(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】画像判定装置、画像判定方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20241108BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20241108BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G06T7/00 610B
G06N20/00 130
(21)【出願番号】P 2023512885
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 JP2022011315
(87)【国際公開番号】W WO2022215446
(87)【国際公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2021064375
(32)【優先日】2021-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】菅澤 裕也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 吉宣
(72)【発明者】
【氏名】村田 久治
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンド ジェッフリー
(72)【発明者】
【氏名】ズウオウ ヤオ
(72)【発明者】
【氏名】アウング ンウェイ ンウェイ
【審査官】小池 正彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/176990(WO,A1)
【文献】特許第6687962(JP,B1)
【文献】特開2019-095217(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0061016(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の画像と前記複数の第1の画像それぞれに紐づけられた第1のラベルとを含む第1の教師データセットを用いて1以上の種類の機械学習モデルの学習を行うことで1以上の第1のモデルを得、かつ、前記複数の第1の画像と異なる複数の第2の画像と前記複数の第2の画像それぞれに紐づけられた第2のラベルと、前記第1の教師データセットの少なくとも一部とを含む1以上の第2の教師データセットを用いて、1以上の種類の機械学習モデルの学習を行うことで1以上の第2のモデルを得る学習部と、
対象画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部で取得された前記対象画像に対して、前記1以上の第1のモデルのうちの1つと前記1以上の第2のモデルのうちの1つとの少なくとも2つを用いることで得た前記対象画像のラベルの判定結果を、出力する判定部と、を備える、
画像判定装置。
【請求項2】
前記複数の第1の画像それぞれ及び前記複数の第2の画像のそれぞれは、所定期間における製造品の検査画像である、
請求項1に記載の画像判定装置。
【請求項3】
前記複数の第1の画像のそれぞれは、前記所定期間のうち第1期間において得た検査画像であり、
前記複数の第2の画像は、前記所定期間のうち前記第1期間の後において得た検査画像である、
請求項2に記載の画像判定装置。
【請求項4】
前記1以上の第2の教師データセットのうちの1つの第2の教師データセットは、前記第1の教師データセットと比較して、特定の日時における検査画像の割合が大きい、
請求項2に記載の画像判定装置。
【請求項5】
前記1以上の第2の教師データセットのうちの1つの第2の教師データセットは、前記第1の教師データセットと比較して、特定の生産ラインの検査により得られた検査画像の割合が大きい、
請求項2に記載の画像判定装置。
【請求項6】
前記判定部は、さらに、
前記1以上の第1のモデルそれぞれの出力と前記1以上の第2のモデルのそれぞれの出力を入力として学習済の第3の機械学習モデルに、前記1以上の第1のモデルの少なくとも1つ及び前記1以上の第2のモデルの少なくとも1つからなる組み合わせを選択させ、
選択させた前記組み合わせを用いることで得た前記対象画像のラベルの判定結果を出力する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の画像判定装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記1以上の第1のモデルのそれぞれの判定結果と前記1以上の第2のモデルそれぞれの判定結果とを、事前に設定されたルールに従って統合し、前記対象画像のラベルの判定結果として出力する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の画像判定装置。
【請求項8】
さらに、
前記第1の教師データセットの一部と前記1以上の第2の教師データセットのそれぞれの一部とからなる検証用データセットに対して、前記1以上の第1のモデルの少なくとも1つ及び前記1以上の第2のモデルの少なくとも1つからなる組み合わせを用いることで得た前記対象画像のラベルの判定結果の判定精度を表示する表示部を備える、
請求項1~7のいずれか1項に記載の画像判定装置。
【請求項9】
複数の第1の画像と前記複数の第1の画像それぞれに紐づけられた第1のラベルとを含む第1の教師データセットを用いて1以上の種類の機械学習モデルの学習を行うことで1以上の第1のモデルを得、かつ、前記複数の第1の画像と異なる複数の第2の画像と前記複数の第2の画像それぞれに紐づけられた第2のラベルと、前記第1の教師データセットの少なくとも一部とを含む1以上の第2の教師データセットを用いて、1以上の種類の機械学習モデルの学習を行うことで1以上の第2のモデルを得る学習ステップと、
対象画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップにおいて取得された前記対象画像に対して、前記1以上の第1のモデルのうちの1つと前記1以上の第2のモデルのうちの1つとの少なくとも2つを用いることで得た前記対象画像のラベルの判定結果を、出力する判定ステップと、を含む、
画像判定方法。
【請求項10】
複数の第1の画像と前記複数の第1の画像それぞれに紐づけられた第1のラベルとを含む第1の教師データセットを用いて1以上の種類の機械学習モデルの学習を行うことで1以上の第1のモデルを得、かつ、前記複数の第1の画像と異なる複数の第2の画像と前記複数の第2の画像それぞれに紐づけられた第2のラベルと、前記第1の教師データセットの少なくとも一部とを含む1以上の第2の教師データセットを用いて、1以上の種類の機械学習モデルの学習を行うことで1以上の第2のモデルを得る学習ステップと、
