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特許7584109ジペプチド及びこれを含有する医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】ジペプチド及びこれを含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/05 20060101AFI20241108BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20241108BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20241108BHJP
   C07K 5/075 20060101ALI20241108BHJP
   C07K 5/072 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A61K38/05
A61P3/00
A23L33/18
C07K5/075
C07K5/072
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023067139
(22)【出願日】2023-04-17
(62)【分割の表示】P 2020515565の分割
【原出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2023089192
(43)【公開日】2023-06-27
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2018084925
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108339
【氏名又は名称】ゼリア新薬工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 耕太郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 英知
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健司
(72)【発明者】
【氏名】江島 晃佳
(72)【発明者】
【氏名】中川西 修
(72)【発明者】
【氏名】丹野 孝一
【審査官】三谷 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/190395(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/123200(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/154169(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/194643(WO,A1)
【文献】特表2007-537213(JP,A)
【文献】特公昭48-812(JP,B1)
【文献】特公昭47-31031(JP,B1)
【文献】三宅亮介ほか,キラルなペプチド配位子を用いた銀イオンの集積,シンポジウム「モレキュラー・キラリティー2014」講演要旨集,2014年,p. 71
【文献】The Journal of Immunology,2000年,Vol. 165,pp. 1004-1012
【文献】Journal of Chromatography,1985年,Vol. 325,pp. 111-126
【文献】Chem. Commun.,2017年,Vol. 53,pp. 447-450
【文献】J. Microcolumn Separations,1997年,10(3),pp. 255-258
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
A61K 38/00-38/58
A23L 33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
Google/Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(D)Asp-(D)Leu、(D)Asp-(D)Val、(D)Asp-(D)P he、(D)Asp-(L)Leu、(D)Asp-(L)Val、及び(D)Asp- (L)Pheから選ばれるジペプチドを含有する疲労予防改善剤
【請求項2】
(D)Asp-(D)Leu、(D)Asp-(D)Val、(D)Asp-(D)P he、(D)Asp-(L)Leu、(D)Asp-(L)Val、及び(D)Asp- (L)Pheから選ばれるジペプチドを含有する疲労予防改善用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジペプチド及びこれを含有する医薬又は食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
疲労は、一般に疲労感、倦怠感を主症状とするが、結果として運動能力の低下、睡眠障害、意欲低下等を招く。短期的な疲労の場合には、休息、睡眠、栄養補給等により回復するが、慢性疲労の場合には、長期的な全身疲労感、倦怠感、微熱等が回復し難い。
【0003】
