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特許7584132養殖貝選別機用金網選別板、養殖貝選別機用金網選別板の作製方法、及び養殖貝選別機用金網選別板の作製に用いられる金網選別板作製装置
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  • 特許-養殖貝選別機用金網選別板、養殖貝選別機用金網選別板の作製方法、及び養殖貝選別機用金網選別板の作製に用いられる金網選別板作製装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】養殖貝選別機用金網選別板、養殖貝選別機用金網選別板の作製方法、及び養殖貝選別機用金網選別板の作製に用いられる金網選別板作製装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/90 20170101AFI20241108BHJP
   B07B 13/04 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A01K61/90
B07B13/04 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021009750
(22)【出願日】2021-01-25
(65)【公開番号】P2022113470
(43)【公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-10-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年8月4日に個人(北海道紋別郡興部町沙留)に販売 令和2年8月6日に個人(北海道紋別郡興部町沙留)に販売 令和2年8月7日に個人(北海道紋別郡興部町沙留)に販売 令和2年8月24日に個人(北海道紋別郡興部町沙留)に販売
(73)【特許権者】
【識別番号】300021002
【氏名又は名称】株式会社森機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000316
【氏名又は名称】弁理士法人ピー・エス・ディ
(72)【発明者】
【氏名】森 光典
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-191173(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0250712(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/90
B07B 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金網と、
前記金網の端部領域に対応する幅の枠を有し、前記金網の下面に積層された、ステンレス製の下枠板と、
前記金網の前記端部領域に対応する幅の枠を有し、前記金網の上面に積層され、前記下枠板に対応する形状を有し、前記下枠板とは独立である、ステンレス製の上枠板と、
前記下枠板と前記上枠板との間に配置され、前記金網の前記端部領域が埋設された接着剤層と
を備える養殖貝選別機用金網選別板。
【請求項2】
前記接着剤層は、樹脂系接着剤を硬化させることによって形成された層である、請求項1に記載の養殖貝選別機用金網選別板。
【請求項3】
前記下枠板及び前記上枠板は、それぞれの対応する位置に互いに間隔を空けて設けられた複数の孔を有し、その複数の孔に挿入されたリベットで互いに固定されている、請求項1又は請求項2に記載の養殖貝選別機用金網選別板。
【請求項4】
養殖貝選別機に用いられる養殖貝選別機用金網選別板の作製方法であって、
養殖貝選別機用金網選別板は、金網と、前記金網の端部領域に対応する幅の枠を有し、前記金網の下面に積層された下枠板と、前記端部領域に対応する幅の枠を有し、前記金網の上面に積層された、前記下枠板に対応する外形の上枠板と、前記下枠板と前記上枠板との間に配置され、前記端部領域が埋設された接着剤層とを備えるものであり、
前記下枠板の上に前記金網の前記端部領域を配置する工程と、