対象画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップにおいて取得された前記対象画像に対して、前記1以上の第1のモデルのうちの1つと前記1以上の第2のモデルのうちの1つとの少なくとも2つを用いることで得た前記対象画像のラベルの判定結果を、出力する判定ステップと、を、
コンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機械学習のモデルを用いた画像判定装置、画像判定方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、学習モデルを用いて歩行者等の検知対象物を表す画像を高精度に検知できる技術が開示されている。特許文献1によれば、事前に学習された複数の学習モデルのうち撮像手段によって撮像された画像のゲインに対応する一つの学習モデルを選択することで、当該画像に映る検知対象物を高精度に検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、撮像手段のメンテナンスなど諸々の原因により、撮像手段によった撮像される画像に違いが生じてしまう場合がある。このような場合、撮像手段によって撮像された画像のゲインに対応する一つの学習モデルで検知対象物を検知しても精度が大きく低下してしまうことがある。さらに、画像の違いを評価する基準の調整が難しい場合や、そもそも人が一目では分からないような違いであった場合には、複数の学習モデルの準備や検査時に学習モデルを選択することができないため、検知対象物を検知する精度を向上できないことになる。
【0005】
換言すると、特許文献1では、機械学習のモデルに対象画像のラベルを判定させるタスクにおいて、画像に人が一目でわからないような違いが生じてしまうと、判定精度を向上させることができないという課題がある。
【0006】
本開示は、上述の事情を鑑みてなされたもので、機械学習のモデルを用いた画像判定の精度が低下した場合でも精度を向上させることができる画像判定装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の一形態に係る画像判定装置は、複数の第1の画像と前記複数の第1の画像それぞれに紐づけられた第1のラベルとを含む第1の教師データセットを用いて1以上の種類の機械学習モデルの学習を行うことで1以上の第1のモデルを得、かつ、前記複数の第1の画像と異なる複数の第2の画像と前記複数の第2の画像それぞれに紐づけられた第2のラベルと、前記第1の教師データセットの少なくとも一部とを含む1以上の第2の教師データセットを用いて、1以上の種類の機械学習モデルの学習を行うことで1以上の第2のモデルを得る学習部と、対象画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部で取得された前記対象画像に対して、前記1以上の第1のモデルのうちの1つと前記1以上の第2のモデルのうちの1つとの少なくとも2つを用いることで得た前記対象画像のラベルの判定結果を、出力する判定部と、を備える。
【0008】
これにより、機械学習のモデルを用いた画像判定の精度が低下した場合でも精度を向上させることができる。
【0009】
なお、これらの全般的または具体的な態様は、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータで読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示により、機械学習のモデルを用いた画像判定の精度が低下した場合でも精度を向上させることができる画像判定装置などを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る画像判定装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る画像判定装置の機能をソフトウェアにより実現するコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る教師データセットとなる新旧データセットの一例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る教師データセットとなる新旧データセットの別の例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る教師データセットとなる新旧データセットのさらに別の例を説明するための図である。
【
図6A】
図6Aは、実施の形態に係るルール情報の一例を説明するための図である。
【
図6B】
図6Bは、実施の形態に係るルール情報の別の例を説明するための図である。
【
図6C】
図6Cは、実施の形態に係るルール情報のさらに別の例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る旧機械学習モデル及び新機械学習モデルの組み合わせを機械学習により選択する方法の概念を示す図である。
【
図8A】
図8Aは、実施の形態に係る組み合わせ対象の機械学習モデルの一例と検証用データセットとを示す図である。
【
図8B】
図8Bは、検証用データセットに含まれる各画像に対する、組み合わせ対象の機械学習モデルそれぞれの出力の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施の形態に係るユーザに旧機械学習モデル及び新機械学習モデルの最適な組み合わせを選択させるための一覧表の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本実施の形態における画像判定装置の動作概要を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施の形態に係る教師データ1と教師データ2とを示す図である。
【
図12】
図12は、実施の形態に係る学習時データ(データセット1)と、直近データとに対する機械学習モデルの精度を定性的に示す図である。
【
図13】
図13は、
図11に示すモデル1とモデル2との学習に用いた教師データの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示す。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、規格、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する場合がある。
【0013】
(実施の形態)
まず、本実施の形態に係る画像判定装置及び画像判定方法について説明する。
【0014】
[1.画像判定装置10]
以下、本実施の形態に係る画像判定装置10の構成等について説明する。
図1は、本実施の形態に係る画像判定装置10の機能構成を示すブロック図である。
【0015】
画像判定装置10は、コンピュータ等で実現され、機械学習のモデルを用いた画像判定の精度が低下した場合でも精度を向上させることができる装置である。