これらの疲労に対して、アミノ酸組成物(特許文献1)、L-カルニチン(特許文献2)、アスコルビン酸等(特許文献3)が有用であることが知られている。また、肝臓水解物は、AMPK活性化作用を有し、抗疲労効果を有することが報告されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-124473号公報
【文献】特開2001-046021号公報
【文献】特開平6-327435号公報
【文献】国際公開第2015/022927号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、肝臓水解物は、アミノ酸やペプチドを多く含むとされているが、実際の有効成分は判明していない。
従って、本発明の課題は、新たな疲労予防改善作用を有する成分を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、新たな疲労予防改善剤を開発すべく検討し、肝臓水解物を動物に投与して血中に移行する難消化性ペプチドを探索し、また肝臓水解物を種々のカラムを用いてペプチドを分画し薬効評価をしてきたところ、L体アミノ酸由来でなく、特定のD体アミノ酸由来のジペプチドが見出され、当該ジペプチドが疲労予防改善作用を有することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔9〕を提供するものである。
【0008】
〔1〕(D)Ile-(D)Pro、(D)Leu-(D)Pro、(D)Pro-(D)Ile、(D)Pro-(D)Leu、(D)Val-(D)-Pro、(D)Pro-(D)Val、(D)Leu-(D)Hyp、(D)Ile-(D)Hyp、(D)Val-(D)Hyp、(D)Asp-(D)Ile、(D)Asp-(D)Val、(D)Asp-(D)Leu、(D)Asp-(D)Phe、(D)Ile-(L)Pro、(D)Leu-(L)Pro、(D)Pro-(L)Ile、(D)Pro-(L)Leu、(D)Val-(L)-Pro、(D)Pro-(L)Val、(D)Leu-(L)Hyp、(D)Ile-(L)Hyp、(D)Val-(L)Hyp、(D)Asp-(L)Ile、(D)Asp-(L)Val、(D)Asp-(L)Leu、及び(D)Asp-(L)Pheから選ばれるジペプチド。
〔2〕(D)Asp-(D)Val、(D)Asp-(D)Ile、(D)Asp-(D)Leu、(D)Asp-(D)Phe、(D)Asp-(L)Val、(D)Asp-(L)Ile、(D)Asp-(L)Leu、及び(D)Asp-(L)Pheから選ばれるものである〔1〕記載のジペプチド。
〔3〕〔1〕又は〔2〕記載のジペプチドを含有する医薬組成物。
〔4〕疲労予防改善剤である〔3〕記載の医薬組成物。
〔5〕〔1〕又は〔2〕記載のジペプチドを含有する食品組成物。
〔6〕疲労予防改善用食品組成物である〔5〕記載の食品組成物。
〔7〕疲労予防改善剤又は疲労予防改善用食品製造のための〔1〕又は〔2〕記載のジペプチドの使用。
〔8〕疲労を予防改善するための、〔1〕又は〔2〕記載のジペプチド。
〔9〕〔1〕又は〔2〕記載のジペプチドの有効量を投与することを特徴とする疲労の予防改善方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のジペプチドは、D体アミノ酸由来であることから難消化性であり、血中に長時間存在し、疲労予防改善作用を有することから、疲労予防改善用の医薬及び食品組成物として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】疎水性ペプチド画分の抗疲労効果を示す。
図2】疎水ピログルタミルペプチド画分の抗疲労効果を示す。
図3】親水性ペプチド画分の抗疲労効果を示す。
図4】親水性ピログルタミルペプチド画分の抗疲労効果を示す。
図5】Asp-Leu(Dα)の抗疲労効果を示す。
図6】Asp-Leu(Dβ)の抗疲労効果を示す。
図7】Asp-Val(Dα)の抗疲労効果を示す。
図8】Asp-Val(Dβ)の抗疲労効果を示す。
図9】Asp-Phe(Dα)の抗疲労効果を示す。
図10】Asp-Phe(Dβ)の抗疲労効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のジペプチドは、(D)Ile-(D)Pro、(D)Leu-(D)Pro、(D)Pro-(D)Ile、(D)Pro-(D)Leu、(D)Val-(D)-Pro、(D)Pro-(D)Val、(D)Leu-(D)Hyp、(D)Ile-(D)Hyp、(D)Val-(D)Hyp、(D)Asp-(D)Ile、(D)Asp-(D)Val、(D)Asp-(D)Leu、(D)Asp-(D)Phe、(D)Ile-(L)Pro、(D)Leu-(L)Pro、(D)Pro-(L)Ile、(D)Pro-(L)Leu、(D)Val-(L)-Pro、(D)Pro-(L)Val、(D)Leu-(L)Hyp、(D)Ile-(L)Hyp、(D)Val-(L)Hyp、(D)Asp-(L)Ile、(D)Asp-(L)Val、(D)Asp-(L)Leu、及び(D)Asp-(L)Pheから選ばれるジペプチドであり、このうち経口投与による血中への移行性、作用持続性及び抗疲労効果の点から、(D)Asp-(D)Val、(D)Asp-(D)Ile、(D)Asp-(D)Leu、(D)Asp-(D)Phe、(D)Asp-(L)Val、(D)Asp-(L)Ile、(D)Asp-(L)Leu、及び(D)Asp-(L)Pheから選ばれるジペプチドが好ましく、(D)Asp-(D)Leu、(D)Asp-(L)Leuが更に好ましい。