前記下枠板の上に配置された前記金網の前記端部領域が埋まるように硬化前の接着剤層を塗布する工程と、
前記金網の上に、前記下枠板と位置合わせしながら前記上枠板を配置する工程と、
前記上枠板を前記下枠板の方向に加圧しながら、前記硬化前の接着剤層が硬化するまで放置する工程と
を含む養殖貝選別機用金網選別板の作製方法。
【請求項5】
前記下枠板の上に前記金網の前記端部領域を配置する工程の前に、前記下枠板の上面に硬化前の接着剤層を配置する工程と、
前記上枠板を配置する工程の前に、前記上枠板の下面に硬化前の接着剤層を配置する工程と
をさらに含む、請求項4に記載の養殖貝選別機用金網選別板の作製方法。
【請求項6】
前記金網の上に前記上枠板を配置する工程の後に、前記上枠板の上に、前記上枠板と位置合わせしながら押し板を配置する工程をさらに含み、
前記硬化前の接着剤層が硬化するまで放置する工程は、前記押し板を前記下枠板の方向に加圧しながら放置することを含む、
請求項4又は請求項5に記載の養殖貝選別機用金網選別板の作製方法。
【請求項7】
前記硬化前の接着剤層が硬化するまで放置する工程の後に、
前記上枠板への加圧を解放し、さらに放置する工程を含む、
請求項4から請求項6までのいずれか1項に記載の養殖貝選別機用金網選別板の作製方法。
【請求項8】
養殖貝選別機用金網選別板の作製に用いられる金網選別板作製装置であって、
養殖貝選別機用金網選別板は、金網と、金網の端部領域に対応する幅の枠を有し、金網の下面に積層された下枠板と、金網の端部領域に対応する幅の枠を有し、金網の上面に積層された、下枠板に対応する外形の上枠板と、下枠板と上枠板との間に配置され、金網の端部領域が埋設された接着剤層とを備えるものであり、
養殖貝選別機用金網選別板を作製するための下枠板が載置される載置部と、下枠板、金網、硬化前の接着剤層及び上枠板を含む中間積層体の外形と概ね同じ形状を有するとともに中間積層体の高さより高くなるように立設された壁とを有する、ベース枠と、
前記中間積層体を前記載置部の方向に押し付ける複数の加圧部と
を備える金網選別板作製装置。
【請求項9】
前記複数の加圧部の各々は、前記押し板の端部領域の上方に位置する加圧シャフトを有し、
前記加圧シャフトによって中間積層体を前記載置部の方向に押し付けるように構成された
請求項8に記載の金網選別板作製装置。
【請求項10】
前記複数の加圧部の各々は、
前記壁の外側に配置された支持シャフトと、
前記支持シャフトに回転自在に取り付けられ、前記加圧シャフトに設けられた雄ねじ部に対応する雌ねじ部を有し、前記支持シャフトの回りに回転させることによって前記雌ねじ部を前記壁の外側と内側との間で移動させることができる、加圧シャフト保持部材と
を備え、
前記雌ねじ部が前記壁の内側に位置するように前記加圧シャフト保持部材を回転させた状態で前記加圧シャフトを締めることによって、中間積層体を前記載置部の方向に押し付ける、
請求項9に記載の金網選別板作製装置。
【請求項11】
中間積層体の上に配置される押し板をさらに備え、前記複数の加圧部は、前記押し板を前記載置部の方向に押し付ける、
請求項8から請求項10までのいずれか1項に記載の金網選別板作製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養殖貝を大きさ別に選別するための選別機に用いられる養殖貝選別機用金網選別板と、そのような金網選別板を作製する方法及び作製する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
養殖貝は、通常、成長に応じて何度も貝の選別が行われる。養殖貝の選別機には、大きく分けて回転ドラム式選別機とスイング式選別機とがある。回転ドラム式選別機は、ステンレス板や樹脂板に各種サイズの孔を開けて円筒状に巻いた選別ドラムの内部に養殖貝を投入し、ドラムを回転させることによって、養殖貝をサイズ別に選別する選別機である。一方、スイング式選別機は、選別板の上に養殖貝を置き、選別板を往復運動させることによって、養殖貝をサイズ別に選別する選別機である。スイング式選別機は、選別板の交換や保管が容易であるため、全てのサイズの選別を一台の機械で賄うのに適している。スイング式選別機は、例えば、特許文献1に提案されている。
【0003】
