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特許7584117脳活性化用マスク及び認知症予防治療用マスク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】脳活性化用マスク及び認知症予防治療用マスク
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/899 20060101AFI20241108BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 5/42 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A61K36/899
A61K9/70
A61K9/72
A61P1/14
A61P5/42
A61P25/00 101
A61P25/20
A61P25/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019519052
(86)(22)【出願日】2018-01-23
(86)【国際出願番号】 JP2018001956
(87)【国際公開番号】W WO2018211742
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2020-11-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2017100174
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513211560
【氏名又は名称】SHIODAライフサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩田 清二
【合議体】
【審判長】松波 由美子
【審判官】冨永 みどり
【審判官】齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-61827(JP,A)
【文献】登録実用新案第3050471(JP,U)
【文献】山口 昌樹,唾液ストレスマーカーと非侵襲的診断,BIO INDUSTRY,2012年,29(10),25-30
【文献】レモングラスの効能・活用方法,検索日2018年03月19日,www.herb-magazine.com/%E3%83%AC%E3%83%A2%%E3%83%B3%E3%82%BO%E3%83%A9%E3%82%B9,URL:www.herb-magazine.com/%E3%83%AC%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%BO%E3%83%A9%E3%82%B9
【文献】アロマトピア,2016年,25(6),6-10
【文献】コスメトロジー研究報告,2015年,23,189-196
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A41D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CA/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥していないレモングラスの葉を、抽出溶媒を使用せず、撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に外部から熱を加えつつ減圧して抽出する工程を有する抽出法により抽出されたレモングラスの水性抽出液を含浸させたものであって、
該レモングラスの水性抽出液は、外部からの加熱と蒸発熱による冷却で、レモングラスの葉が20℃以上50℃以下の温度を維持するようにし、101.3kPa(1気圧)に対し80kPa以上低い圧力を維持しつつなされた抽出法により抽出されたものである、コルチゾール分泌抑制用マスク
【請求項2】
少なくとも主たる抽出中は、1kPa以上10kPa以下の圧力を維持しつつ抽出された請求項1に記載のコルチゾール分泌抑制用マスク
【請求項3】
上記破砕しながらの撹拌が、可動刃及び/又は固定刃を備えた抽出装置内でなされた請求項1又は請求項2に記載のコルチゾール分泌抑制用マスク
【請求項4】
認知症予防治療用である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載のコルチゾール分泌抑制用マスク
【請求項5】
食欲増進用である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載のコルチゾール分泌抑制用マスク
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レモングラスから特定の方法で抽出した水性抽出液を含浸させたものであることを特徴とする脳活性化用マスク、認知症予防治療用マスク等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物から抽出された香料や精油等は、精神症状の対症療法として利用ができることが知られている。
特許文献1には、精油成分であるβ-セクレターゼ阻害剤を含有する老人性痴呆症の予防又は治療薬が記載されており、かかる精油成分は、クローブ油やティーツリー油に含まれるとしている。
また、特許文献2には、セージ精油を有効成分として含む嗅覚機能改善剤が記載されており、認知症患者に投与すれば有効であるとされている。