ここで、(D)という表記は、アミノ酸がD体であることを意味する。(L)という表記は、アミノ酸がL体であることを意味する。
また、上記(D)体または(L)体ジペプチドのα体及びβ体のうち、β体がより好ましい。
【0012】
本発明のジペプチドは、(D)アミノ酸を原料として用いて、通常の液相ペプチド合成法又は固相ペプチド合成法により製造することができる。例えばα-アミノ基以外の官能基を保護したアミノ酸と、カルボキシ基以外の官能基を保護したアミノ酸又はカルボキシ基を活性化し、カルボキシ基以外の官能基を保護したアミノ酸とを縮合させた後、保護基を脱離させることにより製造できる。
ここで、アミノ酸のアミノ基の保護基としては、ベンジルオキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、フルオレニルメトキシカルボニル基等が挙げられる。カルボキシ基の保護基としては、tert-ブチル基、ベンジル基等が挙げられる。縮合反応は、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジシクロヘキシル尿素その他の縮合剤を用いる方法、ニトロフェノール、N-ヒドロキシスクシンイミド等の活性エステル法、混合酸無水物法等を用いることができる。
縮合反応終了後、保護基は除去されるが、固相法の場合は更にペプチドのC末端と樹脂との結合を切断する。更に、本発明のペプチドは通常の方法に従い精製される。
【0013】
本発明のジペプチドは、酸付加塩又は塩基塩であることができる。酸付加塩としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、過塩素酸などの無機酸塩、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸の塩が挙げられる。塩基塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩などが挙げられる。
【0014】
本発明のペプチドは、溶媒和物であることができる。溶媒和物としては、水(水和物の場合)、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの溶媒和物が挙げられる。
【0015】
本発明のジペプチドは、難消化性であり、経口投与後の血中移行性が高く、持続性にも優れており、疲労予防改善作用を有する。ここで、疲労予防改善作用としては、運動機能持続作用、運動機能向上作用、抗疲労作用、抗ストレス作用、疲労感軽減作用、慢性疲労予防作用、疲労回復作用、どうき予防・改善作用、気つけ予防・改善作用、息ぎれ予防・改善作用、筋肉痛予防・改善作用等が挙げられる。従って、本発明のジペプチドを含有する組成物は、医薬組成物、食品組成物として有用である。
【0016】
本発明の医薬組成物は、経口投与、経皮投与、経腸投与、経静脈投与などによって投与できるが、経口投与がより好ましい。経口投与用の製剤としては、液剤、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤等が挙げられるが、液剤、錠剤が好ましく、液剤がより好ましい。
【0017】
これらの経口投与製剤とするには、乳糖、マンニトール、トウモロコシデンプン、結晶セルロースなどの賦形剤、セルロース誘導体、アラビアゴム、ゼラチンなどの結合剤、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤、タルク、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、非イオン界面活性剤等の溶解補助剤、矯味剤、甘味剤、安定化剤、pH調整剤、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等を使用することができる。また、ヒドロキシメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートフタレート、メタクリレートコポリマーなどの被覆剤を用いてもよい。
【0018】
また、本発明の医薬組成物には、他の有効成分を配合することもできる。他の有効成分としては、ビタミンB1類;チアミン、硝酸チアミン、塩酸チアミン、フルスルチアミン、ビスベンチアミン、ベンホチアミン、チアミンジスルフィド、ジセチアミン、チアミンプロピルジスルフィド及びこれらの誘導体、ビタミンB2類;リボフラビン及び誘導体並びにそれらの塩、ビタミンB3類;ナイアシン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド及び誘導体並びにそれらの塩、ビタミンB5類;パンテノール、パントテン酸及び誘導体並びにそれらの塩、ビタミンB6類;ピリドキシン及び誘導体並びにそれらの塩、ビタミンB12類;シアノコバラミン及び誘導体並びにそれらの塩、その他のビタミン類;ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンP、ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン、タウリン、コンドロイチン硫酸、ローヤルゼリー、カフェイン、ウコン、マリアアザミ、タンポポ、西洋タンポポ、ゴボウ、ニンニク、キク、西洋ノコギリソウ、クチナシ、ゴマ、田七ニンジン、アスパラガス、タマネギ、チコリ、薬用サルビア、朝鮮アザミ(アーティチョーク)、クコ、マメ科・アヤメ科の植物、ミヤマウズラ、エルバ・デ・パサリーニョ、セテサングリア、アガメガシワ、紅茶、レスベラトロール、カテキン類、ベルベリン、ローズマリー、豆エキス、メトホルミン等が挙げられる。