スイング式選別機に用いられる選別板として、金網を用いた金網選別板と、金属板に穴あけ加工を施したパンチング選別板とが用いられる。通常、直径が約10mm以下の小型の貝を選別するときには金網選別板が用いられ、約10mm以上の貝を選別するときにはパンチング選別板が用いられる。金網選別板は、金網メーカーから市販されている長尺の金網を適切なサイズに切断し、切断された金網の四辺のほつれ防止加工を施すことによって作製される。
【0004】
金網選別板のほつれ防止加工においては、一般に、ステンレスの細長い4つの薄板(通常、板厚は0.4mm程度)をその長辺に平行な折り曲げ軸でV字型に折り曲げ、それぞれの薄板の折り曲げたV字の内側奥まで金網の縁を入れて挟み、プレスしてかしめることが行われる。プレスの際には、使用中に金網の目ずれが発生しないように、金網がステンレス薄板に食い込む程の強度でプレスする必要がある。必要に応じて、かしめたステンレス薄板をスポット溶接することや、四隅のステンレス薄板の重なり部分に孔を開けてリベットで固定することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6809690号公報
【文献】実公昭53-14782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、養殖量の増加によって、時間単位あたりの処理量を多くするために大型の選別機が普及し始めている。しかし、大型選別機に用いられる大型の金網選別板は、縁部をかしめるためのV字型のステンレス薄板では長さ方向の強度が不足して折れ曲がったり、かしめが緩んで網目がずれたりする場合がある。ステンレス板を厚くした場合には、長いステンレス板をV字型に折り曲げる加工が難しく、縁部を挟んでも完全にかしめることができずに網目がずれるおそれがあり、さらに平坦に加工しにくい。
【0007】
また、従来の金網選別板においては、V字型に折り曲げた枠に内側奥まで金網を挟んでプレスするため、金網の4辺が直線でなければ、作製された金網選別板の幅や長さが容易に変わってしまう。しかし、切断時の目ずれのせいで金網を正確に四角形に裁断することは難しく、同じサイズの金網選別板であっても長さや幅の5mm程度の違いは許容範囲とせざるを得ず、また、角部も直角にはならない。したがって、養殖貝選別機への金網選別板の装填及び取り出しをスムーズに行うことができない場合がある。
【0008】
さらに、金網のほつれを防止する方法として、金網の針線が太ければステンレス薄板と溶接する方法もあるが、この方法では、完成した金網選別板の端部が厚くなってしまう。選別機では、必要に応じて金網選別板とパンチング選別板とを交換しながら使用されることがある。しかし、端部が厚い金網選別板は、薄いパンチング選別板(厚み1mm~2mm)用に設計された選別機では、金網選別板を固定するホルダーに挿入できない場合がある。特許文献2には、コの字状の枠付の金網が提案されているが、このような構造の金網は、枠部分が厚くなるため、薄いパンチング選別板用に設計された選別機では使用できない。また、この構造の枠付き金網は、金網と枠との段差が大きいため、小さくて薄い養殖貝を選別するときに段差の部分に養殖貝が引っかかって滞留することがある。滞留した養殖貝は、選別後の生育に悪影響が現れるおそれがある。
【0009】
本発明は、薄くて平坦であり、網目のずれが発生せず、かつ正確な形状及びサイズを有する、養殖貝選別機用の金網選別板を提供することを課題とする。
本発明は、さらに、そのような金網選別板を容易に作製することを可能にする作製方法及び作製装置を提供することを別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様によれば、本発明は、養殖貝選別機用の金網選別板を提供する。金網選別板は、金網と、金網の端部領域に対応する幅の枠を有し、金網の下面に積層された下枠板と、金網の端部領域に対応する幅の枠を有し、金網の上面に積層された、下枠板に対応する形状の上枠板とを備える。下枠板と上枠板との間には、接着剤層が配置されており、接着剤層に金網の端部領域が埋設される。接着剤層は、樹脂系接着剤を硬化させることによって形成された層であることが好ましい。さらに、下枠板及び上枠板は、それぞれの対応する位置に互いに間隔を空けて設けられた複数の孔を有し、その複数の孔に挿入されたリベットで互いに固定されていることが好ましい。
