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  • 特許-予混合バーナを用いたボイラ 図1
  • 特許-予混合バーナを用いたボイラ 図2
  • 特許-予混合バーナを用いたボイラ 図3
  • 特許-予混合バーナを用いたボイラ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】予混合バーナを用いたボイラ
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/78 20060101AFI20241108BHJP
   F23D 14/62 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
F23D14/78 B
F23D14/62
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021022177
(22)【出願日】2021-02-16
(65)【公開番号】P2022124494
(43)【公開日】2022-08-26
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000154668
【氏名又は名称】株式会社ヒラカワ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 厳雄
(72)【発明者】
【氏名】木下 正成
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光宏
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0093879(US,A1)
【文献】特表2009-529647(JP,A)
【文献】特開2007-315628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/00 - 14/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと空気との混合ガスを燃焼させる予混合バーナと、
前記予混合バーナが内部に配置された炉と、
前記混合ガスの燃焼による熱で内部の水が加熱される缶とを備える予混合バーナを用いたボイラであって、
前記予混合バーナに送る混合ガスを燃料ガスと空気との混合により生成する風箱と、
前記炉の内部に配置されて混合ガスの燃焼による熱を遮る遮熱板とをさらに備え、
前記風箱は、
前記遮熱板に面する冷却用部材と、
取り入れた燃料ガスおよび/または空気を冷却用部材に衝突させる気体流路とを有することを特徴とする予混合バーナを用いたボイラ。
【請求項2】
前記予混合バーナは、
前記風箱に接続されて混合ガスを導く基端管と、
前記基端管から導かれた混合ガスを炉の内部に放出して燃焼させる燃焼筒とを有し、
前記遮熱板は、前記基端管に設置されたものであることを特徴とする請求項1に記載の予混合バーナを用いたボイラ。
【請求項3】
前記風箱は、その内部の気圧を、前記炉の内部の気圧よりも高く維持するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の予混合バーナを用いたボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予混合バーナを用いたボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
予混合バーナを用いたボイラは、燃料ガスと空気とを予め混合させた混合ガスを予混合バーナにより燃焼させて、この燃焼による熱で缶の内部の水を加熱する装置である。この加熱により、生成した蒸気または温められた水が、缶から取り出されて利用される。
【0003】
予混合バーナを用いたボイラに関する公知の発明として、混合ガスの燃焼により発生するCOなどの有害物を低減するボイラがある(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、その図2に、バーナ16が混合ガスF1Aを燃焼させて、この燃焼により水管群50の内部の水を加熱するボイラ1が示されている。また、前記特許文献1の図1に示すように、前記ボイラ1は、混合ガスF1Aの燃焼による熱を遮る耐火材84,86を有し、混合ガスF1Aの燃焼により生成される燃焼ガスの流路を絞る突起部26を有する。