(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】電子部品実装基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20241108BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20241108BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H05K3/34 505B
H05K3/34 503A
H05K3/34 504B
H01L23/12 F
H01L21/60 311S
(21)【出願番号】P 2023525391
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2022006961
(87)【国際公開番号】W WO2022254818
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2021093896
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 憲
(72)【発明者】
【氏名】岡村 進吾
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】境 忠彦
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-215058(JP,A)
【文献】特開平01-150493(JP,A)
【文献】特開昭61-181883(JP,A)
【文献】特開平08-250848(JP,A)
【文献】特開平07-183650(JP,A)
【文献】特開2004-047772(JP,A)
【文献】特開平08-288638(JP,A)
【文献】特開2013-091093(JP,A)
【文献】特開2001-219294(JP,A)
【文献】特開2005-116917(JP,A)
【文献】特開2005-260034(JP,A)
【文献】特開平11-214441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
H01L 23/12
H01L 21/60
B23K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品実装基板の製造方法であって、
基板の複数のランド上に形成された複数の半田プリコートと前記複数の半田プリコートのそれぞれを覆うように形成された酸化防止膜とを覆うように仮止め膜を形成する工程(i)と、
前記酸化防止膜および前記仮止め膜を介して複数の電子部品を前記複数の半田プリコート上に配置する工程(ii)と、
前記複数の半田プリコートを溶融させることによって前記複数の電子部品を前記複数のランドに半田付けする工程(iii)とを含み、
前記酸化防止膜は第1の熱可塑性樹脂を含み、
前記仮止め膜は活性剤と第2の熱可塑性樹脂とを含み、
前記第2の熱可塑性樹脂の軟化点は、前記第1の熱可塑性樹脂の軟化点以下であ
り、
前記酸化防止膜は、前記半田プリコートを形成したときに前記半田プリコートの表面に形成された残渣である、電子部品実装基板の製造方法。
【請求項2】
前記工程(i)の前に、前記複数のランド上に前記複数の半田プリコートおよび前記酸化防止膜を形成する工程(x)を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程(x)の後であって前記工程(i)の前に、前記複数の半田プリコートおよび前記酸化防止膜を前記基板の上方から押圧することによって、前記酸化防止膜に亀裂を入れるとともに前記複数の半田プリコートの上面を平坦化する工程(y)をさらに含む、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程(x)において、少なくとも1つの前記半田プリコートが、隣接する2つの前記ランドを短絡させるように不適切に形成された場合に、
前記工程(x)の後であって前記工程(i)の前に、不適切に形成された前記半田プリコートのうち2つの前記ランド間の上方に存在する部分に切り欠き部を形成する工程(z)をさらに含む、請求項2または3に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品実装基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電子部品を基板に半田付けする方法として、リフロー方法が知られている。リフロー方法では、基板上に予め形成した半田プリコートを用いて電子部品を半田付けする。