【0011】
別の態様によれば、本発明は、養殖貝選別機に用いられる上記の養殖貝選別機用金網選別板の作製方法を提供する。本作製方法は、下枠板の上に金網の端部領域を配置する工程と、下枠板の上に配置された金網の端部領域が埋まるように硬化前の接着剤層を塗布する工程と、金網の上に、下枠板と位置合わせしながら上枠板を配置する工程と、上枠板を下枠板の方向に加圧しながら、硬化前の接着剤層が硬化するまで放置する工程とを含む。
【0012】
一実施形態において、本作製方法は、下枠板の上に金網の端部領域を配置する工程の前に、下枠板の上面に硬化前の接着剤層を配置する工程と、金網の上に上枠板を配置する工程の前に、上枠板の下面に硬化前の接着剤層を配置する工程とをさらに含むことが好ましい。
【0013】
一実施形態において、本作製方法は、金網の上に上枠板を配置する工程の後に、上枠板の上に、上枠板と位置合わせしながら押し板を配置する工程をさらに含むことが好ましい。この場合には、硬化前の接着剤層が硬化するまで放置する工程は、押し板を下枠板の方向に加圧しながら放置することを含む。別に実施形態において、硬化前の接着剤層が硬化するまで放置する工程の後に、上枠板への加圧を解放し、さらに放置する工程を含むことが好ましい。
【0014】
さらに別の態様によれば、本発明は、上記の養殖貝選別機用金網選別板の作製に用いられる金網選別板作製装置を提供する。本作製装置は、養殖貝選別機用金網選別板を作製するための下枠板が載置される載置部と、下枠板、金網、硬化前の接着剤層及び上枠板を含む中間積層体の外形と概ね同じ形状を有するとともに中間積層体の高さより高くなるように立設された壁とを有するベース枠と、中間積層体を載置部の方向に押し付ける複数の加圧部とを備える。
【0015】
一実施形態において、複数の加圧部の各々は、押し板の端部領域の上方に位置する加圧シャフトを有し、加圧シャフトによって中間積層体を載置部の方向に押し付けるように構成されていることが好ましい。別の実施形態においては、複数の加圧部の各々は、壁の外側に配置された支持シャフトと、支持シャフトに回転自在に取り付けられ、加圧シャフトに設けられた雄ねじ部に対応する雌ねじ部を有し、支持シャフトの回りに回転させることによって雌ねじ部を壁の外側と内側との間で移動させることができる、加圧シャフト保持部材とを備えることが好ましい。この作製装置においては、雌ねじ部が壁の内側に位置するように加圧シャフト保持部材を回転させた状態で加圧シャフトを締めることによって、中間積層体を載置部の方向に押し付けることができる。さらに別の実施形態においては、本作製装置は、中間積層体の上に配置される押し板をさらに備えることが好ましい。この場合には、複数の加圧部は、押し板を載置部の方向に押し付けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明による養殖貝選別機用の金網選別板及び金網選別板の製造方法によれば、金網選別板は、金網とその金網を間に挟んで接着剤層によって互いに接着された枠板2枚とから構成されるため、薄く、平坦に、かつ金網と枠板との段差を少なく仕上げることが可能であるとともに、金網の全ての切断端部を接着剤層で固定するので網目のずれも発生しない。また、枠板を歪みのない完全な四角形とすることができるとともに2枚の枠板の正確な位置合わせも可能であるため、形状が正確であり、養殖貝選別機における取り替え作業も容易である。上下の枠板の間に柔軟性のある接着剤層が存在するため、多少の曲げにも対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態による金網選別板を示し、(a)は上面図であり、(b)は(a)のAA矢視の断面図である。
図2】本発明の一実施形態による金網選別板を作製するための装置の実施形態の斜視図であり、(a)はベース枠及び加圧部の全体を示し、(b)は加圧部を拡大図で示し、(c)は押し板を示す。
図3図3の金網選別板作製装置を用いて金網選別板を作製する工程を示す一連の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を詳細に説明する。