【0016】
本実施の形態では、
図1に示されるように、画像判定装置10は、学習部101と、記憶部102と、画像取得部103と、判定部104とを備える。なお、画像取得部103と、判定部104とは、学習部101と別の装置であってもよく、この場合、記憶部102に保存されているモデル1-1~モデル2-2を記憶するメモリまたは記憶部を備えていればよい。
【0017】
[1-1.ハードウェア構成]
図2は、本実施の形態に係る画像判定装置10の機能をソフトウェアにより実現するコンピュータ1000のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0018】
本実施の形態に係る画像判定装置10の機能構成を説明する前に、
図2を用いて、本実施の形態に係る画像判定装置10のハードウェア構成の一例について説明する。
【0019】
コンピュータ1000は、
図2に示すように、入力装置1001、出力装置1002、CPU1003、内蔵ストレージ1004、RAM1005、読取装置1007、送受信装置1008及びバス1009を備えるコンピュータである。入力装置1001、出力装置1002、CPU1003、内蔵ストレージ1004、RAM1005、読取装置1007及び送受信装置1008は、バス1009により接続される。
【0020】
入力装置1001は入力ボタン、タッチパッド、タッチパネルディスプレイなどといったユーザインタフェースとなる装置であり、ユーザの操作を受け付ける。なお、入力装置1001は、ユーザの接触操作を受け付ける他、音声での操作、リモコン等での遠隔操作を受け付ける構成であってもよい。
【0021】
出力装置1002は、入力装置1001と兼用されており、タッチパッドまたはタッチパネルディスプレイなどによって構成され、ユーザに知らすべき情報を通知する。
【0022】
内蔵ストレージ1004は、フラッシュメモリなどである。また、内蔵ストレージ1004は、画像判定装置10の機能を実現するためのプログラム、及び、画像判定装置10の機能構成を利用したアプリケーションの少なくとも一方が、予め記憶されていてもよい。また、内蔵ストレージ1004は、モデル1-1~モデル2-2などが記憶されるとしてもよい。
【0023】
RAM1005は、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory)であり、プログラム又はアプリケーションの実行に際してデータ等の記憶に利用される。
【0024】
読取装置1007は、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの記録媒体から情報を読み取る。読取装置1007は、上記のようなプログラムやアプリケーションが記録された記録媒体からそのプログラム、アプリケーションを読み取り、内蔵ストレージ1004に記憶させる。
【0025】
送受信装置1008は、無線又は有線で通信を行うための通信回路である。送受信装置1008は、例えばネットワークに接続されたサーバ装置と通信を行い、サーバ装置から上記のようなプログラム、アプリケーションをダウンロードして内蔵ストレージ1004に記憶させてもよい。
【0026】
CPU1003は、中央演算処理装置(Central Processing Unit)であり、内蔵ストレージ1004に記憶されたプログラム、アプリケーションをRAM1005にコピーし、そのプログラムやアプリケーションに含まれる命令をRAM1005から順次読み出して実行する。
【0027】
続いて、本実施の形態に係る画像判定装置10の各機能構成について説明する。
【0028】
本実施の形態では、画像判定装置10は、機械学習を用いて製造品の検査画像を判定する検査装置を構成するとして説明する。また、以下では、製造品の検査画像の一例として、半導体回路が形成されたウェハを光学的に撮影した画像であるとして説明するが、これに限らない。製造品の検査画像は、例えば二次電池の断面図を光学的に撮影した画像であってもよく、光学で製造品を撮影することで得た2次元の画像であればよい。
【0029】
[1-2.学習部101]
学習部101は、教師データとなるデータセット1等を用いて、機械学習のモデルを学習させる演算装置である。
【0030】
より具体的には、学習部101は、複数の第1の画像と複数の第1の画像それぞれに紐づけられた第1のラベルとを含む第1の教師データセットを用いて1以上の種類の機械学習モデルの学習を行うことで1以上の第1のモデルを得る。本実施の形態では、学習部101は、予め用意されたデータセット1を教師データとして用いて、1以上の種類のモデルの学習を行うことで、モデル1-1、モデル1-2、・・・を得る。
【0031】
また、学習部101は、1以上の第2の教師データセットを用いて、1以上の種類の機械学習モデルの学習を行うことで1以上の第2のモデルを得る。ここで、1以上の第2の教師データセットのそれぞれは、複数の第1の画像と異なる複数の第2の画像と複数の第2の画像それぞれに紐づけられた第2のラベルと、第1の教師データセットの少なくとも一部とを含んでいる。本実施の形態では、学習部101は、データセット1の少なくとも1部のデータと新たなデータ(更新データ)とを含む更新データセット2を教師データとして用いて、1以上の種類のモデルの学習を行うことで、モデル2-1、モデル2-2、・・・を得る。
【0032】
なお、モデル2-1、モデル2-2、・・・は、モデル1-1、モデル1-2、・・・の後に得られる機械学習モデルである。このため、
図1に示されるように、モデル1-1、モデル1-2、・・・は旧機械学習モデルと総称でき、モデル2-1、モデル2-2、・・・・は新機械学習モデルと総称できる。
【0033】
<データセット>
以下、データセット1及び更新データセット2について説明する。
【0034】
データセット1は、画像判定装置10を検査工程に導入する前、すなわち検査実施前に収集された複数の画像を含む教師データセットである。更新データセット2は、画像判定装置10を検査工程に導入し所定の期間経過後に収集された複数の画像を含む教師データセットである。このように、更新データセット2は、データセット1の時間的後に取得されるデータセットであるので、更新データセット2を新データセットと称し、データセット1を旧データセットと称することもできる。
【0035】
本実施の形態では、データセット1及び更新データセット2に含まれる画像は、例えば所定期間における製造品の検査画像である。ここで、例えば、データセット1に含まれる複数の画像(第1の画像)のそれぞれは、所定期間のうち第1期間において得た検査画像であり、データセット2に含まれる複数の画像(第2の画像)は、所定期間のうち第1期間の後において得た検査画像であってもよい。
【0036】
図3は、実施の形態に係る教師データセットとなる新旧データセットの一例を説明するための図である。
【0037】
データセット1は、検査実施前に収集された大量の検査画像と大量の検査画像それぞれに紐づけられたラベルとを含む旧データセットである。
