発電素子層12は、電極11の下部電極層112上に順に積層されたp型正孔輸送層121、光吸収層122、及び、n型電子輸送層123から構成されている。p型正孔輸送層121の形成材料は、特に限定されず、例えば、セレン化モリブデンや酸化モリブデン等の無機化合物や、フルオレン誘導体等の有機化合物が挙げられ、これらを、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。p型正孔輸送層121の厚さも、特に限定されず、例えば、20~100nm程度であることが好ましい。また、光吸収層122の形成材料は、特に限定されず、例えば、(Cs,FA)PbI3等のペロブスカイト化合物、Cu(In,Ga)(Se,S)2等のカルコパイライト化合物、Cu2ZnSnS4等のケステライト化合物が挙げられ、これらを、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。光吸収層122の厚さも、特に限定されず、例えば、1~5μm程度であることが好ましい。さらに、n型電子輸送層123の形成材料としては、特に限定されず、例えば、Zn(O,S,OH)x,CdS,In2S3,ZnTiOx等が挙げられ、これらを、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。n型電子輸送層123の厚さも、特に限定されず、例えば、20~150nm程度であることが好ましい。
【0014】
(電極13)
電極13は、発電素子層12のn型電子輸送層123上に順に積層された上部電極層131、及び、グリッド電極132から構成されている。上部電極層131としては、特に限定されず、例えば、ITO、IOH、FTO、ZnO:B、ZnO:Al等の透明電極層が挙げられる。上部電極層131の厚さは、特に制限されず、例えば、0.1~2μm程度であることが好ましい。また、グリッド電極132としては、特に限定されず、例えば、Mo、Cr、Ag等からなる金属導電層、金属以外の導電性無機化合物導電層、導電性有機化合物導電層等を用いることができる。グリッド電極132の厚さも、特に限定されず、例えば、5~50μm程度であることが好ましい。
【0015】
また、
図2は、本開示の太陽電池モジュールによる第1実施形態におけるバイパスダイオードの構成の一例を示す概略断面図である。
図2に示すとおり、太陽電池モジュール1におけるバイパスダイオード50は、電極51,53と、それらの間に設けられたダイオード素子層52を有する。
【0016】
(電極51、ダイオード素子層52、電極53)
電極51は、上述した電極11と同様に、電極51の下部電極層512上に順に積層された導電性基板511(第2導電性基板)とその上に形成された下部電極層512から構成されている。これらの導電性基板511及び下部電極層512としては、それぞれ、導電性基板111及び下部電極層112と同様に構成されたものを用いることができる。また、ダイオード素子層52は、上述した発電素子層12と同様に、電極51の下部電極層512上に順に積層されたp型正孔輸送層521、p型半導体層522、及び、n型電子輸送層523から構成されている。これらのp型正孔輸送層521、p型半導体層522、及び、n型電子輸送層523としては、それぞれ、p型正孔輸送層121、光吸収層122、及び、n型電子輸送層123と同様に構成されたものを用いることができる。さらに、電極53は、上述した電極13と同様に、ダイオード素子層52のn型電子輸送層523上に順に積層された上部電極層531、及び、ベタ電極532から構成されている。これらの上部電極層531及びベタ電極532の構成材料としては、それぞれ、上部電極層131及びグリッド電極132と同種のものを用いることができる。このとおり、バイパスダイオード50としては、実質的に、太陽電池セル10と同等の構成を有するデバイスを使用することができ、発電素子層12及びダイオード素子層52は、同一材料又は同種材料を含むことができる。またさらに、バイパスダイオード50においては、ダイオード素子層52及び電極53の右端部に切欠部Cが形成され、電極51の下部電極層512の上面右端部が露呈されている。なお、切欠部Cの形成方法は、特に制限されず、例えば、スクライビング、エッチング、パターニング等を適宜選択して適用し得る。
【0017】
次に、