【0003】
このように、香料や精油は、その香りが人体に感覚的に受容されることで、様々な作用を有すると考えられているが、その作用については、官能的なものが多く、医学的、科学的な検証に欠けるものであった。
また、その香料や精油の用途についても、アロマセラピー用等と言った漠然としたものであり、医学的・科学的に更に基礎的な実験に基づいた証拠に基づいて用途を限定したものではなかった。
【0004】
特許文献3には、ラベンダー、ローズマリー、レモングラス等の植物から特定の抽出方法で抽出された高品質な香気成分含有抽出物が記載されている。
また、特許文献4には、レモングラス等から特定の抽出方法で抽出された抽出液が、嗅覚を利用して人の脳の特定の場所に作用して脳の特定の場所の活動を賦活又は抑制する経鼻的脳機能調整剤が記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献3は、抽出対象として香気のある植物が列挙されているのみで、植物間の効果の違いや、従って特定用途への適用性を検討したものではなかった。また、用途は、アロマセラピー、香料、化粧料、食品、医薬品等と言うものであり、特定の植物からの抽出液が、特定の用途に特に優れていることを見出したものでもなかった。
また、特許文献3は、主に精油を獲得するものであり、脂溶性の原料に容易に混合できることを特徴としている。
【0006】
特許文献4には、近赤外分光分析法(NIRS)を用いて、種々の脳機能に作用・影響する経鼻的脳機能調整剤が記載されているが、近赤外分光分析法(NIRS)の測定結果のみに留まっているものであり、ヒトの状態に直結した実際的測定結果(エビデンス)に基づいて、何ら用途(認知症予防治療用、抗ストレス用、コルチゾール分泌抑制用、食欲増進用等)を限定したものではなく、限定できるものでもなかった。
【0007】
また、上記特許文献は何れも、抽出液の使用方法について限定がなく、主に空間に揮散させて使用するものと思われ、水性抽出液を含浸させたマスクとして使用することは記載されていない。
【0008】
近年、認知症等の疾患の予防・治療は、極めて重要な課題であるにも関わらず、医学的測定、分析的測定、ヒトに直結した測定等によって裏付けられた「脳活性化」については、天然物において殆ど知られておらず、明確な科学的裏付けがある脳活性化剤、その使用形態、その用途等が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2010-254607号公報
【文献】特開2013-014537号公報
【文献】特開2012-062374号公報
【文献】国際公開第2015/025902号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、前記問題点を解決し、実際的な測定結果(エビデンス)に裏付けられた優れた脳活性化剤を見出し、それを含有する脳活性化用マスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、レモングラスから特定の方法・条件で抽出した水性の抽出物が、マスクの形態で、他の香気植物からの抽出物に比較して、優れた脳機能活性化、認知症予防治療効果、抗ストレス効果等を発揮することを見出して、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、レモングラスを撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に外部から熱を加えつつ減圧して抽出する工程を有する抽出法により抽出されたレモングラスの水性抽出液を含浸させたものであることを特徴とする脳活性化用マスクを提供するものである。
【0013】
また、本発明は、認知症対策用として脳神経活動を亢進させる認知症予防治療用マスクであって、レモングラスを撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に外部から熱を加えつつ減圧して抽出する工程を有する抽出法により抽出されたレモングラスの抽出液を含浸させたものであることを特徴とする認知症予防治療用マスクを提供するものである。
【0014】
また、本発明は、上記の脳活性化用マスクであることを特徴とする認知症予防治療用マスク、抗ストレス用マスク、コルチゾール分泌抑制用マスク、食欲増進用マスクを提供するものである。
【0015】
以下、後記するような「撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に外部から熱を加えつつ減圧して抽出する工程を有する抽出法」を、単に「低温真空抽出法」と略記する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、「酸素が結合したヘモグロビンを含有する血液」が脳内に多く流れているか(脳内に存在するか)否かを、近赤外分光分析法(NIRS)(以下、単に「NIRS」と略記することがある)で実際に検出して判断しているので、脳の活性化が起っていることが明らかであり、脳活性化に特化され、用途が限定された有用な脳活性化用マスクが得られている。
【0017】
本発明の脳活性化用マスクに用いられる水性抽出液は、低温真空抽出法で得られるので、新鮮な破砕面から蒸発したものであり、水又は有機溶媒と言った抽出溶媒を使用する必要がないので、植物由来の(細胞水を含む)成分のみが、水性液体として高濃度で収率良く回収されたものである。