【0003】
特許文献1(特開平6-90079号公報)は、「パッド配列ピッチが0.5mm未満のファインピッチパッド部(5)と、パッド配列ピッチが0.5mm以上のラフピッチパッド部(4)とを有するプリント基板(1)に対し、前記ラフピッチパッド部(4)のパッド(3)上にソルダーペースト(8)を印刷し、次いで前記ファインピッチパッド部(5)に有機酸鉛塩と錫粉とを主成分とする半田析出組成物(12)をベタ塗りし、然る後プリント基板(1)を加熱して、前記ソルダーペースト(8)を熔融してラフピッチパッド部(4)のパッド(3)上に半田層(13)を形成すると共に、前記半田析出組成物(12)からファインピッチパッド部(5)のパッド(3)上に半田を析出せしめて半田層(13)を形成し、次いでそのプリント基板(1)上にフラックス(15)を塗布し、そこに電子部品(16)を搭載してリード(17)を前記フラックス(15)の粘着力によりパッド(3)上の半田層(13)に仮止めし、その電子部品(16)を搭載したプリント基板(1)を加熱して半田層(13)を熔融し、電子部品(16)のリード(17)をパッド(3)に半田付けすることを特徴とする、プリント基板への電子部品実装方法」を提案している。特許文献1の段落0026には、「プリコート基板14は、界面活性剤系、高級アルコール系溶剤、テルペン系溶剤などの代替洗浄剤、水、代替フロンなどで洗浄し、ペースト残渣や半田ボールなどを除去するのが好ましい。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子部品の微小化が進んでおり、それに伴って半田プリコートも微小化している。半田プリコートが微小化すると単位体積当たりの表面積が大きくなり、半田プリコートの表面が酸化しやすくなる。半田プリコートの表面が酸化すると、半田付けの不良が発生しやすくなる。
【0006】
このような状況において、本発明の目的の1つは、半田付けの不良を低減できる電子部品実装基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面は、電子部品実装基板の製造方法に関する。当該製造方法は、基板の複数のランド上に形成された複数の半田プリコートと前記複数の半田プリコートのそれぞれを覆うように形成された酸化防止膜とを覆うように仮止め膜を形成する工程(i)と、前記酸化防止膜および前記仮止め膜を介して複数の電子部品を前記複数の半田プリコート上に配置する工程(ii)と、前記複数の半田プリコートを溶融させることによって前記複数の電子部品を前記複数のランドに半田付けする工程(iii)とを含み、前記酸化防止膜は第1の熱可塑性樹脂を含み、前記仮止め膜は活性剤と第2の熱可塑性樹脂とを含み、前記第2の熱可塑性樹脂の軟化点は、前記第1の熱可塑性樹脂の軟化点以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電子部品実装基板の製造方法によれば、電子部品を半田付けする際の不良を低減できる。
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本発明の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明に係る一例の製造方法の一工程を模式的に示す断面図である。
【
図1B】
図1Aの工程に続く一工程を模式的に示す断面図である。
【
図1C】
図1Bの工程に続く一工程を模式的に示す断面図である。
【
図1D】
図1Cの工程に続く一工程を模式的に示す断面図である。
【
図1E】
図1Dの工程に続く一工程を模式的に示す断面図である。
【
図1F】
図1Eの工程に続く一工程を模式的に示す断面図である。
【
図2】工程(iii)における基板表面の温度プロファイルの一例を模式的に示す図である。
【
図3A】半田プリコートを形成する工程の一例の一部を模式的に示す断面図である。
【
図3B】
図3Aの工程に続く一工程を模式的に示す断面図である。
【
図3C】
図3Bの工程に続く一工程を模式的に示す断面図である。
【
図3D】
図3Cの工程に続く一工程を模式的に示す断面図である。
【
図3E】
図3Dの工程に続く一工程を模式的に示す断面図である。
【
図4A】本発明に係る他の一例の製造方法の一工程を模式的に示す断面図である。
【
図4B】
図4Aの工程に続く一工程を模式的に示す断面図である。
【
図4C】
図4Bの工程に続く一工程を模式的に示す断面図である。
【
図4D】
図4Cの工程に続く一工程を模式的に示す断面図である。
【
図4E】
図4Dの工程に続く一工程を模式的に示す断面図である。
【
図4F】