図3に示されるデータセット1の例では、N
1枚の検査画像には打痕不良を示すラベル、N
2枚の検査画像には傷不良を示すラベル、N
3枚の検査画像には良品を示すラベル、N
4枚の検査画像には欠け不良を示すラベルが紐づけられている。また、データセット1は様々な条件からバランスよく収集された画像である。例えば製造条件AからN
5枚、製造条件BからN
6枚、製造条件CからN
7枚を、N
5、N
6、N
7が全て所定の枚数以上になるように集める。
【0038】
更新データセット2は、検査導入後、例えば検査実施100日目にモデル1の判定精度が低下したため急遽収集された複数の検査画像と複数の検査画像それぞれに紐づけられたラベルとを含む新データセットである。
図3に示される更新データセット2の例では、M
1枚の検査画像には不良を示すラベル、M
2枚の検査画像には良品を示すラベルが紐づけられている。
【0039】
なお、
図3では、さらに、更新データセット3が示されている。更新データセット3は、例えば検査実施300日目にモデル1及びモデル2による判定精度が低下したため急遽収集された複数の検査画像と、複数の検査画像それぞれに紐づけられたラベルとを含む新データセットである。
図3に示される更新データセット3の例では、L
1枚の検査画像には不良を示すラベル、L
2枚の検査画像には良品を示すラベルが紐づけられている。
【0040】
このように、更新データセット2は、データセット1の後において得た検査画像を含み、更新データセット3は、データセット1の後かつ更新データセット2の後において得た検査画像を含んでいる。
【0041】
なお、
図3では、モデル1の教師データセットとして、データセット1が用いられ、モデル2の教師データセットとして、データセット1と更新データセット2とが用いられることが示されている。またモデル2の後に得られるモデル3の教師データセットとして、データセット1と更新データセット3とが用いられることが示されている。また、
図3では、検査導入時には、モデル1を用いて検査が実施され、検査実施100日目以降にはモデル1と2を併用して検査が実施され、検査実施300日目以降にはモデル1と3を併用して検査が実施されていることを示している。もちろん、検査実施300日目以降にはモデル1~3を併用して検査が実施されていてもよい。
【0042】
図4は、実施の形態に係る教師データセットとなる新旧データセットの別の例を説明するための図である。
【0043】
図4では、
図3と比較して、更新データセット3の例が示されていない一方でデータセット1は
図3に示されるものと同じである。更新データセット2は、検査導入後、例えば検査実施100日目にモデル1の判定精度が低下したため急遽収集された40枚の検査画像と40枚の検査画像それぞれに紐づけられたラベルとを含む新データセットである。
図4に示される更新データセット2の例では、20枚の検査画像には不良を示すラベル、20枚の検査画像には良品を示すラベルが紐づけられている。
【0044】
このように、
図4に示される例では、更新データセット2は、データセット1の後において得た検査画像を含んでいる。また、
図4示される例では、モデル1の教師データセットとして、データセット1が用いられ、モデル2の教師データセットとしては、データセット1の一部と更新データセット2とが用いられる。更新データセット2に含まれる検査画像の数が少ない場合、モデル2の教師データセットに、データセット1に含まれる検査画像の数を減らした上で追加するためである。なお、
図4では、モデル2の教師データセットとして、データセット1の一割(×0.1)をデータセット1の一部として用いる例が示されているが、これに限られず、任意に決定することができる。例えば、データセット1の打痕不良画像以外の画像を減らした上で追加することもできる。また、
図4では、
図3と同様に、検査導入時には、モデル1を用いて検査が実施され、検査実施100日目以降にはモデル1と2を併用して検査が実施されることを示している。
【0045】
図3及び
図4で説明したように、教師データセットとなる新旧データセットにおいて、新データセットに含まれる検査画像の数は、旧データセットに含まれる検査画像の数よりも少なくなる。この関係は、製造品の生産ラインを複数展開する場合にも活用できる。つまり、同じ製造品を複数の生産ラインそれぞれで生産する際、全ての生産ラインそれぞれで検査画像を機械学習のモデルの学習で精度を十分確保できる数だけ収集するのは莫大な工数が必要となり困難である。このため、複数の生産ラインからまんべんなく収集した検査画像を、旧データセットとし、特定の生産ラインから収集した検査画像であって様々なバリエーションを網羅できていない検査画像を、新データセットとして、モデル1及びモデル2に用いればよい。この場合の例を
図5を用いて説明する。
【0046】
図5は、実施の形態に係る教師データセットとなる新旧データセットのさらに別の例を説明するための図である。
図5では、新旧データセットの関係を複数展開する製造品の生産ラインから収集できる検査画像に活用した場合の例が示されている。
【0047】
データセット1は、旧データセットとして、複数の生産ラインからまんべんなく収集した大量の検査画像と大量の検査画像それぞれに紐づけられたラベルとを含む。
図5に示されるデータセット1の例では、N
1枚の検査画像には打痕不良を示すラベル、N
2枚の検査画像には傷不良を示すラベル、N
3枚の検査画像には良品を示すラベル、N
4枚の検査画像には欠け不良を示すラベルが紐づけられている。これらの画像は、例えば生産ラインAからN
5枚、生産ラインBからN
6枚、生産ラインCからN
7枚を、N
5、N
6、N
7が全て所定の枚数以上になるように集める。
【0048】
更新データセット2Aは、新データセットとして、例えば生産ラインAから収集された複数の検査画像と複数の検査画像それぞれに紐づけられたラベルとを含む。
図5に示される更新データセット2Aの例では、M
1a枚の検査画像には良品であることを示すラベル、M
2a枚の検査画像には不良品であることを示すラベルが紐づけられている。
【0049】
同様に、更新データセット2Bは、新データセットとして、例えば生産ラインBから収集された複数の検査画像と複数の検査画像それぞれに紐づけられたラベルとを含む。
図5に示される更新データセット2Bの例では、M
1b枚の検査画像には良品であることを示すラベル、M
2b枚の検査画像には良品であることを示すラベル、が紐づけられている。
【0050】
生産ラインC、Dから収集された更新データセット2C及び2D(不図示)も同様のため説明を省略する。
【0051】
このように、データセット1は、全ての生産ラインからまんべんなく収集した検査画像を含んでいる一方で、更新データセット2A~2Dは、特定の生産ラインにより得られた検査画像を含んでいる。
【0052】
なお、