【0019】
[金網選別板の構造]
図1は、本発明の一実施形態による、養殖貝選別機に用いるための金網選別板1を示す。図1(a)は、金網選別板1の上面図である。また、図1(b)は、図1(a)における矢視AAの断面図である。
【0020】
金網選別板1は、略長方形の金網11を有する。金網11は、金網製造メーカから市販される一定幅の長尺の金網を、養殖貝選別機の大きさ及び用途に合わせて適当なサイズに裁断したものを適宜用いることができる。長尺の金網として、一例として幅が1m~1.2m、長さが30mのものを用いることができ、例えば、線間が10mm未満の金網であれば、線径は1mm程度である。
【0021】
金網選別板1は、下枠板12及び上枠板14を有する。下枠板12及び上枠板14は、金網11の端部領域11aに対応する幅の4つの枠によって構成される長方形状のステンレス板である。下枠板12及び上枠板14の厚みはそれぞれ、限定されるものではないが、金網選別板1ができるだけ薄くかつ強度を維持することができるように、0.8mm~1.2mmであることが好ましい。下枠板12及び上枠板14の厚みは、用いられる金網11の網目が小さい場合は金網11自体の強度があるので薄くてもよく、金網11の網目が大きい場合は金網選別板1の強度を出すために厚くすることが好ましい。下枠板12は、金網11の下面11bに積層され、上枠板14は、金網11の上面11cに積層される。したがって、下枠板12と上枠板14との間に、金網11の4辺の端部領域11aが挟まれている。端部領域11aの幅は、金網11の網目の大きさによって決定することが好ましく、限定されるものではないが、例えば網目の大きさが10mm以下の場合は20mm程度、網目が10mmより大きい場合には30mm程度とすることが好ましい。
【0022】
下枠板12及び上枠板14の幅は、金網11の端部領域11aの幅と同じか、それより大きければよい。下枠板12及び上枠板14は、4辺がいずれも同じ幅であってもよく、4辺がいずれも異なる幅であってもよい。使用時の金網選別板1にかかる衝撃の大きさに耐える強度の観点からは、金網選別板1を養殖貝選別機に装填したときに選別される養殖貝の進行方向前後の枠(例えば、図1における短辺の枠)が、他の2辺の枠より幅広であることが好ましい。下枠板12及び上枠板14の4つの角部においては、強度を高めるために、図1(a)に示されるように幅が広く形成されることが好ましい。
【0023】
下枠板12及び上枠板14は、限定されるものではないが、例えばステンレス板から切り抜いて作製することができる。あるいは、下枠板12及び上枠板14は、4つの枠を長方形状に組み合わせ、溶接などによって互いに固定することによって作製することもできる。下枠板12と上枠板14とは、同じ形状であることが好ましく、例えばレーザー加工を用いることによって1/10mmの精度で作製することができ、4つの角部も正確に直角とすることができる
【0024】
下枠板12と上枠板14との間には、図1(b)に示されるように、接着剤層13が配置される。接着剤層13は、樹脂系接着剤を硬化させることによって形成された層であることが好ましい。接着剤層13として用いることができる樹脂系接着剤は、シリコーン系やウレタン系の樹脂コーキング剤であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0025】
接着剤層13は、層の下面が下枠板12に接着し、上面が上枠板14に接着しており、内部に金網11の端部領域11aが埋設される。接着剤層13の厚みは、典型的には金網11の厚みに対応し、線径1mmの金網11を用いた場合は、例えば2mm~2.5mmである。図1(b)において、接着剤層13は、下枠板12及び上枠板14の枠幅と同じ幅の層として描かれているが、これに限定されるものではなく、金網選別板1としての必要な機能を維持できる限り、下枠板12及び上枠板14の幅より狭い幅の層であってもよい。
【0026】
金網11の縁部11dは、図1(b)のように、下枠板12の縁部12d及び上枠板14の縁部14dに対応する位置にあることが好ましいが、これに限定されるものではない。縁部11dは、金網選別板1としての必要な機能を維持できる限り、例えば縁部12d及び縁部14dより内側に入り込んだ位置(図1(b)において縁部12d及び縁部14dより右方の位置)にあってもよい。