図4Eの工程に続く一工程を模式的に示す断面図である。
【
図4G】
図4Fの工程に続く一工程を模式的に示す断面図である。
【
図4H】
図4Gの工程に続く一工程を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本発明に係る実施形態について例を挙げて説明するが、本発明は以下で説明する例に限定されない。この明細書において、「数値A~数値B」という記載は、数値Aおよび数値Bを含み、「数値A以上で数値B以下」と読み替えることが可能である。以下の説明において、特定の物性や条件などの数値に関して下限と上限とを例示した場合、下限が上限以上とならない限り、例示した下限のいずれかと例示した上限のいずれかとを任意に組み合わせることができる。
【0011】
(電子部品実装基板の製造方法)
本実施形態に係る製造方法は、電子部品実装基板の製造方法である。当該製造方法を、以下では、「製造方法(M)」と称する場合がある。製造方法(M)は、工程(i)、工程(ii)、および工程(iii)をこの順に含む。
【0012】
(工程(i))
工程(i)は、基板の複数のランド上に形成された複数の半田プリコートと複数の半田プリコートのそれぞれを覆うように形成された酸化防止膜とを覆うように仮止め膜を形成する工程である。酸化防止膜は、第1の熱可塑性樹脂を含む。仮止め膜は、活性剤と第2の熱可塑性樹脂とを含む。第2の熱可塑性樹脂の軟化点は、第1の熱可塑性樹脂の軟化点以下である。酸化防止膜および仮止め膜はともに熱可塑性樹脂を含むため、それらは加熱によって軟化する。
【0013】
酸化防止膜は、半田プリコートの表面を覆うように形成されている。そのため、酸化防止膜は、半田プリコートの表面の酸化を抑制する。すなわち、酸化防止膜は、半田プリコートの表面の酸化による半田不良を抑制する。半田プリコートが形成された基板には、半田プリコートが形成された市販の基板を用いてもよい。あるいは、後述する方法などによって、基板のランド上に半田プリコートを形成してもよい。
【0014】
酸化防止膜に含まれる第1の熱可塑性樹脂は、例えば、ロジンまたは変性ロジンである。以下では、ロジンおよび変性ロジンをまとめて「ロジン類」と称する場合がある。変性ロジンの例には、実施例で示す変性ロジンが含まれるが、それ以外の変性ロジンを用いてもよく、例えば、ガムロジンやウッドロジン等の天然ロジンや、その誘導体(重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、酸変性ロジン、ロジンエステル等)を用いてもよい。ロジンを変性することによって、その軟化点を変化させることができる。酸化防止膜は、半田プリコートを形成したときに半田プリコートの表面に形成される残渣(フラックス残渣)であってもよい。その場合、半田プリコートを形成するために用いた半田ペーストのフラックスの一部が酸化防止膜を形成する。その場合、フラックスに含まれる熱可塑性樹脂が、酸化防止膜に含まれる第1の熱可塑性樹脂となる。すなわち、半田ペーストの残渣を酸化防止膜として用いる場合には、第1の熱可塑性樹脂を含む半田ペーストを用いる。
【0015】
仮止め膜は、半田プリコート上に配置された電子部品を、リフローが行われるまで安定に仮止めする。仮止め膜を用いることによって、電子部品の位置がずれて電子部品が適切に実装されないことを抑制できる。
【0016】
仮止め膜は、仮止め剤(仮止め膜の材料)を、半田プリコートおよび酸化防止膜を覆うように塗布することによって形成できる。仮止め剤を塗布した後に、必要に応じて仮止め剤を乾燥および/または熱処理する工程を行ってもよい。仮止め剤の塗布方法に限定はなく、マスクを用いたスクリーン印刷で塗布してもよいし、ディスペンサを用いて塗布してもよい。
【0017】
仮止め膜は、活性剤および第2の熱可塑性樹脂を含み、必要に応じて他の成分をさらに含む。第2の熱可塑性樹脂は、ロジン類であってもよい。他の成分の例には、粘性を高める成分、および液体成分(溶媒または分散媒)などが含まれる。活性剤とは、半田付けを容易にする物質である。活性剤には、公知の半田フラックスで用いられている活性剤を用いてもよい。活性剤の例には、アビエチン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、プロピオン酸、2,2-ビスヒドロキシメチルプロピオン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリコール酸、ジグリコール酸、チオグリコール酸、ジチオグリコール酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、およびそれらを変性したものなどが含まれる。その他、還元作用を有する活性剤としては、例えば、アミン、ハロゲン化物等が挙げられる。粘性を高める成分の例には、増粘剤(またはチキソ剤)として用いられる公知の成分が含まれ、例えば、カスターワックス、アマイド系チキソ剤、ソルビトール系チキソ剤などが含まれる。活性剤を含む仮止め膜を用いることによって、リフロー工程の際に電子部品の端子部の酸化膜を除去することなどが可能となり、半田不良の発生を抑制できる。
