(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】止水装置
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20241108BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E04H9/14 Z
(21)【出願番号】P 2020218798
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】593211636
【氏名又は名称】株式会社ニッケンフェンスアンドメタル
(73)【特許権者】
【識別番号】591268265
【氏名又は名称】富士浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】七町 泰造
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰介
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-108897(JP,A)
【文献】特開昭60-003310(JP,A)
【文献】意匠登録第1664078(JP,S)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0056645(KR,A)
【文献】特開2018-184802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00 - 5/20
E04H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の浸水を防止するための止水装置であって、
一枚の鋼板から一体成型される本体部を備え、
前記本体部は、
設置面に沿って配置される底板部と、
前記底板部の後端から立ち上がる立ち上がり板部と、
左右方向の端部に、左右方向で隣り合う他の止水装置と連結するための連結部と、
前記底板部と前記立ち上がり板部とに跨って配置され、前記底板部と前記立ち上がり板部とに沿って突条に形成される第1突条部と、を有
し、
前記連結部は、左右方向の一端部に形成される第1連結部と、左右方向の他端部に形成される第2連結部と、を有し、
前記第1連結部は、鋼板を表面側に湾曲させて形成される第1嵌合部を有し、
前記第2連結部は、左右方向に隣接する他の止水装置の前記第1嵌合部が嵌め込まれる形状に形成される第2嵌合部を有し、
前記第2嵌合部は、鋼板を表面側に向けて折り曲げられた第4板部と、前記第4板部から折り曲げられた第5板部と、前記第5板部から前記第4板部に向けて折り曲げられた第6板部と、を有すること
を特徴とする止水装置。
【請求項2】
前記本体部は、前記底板部と前記立ち上がり板部とに跨って配置され、前記底板部と前記立ち上がり板部とに沿って突条に形成される第2突条部を更に有し、
前記第2突条部は、前記第1突条部よりも小さく突出されること
を特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項3】
前記底板部における前記第1突条部の先端部は、前記底板部の前端から離間されて配置され、テーパー状に形成されるテーパー部を有すること
を特徴とする請求項1又は2記載の止水装置。
【請求項4】
水の浸水を防止するための止水装置であって、
一枚の鋼板から一体成型される本体部を備え、
前記本体部は、
設置面に沿って配置される底板部と、
前記底板部の後端から立ち上がる立ち上がり板部と、
左右方向の端部に、左右方向で隣り合う他の止水装置と連結するための連結部と、
前記底板部と前記立ち上がり板部とに跨って配置され、前記底板部と前記立ち上がり板部とに沿って突条に形成される第1突条部と、を有し、
前記連結部は、左右方向の一端部に形成される第1連結部と、左右方向の他端部に形成される第2連結部と、を有し、
前記第1連結部は、鋼板を折り曲げて形成される第1嵌合部を有し、
前記第1嵌合部は、表面側に向けて折り曲げられた第1板部と、前記第1板部から折り曲げられた第2板部と、前記第2板部から前記第1板部に向けて折り曲げられた第3板部と、を有し、
前記第2連結部は、左右方向に隣接する他の止水装置の前記第1嵌合部が嵌め込まれる形状に形成される第2嵌合部を有すること
を特徴とす
る止水装置。
【請求項5】
前記第2嵌合部は、鋼板を湾曲させて形成されること
を特徴とする請求項