また、該抽出液は、抽出溶媒由来の物質を含有させないことが可能であるため、細胞水を含め天然由来の成分だけで構成させることができ、極めて安全であり、また安心して提供ができ、また抽出溶媒臭がない。
【0018】
また、低温真空抽出法によって得られたレモングラスの水性抽出液は、その他の汎用的な抽出法によるレモングラスの抽出物にはなかった「成分」又は「成分比率」を有することにより、レモングラス由来の、高品質及び新規性のある水性抽出液を提供することができる。また、分解物、外添物等を含有しない水性抽出液を提供することができる。
低温真空抽出法は、溶媒を使用しないことに加え、レモングラスに加わる熱を抑制できるので、分解物等を含有しない、従来品にはなかった「成分」又は「成分比」のレモングラス由来の高品質及び新規性のある水性抽出液を提供することができる。
【0019】
そして、低温真空抽出法によって得られたレモングラスの水性抽出液は、マスク形態と組み合わせることで、よりその効果を発揮した。
【0020】
また、本発明においては、複数の植物からの低温真空抽出法による抽出液同士を、含浸マスクの形態で吸引させ比較検討することで、他の植物よりレモングラスが、含浸マスクとして最も優れていることを確かめている。
【0021】
従来の「ハーブ等からの精油や香料」を利用したアロマセラピーでは、官能評価によって脳に変化が起っているであろうとの推測に基づくものであったが、本発明によって、医学的・科学的な測定結果(エビデンス)に裏付けられた「用途限定(マスクに限定、更に用途限定されたマスクに限定)の脳活性化用マスク」を提供できた。
【0022】
マスクは、少量で効果を発揮し、空間に揮散させるのと異なり、周辺への影響が少ないので、特定のヒトの脳活性化用として最適である。従って、本発明の脳活性化用マスクは、例えば認知症患者等が多い施設内等での使用としてマッチング性に優れたものである。
【0023】
また、本発明では、実際に脳活性化用マスクとして、NIRSによって「酸素が結合したヘモグロビンを含有する血液」が脳内に多く流れることを確かめており、また、ヒトの唾液中のコルチゾールの分泌が抑制されることを確かめており、また、ラットにおいて体重の増加割合が大きいことを確かめている。
従って、本発明は、実際に、脳活性化用マスク、抗ストレス用マスク、コルチゾール分泌抑制用マスク、食欲増進用マスクとして有用である。更に、上記用途に有用であると言うことは、認知症予防治療用マスクとしても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明における低温真空抽出法の抽出工程に用いられる装置の一形態を示す概略図である。
図2】本発明における低温真空抽出法の抽出工程に用いられる装置の容器の一形態を示す断面図である。
図3】本発明における低温真空抽出法の抽出工程に用いられる装置の容器内の撹拌羽根の構成の一形態を示す斜視図である。
図4】本発明におけるマスクの作製方法を示すフロー図である。
図5】本発明において使用した近赤外分光分析法(NIRS)の原理を示す図である。
図6】NIRSで測定した前頭葉の活性化・沈静化の状態の一例を示す図である。図B図Cにおいて、右側のメジャー(尺度)は、上に行く程実際には赤くなっていて、活性化していることを示し、下に行く程実際には青くなっていて、沈静化していることを示す。以下のNIRS測定の結果の図においても同様である。
図7】実施例1において、レモングラスから得られた抽出液を、マスクの形態でNIRS測定した結果を示す図である。
図8】比較例1において、サクラから得られた抽出液を、マスクの形態でNIRS測定した結果を示す図である。
図9】比較例2において、ラベンダーから得られた抽出液を、マスクの形態でNIRS測定した結果を示す図である。
図10】比較例3において、ランから得られた抽出液を、マスクの形態でNIRS測定した結果を示す図である。
図11】実施例1と比較例1、2、3の結果をまとめた表である。
図12】本発明の脳活性化用マスクの機能評価の原理を示す概念図である。
図13】本発明の脳活性化用マスクを使用したときの唾液中のコルチゾール量(μg/dL)の変化、すなわち抗ストレス効果を示すグラフである。
図14】レモングラスから得られた水性抽出液の食欲増進効果の測定方法を示す写真である。
図15】レモングラスから得られた水性抽出液をラットに嗅がせたときの体重の変化の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0026】
<レモングラスの水性抽出液>
本発明の脳活性化用マスクは、レモングラスの水性抽出液を含浸させたものであることを特徴とする。
【0027】
レモングラスからの抽出は、該レモングラスの何れの組織から抽出してもよいが、レモングラスの葉から抽出されたものが好ましい。
また、抽出に用いられるものは、乾燥をしないもの(生のままのもの)、ある程度乾燥したものの何れでもよいが、好ましくは、乾燥をしないもの(実質的に生のままのもの)が、細胞水を十分に含有し、変質もないために好ましい。
なお、本発明で使用されるレモングラスの品種は特に限定されない。
【0028】
本発明における抽出においては、水を含め抽出溶媒を使用しないことが、本発明の前記効果を得るために好ましい。
レモングラスを低温真空抽出法で抽出すると、主に水性抽出液が得られる。該「水性抽出液」には、精油とも言われる油性成分が溶解していて水溶液として均一になっている場合も、少量の油性成分が上層に分離していたり水相に分散していたりする場合の該水相も含まれる。少量の油性成分が上層に分離している場合は、撹拌等を行って均一な水性分散液(本発明ではこれも「水性抽出液」と言う)として使用することもできる。