【0018】
仮止め膜に含まれる液体成分の例には、ヘキシルジグリコール(沸点:約260℃)などが含まれる。液体成分には、半田プリコートの半田の融点よりも高い沸点を有する液体成分を用いてもよい。例えば、液体成分には、沸点が230~320℃の範囲にある、アルコール、ポリオール、グリコールエーテル、その他の有機化合物(例えば、グリコール、ケトン、炭化水素、エステル、ルピネオール類など)などを用いてもよい。これらの中でも、粘度が比較的高い物質が好ましい。
【0019】
第2の熱可塑性樹脂として用いることができる変性ロジンの例には、酸化防止膜に用いることができる変性ロジンとして例示した変性ロジンが含まれる。ロジンを変性することによって、その軟化点を変化させることができる。仮止め膜は、粘度が比較的高い半田フラックスを用いて形成してもよい。
【0020】
仮止め膜の粘度は、20~200Pa・sの範囲(例えば50~180Pa・sの範囲)にあってもよい。仮止め膜の粘度を20Pa・s以上とすることによって、電子部品を安定に仮止めできる。電子部品をより安定に仮止めするために、仮止め膜の粘度は、50Pa・s以上であることが特に好ましい。粘度は、Anton Paar社製のレオメーターを用い、且つ、1.993°コーンを用いて測定できる。なお、上記の粘度は、25℃で測定された値である。
【0021】
第2の熱可塑性樹脂の軟化点T2(℃)は、第1の熱可塑性樹脂の軟化点T1(℃)以下であり、T1よりも低くてもよい。酸化防止膜は、第1の熱可塑性樹脂の軟化点T1で軟化を開始するとみなすことができる。同様に、仮止め膜は、第2の熱可塑性樹脂の軟化点T2で軟化を開始するとみなすことができる。そのため、以下では、軟化点T1および軟化点T2を、酸化防止膜および仮止め膜の軟化温度として説明する場合がある。なお、この明細書において、ロジン類の軟化点は、JIS K 5902に記載の方法によって測定された値を意味する。なお、軟化点が異なる様々なロジン類が市販されているため、それらを用いることによって、軟化点T1および軟化点T2を容易に調整できる。
【0022】
第1の熱可塑性樹脂は、通常、酸化防止膜の主成分である。第2の熱可塑性樹脂は、通常、仮止め膜の主成分である。ここで、主成分とは、液体成分(溶媒または分散媒)を除いた成分のうち含有率が最も高い成分を意味する。主成分は、通常、液体成分を除いた成分の50質量%以上を占める。なお、第1および第2の熱可塑性樹脂はそれぞれ、複数の熱可塑性樹脂で構成されてもよい。
【0023】
第1の熱可塑性樹脂の軟化点T1は50~220℃の範囲(例えば70~180℃の範囲)であってもよい。第2の熱可塑性樹脂の軟化点T2は、50~220℃の範囲(例えば70~180℃の範囲)であってもよい。軟化点T1と軟化点T2とは、0≦(T1-T2)≦65を満たしてもよい。(T1-T2)の値は、0~110(℃)の範囲にあってもよい。これらの範囲において、(T1-T2)は0より大きくてもよい。なお、当然のことながら、酸化防止膜の軟化点T1は、半田プリコートの融点よりも低い。
【0024】
仮止め膜が液体成分を含む場合、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂とは、ともに仮止め膜の液体成分に溶解することが好ましい。この構成によれば、酸化防止膜および仮止め膜の両方が軟化したときに、両方の膜が相溶する。例えば、第1および第2の熱可塑性樹脂にロジン類を用い、仮止め膜の液体成分にそれらが溶解する液体成分(ヘキシルジグリコールなど)を用いることが好ましい。
【0025】
(工程(ii))
工程(ii)は、酸化防止膜および仮止め膜を介して複数の電子部品を複数の半田プリコート上に配置する工程である。電子部品を配置する方法に特に限定はなく、公知の方法および公知の装置を用いてもよい。複数の電子部品は、JIS規格の0402サイズ以下のサイズの電子部品を含んでもよい。そのような微小なサイズの電子部品を実装する場合に、本発明は特に有効である。電子部品は仮止め膜によって固定されるため、工程(iii)が行われるまで、基板に安定に固定される。
【0026】
(工程(iii))
