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特許7584130情報処理装置、農作業機、プログラム、土壌の硬さを決定する方法、及び土壌の硬さを可視化する方法
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  • 特許-情報処理装置、農作業機、プログラム、土壌の硬さを決定する方法、及び土壌の硬さを可視化する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】情報処理装置、農作業機、プログラム、土壌の硬さを決定する方法、及び土壌の硬さを可視化する方法
(51)【国際特許分類】
   A01B 33/16 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
A01B33/16
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021009523
(22)【出願日】2021-01-25
(65)【公開番号】P2022113348
(43)【公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】平松 賢治
(72)【発明者】
【氏名】谷本 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】海田 健児
(72)【発明者】
【氏名】中谷 公紀
(72)【発明者】
【氏名】木村 和正
(72)【発明者】
【氏名】石橋 一平
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-113304(JP,A)
【文献】特開2019-163621(JP,A)
【文献】特開2019-126321(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0320574(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の耕耘爪の少なくとも1つに設けられた加速度データ取得部により取得された加速度データに基づいて、土壌の硬さを決定する、情報処理装置であって、
前記加速度データは、前記耕耘爪が土壌に衝突する際の加速度を示すデータである、情報処理装置。
【請求項2】
複数の前記加速度データの分散を算出し、当該分散に基づいて、前記土壌の硬さを決定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記分散と前記土壌の硬さとを関連付けたテーブルを予め記憶している、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
位置情報を取得するとともに、取得した位置情報と前記土壌の硬さとを関連付ける、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の情報処理装置と、
複数の耕耘爪を有する耕耘ロータと、
前記複数の耕耘爪の少なくとも1つに設けられた加速度データ取得部と、
を備える、農作業機。
【請求項6】
前記加速度データ取得部は、加速度センサと、当該加速度センサにより取得された前記加速度データを前記情報処理装置に送信する通信部を含む、請求項5に記載の農作業機。
【請求項7】
前記加速度データ取得部は、前記加速度センサに対して測定を指示する制御部を含む、請求項6に記載の農作業機。
【請求項8】
前記加速度データ取得部は、前記耕耘爪の峰部に設けられている、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の農作業機。
【請求項9】
農作業機の耕耘爪に設けられた加速度データ取得部から前記耕耘爪が土壌に衝突する際の加速度を示す加速度データを取得し、
前記加速度データに基づいて、前記土壌の硬さを決定することを含む、土壌の硬さを決定する方法。
【請求項10】
前記土壌の硬さを決定することは、複数の前記加速度データの分散を算出し、当該分散に基づいて、前記土壌の硬さを決定することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記土壌の硬さを決定することは、前記分散と前記土壌の硬さとを関連付けたテーブルを参照して前記土壌の硬さを導出することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
さらに、前記農作業機が作業する圃場内における位置情報を取得し、当該位置情報と前記土壌の硬さとを関連付けたマッピングデータを生成することを含む、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項12に記載のマッピングデータに基づいて、前記圃場内における前記土壌の硬さの分布を可視化することを含む、土壌の硬さを可視化する方法。
【請求項14】
請求項9乃至13のいずれか一項に記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機、及び土壌の硬さを決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場内における土壌の養分又は土質等の状況を把握するために、土壌診断を実施することが知られている(特許文献1)。通常、土壌診断においては、圃場内の複数のサンプリング地点における土壌を分析し、圃場全体の状況を決定する。したがって、複数のサンプリング地点を適切に選定しないと、分析結果に異常値を含んでしまい、圃場全体の状況を適切に把握することが困難となる。そのため、圃場全体の状況を適切に把握するためには、サンプリング地点の数をできるだけ増やすことが望ましい。
【0003】