前記特許文献1に記載のボイラ1は、突起部26で燃焼ガスの流路が絞られることで、燃焼ガス中のCOの酸化が促進され、結果として、COなどの有害物が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-98072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、本願図面の図3および図4に、特許文献1に記載のボイラのような公知のボイラ100を模式的にして示す。図3に示すように、この公知のボイラ100は、燃料ガス管71からの燃料ガスFと空気管72からの空気Aとをミキサ105で混合し、この混合により生成された混合ガスMが予混合バーナ2に送られて、当該混合ガスMが予混合バーナ2の燃焼筒22により炉3の内部で燃焼される。この燃焼により缶4の内部の水Wが加熱され、この加熱により、生成した蒸気または温められた水Wが、缶4から取り出されて利用される。一方で、炉3の外部に向かう熱は、予混合バーナ2の基端管21と缶4との間を塞ぐ断熱用の耐火材106で遮られる。また、前記公知のボイラ100には、図3および図4に示すように、予混合バーナ2の混合ガスMが送られる元(下流側)に構造体108が設けられている。
【0006】
しかしながら、前記公知のボイラ100には、断熱用の耐火材106のために、構造体108の近くに十分なスペースを確保できないことから、予混合バーナ2の付帯機器、例えば、火炎検出器、のぞき窓およびパイロットバーナなどを設けても、当該付帯機器のメンテナンス性などを担保できないので、当該付帯機器を適切に設けるのが困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、予混合バーナの付帯機器を適切に設け得る予混合バーナを用いたボイラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、第1の発明に係る予混合バーナを用いたボイラは、燃料ガスと空気との混合ガスを燃焼させる予混合バーナと、
前記予混合バーナが内部に配置された炉と、
前記混合ガスの燃焼による熱で内部の水が加熱される缶とを備える予混合バーナを用いたボイラであって、
前記予混合バーナに送る混合ガスを燃料ガスと空気との混合により生成する風箱と、
前記炉の内部に配置されて混合ガスの燃焼による熱を遮る遮熱板とをさらに備え、
前記風箱は、
前記遮熱板に面する冷却用部材と、
取り入れた燃料ガスおよび/または空気を冷却用部材に衝突させる気体流路とを有するものである。
【0009】
また、第2の発明に係る予混合バーナを用いたボイラは、第1の発明に係る予混合バーナを用いたボイラにおいて、前記予混合バーナは、
前記風箱に接続されて混合ガスを導く基端管と、
前記基端管から導かれた混合ガスを炉の内部に放出して燃焼させる燃焼筒とを有し、
前記遮熱板は、前記基端管に設置されたものである。
【0010】
さらに、第3の発明に係る予混合バーナを用いたボイラは、第1または2の発明に係る予混合バーナを用いたボイラにおいて、前記風箱は、その内部の気圧を、前記炉の内部の気圧よりも高く維持するものである。
【発明の効果】
【0011】
前記予混合バーナを用いたボイラによると、遮熱板を備えることにより耐火材が不要になるので、十分な大きさの風箱を備えることが可能となり、結果として、適切に予混合バーナの付帯機器を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る予混合バーナを用いたボイラを側方から視た部分断面図である。
図2】同予混合バーナを用いたボイラの正面図である。
図3】公知の予混合バーナを用いたボイラを側方から視た部分断面図である。
図4】同予混合バーナを用いたボイラの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る予混合バーナを用いたボイラについて、図面に基づき説明する。
【0014】
図1に示すように、前記予混合バーナを用いたボイラ1は、燃料ガスFと空気Aとの混合ガスMを燃焼させる予混合バーナ2と、この予混合バーナ2が内部に配置された炉3と、前記混合ガスMの燃焼による熱で内部の水Wが加熱される缶4とを備える。
【0015】
前記予混合バーナ2は、例えば、前記炉3の外部から混合ガスMを導く基端管21と、この基端管21に接続されて当該基端管21からの混合ガスMを放出しながら炉3の内部で燃焼させる燃焼筒22とを有する。前記炉3は、前記混合ガスMの燃焼による熱を缶4の内部に供給された水Wに伝達する。このため、前記炉3は、前記缶4に囲われた形状であることが好ましい。例えば、前記炉3の横断面は円形であり、前記缶4は炉3に曝された内周面を有する。前記缶4は、図示しないが、内部に水Wを供給するための水供給口が形成され、当該水Wの加熱により生成した蒸気を取り出す蒸気取出口が形成されてもよい。