工程(iii)は、複数の半田プリコートを溶融させることによって複数の電子部品を複数のランドに半田付けする工程である。工程(iii)は、一般的にリフロー工程と呼ばれる工程によって実施できる。リフロー工程では、半田プリコートが溶融するまで基板等(電子部品が配置された基板)を加熱した後、基板等を冷却することによって溶融した半田を固化させる。工程(iii)によって、電子部品が実装された基板が得られる。必要に応じて、工程(iii)の後に、半田付けの検査などを行ってもよい。
【0027】
工程(iii)において、電子部品が配置された基板を加熱したときに、仮止め膜と酸化防止膜とが同時に軟化するか、あるいは、最初に仮止め膜が軟化し、その後、酸化防止膜が軟化する。この構成によれば、軟化した仮止め膜が電子部品の電極と接触し、接触した部分の酸化膜を確実に清浄化する。仮止め膜の軟化と同時またはそれ以降に酸化防止膜が軟化することによって、セルフアライメントが可能となり、電子部品を良好に実装できる。軟化した仮止め膜と軟化した酸化防止膜とが相溶する場合には、電子部品を特に良好に実装できる。一方、酸化防止膜が仮止め膜よりも先に軟化した場合、半田プリコートの酸化膜の除去に活性剤の成分が消費され、電子部品の電極の酸化膜の除去が不充分になりやすいため、半田の接続不良が発生しやすくなる。
【0028】
工程(iii)は、複数の電子部品を基板に半田付けすることができる限り特に限定されず、公知のリフロー工程を用いてもよい。例えば、基板等の昇温工程は、予熱工程を含んでもよい。あるいは、基板等の昇温工程は、予熱工程を含まなくてもよい。その場合、基板の上面の温度が50℃から半田プリコートの融点まで昇温する間の当該上面の昇温速度が2℃/秒よりも高くなるように基板等を加熱してもよい。すなわち、この場合、基板の上面の温度が50℃から半田プリコートの融点まで昇温する間の当該上面の昇温速度は、2℃/秒以下となることはない。当該昇温速度は、3℃/秒以上としてもよいし、4℃/秒以上としてもよい。当該昇温速度は、10℃/秒以下(例えば8℃/秒以下)であってもよい。昇温速度を10℃/秒以下とすることによって、配線やランドが基板部から剥離することを抑制できる。なお、基板の上面とは、電子部品が配置されるランドが形成されている表面である。予熱工程を省略し、高い昇温速度(例えば4℃/秒以上)を採用することによって、工程(iii)に要する時間を大幅に低減できる。
【0029】
半田プリコートが高温に長時間曝されると、その表面が酸化されて半田不良が生じやすくなる。上記昇温速度を4℃/秒以上とすることによって、半田プリコートの表面の酸化を抑制でき、半田不良を低減することができる。この効果は、複数の電子部品が微小な電子部品を含む場合に特に大きくなる。ここで、微小な電子部品とは、例えば、平面形状の1辺が0.4mm以下の電子部品である。当該電子部品には、JIS規格の0402サイズの電子部品と同じサイズ以下のサイズの電子部品が含まれる。なお、この明細書において、「平面形状」とは、電子部品が基板に実装された状態で、基板の上方から電子部品を見たときの形状である。
【0030】
工程(iii)は、公知のリフロー装置と同じまたは類似の構成を有するリフロー装置を用いて行うことができる。半田プリコートの表面の酸化を抑制するために、リフロー装置内を窒素ガス雰囲気にして工程(iii)を行ってもよい。ただし、上記昇温速度を4℃/秒以上とする場合、リフロー装置内を空気雰囲気の状態で工程(iii)を行っても、半田プリコートの表面の酸化を抑制できる。そのため、上記昇温速度を4℃/秒以上とする場合、空気雰囲気において工程(iii)を行ってもよい。
【0031】
半田プリコートの融点は、用いる半田によって異なる。一般的に用いられている鉛フリー半田(鉛を含まない半田)の場合、融点は、例えば200℃以上である。そのため、鉛フリー半田を用いる場合は、工程(iii)において、基板の上面の温度を200℃以上(例えば220℃以上や230℃以上)に昇温させる。基板の上面の温度の上限は、電子部品への影響を考慮して、250℃以下(例えば240℃以下や230℃以下)としてもよい。
【0032】
製造方法(M)は、工程(i)の前に、複数のランド上に複数の半田プリコートおよび酸化防止膜を形成する工程(x)を含んでもよい。複数の半田プリコートを形成する方法に限定はなく、公知の方法を用いてもよい。
【0033】
製造方法(M)は、工程(x)の後であって工程(i)の前に、複数の半田プリコートおよび酸化防止膜を基板の上方から押圧することによって、酸化防止膜に亀裂を入れるとともに複数の半田プリコートの上面を平坦化する工程(y)をさらに含んでもよい。
【0034】