【0029】
該水性抽出液の水は、レモングラスの細胞水であり、従って、該水性抽出液は全てレモングラスと言う天然物(植物)由来のものである。また、低温真空抽出法で抽出すると熱による変質が起らないので、完全に天然物(植物)のままである。また、該細胞水は、特定の撹拌羽根で撹拌しながら抽出されたものなので、レモングラスの細胞膜を通過したものである。
なお、本明細書において「細胞水」とは、植物細胞に含まれる細胞内液のことである。
【0030】
本発明における「レモングラスの水性抽出液」は、レモングラスを撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に外部から熱を加えつつ減圧して抽出する工程を有する抽出法により抽出されるものであることが必須である。すなわち、本発明における「レモングラスの水性抽出液」は、低温真空抽出法を用いて得られるものであることを特徴とする。
【0031】
なお、「レモングラスの水性抽出液」には、極めて多くの有効成分が含有されているところ、それらの成分を同定すること、それらの成分から本発明の効果を奏する有効成分を同定することは、不可能であるか又はおよそ実際的でない(「不可能・非実際的事情」がある)。従って、本発明における「レモングラスの水性抽出液」については、製造方法(抽出方法)で特定する以外に方法がない。
【0032】
本発明における「レモングラスの水性抽出液」は、抽出溶媒を加えずに、レモングラスを撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に、20℃以上50℃以下の温度範囲を維持するように熱を加えつつ減圧することによって抽出して得られるものが好ましい。
上記抽出は、外部からの加熱と、細胞水等の蒸発熱による冷却で、レモングラスが20℃以上50℃以下の温度を維持するようにしてなされるものであることが、変質がなく全て天然物であり、それによって前記した本発明の効果が得られるために好ましい。
【0033】
ここで、低温真空抽出法に供するレモングラスの形態、すなわち、レモングラスを撹拌羽根で破砕しながら撹拌する前の形態については、低温真空抽出法に用いる装置に投入し易く、該装置に適応する形態であれば特に限定はないが、適度に切断されていることも好ましい。
【0034】
要すれば切断後の葉の面積、容器に投入する際の葉の面積として、特に限定はないが、0.2cm~50cmが好ましく、1cm~40cmがより好ましく、2cm~30cmが特に好ましい。
【0035】
低温真空抽出法では、有機溶媒、水、水蒸気、超臨界抽出法等における二酸化炭素等の抽出媒体を実質的に使用せず、低温で減圧して直接抽出することが、溶媒が残留し得ないので天然成分だけの抽出液が製造できる、溶媒の臭いが残らない、含有成分が熱分解しない、含有成分が散逸しない、細胞水が散逸しないので大量の抽出液が得られる、抽出残渣も有効利用することができる等の点から好ましい。
【0036】
ここで「低温」とは、減圧しないで溶媒抽出するときの一般的温度より低い温度のことを言い、本発明の場合は、具体的には、(抽出容器の温度でも抽出器内の気体の温度でもなく)、レモングラス自体の温度が20℃以上50℃以下の温度であることが好ましい。抽出温度については後で詳述する。
【0037】
<<抽出装置>>
図1は、レモングラスの水性抽出液の製造方法において、抽出工程に用いられる装置の一形態を示す概略図である。なお、本発明の趣旨の範囲内であれば、図に示された装置で抽出されたものには限定されない。
容器1は、レモングラスを収容し、撹拌羽根6で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に外部から20℃以上50℃以下の温度範囲(該温度はレモングラスの温度を言う)を維持しながら熱を加えつつ減圧して抽出する容器であり、冷却槽2は、容器1から出る蒸気を冷却する装置である。
【0038】
容器1は、撹拌羽根6を収容した下部半円筒部7と、その上に形成された上部角形部8とからなる。下部半円筒部7の周囲には、容器1の内部に熱を加える蒸気室9がある。
下部半円筒部7の最下部の中央には、抽出後のレモングラスの破砕物すなわち抽出残渣を取り出す排出口10が設けられている。
【0039】
前記上部角形部8の上部には、吸引される蒸気の排気口14が設けられ、この排気口14には、前記冷却槽2につながる配管16が接続されている。
前記上部角形部8の上部には、レモングラスの投入口17を設けると共に、その投入口17を塞ぐ蓋18を設けている。
【0040】
本発明におけるレモングラスの水性抽出液は、レモングラスを撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に抽出を行うことで得られる。このようにしながら、抽出することで、新鮮な破砕面ができたら、そこから直ぐに抽出が可能になるので、有効成分の熱分解、酸化等による変性を防ぐことができ、抽出装置に投入する前に破砕してしまった場合の破砕面からの、有効成分の蒸発等による散逸を防ぐことができる。
上記破砕・撹拌は、可動刃及び/又は固定刃を備えた抽出装置内で行うことが、上記効果を得るために特に好ましい。
【0041】
