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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】回転ノズル装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 3/06 20060101AFI20241108BHJP
   B08B 9/032 20060101ALI20241108BHJP
   B05B 1/16 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B05B3/06 B
B08B9/032
B05B1/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021027130
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2021151650
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2024-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2020050067
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】520098899
【氏名又は名称】クリーンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】弁理士法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 聡
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-085184(JP,A)
【文献】特開平1-135551(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/022724(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 3/06
B08B 9/032
B05B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧水を導く導通管の先端に回転可能に設けられるノズルヘッドと、前記ノズルヘッドの先端に傾斜して設けられ、前記高圧水を噴射する第一ノズル及び第二ノズルと、を備えており、少なくとも前記第一ノズルから噴射されるウォータージェットの噴射反力により前記第一ノズル及び前記第二ノズルを前記ノズルヘッドの回転軸心まわりに周回させながら、前記第一ノズル及び前記第二ノズルから噴射されるウォータージェットをパイプ内の付着物に衝突させて除去する回転ノズル装置であって、
前記第一ノズルは、そのウォータージェットの噴射軸線が当該第一ノズルの周回半径方向において外方へ傾斜するとともに周回円周方向において傾斜して設けられ、
前記第二ノズルは、そのウォータージェットの噴射軸線が当該第二ノズルの周回半径方向において内方へ傾斜して設けられ、
前記第二ノズルのウォータージェットの噴射角度は、
前記第一ノズルのウォータージェットの噴射角度よりも大きくされ、かつ、
前記第一ノズルの噴射軸線と前記パイプの内壁面との交点を含んで前記ノズルヘッドの回転軸心と直交する仮想平面を基準面としたとき、前記第二ノズルの噴射軸線が前記ノズルヘッドの回転軸心を越えて当該第二ノズルとは反対側で前記基準面と交わり、その交点が周回して描く周回軌跡が、前記第一ノズルの噴射軸線と前記基準面との交点が周回して描く周回軌跡よりも内側に位置するように設定されており、
前記第一ノズルのウォータージェットを前記パイプの内壁部側に存在する付着物に衝突させるとともに、前記第二ノズルのウォータージェットを前記ノズルヘッドの回転軸心と交差させて前記第一ノズルのウォータージェットの衝突軌跡よりも前記パイプの中央部側に存在する付着物に衝突させることを特徴とした回転ノズル装置。
【請求項2】
前記ノズルヘッドが、前記高圧水を噴射する第三ノズルを更に備え、
前記第三ノズルのウォータージェットの噴射角度は、当該第三ノズルの噴射軸線と前記基準面との交点が周回して描く周回軌跡が、前記第一ノズルの噴射軸線と前記基準面との交点が周回して描く周回軌跡と、前記第二ノズルの噴射軸線と前記基準面との交点が周回して描く周回軌跡との間に位置するように設定されており、
前記第三ノズルのウォータージェットを、前記第一ノズルのウォータージェットの衝突軌跡と前記第二ノズルのウォータージェットの衝突軌跡との間に存在する付着物に衝突させることを特徴とした請求項1に記載の回転ノズル装置。
【請求項3】
高圧水を導く導通管の先端に回転可能に設けられるノズルヘッドと、前記ノズルヘッドの先端に傾斜して設けられ、前記高圧水を噴射する第一ノズル、第二ノズル及び第三ノズルと、を備えており、少なくとも前記第三ノズルから噴射されるウォータージェットの噴射反力により前記第一ノズル、前記第二ノズル及び前記第三ノズルを前記ノズルヘッドの回転軸心まわりに周回させながら、前記第一ノズル、前記第二ノズル及び前記第三ノズルから噴射されるウォータージェットをパイプ内の付着物に衝突させて除去する回転ノズル装置であって、
前記第一ノズルは、そのウォータージェットの噴射軸線が当該第一ノズルの周回半径方向において外方へ傾斜して設けられ、
前記第二ノズルは、そのウォータージェットの噴射軸線が当該第二ノズルの周回半径方向において内方へ傾斜して設けられ、
前記第三ノズルは、そのウォータージェットの噴射軸線が当該第三ノズルの周回円周方向において傾斜して設けられ、