しかしながら、従来、土壌の土質、特に、土壌の硬さを調べるためには、特殊な土壌硬度計を用いる必要がある。このような土壌硬度計としては、例えば、先端にコーンを付けたロッドを、土壌面に対して直角にセットし、ハンドルグリップを手で押すことで土壌中にコーンを連続的に貫入して土壌の硬さを測定するものが知られている(特許文献2)。特許文献2に記載の土壌硬度計を用いた場合、作業者が1点1点手動で測定する必要があるため、圃場中の数十箇所のサンプリング地点で測定を行うことは多大な時間と労力とを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-66616号公報
【文献】特開2010-14683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施形態の課題は、圃場内の複数箇所における土壌の硬さを効率的に決定することにある。
【0006】
本発明の一実施形態の他の課題は、圃場内における土壌の硬さの分布を可視化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態における情報処理装置は、複数の耕耘爪の少なくとも1つに設けられた加速度データ取得部により取得された加速度データに基づいて、土壌の硬さを決定する。
【0008】
前記情報処理装置は、複数の前記加速度データの分散を算出し、当該分散に基づいて、前記土壌の硬さを決定してもよい。
【0009】
前記情報処理装置は、前記分散と前記土壌の硬さとを関連付けたテーブルを予め記憶していてもよい。
【0010】
前記情報処理装置は、位置情報を取得するとともに、取得した位置情報と前記土壌の硬さとを関連付けてもよい。
【0011】
本発明の一実施形態における農作業機は、上述の情報処理装置と、複数の耕耘爪を有する耕耘ロータと、前記複数の耕耘爪の少なくとも1つに設けられた加速度データ取得部と、を備える。
【0012】
前記農作業機において、前記加速度データ取得部は、加速度センサと、当該加速度センサにより取得された前記加速度データを前記情報処理装置に送信する通信部を含んでいてもよい。
【0013】
前記農作業機において、前記加速度データ取得部は、前記加速度センサに対して測定を指示する制御部を含んでいてもよい。
【0014】
前記農作業機において、前記加速度データ取得部は、前記耕耘爪の峰部に設けられていてもよい。
【0015】
本発明の一実施形態の土壌の硬さを決定する方法は、農作業機の耕耘爪に設けられた加速度データ取得部から前記耕耘爪が土壌に衝突する際の加速度データを取得し、前記加速度データに基づいて、前記土壌の硬さを決定することを含む。
【0016】
前記方法において、前記土壌の硬さを決定することは、複数の前記加速度データの分散を算出し、当該分散に基づいて、前記土壌の硬さを決定することを含んでもよい。
【0017】
前記方法において、前記土壌の硬さを決定することは、前記分散と前記土壌の硬さとを関連付けたテーブルを参照して前記土壌の硬さを導出することを含んでもよい。
【0018】
前記方法において、さらに、前記農作業機が作業する圃場内における位置情報を取得し、当該位置情報と前記土壌の硬さとを関連付けたマッピングデータを生成することを含んでもよい。
【0019】
本発明の一実施形態の土壌の硬さを可視化する方法は、前記土壌の硬さを決定する方法によって取得された前記マッピングデータに基づいて、前記圃場内における前記土壌の硬さを可視化することを含んでもよい。
【0020】
本発明の一実施形態におけるプログラムは、前述の各方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一実施形態によれば、圃場内の複数箇所における土壌の硬さを効率的に決定することができる。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、圃場内における土壌の硬さの分布を可視化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態における農作業機の構成を示す背面図である。
図2】本発明の一実施形態における農作業機の構成を示す側面図である。
図3】本発明の一実施形態における耕耘爪を第1面の側から見た図である。
図4】本発明の一実施形態における耕耘爪を第1面とは反対の第2面の側から見た図である。
図5】本発明の一実施形態における加速度データ取得部の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の一実施形態における制御装置の構成を示すブロック図である。
図7】加速度データの分散と土壌の硬さとの相関を示す散布図である。
図8】本発明の一実施形態における土壌の硬さを決定する処理を示すフローチャート図である。
図9】本発明の一実施形態における土壌の硬さを決定する処理に用いる参照テーブルの一例を示す図である。
図10】本発明の一実施形態における制御装置の構成を示すブロック図である。
図11】マッピングデータに基づいて可視化した圃場内における土壌の硬さの分布を示す表示画面の一例を示す図である。
図12】決定した土壌の硬さに基づいてリアルタイムに圃場マップを形成する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態における農作業機、及び土壌の硬さを決定する方法について説明する。但し、本発明の一実施形態における農作業機、及び土壌の硬さを決定する方法は、多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0025】
説明の便宜上、「上」、「下」、「前」、「後」、「右」、「左」といった方向を示す語句を用いるが、本発明の農作業機に対して、重力の働く方向が「下」であり、その逆が「上」である。また、走行機体の進行する方向が「前」であり、その逆が「後」である。さらに、「前」に向かって、右側が「右」であり、左側が「左」である。
【0026】
〈第1実施形態〉
[農作業機の構成]