例えば、図3は、前記撹拌羽根6の構成を示す斜視図であり、撹拌羽根6は、容器1の外部に設けられたモータにより回転されるものであり、容器1の端壁20、21に回転可能に支持される左右の端板22、23と、その先端間に両端が固定された、ほぼ「く」の字形をなす羽根体24、25とによって構成することにより、中心軸を有しない構造に構成されている。
【0042】
26は下部半円筒部7の内面に固着された複数の固定刃であり、羽根体24、25における固定刃26に対応する箇所には、羽根体24、25における固定刃26の部分を通過するための溝24a、25aが形成され、その溝の両側に、固定刃26との間でレモングラス31を切断するための可動刃24b、25bが形成されている。
なお、図3では、固定刃26と可動刃24b、25bとは、噛み合いが時間をずらして順次行なわれるように、周方向に位置をずらして配設し、これにより撹拌羽根6の駆動モータの動力の瞬間的増大が起こらないようにしている。
【0043】
図2に示すように、下部半円筒部7の片側上部には、この上に乗るレモングラス31が円滑に落ちるように、傾斜面30があることが好ましい。
32は前記容器1内の真空度を計測する真空計、33、34は温度計であり、これらは抽出工程における容器内の圧力(減圧度)と温度を測定し、抽出時のレモングラス31の温度も間接的に測定するために設けられたものであり、また、抽出の開始と終了を判定するために設けられたものである。
【0044】
<<抽出工程>>
この真空乾燥装置の操作・動作は、例えば、下記のように行なわれる。
まず、作業開始に当り、冷却槽2に冷却水が充填される。次いで、レモングラス31を投入口17から容器1内に投入して蓋18を閉じる。そして、撹拌羽根6は、図1図3の矢印Rの方向に回転させ、容器1内のレモングラスを撹拌しながら、可動刃24b、25bと固定刃26との間でレモングラス31を小さく破砕する。
【0045】
レモングラスを破砕しながら抽出することで、新鮮な破砕面からの抽出が可能になり、有効成分や細胞水の「変性」や「散逸による減量」を防ぐことができる。
【0046】
上記撹拌・破砕と同時に、蒸気室9内に加熱用蒸気を供給することにより、外部から熱を加える。容器1に加えられた熱は、レモングラス31に伝達され、レモングラス31が撹拌羽根6によって撹拌されることにより抽出が促進される。この抽出は、レモングラス31が、可動刃24b、25bと固定刃26とによって破砕されて小さくなることによって更に促進される。
その際、蒸気室9内に送り込む加熱用蒸気の温度や量を調節して、レモングラス31自体の温度を、後記する好ましい範囲にする。
【0047】
エゼクタ、真空ポンプ等の減圧装置46で吸引することにより、容器1内の気体、すなわち、抽出液の蒸気及び空気は、配管16を通じて吸引され、容器1内のレモングラス31に含まれている成分と細胞水の蒸発が始まる。
その際、減圧装置46で吸引する量や吸引力を調節して、抽出時の圧力(減圧度)を後記する好ましい範囲にする。また、水の蒸発熱によるレモングラスの冷却によって温度範囲を後記する好適範囲に維持する。
【0048】
工業的に実施可能な(現実的な)「排気容量と減圧度の関係」から、減圧装置46は水を用いたエゼクタが好ましい。水を用いたエゼクタは、減圧度(真空度)は高くならないが、排気容量を大きくできるので、本発明における減圧装置46として好適である。冷却水を用いることがより好ましく、更にエゼクタは横型エゼクタであることが、上記点から特に好ましい。
【0049】
容器1内の「レモングラスに含まれる成分の蒸気」及び「細胞水の主成分である水の蒸気」(水蒸気)は、配管16を通して吸引され、冷却槽2に導入・液化されて、回収液となって回収槽41内に溜まる。
【0050】
回収槽41内に、回収液(油層50及び水層51)が所定量まで貯まったら、減圧装置46での吸引を停止し、バルブ45を閉じ、弁49を開いて、回収液を回収する。レモングラスの抽出液の場合、殆どが水性抽出液である。ただ、油層50(精油)が分離している場合は、要すれば静置して分液をして油層50を取り除き、水層51を抽出液(レモングラスの水性抽出液)として回収してもよいし、油層50(精油)を均一に水相に分散させて全て回収してもよい。
【0051】
本発明においては、マスクに含侵させる用途として好適に使用できる点、脳機能の活性化に有効である点等により、抽出液としては、水層(水相、水性画分)を使用することが特に好ましい。
水性抽出液は、油性抽出液(精油等)に比べて、1回の抽出工程でより多くの量を回収することができる。また、油性抽出液(精油等)に比べて匂いが薄いが、比較的心地よく感じるレベルの匂いであり、マスクとして医療現場や家庭で使い易い。更に、容器や部品等の洗浄が容易である点で、油性抽出液(精油等)より優れている。
【0052】
<<抽出条件>>
上記抽出の温度は特に限定されないが、レモングラス自体が20℃以上50℃以下の温度を維持するように行うことが好ましく、より好ましくは、25℃以上45℃以下であり、特に好ましくは、30℃以上40℃以下である。
【0053】
この範囲であれば、前記した本発明の効果を奏し易い。
特に、下限が上記以上であると、抽出時間を短くできるので、有効成分の分解・逸失が抑制され、また、不必要な時間のロスがなく経済的である。また、有効成分を十分に抽出可能である。本発明における抗酸化剤の製造方法では、レモングラスを撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に抽出を行うので、新鮮な破砕面ができた時点で早く抽出してしまうことができるが、温度の下限が上記以上であると抽出時間を短くできることと相まって効果がより相乗される。