製造方法(M)は、工程(x)において、少なくとも1つの半田プリコートが、隣接する2つのランドを短絡させるように不適切に形成された場合に、工程(x)の後であって工程(i)の前に、不適切に形成された半田プリコートのうち2つのランド間の上方に存在する部分に切り欠き部を形成する工程(z)をさらに含んでもよい。
【0035】
製造方法(M)は、工程(y)および工程(z)のいずれか一方のみを含んでもよいし、両方を含んでもよい。両方を含む場合、工程(z)は、工程(y)の前に行ってもよいし、工程(y)の後に行ってもよい。
【0036】
以下では、本発明に係る実施形態の例について、図面を参照して具体的に説明する。以下で説明する実施形態は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。また、本発明に係る実施形態に必須ではない事項は省略することが可能である。なお、理解を容易にするために、以下の図は、部材の縮尺を変更して示す場合がある。また、以下の図では、一部の部材のハッチングを省略する場合がある。なお、以下の図では、基板上に実装される電子部品として1つの電子部品のみを示すが、実際には複数の電子部品が基板に実装される。
【0037】
(実施形態1)
実施形態1では、製造方法(M)の一例について説明する。実施形態1の製造方法における工程を、
図1A~
図1Fの断面図で模式的に示す。
【0038】
まず、
図1Aに示すように、複数の半田プリコート11および酸化防止膜12のそれぞれを覆うように仮止め膜13を形成する(工程(i))。半田プリコート11は、プリント基板(基板)10のランド10bの上に形成されている。プリント基板10は、板状の基板部10aと、基板部10aの表面に形成されたランド10bとを含む。
【0039】
次に、
図1Bに示すように、酸化防止膜12および仮止め膜13を介して複数の電子部品30を複数の半田プリコート11上に配置する(工程(ii))。これによって、複数の電子部品30が配置された基板10Xが得られる。図示する一例の電子部品30は、2つの端子部30aと、それらの間に配置された素子部30bとを含む。
【0040】
次に、基板10Xをリフロー装置内に導入して、基板10Xの加熱を開始する。仮止め膜13は酸化防止膜12よりも先に軟化する。仮止め膜13が軟化し、酸化防止膜12が軟化していない状態を、
図1Cに示す。このとき、軟化した仮止め膜13の一部は、
図1Cに示すように、電子部品30の端子部30aの表面に広がる。仮止め膜13は活性剤を含むため、端子部30aの広い範囲の酸化膜が除去される。
【0041】
基板10Xをさらに昇温させたときの状態を、
図1Dに示す。
図1Dでは、半田プリコート11の一部が溶融して、ランド10b上に溶融核11bが形成される。また、酸化防止膜12が軟化して仮止め膜13と相溶し、混合物13aとなる。
【0042】
基板10Xをさらに昇温させると、
図1Eに示すように、半田プリコート11のすべてが、溶融した半田11cとなる。その後、基板10Xを冷却することによって、
図1Fに示すように、溶融した半田が固化して半田11dとなる。半田11dによって、電子部品30がランド10bに半田付けされる。仮止め膜13は、残渣13gとなる。このようにして、電子部品30が実装された基板10Yが得られる。基板10Yは、電子部品実装基板である。
【0043】
上述したように、プリント基板10の上面10saの温度がプリント基板10の下面10sbの温度よりも低くなるように、基板10Xを加熱してもよい。また、上述したように、基板10Xを加熱する際に、予熱工程を設けてもよいし、予熱工程を設けなくてもよい。予熱工程を設けない場合に関して、工程
(iii)におけるプリント基板10の上面10saおよび下面10sbの温度プロファイルの一例を、
図2に示す。
【0044】
図2には、室温(25℃)から最高温度まで、一定の昇温速度で基板表面の温度を昇温させる一例を示す。
図2の一例では、上面10saの表面温度の昇温速度は4℃/秒以上である。下面10sbの表面温度の昇温速度は、上面10saの表面温度の昇温速度よりも
高い。仮止め膜13中の第2の熱可塑性樹脂の軟化点T2(℃)は、酸化防止膜12中の
第1の熱可塑性樹脂の軟化点T1(℃)以下である。すなわち、仮止め膜13の軟化温度は、酸化防止膜12の軟化温度以下である。
図2に示す一例では、加熱ゾーンにおけるリフロー工程が終了すると、冷却ゾーンにおける冷却工程が実施される。
【0045】
本発明の製造方法(M)は、複数のランド10b上に複数の半田プリコート11および酸化防止膜12を形成する工程(x)を含んでもよい。そのような工程(x)の一例を、
図3A~
図3Eに模式的に示す。まず、
