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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】塗工装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/02 20060101AFI20241108BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20241108BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/10
H01M4/04 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022503123
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048902
(87)【国際公開番号】W WO2021171778
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2020031521
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】秋元 雄大
(72)【発明者】
【氏名】衣川 元貴
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 鷹則
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-087186(JP,A)
【文献】特開2009-057211(JP,A)
【文献】特開2010-222090(JP,A)
【文献】特開2015-191829(JP,A)
【文献】特開2005-270878(JP,A)
【文献】特開2017-100066(JP,A)
【文献】独国実用新案第29701547(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/02
B05C 11/10
H01M 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗工体を搬送する、または塗料が塗布されるロールと、
前記被塗工体または前記ロールに塗料を塗布する塗工機と、を備え、
前記ロールは、少なくとも前記被塗工体と接する部分または塗料が塗布される部分が、0[1/K]以上6.0×10-6[1/K]以下の線膨張係数を有する低膨張材で構成され、
前記ロールは、円管状のロール本体を有し、
前記ロール本体の肉厚をd[mm]、前記ロール本体の外周直径をD[mm]、前記ロール本体の幅方向の長さをl[mm]、前記ロール本体のヤング率をE[kN/mm]、自重によって前記ロール本体にかかる幅1mm当たりの荷重をq[N/mm]、円周率をπとすると、
(i)D>d、
(ii)D≧50、
(iii)d≧10、
(iv)最大たわみw=ql÷(6π(D-(D-2d))E)<0.005
のいずれの条件も満たす、
塗工装置。
【請求項2】
前記被塗工体は、二次電池の集電体であり、
前記塗料は、二次電池の電極スラリーである、
請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記塗工機は、前記塗料を前記被塗工体または前記ロールに吐出する塗工用ダイを有し、
前記塗工用ダイは、少なくとも一部が前記低膨張材で構成される、
請求項1または2に記載の塗工装置。
【請求項4】
前記ロールは、アルミナ、酸化チタン、酸化クロム、ジルコニア、酸化マグネシウム、ダイヤモンドライクカーボン、およびケイ素を含むガラス材からなる群から選択される少なくとも一種の材料を含む皮膜を外周面に有する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の塗工装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)等の普及にともない、車載用の二次電池の出荷が増えている。特にリチウムイオン二次電池の出荷が増えている。また、車載用に限らず、例えばノート型パソコン等の携帯端末用の電源としても二次電池の普及が進んでいる。一般的な二次電池は、正極板、負極板、セパレータおよび電解液を主な構成要素とする。正極板や負極板といった電極板は、金属箔からなる集電体の表面に、電極活物質が積層された構造を有する。
【0003】
特許文献1には、このような電極板の製造に用いられる塗工装置として、被塗工体としての集電体を搬送するバックアップロールと、バックアップロールと対向するように配置されて、電極活物質および溶媒を混合した電極スラリーを被塗工体に向けて吐出する塗工用ダイと、を備えた塗工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-107606号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明者は、従来の塗工装置について鋭意検討を重ねた結果、従来の塗工装置には塗工品質の向上を図る上で改善の余地があることを認識するに至った。