前記第二ノズルのウォータージェットの噴射角度は、
前記第一ノズルのウォータージェットの噴射角度よりも大きく設定され、かつ、
前記第一ノズルの噴射軸線と前記パイプの内壁面との交点を含んで前記ノズルヘッドの回転軸心と直交する仮想平面を基準面としたとき、前記第二ノズルの噴射軸線が前記ノズルヘッドの回転軸心を越えて当該第二ノズルとは反対側で前記基準面と交わり、その交点が周回して描く周回軌跡が、前記第一ノズルの噴射軸線が前記基準面と交わる交点が周回して描く周回軌跡よりも内側に位置するように設定されており、
前記第一ノズルのウォータージェットを前記パイプの内壁部側に存在する付着物に衝突させるとともに、前記第二ノズルのウォータージェットを前記ノズルヘッドの回転軸心と交差させて前記第一ノズルのウォータージェットの衝突軌跡よりも前記パイプの中央部側に存在する付着物に衝突させることを特徴とした回転ノズル装置。
【請求項4】
前記第三ノズルのウォータージェットの噴射角度が、当該第三ノズルの噴射軸線と前記基準面との交点が周回して描く周回軌跡が前記第一ノズルの噴射軸線と前記基準面との交点が周回して描く周回軌跡と、前記第二ノズルの噴射軸線と前記基準面との交点が周回して描く周回軌跡との間に位置するように設定されており、
前記第三ノズルのウォータージェットを、前記第一ノズルのウォータージェットの衝突軌跡と前記第二ノズルのウォータージェットの衝突軌跡との間に存在する付着物に衝突させることを特徴とした請求項3に記載の回転ノズル装置。
【請求項5】
前記第二ノズルの噴射口径が前記第一ノズルの噴射口径よりも大きくされており、
前記第二ノズルのウォータージェットの噴射流量を前記第一ノズルのウォータージェットの噴射流量よりも大きくしたことを特徴とした請求項1~請求項4の何れかに記載の回転ノズル装置。
【請求項6】
前記ノズルヘッドが、前記第一ノズルと第二ノズルとを含んで成る組を複数、備えていることを特徴とした請求項1~請求項5の何れかに記載の回転ノズル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ノズル装置、より詳しくは、ノズルヘッドの回転軸心まわりに周回する複数のノズルからウォータージェットを噴射してパイプ内の付着物を除去する回転ノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大規模焼却炉や火力発電所等の燃焼排ガスから硫黄酸化物を除去する方法の一つとして、ジェットバブリング式の脱硫方法が知られている。この方法は、硫黄酸化物を含む排ガスを、多数本の吹込パイプを通じてアルカリ剤含有処理液中に高速で吹き込み、バブリングすることによって、硫黄酸化物とアルカリ剤及び酸素とを反応させて硫黄酸化物を除去する方法である。
【0003】
このジェットバブリング式脱硫方法は、排ガスと処理液との気液接触効率が高く、脱硫性能に優れている反面、排ガスを処理液中に吹き込むための吹込パイプの内面にも、その下端部から徐々に石膏等の反応生成物が付着堆積することになり、長期間の稼働によって吹込パイプが付着物で閉鎖してしまうこともあった。
【0004】
現在までに、ウォータージェットの噴射手段をパイプ内に導入し、複数条のウォータージェットをパイプ内面に対しそれぞれ異なる角度で噴射させるとともに、これらウォータージェットを周回させることによって、パイプ内の付着物を除去する付着物除去装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、従来の付着物除去装置は、ウォータージェットを専らパイプの内壁部に向けて外向きに噴射していたため、パイプの内壁部側に存在する付着物は有効に除去し得るものの、付着物で完全に閉鎖してしまったパイプ内の付着物を効率的に除去することができない難点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭64-85184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来のパイプ内の付着物除去装置に上記のような難点があったことに鑑みて為されたもので、たとえパイプが付着物で完全に閉鎖している場合であっても、パイプ内の付着物を効率的に除去することができる回転ノズル装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、高圧水を導く導通管の先端に回転可能に設けられるノズルヘッドと、前記ノズルヘッドの先端に傾斜して設けられ、前記高圧水を噴射する第一ノズル及び第二ノズルと、を備えており、少なくとも前記第一ノズルから噴射されるウォータージェットの噴射反力により前記第一ノズル及び前記第二ノズルを前記ノズルヘッドの回転軸心まわりに周回させながら、前記第一ノズル及び前記第二ノズルから噴射されるウォータージェットをパイプ内の付着物に衝突させて除去する回転ノズル装置であって、
前記第一ノズルは、そのウォータージェットの噴射軸線が当該第一ノズルの周回半径方向において外方へ傾斜するとともに周回円周方向において傾斜して設けられ、
前記第二ノズルは、そのウォータージェットの噴射軸線が当該第二ノズルの周回半径方向において内方へ傾斜して設けられ、
前記第二ノズルのウォータージェットの噴射角度は、
前記第一ノズルのウォータージェットの噴射角度よりも大きくされ、かつ、
前記第一ノズルの噴射軸線と前記パイプの内壁面との交点を含んで前記ノズルヘッドの回転軸心と直交する仮想平面を基準面としたとき、前記第二ノズルの噴射軸線が前記ノズルヘッドの回転軸心を越えて当該第二ノズルとは反対側で前記基準面と交わり、その交点が周回して描く周回軌跡が、前記第一ノズルの噴射軸線と前記基準面との交点が周回して描く周回軌跡よりも内側に位置するように設定されており、