図1は、本発明の一実施形態における農作業機100の構成を示す背面図である。図2は、本発明の一実施形態における農作業機100の構成を示す側面図である。具体的には、図2は、農作業機100の整地体として機能するエプロン130を通常位置に下降させた状態を左側方から示している。
【0027】
本実施形態の農作業機100は、大別して、フレーム110、シールドカバー120、エプロン130、サイドプレート140、耕耘ロータ150、及び制御装置170等を含む。
【0028】
フレーム110は、トラクタ等の走行機体(図示せず)に対し、トップマスト135及びロアリンク連結部136により接続される。フレーム110は、例えば円筒形であり、チェーンケース105に通じる内部には動力伝達軸(図示せず)を有する。この動力伝達軸は、トラクタ等の走行機体が有するPTO軸からPIC(Power Input Connection)シャフト137を経て伝達される回転動力の向きを、進行方向に対して左右方向へと切り替える役割を果たす。フレーム110内の動力伝達軸は、農作業機100の側部に配置されたチェーンケース105に接続され、このチェーンケース105内のチェーン伝達機構によって、耕耘ロータ150の爪軸152に動力が伝達される。
【0029】
耕耘ロータ150は、農作業機100の幅方向に延びる爪軸152と、この爪軸152にフランジ153を介して装着された複数の耕耘爪154とで構成される。図1に示されるように、農作業機100の背面側から見た場合、複数の耕耘爪154は、左方向に湾曲した耕耘爪(以下「L爪154L」と記す。)と、右方向に湾曲した耕耘爪(以下「R爪154R」と記す。)とで構成され、爪軸152の軸方向に所定の間隔で取付けられる。さらに、本実施形態では、1つのフランジ153につき、複数本の耕耘爪154が取付けられる。なお、図2では、1つのフランジ153に対して、2本のL爪154L及び2本のR爪154Rが装着されているが、装着される耕耘爪の種類や本数はこれに限られるものではない。
【0030】
図1に示されているように、農作業機100を背面側から見た場合、向かい合って配置されているR爪154R、L爪154Lは、互いの爪先がオーバーラップしている。したがって、個々のL爪154L、R爪154Rが土を掘り起こす領域の幅は、隣接するL爪154L、R爪154Rの間で一部重複している。なお、本実施形態の農作業機100においては、耕耘ロータ150は、図2において矢印Rで示す方向に回転する。
【0031】
また、図2に示すように、少なくとも1つの耕耘爪154には、加速度データ取得部155が設けられている。加速度データ取得部155は、耕耘爪154に働く加速度を示すセンシングデータ(加速度データ)を取得する。本実施形態では、L爪154Lに加速度データ取得部155を設ける例を示したが、R爪154Rに設けてもよいし、L爪154L及びR爪154Rの両方に設けてもよい。
【0032】
シールドカバー120は、耕耘ロータ150の上方を覆うように配置される。シールドカバー120の側面には、サイドプレート140が設けられる。サイドプレート140は、チェーンケースプレート、サイドフレーム、支持フレーム等と呼ばれる場合もある。図2においては、サイドプレート140の図示が省略されている。
【0033】
エプロン130は、耕耘ロータ150の後方に配置され、シールドカバー120に対して接続部160を軸として上下方向に回動可能となっている。エプロン130の重心は、接続部160よりも後方にあるため、エプロン130は自重により下降しようとする。エプロン130の先端にはステンレスの整地板132が取付けられている。整地板132はエプロン130の内側から外側に向かってループを描くように構成されている。この整地板132が耕耘ロータ150によって掘り起こされた圃場を平坦にする。
【0034】
また、整地板132の両端には可動式の延長整地板134が設けられている。延長整地板134を開くことによって整地板132とともに広い幅の範囲を整地することが可能になる。
【0035】
制御装置170は、外部から受信した信号(例えば、リモコン信号)を処理したり、内部で生成した信号(例えば、駆動部の制御信号)を外部に送信したりする機能を有する。例えば、制御装置170は、作業者がリモコンを操作した際の操作信号に応じて農作業機100が備えるアクチュエータ等の駆動部の動作を制御する。さらに、本実施形態の制御装置170は、加速度データ取得部155から取得した加速度データに基づいて、土壌の硬さを決定する機能を有する。制御装置170の具体的な動作については、後述する。
【0036】
[耕耘爪の構成]
図3は、本発明の一実施形態における耕耘爪154を第1面の側から見た図である。図4は、本発明の一実施形態における耕耘爪154を第1面とは反対の第2面の側から見た図である。図3及び図4では、耕耘爪154として、R爪154Rを例示する。L爪154Lについての詳細な説明は省略するが、湾曲する方向が異なる点を除いては、R爪154Rと同様の特徴を有する。また、図3及び図4に示した耕耘爪154の形状は一例に過ぎず、この形状に限定されるものではない。
【0037】
図3及び図4に示すように、R爪154Rは、取付け基部12、並びに、取付け基部12から連続して延びる縦刃部14及び横刃部16を有する。本実施形態では、縦刃部14と横刃部16とをまとめて刃部と呼ぶ場合がある。また、R爪154Rは、縦刃部14から横刃部16にかけて緩やかに湾曲した形状となっている。具体的には、図3では、R爪154Rは、図面の手前側(紙面から観察者に向かう方向)に向かって緩やかに湾曲している。本実施形態では、図3に示されるR爪154Rの刃面を第1面と呼ぶ。
【0038】
取付け基部12には、取付け孔18a及び18bが長手方向に2箇所設けられている。R爪154Rは、これらの取付け孔18a及び18bにボルト等の固定部材を挿入して、図2に示した耕耘ロータ150の爪軸152に設けられたフランジ153に装着される。このような装着方法を一般的にはフランジ方式と呼ぶが、これに限られるものではなく、公知のホルダ方式を採用することも可能である。本明細書では、フランジ及びホルダを「装着部」と呼ぶ場合がある。