4記載の止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、短時間の集中豪雨、いわゆるゲリラ豪雨が頻発しており、短時間での河川の氾濫や下水道施設からの雨水の噴出により、床下浸水や床上浸水の被害が発生している。
【0003】
従来、河川の氾濫等の水害時には、建物や地下出入口等の開口部に土嚢を積み上げて遮水壁を作り、建物等の内部への浸水を防いでいた。しかしながら、都市部においては土嚢に入れる土砂や、用具のスコップなどが準備されておらず、すぐに土嚢を用意することが困難であった。また、土嚢は非常に重いため、積み上げ作業には大変な時間と労力を要する。更には、集中豪雨による水害は短時間で発生することから、土嚢を準備して積み上げる作業に時間を要すると、遮水壁を作るまでに浸水してしまうおそれがあった。
【0004】
従来、水の浸水を防止するための止水装置に関する技術として、特許文献1~3が開示されている。
【0005】
特許文献1には、裏面に吸水部材を備えた底板と、該底板の後端から立ち上がる立上がり板とを有する略L字型をしたものであり、止水装置の左右端部の少なくとも一端部側に、止水装置と止水装置を左右に連結するための連結部を有する止水装置が開示されている。
【0006】
特許文献2には、設置面に沿って配置される底面止水面材と、底面止水面材に対して略垂直方向に設置される壁面止水面材とを備え、底面止水面材の設置面側の面に、毛細管現象により水を吸水する性質を有するマット状の吸水部材を取り付け、吸水部材は、前記底面止水面材の前記設置面側の面の前方側と側方側にコの字形状になるように連続的に配置されている止水装置が開示されている。
【0007】
特許文献3には、断面L字状に形成された樹脂製の止水装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許6614562号公報
【文献】特開2016-108897号公報
【文献】登録意匠1664078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1~3の開示技術では、止水装置として、樹脂製のものが用いられる。このため、樹脂の劣化等に伴って、止水装置の変形が発生しやすく、変形した止水装置からの漏水等が発生するおそれがある。
【0010】
また、特許文献2、3の開示技術では、底板から立ち上がり板に跨る三角形状等の補強部が設けられているものの、樹脂製であるため、止水装置を補強するためには補強部自体の大きさを比較的大きくする必要がある。一方、特許文献2、3の止水装置を鋼板で作製した場合、このような比較的大きな補強部を設けてしまうと、鋼板にしわ等の変形が生じてしまう。このため、所定の止水性を確保することができず、鋼板から成形される止水装置においては、このような比較的大きな補強部を適用することができない、という事情がある。したがって、止水性を向上させることが可能となる止水装置が切望されている。
【0011】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、止水性を向上させることが可能となる止水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る止水装置は、水の浸水を防止するための止水装置であって、一枚の鋼板から一体成型される本体部を備え、前記本体部は、設置面に沿って配置される底板部と、前記底板部の後端から立ち上がる立ち上がり板部と、左右方向の端部に、左右方向で隣り合う他の止水装置と連結するための連結部と、前記底板部と前記立ち上がり板部とに跨って配置され、前記底板部と前記立ち上がり板部とに沿って突条に形成される第1突条部と、を有し、前記連結部は、左右方向の一端部に形成される第1連結部と、左右方向の他端部に形成される第2連結部と、を有し、前記第1連結部は、鋼板を表面側に湾曲させて形成される第1嵌合部を有し、前記第2連結部は、左右方向に隣接する他の止水装置の前記第1嵌合部が嵌め込まれる形状に形成される第2嵌合部を有し、前記第2嵌合部は、鋼板を表面側に向けて折り曲げられた第4板部と、前記第4板部から折り曲げられた第5板部と、前記第5板部から前記第4板部に向けて折り曲げられた第6板部と、を有することを特徴とする。