図3は、本開示の太陽電池モジュールによる第1実施形態の構成の一例を示す(A)概略側面図及び(B)概略平面(底面)図である。太陽電池モジュール1は、それぞれ矩形状をなす2個の太陽電池セル10,10と、矩形状をなす1個のバイパスダイオード50とを備える。太陽電池モジュール1においては、太陽電池セル10,10が導電性接着剤層B1を介して直列に接続され、1組のストリングが形成されている。より具体的には、左側の太陽電池セル10における電極13のグリッド電極132の上面右端部と、右側の太陽電池セル10における電極11の導電性基板111の下面左端部が重なり合うように、導電性接着剤層B1によって接合されている。
【0018】
また、太陽電池モジュール1においては、太陽電池セル10,10を含む1組のストリングに、バイパスダイオード50が導電性接着剤層B2,B3を介して並列に接続されて1組の並列回路が形成されている。より具体的には、右側の太陽電池セル10における電極11の導電性基板111の下面略全域と、バイパスダイオード50における電極53の上面全域が重なり合うように、導電性接着剤層B2によって接合されている。また、右側の太陽電池セル10における電極11の導電性基板111の下面左端部と、バイパスダイオード50における切欠部Cによって露呈した電極51の下部電極層512の上面右端部が重なり合うように、導電性接着剤層B3によって接合されている。
【0019】
以上のとおり、太陽電池モジュール1では、太陽電池セル10,10が、それぞれの一部において順に積層するように、短辺(
図3(A)の上下方向)に沿って接続されている。また、バイパスダイオード50は、太陽電池セル10,10に跨って長手方向に延在するように、かつ、太陽電池セル10,10の積層方向に沿って重なるように、配置されている。さらに、換言すれば、太陽電池セル10,10のそれぞれの発電素子層12,12は、導電性基板111の一面側に配置され、バイパスダイオード50のダイオード素子層52は、導電性基板111の他面側(非受光面側)に配置されている。またさらに、導電性接着剤層B1が設けられた部位が、太陽電池セル10,10の電気的接点とされ、導電性接着剤層B2,B3が設けられた部位が、太陽電池セル10,10とバイパスダイオード50との電気的接点とされている。なお、太陽電池セル10,10とバイパスダイオード50は、電気的接点以外において、空気層や適宜の絶縁層によって絶縁されている。
【0020】
このように構成された太陽電池モジュール1によれば、太陽電池セル10の発電素子層12が設けられた導電性基板111(第1導電性基板)の一面側から受光して発電が行われる。また、その導電性基板111の他面側(非受光面側)にバイパスダイオード50のダイオード素子層52が配置されるので、バイパスダイオード50によって太陽電池セル10への入射光が遮られることなく、受光面積の減少を抑止することができる。また、そのような構造により、バイパスダイオード50の大面積化も平易となり、バイパスダイオード50への電流集中を解消することができる。その結果、建物の壁面や車載用途等の影の影響を受け易い環境下においても、光エネルギーを有効に利用することができる。さらに、太陽電池セル10上にバイパスダイオード50を積層形成する必要がなく、しかも、太陽電池セル10,10及びバイパスダイオード50を導電性接着剤層B1~B3によって平易に接合することができる。よって、製造コスト及び材料コストをともに十分に低減することが可能となる。加えて、そのような構造により、導電性基板111及び導電性基板511として不透明基板を用いることができ、デバイス構造や用途の多様化及び汎用化に更に資することができる。
【0021】
また、太陽電池モジュール1は、太陽電池セル10及びバイパスダイオード50の何れも、薄膜化を図り易い材料の積層構造として構成することができるので、太陽電池モジュール1の薄膜化及びフレキシブル化の観点から有用である。さらに、太陽電池セル10,10のそれぞれの一部が順に積層するように接続されてストリングが形成されるので、太陽電池モジュール1の更なる薄膜化及びフレキシブル化を図ることができる。またさらに、バイパスダイオード50が、複数(2個)の太陽電池セル10,10に跨って配置されるので、バイパスダイオード50の大面積化が有効に図られる。さらにまた、バイパスダイオード50が太陽電池セル10,10の積層方向に沿って重なるように配置されるので、太陽電池モジュール1の小型化に寄与することもできる。