前記第一ノズルのウォータージェットを前記パイプの内壁部側に存在する付着物に衝突させるとともに、前記第二ノズルのウォータージェットを前記ノズルヘッドの回転軸心と交差させて前記第一ノズルのウォータージェットの衝突軌跡よりも前記パイプの中央部側に存在する付着物に衝突させることを特徴としている。
【0009】
また、本発明は、前記ノズルヘッドが、前記高圧水を噴射する第三ノズルを更に備えており、前記第三ノズルのウォータージェットの噴射角度は、当該第三ノズルの噴射軸線と前記基準面との交点が周回して描く周回軌跡が、前記第一ノズルの噴射軸線と前記基準面との交点が周回して描く周回軌跡と、前記第二ノズルの噴射軸線と前記基準面との交点が周回して描く周回軌跡との間に位置するように設定されており、
前記第三ノズルのウォータージェットを、前記第一ノズルのウォータージェットの衝突軌跡と前記第二ノズルのウォータージェットの衝突軌跡との間に存在する付着物に衝突させることを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、高圧水を導く導通管の先端に回転可能に設けられるノズルヘッドと、前記ノズルヘッドの先端に傾斜して設けられ、前記高圧水を噴射する第一ノズル、第二ノズル及び第三ノズルと、を備えており、少なくとも前記第三ノズルから噴射されるウォータージェットの噴射反力により前記第一ノズル、前記第二ノズル及び前記第三ノズルを前記ノズルヘッドの回転軸心まわりに周回させながら、前記第一ノズル、前記第二ノズル及び前記第三ノズルから噴射されるウォータージェットをパイプ内の付着物に衝突させて除去する回転ノズル装置であって、
前記第一ノズルは、そのウォータージェットの噴射軸線が当該第一ノズルの周回半径方向において外方へ傾斜して設けられ、
前記第二ノズルは、そのウォータージェットの噴射軸線が当該第二ノズルの周回半径方向において内方へ傾斜して設けられ、
前記第三ノズルは、そのウォータージェットの噴射軸線が当該第三ノズルの周回円周方向において傾斜して設けられ、
前記第二ノズルのウォータージェットの噴射角度は、
前記第一ノズルのウォータージェットの噴射角度よりも大きく設定され、かつ、
前記第一ノズルの噴射軸線と前記パイプの内壁面との交点を含んで前記ノズルヘッドの回転軸心と直交する仮想平面を基準面としたとき、前記第二ノズルの噴射軸線が前記ノズルヘッドの回転軸心を越えて当該第二ノズルとは反対側で前記基準面と交わり、その交点が周回して描く周回軌跡が、前記第一ノズルの噴射軸線が前記基準面と交わる交点が周回して描く周回軌跡よりも内側に位置するように設定されており、
前記第一ノズルのウォータージェットを前記パイプの内壁部側に存在する付着物に衝突させるとともに、前記第二ノズルのウォータージェットを前記ノズルヘッドの回転軸心と交差させて前記第一ノズルのウォータージェットの衝突軌跡よりも前記パイプの中央部側に存在する付着物に衝突させることを特徴としている。
【0011】
また、本発明は、前記第三ノズルのウォータージェットの噴射角度が、当該第三ノズルの噴射軸線と前記基準面との交点が周回して描く周回軌跡が前記第一ノズルの噴射軸線と前記基準面との交点が周回して描く周回軌跡と、前記第二ノズルの噴射軸線と前記基準面との交点が周回して描く周回軌跡との間に位置するように設定されており、
前記第三ノズルのウォータージェットを、前記第一ノズルのウォータージェットの衝突軌跡と前記第二ノズルのウォータージェットの衝突軌跡との間に存在する付着物に衝突させることを特徴としている。
【0012】
また、本発明は、前記第二ノズルの噴射口径が前記第一ノズルの噴射口径よりも大きくされており、前記第二ノズルのウォータージェットの噴射流量を前記第一ノズルのウォータージェットの噴射流量よりも大きくしたことを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、前記ノズルヘッドが、前記第一ノズルと第二ノズルとを含んで成る組を複数、備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る回転ノズル装置によれば、第一ノズルのウォータージェットがパイプの内壁部側に存在する付着物に衝突するとともに、第二ノズルのウォータージェットがノズルヘッドの回転軸心と交差して第一ノズルのウォータージェットの衝突軌跡よりもパイプ中央部側に存在する付着物に衝突するので、たとえパイプが付着物で完全に閉鎖している場合であっても、パイプ内の付着物を効率的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の回転ノズル装置の使用状態を示す側面図である。
図2】本実施形態の回転ノズル装置の正面図である。
図3】本実施形態の回転ノズル装置の第一組の各ノズルからウォータージェットを噴射した状態を模式的に示す正面図である。
図4】本実施形態の回転ノズル装置の第二組の各ノズルからウォータージェットを噴射した状態を模式的に示す正面図である。
図5】本実施形態の回転ノズル装置の第一組の第一ノズルのウォータージェットの噴射角度と噴射軸線の周回状態を示す側面図及び正面図である。
図6】本実施形態の回転ノズル装置の第一組の第二ノズルのウォータージェットの噴射角度と噴射軸線の周回状態を示す側面図及び正面図である。
図7】本実施形態の回転ノズル装置の第一組の第二ノズルのウォータージェットの噴射角度を説明する側面図及び正面図である。
図8】比較例の回転ノズル装置の第一組の第二ノズルのウォータージェットの噴射角度を説明する側面図及び正面図である。