【0006】
本開示のある態様は、塗工装置である。この装置は、被塗工体を搬送する、または塗料が塗布されるロールと、被塗工体またはロールに塗料を塗布する塗工機と、を備える。ロールは、少なくとも被塗工体と接する部分または塗料が塗布される部分が、0[1/K]以上6.0×10-6[1/K]以下の線膨張係数を有する低膨張材で構成される。
【0007】
以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【0008】
本開示によれば、塗工装置の塗工品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態に係る塗工装置の模式図である。
図2図2は、ロールおよび塗工用ダイの斜視図である。
図3図3は、実施の形態に係る塗工装置で形成した塗布部の膜厚の変化率と、参考例に係る塗工装置で形成した塗布部の膜厚の変化率と、を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、本開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
図1は、実施の形態に係る塗工装置の模式図である。塗工装置1は、ロール2と、塗工機4と、を備える。本実施の形態のロール2は、被塗工体6(ウェブ)を搬送する部材である。より具体的には、ロール2は、被塗工体6の裏面を支持しながら塗工機4に対して被塗工体6を連続搬送するバックアップロールである。本実施の形態の塗工機4は、ロール2で搬送される被塗工体6に塗料8を塗布する機構である。
【0012】
本実施の形態の塗工装置1は、一例として、二次電池の電極板を製造するために用いられる。二次電池の電極板は、集電体に電極スラリーを塗布して乾燥させたシート状の電極素材である。したがって本実施の形態では、被塗工体6は二次電池の集電体であり、塗料8は二次電池の電極スラリーである。集電体は、例えば金属箔である。電極スラリーは、電極活物質と溶媒とを含有する電子伝導性の固液混合物である。一般的なリチウムイオン二次電池の場合、正極の電極板は、アルミ箔上に、コバルト酸リチウムやリン酸鉄リチウム等の正極活物質を含む電極スラリーが塗布されて作製される。また、負極の電極板は、銅箔上に、黒鉛等の負極活物質を含む電極スラリーが塗布されて作製される。
【0013】
塗工機4は、塗工用ダイ10と、バルブ12と、タンク14と、ポンプ16と、送り配管18と、戻し配管20と、ダイ供給配管22と、を有する。
【0014】
塗工用ダイ10は、被塗工体6に塗料8を吐出する器具である。塗工用ダイ10は、吐出口24がロール2の周面と所定の間隔をあけて対向するように配置される。被塗工体6は、ロール2の回転によって、ロール2と吐出口24とが対向する位置に連続的に搬送される。
【0015】
塗工用ダイ10には、ダイ供給配管22を介してバルブ12が接続される。バルブ12は、塗工用ダイ10への塗料8の供給と非供給とを切り替えることができる。塗工装置1は、塗料8が塗工用ダイ10に供給されている間、塗工用ダイ10から被塗工体6に塗料8を吐出することができる。バルブ12には、送り配管18および戻し配管20を介してタンク14が接続される。
【0016】
タンク14は、塗料8を貯留する。送り配管18にはポンプ16が設けられ、ポンプ16の駆動によりタンク14からバルブ12に塗料8が送られる。バルブ12は、タンク14から供給される塗料8をダイ供給配管22を介して塗工用ダイ10に供給する。あるいは、バルブ12は、タンク14から供給される塗料8を戻し配管20を介してタンク14に戻す。
【0017】
バルブ12が塗工用ダイ10に塗料8を供給することで、塗工用ダイ10から塗料8を吐出して被塗工体6に塗料8の塗布部8aを形成することができる。また、バルブ12がタンク14に塗料8を戻すことで、塗工用ダイ10からの塗料8の塗布を停止して被塗工体6に塗料8の未塗布部6aを形成することができる。つまり、バルブ12によって、被塗工体6に対して塗料8を間欠塗工することができる。未塗布部6aは、電極のセンターリードの貼り付け等に用いられる。なお、塗工装置1の各部の構成は、上述のものに限定されない。
【0018】
図2は、ロール2および塗工用ダイ10の斜視図である。なお、図2では、ロール2および塗工用ダイ10の双方とも幅方向における半分を図示している。図示しない残り半分は、図示した半分と対称の形状を有する。ロール2は、回転軸26と、ロール本体30と、を有する。回転軸26は、一端側が図示しないモータに接続されて回転する。回転軸26の他端側には、ロール本体30が接続される。ロール本体30は、円管状のいわゆる中空ロールであり、管の中心軸方向(言い換えれば幅方向)に延びる中空部28を有する。ロール本体30は、回転軸26の回転に伴って軸周りの方向に回転する。ロール本体30の直径は、例えば50mm以上である。ロール本体30は、被塗工体6の裏面を支持する支持領域32を外周面に有する。