【0016】
前記予混合バーナを用いたボイラ1は、前記予混合バーナ2に送る混合ガスMを燃料ガスFと空気Aとの混合により生成する風箱5(ウィンドボックス)と、前記炉3の内部に配置されて混合ガスMの燃焼による熱を遮る遮熱板6とをさらに備える。
【0017】
前記遮熱板6は、前記基端管21に取り付けられることが好ましいが、前記燃焼筒22に設置されてもよい。前記遮熱板6が燃焼筒22に設置される場合、当該遮熱板6は、前記基端管21に近いほど好ましい。この構成により、前記燃焼筒22における燃焼の面積を不必要に減少させないからである。特に、前記遮熱板6は、前記予混合バーナ2の全周に亘って熱を遮るために、前記予混合バーナ2を貫通させる円板形状であることが好ましい。また、前記混合ガスMの燃焼による熱を、遮熱板6を機能させるべく効果的に冷却するために、前記遮熱板6は、以下の第1から第4の少なくともいずれかのように構成されることが好ましい。すなわち、第1に、前記遮熱板6は、その面が予混合バーナ2の軸方向(混合ガスMが送られる方向)に直交する。第2に、前記遮熱板6は、金属製である。第3に、前記遮熱板6は、前記缶4まで達しない。第4に、前記遮熱板6は、複数である(前記基端管21および燃焼筒22のそれぞれに取り付けられることが好ましい)。
【0018】
前記風箱5は、前記遮熱板6に面する冷却用部材52と、取り入れた燃料ガスFおよび/または空気Aを冷却用部材52に衝突させる気体流路59とを有する。この構成により、前記遮熱板6からの輻射熱Rが冷却用部材52に十分に伝達され、当該冷却用部材52が燃料ガスFおよび/または空気Aの衝突噴流により冷却されるので、結果として炉3の外部に向かう熱が効率的に奪われる。
【0019】
以下、前記風箱5の具体的な構造の例について説明する。
【0020】
前記風箱5は、内部で燃料ガスFと空気Aとの混合により混合ガスMを生成する箱体50を有する。この箱体50は、前記炉3側に位置して炉3に曝される部分が冷却用部材52で構成された伝熱壁51と、前記炉3の反対側に位置して開口を有する開口壁53と、この開口壁53の開口を塞ぐ蓋54と(図2も参照)、前記炉3側および炉3の反対側でそれぞれ伝熱壁51および開口壁53に接合された円筒壁56と(図2も参照)を有する。
【0021】
図2に示すように、前記予混合バーナを用いたボイラ1は、前記箱体50の内部に燃料ガスFを取り入れさせる燃料ガス管71と、前記箱体50の内部に空気Aを取り入れさせる空気管72とを備える。図1に示すように、前記風箱5では、前記燃料ガス管71が開口壁53を貫通して設けられ、前記空気管72が円筒壁56を貫通して設けられている。また、前記風箱5は、前記気体流路59を構成する部材として、前記蓋54に接続されて伝熱壁51に達しない流路形成管55と、この流路形成管55の内側で蓋54に達することなく基端管21に連通した連通管57とを有する。この構成により、前記燃料ガス管71および空気管72から流路形成管55の外側にそれぞれ取り入れられた燃料ガスFおよび空気Aは、当該流路形成管55が伝熱壁51に達しないことにより、伝熱壁51の冷却用部材52に衝突して流路形成管55の内側に折り返す。当該流路形成管55の内側の燃料ガスFおよび空気Aは、前記連通管57が蓋54に達しないことにより、蓋54に至って連通管57の内側に折り返し、予混合バーナ2まで送られる。前記燃料ガスFおよび空気Aは、前記流路形成管55の外側および内側から連通管57まで導かれる過程で、混合されることで混合ガスMになる。前記連通管57の内部には、前記混合ガスMの混合を促進する挿入物58が設けられてもよい。
【0022】
前記伝熱壁51の冷却用部材52を効率的に冷却するために、前記流路形成管55の先端は、前記開口壁53よりも伝熱壁51に近く位置することが好ましく、前記連通管57の先端は、前記伝熱壁51よりも開口壁53に近く位置することが好ましい。なお、前記空気管72は、例えば、混合ガスMにおける空気Aの割合を調整するために、すなわち、箱体50に取り入れる空気Aの流量を調整するために、図2に示す空気ダンパ73を有する。
【0023】
図1に示すように、前述した風箱5は、前記冷却用部材52が燃料ガスFおよび空気Aの両方の衝突噴流により冷却される構成、すなわち、前記流路形成管55の外側で且つ円筒壁56の内側に燃料ガスFおよび空気Aの両方が取り入れられる構成であるが、これに限定されるものではない。例えば、前記風箱5は、前記冷却用部材52が燃料ガスFおよび空気Aのいずれか一方の衝突噴流により冷却される構成でもよい。
【0024】