図9】本実施形態の回転ノズル装置の第一組の第三ノズルのウォータージェットの噴射角度と噴射軸線の周回状態を示す側面図及び正面図である。
図10】本実施形態の回転ノズル装置の第一組の第三ノズルのウォータージェットの噴射角度を説明する側面図及び正面図である。
図11】本実施形態の回転ノズル装置の第一組の各ノズルから噴射されたウォータージェットによる付着物の除去過程を示す概略側面図である。
図12】本実施形態の回転ノズル装置の第一組の各ノズルから噴射されたウォータージェットによる付着物の除去過程を示す概略側面図である。
図13】本実施形態の回転ノズル装置の第一組の各ノズルから噴射されたウォータージェットによる付着物の除去過程を示す概略側面図である。
図14】本実施形態の回転ノズル装置の第一組の各ノズルから噴射されたウォータージェットによる付着物の除去過程を示す概略側面図である。
図15】本実施形態の回転ノズル装置の第二組の第一ノズルのウォータージェットの噴射角度と噴射軸線の周回状態を示す側面図及び正面図である。
図16】本実施形態の回転ノズル装置の第二組の第二ノズルのウォータージェットの噴射角度と噴射軸線の周回状態を示す側面図及び正面図である。
図17】本実施形態の回転ノズル装置の第二組の第二ノズルのウォータージェットの噴射角度を説明する側面図及び正面図である。
図18】本実施形態の回転ノズル装置の第二組の第三ノズルのウォータージェットの噴射角度と噴射軸線の周回状態を示す側面図及び正面図である。
図19】本実施形態の回転ノズル装置の第二組の第三ノズルのウォータージェットの噴射角度を説明する側面図及び正面図である。
図20】本実施形態の回転ノズル装置の第二組の各ノズルから噴射されたウォータージェットによる付着物の除去過程を示す概略側面図である。
図21】本実施形態の回転ノズル装置の第二組の各ノズルから噴射されたウォータージェットによる付着物の除去過程を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、本実施形態の回転ノズル装置10は、高圧水Wを導く導通管12の先端にロータリージョイント13を介して回転自在に設けられたノズルヘッド11と、このノズルヘッド11の先端に傾斜して設けられ、高圧水Wを噴射可能な複数のノズルとから構成されている。ノズルヘッド11の内部には、各ノズルの噴射口に連通する高圧水Wの流路が形成されており、このノズルヘッド11の流路が、ロータリージョイント13の内部流路を介して導通管12の導通流路と連通している。このことで、導通管12により導かれた高圧水Wが回転ノズル装置10の複数のノズルからそれぞれ、ウォータージェットとして噴射される。
【0017】
そして、本実施形態の回転ノズル装置10は、改めて後述するように、各ノズルから噴射されるウォータージェットの噴射軸線或いはその延長線が、回転自在に設けられたノズルヘッド11の回転軸心と交差せずに、ねじれの位置関係にあるため、各ノズルから噴射されるウォータージェットの噴射反力によって、ノズルヘッド11がその回転軸心まわりに従動回転し、各ノズルはこの回転軸心まわりに連続周回しながらウォータージェットを噴射する。
【0018】
なお、図1に示すように、導通管12の外周囲には、導通管12の長手方向に沿って計三枚の板状のガイド14が放射状に設けられており、付着物除去作業時に、回転ノズル装置10を、ノズルヘッド11の回転軸心をパイプPの中心線に合わせてパイプP内へ導入し、連続回転するノズルヘッド11がパイプPの内壁面に接触するのを防いでいる。さらに、導通管12の外周囲には、三本一組の棒状のハンドル15が放射状に設けられており、これらハンドル15を操作することにより回転ノズル装置10をパイプP内で容易に前進後退させることができる。本実施形態では、導通管12の長手方向に亘って計三組のハンドル15が設けられている。
【0019】
図2に示すように、本実施形態の回転ノズル装置10のノズルヘッド11の先端には、ノズルヘッド11の回転軸心Aを取り囲むように計6つの噴射ノズルが設けられている。即ち、第一組を成す第一ノズル1、第二ノズル2及び第三ノズル3と、第二組を成す第一ノズル4、第二ノズル5及び第三ノズル6とが設けられている。
【0020】
そして、付着物除去作業時には、パイプ内の付着物の付着状況等に応じて、図3に示すように、第一組の第一ノズル1、第二ノズル2及び第三ノズル3からそれぞれ、ウォータージェット(J1、J2、J3)を噴射させるか、図4に示すように、第二組の第一ノズル4、第二ノズル5及び第三ノズル6からそれぞれ、ウォータージェット(J4、J5、J6)を噴射させるか、を適宜、選択する。なお、図3及び図4において図示していないが、第一組の各ノズル(1、2、3)を使用する場合には、第二組の各ノズル(4、5、6)の位置に予め栓を取り付けておき、第二組の各ノズル(4、5、6)を使用する場合には、第一組の各ノズル(1、2、3)の位置に予め栓を取り付けておく。
【0021】
次に、図5図10を参照しながら、本実施形態の回転ノズル装置10の第一組の各ノズル(1、2、3)のウォータージェット(J1、J2、J3)の噴射軸線とその噴射角度について説明する。
【0022】