【0022】
また、バイパスダイオード50のダイオード素子層52に切欠部Cが形成されており、かつ、バイパスダイオード50がその切欠部Cにおいて、太陽電池セル10,10のうちの1個に接続される。これにより、太陽電池セル10とバイパスダイオード50との接合を更に簡易に行うことができ、更なるコスト低減に寄与し得る。さらに、発電素子層12及びダイオード素子層52がともに、例えばカルコパイライト化合物等の同一材料又は同種材料を含むので、太陽電池セル10及びバイパスダイオード50を兼用することができ、更なる製造コストの低減や管理コストの軽減も実現可能となる。加えて、太陽電池セル10とバイパスダイオード50が電気的接点以外において絶縁されているので、両者間の短絡を十分に抑制して、太陽電池モジュール1の信頼性の向上に資することができる。
【0023】
<第2実施形態>
図4は、本開示の太陽電池モジュールによる第2実施形態の構成の一例を示す(A)概略側面図及び(B)概略平面(底面)図である。太陽電池モジュール2は、3個の太陽電池セル10,10,10を含むこと、及び、バイパスダイオード50に代えてバイパスダイオード60を備えること以外は、太陽電池モジュール1と同様に構成されたものである。ここで、バイパスダイオード60は、電極61,63と、それらの間に設けられたダイオード素子層62を有する。これらの電極61、ダイオード素子層62、及び、電極63は、それぞれ、上述したバイパスダイオード50の電極51、ダイオード素子層52、及び、電極53と同様に構成することができる。
【0024】
太陽電池モジュール2においては、太陽電池セル10,10,10が導電性接着剤層B1,B1を介して直列に接続されて1組のストリングが形成されている。より具体的には、左側の太陽電池セル10における電極13のグリッド電極132の上面右端部と、中央の太陽電池セル10における電極11の導電性基板111の下面左端部が重なり合うように、導電性接着剤層B1によって接合されている。同様に、中央の太陽電池セル10における電極13のグリッド電極132の上面右端部と、右側の太陽電池セル10における電極11の導電性基板111の下面左端部が重なり合うように、導電性接着剤層B1によって接合されている。
【0025】
また、太陽電池モジュール2においては、太陽電池セル10,10,10を含む1組のストリングに、バイパスダイオード60が導電性接着剤層B2,B3を介して並列に接続されて1組の並列回路が形成されている。より具体的には、左側の太陽電池セル10における電極11の導電性基板111の下面略全域と、バイパスダイオード60における電極63の上面の略左半分が重なり合うように、導電性接着剤層B2によって接合されている。また、右側の太陽電池セル10における電極11の導電性基板111の下面左端部と、バイパスダイオード60における切欠部Cによって露呈した電極61の下部電極層の上面右端部が重なり合うように、導電性接着剤層B3によって接合されている。
【0026】
以上のとおり、太陽電池モジュール2では、太陽電池セル10,10,10が、それぞれの一部において順に積層するように、短辺(
図4(A)の上下方向)に沿って接続されている。また、バイパスダイオード60は、バイパスダイオード50よりも長尺な部材であり、太陽電池セル10,10,10に跨って長手方向に延在するように、かつ、太陽電池セル10,10,10の積層方向に沿って重なるように、配置されている。さらに、換言すれば、太陽電池セル10,10,10のそれぞれの発電素子層12,12,12は、導電性基板111の一面側に配置され、バイパスダイオード60のダイオード素子層62は、導電性基板111の他面側(非受光面側)に配置されている。またさらに、導電性接着剤層B1,B1が設けられた部位が、太陽電池セル10,10,10の電気的接点とされ、導電性接着剤層B2,B3が設けられた部位が、太陽電池セル10,10とバイパスダイオード60との電気的接点とされている。なお、太陽電池セル10,10,10とバイパスダイオード50とは、電気的接点以外において、空気層や適宜の絶縁層によって絶縁されている。例えば、中央の太陽電池セル10における電極11の導電性基板111の下面略全域と、バイパスダイオード60における電極63の上面の略右半分との間には、絶縁層Z1が設けられている。