本発明に係る止水装置は、水の浸水を防止するための止水装置であって、一枚の鋼板から一体成型される本体部を備え、前記本体部は、設置面に沿って配置される底板部と、前記底板部の後端から立ち上がる立ち上がり板部と、左右方向の端部に、左右方向で隣り合う他の止水装置と連結するための連結部と、前記底板部と前記立ち上がり板部とに跨って配置され、前記底板部と前記立ち上がり板部とに沿って突条に形成される第1突条部と、を有し、前記連結部は、左右方向の一端部に形成される第1連結部と、左右方向の他端部に形成される第2連結部と、を有し、前記第1連結部は、鋼板を折り曲げて形成される第1嵌合部を有し、前記第1嵌合部は、表面側に向けて折り曲げられた第1板部と、前記第1板部から折り曲げられた第2板部と、前記第2板部から前記第1板部に向けて折り曲げられた第3板部と、を有し、前記第2連結部は、左右方向に隣接する他の止水装置の前記第1嵌合部が嵌め込まれる形状に形成される第2嵌合部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、止水性を向上させることが可能となる止水装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係る止水装置の第1例を複数連結した状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る止水装置の第1例を示す斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、実施形態に係る止水装置の第1例の第1連結部と第2連結部を上下方向から示す図であり、
図3(b)は、実施形態に係る止水装置の第1例の第1連結部と第2連結部を前後方向から示す図である。
【
図4】
図4(a)は、実施形態に係る止水装置の第1例の第1突条部を示す断面図であり、
図4(b)は、実施形態に係る止水装置の第1例の第2突条部を示す断面図である。
【
図5】
図5(a)は、実施形態に係る止水装置の第1例の立ち上がり板部を拡大して示す断面図であり、
図5(b)は、実施形態に係る止水装置の第1例の底板部を拡大して示す断面図である。
【
図6】
図6(a)は、実施形態に係る止水装置の第1例の底板部における第1突条部の先端部を拡大して示す断面図であり、
図6(b)は、実施形態に係る止水装置の第1例の立ち上がり板部のおける第1突条部の先端部を拡大して示す断面図である。
【
図7】
図7(a)は、実施形態に係る止水装置の第1例を左右方向で連結する前の状態を示す図であり、
図7(b)は、実施形態に係る止水装置の第1例を左右方向で連結した後の状態を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る止水装置の第1例を複数積み重ねた状態を示す斜視図である。
【
図9】
図9(a)は、実施形態に係る止水装置の第2例を左右方向で連結する前の状態を示す図であり、
図9(b)は、実施形態に係る止水装置の第2例を左右方向で連結した後の状態を示す図である。
【
図10】
図10(a)は、実施形態に係る止水装置の第3例を左右方向で連結する前の状態を示す図であり、
図10(b)は、実施形態に係る止水装置の第3例を左右方向で連結した後の状態を示す図である。
【
図11】
図11(a)は、実施形態に係る止水装置の第4例を左右方向で連結する前の状態を示す図であり、
図11(b)は、実施形態に係る止水装置の第4例を左右方向で連結した後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態に係る止水装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、上下方向Zとし、上下方向Zに直交する方向を前後方向Xとし、上下方向Zと前後方向Xに直交する方向を左右方向Yとする。上下方向Zのうち、上方向を上側Z1とし、下方向を下側Z2とする。前後方向Xのうち、水が浸水してくる側を前側X1とし、水の浸水を防止したい家屋等の対象物が設置される側を後側X2とする。また、止水装置1の底板部3よりも上側Z1と、止水装置1の立ち上がり板部4よりも前側X1と、を表面側Aともいい、止水装置1の底板部3よりも下側Z2と、止水装置1の立ち上がり板部4よりも後側X2と、を裏面側Bともいう。
【0016】
止水装置1は、
図1に示すように、水の浸水を防止するためのものである。止水装置1は、左右方向Yに複数連結されて用いられる。
【0017】
止水装置1は、
図2に示すように、1枚の鋼板10から一体成型される本体部2と、本体部2に取り付けられる止水部材8と、を備える。鋼板10は、例えば亜鉛メッキ鋼板等の腐食抑制処理が施された薄形の鋼板が好適に用いられる。鋼板10の厚さは、例えば0.7mm程度であるが、0.6mm~1.2mm程度のものが好適に用いられる。
【0018】
本体部2は、底板部3と、立ち上がり板部4と、連結部5と、第1突条部6と、第2突条部7と、を有する。本体部2は、底板部3と立ち上がり板部4とにより、断面L字状に形成される。本体部2の前後方向Xの長さは、例えば700mm程度であり、本体部2の左右方向Yの長さは、例えば740mm程度であり、本体部2の上下方向Zの長さは、例えば600mm程度である。これにより、止水装置1全体の重量としては、6kg程度となる。