【0039】
図3及び図4に示すように、R爪154Rは、縦刃部14から横刃部16にかけて刃付部20、及び、刃付部20とは反対側に位置する峰部22を有する。また、横刃部16は、刃付部20と峰部22を曲線状に滑らかに結ぶ頭部24を有している。R爪154Rは、前述のように、爪先に向けて緩やかに湾曲しているため、図3に示した第1面はすくい面を形成している。本実施形態のR爪154Rは、このすくい面によって土を耕耘・放擲するとともに土寄せも行うことが可能となっている。
【0040】
R爪154Rは、刃付部20を先頭にして土壌に作用し、土壌の耕起を行う。峰部22は、刃付部20の反対側の縁であるため、直接的には土壌に作用しない。また、峰部22は、R爪154Rの厚さ分の幅を有する。そこで、本実施形態では、耐衝撃性を考慮して、加速度データ取得部155を峰部22に配置している。峰部22に加速度データ取得部155を設けることにより、加速度データ取得部155に含まれる各素子(例えば、センサモジュールなど)の破損を抑制することができる。なお、加速度データ取得部155の設置位置は、耕耘時に加速度データが取得できる位置であれば、本実施形態のように峰部22に限定されるものではない。加速度データ取得部155を、爪軸152を構成するパイプ内や耕耘爪154の装着部(フランジやホルダ)に設けることも可能である。
【0041】
[加速度データ取得部の構成]
図5は、本発明の一実施形態における加速度データ取得部155の構成を示すブロック図である。加速度データ取得部155は、センサ部31、制御部32、記憶部33、通信部34、及び電源部35を含む。ただし、この例に限らず、加速度データ取得部155は、他の要素を含んでいてもよい。
【0042】
センサ部31は、耕耘ロータ150の回転により耕耘爪154が土壌に衝突する際の加速度(加速度の計測タイミングと耕耘爪154が土壌に衝突するタイミングは、厳密に一致している必要はなく、加速度の計測タイミングは、耕耘爪154が土壌に衝突するタイミングから多少後にずれたタイミングであってもよい)を検知する機能を有する。具体的には、センサ部31は、加速度センサを含む。加速度センサは、1軸加速度センサであっても3軸加速度センサであってもよい。また、センサ部31は、加速度センサに加えて、ジャイロセンサや磁気センサを含んでいてもよい。さらに、センサ部31は、用途に応じて、圧力センサや光センサなどの物理量センサ、及び/又は、土壌の温度、水分量、塩分量、pH(水素イオン指数)などを測定するための土壌センサを含んでいてもよい。
【0043】
センサ部31は、固有の識別子を有していてもよい。すなわち、各耕耘爪154に設けられたセンサ部31は、識別子を用いて個々に識別できるように構成されてもよい。識別子は、記憶部33に記憶されていてもよいし、識別子を記憶するためのメモリがセンサ部31に別途設けられていてもよい。識別子は、センサ部31で取得されたセンシングデータ(本実施形態では、少なくとも加速度データ)と共に、制御装置170に送信される。これにより、制御装置170は、どの耕耘爪154から送信されたデータであるのかを特定することが可能となる。
【0044】
制御部32は、記憶部33から読み出したプログラムを実行することにより、加速度データ取得部155の各要素を制御する機能を有している。制御部32としては、例えば、CPUを含むマイクロコンピュータを用いることができる。制御部32は、例えば、センサ部31に対してセンシングを指示したり、通信部34に対してデータの送受信を指示したりすることができる。さらに、制御部32は、電源部35の残量をモニタリングし、必要に応じて充電の開始を指示したり、電源部35に対してスリープモードへの切り替えを指示したりすることも可能である。ただし、これらの制御は一例であり、制御部32に対して他の制御を実行させることも可能である。例えば、センサ部31で取得されたセンシングデータを演算するなどの情報処理を行ってもよい。
【0045】
記憶部33は、制御部32が実行する各種制御のためのプログラムの記憶、センサ部31で取得されたデータの記憶等を行うことができる。前述した識別子は、記憶部33に記憶することができる。
【0046】
通信部34は、センサ部31で取得されたセンシングデータや記憶部33に記憶された識別子を制御装置170に送信する機能を有する。通信部34としては、例えば、ブルートゥース(登録商標)などの近距離無線通信を行うことが可能な無線通信モジュールを用いることができる。なお、通信部34は、データの出力だけでなく、データを外部から入力することも可能である。
【0047】
電源部35は、加速度データ取得部155の各要素を動作させるための電源として機能する。電源部35は、電池であってもよいし、充電可能なバッテリであってもよい。電源部35として充電可能なバッテリを用いる場合、電源部35は、ワイヤレス給電のための給電回路を有していてもよい。例えば、給電回路は、高周波信号を受信するアンテナ及び受信した高周波信号に基づいて電力を生成する整流回路等を有していてもよい。
【0048】
[制御装置170の構成]
図6は、本発明の一実施形態における制御装置170の構成を示すブロック図である。制御装置170は、情報処理装置として機能し、制御部41、記憶部42、及び通信部43を含む。ただし、この例に限らず、他の要素を含んでいてもよい。
【0049】
制御部41は、例えば、CPUを含むマイクロコンピュータである。制御部41は、記憶部42から読み出したプログラムを実行することにより、農作業機100の各部を制御する機能を有している。例えば、制御部41は、耕耘ロータ150の回転動作の開始及び停止、延長整地板134の開閉動作などの駆動制御を行うことができる。さらに、制御部41は、加速度データ取得部155から取得した加速度データに基づいて、土壌の硬さを決定する処理を実行することが可能である。