【0027】
金網11は、通常は長尺の金網から任意のサイズに裁断されるため、網目の歪みにより4辺を正確に直線状に切断することは難しく、通常は、数ミリの誤差が生じる。また、金網は、交互に針線を組み上げた平織で作製されたものであるため、容易に歪んで長方形を保持することが難しく、平行四辺形の状態であることが多い。本発明によれば、このような金網11を用いた場合でも、確実に長方形の金網選別板1として成形することができるとともに、その形状を維持することができる。また、接着剤層13はある程度柔軟性を有するため、下枠板12及び上枠板14の多少の曲げにも対応可能である。
【0028】
下枠板12及び上枠板14には、それぞれの枠の長さ方向に沿って対応する位置に、複数のリベット孔15を設けることが好ましい。下枠板12及び上枠板14に設けられた複数のリベット孔15の各々にリベット16を通して、下枠板12と上枠板14とをより強固に固定することができる。複数のリベット孔15及複数のびリベット16の径及び互いの間隔は、限定されるものではなく、必要な強度となるように適宜決定すればよい。
【0029】
[金網選別板作製装置の構造]
図2は、金網選別板1の作製装置3を示す。作製装置3は、図2(a)及び図2(b)に示されるように長方形状のベース枠31と複数の加圧部32とを備え、図2(c)に示される長方形状の押し板33をさらに備えることが好ましい。
【0030】
ベース枠31は、長辺を構成する2つの平行な長枠311と、2つの長枠311の両方の端部間に配置され、ベース枠31の短辺を構成する2つの平行な短枠312とを有する。長枠311及び短枠312は、軽量化の中抜きのために下向きコの字形状を有する鋼鉄製の部材であることが好ましいが、これに限定されるものではない。長枠311及び短枠312の長さは、限定されるものではなく、作製される金網選別板1の大きさに応じて適宜決定することができる。
【0031】
2つの長枠311の間には、2つの中間枠313が、2つの短枠312と平行に配置される。長枠311、短枠312及び中間枠313は、溶接によって互いに固定することができるが、これに限定されるものではなく、例えばボルト及びナットによって互いに固定してもよい。
【0032】
ベース枠31は、長枠311及び短枠312の幅方向のいずれかの位置に立設される4つの壁314を有する。これらの4つの壁314によって、下枠板12及び上枠板14に対応する形状の長方形が形成される。4つの壁314は、横断面がL字形状の鋼鉄製アングル材を用い、アングル材の一方の翼314aが長枠311及び短枠312の上面に接し、他方の翼314bが長枠311及び短枠312から立ち上がるように配置することによって、形成することができる。
【0033】
壁314は、下枠板12、硬化前の接着剤層13、及び上枠板14の厚みの合計より高ければよく、後述の押し板33を用いる場合には、これらにさらに押し板33を加えた厚みより高ければよい。4つの壁314によって形成される長方形の内側の大きさは、下枠板12及び上枠板14が壁314の内側にちょうど収まるように設定されることが好ましい。
【0034】
4つの壁314は、後述されるように、加圧部32の支持シャフト321とそれを固定するナット321b、321cとを用いて、長枠311及び短枠312に固定することができる。あるいは、4つの壁314と長枠311及び短枠312とは、一方の翼314aを長枠311及び短枠312に溶接することによって、互いに固定してもよい。
【0035】
長枠311及び短枠312において壁314の内側に位置する上面は、金網選別板1を作製する際に最初に下枠板12が載置される載置部30aである。載置部30aの幅は、下枠板12の枠の幅と概ね同じであることが好ましいが、これに限定されるものではなく、下枠板12が安定的に載置できる限り、枠の幅より狭くても広くてもよい。
【0036】