【0027】
このように構成された太陽電池モジュール2においても、太陽電池モジュール1と同等の作用効果を得ることができる。また、それらに加えて又は代えて、バイパスダイオード50が、複数(3個)の太陽電池セル10,10,10に跨って配置されるので、バイパスダイオード50の大面積化を更に有効に図ることができる。また、バイパスダイオード50の必要数を低減することができ、低コスト化につながる。さらに、太陽電池セル10,10,10のうち中央の太陽電池セル10とバイパスダイオード50との間に絶縁層Z1を介在させるので、両者間の短絡を更に十分に抑制して、太陽電池モジュール2の信頼性向上に更に寄与することができる。
【0028】
<第3実施形態>
図5は、本開示の太陽電池モジュールによる第3実施形態の構成の一例を示す(A)概略側面図及び(B)概略平面(底面)図である。太陽電池モジュール3は、バイパスダイオード50に代えてバイパスダイオード50’を備えること以外は、太陽電池モジュール1と同様に構成されたものである。ここで、バイパスダイオード50’は、バイパスダイオード50と略同等の積層構造を有するものの、バイパスダイオード50とは設置状態が異なっている。より具体的には、
図5に示すとおり、バイパスダイオード50’は、バイパスダイオード50に形成された切欠部Cを有しておらず、また、電極51、ダイオード素子層52、及び、電極53の積層順がバイパスダイオード50とは逆になるように、太陽電池セル10,10に接合されている。
【0029】
さらに、太陽電池モジュール3においても、太陽電池モジュール1と同様に、太陽電池セル10,10が導電性接着剤層B1を介して直列に接続されて1組のストリングが形成されている。またさらに、太陽電池モジュール3においては、太陽電池セル10,10を含む1組のストリングに、バイパスダイオード50’が導電性接着剤層B3,B4及び導電性架橋部材B5によって並列に接続されて1組の並列回路が形成されている。より具体的には、左側の太陽電池セル10における電極11の導電性基板111の下面右端部と、バイパスダイオード50’における電極53の上面左端部が、導電性接着剤層B4を介して導電性架橋部材B5によって接続されている。また、右側の太陽電池セル10における電極11の導電性基板111の下面略全域と、バイパスダイオード50’における電極51の導電性基板511の下面全域が重なり合うように、導電性接着剤層B3によって接合されている。
【0030】
以上のとおり、太陽電池モジュール3でも、太陽電池モジュール1と同様に、太陽電池セル10,10がそれぞれの一部において順に積層するように、短辺(上下方向)に沿って接続されている。また、バイパスダイオード50’は、太陽電池セル10,10に跨って長手方向に延在し、さらに、太陽電池セル10,10のうち左側の太陽電池セル10に隣接するように、かつ、太陽電池セル10,10の積層方向に沿って重なるように、配置されている。なお、太陽電池セル10,10とバイパスダイオード50’は、電気的接点以外において、空気層や適宜の絶縁層によって絶縁されている。
【0031】
このように構成された太陽電池モジュール3においても、太陽電池モジュール1と同等の作用効果を得ることができる。また、それらに加えて又は代えて、バイパスダイオード50’が太陽電池セル10,10のうち左側の太陽電池セル10に隣接するように配置されるので、太陽電池モジュール3の更なる薄層化の観点から有利である。また、バイパスダイオード50’が導電性架橋部材B5によりその左側の太陽電池セル10に接続されるので、両者の接合を平易に行うことができ、さらに、バイパスダイオード50’に切欠部Cを設けなくてもよいので、製造コストの更なる軽減を図り得る。
【0032】
<第4実施形態>
図6は、本開示の太陽電池モジュールによる第4実施形態の構成の一例を示す(A)概略側面図及び(B)概略平面(底面)図である。太陽電池モジュール4は、バイパスダイオード60に代えてバイパスダイオード60’を備えること以外は、太陽電池モジュール2と同様に構成されたものである。ここで、バイパスダイオード60’は、バイパスダイオード60と略同等の積層構造を有するものの、バイパスダイオード60とは設置状態が異なっている。より具体的には、