【0019】
底板部3は、設置面に沿って配置される。底板部3の前端には、鋼板10を表面側Aに円弧状、楕円形状、馬蹄形状等に湾曲させて形成される前端湾曲部3aを有する。底板部3は、前端湾曲部3aと後述する第1突条部6の前側X1の先端部61との間に、平坦状に形成される平坦部31を有する。平坦部31の裏面側Bに、止水部材8が取り付けられる。
【0020】
立ち上がり板部4は、底板部3の後端から立ち上がるものである。立ち上がり板部4の上端には、鋼板10を表面側Aに円弧状、楕円形状、馬蹄形状等に湾曲させて形成される上端湾曲部4aを有する。立ち上がり板部4は、上端近傍に長孔形状等の取手部41を有する。取手部41は、円形状等の所定の開口部によって形成される。
【0021】
連結部5は、
図1に示すように、左右方向で隣り合う他の止水装置1と連結するためのものである。連結部5は、
図3に示すように、左右方向の一端部に形成される第1連結部51と、左右方向の他端部に形成される第2連結部54と、を有する。
【0022】
第1連結部51は、鋼板10が折り返されて形成される折り返し部52と、折り返し部52から繋がる第1嵌合部53と、を有する。折り返し部52は、底板部3及び立ち上がり板部4に接触される。折り返し部52は、底板部3と立ち上がり板部4とに沿って、左右方向Yから見てL字状に、連続的に配置される。
【0023】
第1嵌合部53は、鋼板10を表面側Aに円弧状、楕円形状、馬蹄形状等に湾曲させて形成される。第1嵌合部53は、鋼板10の端部を折り返し部52に向けて湾曲させて形成される。第1嵌合部53は、底板部3と立ち上がり板部4とに沿って、左右方向Yから見てL字状に、連続的に配置される。
【0024】
第2連結部54は、底板部3と立ち上がり板部4とから繋がる受部55と、受部55から繋がる第2嵌合部56とを、有する。
【0025】
受部55は、前後方向Xから見て、又は、上下方向Zから見て、鋼板10がL字状に折り曲げられて形成される。受部55は、表面側Aに突出されて形成される。受部55は、底板部3と立ち上がり板部4とに沿って、左右方向Yから見てL字状に、連続的に配置される。受部55は、裏面側Bに止水部材8が取り付けられる。
【0026】
第2嵌合部56は、左右方向に隣接する他の止水装置1の第1嵌合部53が嵌め込まれる形状に形成される。第2嵌合部56は、底板部3と、立ち上がり板部4とに、それぞれ設けられる。第2嵌合部56は、前後方向Xから見て、又は、上下方向Zから見て、鋼板10がコの字状に折り曲げられて形成される。第2嵌合部56は、受部55から鋼板10が折り曲げられて形成される第4板部56aと、第4板部56aから鋼板10が折り曲げられて形成される第5板部56bと、第5板部56bから鋼板10が折り曲げられて形成される第6板部56cと、を有する。
【0027】
第4板部56aは、受部55に対して角度θ4で折り曲げられて形成される。角度θ4は、略垂直とされるが、0°を超え90°以下であることが好ましい。第5板部56bは、第4板部56aに対して角度θ5で折り曲げられて形成される。角度θ5は、略垂直とされるが、0°を超え90°以下であることが好ましい。第6板部56cは、第4板部56a側に向けて、第5板部56bに対して角度θ6で折り曲げられて形成される。すなわち、角度θ6は、鋭角である。
【0028】
立ち上がり板部4に設けられる第2嵌合部56では、
図3(a)に示すように、第4板部56aが立ち上がり板部4に対して略垂直に立ち上がって形成され、第5板部56bが立ち上がり板部4と略平行に沿って形成され、第6板部56cが後側X2に向けて折り曲げられて形成される。
【0029】
底板部3に設けられる第2嵌合部56では、
図3(b)に示すように、第4板部56aが底板部3に対して略垂直に配置され、第5板部56bが底板部3に対して略平行に配置され、第6板部56cが下側Z2に向けて折り曲げられて形成される。
【0030】
第1突条部6は、
図2に示すように、複数設けられる。第1突条部6は、
図4(a)に示すように、底板部3と立ち上がり板部4とに跨って配置される。第1突条部6は、底板部3と立ち上がり板部4とに沿って、左右方向Yから見てL字状に、連続的に配置される。第1突条部6は、鋼板10がエンボス加工されて表面側Aに突条に形成される。第1突条部6は、
図5(a)に示すように、立ち上がり板部4に直交する断面視で半円状に表面側Aに突出されて形成される。第1突条部6は、