壁314の外側に位置するベース枠31の上面31bには、複数の加圧部32が配置される。図2(b)は、加圧部32の拡大図である。複数の加圧部32は、金網選別板1を作製する際に金網選別板1の全体に均等に必要な圧力を加えるための機構であり、長枠311及び短枠312に適当な間隔(例えば150mm~200mm)で配置される。複数の加圧部32の各々は、いずれも鋼鉄製であることが好ましい支持シャフト321、加圧シャフト保持部材322、及び加圧シャフト323を有する。
【0037】
支持シャフト321は、加圧シャフト保持部材322を支持するものであり、上端が壁314の位置より高い位置にあるシャフト321aを有する。シャフト321aは、例えば、ベース枠31及び壁314の一方の翼314aを貫通し、ベース枠31の上面及び下面にそれぞれ配置されたナット321b、321cでベース枠31に固定することができる。なお、この構成によって、壁314とベース枠31の長枠311及び短枠312とを互いに固定することができる。
【0038】
支持シャフト321には、略長円形状の板状体である加圧シャフト保持部材322が、支持シャフト321の周りに回転できるように取り付けられている。加圧シャフト保持部材322が支持シャフト321に取り付けられる位置は、壁314より高い位置である。加圧シャフト保持部材322には、支持シャフト321が貫通する支持シャフト孔322aと、加圧シャフト323が貫通する加圧シャフト孔322bとが設けられる。好ましくは、支持シャフト孔322aは雌ねじ部を、支持シャフト321は表面に雄ねじ部を有する。
【0039】
支持シャフト孔322aと加圧シャフト孔322bとの間隔は、加圧シャフト保持部材322を回転させて壁314をまたぐように位置させたときに、加圧シャフト孔322bが壁314の内側に位置するように設定される。加圧シャフト保持部材322を回転させることによって、加圧シャフト孔322bを壁314の外側に退避させることもできる。加圧シャフト孔322bの内部には、加圧シャフト323の雄ねじ部323cと螺合する雌ねじ部322cが設けられている。
【0040】
加圧シャフト孔322bには、加圧シャフト323が貫通する。加圧シャフト323は、シャフト323aと、その上端に固定されたナット323bと、長さ方向の全体又は適切な位置に設けられた雄ねじ部323cと、下端に設けられた下向き円錐形状の加圧部323dを有する。
【0041】
加圧シャフト323の雄ねじ部323cは、加圧シャフト保持部材322の雌ねじ部322cと螺合するように設けられているため、加圧シャフト323のナット323bを回転させることによって、加圧シャフト323を上下させることができる。加圧シャフト323が壁314の内側に位置する状態で加圧シャフト323を回転させることによって、加圧シャフト323が下方に移動する。それにより、加圧シャフト323の加圧部323dが、後述されるように金網選別板1を作製する際に必要な圧力を上枠板14又は押し板33に加えることができる。
【0042】
作製装置3は、図2(c)に示される押し板33をさらに備えることが好ましい。押し板33は、好ましくは端部領域11aに対応する幅の4つの枠331によって構成される長方形状の鋼板であり、後述されるように金網選別板1を作製する際に上枠板14の上に重ねて用いられる。押し板33の大きさは、下枠板12及び上枠板14と概ね同じであることが好ましい。押し板33を用いることによって、複数の加圧部32の押圧を金網選別板1の端部領域11aに平均的に分散させ、金網選別板1を、仕上がり厚さのムラを無くして平らに薄く仕上げることができる。
【0043】
押し板33が用いられる場合には、前述のとおり、壁314の高さは、金網選別板1の厚みに押し板33の厚みを加えた高さ以上とする。押し板33は、枠331の長辺間にわたされた中間枠332を有し、その中間枠332に、押し板33を上枠板14の上に配置するための吊り下げフック333が取り付けられていることが好ましい。さらに、枠331には、加圧時に複数の加圧部32のそれぞれの加圧部323dを当てられる位置である加圧位置決め穴33aが、複数の加圧部32に対応する位置に設けられていることが好ましい。
【0044】
[金網選別板の作製方法]
次に、金網選別板作製装置2を用いて金網選別板1を作製する方法を説明する。図3は、金網選別板1を作製する工程を示す一連の工程図である。図3は、図1(a)の矢視AAの部分の構造を例として示しているが、金網選別板1の他の部分も同様である。なお、図3は、作製工程を分かり易くするために、各部材の厚みがそれらの幅や長さなどに対して厚く表現されている。