【0019】
塗工用ダイ10は、第1本体34と、第2本体36と、を有する。第1本体34および第2本体36は、被塗工体6の搬送方向と直交する方向、言い換えればロール本体30が延びる方向に長い長尺状の部材である。第1本体34および第2本体36は互いに隙間をあけて配置され、この隙間によって吐出口24が形成される。
【0020】
ロール2は、少なくとも被塗工体6と接する部分、つまり支持領域32が低膨張材で構成される。好ましくは、ロール本体30全体が低膨張材で構成される。低膨張材は、0[1/K]以上6.0×10-6[1/K]以下の線膨張係数(熱膨張率)を有する。
【0021】
被塗工体6に塗料8が塗布されると、塗料8の熱が被塗工体6を介してロール2に伝わることがある。特に、被塗工体6が熱伝導率の高い材料で構成される場合、塗料8の熱がロール2に伝わりやすい。ロール2に熱が伝わると、熱による膨張収縮によってロール2が変形し得る。また、塗料8の温度が変化するとロール2に伝わる熱量も変化するため、ロール2の形状が不安定になる。この結果、被塗工体6が歪んで均一な膜厚の塗布部8aを形成することが困難になる。
【0022】
本発明者は、電極板製造に用いられる塗工装置1においては、塗料8の温度変化1℃当たりの塗工ギャップの変化量を5μm以下に抑制できれば市場の要求に耐え得る均一な膜厚の塗布部8aを形成できることを見出した。塗工ギャップとは、ロール2と塗工用ダイ10との間の隙間である。さらに本発明者は、6.0×10-6[1/K]以下の線膨張係数を有する低膨張材であれば、塗料8の温度変化1℃当たりの塗工ギャップの変形量を5μm以下に抑制できることを見出した。
【0023】
なお、以上の考察を本開示の分野における共通の一般知識の範囲として捉えてはならない。さらに言えば、塗料8の温度変化1℃当たりの塗工ギャップの変化量というパラメータに着目すること自体、本発明者が鋭意検討の結果として見出したものであり、当業者が容易に想到し得ない技術思想である。また、電極板製造に限らず、塗工装置1が他の用途に用いられる場合であっても、塗料8の温度変化1℃当たりの塗工ギャップの変化量を5μm以下に抑制することが望ましい。
【0024】
線膨張係数が6.0×10-6[1/K]以下である低膨張材としては、所定の低熱膨張金属と、所定の低熱膨張セラミックスと、が挙げられる。低熱膨張金属としては、インバー(Fe,Ni35wt%、1.2×10-6[1/K])、スーパーインバー(Fe,Ni32wt%,Co4wt%、0.0×10-6[1/K])、ステンレスインバー(Fe,Ni52wt%,Co11wt%,Cr、0.0×10-6[1/K])、Fe-Pd合金(Fe,Pd31wt%、0.0×10-6[1/K])、42アロイ(Fe,Ni,Cu微量,Mn微量、4.5~6.5×10-6[1/K])、コバール(Fe,Ni,Co、1.0×10-6[1/K])等の合金が挙げられる。
【0025】
低熱膨張セラミックスとしては、コージライト(2MgO・2Al・5SiO、0.1×10-6[1/K]以下)、窒化ケイ素(Si、2.8×10-6[1/K])、炭化ケイ素(SiC、3.7×10-6[1/K])、窒化アルミニウム(AlN、4.6×10-6[1/K])、ムライト(3Al・2SiO、5.0×10-6[1/K])等が挙げられる。
【0026】
また、ロール本体30の肉厚をd[mm]、ロール本体30の外周直径をD[mm]、ロール本体30の幅方向の長さをl[mm]、ロール本体30のヤング率をE[kN/mm]、自重によってロール本体30にかかる幅1mm当たりの荷重をq[N/mm]、円周率をπとすると、好ましくはロール本体30は、
(i)D>d、
(ii)D≧50、
(iii)d≧10、
(iv)最大たわみw=ql÷(6π(D-(D-2d))E)<0.005
のいずれの条件も満たす。
【0027】
条件(i)、(ii)および(iii)を満たすことで、ロール本体30を所定の幾何公差を有するように機械加工することが容易になる。また、条件(iv)を満たすことで、最大たわみwを5μm以下に抑えることができる。これにより、被塗工体6の歪みを抑えて、均一な膜厚の塗布部8aを形成しやすくすることができる。
【0028】
また、ロール2は、アルミナ、酸化チタン、酸化クロム、ジルコニア、酸化マグネシウム、ダイヤモンドライクカーボン、およびケイ素を含むガラス材からなる群から選択される少なくとも一種の材料を含む皮膜をロール本体30の外周面に有することが好ましい。皮膜は、上述の材料を用いた表面処理をロール本体30の外周面に施すことで得られる表面処理層(耐摩耗性層)である。表面処理としては、例えばめっき、溶射、蒸着、ライニング、溶接等が挙げられる。皮膜を設けることで、被塗工体6や塗料8によるロール本体30の摩耗を抑制することができる。この結果、ロール本体30の寸法の変化を抑制して、均一な膜厚の塗布部8aを形成しやすくすることができる。