図3Aに示すプリント基板(基板)10を準備する。プリント基板10は、板状の基板部10aと基板部10aの表面に形成されたランド10bとを含む。ランド10bは、必要に応じて、基板部10a上の配線(図示せず)に接続されている。
【0046】
次に、
図3Bに示すように、プリント基板(基板)10の上にマスク20を配置する。マスク20は、半田ペーストを塗布するランド10bに対応する位置に開口20hを有する。次に、
図3Cに示すように、半田ペースト11pを塗布することによって、ランド10b上に半田ペースト11pを配置する。半田ペースト11pは、半田粒子11aとフラックス11fとを含む。
【0047】
次に、
図3Dに示すように、プリント基板10上からマスク20を移動させる。次に、半田ペースト11pが配置されたプリント基板10を加熱して半田粒子11aを溶融させた後にプリント基板10を冷却する。これによって、
図3Eに示すように、ランド10b上に半田プリコート11が形成される。このとき、フラックス11fの残渣が、酸化防止膜12となる。フラックス11fに含まれる熱可塑性樹脂が、酸化防止膜12中の第1の熱可塑性樹脂となる。
【0048】
従来から、フラックス11fの残渣を残すと、リフロー工程で半田不良を起こす原因となると考えられてきた。そのため、従来から、残留したフラックス残渣を洗浄によって除去することが行われてきた。しかし、この実施形態では、フラックス残渣を半田プリコート11の酸化防止膜12として用いる。酸化防止膜12は、リフロー工程で半田が溶融する直前まで残存するため、半田プリコート11の表面の酸化を抑制できる。そのため、仮止め膜13中の活性剤の作用が低くても半田の不良を抑制できる。すなわち、酸化防止膜12よりも先に仮止め膜13が軟化しても、半田の不良を抑制できる。さらに、フラックス残渣を酸化防止膜12として用いることによって、フラックス残渣の除去工程を省略できる。
【0049】
製造方法(M)は、工程(x)の後であって工程(i)の前に、上述した工程(y)および/または工程(z)を含んでもよい。工程(x)の後に、工程(y)および工程(z)を行う場合の一例を示す工程断面図を、
図4A~
図4Hに示す。
【0050】
工程(z)は、
図4Aに示すように、少なくとも1つの半田プリコート11が隣接する2つのランド10bを短絡させるように不適切に形成された場合に行われる。なお、工程(z)を行う場合、工程(x)の後であって工程(z)の前に、半田プリコート11が適切に形成されているかどうかを検査する検査工程が行われる。検査工程は、公知の方法で行うことができる。例えば、半田プリコート11が形成されたプリント基板10をカメラで撮影し、得られた画像を画像処理することによって、半田プリコート11の不良を検出できる。
【0051】
工程(y)では、
図4Bに示すように、押圧面が平坦なフラットニングツール51を用いて、複数の半田プリコート11および酸化防止膜12をプリント基板10の上方から押圧する(フラットニング工程)。これによって、酸化防止膜12に亀裂(図示せず)を入れるとともに、半田プリコートの上面11tを平坦化し、且つ、半田プリコート11の厚さを減少させる。電子部品30のサイズが小さくなると、半田プリコート11のサイズも小さくなる。半田プリコート11のサイズが小さくなると、表面張力の影響によって半田プリコート11の上面11tが半球状になり、電子部品30を安定に配置しにくくなることがある。工程(y)で半田プリコート11の上面を平坦化することによって、電子部品30を安定に配置できる。また、酸化防止膜12に亀裂を入れることによって、仮止め膜13に含まれる溶剤と酸化防止膜12に含まれる溶剤とが相溶しやすくなる。また、酸化防止膜12が剥がれて半田金属の新生面が現れるため、電子部品の電極と半田プリコートの半田とが接続されやすくなる。フラットニング工程の直後に酸化防止膜12を供給するため、半田金属の新生面が酸化されることはほとんどない。
【0052】
次に、工程(z)を行う。まず、
図4Cに示すように、不適切に形成された半田プリコート11のうち2つのランド10b間の上方に存在する部分に切り欠き部11kを形成する。切り欠き部11kは、例えば、
図4Cに示すようなノミ状のツール52で半田プリコート11の上記部分を突くことによって形成できる。
【0053】
その後は、
図1A~
図1Fと同様の方法で電子部品30を実装する。具体的には、まず、
図4Dに示すように、半田プリコート11および酸化防止膜12を覆うように仮止め膜13を形成する(工程(i))。
【0054】
次に、
図4Eに示すように、酸化防止膜12および仮止め膜13を介して複数の電子部品30を複数の半田プリコート11上に配置する(工程(ii))。これによって、複数の電子部品30が配置された基板10Xが得られる。