図5(b)に示すように、底板部3に直交する断面視で半円状に表面側Aに突出されて形成される。
【0031】
第2突条部7は、
図2に示すように、複数設けられる。第2突条部7は、
図4(b)に示すように、底板部3と立ち上がり板部4とに跨って配置される。第2突条部7は、底板部3と立ち上がり板部4とに沿って、左右方向Yから見てL字状に、連続的に配置される。第2突条部7は、鋼板10がエンボス加工されて表面側Aに突条に形成される。第2突条部7は、
図5(a)に示すように、立ち上がり板部4に直交する断面視で半円状に表面側Aに突出されて形成される。第2突条部7は、
図5(b)に示すように、底板部3に直交する断面視で半円状に表面側Aに突出されて形成される。
【0032】
図4及び
図5に示すように、第1突条部6の前後方向Xにおける突出延長L1とし、第1突条部6の上下方向Zにおける突出延長H1とし、第1突条部6の左右方向Yにおける突出幅W1とし、第1突条部6の表面側Aへの突出高さD1とする。また、第2突条部7の前後方向Xにおける突出延長L2とし、第2突条部7の上下方向Zにおける突出延長H2とし、第2突条部7の左右方向Yにおける突出幅W2とし、第2突条部7の表面側Aへの突出高さD2とする。
【0033】
第2突条部7は、第1突条部6よりも小さく突出される。ここで、第2突条部7が第1突条部6よりも小さく突出されるとは、第2突条部7の突出延長L2が第1突条部6の突出延長L1よりも小さい場合、第2突条部7の突出延長H2が第1突条部6の突出延長H1よりも小さい場合、第2突条部7の突出幅W2が第1突条部6の突出幅W1よりも小さい場合、及び、第2突条部7の突出高さD2が第1突条部6の突出高さD1よりも小さい場合、の少なくとも何れかの場合のことをいう。
【0034】
第1突条部6の前側X1の先端部61は、
図6(a)に示すように、底板部3の前端から離間されて配置される。第1突条部6の前側X1の先端部61は、テーパー状に形成されるテーパー部61aを有する。
【0035】
第1突条部6の上側Z1の先端部62は、
図6(b)に示すように、立ち上がり板部4の上端から離間されて配置される。第1突条部6の上側Z1の先端部62は、テーパー状に形成されるテーパー部62aを有する。
【0036】
止水部材8は、エプトシーラー等の周知の止水部材が用いられる。止水部材8は、底板部3の下面の前端と、受部55の裏面側Bと、に取り付けられる。
【0037】
底板部3に取り付けられる止水部材8は、底板部3の前端に左右方向Yに延びて配置される。受部55に取り付けられる止水部材8は、受部55に沿って左右方向Yから見て断面L字状に配置される。
【0038】
一の止水装置1と他の止水装置1とを左右方向Yに連結する際には、
図7(a)に示すように、一の止水装置1の第1連結部51と、他の止水装置1の第2連結部54とを向かい合わせる。そして、
図7(b)に示すように、他の止水装置1の第2連結部54を、表面側Aから裏面側Bに向けて、一の止水装置1の第1連結部51に重ね合わせる。
【0039】
これにより、他の止水装置1の受部55に取り付けられた止水部材8が、一の止水装置1の折り返し部52に接触される。このとき、一の止水装置1の底板部3と、他の止水装置1の底板部3と、が面一となる。図示は省略するが、一の止水装置1の立ち上がり板部4と、他の止水装置1の立ち上がり板部4と、についても同様に面一となる。
【0040】
また、表面側Aから裏面側Bに向けて、他の止水装置1の第2連結部54を、一の止水装置1の第1連結部51に重ね合わせることにより、一の止水装置1の第1嵌合部53が、他の止水装置1の第2嵌合部56の第4板部56aと第6板部56cとにより挟まれて嵌合される。このとき、第4板部56aと第6板部56cとが拡開され、連結後における第6板部56cの折り曲げ角度θ6´は、連結前における第6板部56cの折り曲げ角度θ6よりも大きくなる。
【0041】
本実施形態によれば、水の浸水を防止するための止水装置1であって、一枚の鋼板10から一体成型される本体部2を備え、本体部2は、設置面に沿って配置される底板部3と、底板部3の後端から立ち上がる立ち上がり板部4と、左右方向Yの端部に、左右方向Yで隣り合う他の止水装置1と連結するための連結部5と、底板部3と立ち上がり板部4とに跨って配置され、底板部3と立ち上がり板部4とに沿って突条に形成される第1突条部6と、を有する。
【0042】