図5では、モデル1の教師データセットとして、データセット1が用いられ、生産ライン2Aで用いるモデル2Aの教師データセットとして、データセット1と更新データセット2Aとが用いられることが示されている。同様に、
図5では、生産ライン2Bで用いるモデル2Bの教師データセットとして、データセット1と更新データセット2Bとが用いられることが示されている。生産ライン2C、2Dで用いるモデル2C、2Dの教師データセットも同様であるので、説明を省略するが、特定の生産ラインで用いるモデル2A等の教師データセットでは、モデル1の教師データセットと比較して、特定の生産ラインの検査で得られた検査画像の割合を大きくするためである。
【0053】
このようにして、検査導入時には、モデル1とモデル2A~2Dとをそれぞれ組み合わせて用いて生産ラインでの検査が実施される。
【0054】
[1-3.記憶部102]
記憶部102は、HDD(Hard Disk Drive)またはメモリ等で構成され、学習部101により学習された旧機械学習モデルと新機械学習モデルとを記憶する。本実施の形態では、記憶部102は、学習部101により学習された例えばモデル1-1、モデル1-2、・・・、モデル2-1、モデル2-2、・・・・などを記憶する。
【0055】
<機械学習モデル>
以下、本実施の形態で用いられる機械学習モデルについて説明する。
【0056】
モデル1-1、モデル1-2、・・・は、同一のデータセット1を教師データセットとして用いて学習された1以上の種類の機械学習モデルである。モデル2-1、モデル2-2、・・・は、データセット1の少なくとも一部と更新データセット2とを含む同一の教師データセットを用いて学習された1以上の種類の機械学習モデルである。
【0057】
ここで、機械学習モデルの種類としては、ロジスティック回帰、サポートベクターマシン、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、DNN(Deep Neural Network)など、教師あり学習されるモデルであればよい。また、機械学習のモデルの種類として、オートエンコーダを含めてもよいし、良品データを用いて生成され、外れ値を異常度として出力する良品モデルを含めてもよい。つまり、本実施の形態に係る機械学習モデルは、例として挙げた種類のうちの1以上の種類のものでよい。
【0058】
なお、記憶部102は、
図1に示す学習済のモデル1-1、モデル1-2、・・・、モデル2-1、モデル2-2、・・・・などを記憶する場合に限らず、モデル3-1、モデル3-2、・・・・などさらにモデルN-M(NとMとは正の整数)を記憶するとしてもよい。
【0059】
また、機械学習モデルの種類として1種類のみを適用する場合、
図1に示す学習済のモデル1-1、モデル1-2、・・・、モデル2-1、モデル2-2、・・・・は、モデル1、モデル2と表記される。機械学習モデルの種類として複数種類を適用する場合、モデルN-Mのうち、Mが種類を示し、Nが用いられた教師データセットの異同を示す。つまり、同一のMの値を示すモデルN-Mは同一の種類の機械学習モデルであることを示し、同一のNの値を示すモデルN-Mは、同一の教師データセットを用いて学習されていることを示す。
【0060】
[1-4.画像取得部103]
画像取得部103は、対象画像を取得する。
【0061】
本実施の形態では、画像取得部103は、例えば生産ラインの製造品の検査画像の検査で得られた検査画像を対象画像として取得する。
【0062】
[1-5.判定部104]
判定部104は、画像取得部103で取得された対象画像に対して、1以上の第1のモデルのうちの1つと1以上の第2のモデルのうちの1つとの少なくとも2つを用いることで得た対象画像のラベルの判定結果を、出力する。ここで、判定部104は、1以上の第1のモデルのそれぞれの判定結果と1以上の第2のモデルそれぞれの判定結果とを、事前に設定されたルールに従って統合し、対象画像のラベルの判定結果として出力すればよい。
【0063】
例えば、判定部104は、
図1に示される旧機械学習モデル及び新機械学習モデルとして例えばモデル1-1とモデル2-1との2つを用いる(併用する)とする。この場合、判定部104は、モデル1-1とモデル2-1とを用いて対象画像のラベルとして対象画像に映る製造品の良否(OK/NG)などを判定し、事前に設定されたルールに従って、それらを統合した判定結果を出力する。
【0064】
<事前に設定されたルールと統合した判定結果>
ここで、事前に設定されたルールと、それらを統合した判定結果について例を挙げて説明する。
【0065】
図6Aは、実施の形態に係るルール情報の一例を説明するための図である。
図6Aでは、検査において見逃しを減らすためのルールが事前に設定された場合の例が示されている。また、
図6Aでは、例えばモデル1-1とモデル2-1との2つを用いて、判定部104により対象画像に映る製造品の良否(OK/NG)が判定され、事前に設定された見逃しを減らすためのルールに従って、それらを統合した判定結果が示されている。
【0066】
すなわち、
図6Aには、モデル1-1及びモデル2-1による出力(判定結果)が共にOKである場合のみ、統合された判定結果としてOKであるとする場合の例が示されている。
【0067】
図6Bは、実施の形態に係るルール情報の別の例を説明するための図である。
図6Bでは、検査において過検出を減らすためのルールが事前に設定された場合の例が示されている。また、
図6Bでは、例えばモデル1-1とモデル2-1との2つを用いて、判定部104により対象画像に映る製造品の良否(OK/NG)が判定され、事前に設定された過検出を減らすためのルールに従って、それらを統合した判定結果が示されている。
【0068】
すなわち、
図6Bには、モデル1-1及びモデル2-1のいずれかの出力(判定結果)がOKである場合には、統合された判定結果としてOKであるとする場合の例が示されている。
【0069】
図6Cは、実施の形態に係るルール情報のさらに別の例を説明するための図である。
図6Cでは、
図6Aに示すルールでは良品であっても不良と判定してしまう場合を減らすためのルールが事前に設定された場合の例が示されている。また、
図6Cでも、例えばモデル1-1とモデル2-1との2つを用いて、判定部104により対象画像に映る製造品の良否(OK/NG)が判定され、事前に設定されたルールに従って、それらを統合した判定結果が示されている。
【0070】
図6Cでは、モデル1-1及びモデル2-1による判定結果が共にOKである場合のみ、統合された判定結果としてOKであるとする一方、モデル1-1及びモデル2-1のいずれかの出力(判定結果)がNGであるときに、グレーすなわち人に確認させる場合の例が示されている。
【0071】
<旧機械学習モデル及び新機械学習モデルの組み合わせの選択方法1>
上記では、判定部104は、
図1に示される旧機械学習モデル及び新機械学習モデルの組み合わせとして、例えばモデル1-1とモデル2-1との2つを用いる(併用する)場合を例に挙げて説明したが、組み合わせの例はこれに限定されない。
【0072】