【0019】
また、本発明の組成物は、医薬品の外、医薬部外品、特定保健用食品、スポーツ飲料、リハビリ用飲料、ペットフード等の機能性食品としても使用可能である。
【0020】
本発明の医薬組成物又は食品組成物における前記ジペプチドの含有量は、投与形態によっても異なるが、通常、0.001~10質量%が好ましく、0.001~5質量%がより好ましい。また、本発明の医薬組成物又は食品組成物における前記ジペプチドの1日投与量は、10mg~1000mgが好ましく、20mg~800mgがより好ましく、50mg~800mgが更に好ましい。
【実施例
【0021】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【0022】
実施例1(肝臓水解物の分画)
(1)ペプチドとピログルタミルペプチドの分画
強カチオン交換樹脂(AG50)をEcono Column(2.5×20cm)に充填し、樹脂を10mM HClで平衡化した。1gの肝臓水解物(Sample A)を20mLの10mM HClに溶解した。この溶液を樹脂上に添加し、素通り画分を20mL回収した(素通り画分1)。続いて、20mLの10mM HClを樹脂上に添加し、素通り画分20mLを回収する。この操作を19回繰り返した(素通り画分2~20)。素通り画分1~20の吸光度(230nm)を測定し、ペプチドの溶出を確認した。
続いて、20mLの50%アンモニア溶液を樹脂上に添加し、吸着画分20mLを回収した。この操作を20回繰り返した(吸着画分1~20)。吸着画分1~20の吸光度(230nm)を測定し、ペプチドの溶出を確認した。
素通り画分(ピログルタミルペプチド画分)および吸着画分(ペプチド画分)をエバポレーターで減圧濃縮した。
【0023】
(2)親水性と疎水性の分画
固相抽出カラム(Sep-Pak)を10mM HClで平衡化した。ピログルタミルペプチド画分をカラムにパスさせ、素通り画分を溶出・回収した(親水性ピログルタミルペプチド画分)。続いて、10mM HClを含む60%アセトニトリル溶液をカラムにパスさせて、吸着画分を溶出・回収した(疎水性ピログルタミルペプチド画分)。
ペプチド画分についてもこれらの操作を行った。
得られた4画分を凍結乾燥した。
【0024】
実施例2
(1)肝臓水解物中の難消化性ペプチドの定量実験
1)2.5mgの肝臓水解物を1mLの50mM Tris-HClに溶解した。
2)1)にパンクレアチン(0.1mg)、ロイシンアミノペプチダーゼ(2.45unit)、カルボキシペプチダーゼ(7.7unit)を添加し、酵素反応させた(37℃、24h)。
3)限外ろ過(10K)により酵素を除した。
4)3)をスピンカラムに充填した強カチオン交換樹脂(AG50)にパスさせ、素通り画分を回収した(ピログルタミルペプチド画分)。
5)200μLの3)(ペプチド画分)および4)(ピログルタミルペプチド画分)をサイズ排除HPLCで分画・分取した(SEC Fr.35-44)。
6)ペプチド画分については、SEC Fr.35-44を乾固してAccQ化した。ピログルタミルペプチド画分については、SEC Fr.35-44をそのまま用いた。
7)LC-MS/MS分析により、難消化性ペプチドの構造を決定した。
カラム:Inertsil ODS-3
溶離液:0.1%ギ酸および0.1%ギ酸を含む80%アセトニトリル
分析方法:ペプチド画分については、AccQのフラグメント(m/z=171.1)を特異的に検出(Precursor ion scan分析)した後、MS/MS分析で構造を推定し、標準を合成してMRM分析で同定・定量を行う。
ピログルタミルペプチド画分については、Total scan ion分析によりピークを検出した後、MS/MS分析で構造を推定し、標準を合成してMRMで同定・定量を行う。
【0025】
(2)肝臓水解物をラットに投与した時のペプチドの血中移行の実験
1)Wister rat(6週齢、雄)に肝臓水解物水溶液を単回投与した(10g/60kg)。
2)投与30分および60分後、イソフルラン麻酔下で腹部大静脈より採血し、血漿を得た。更に、消化管(十二指腸~回腸)を摘出し、生理食塩水10mLで管腔内容物を溶出する。血漿および消化管内容物に3倍量のエタノールを加えた。(分析まで-20℃で保存)。
3)血漿および消化管内容物のエタノール上を乾固し、AccQ化を行った。
4)MRM分析により、(1)で同定された難消化性ペプチドの同定・定量を行った。
血中のジペプチド濃度を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
その結果、(D)Asp-(D)Val、(D)Asp-(D)Phe、(D)Asp-(D)Ile、(D)Asp-(D)Leu、(D)Asp-(L)Val、(D)Asp-(L)Ile、(D)Asp-(L)Leu、及び(D)Asp-(L)Pheは、経口投与による血中移行性が良好で、血中で長時間持続することが判明した。