一方、上限が上記以下であると、有効成分の熱による変性・分解を防止しつつ有効成分を抽出できる。
【0054】
低温真空抽出法を用いる場合、上記抽出の減圧度は特に限定されないが、101.3kPa(1気圧)に対し、80kPa以上低い圧力を維持しつつ行うことが好ましい。より好ましくは、101.3kPa(1気圧)に対し、85kPa以上低い圧力を維持しつつ行うことであり、特に好ましくは、90kPa以上低い圧力であり、更に好ましくは、95kPa以上低い圧力である。
また、1kPa[1気圧(101.3kPa)に対して、-100.3kPa]以上10kPa[1気圧(101.3kPa)に対して、-91.3kPa]以下に維持ししつつ行うことが好ましい。より好ましくは2kPa[1気圧に対して、-99.3kPa]以上9kPa[1気圧に対して、-92.3kPa]以下であり、特に好ましくは3kPa[1気圧に対して、-98.3kPa]以上8kPa[1気圧に対して、-93.3kPa]以下である。
【0055】
圧力(特に上限)が上記範囲であると(減圧度が上記範囲であると)、水の沸点を勘案し低い温度での有効成分の抽出が可能になるので、有効成分の熱による変性・分解が防止でき、十分に有効成分を抽出できる。また、抽出時間を短くできるので、有効成分の分解・逸失が抑制され、また、不必要な時間のロスがなく経済的である。
低温真空抽出法では、レモングラスを撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に抽出を行うので、減圧度が上記値のように低いと、抽出速度が速いという点で、有効成分の分解・逸失が抑制される効果がより相乗される。
【0056】
該抽出は、「外部からの加熱」と「細胞水等の蒸発熱による冷却」で、レモングラスが20℃以上50℃以下の温度を維持するようにしてなされることが、本発明の前記効果を得るために好ましい。
容器の体積が小さいときは、減圧度を上記より低くできる真空ポンプは存在する。しかし、工業的に実施しようとすると、低温真空抽出法の場合、水の蒸発熱でレモングラスを冷却して温度範囲を前記範囲に維持するために、排気容量が大きい必要がある。現実的な「排気容量と減圧度の関係」から、すなわち減圧装置46が存在しなくてはならない等の点から、減圧度(特に圧力の下限)は上記範囲が好ましい。
【0057】
<脳活性化用マスク>
脳活性化用マスクは、マスクにレモングラスの水性抽出液を含浸させたものである。マスクの大きさ、材質、形成形態等は限定されない。材質は、天然繊維であっても、合成繊維であっても、それらの複合、組み合わせ等であってもよい。形成形態は、織物、編物、レース、フェルト、不織布、紙、通気フィルム等の何れでもよく、それらの異種又は同種の布が複数積層されたものでもよい。
【0058】
マスクの外、中、内の何れかに、液体を担持又は吸収する布、紙、フィルム等の担持体が挟み込まれていて又は貼付されていて、全体としてマスクを形成していてもよい。その場合、抽出液を担持体に染みこませ、該担持体を挟み込んだり貼付したりしてもよい。
この形態の場合、染みこませた担持体だけを交換して、全体としては繰り返し使用することができる。
【0059】
低温真空抽出法で抽出されたレモングラスの水性抽出液は、レモングラス由来の成分しか含有していないことが特徴である。従って、それを希釈しないで含浸させることが好ましいが、希釈した上で含侵することは排除されない。希釈溶媒としては、水、エタノール、それらの混合溶媒等が挙げられる。
【0060】
含浸させる場所は、限定されず、マスク全体でもよいし、マスクの中心部であっても端部であってもよい。
マスク全体に対して、「低温真空抽出法によるレモングラスの水性抽出液」として含浸させる量は、限定はされないが、発明の前記効果を得るために、30mg以上が好ましく、100mg以上がより好ましく、200mg以上が特に好ましい。
【0061】
<<NIRSによる脳活性化と脳沈静化(の測定)>>
本発明の脳活性化用マスクは、近赤外分光分析法(NIRS)を用いて、非侵襲的に脳活動を測定した。図5図6にその原理と測定法を示す。
脳が活動すると、血液中の酸素化ヘモグロビンは神経細胞に酸素供給する。NIRSは、近赤外光を用いてその変化(脳表面の酸素状態変化)を捉える。
図5に示したように、頭表から近赤外光を脳内に照射し、大脳皮質で吸収・散乱を起こした光を、頭表上の光ファイバで集光・検出し、この検出光の変化で脳活動(脳活性化と脳沈静化)を測定する。
【0062】
実際の測定方法を図6に示す。図6において、A、B、Cは以下である。
A:本発明で用いた機器と測定(装着)方法を示す。
B:NIRSで測定した前頭葉の活動イメージ例を示す。
C:脳活動、脳内の神経活動の例、上に行くほど赤く活性の上昇(活性化)を示し、下に行くほど青く活性の低下(沈静化)を示す。
図6の例では、前頭前野中央部で神経活動の低下(脳沈静化)、それ以外の領域で神経活動の低下上昇(脳活性化)が認められている。
【0063】
図6(B)及び(C)のそれぞれの右側にある縦長のメジャー(尺度)は、上に行くほど赤く(活性化)、下に行くほど青い(沈静化)。図6は白黒であって色の区別が付かないため、図中に指示線を記載した。図7~10でも同様に指示線で色を示した。
【0064】
<<認知症予防治療用マスク(1)>>