【0055】
次に、基板10Xを加熱して半田プリコート11を溶融させた後に固化させ、電子部品30をプリント基板10に実装する。このときの工程を、
図4F~
図4Hの断面図に模式的に示す。
図4Fでは、仮止め膜13が軟化して広がっている。
図4Gでは、酸化防止膜12が軟化して仮止め膜13と相溶し、混合物13aとなっている。また、半田プリコート11の一部が溶融して溶融核11bが形成されている。
図4Hでは、溶融した半田が固化して半田11dとなる。また、混合物13aは、残渣13gとなる。このようにして、電子部品30が実装された基板10Yが得られる。半田プリコート11が溶融する際に、溶融していない半田プリコート11は、先に溶融した溶融核11bに引き寄せられながら溶融する。そのため、
図4Hに示すように、最終的には短絡が解消される。切り欠き部11kを形成することによって、2つのランド10bの間に存在する半田プリコート11が溶融核11bに引き寄せられやすくなる。そのため、2つのランド間の短絡を解消しやすくなる。
【実施例】
【0056】
本発明について、実施例によってより詳細に説明する。この実施例では、酸化防止膜の成分および仮止め膜の成分を変えて電子部品を実装した。
【0057】
(実験例1)
実験例1では、半田ペーストを用いて、プリント基板のランド上に半田プリコートを形成した。そして、半田プリコートの表面に形成されたフラックス残渣の膜を、酸化防止膜として用いた。半田ペーストには、半田粒子(90質量%)、重合ロジン(4.5質量%、軟化点140℃)、アビエチン酸(0.5質量%)、カスターワックス(0.5質量%)、およびヘキシルジグリコール(4.5質量%)の混合物を用いた。ヘキシルジグリコールは液体成分(溶剤)であり、アビエチン酸は活性剤であり、カスターワックスはチキソ剤である(以下の例においても同様である)。半田粒子には、SnAgCu合金からなる半田の粒子を用いた。この半田ペーストを用いて形成された酸化防止膜(フラックス残渣の膜)の主成分は重合ロジンであり、酸化防止膜は140℃で軟化し始めるとみなすことができる。
【0058】
次に、半田プリコートおよび酸化防止膜を覆うように仮止め膜を形成した。仮止め膜の材料には、水素添加ロジン(45質量%、軟化点75℃)、アビエチン酸(5質量%)、カスターワックス(5質量%)、およびヘキシルジグリコール(45質量%)の混合物を用いた。仮止め膜の主成分は水素添加ロジンであり、仮止め膜は75℃で軟化し始めるとみなすことができる。
【0059】
得られた基板の半田プリコート上に、酸化防止膜および仮止め膜を介して20個の電子部品を配置した。電子部品には、JIS規格の0201サイズの電子部品(平面形状のサイズが0.25mm×0.125mm)を用いた。そして、リフロー装置内で半田プリコートを溶融させて電子部品をプリント基板に実装した。このようにして、実験例1の電子部品実装基板を作製した。
【0060】
(実験例2~5)
半田ペースト中の重合ロジン、および/または、仮止め膜中の水素添加ロジンを、他のロジンに変更することを除いて、実験例1と同様の配合比で、半田ペーストと仮止め膜の材料とを準備した。そして、それらを用いて実験例1と同様の方法で、実験例2~5の電子部品実装基板を作製した。
【0061】
上記の実験例1~5の電子部品実装基板について、20個の電子部品が適切にランドに半田付けされているかどうかを検査した。具体的には、ランドと電子部品とが電気的に接続されていない不良(オープン)の有無を検査した。実験例1~5で用いたロジンおよびその軟化点と、検査結果とを、表1に示す。表1の不良率は、20個の電子部品のうち、ランドに適切に半田付けされていなかった電子部品の割合を示す。
【0062】
【0063】
表1に示すように、軟化点T2が軟化点T1以下である実験例1、2、および5では、不良が発生しなかった。一方、軟化点T2が軟化点T1よりも高い実験例3および4では、不良が発生した。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、電子部品実装基板の製造方法に利用できる。
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
【符号の説明】
【0065】
10 :プリント基板(基板)
10X、10Y:基板
10b :ランド
10sa :上面
10sb :下面
11 :半田プリコート
11a :半田粒子
11c、11d :半田
11f :フラックス
11k :切り欠き部
11p :半田ペースト
11t :上面
12 :酸化防止膜
13 :仮止め膜
30 :電子部品