【0028】
実施例3(ジペプチドの合成)
1)以下の順でナス型フラスコに試薬を加え、撹拌しながら反応させる(4℃,over night)。
(i)H-Leu-OtBu・HCl
(ii)DMF
(iii)TEA
(iv)Boc-Asp(OtBu)-OH(Lα体)
(v)HOBt
(vi)EDL・HCl
その他の異性体の場合には、次の保護アミノ酸を使用する。
Boc-D-Asp(OtBu)-OH(Dα体)
Boc-Asp-OtBu(Lβ体)
Boc-D-Asp-OtBu(Dβ体)
2)エバポレーターでDMFを除去する。
3)酢酸エチルに溶解し、分液漏斗に移す。
4)5%炭酸水素ナトリウムを加えて撹拌し、水層を除く。(×2)
5)10%クエン酸を加えて撹拌し、水層を除く。(×2)
6)飽和食塩水を加えて撹拌し、水層を除く。
7)酢酸エチル層を回収し、硫酸水素ナトリウムを加えて脱水する。
8)酢酸エチル層をろ過回収し、エバポレーターで濃縮する。
9)石油エーテルを加え、生じた沈殿を乾燥させる。(生じない場合は10)に進む)
10)乾燥物に4M HCl/dioxaneを加え、撹拌しながら反応させる。(4℃,24~48h)
11)エバポレーターで4M HCl/dioxaneを除く。
12)ジエチルエーテルを加え、得られた沈殿を超音波で破砕・洗浄し、エーテル上清をデカンで除く。(×3)
13)ジエチルエーテルを加えて放置(4℃,over night)。
14)ジエチルエーテルを加え、得られた沈殿を超音波で破砕・洗浄し、エーテル上清をデカンで除く。(×3)
15)沈殿物を乾燥する。
【0029】
実施例4
〔試験方法〕
(1)使用動物
実験には、体重28~32g(搬入時26g)のddY系雄性マウス(日本SLC)を使用し、実験に供ずるまで室温22±2℃、湿度55±5%、明暗12時間サイクル(明期;7:00~19:00、暗期19:00~7:00)の一定環境下で飼育した。飼育の際にはプラスチックケージ(縦30cm×横20cm×高さ13cm)を用い、実験以外は、固型飼料および水道水を自由に摂取させた。
(2)使用薬物及び調整法
・疎水性ペプチド画分、疎水性ピログルタミルペプチド画分、親水性ペプチド画分、親水性ピログルタミルペプチド画分は、生理食塩液にて溶解し、体重10gあたり0.1mLを腹腔内(i.p.)投与した。投与スケジュールとしては、強制歩行前に生理食塩液又は疎水性ペプチド画分、疎水性ピログルタミルペプチド画分、親水性ペプチド画分、親水性ピログルタミルペプチド画分をi.p.投与し、3時間の強制歩行負荷後、15分間観察用ケージに環境順応後生理食塩液又は疎水性ペプチド画分、疎水性ピログルタミルペプチド画分、親水性ペプチド画分、親水性ピログルタミルペプチド画分をi.p.投与した。
(3)強制歩行負荷
強制歩行負荷は、直径37×奥行き35.5cmの電動式回転カゴにマウスを入れ、1回転/25秒の速度で、3時間強制歩行を試行した。
(4)自発運動量の測定
自発運動量は、マウスをプラスチックケージ(縦24cm×横17cm×高さ12cm)に1匹ずつ入れ、15分間環境に適応させた後、スーパーメックスを用いて90分間の平面運動量を自動的に数値化して評価した。
【0030】
〔結果〕
結果を図1図4に示す。図1図4より、親水性ペプチド画分に比べて、疎水性ペプチド画分及び疎水性ピログルタミルペプチド画分は、優れた抗疲労効果を示した。
【0031】
実施例5
(1)使用動物
実験には、体重28~32g(搬入時26g)のddY系雄性マウス(日本SLC)を使用し、実験に供するまで室温22±2℃、湿度55±5%、明暗12時間サイクル(明期;7:00~19:00、暗期19:00~7:00)の一定環境下で飼育した。飼育の際にはプラスチックケージ(縦30cm×横20cm×高さ13cm)を用い、実験以外は、固型飼料および水道水を自由に摂取させた。
(2)使用薬物及び調整法
・ジペプチドは、生理食塩液にて溶解し、体重10gあたり0.1mLを腹腔内(i.p.)投与した。投与スケジュールとしては、強制歩行前に生理食塩液又はジペプチドをi.p.投与し、3時間の強制歩行負荷後、15分間観察用ケージに環境順応後生理食塩液又はジペプチドをi.p.投与した。
(3)強制歩行負荷
強制歩行負荷は、直径37×奥行き35.5cmの電動式回転カゴにマウスを入れ、1回転/25秒の速度で、3時間強制歩行を試行した。
(4)自発運動量の測定
自発運動量は、マウスをプラスチックケージ(縦24cm×横17cm×高さ12cm)に1匹ずつ入れ、15分間環境に適応させた後、スーパーメックスを用いて90分間の平面運動量を自動的に数値化して評価した。
(5)統計処理
実験結果は、平均値(mean)と標準誤差(S.E.M)で示した。有意差検定は分散分析処理後、Fisher'のPLSD法を行った。P値5%以下を有意差ありとして判定した。なお、この検定には、Stat view-J 5.0 for Windows(登録商標)を用いた。
【0032】
〔結果〕
結果を図5図10に示す。図5図10から明らかなように、Asp-Leu(Dα体)、Asp-Leu(Dβ体)、Asp-Val(Dα体)、Asp-Val(Dβ体)、(D)Asp-Phe(Dα、Dβ)は、優れた抗疲労効果を示した。
図1
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図10