図5に示すように、第一組の第一ノズル1のウォータージェットJ1の噴射軸線L1は、第一ノズル1の周回半径方向において外方へ傾斜角度α1だけ傾斜し、周回円周方向において傾斜角度β1だけ傾斜している。このようにウォータージェットJ1の噴射軸線L1を周回半径方向において外方へ傾斜させることによって、ウォータージェットJ1をパイプの内壁部側に存在する付着物に衝突させるようにしている。図5中、符号T1で指示するものは、ノズルヘッド11から所定距離D1だけ離れた付着物Sに対するウォータージェットJ1の衝突軌跡である。また、この噴射軸線L1を周回円周方向に傾斜させることによって、ウォータージェットJ1の噴射反力を利用してノズルヘッド11を回転軸心Aまわりに連続回転させるようにしている。本実施形態では、噴射軸線L1の傾斜角度α1を約10.8°、傾斜角度β1を約19.7°に設定しており、第一ノズル1のウォータージェットJ1の噴射角度θ1は約21°である。
【0023】
なお、ウォータージェットJ1の噴射軸線L1は、このように周回円周方向において傾斜しているので、噴射軸線L1と回転軸心Aとは、ねじれの位置関係にあり、噴射軸線L1の周回移動の軌跡は、図5の側面図に示すように、回転一葉双曲面を形成する。以下に説明する本実施形態の他のノズルの噴射軸線についても同様である。
【0024】
図6に示すように、第一組の第二ノズル2のウォータージェットJ2の噴射軸線L2は、第二ノズル2の周回半径方向において内方へ傾斜角度α2だけ傾斜し、周回円周方向において傾斜角度β2だけ傾斜している。このようにウォータージェットJ2の噴射軸線L2を周回半径方向において内方へ傾斜させることによって、ウォータージェットJ2を、ノズルヘッド11の回転軸心Aと交差させ、上記第一ノズル1のウォータージェットJ1の衝突軌跡T1よりもパイプ中央部側に存在する付着物に衝突させるようにしている。図6中、符号T2で指示するものが、ノズルヘッド11から所定距離D1だけ離れた付着物Sに対するウォータージェットJ2の衝突軌跡である。
【0025】
なお、本実施形態では、噴射軸線L2をその周回円周方向においても若干、傾斜させているので、噴射軸線L2は回転軸心Aと交差しないが、通常、ウォータージェットは、所定の口径を有するノズル噴射口から噴射され、更にその噴射圧により噴射方向に向かって噴流径が拡大してゆくため(図3参照)、第二ノズル2のウォータージェットJ2自体は、回転軸心Aと交差する。本実施形態では、噴射軸線L2の傾斜角度α2を約27°、傾斜角度β2を約1.6°に設定しており、第二ノズル2のウォータージェットJ2の噴射角度θ2は約27°である。
【0026】
また、図7に示すように、第二ノズル2のウォータージェットの噴射角度θ2は、第一ノズルのウォータージェットの噴射角度θ1よりも大きくされており、かつ、第一ノズルの噴射軸線L1とパイプPの内壁面との交点C1を含んでノズルヘッド11の回転軸心Aと直交する仮想平面を基準面RP1としたとき、第二ノズル2の噴射軸線L2がノズルヘッド11の回転軸心Aを越えて第二ノズル2とは反対側において基準面RP1と交わり、その交点C2が周回して描く周回軌跡RT2が、第一ノズル1の噴射軸線L1と基準面RP1との交点C1が周回して描く周回軌跡RT1よりも内側に位置するように設定されている。このように第二ノズル2のウォータージェットの噴射角度θ2が、第一ノズルのウォータージェットの噴射角度θ1よりも大きくされているので、図6に示すように、ウォータージェットJ2の衝突軌跡T2をウォータージェットJ1の衝突軌跡T1に近づけることができ、また、ノズルヘッド11から付着物Sまでの距離が大きくなるに従って、ウォータージェットJ2の衝突軌跡T2とウォータージェットJ1の衝突軌跡T1(パイプPの内壁面)との間隔がより小さくなる。
【0027】
これに対し、図8に示す比較例の回転ノズル装置50のように、第二ノズル2のウォータージェットの噴射角度θ2が第一ノズルのウォータージェットの噴射角度θ1と同じであると、第二ノズル2のウォータージェットJ2の周回軌跡RT2がウォータージェットJ1の周回軌跡RT1から離れ、ノズルヘッド11から所定距離だけ離れた付着物Sに対するウォータージェットJ2の衝突軌跡T2がウォータージェットJ1の衝突軌跡T1から離れてしまう。そして、ノズルヘッド11から付着物Sまでの距離が大きくなっても、ウォータージェットJ2の衝突軌跡T2とウォータージェットJ1の衝突軌跡T1との間隔は一定のままとなる。
【0028】
更にまた、本実施形態では、第二ノズル2の噴射口径が第一ノズル1の噴射口径よりも大きくされており、第二ノズル2のウォータージェットの噴射流量を第一ノズル1のウォータージェットの噴射流量よりも大きくしている。このことで、第一ノズル1のウォータージェットJIに比べ、噴射距離が長くなる第二ノズル2のウォータージェットJ2の付着物除去力を高めている。
【0029】
図9に示すように、第一組の第三ノズル3のウォータージェットJ3の噴射軸線L3は、第三ノズル3の周回半径方向において外方へ傾斜角度α3だけ傾斜し、周回円周方向において傾斜角度β3だけ傾斜している。このことで、ウォータージェットJ3を、上記第一ノズル1のウォータージェットJ1の衝突軌跡T1と、第二ノズル2のウォータージェットJ2の衝突軌跡T2との間に存在する付着物に衝突させるようにしている。図9中、符号T3で指示するものが、ノズルヘッド11から所定距離D1だけ離れた付着物Sに対するウォータージェットJ3の衝突軌跡である。本実施形態では、噴射軸線L3の傾斜角度α3を、噴射軸線L1の噴射角度α1(約10.8°)よりも小さい約0.8°に設定し、噴射軸線L3の傾斜角度β3を、噴射軸線L1の噴射角度β1(約19.7°)よりも小さい約16.6°に設定しており、第三ノズル3のウォータージェットJ3の噴射角度θ3は約16.6°である。
【0030】
図10に示すように、第三ノズル3のウォータージェットの噴射角度θ3は、第三ノズル3の噴射軸線L3と基準面RP1との交点C3が周回して描く周回軌跡RT3が、第一ノズルの噴射軸線L1と基準面RP1との交点C1が周回して描く周回軌跡RT1と、第二ノズルの噴射軸線L2と基準面RP1との交点C2が周回して描く周回軌跡RT2との間に位置するように設定されている。