本実施形態によれば、一枚の鋼板10から一体成型される本体部2を備える。これにより、止水装置1の製造を容易に行うことができる。また、止水装置1に必要な強度を確保することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、第1突条部6により本体部2を補強することができる。このため、水が浸水しようとしたとき、止水装置1の変形が抑制されるため、水の侵入を防止することができ、止水性を向上させることが可能となる。
【0044】
また、本実施形態によれば、第1突条部6は、底板部3と立ち上がり板部4とに沿って突条に形成されるため、第1突条部6を形成することにより底板部3や立ち上がり板部4に発生するしわ等の変形を抑制することができる。このため、止水装置1からの漏水が抑制され、止水装置1の止水性を向上させることが可能となる。
【0045】
また、本実施形態によれば、第1突条部6は、底板部3と立ち上がり板部4とに沿って突条に形成されるため、本体部2の補強に際して、第1突条部6の突出高さD1を従来のように大きくする必要がない。このため、運搬性を向上させることが可能となる。
【0046】
また、本実施形態によれば、止水装置1の全体の重量を例えば6kg程度にすることができる。このため、運搬性を向上させることが可能となる。
【0047】
また、本実施形態によれば、
図8に示すように、止水装置1を複数積み重ねることができる。このため、複数の止水装置1を保管するスペースを低減することができる。また、複数の止水装置1を積み重ねた状態のまま、運搬することもできる。
【0048】
本実施形態によれば、本体部2は、底板部3と立ち上がり板部4とに跨って配置され、底板部3と立ち上がり板部4とに沿って突条に形成される第2突条部7を更に有し、第2突条部7は、第1突条部6よりも小さく突出される。これにより、第1突条部6を形成することにより底板部3や立ち上がり板部4に発生するしわ等の変形を、第1突条部6よりも小さい第2突条部7により更に抑制するすることができる。このため、止水装置1からの漏水が抑制され、止水装置1の止水性を更に向上させることが可能となる。
【0049】
本実施形態によれば、底板部3における第1突条部6の先端部61は、底板部3の前端から離間されて配置され、テーパー状に形成されるテーパー部61aを有する。これにより、底板部3から第1突条部6へと変化する箇所の形状が緩やかになり、第1突条部6を形成することにより底板部3に発生するしわ等の変形を、更に抑制することができる。このため、止水装置1からの漏水が抑制され、止水装置1の止水性を更に向上させることが可能となる。
【0050】
また、本実施形態によれば、底板部3における第1突条部6の先端部61は、底板部3の前端から離間されて配置されるため、底板部3の平坦部31により、底板部3の下面からの漏水を抑制することができる。このため、止水装置1の止水性を更に向上させることが可能となる。
【0051】
本実施形態によれば、連結部5は、左右方向の一端部に形成される第1連結部51と、左右方向の他端部に形成される第2連結部54と、を有し、第1連結部51は、鋼板10を表面側Aに湾曲させて形成される第1嵌合部53を有し、第2連結部54は、左右方向に隣接する他の止水装置の第1嵌合部53が嵌め込まれる形状に形成される第2嵌合部56を有する。これにより、表面側Aから裏面側Bに向けて第2嵌合部56を第1嵌合部53に重ね合わせることで、第1嵌合部53と第2嵌合部56とを嵌合することができる。このため、これらを嵌合する作業を容易に行うことができ、止水装置1を複数連結する作業を短時間で行うことが可能となる。
【0052】
本実施形態によれば、第1嵌合部53は、鋼板10を表面側Aに向けて湾曲させて形成される。これにより、湾曲された第1嵌合部53と第2嵌合部56との嵌合を円滑に行うことが可能となる。
【0053】
本実施形態によれば、第2嵌合部56は、鋼板10を表面側Aに向けて折り曲げられた第4板部56aと、第4板部56aから折り曲げられた第5板部56bと、第5板部56bから第4板部56aに向けて折り曲げられた第6板部56cと、を有する。これにより、第1嵌合部53は、第4板部56aと第6板部56cとにより挟まれて嵌合される。このため、第1嵌合部53と第2嵌合部56との嵌合をより強固に行うことが可能となる。
【0054】
本実施形態によれば、第2連結部54は、鋼板10が表面側Aに突出されて形成される受部55を有し、受部55の裏面側Bに、止水部材8が取り付けられる。これにより、第1連結部51と第2連結部54との連結部からの漏水を防止することが可能となる。
【0055】
本実施形態によれば、底板部3の下面の前端に、止水部材8が取り付けられる。これにより、底板部3の下面からの漏水を防止することが可能となる。
【0056】