図6に示すとおり、バイパスダイオード60’は、バイパスダイオード60に形成された切欠部Cを有しておらず、また、電極61、ダイオード素子層62、及び、電極63の積層順がバイパスダイオード60とは逆になるように、太陽電池セル10,10,10に接合されている。
【0033】
さらに、太陽電池モジュール4においても、太陽電池モジュール2と同様に、太陽電池セル10,10,10が導電性接着剤層B1を介して直列に接続されて1組のストリングが形成されている。またさらに、太陽電池モジュール4においては、太陽電池セル10,10,10を含む1組のストリングに、バイパスダイオード60’が導電性接着剤層B3,B4及び導電性架橋部材B5によって並列に接続されて1組の並列回路が形成されている。より具体的には、左側の太陽電池セル10における電極11の導電性基板111の下面右端部と、バイパスダイオード60’における電極63の上面左端部が、導電性接着剤層B4を介して導電性架橋部材B5によって接続されている。また、右側の太陽電池セル10における電極11の導電性基板111の下面略全域と、バイパスダイオード60’における電極61の導電性基板の下面右半分が重なり合うように、導電性接着剤層B3によって接合されている。
【0034】
以上のとおり、太陽電池モジュール4でも、太陽電池モジュール2と同様に、太陽電池セル10,10,10が、それぞれの一部において順に積層するように、短辺(上下方向)に沿って接続されている。また、バイパスダイオード60’は、太陽電池セル10,10,10に跨って長手方向に延在するように、かつ、太陽電池セル10,10,10のうち左側の太陽電池セル10に隣接するように、かつ、太陽電池セル10,10,10の積層方向に沿って重なるように、配置されている。なお、太陽電池セル10,10,10とバイパスダイオード60’とは、電気的接点以外において、空気層や適宜の絶縁層によって絶縁されている。例えば、中央の太陽電池セル10における電極11の導電性基板111の下面略全域と、バイパスダイオード60’における電極61の下面の略左半分との間には、絶縁層Z1が設けられている。
【0035】
このように構成された太陽電池モジュール4においても、太陽電池モジュール2と同等の作用効果を得ることができる。また、それらに加えて又は代えて、バイパスダイオード60’が、複数(3個)の太陽電池セル10,10,10に跨って配置されるので、バイパスダイオード60’の大面積化を更に有効に図ることができる。また、バイパスダイオード50の必要数を低減することができ、低コスト化につながる。また、太陽電池セル10,10,10のうち中央の太陽電池セル10とバイパスダイオード60’との間に絶縁層Z1を介在させるので、両者間の短絡を更に十分に抑制して、太陽電池モジュール4の信頼性向上に更に寄与することができる。
【0036】
<第5実施形態>
図7~
図9は、本開示の太陽電池モジュールによる第5実施形態の構成の複数例を示す概略平面(底面)図である。
図6は、
図3(B)に示す太陽電池モジュール1の概略平面(底面)図を再掲したものであり、太陽電池モジュール5の構成は、第1実施形態の太陽電池モジュール1と同様である。また、
図7及び
図8に示す太陽電池モジュール6,7は、それぞれ、2個及び3個のバイパスダイオード50を有する。これらの太陽電池モジュール6,7では、それぞれの短辺の長さが、
図6に示すバイパスダイオード50の例えば1/2以上、及び、1/3以上とされていること以外は、
図6のバイパスダイオード50と同等の積層構造を有する。
【0037】
これらの太陽電池モジュール5,6,7の何れにおいても、複数個の太陽電池セル10は、短辺の長さが実質的に等しい矩形状をなし、かつ、1個以上のバイパスダイオード50は、長辺の長さが実質的に等しい矩形状をなしている。この場合、各バイパスダイオード50の長辺の長さが、各太陽電池セル10の短辺の長さの[X/S]倍以下(ここで、[ ]はガウス記号(整数部分)を示す)であると好適である。或いは、各バイパスダイオード50が最大[X/S]+1個の太陽電池セル10に亘って跨設されるように構成されていても好適である。ここで、「S」は、太陽電池セル10の標準試験条件における開放電圧(V)を示し、「-X」は、太陽電池セル10の許容逆電圧(V)を示す。
【0038】
より具体的には、太陽電池セル10の発電素子層12及びバイパスダイオード50のダイオード素子層52がカルコパイライト化合物を含むときに、[X/S]が4であるとより好ましい。なお、図示の太陽電池モジュール5,6,7においては、[X/S]=1の場合が例示されている。