【0031】
次に、これら第一組の第一ノズル1、第二ノズル2及び第三ノズル3のウォータージェット(J1、J2、J3)によるパイプ内の付着物除去過程について、図11図14を参照しながら説明する。ここでは、燃焼排ガスのジェットバブリング式脱硫装置に使用される塩化ビニル製パイプ(内径107mm、肉厚3mm)内の付着物(石膏等)を除去する例について説明する。
【0032】
まず、図11に示すように、付着部Sにより閉鎖したパイプP内に本実施形態の回転ノズル装置10を、ノズルヘッド11の回転軸心AをパイプPの中心線に合わせて導入し、第一組の第一ノズル1、第二ノズル2及び第三ノズル3からそれぞれ、ウォータージェット(J1、J2、J3)を同時に噴射させる。第一ノズル1のウォータージェットJ1の噴射流量は毎分5リットル、第二ノズル2のウォータージェットJ2の噴射流量は毎分12リットル、第三ノズル3のウォータージェットJ3の噴射流量は毎分13リットルである。これらの噴射によって、各ウォータージェット(J1、J2、J3)をその噴射反力により回転軸心Aまわりに周回させながら、ノズルヘッド11から所要距離D2(約100mm)だけ離れた付着物Sに衝突させる。即ち、第一ノズル1のウォータージェットJ1がパイプPの内壁部側に存在する付着物に衝突する位置まで、回転ノズル装置10をパイプPに沿って前進させる。
【0033】
第一ノズル1のウォータージェットJ1がパイプPの内壁部側に存在する付着物に衝突したとき、第二ノズル2のウォータージェットJ2は、回転軸心Aと交差した後、ウォータージェットJ1の衝突軌跡T1よりもパイプ中央部側に存在する付着物に衝突し、第三ノズル3のウォータージェットJ3は、ウォータージェットJ1の衝突軌跡T1とウォータージェットJ2の衝突軌跡T2との間に存在する付着物に衝突する。こうして、互いに衝突軌跡(T1、T2、T3)が近接した計三条のウォータージェット(J1、J2、J3)の協働作用によって、主にパイプPの内壁部寄りの付着物が集中的に除去される。
【0034】
次いで、図12に示すように、回転ノズル装置10をパイプP内で適宜、前進させることにより、これらウォータージェット(J1、J2、J3)による付着物Sの除去を進めてゆく。このとき、第二ノズル2のウォータージェットJ2の衝突軌跡T2よりもパイプ中央部側に存在する付着物に対しては、いずれのウォータージェットも直接、衝突しないため、パイプ中央部側の付着物は、略円錐台形状に残ることになる。
【0035】
しかしながら、回転ノズル装置10を更に前進させれば、図13に示すように、第二ノズル2のウォータージェットJ2と回転軸心Aとの交差部が、パイプ中央部側に残存する略円錐形状の付着物に至ることになり、このとき、ウォータージェットJ2が略円錐形状の付着物の鋭角を成す先端部分に対し至近距離で衝突することになり、パイプPの中央部側に残存する付着物が効率的に除去されるのである。こうして、パイプP内の付着物Sがすべて除去される。
【0036】
なお、パイプP内の付着物Sの付着分布状態として、図14に示すように、パイプPの中央部側に存在する付着物が、パイプPの内壁部側に存在する付着物よりも、ノズルヘッド11からの距離が大きい場合がある。このとき、本実施形態の回転ノズル装置10によれば、第二ノズル2のウォータージェットJ2の衝突軌跡T2とノズルヘッド11との距離D3が、第一ノズル1のウォータージェットJ1の衝突軌跡T1とノズルヘッド11との距離D2よりも大きくなるため、ウォータージェットJ2の衝突軌跡T2は、パイプPの内壁面に更に近づくことになり、パイプPの内壁部寄りの付着物をより集中的に除去することができる。ウォータージェットJ2の衝突軌跡T2とノズルヘッド11との距離が大きくなると、その分、ウォータージェットJ2の噴射距離が長くなり、ウォータージェットJ2の付着物除去力が弱まるが、本実施形態では、第二ノズル2のウォータージェットの噴射流量を第一ノズル1のウォータージェットの噴射流量よりも大きくしているので、必要な付着物除去力を維持することができる。このようにパイプPの内壁部寄りの付着物の除去を進めることによって、パイプP内の付着物Sは、上述した図11に示すような比較的に平坦な付着分布状態となり、その後の除去作業を同様に進めることができる。
【0037】
このように本実施形態の回転ノズル装置10によれば、第二ノズル2のウォータージェットJ2の噴射軸線L2をその周回半径方向において内方へ傾斜させてウォータージェットJ2をノズルヘッド11の回転軸心Aと交差させるようにしているので、たとえパイプPが付着物Sにより完全に閉鎖している場合であっても、パイプP内の付着物Sを効率的に除去することができる。
【0038】
また、本実施形態の回転ノズル装置10によれば、第三ノズル3のウォータージェットJ3を、第一ノズル1のウォータージェットJ1の衝突軌跡T1と、第二ノズル2のウォータージェットJ2の衝突軌跡T2との間に存在する付着物に衝突させるようにしているので、より効率的にパイプP内の付着物Sを除去することができる。
【0039】
次に、図15図21を参照しながら、本実施形態の回転ノズル装置10の第二組の各ノズル(4、5、6)のウォータージェット(J4、J5、J6)の噴射軸線と、これら第二組のウォータージェットによるパイプ内の付着物除去過程とについて説明する。
【0040】