実施例等から、本発明における特定の抽出方法で得られたレモングラスの水性抽出液は、脳機能を活性化させることが分かった。従って、該抽出液を含浸させたマスクは、脳活性化用マスクとしての用途に有用であり、更に、認知症は脳を活性化する方向で改善するので、認知症予防治療用として有用である、言い換えれば、本発明の脳活性化用マスクは、認知症予防治療用マスクとして有用である。
【0065】
本発明は、認知症対策用として脳神経活動を亢進させる認知症予防治療用マスクであって、レモングラスを撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に外部から熱を加えつつ減圧して抽出する工程を有する抽出法により抽出されたレモングラスの抽出液を含浸させたものであることを特徴とする認知症予防治療用マスクでもある。
更に、認知症予防治療用マスクとして好ましいもの(形態、製造方法等)は、前記の「脳活性化用マスク」の部分で記載した通りである。
【0066】
<<コルチゾール分泌抑制用マスク、抗ストレス用マスク>>
本発明の脳活性化用マスクは、コルチゾール分泌抑制用マスクとして有用である。本発明の脳活性化用マスクを使用すると、実際に、唾液中のストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が抑制されることが確かめられている。
【0067】
図12に、抗ストレスと、血液又は唾液中のコルチゾール分泌についての相関を示す。
ストレスがあると視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)が下垂体前葉に作用し、下垂体前葉からは、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が副腎皮質に作用する。その結果、コルチゾールが分泌され、血液又は唾液中のコルチゾールが増加する。
従って、唾液中のコルチゾールの減少が見られれば、ストレスがないときと同様の状態であると言える。
【0068】
本発明の脳活性化用マスクを使用すると、唾液中のコルチゾールが減少した(図13参照)。このことは、レモングラスの水性抽出液を吸引すると、抗ストレス作用があることを示している。
従って、本発明の脳活性化用マスクは、コルチゾール分泌抑制用マスクであると言え、また、本発明の脳活性化用マスクは、抗ストレス用として有用である。言い換えると、本発明の脳活性化用マスクは、抗ストレス用マスクであるとも言える。
【0069】
<<食欲増進用マスク>>
本発明の脳活性化用マスクをラットに対して使用すると、体重の増加速度が上昇した(図15参照)。従って、本発明の脳活性化用マスクは、食欲増進用マスクであると言える。
【0070】
<<認知症予防治療用マスク(2)>>
健常人において、脳活動が亢進し脳が活性化し、コルチゾールの分泌が増えて抗ストレス効果があり、更に食欲増進が見られると言うことは、本発明のレモングラスの水性抽出液を含浸させた脳活性化用マスクが、認知症予防治療用マスクとして有用であることを示している。本発明の脳活性化用マスクは、認知症患者又は認知症を予防したい人に対して使用することが特に本発明の効果を発揮する。
従って、本発明は、認知症対策用として脳神経活動を亢進させる認知症予防治療用マスクであって、レモングラスを撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に外部から熱を加えつつ減圧して抽出する工程を有する抽出法により抽出されたレモングラスの抽出液を含浸させたものであることを特徴とする認知症予防治療用マスクでもある。
【実施例
【0071】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
調製例1
<低温真空抽出法によるレモングラスの水性抽出液の調製>
レモングラスを、図1~3に示した容器(株式会社F・E・C製)に入れて抽出を行った。
抽出条件は以下であった。
(1)レモングラスの温度:30~40℃
(2)容器内の設定温度:35~40℃
(3)圧力:101.3kPa(1気圧)に対し、93~97kPa低い圧力
(4)撹拌羽根(可動刃)の回転数:4rpm(回転/分)
【0073】
回収槽41に溜まった回収液は、均一な水層(水相)51のみであった。その液を目的のレモングラスの水性抽出液とした。なお、油性成分は水相に溶解していると考えられる。
【0074】
調製例2
<低温真空抽出法によるレモングラス以外の水性抽出液の調製>
レモングラスに代えて、サクラ、ラベンダー、ランを用いた以外は、調製例1と同様にして、サクラの抽出物、ラベンダーの抽出物、及び、ランの抽出物をそれぞれ調製した。
【0075】
調製例3
<マスクの調製>
図4に示したように、レモングラス、サクラ、ラベンダー及びランからの低温真空抽出法による水性抽出物を、水等で希釈せずにそのまま、それぞれ0.1gろ紙に染みこませ、ガーゼでできた汎用の市販のマスク内にそれぞれ挿入してマスクを調製した。
【0076】
実施例1
<NIRSによる非侵襲的脳活動の測定(脳の活性化と沈静化の測定)>
調製例3で得られたレモングラスの水性抽出液が含侵されたマスクを、10名の被験者について、30分間装着してもらい、その後、NIRS測定を行った。このマスクを、図7では「レモングラスマスク」と略記する。
対照として、「マスク未装着」を評価した。
また、対照として、水性抽出物を染みこませない調製例で使用したのと同様の「ガーゼでできた汎用の市販のマスク」を30分装着してもらい、その後、NIRS測定を行った。このマスクを、図7では「市販のマスク」と略記する。
【0077】