【0045】
まず、図3(a)に示されるように、ベース枠31の載置部31aの上に下枠板12を載置する。下枠板12は、縁部12dが壁314の内面に接するように載置されることが好ましい。下枠板12の上面12cには、硬化前の樹脂系接着剤13pを薄く塗布しておくことが好ましい。
【0046】
次に、図3(b)に示されるように、下枠板12の上に、適切な大きさに裁断した金網11の端部領域11aを配置する。金網11は、縁部11dが壁314の内面に接するように配置されることが好ましい。その後、金網11の端部領域11aが埋まる程度に、硬化前の樹脂系接着剤13pを端部領域11aの部分に塗布する。この際に金網11の網目のずれを修正することが好ましい。
【0047】
次に、図3(c)に示されるように、金網11の上に上枠板14を配置する。上枠板14は、縁部14dが壁314の内面に接するように配置されることが好ましい。上枠板14の下面14bには、硬化前の樹脂系接着剤13pを薄く塗布しておくことが好ましい。ここまでの工程で、下枠板12、金網11、硬化前の樹脂系接着剤13p及び上枠板14を組み合わせた中間積層体が得られる。押し板33を用いる場合には、中間積層体の上に押し板33を配置することになる。押し板33は、縁部33dが壁314の内面に接するように配置されることが好ましい。以下、押し板33を用いる場合を説明する
【0048】
次に、図3(d)に示されるように、加圧部32の加圧シャフト保持部材322を支持シャフト321の周りに回転させて、加圧シャフト323を、押し板33の枠の上に位置するように壁314の外側から内側に移動させる。このとき、加圧シャフト323の加圧部323dが押し板33の加圧位置決め穴33aの真上にくるように、加圧シャフト323を移動させることが好ましい。
【0049】
次に、図3(e)に示されるように、加圧シャフト323を回転させて(ねじ込んで)、押し板33を下方に(すなわち、ベース枠31の載置部31aの方向(下枠板12の方向)に)押し付ける。加圧部32は、ベース枠31の長枠311及び短枠312に複数個設けられているので、押し板33が均等に加圧されるように、複数の加圧部32の加圧シャフト323を適切な順序でねじ込むことが好ましい。
【0050】
一例として、厚み1mmのステンレス製の下枠板12及び上枠板14と、樹脂系接着剤13pとしてシリコーン系の樹脂コーキング剤とを用い、線径1mmの金網11を用いた場合には、複数の加圧シャフト323を約14N・mのトルクで回転させることによって、下枠板12、金網11及び上枠板14を樹脂系接着剤13pで完全に密着させて、平坦な金網選別板1を作製することができる。
【0051】
最後に、加圧シャフト323で押し板33を加圧した状態のまま15分から30分程度放置することによって、樹脂系接着剤13pを硬化させることができる。必要に応じて、加圧シャフト323による加圧を解放し、好ましくはベース枠31から取り出して24時間程度さらに放置することによって、樹脂系接着剤13pを完全に硬化させることが好ましい。
【符号の説明】
【0052】
1 金網選別板
11 金網
11a 端部領域
11b 金網下面
11c 金網上面
11d 金網縁部
12 下枠板
12b 下枠板下面
12c 下枠板上面
12d 下枠板縁部
13 樹脂層
13p 硬化前の樹脂系接着剤
14 上枠板
14b 上枠板下面
14c 上枠板上面
14d 上枠板縁部
15 リベット孔
16 リベット
3 金網選別板の作製装置
31 ベース枠
31a 載置部
31b 上面
311 長枠
312 短枠
313 中間枠
314 壁
314a 一方の翼
314b 他方の翼
32 加圧部
321 支持シャフト
321a シャフト
321b、321c ナット
322 加圧シャフト保持部材
322a 支持シャフト孔
322b 加圧シャフト孔
322c 雌ねじ部
323 加圧シャフト
323a シャフト
323b ナット
323c 雄ねじ部
323d 加圧部
33 押し板
33a 加圧位置決め穴
33d 押し板縁部
331 枠
332 中間枠
333 吊り下げフック
図1
図2
図3