図15に示すように、第二組の第一ノズル4のウォータージェットJ4の噴射軸線L4は、第一ノズル4の周回半径方向において外方へ傾斜角度α4だけ傾斜し、周回円周方向において傾斜角度β4だけ傾斜している。このようにウォータージェットJ4の噴射軸線L4を周回半径方向において外方へ傾斜させることによって、上述した第一組の第一ノズル1と同様に、ウォータージェットJ4をパイプの内壁部側に存在する付着物に衝突させるようにしている。図15中、符号T4で指示するものは、ノズルヘッド11から所定距離D4だけ離れた付着物Sに対するウォータージェットJ4の衝突軌跡である。また、この噴射軸線L4を周回円周方向に傾斜させているので、ウォータージェットJ4の噴射反力によりノズルヘッド11を回転軸心Aまわりに連続回転させることができる。本実施形態では、噴射軸線L4の傾斜角度α4を、上述した第一組の第一ノズル1の噴射軸線L1の噴射角度α1(約10.8°)よりも大きい約24.6°に設定し、噴射軸線L4の傾斜角度β4を、噴射軸線L1の噴射角度β1(約19.7°)よりも大きい約23.5°に設定しており、この第一ノズル4のウォータージェットJ4の噴射角度θ4は、上述した第一組の第一ノズル1のウォータージェットJ1の噴射角度θ1(約21°)よりも大きい約32°である。
【0041】
図16に示すように、第二組の第二ノズル5のウォータージェットJ5の噴射軸線L5は、第二ノズル5の周回半径方向において内方へ傾斜角度α5だけ傾斜し、周回円周方向において傾斜角度β5だけ傾斜している。このようにウォータージェットJ5の噴射軸線L5を周回半径方向において内方へ傾斜させているので、上述した第一組の第二ノズル2と同様に、ウォータージェットJ5を、ノズルヘッド11の回転軸心Aと交差させ、第一ノズル4のウォータージェットJ4の衝突軌跡T4よりパイプ中央部側に存在する付着物に衝突させることができる。図16中、符号T5で指示するものがノズルヘッド11から所定距離D4だけ離れた付着物Sに対するウォータージェットJ5の衝突軌跡である。
【0042】
なお、第二組の第二ノズル5においても、その噴射軸線L5を周回円周方向において傾斜させているので、噴射軸線L5は回転軸心Aと交差しないが、ウォータージェットJ5自体はノズルヘッド11の回転軸心Aと交差する(図4参照)。本実施形態では、噴射軸線L5の傾斜角度α5を、上述した第一組の第二ノズル2の噴射軸線L2の噴射角度α2(約27°)よりも大きい約37.5°に設定し、噴射軸線L5の傾斜角度β5を、噴射軸線L2の噴射角度β2(約1.6°)よりも大きい約3.3°に設定しており、この第二ノズル5のウォータージェットJ5の噴射角度θ5は、上述した第一組の第一ノズル2のウォータージェットJ2の噴射角度θ2(約27°)よりも大きい約37°である。
【0043】
また、図17に示すように、第二ノズル5のウォータージェットの噴射角度θ5は、第一ノズルのウォータージェットの噴射角度θ4よりも大きくされており、かつ、第一ノズルの噴射軸線L4とパイプPの内壁面との交点C4を含んでノズルヘッド11の回転軸心Aと直交する仮想平面を基準面RP2としたとき、第二ノズル5の噴射軸線L5がノズルヘッド11の回転軸心Aを越えて第二ノズル5とは反対側において基準面RP2と交わり、その交点C5が周回して描く周回軌跡RT5が、第一ノズル4の噴射軸線L4と基準面RP2との交点C4が周回して描く周回軌跡RT4よりも内側に位置するように設定されている。
【0044】
図18に示すように、第二組の第三ノズル6のウォータージェットJ6の噴射軸線L6は、第三ノズル6の周回半径方向において外方へ傾斜角度α6だけ傾斜し、周回円周方向において傾斜角度β6だけ傾斜している。このことで、ウォータージェットJ6を、上記第一ノズル4のウォータージェットJ4の衝突軌跡T4と、第二ノズル5のウォータージェットJ5の衝突軌跡T5との間に存在する付着物に衝突させるようにしている。図18中、符号T6で指示するものがノズルヘッド11から所定距離D4だけ離れた付着物Sに対するウォータージェットJ6の衝突軌跡である。本実施形態では、噴射軸線L6の傾斜角度α6を、上述した第一組の第三ノズル3の噴射軸線L3の噴射角度α3(約0.8°)よりも大きい約14°に設定し、噴射軸線L6の傾斜角度β6を、噴射軸線L3の噴射角度β3(約16.6°)よりも大きい約17.7°に設定しており、この第三ノズル6のウォータージェットJ6の噴射角度θ6は、上述した第一組の第一ノズル3のウォータージェットJ3の噴射角度θ3(約16.6°)よりも大きい約22°である。
【0045】
図19に示すように、第三ノズル6のウォータージェットの噴射角度θ6は、第三ノズル6の噴射軸線L6と基準面RP2との交点C6が周回して描く周回軌跡RT6が、第一ノズルの噴射軸線L4と基準面RP2との交点C4が周回して描く周回軌跡RT4と、第二ノズルの噴射軸線L5と基準面RP2との交点C5が周回して描く周回軌跡RT5との間に位置するように設定されている。
【0046】
図20に示すように、本実施形態の回転ノズル装置10をパイプP内に導入し、これら第二組の第一ノズル4、第二ノズル5及び第三ノズル6からそれぞれ、ウォータージェット(J4、J5、J6)を噴射させる。第一ノズル4のウォータージェットJ4の噴射流量は毎分5リットル、第二ノズル5のウォータージェットJ5の噴射流量は毎分12リットル、第三ノズル6のウォータージェットJ6の噴射流量は毎分13リットルである。これらの噴射によって、各ウォータージェット(J4、J5、J6)をその噴射反力により回転軸心Aまわりに連続周回させながら、ノズルヘッド11から所要距離D5(約50mm)だけ離れた付着物Sに衝突させる。即ち、第一ノズル4のウォータージェットJ4がパイプPの内壁部側に存在する付着物に衝突する位置まで、回転ノズル装置10をパイプPに沿って前進させる。
【0047】