次に、実施形態に係る止水装置1の第2例について説明する。以下、上述した実施形態と相違する点について主に説明し、上述した実施形態と同様の構成については、詳細な説明を省略する。
【0057】
第2例に係る止水装置1では、
図9に示すように、第2連結部54は、底板部3と立ち上がり板部4とから繋がる受部55と、受部55から繋がる第2嵌合部156とを、有する。
【0058】
第2嵌合部156は、鋼板10を表面側Aに円弧状、楕円形状、馬蹄形状等に湾曲させて形成される。第2嵌合部156は、裏面側Bが開放されるように湾曲される。第2嵌合部156は、底板部3と立ち上がり板部4とに沿って、左右方向Yから見てL字状に、連続的に配置される。
【0059】
一の止水装置1と他の止水装置1とを左右方向Yに連結する際には、
図9(a)に示すように、一の止水装置1の第1連結部51と、他の止水装置1の第2連結部54とを向かい合わせる。そして、
図9(b)に示すように、他の止水装置1の第2連結部54を、表面側Aから裏面側Bに向けて、一の止水装置1の第1連結部51に重ね合わせる。
【0060】
これにより、他の止水装置1の受部55に取り付けられた止水部材8が、一の止水装置1の折り返し部52に接触される。このとき、一の止水装置1の底板部3と、他の止水装置1の底板部3と、が面一となる。図示は省略するが、一の止水装置1の立ち上がり板部4と、他の止水装置1の立ち上がり板部4と、についても同様に面一となる。
【0061】
また、表面側Aから裏面側Bに向けて、他の止水装置1の第2連結部54を、一の止水装置1の第1連結部51に重ね合わせることにより、一の止水装置1の第1嵌合部53が、他の止水装置1の第2嵌合部156により挟まれて嵌合される。
【0062】
本実施形態によれば、第2嵌合部156は、鋼板10を表面側Aに向けて湾曲させて形成される。これにより、第1嵌合部53は、湾曲された第2嵌合部56により嵌合される。このため、第1嵌合部53と第2嵌合部156との嵌合をより円滑に行うことが可能となる。
【0063】
次に、実施形態に係る止水装置1の第3例について説明する。
【0064】
第3例に係る止水装置1では、
図10に示すように、鋼板10が折り返されて形成される折り返し部52と、折り返し部52から繋がる第1嵌合部153と、を有する。
【0065】
第1嵌合部153は、底板部3と、立ち上がり板部4とに、それぞれ設けられる。第1嵌合部153は、前後方向Xから見て、又は、上下方向Zから見て、鋼板10がコの字状に折り曲げられて形成される。第1嵌合部153は、折り返し部52から鋼板10が折り曲げられて形成される第1板部153aと、第1板部153aから鋼板10が折り曲げられて形成される第2板部153bと、第2板部153bから鋼板10が折り曲げられて形成される第3板部153cと、を有する。
【0066】
第1板部153aは、折り返し部52から離間する方向に、折り返し部52に対して角度θ1で折り曲げられて形成される。すなわち、角度θ1は、鈍角とされる。第2板部153bは、第1板部153aに対して角度θ2で折り曲げられて、底板部3又は立ち上がり板部4に対して略平行に形成される。角度θ2は、鋭角とされる。第3板部153cは、第1板部153a側に向けて、第2板部153bに対して角度θ3で折り曲げられて形成される。すなわち、角度θ3は、鋭角である。
【0067】
一の止水装置1と他の止水装置1とを左右方向Yに連結する際には、
図10(a)に示すように、一の止水装置1の第1連結部51と、他の止水装置1の第2連結部54とを向かい合わせる。そして、
図10(b)に示すように、他の止水装置1の第2連結部54を、表面側Aから裏面側Bに向けて、一の止水装置1の第1連結部51に重ね合わせる。
【0068】
これにより、他の止水装置1の受部55に取り付けられた止水部材8が、一の止水装置1の折り返し部52に接触される。このとき、一の止水装置1の底板部3と、他の止水装置1の底板部3と、が面一となる。図示は省略するが、一の止水装置1の立ち上がり板部4と、他の止水装置1の立ち上がり板部4と、についても同様に面一となる。
【0069】
また、表面側Aから裏面側Bに向けて、他の止水装置1の第2連結部54を、一の止水装置1の第1連結部51に重ね合わせることにより、一の止水装置1の第1嵌合部153が、他の止水装置1の第2嵌合部56により挟まれて嵌合される。このとき、第1板部153aと第4板部56aとが面接触され、第3板部153cと第6板部56cとが面接触される。
【0070】