【0050】
記憶部42は、例えば、不揮発性メモリである。記憶部42は、制御部41が実行する各種制御のためのプログラムの記憶、制御部41が実行する処理に関連するデータの記憶等を行うことができる。例えば、記憶部42には、制御部41に土壌の硬さを決定する処理を実行させるための決定プログラム51が記憶されている。
【0051】
制御部41は、決定プログラム51を実行することにより、加速度データ取得部155から取得した加速度データに基づいて、圃場内における土壌の硬さを決定する。また、記憶部42には、土壌の硬さを決定する処理に用いる参照テーブル52も記憶されている。本実施形態において、参照テーブル52は、複数の加速度データに基づいて算出した分散に対応するラベルと土壌の硬さとを関連付けている。さらに、記憶部42は、土壌の硬さを決定する処理に供する他のデータを記憶してもよい。
【0052】
通信部43は、有線通信又は無線通信を行うための通信モジュールである。例えば、無線通信の場合は、近距離無線通信を可能とする通信モジュールやWiFi等の通信規格に従う無線通信を可能とする通信モジュールを搭載していてもよい。つまり、通信部43は、ネットワーク上に接続されるサーバ、携帯端末(例えば、スマートフォンやタブレット端末)、又は、走行機体に搭載される情報端末等の情報処理装置との間の通信を制御する機能を有していてもよい。
【0053】
通信部43は、制御部41が生成した制御信号(例えば、駆動部の制御信号)をアクチュエータ等の駆動部に送信したり、外部からの指示信号(例えば、リモコン信号)を受信したりする機能を有する。また、通信部43は、無線通信を介して、センサ部31から送信されたセンシングデータや識別子を受信したり、制御部41で実行された土壌の硬さを決定する処理の結果を外部の情報処理装置(例えば、サーバ、携帯端末、走行機体に搭載される情報端末等)に送信したりすることもできる。
【0054】
[土壌の硬さを決定する方法]
回転する耕耘爪154の加速度を連続的に計測すると、耕耘爪154が土壌に打ち込まれる際の衝撃力により加速度データに変化が生じる。そこで、本実施形態では、回転する耕耘爪154の加速度を連続的に計測して加速度データを取得し、その加速度データに基づいて土壌の硬さを決定する。本実施形態では、制御装置170(具体的には、制御部41)が、土壌の硬さを決定する処理を実行する例について説明する。
【0055】
図7は、加速度データの分散の平均値と土壌の硬さとの相関を示す散布図である。図7において、横軸は、土壌の硬さを示し、縦軸は、加速度データの分散の平均値を示している。図7に示す散布図において、「加速度データの分散の平均値」とは、耕耘中に連続して計測することにより、複数の領域で取得された複数の加速度データから算出した分散の平均値である(詳細は後述する)。本実施形態では、複数の耕耘爪154のそれぞれに取り付けられた加速度データ取得部155からそれぞれ取得された複数の加速度データに基づいて分散の平均値を算出する。
【0056】
図7に示す散布図において、横軸の「土壌の硬さ」は、実際の圃場において土壌硬度計等を用いて計測した実測値である。縦軸の「加速度データの分散の平均値」は、耕耘ロータ150の回転により耕耘爪154が所定数回転する間に取得される加速度データに基づいて所定点分算出されるものである。「加速度データの分散の平均値」は、耕耘ロータ150が1回転する間、すなわち、ある耕耘爪154が土壌に打ち込まれてから次に土壌に打ち込まれるまでの間に測定される所定回数(本実施形態では12回)の加速度データから得られる分散(以下、「回転内分散」という)を、耕耘ロータ150の所定回転数分求め、得られた所定回転数分の回転内分散を所定点数のグループに分割したうえで、各グループ内の回転内分散の値を平均した値である。例えば、耕耘ロータ150が200回転する間に取得される加速度データから、加速度データの分散50点分の平均値を算出するには、まず、200個の回転内分散を算出する。すなわち、耕耘ロータ150が1回回転する毎に、当該回転の間に得られた所定個(本実施形態では12個)の加速度データから分散を算出する。そして、算出した200個の回転内分散を50個のグループに分割する。このとき、耕耘ロータ150の1~4回転目の回転内分散、5~8回転目の回転内分散というように、連続する回転の分散が一つのグループとなるようにする。そして、50点の加速度データの分散の平均値は、分割した各グループに含まれる4個の回転内分散の値(加速度データの分散値)を平均することで算出される。なお、耕耘ロータ150が1回転する間に取得する加速度データ数及び「加速度データの分散の平均値」を何点分の平均値から算出するかについては、実情に応じ適宜定めることが可能である。
【0057】
以上のように、図7は、土壌の硬さの実測値と、その実測領域で取得した加速度データに基づく分散の平均値との相関関係を示している。この場合、実測領域は、耕耘ロータ150の長さ(又は、耕幅)、及び、耕耘ロータ150が所定回数回転する間に耕耘ロータ150が進む距離をそれぞれ1辺とする矩形の領域に相当する。
【0058】
本発明者らは、様々な硬さの土壌において上述の方法で加速度データの分散の平均値を取得し、これらの値と実際に土壌硬度計で測定した土壌の硬さの実測値との間の相関関係を調べた。その結果、図7に示す散布図に示されるように、土壌の硬さと加速度データの分散の平均値との間には、正の相関があることが分かった。具体的には、土壌の硬さが大きくなる(すなわち、土壌が硬くなる)につれて、加速度データの分散の平均値が大きくなる(すなわち、加速度データがばらつく)傾向にあることが分かった。
【0059】