結果を図7に示す。被験者10名の内、6名はレモングラスマスク装着時に脳神経活動の活性化が観察された。
なお、図7では、赤部分が活性化、青部分が沈静化であるが、白黒であって赤と青の区別が付かないため、図7中に指示線を記載した。右側にある縦長のゲージは、上に行くほど赤く(活性化)、下に行くほど青い(沈静化)。図8~10でも同様である。
【0078】
比較例1
実施例1において、レモングラスをサクラに代えた以外は、実施例1と同様にNIRSによる評価を行った。
結果を図8に示す。被験者10名の内、5名はサクラマスク装着時に脳神経活動の活性化が観察された。
【0079】
比較例2
実施例1において、レモングラスをラベンダーに代えた以外は、実施例1と同様にNIRSによる評価を行った。
結果を図9に示す。被験者10名の内、5名はラベンダーマスク装着時に脳神経活動の活性化が観察された。
【0080】
比較例3
実施例1において、レモングラスをランに代えた以外は、実施例1と同様にNIRSによる評価を行った。
結果を図10に示す。被験者10名の内、7名はランマスク装着時に脳神経活動の変化がなかった。
【0081】
<実施例1、比較例1~3のまとめ>
被験者10名における、各マスク装着による脳神経活動の変化(脳の活性化と沈静化)を図11にまとめた。図11では、被験者10名中、活性化、変化なし、沈静化の人数を表中に記載した。
調製例1で得られた「レモングラスの水性抽出液」を含浸させたレモングラスマスクで、最も脳神経活動の活性化が見られた。
このことは、該レモングラスマスクが、脳活性化用マスクであることを示し、認知症予防治療用マスクであることも示している。
【0082】
実施例2
<唾液中のコルチゾールの測定(抗ストレスの測定)>
調製例3で得られたレモングラスの水性抽出液が含侵されたマスクを、10名の被験者について、30分間装着してもらい、唾液中のコルチゾールの量を測定した。このマスクを、図13では「レモングラスマスク」と略記する。
対照として、「マスク未装着」を評価した。
また、対照として、レモングラスの水性抽出物を染みこませない調製例で使用したのと同様の「ガーゼでできた汎用の市販のマスク」を30分装着してもらった。このマスクを、図13では「市販のマスク」と略記する。
唾液中のコルチゾールの測定は、常法に従って行った。
【0083】
結果を図13に示す。図13から、このレモングラスマスクを装着すると、唾液中のコルチゾールの量が減少することが分かった。
このことは、該レモングラスマスクが、コルチゾール分泌抑制用マスク、従って抗ストレス用マスクとしても有用であることを示し、更に認知症予防治療用マスクとしても有用であることも示している。
【0084】
実施例3
図14に示したように、充分なエサをいれた飼育箱の中で、ラットに毎日30分間、調製例1で得られたレモングラスの水性抽出液の香りを嗅がせ、6日間、体重の変化を測定した。それぞれ4匹のラットの体重変化を測定し相加平均を求めた。結果を図15に示す。
【0085】
図15から分かるように、レモングラスの水性抽出液の香りを嗅がせたラットは、平均体重の増加速度が、嗅がせずに通常飼育したラットに比べて有意に増加した。
このことは、レモングラスの水性抽出液が、食欲増進に効果があることを示している。
従って、本発明の脳活性化用マスクは、食欲増進用マスクとして有用であることを示し、更には食欲が増進するので、認知症予防治療用マスクとして有用であることも示している。
【0086】
比較例4
調製例1において、レモングラスから低温真空抽出法によって抽出することに代えて、レモングラスから、水蒸気蒸留法、水・エタノール混合抽出溶媒による溶媒抽出法を用いて抽出した。調製例3と同様にしてマスクを作製して、実施例1と同様にして評価したが、実施例1に比較して何れも活性化が低減した。
その原因として、有効成分の変質又は散逸;レモングラス由来ではない物質(天然物ではない物質)の混入;等が考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の脳活性化用マスクに含侵されているレモングラスの抽出液は、レモングラスの細胞水をそのままの状態で含み、今までのレモングラスの抽出液とは異なる成分組成を有する。また、本発明におけるレモングラスの抽出液は植物由来であり、抽出工程において抽出溶媒を使用する必要がないので、安全性が極めて高く、全て天然物にすることができる。
従って、本発明の脳活性化用マスクは、認知症予防治療用、コルチゾール分泌抑制用、抗ストレス用、食欲増進用として有用であるため、医療品分野、医薬品分野、介護用品分野等において広く利用されるものである。
【0088】
本願は、2017年5月19日に出願した日本の特許出願である特願2017-100174に基づくものであり、その出願の全ての内容をここに引用し、本願発明の明細書の開示として取り込まれるものである。
【符号の説明】
【0089】
1 容器
2 冷却槽
6 撹拌羽根
7 下部半円筒部
8 上部角形部
9 蒸気室
10 排出口
14 排気口
16 配管
17 投入口
18 蓋
20 端壁
21 端壁
22 端板
23 端板
24 羽根体
24a 溝
24b 可動刃
25 羽根体
25a 溝
25b 可動刃
26 固定刃
30 傾斜面
31 レモングラス
32 真空計
33 温度計
34 温度計
41 回収槽
45 バルブ
46 減圧装置
49 弁
50 油層
51 水層
R 回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15