例えば、旧機械学習モデル及び新機械学習モデルの組み合わせを、機械学習により選択してもよい。
【0073】
図7は、実施の形態に係る旧機械学習モデル及び新機械学習モデルの組み合わせを機械学習により選択する方法の概念を示す図である。
【0074】
図7の(a)には、旧機械学習モデルとして学習済のモデル1-1、モデル1-2及びモデル1-3を用いることができ、新機械学習モデルとして学習済のモデル2-1、モデル2-2及びモデル2-3を用いることができる場合の例が示されている。そして、
図7の(b)には、これらすべてのモデルから最適な組み合わせを選択して得られた組み合わせが、モデル1-1、モデル2-1及びモデル2-3であることが示されている。
【0075】
例えば、
図7の(a)に示す新旧機械学習モデルのすべてから2つまたは3つを選択した組み合わせで、例えばロジスティック回帰を実施し、得られた判定精度から最もよい組み合わせを選択するとしてもよい。なお、ロジスティック回帰の代わりにサポートベクターマシン、ランダムフォレスト、Gradient Boost、ニューラルネットワーク、深層学習などの機械学習を用いてもよい。
【0076】
また、例えば、判定部104は、別途学習された機械学習モデルを用いて、旧機械学習モデル及び新機械学習モデルの最適な組み合わせを選択してもよい。より具体的には、判定部104は、さらに、1以上の第1のモデルそれぞれの出力と1以上の第2のモデルのそれぞれの出力を入力として学習済の第3の機械学習モデルに、1以上の第1のモデルの少なくとも1つ及び1以上の第2のモデルの少なくとも1つからなる組み合わせを選択させてもよい。そして、判定部104は、選択させた組み合わせを用いることで得た対象画像のラベルの判定結果を出力するとしてもよい。
【0077】
ここで、旧機械学習モデル及び新機械学習モデルの最適な組み合わせを選択するための(つまり組み合わせ選択用の)機械学習モデルの学習方法と旧機械学習モデル及び新機械学習モデルの最適な組み合わせ方法とについて、
図8A、
図8B及び
図9を用いて説明する。
【0078】
図8Aは、実施の形態に係る組み合わせ対象の機械学習モデルの一例と検証用データセットとを示す図である。
図8Bは、検証用データセットに含まれる各画像に対する、組み合わせ対象の機械学習モデルそれぞれの出力の一例を示す図である。検証用データセットは、例えば、上述したデータセット1及び更新データセット1などを含む教師データの一部で構成される。
【0079】
図8Aには、組み合わせ対象の機械学習モデルの一例として、旧機械学習モデルである学習済のモデル1-1及びモデル1-2と、新機械学習モデルである学習済のモデル2-1及びモデル2-2とが示されている。また、検証用データセットは、複数の画像が含まれており、各機械学習モデルに入力するために用いられる。
【0080】
つまり、検証用データセットに含まれる各画像を、組み合わせ対象の機械学習モデルそれぞれに入力すると、
図8Bに示すような各機械学習モデルの各画像に対する出力(判定結果)を得ることができる。
【0081】
次に、例えば
図8Bに示すような各機械学習モデルの出力からn個を選んで説明変数として、0(OK)または1(NG)などのラベルを予測する組み合わせ選択用の機械学習モデルを作成する。
図8Aの例で説明すると、n=2の場合の組み合わせは、(モデル1-1、モデル2-1)、(モデル1-1、モデル2-2)、(モデル1-2、モデル2-1)、(モデル1-2、モデル2-2)である。
【0082】
なお、L1正則化、L2正則化等の正則化を活用して、使用する説明変数の数を少なくしてもよい。この場合、結果として使用されなかった出力を省いて組み合わせ選択用の機械学習モデルを作成することができる。また、新機械学習モデル及び旧機械学習モデルから少なくとも1つを含む組み合わせを用いて組み合わせ選択用の機械学習モデルを作成する場合に限らず、新機械学習モデルまたは旧機械学習モデルのみの組み合わせを用いて組み合わせ選択用の機械学習モデルを作成してもよい。
【0083】
これにより、作成した組み合わせ選択用の機械学習モデルの精度を評価し、精度の良い組み合わせを選択することができる。
【0084】
したがって、判定部104は、旧機械学習モデルと新機械学習モデルとの出力を入力する組み合わせ選択用の機械学習モデルを用いて、精度の良い新旧の機械学習モデルの組み合わせを判定して選択することができる。
【0085】
<旧機械学習モデル及び新機械学習モデルの組み合わせの選択方法2>
上記では旧機械学習モデル及び新機械学習モデルの組み合わせを、機械学習により選択する方法について説明したがこれに限らない。組み合わせの精度などの情報をGUI(Graphical User Interface)表示させて、ユーザに選択させてもよい。
【0086】
より具体的には、画像判定装置10は、検証用データセットに対して、1以上の第1のモデルの少なくとも1つ及び1以上の第2のモデルの少なくとも1つからなる組み合わせを用いることで得た対象画像のラベルの判定結果の判定精度を表示する表示部を備えてもよい。検証用データセットは、例えば第1の教師データセットの一部と1以上の第2の教師データセットのそれぞれの一部とからなる。
【0087】
つまり、画像判定装置10は、さらに表示部または表示装置を備えてもよい。もちろん、画像判定装置10は、外部の表示部または表示装置と接続しているだけでもよい。そして、画像判定装置10は、旧機械学習モデルそれぞれの精度と、新機械学習モデルのそれぞれの精度と旧機械学習モデル及び新機械学習モデルの組み合わせの精度との一覧を当該表示部または当該表示装置表示させ、ユーザに最適な組み合わせを選択させてもよい。
【0088】
図9は、実施の形態に係るユーザに旧機械学習モデル及び新機械学習モデルの最適な組み合わせを選択させるための一覧表の一例を示す図である。
図9及では、検証用データセットの一例として、データセット1と、更新データセット2との2種類を用いたときの精度(%)が示されている。また、組み合わせを選択する際の判断材料の一つの例として、それぞれの判定速度(タクトタイム)が示されている。
【0089】
ユーザは、
図9のような一覧を見て、旧機械学習モデル及び新機械学習モデルの最適な組み合わせを選択すればよい。
【0090】
なお、
図9のような一覧は、検索、絞り込みまたはソートなどの簡単な操作ができてもよい。この場合、ユーザでなく、判定部104が、データセット1に対する精度で上記の一覧をソートして、データセット1に対する精度が90%以上であるなどの所定の精度以上、かつ、更新データセット2に対する最もよい精度の組み合わせを選択するとしてもよい。また、判定部104は、判定速度(タクトタイム)で上記の一覧をソートして、所定の判定速度以内で、最もよい精度の組み合わせを選択するとしてもよい。
【0091】
[2.画像判定装置10の動作]
以上のように構成された画像判定装置10の動作の一例について以下説明する。
【0092】
図10は、本実施の形態における画像判定装置10の動作概要を示すフローチャートである。