本実施形態によれば、連結部5は、左右方向の一端部に形成される第1連結部51と、左右方向の他端部に形成される第2連結部54と、を有し、第1連結部51は、鋼板を折り曲げて形成される第1嵌合部153を有し、第1嵌合部153は、鋼板10を表面側Aに向けて折り曲げられた第1板部153aと、第1板部153aから折り曲げられた第2板部153bと、第2板部153bから第1板部153aに向けて折り曲げられた第3板部153cと、を有し、第2連結部54は、左右方向に隣接する他の止水装置の第1嵌合部153が嵌め込まれる形状に形成される第2嵌合部56を有する。これにより、表面側Aから裏面側Bに向けて、第2嵌合部56を第1嵌合部153に重ね合わせることにより、第1嵌合部153と第2嵌合部56とを嵌合することができる。このため、これらを嵌合する作業を容易に行うことができ、止水装置1を複数連結する作業を短時間で行うことが可能となる。
【0071】
本実施形態によれば、第1嵌合部153は、鋼板10を表面側Aに折り曲げて形成される。これにより、第1板部153aと第3板部153cとが、第4板部56aと第6板部56cとにより挟まれて嵌合される。このため、第1嵌合部153と第2嵌合部56との嵌合をより強固に行うことが可能となる。
【0072】
本実施形態によれば、第1板部153aと第4板部56aとが面接触され、第3板部153cと第6板部56cとが面接触される。このため、第1嵌合部153と第2嵌合部56との嵌合を一層強固に行うことが可能となる。
【0073】
次に、実施形態に係る止水装置1の第4例について説明する。
【0074】
第4例に係る止水装置1では、
図11に示すように、鋼板10が折り返されて形成される折り返し部52と、折り返し部52から繋がる第1嵌合部153と、を有する。また、第4例に係る止水装置1では、第2連結部54は、底板部3と立ち上がり板部4とから繋がる受部55と、受部55から繋がる第2嵌合部156とを、有する。
【0075】
一の止水装置1と他の止水装置1とを左右方向Yに連結する際には、
図11(a)に示すように、一の止水装置1の第1連結部51と、他の止水装置1の第2連結部54とを向かい合わせる。そして、
図11(b)に示すように、他の止水装置1の第2連結部54を、表面側Aから裏面側Bに向けて、一の止水装置1の第1連結部51に重ね合わせる。
【0076】
これにより、他の止水装置1の受部55に取り付けられた止水部材8が、一の止水装置1の折り返し部52に接触される。このとき、一の止水装置1の底板部3と、他の止水装置1の底板部3と、が面一となる。図示は省略するが、一の止水装置1の立ち上がり板部4と、他の止水装置1の立ち上がり板部4と、についても同様に面一となる。
【0077】
また、表面側Aから裏面側Bに向けて、他の止水装置1の第2連結部54を、一の止水装置1の第1連結部51に重ね合わせることにより、一の止水装置1の第1嵌合部153が、他の止水装置1の第2嵌合部156により挟まれて嵌合される。
【0078】
本実施形態によれば、第2嵌合部156は、鋼板10を表面側Aに向けて湾曲させて形成される。これにより、第1嵌合部153は、湾曲された第2嵌合部156により嵌合される。このため、第1嵌合部153と第2嵌合部156との嵌合をより円滑に行うことが可能となる。
【0079】
以上、この発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。さらに、この発明は、上記の実施形態の他、様々な新規な形態で実施することができる。したがって、上記の実施形態は、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更が可能である。このような新規な形態や変形は、この発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明、及び特許請求の範囲に記載された発明の均等物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1 :止水装置
10 :鋼板
2 :本体部
3 :底板部
3a :前端湾曲部
31 :平坦部
4 :立ち上がり板部
4a :上端湾曲部
41 :取手部
5 :連結部
51 :第1連結部
52 :折り返し部
53 :第1嵌合部
153 :第1嵌合部
153a :第1板部
153b :第2板部
153c :第3板部
54 :第2連結部
55 :受部
56 :第2嵌合部
56a :第4板部
56b :第5板部
56c :第6板部
156 :第2嵌合部
6 :第1突条部
61 :先端部
61a :テーパー部
62 :先端部
62a :テーパー部
7 :第2突条部
8 :止水部材
A :表面側
B :裏面側
X :前後方向
Y :左右方向
Z :上下方向