【0029】
図3は、実施の形態に係る塗工装置で形成した塗布部の膜厚の変化率と、参考例に係る塗工装置で形成した塗布部の膜厚の変化率と、を示す図である。図3において、実施の形態の結果を実線で示し、参考例の結果を破線で示す。また、横軸の「塗布幅方向」とは、塗布部8aの幅方向における中央部、言い換えれば吐出口24の幅方向における中央部からの距離である。塗布幅方向0mmは、当該幅方向の中央部を意味する。縦軸の「膜厚変化率」とは、ロール2および塗工用ダイ10に一切の変形が無い状態で形成される塗布部8aの膜厚を理論膜厚としたときに、(実際の膜厚/理論膜厚)×100で示される値(%)である。
【0030】
実施の形態の塗工装置1では、ロール本体30の全体が線膨張係数0.6×10-6[1/K]のインバーで構成されたロール2を使用した。また、参考例の塗工装置では、ロール本体の全体が線膨張係数10.8×10-6[1/K]のステンレスで構成されたロールを使用した。そして、以下に示す手法で、各塗工装置を用いて被塗工体に塗布部を形成したときの塗布部の膜厚を算出した。すなわち、伝熱によるロール本体および塗工用ダイの変形量を、有限要素法による変形解析シミュレーションによって数値解析により算出した。また、算出されたロール本体および塗工用ダイの変形状態における塗布部の膜厚分布を、有限体積法による流体シミュレーションによって数値解析により算出した。
【0031】
図3に示すように、参考例に係る塗工装置の場合は膜厚が10%以上も変化してしまうのに対し、本実施の形態に係る塗工装置1によれば、膜厚変化率を約2%以下に抑えられることが示された。したがって、少なくとも一部が低膨張材で構成されるロール2を用いることで、熱によるロール2の変形を抑制して、塗布部8aの膜厚をより均一化できることが示された。
【0032】
塗工用ダイ10は、少なくとも一部が低膨張材で構成されることが好ましい。例えば、第1本体34および第2本体36の全体が低膨張材で構成される。これにより、塗料8の熱による塗工用ダイ10の変形を抑制することができる。この結果、塗料8の吐出安定性を高めて、塗布部8aの膜厚をより均一化することができる。
【0033】
好ましくは、塗工装置1は、塗工装置1の周囲温度と塗料8の温度との差が1℃以内となる条件で使用される。これにより、周囲温度と塗料8の温度との差によって生じるロール2の寸法変化を抑制することができる。この結果、均一な膜厚の塗布部8aを形成しやすくすることができる。
【0034】
以上説明したように、本実施の形態に係る塗工装置1は、被塗工体6を搬送するロール2と、被塗工体6に塗料8を塗布する塗工機4と、を備える。ロール2は、少なくとも被塗工体6と接する部分が、0[1/K]以上6.0×10-6[1/K]以下の線膨張係数を有する低膨張材で構成される。これにより、塗料8や外部環境からの熱でロール2が変形して塗布部8aの膜厚が不均一になることを抑制することができる。よって、塗工装置1の塗工品質を高めることができる。
【0035】
また、本実施の形態では、被塗工体6は、二次電池の集電体であり、塗料8は、二次電池の電極スラリーである。これにより、電極板の品質を高めることができる。また、塗工機4は、塗料8を被塗工体6に吐出する塗工用ダイ10を有し、好ましくは塗工用ダイ10の少なくとも一部が低膨張材で構成される。これにより、塗料8や外部環境からの熱で塗工用ダイ10が変形して塗布部8aの膜厚が不均一になることを抑制することができる。よって、塗工装置1の塗工品質をより高めることができる。
【0036】
以上、本開示の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本開示を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本開示の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された本開示の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本開示の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0037】
塗工装置1は、電極板製造用に限られない。塗工機4は、ダイ方式に限らず、グラビア方式やリバース方式等であってもよい。ロール2は、バックアップロールに限らず、被塗工体6を搬送する他のロールであってもよい。また、ロール2は、アプリケーターロールなどの塗料8が塗布されるロールであってもよい。つまり、塗工装置1は、塗料8が塗布されるロール2と、ロール2に塗料8を塗布する塗工機4と、を備え、ロール2における少なくとも塗料8が塗布される部分が、0[1/K]以上6.0×10-6[1/K]以下の線膨張係数を有する低膨張材で構成されてもよい。この場合、ロール2に塗布された塗料8が被塗工体6に転写される。
【符号の説明】
【0038】
1 塗工装置
2 ロール
4 塗工機
6 被塗工体
8 塗料
10 塗工用ダイ
図1
図2
図3