【0093】
まず、画像判定装置10は、データセット1を教師データとして用いて学習させて1以上のモデル1を得、かつ、更新データセット2を含むデータセットを教師データとして用いて学習させて1以上のモデル2を得る(S1)。より具体的には、画像判定装置10の学習部101は、複数の第1の画像と複数の第1の画像それぞれに紐づけられた第1のラベルとを含む第1の教師データセットを用いて1以上の種類の機械学習モデルの学習を行うことで1以上の第1のモデルを得る。また、学習部101は、1以上の第2の教師データセットを用いて、1以上の種類の機械学習モデルの学習を行うことで1以上の第2のモデルを得る。ここで、1以上の第2の教師データセットのそれぞれは、複数の第1の画像と異なる複数の第2の画像と複数の第2の画像それぞれに紐づけられた第2のラベルと、第1の教師データセットの少なくとも一部とを含んでいる。
【0094】
次に、画像判定装置10は、対象画像を取得する(S2)。本実施の形態では、画像取得部103は、例えば生産ラインの製造品の検査画像の検査で得られた検査画像を対象画像として取得する。
【0095】
次に、画像判定装置10は、対象画像に対して、1以上のモデル1のうち1つと1以上のモデル2のうちの1つとの少なくとも2つを用いて得た対象画像のラベルの判定結果を出力する(S3)。より具体的には、画像判定装置10の判定部104は、画像取得部103で取得された対象画像に対して、1以上の第1のモデルのうちの1つと1以上の第2のモデルのうちの1つとの少なくとも2つを用いることで得た対象画像のラベルの判定結果を、出力する。なお、判定部104は、1以上の第1のモデルのそれぞれの判定結果と1以上の第2のモデルそれぞれの判定結果とを、事前に設定されたルールに従って統合し、対象画像のラベルの判定結果として出力すればよい。このようにして、本実施の形態では、画像判定装置10は、少なくとも2つの機械学習のモデルを併用して、対象画像に映る製造品の良否(OK/NG)を判定することができる。
【0096】
[3.効果等]
例えば、検査を実施するために検査導入前に旧データセットで学習させたモデル1が、検査実施後にメンテナンスなど諸々の原因により、モデル1の判定精度が低下した場合には、急遽収集した新データセットでモデル2を学習する。新データセットに含まれるモデル1の判定精度が低下した検査画像は、旧データセットに含まれる検査画像と比較して人が一目でわからないような違いが生じている。
【0097】
比較例では、モデル1を新データセットで再学習させたモデル2のみを用いて検査を実施する。しかしながら、旧データセットに類する検査画像に対してはモデル1よりも精度が低下してしまう場合がある。
【0098】
そこで、本実施の形態によれば、モデル1及びモデル2を併用(組み合わせて)して検査を実施するので、旧データセットに類する検査画像及び新データセットに類する検査画像に対しても精度を高く維持できる。
【0099】
このように、本実施の形態によれば、機械学習のモデルを用いた画像判定の精度が低下した場合でも精度を向上させることができる。
【0100】
なお、精度は、正解率に限らず、適合率、再現率、適合率及び再現率の調和平均により算出されるF値、並びに、正解率のうちの少なくとも一の組み合わせであればよい。
【0101】
図11は、実施の形態に係る教師データ1と教師データ2とを示す図である。教師データ1は、例えば上述したデータセット1である。以下では、教師データ1は、半導体回路が形成されたウェハを検査する例えば10万枚の検査画像であり、機械学習モデルを用いた検査の導入前に収集された検査画像を含むデータセット1からなるとする。この場合、モデル1は、データセット1を教師データ1として用いて学習された機械学習のモデルである。
【0102】
また、教師データ2は、直近データと教師データ1の一部とで構成される。モデル2は、教師データ2を用いて学習された機械学習のモデルである。直近データは、例えば上述した更新データセットであり、機械学習モデルを用いた検査の導入後(検査導入後)に収集された検査画像で構成される。ここでは、直近データは、検査導入後の例えば100日目などの一定期間後に、判定精度が低下した時期に収集された検査画像であるとする。なお、検査導入後になされた検査装置のメンテナンスなど様々な要因で判定精度が低下する。
【0103】
図12は、実施の形態に係る学習時データ(データセット1)と、直近データとに対する機械学習モデルの精度を定性的に示す図である。
図12は、教師データ1として用いたデータセット1と、教師データ2に含めて用いた直近データとをそれぞれ検証用データセットとして用いて、モデル1及びモデル2の精度を算出している。
【0104】
図12に示すように、直近データに対するモデル1の精度は低くなった一方で、直近データに対するモデル2の精度は高くなる。しかしながら、モデル2は、教師データ1と比較するとデータセット1の割合が下がった教師データ2を用いて学習するため、データセット1に対するモデル2の精度は、モデル1と比較するとわずかに下がってしまう場合がある。つまり、学習時データすなわちデータセット1に対する精度は、
図12に示すようにモデル1では高い一方で、モデル2では中程度になりモデル1と比較すると下がってしまう場合がある。したがって、判定精度が低下した時期の直近データを収集して、学習時データに加えた教師データ2を用いてモデル1を再学習させただけでは、直近データに類する検査画像に対する精度は高めることができるが、学習時データに類する検査画像に対する精度が落ちる可能性がある。直近データに生じた違いは人が一目では分からないため、その発生原因を特定できず、今後その原因が取り除かれるか否かを予測することができない。そこで、直近データだけなくデータセット1に対しても高い判定精度を保つ必要がある。
【0105】
そこで、本実施の形態では、例えばモデル1とモデル2とを併用する(組み合わせる)ことで、学習時データすなわちデータセット1に対する精度及び直近データに対する精度を高精度に保つことができる。
【0106】
続いて、大量の検査画像を含む教師データ1(学習時データ)に、少量の検査画像である直近データを加えた教師データ2でモデル2を学習することで、どの程度精度が向上するかを検証したので、その結果について説明する。
【0107】
図13は、
図11に示すモデル1とモデル2との学習に用いた教師データの一例である。
【0108】
図13において教師データ1aは、上記の教師データ1の一例であり、教師データ2aは、上記の教師データ2の一例である。
図13に示す例では、教師データ1aは、良品と判定されたデータとして2444+1942=4386の検査画像と、不良品と判定されたデータとして1237+968=2205の検査画像とで構成されている。また、教師データ2aは、教師データ1aに、良品と判定されたデータとして269+71=340の検査画像と、不良品と判定されたデータとして57+16=73の検査画像とが追加されている。