前記風箱5における箱体50の内部は、少なくとも炉3で混合ガスMが燃焼している期間、すなわち、少なくとも予混合バーナ2が作動している期間、炉3の内部よりも高い気圧で維持される。したがって、少なくとも予混合バーナ2が作動している期間、前記箱体50の内部が炉3の内部よりも高い気圧になるように、前記箱体50の内部に、前記燃料ガスFおよび空気Aが取り入れられる。この構成により、前記炉3の内部から混合ガスMなどが、前記風箱5(特に予混合バーナ2との接続部)を介して外部に漏れることが防止される。
【0025】
前記予混合バーナを用いたボイラ1は、図3および図4に示す公知のボイラ100と同様に、混合ガスMが予混合バーナ2に送られる元(下流側)の周囲に、図1および図2に示す構造体8を備える。しかしながら、本発明の実施の形態に係る予混合バーナを用いたボイラ1は、公知のボイラ100と異なり、前記風箱5が上下方向に十分な大きさを有する。この大きさを有する風箱5により、本発明の実施の形態に係る予混合バーナを用いたボイラ1は、図2に示すように、予混合バーナ2の付帯機器として、火炎検出器91、のぞき窓92、および/または、パイロットバーナ93などが設けられる。なお、前記風箱5の表面温度を監視するモニタを設けてもよい。
【0026】
以下、前記予混合バーナを用いたボイラ1の動作について説明する。
【0027】
図1に示すように、流路形成管55の外側で且つ円筒壁56の内側に、燃料ガス管71から燃料ガスFが取り入れられるとともに、空気管72から空気Aが取り入れられる。箱体50に取り入れられた燃料ガスFおよび空気Aは、伝熱壁51の冷却用部材52に衝突してから、流路形成管55の内側に折り返す。そして、燃料ガスFおよび空気Aは、蓋54まで至ってから、連通管57の内側に折返し、予混合バーナ2まで送られる。燃料ガスFおよび空気Aは、流路形成管55の外側および内側から連通管57まで導かれる過程で、混合されることで混合ガスMになる。
【0028】
炉3の内部では、予混合バーナ2が、基端管21から燃焼筒22まで混合ガスMを送り続けるとともに、燃焼筒22で混合ガスMを放出しながら燃焼する。この燃焼により、缶4の内部に供給された水Wが加熱され続ける。この加熱により、生成した蒸気が取り出されて利用され、または、温められた水Wが取り出されて利用される。
【0029】
ここで、混合ガスMの燃焼による熱は、遮熱板6により遮られる。具体的には、遮熱板6に炉3の内部の熱が伝達されるとともに、遮熱板6からの輻射熱Rが風箱5の冷却用部材52に伝達されて、冷却用部材52が燃料ガスFおよび空気Aの衝突噴流により冷却される。結果として、遮熱板6と、衝突噴流により冷却される冷却用部材52とにより、炉3の外部に向かう熱が奪われる。
【0030】
一方で、箱体50の内部は、取り入れられた燃料ガスFおよび空気Aにより、炉3の内部よりも高い気圧で維持される。これにより、炉3の内部から混合ガスMなどが、前記風箱5(特に予混合バーナ2との接続部)を介して外部に漏れることが防止される。
【0031】
このように、前記予混合バーナを用いたボイラ1によると、遮熱板6を備えることにより図3に示す耐火材106が不要になるので、十分な大きさの風箱5を備えることが可能となり、結果として、予混合バーナ2の付帯機器を適切に設けることができる。
【0032】
また、風箱5の内部で燃料ガスFと空気Aとから混合ガスMが生成されるので、図3に示す混合ガスMを生成するためのミキサ105を不要にすることができる。
【0033】
さらに、遮熱板6が基端管21に設置されたものであることにより、前記燃焼筒22における燃焼の面積を不必要に減少させない。
【0034】
加えて、風箱5の内部が炉3の内部よりも高い気圧で維持されることにより、炉3の内部から混合ガスMなどが風箱5を介して外部に漏れることを防止することができる。
【0035】
ところで、前記実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、前述した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。前記実施の形態で説明した構成のうち「課題を解決するための手段」での第1の発明として記載した構成以外については、任意の構成であり、適宜削除および変更することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
M 混合ガス
1 予混合バーナを用いたボイラ
2 予混合バーナ
3 炉
4 缶
5 風箱
6 遮熱板
51 伝熱壁
52 冷却用部材
53 開口壁
54 蓋
55 流路形成管
56 円筒壁
57 連通管
59 気体流路
71 燃料ガス管
72 空気管
図1
図2
図3
図4