本実施形態では、図7の散布図に示される相関に基づき、加速度データの分散の平均値から土壌の硬さを決定する。具体的には、本実施形態では、制御装置170の制御部41を、加速度データの分散から土壌の硬さを決定する分類器として機能させる。このような分類器としての機能は、SVM(Support Vector Machine)を用いて実現することができる。具体的には、実際の土壌の硬さのラベルを教師データ、加速度データの分散値の平均値を入力データとし、SVMを教師あり学習(機械学習)させることで、制御部41を上述の分類器として機能させることが可能となる。
【0060】
制御部41は、複数の加速度データに基づいて算出した加速度データの分散の平均値を入力として、当該分散の平均値を予め複数にラベル分けされた土壌の硬さのいずれかに分類することにより、土壌の硬さを決定する。分類器のラベル分けは、例えば3段階であってもよいし、それ以上であってもよい。この場合、ラベル分けが細かいほど詳細に土壌の硬さを決定することができるが、その分精度が落ちるため、用途に応じて適切なラベル分けを行っておくことが望ましい。
【0061】
図8は、本発明の一実施形態における土壌の硬さを決定する処理を示すフローチャート図である。本実施形態では、図8に示す各ステップの処理を制御装置170の制御部41が実行する例を示す。すなわち、制御部41が、記憶部42に記憶された決定プログラム51を読み出して実行することにより、制御装置170を上述の分類器として機能させ、図8に示す各処理が実現される。
【0062】
図8に示すように、決定プログラム51が実行されると、制御部41は、加速度データ取得部155から複数個の加速度データを取得する(ステップS101)。複数個の加速度データは、耕耘爪154に装着された加速度データ取得部155のセンサ部31によって取得される。
【0063】
次に、制御部41は、耕耘ロータ150が1回転する間に取得される複数個(12個)の加速度データを用いて回転内分散を算出する(ステップS102)。分散(σ2)は、データのばらつきの度合いを表す値である。一般的に、分散(σ2)は、次式で定義される。
【0064】
【数1】
【0065】
【0066】
制御部41は、上式に従って、耕耘ロータ150が1回転する間に取得される複数個(12個)の加速度データを用いて回転内分散を算出する。
【0067】
次に、制御部41は、耕耘ロータ150の回転数が所定数(例えば200回転)以上であるか否かを判定する(ステップS103)。ステップS103において、判定結果がNOであれば、制御部41は、処理をステップS102に戻し、再び耕耘ロータ150が1回転する間に取得される複数個(12個)の加速度データを用いて回転内分散を算出する。制御部41は、判定結果がYESになるまでステップS102を繰り返し実行することにより、所定数の回転内分散を取得する。
【0068】
判定結果がYESになると、制御部41は、所定数(ここでは200個)の回転内分散を複数個のグループに分割したうえで、各グループ内における回転内分散の平均値を算出する(ステップS104)。具体的には、例えば、制御部41は、200個の回転内分散を50個のグループに分割し、各グループ内において、4個の回転内分散の平均値を算出する。
【0069】
制御部41は、算出した各グループの回転内分散の平均値に基づいて土壌の硬さを決定する(ステップS105)。具体的には、制御部41は、算出した回転内分散の平均値に対して予め用意した機械学習アルゴリズム(上述の分類器)を適用することにより、入力した回転内分散の平均値を複数のラベルのいずれかに分類する。そして、分類の結果として得たラベルに基づいて土壌の硬さを出力する。本実施形態では、ラベルと土壌の硬さとを関連付けた参照テーブル52(図6参照)を予め記憶部42に記憶しておき、決定されたラベルを入力として参照テーブル52を参照することにより、土壌の硬さを出力する。
【0070】
図9は、本発明の一実施形態における土壌の硬さを決定する処理に用いる参照テーブル52の一例を示す図である。図9に示す参照テーブル52は、土壌の硬さのラベル分けを5段階とした例である。ラベル「0」では、土壌の硬さは[0,300]である。ここでは、ラベル「0」は、土壌の硬さが0kPa以上300kPa未満であることを意味する。ラベル「1」は、土壌の硬さが[300,600]、すなわち、土壌の硬さが300kPa以上600kPa未満であることを意味する。同様に、ラベル「2」は、土壌の硬さが600kPa以上900kPa未満、ラベル「3」は、土壌の硬さが900kPa以上1200kPa未満、ラベル「4」は、土壌の硬さが1200kPa以上1500kPa以下であることを意味する。
【0071】
本実施形態の制御部41は、複数個の加速度データの回転内分散の平均値に上述の機械学習アルゴリズムを適用して、加速度データの分散のラベル分けを行い、上述の参照テーブル52を用いて土壌の硬さを決定する。例えば、算出した加速度データの分散がラベル「2」に分類された場合、制御部41は、土壌の硬さは、600kPa以上900kPa未満であると決定する。
【0072】
以上説明したとおり、本実施形態の農作業機100は、複数の耕耘爪154を含む耕耘ロータ150を備え、複数の耕耘爪154の少なくとも1つに加速度データ取得部155を有する。加速度データ取得部155は、耕耘ロータ150の回転に伴い土壌に作用し、土壌に衝突する際の加速度データを制御装置170に送信する。制御装置170は、各加速度データ取得部155から受信した加速度データに基づいて、土壌の硬さを決定する。具体的には、制御装置170は、受信した複数の加速度データを用いて分散の平均値を求め、当該分散の平均値に機械学習アルゴリズムを適用して複数のラベルのいずれかに分類する。その後、制御装置170は、各ラベルに関連付けられた土壌の硬さを、複数の加速度データが得られた領域における土壌の硬さであると決定する。
【0073】
以上のように、本実施形態の農作業機100は、圃場を耕耘しながら各耕耘爪154に働く加速度データを取得し、リアルタイムに土壌の硬さを決定することができる。すなわち、本実施形態によれば、圃場内の複数箇所における土壌の硬さを効率的に決定する農作業機100を提供することができる。