【0039】
また、太陽電池モジュール5,6,7においては、太陽電池セル10の許容電流密度が標準試験条件で生成される短絡電流密度の[n]倍(ここでも、[ ]はガウス記号(整数部分)を示す)であるときに、1組の並列回路の一部を形成する1個以上のバイパスダイオード50の合計面積が太陽電池セル10の1個の面積の1/[n]以上であると好適である。より具体的には、太陽電池セル10の発電素子層12及びバイパスダイオード50のダイオード素子層52がカルコパイライト化合物を含むときに、[n]が11であるとより好ましい。なお、図示の太陽電池モジュール5,6,7においては、[n]≒5又は6の場合が例示されている。
【0040】
さらに、太陽電池モジュール5,6,7においては、バイパスダイオード50がk個のとき、それらのバイパスダイオード50が、太陽電池セル10の長辺の垂直2k等分線の奇数番目の仮想線に沿って延在するように並置されていると好適である。
【0041】
例えば、太陽電池モジュール5の場合、バイパスダイオード50は1個であるので、太陽電池セル10の長辺の垂直2等分線(k=1)は1本(仮想線E51)となり、バイパスダイオード50は、その仮想線E51に沿って延在する(
図6)。また、太陽電池モジュール6の場合、バイパスダイオード50は2個であるので、太陽電池セル10の長辺の垂直4等分線(k=2)は3本(仮想線E61~E63)であり、バイパスダイオード50,50は、それらのうち奇数番目の仮想線E61,E63上に沿って延在するように並置される。さらに、太陽電池モジュール7の場合、バイパスダイオード50は3個であるので、太陽電池セル10の長辺の垂直6等分線(k=3)は5本(仮想線E71~E75)であり、バイパスダイオード50,50,50は、それらのうち奇数番目の仮想線E71,E73,E75上に沿って延在するように並置される。
【0042】
このように構成された太陽電池モジュール5,6,7においても、太陽電池モジュール1,3等と同等の作用効果を得ることができる。また、それらに加えて又は代えて、1組の並列回路の一部を形成する1個以上のバイパスダイオード50の合計面積が1個の太陽電池セル10の面積の1/[n]以上となるように構成し、特に、発電素子層12及びダイオード素子層52がカルコパイライト化合物を含むときに[n]=11とすることにより、バイパスダイオード50の動作時の電流密度を許容範囲内に有効に抑えることができる。その結果、バイパスダイオード50の動作不良をより確実に防止することができ、太陽電池モジュール5,6,7の信頼性向上により一層寄与することができる。
【0043】
また、バイパスダイオード50の長辺の長さを、太陽電池セル10の短辺の長さの[X/S]倍以下に構成し、或いは、バイパスダイオード50を最大[X/S]+1個の太陽電池セル10に亘って跨設させるように構成し、特に、発電素子層12及びダイオード素子層52がカルコパイライト化合物を含むときに[X/S]=4とすることにより、バイパスダイオード50の必要数を最小化し低コスト化しつつ、十分な逆電圧耐性を確保することができる。
【0044】
さらに、バイパスダイオード50がk個(k≧1)のとき、バイパスダイオード50を、太陽電池セル10の長辺の垂直2k等分線の奇数番目の仮想線に沿って延在するように並置させることにより、各バイパスダイオード50の短辺の長さを短くして狭幅化することができる。これにより、バイパスダイオード50への電流集中をより緩和して発熱を更に抑えることができ、信頼性を殊更に向上させることができる。
【0045】
(参考例1)
ここでは、まず、試験体S1~S10として、発電素子層12がカルコパイライト化合物を含む
図1に示す構造の太陽電池セル10を10個準備した。これらの試験体S1~S10の開放電圧S(仕様標準値)は0.6(V)であり、短絡電流密度(仕様標準値)は35mA/cm
2であった。次に、準備した太陽電池セル10の試験体S1~S10を、ダイオード素子層52がカルコパイライト化合物を含む