【0109】
また、学習済のモデル1とモデル2とにおける判定精度を検証するための検証用データとして、直近データから、上記の教師データ2aで用いたものを用いた。
【0110】
その結果、モデル1は、検証用データに含まれる良品を示す検査画像7481枚中、1967枚を過検出すなわち不良品と判定した。一方、モデル2は、検証用データに含まれる良品を示す検査画像7481枚中、155枚を過検出すなわち不良品と判定した。
【0111】
つまり、教師データ2aに使用しない直近データに対して、モデル1の過検出率が26.3%に対してモデル2の過検出率が2.07%と大きく改善しているのが確認できた。
【0112】
このように、大量の検査画像を含む教師データ1(学習時データ)に、少量の検査画像である直近データを加えた教師データ2でモデル2を学習することで、精度が向上するのがわかる。
【0113】
(その他の実施の形態)
以上、本開示に係る画像判定装置10などについて、各実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を各実施の形態に施したものや、各実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0114】
(1)例えば、第1の教師データに用いられる旧データセットすなわちデータセット1そのものは更新されないとして説明したが、これに限らない。急遽収集した更新データセット2を用いて更新したデータセット1を次回の再学習時に第1の教師データとして用いてモデル1を再学習させてもよい。
【0115】
(2)上記の実施の形態では、更新データセット2は第1の教師データにデータを追加して作成したが、これに限らない。急遽収集したデータセット2が十分な量があれば、第一の教師データに追加するのではなく、このデータセット2自体を更新データセット2として使用してモデル2を学習させてもよい。
【0116】
(3)上記の実施の形態では、画像判定装置10を構成する判定部104は、対象画像を機械学習モデルを併用して、対象画像のラベルの判定結果を出力するとしたが、これに限らない。機械学習モデルを併用して対象画像のラベルを判定する前または後において、さらにルール判定を行ってもよい。ルール判定としては、対象画像に判定対象物が含まれるか否かを検出する判定が考えられ、この場合、対象画像に判定対象物が含まれていない場合、判定部104は、対象画像を機械学習モデルを併用した判定を行わないとすればよい。また、対象画像に判定対象物が含まれるか否かを検出する判定としては、判定対象物が対象画像に映っているか否かを判定してもよいし、対象画像の輝度などの情報が判定を実施してもよい適用範囲に含まれるかを判定してもよい。
【0117】
また、以下に示す形態も、本開示の一つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0118】
(4)上記の画像判定装置10を構成する構成要素の一部は、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムであってもよい。前記RAM又はハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
【0119】
(5)上記の画像判定装置10を構成する構成要素の一部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。前記RAMには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0120】
(6)上記の画像判定装置10を構成する構成要素の一部は、各装置に脱着可能なICカード又は単体のモジュールから構成されているとしてもよい。前記ICカード又は前記モジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムである。前記ICカード又は前記モジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしてもよい。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、前記ICカード又は前記モジュールは、その機能を達成する。このICカード又はこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしてもよい。
【0121】
(7)また、上記の画像判定装置10を構成する構成要素の一部は、前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号をコンピュータで読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリなどに記録したものとしてもよい。また、これらの記録媒体に記録されている前記デジタル信号であるとしてもよい。
【0122】
また、上記の画像判定装置10を構成する構成要素の一部は、前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号を、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしてもよい。
【0123】
(8)本開示は、上記に示す方法であるとしてもよい。また、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしてもよいし、前記コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしてもよい。
【0124】
(9)また、本開示は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、前記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、前記マイクロプロセッサは、前記コンピュータプログラムにしたがって動作するとしてもよい。
【0125】
(10)また、前記プログラム又は前記デジタル信号を前記記録媒体に記録して移送することにより、又は前記プログラム又は前記デジタル信号を、前記ネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしてもよい。
【0126】
(11)上記実施の形態及び上記変形例をそれぞれ組み合わせるとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本開示は、検査工程における良品判定など機械学習のモデルを用いた画像判定装置、画像判定方法、及び、プログラムなどに利用できる。
【符号の説明】
【0128】
10 画像判定装置
101 学習部
102 記憶部
103 画像取得部
104 判定部
1000 コンピュータ
1001 入力装置
1002 出力装置
1003 CPU
1004 内蔵ストレージ
1005 RAM
1007 読取装置
1008 送受信装置
1009 バス