【0074】
(変形例1)
本実施形態では、加速度データの回転内分散の平均値から土壌の硬さを決定する例を示した。加速度データの回転内分散の平均値を用いた場合、算出した回転内分散に異常値が含まれていた場合であっても平均値をとることによって平滑化される。したがって、土壌の硬さとして異常値が出力される頻度を低減することができる。しかしながら、本実施形態は、この例に限らず、加速度データの回転内分散をそのまま用いて土壌の硬さを決定してもよい。耕耘ロータ150は1回転するごとに算出される回転内分散にそのまま上述の機械学習アルゴリズムを適用して土壌の硬さを決定することも可能である。
【0075】
また、本実施形態では、耕耘ロータ150が1回転するごとに分散を算出する例を示したが、この例に限られるものではない。制御部41は、複数の加速度データを取得できれば分散を算出することができる。したがって、例えば、耕耘ロータ150が2回転以上したときに得られる複数の加速度データから分散を算出してもよいし、耕耘ロータ150が1回転未満で回転したときに得られる複数の加速度データから分散を算出してもよい。この場合においても、算出した分散に対してそのまま上述の機械学習アルゴリズムを適用してもよいし、算出した複数の分散の平均値を求め、その平均値に対して上述の機械学習アルゴリズムを適用してもよい。
【0076】
(変形例2)
本実施形態では、制御装置170の制御部41が決定プログラム51を実行することにより、算出した加速度データの分散に機械学習アルゴリズムを適用して複数のラベルのいずれかに分類し、参照テーブル52を用いて土壌の硬さを決定する例について示した。しかし、この例に限らず、加速度データの分散と土壌の硬さとを直接的に関連付けることも可能である。例えば、加速度データの分散と土壌の硬さとを関連付けた参照テーブルを記憶部42に予め記憶しておき、当該参照テーブルに基づいて加速度データの分散から直接的に土壌の硬さを決定してもよい。
【0077】
〈第2実施形態〉
本実施形態では、第1実施形態で説明した処理により決定した圃場内における複数箇所の土壌の硬さを可視化する機能を備えた農作業機について説明する。なお、第1実施形態と同じ要素については、同じ符号を付して表し、詳細な説明を省略する。
【0078】
図10は、本発明の一実施形態における制御装置170aの構成を示すブロック図である。制御装置170aは、制御部41、記憶部42a、通信部43、及び位置情報取得部44を含む。制御部41及び通信部43の機能は、第1実施形態と同様である。なお、本実施形態では、制御装置170aが位置情報取得部44を含む例を示すが、この例に限らず、制御装置170とは別に位置情報取得部44を有していてもよい。
【0079】
位置情報取得部44は、測位衛星からGNSS(Global Navigation Satellite System)信号を受信し、受信したGNSS信号に基づいて農作業機の現在位置を取得する機能を有する。したがって、本実施形態の農作業機は、自身の圃場内における位置をリアルタイムに把握することができる。
【0080】
記憶部42aは、第1実施形態で説明した決定プログラム51及び参照テーブル52に加えて可視化プログラム53を有する。可視化プログラム53は、決定プログラム51及び参照テーブル52を用いて決定した土壌の硬さと、位置情報取得部44から取得した農作業機の位置情報とを関連付けたマッピングデータ54を生成する手段である。すなわち、可視化プログラム53は、制御装置170aに、位置情報を取得し、当該位置情報と土壌の硬さとを関連付けたマッピングデータ54を生成する機能を実現させる。
【0081】
制御装置170aによって生成されたマッピングデータ54には、位置情報と、その位置における土壌の硬さとが関連付けられている。そのため、マッピングデータ54を用いて土壌の硬さを可視化することが可能である。例えば、本実施形態の制御装置170aは、マッピングデータ54に基づいて圃場内の各領域(各位置)における土壌の硬さを色分けした表示データを生成することができる。生成された表示データは、走行機体の運転席等に備え付けられた情報端末の表示画面に表示したり、作業者が所有する携帯端末の表示画面に表示したりすることができる。
【0082】
図11は、マッピングデータ54に基づいて可視化した圃場内における土壌の硬さの分布を示す表示画面の一例を示す図である。図11は、作業者が所持するスマートフォン等の携帯端末200の表示画面200aに、圃場内における土壌の硬さの分布を表示した例を示している。
【0083】
図11に示すように、携帯端末200の表示画面200aには、圃場に対応する領域をメッシュ状に分割した複数のブロック201aを含む圃場マップ201が表示される。表示画面200aの上部には、個々のブロック201aが示す土壌の硬さに対応する凡例202が表示される。本実施形態の凡例202は、第1実施形態において図9を用いて説明した参照テーブル52に対応している。例えば、凡例202において、[0-300]は、土壌の硬さが0kPa以上300kPa未満であることを意味する。個々のブロック201aは、農作業機100の耕耘ロータ150の長さ(又は耕幅)と、圃場内の土壌において、加速度データの分散の算出に用いた複数の加速度データが取得された領域とに対応している。
【0084】
圃場マップ201が示すように、圃場内における土壌の硬さは一様でない場合がある。本実施形態では、圃場内における所定範囲の各領域を個々のブロック201aで表し、各ブロック201aを色分け等により区別することで、各ブロック201aに対応する領域の土壌の硬さを可視化する。例えば、図11に示す例では、圃場の左上部に、相対的に土壌の軟らかい領域が存在し、圃場の右下部に、相対的に土壌の硬い領域が存在することが示されている。
【0085】