図2に示す構造のバイパスダイオード50として用いた場合の逆電圧耐性としての許容逆電圧である-X(V)を測定した。得られた測定結果と、算出された[X/S]を、表1にまとめて示す。結果としては、試験体によってばらつきがあることを考慮し、安全設計上の観点から標準偏差を含めて、許容逆電圧である-Xの平均値+標準偏差の2倍(2σ)=-2.6(V)となり、これより、太陽電池セル10の発電素子層12及びバイパスダイオード50のダイオード素子層52がカルコパイライト化合物を含む場合、[X/S]=[-2.6/0.6]=4(整数部分)が好適であることが確認された。
【0046】
【0047】
(参考例2)
参考例1で用いた太陽電池セル10の試験体S1~S10について、許容電流密度(mA/cm2)を測定した。得られた測定結果と、算出された[n](許容電流密度/短絡電流密度の整数部分)を、表2にまとめて示す。結果としては、試験体によってばらつきがあることを考慮し、安全設計上の観点から標準偏差を含めて、許容電流密度の平均値-標準偏差の2倍(2σ)=388(mA/cm2)となり、これより、太陽電池セル10の発電素子層12及びバイパスダイオード50のダイオード素子層52がカルコパイライト化合物を含む場合、[n]=[388/35]=11(整数部分)であること、すなわち、1組の並列回路の一部を形成する1個以上のバイパスダイオード50の合計面積が1個の太陽電池セル10の面積の1/11以上であると好ましいことが確認された。
【0048】
【0049】
以上説明した各実施形態は、本開示の理解を容易にするためのものであり、本開示を限定して解釈するためのものではない。また、各実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状、寸法サイズ、縮尺等は、特に明示のない限り、例示したものや図示のものに限定されず、本開示の要旨の範囲内において適宜変更することができる。さらに、各実施形態の構成を相互に組み合わせることも可能である。例えば、太陽電池モジュール1~7は、上述した各層以外の層を備えていてもよいし、上述した各層を複数備えていてもよい。また、太陽電池セル10やバイパスダイオード50を構成する各層は、上述した主要構成材料の他に、バインダー、界面活性剤等の種々の添加剤を含んでいてもよい。さらに、太陽電池セル10のp型正孔輸送層121やグリッド電極132は、設けなくてもよく、光吸収層122は2層以上設けてもよい。またさらに、バイパスダイオード50、50’、60、60’としては、他にpn接合ダイオード、pin接合ダイオード、in接合ダイオード、pi接合ダイオード、及び、ショットキーバリアダイオード等を用いることもできる。加えて、本開示による太陽電池モジュールの用途は、特に限定されず、例えば、建物、移動体、飛行体のルーフや窓、及び壁面等に貼り付けて発電デバイスとして好ましく利用することができる。また、他にも、街灯やセンサー、デジタルサイネージ用の独立電源デバイス、モバイルエネルギーデバイス、宇宙又は成層圏における発電デバイスとしても好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1~7…太陽電池モジュール、10…太陽電池セル、11,13,51,53,61,63…電極、12…発電素子層、50、50’、60、60’ …バイパスダイオード、52,62…ダイオード素子層、111,511…導電性基板、112,512…下部電極層、121,521…p型正孔輸送層、122…光吸収層、123,523…n型電子輸送層、131,531…上部電極層、132…グリッド電極、522…p型半導体層、532…ベタ電極、B1~B3…導電性接着剤層、B5…導電性架橋部材、C…切欠部、E51,E61~E63,E71~E75…仮想線、Z1…絶縁層
【要約】
【課題】発電面積の減少やバイパスダイオードへの電流集中を解消しつつ、製造コスト及び材料コストの低減を十分に図り、かつ、デバイス構造や用途の多様化及び汎用化に十分に対応する。
【解決手段】太陽電池モジュール1は、第1導電性基板に発電素子層12を有する複数個の太陽電池セル10と、第2導電性基板にダイオード素子層52を有する1個以上のバイパスダイオード50とを備える。太陽電池セル10における各発電素子層12は、第1導電性基板の一面側に配置され、バイパスダイオード50における各ダイオード素子層52は、第1導電性基板の他面側に配置される。また、複数個の太陽電池セル10が直列に接続されて形成される1組のストリングに、バイパスダイオード50が並列に接続されることにより、1組の並列回路が形成されている。
【選択図】
図3