以上のように、本実施形態の制御装置170aは、可視化プログラム53を実行することによりマッピングデータ54を生成し、当該マッピングデータ54に基づいて、図11に示すような圃場マップ201を表示するための表示データを生成する。生成された表示データは、走行機体の運転席等に備え付けられた情報端末の表示画面に表示したり、作業者が所有する携帯端末の表示画面に表示したりすることができる。これにより、作業者は、農作業機による耕耘作業を行いながら圃場内における土壌の硬さを把握することが可能である。また、図11に示すような圃場マップ201を活用すれば、例えば、土壌の硬い部分には、他の領域よりも多くの耕耘作業を行うなどの案内表示を表示画面に表示することも可能となる。
【0086】
(変形例1)
本実施形態において、図11では、個々のブロック201a全てのデータが揃った状態の圃場マップ201を表示する例を示したが、この例に限られるものではない。例えば、制御装置170aは、加速度データの分散を算出し、当該分散に関連付けられた土壌の硬さを決定した場合に、逐次決定した土壌の硬さを圃場マップ201として表示することも可能である。
【0087】
図12は、決定した土壌の硬さに基づいてリアルタイムに圃場マップ201を生成する例を示す図である。図12では、農作業機の現在位置を示すシンボルマーク203が圃場マップ201内を移動すると共に、移動経路に沿って土壌の硬さを示すブロック201aが表示される。このように、制御装置170aは、決定した土壌の硬さをリアルタイムにマッピングしながら圃場マップ201を生成することが可能である。本変形例によれば、作業者は、農作業機による耕耘作業を行いながらリアルタイムに圃場内における土壌の硬さを把握することが可能である。
【0088】
〈第3実施形態〉
第1実施形態では、土壌の硬さの決定処理を制御装置170が実行する例を示したが、この例に限られるものではなく、土壌の硬さの決定処理は、農作業機100の外部の制御装置(情報処理装置)によって実行されてもよい。例えば、制御装置170とネットワークを介して接続されたサーバが、土壌の硬さの決定処理を実行してもよい。この場合、制御装置170は、加速度データ取得部155から取得した複数の加速度データを、サーバにネットワークを介して送信する役割を担う。
【0089】
本実施形態の場合、サーバの記憶部には、第1実施形態で説明した決定プログラム51及び参照テーブル52が格納されている。したがって、サーバの制御部は、記憶部に格納された決定プログラム51を読み出して実行することにより、農作業機100の制御装置170から複数の加速度データを取得し、これらの加速度データに基づいて土壌の硬さを決定することができる。
【0090】
また、本実施形態のサーバは、第2実施形態に示した制御装置170aのように、記憶部に可視化プログラム53を格納していてもよい。この場合、サーバの制御部は、可視化プログラム53を読み出して実行することによりマッピングデータ54を生成し、当該マッピングデータに基づく表示データ(圃場内における土壌の硬さの分布を表示するためのデータ)を走行機体の運転席等に備え付けられた情報端末、又は、作業者が所有する携帯端末に送信することができる。
【0091】
以上の説明は、農作業機100の制御装置170に代えて、サーバが土壌の硬さの決定処理を実行することを例に示したが、制御装置170に代えて、走行機体の運転席等に備え付けられた情報端末の制御部、又は、作業者が所有する携帯端末の制御部を情報処理装置として機能させ、土壌の硬さの決定処理を実行してもよい。また、情報端末の制御部、又は、携帯端末の制御部が第2実施形態のようにマッピングデータ54を生成し、当該マッピングデータ54に基づいて、図11に示すような圃場マップ201を自身の表示画面に表示してもよい。
【0092】
さらに、本実施形態では、農作業機100の制御装置170に代えて、サーバ、情報端末の制御部、又は、携帯端末の制御部が土壌の硬さの決定処理を実行する例を示したが、制御装置170と、サーバ、情報端末の制御部、又は、携帯端末の制御部とが相互に協働する分散処理により土壌の硬さの決定処理や土壌の硬さの可視化処理を実行してもよい。
【0093】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は前述の実施形態(変形例も含む)に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、前述した実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。さらに、前述した実施形態及び各変形例は、相互に矛盾がない限り適宜組み合わせが可能であり、それぞれに共通する技術事項については、明示の記載がなくてもそれぞれの実施形態又は変形例に含まれる。
【0094】
前述した実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0095】
12…取付け基部、14…縦刃部、16…横刃部、18a…取付け孔、20…刃付部、22…峰部、24…頭部、31…センサ部、32…制御部、33…記憶部、34…通信部、35…電源部、41…制御部、42、42a…記憶部、43…通信部、44…位置情報取得部、51…決定プログラム、52…参照テーブル、53…可視化プログラム、54…マッピングデータ、100…農作業機、105…チェーンケース、110…フレーム、120…シールドカバー、130…エプロン、132…整地板、134…延長整地板、135…トップマスト、136…ロアリンク連結部、137…PICシャフト、140…サイドプレート、150…耕耘ロータ、152…爪軸、153…フランジ、154…耕耘爪、154L…L爪、154R…R爪、155…加速度データ取得部、160…接続部、170、170a…制御装置、200…携帯端末、200a…表示画面、201…圃場マップ、201a…ブロック、203…シンボルマーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12