第一ノズル4のウォータージェットJ4がパイプPの内壁部側に存在する付着物に衝突したとき、第二ノズル5のウォータージェットJ5は、回転軸心Aと交差した後、ウォータージェットJ4の衝突軌跡T4よりパイプ中央部側に存在する付着物に衝突し、そして、第三ノズル6のウォータージェットJ6は、ウォータージェットJ4の衝突軌跡T4とウォータージェットJ5の衝突軌跡T5との間に存在する付着物に衝突する。こうして、互いに衝突軌跡(T4、T5、T6)が近接した計三条のウォータージェット(J4、J5、J6)の協働作用によって、主にパイプPの内壁部寄りの付着物が集中的に除去される。
【0048】
そして、図21に示すように、パイプP内で回転ノズル装置10を更に前進させることによって、第二ノズル5のウォータージェットJ5と回転軸心Aとの交差部が、パイプ中央部側に残存する略円錐形状の付着物に至ることになり、ウォータージェットJ5が略円錐形状の付着物の先端部分に対し至近距離で衝突し、パイプPの中央部側に残存する付着物が効率的に除去される。こうして、パイプP内の付着物Sがすべて除去される。
【0049】
なお、本実施形態では、上述したように第二組の各ノズル(4、5、6)のウォータージェットの噴射角度(θ4、θ5、θ6)をそれぞれ、第一組の各ノズル(1、2、3)のウォータージェットの噴射角度(θ1、θ2、θ3)よりも大きく設定しているので、図20及び図21に示すように、付着物除去作業時において、第二組の各ノズル(4、5、6)のウォータージェット(J4、J5、J6)を、第一組の各ノズル(1、2、3)のウォータージェット(J1、J2、J3)と比べ、より短距離で付着物Sに衝突させることができ、各ウォータージェットの噴射圧をより有効に付着物除去に利用することができる。したがって、比較的に低噴射圧のウォータージェットによる付着物除去が可能となる。
【0050】
他方、第二組の各ノズル(4、5、6)のウォータージェットの噴射角度(θ4、θ5、θ6)がより大きいため、特に第一ノズル4のウォータージェットJ4がパイプPの内壁面に対し、より大きな角度で衝突することにもなるため、パイプP自体を損傷する恐れも生ずる。本実施形態の回転ノズル装置10によれば、例えばパイプPの材質や厚み、付着物の物性や付着状況等に応じて、第一組のノズルと第二組のノズルとを適宜、選択して使用することができる。
【0051】
以上、本実施形態の回転ノズル装置10について説明したが、本発明は他の実施形態でも実施することができる。
【0052】
例えば、上記実施形態では、ノズルヘッド11の先端に、第一組を成す第一ノズル1、第二ノズル2及び第三ノズル3と、第二組を成す第一ノズル4、第二ノズル5及び第三ノズル6と、を設けているが、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば、第一組の各ノズルのみ設けるようにしてもよく、また、三組以上のノズルを設けてもよい。また、第一ノズル及び第二ノズルのみから組を構成し、この組を単数または複数設けてもよい。各ノズルのウォータージェットの噴射角度については勿論のこと、各ノズルの個数やその組み合わせ等は、例えばノズルヘッドの大きさ、回転ノズル装置全体の重量、パイプの内径や材質、付着物の物性や付着状況等に応じて種々の設計変更が可能である。
【0053】
また、上記実施形態では、第一ノズル(1、4)、第二ノズル(2、5)及び第三ノズル(3、6)のウォータージェットの噴射軸線(L1~L6)の全てについて、各ノズルの周回円周方向において傾斜させているが、本発明はこれに限定されるものでなく、第一ノズル(1、4)及び第二ノズル(2、5)のウォータージェットの噴射軸線については、周回円周方向において傾斜させず、第三ノズル(3、6)のウォータージェットの噴射軸線のみ、周回円周方向において傾斜させるようにして、この第三ノズル(3、6)のウォータージェットの噴射反力のみで第一ノズル(1、4)、第二ノズル(2、5)及び第三ノズル(3、6)をノズルヘッド11の回転軸心Aまわりに周回させてもよい。
【0054】
また、ノズルヘッド11の先端に、各ノズルのウォータージェットが通過可能な貫通孔を有するヘッドカバーを着脱自在に設けることにより、付着物除去作業時に、各ノズルがパイプ内の付着物と接触するのを防ぐようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、外周囲にガイドを設けた高圧水の導通管の先端に、回転ノズル装置10を回転自在に設け、ジェットバブリング式脱硫装置に多数本、鉛直方向に設けられた吹込パイプ内の付着物を除去する例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、下水道管等の水平方向に設けられたパイプ内を車輪走行する走行装置の先端に、本実施形態の回転ノズル装置10を回転可能に設けてもよい。
【0056】
本発明は、その他、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施してもよく、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施してもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 回転ノズル装置
11 ノズルヘッド
1、4 第一ノズル
2、5 第二ノズル
3、6 第三ノズル
J1~J6(各ノズルから噴射される)ウォータージェット
L1~L6(各ウォータージェットの)噴射軸線
θ1~θ6(各ウォータージェットの)噴射角度
α1~α6(各噴射軸線の周回半径方向における)傾斜角度
β1~β6(各噴射軸線の周回円周方向における)傾斜角度
T1~T6(各ウォータージェットの)衝突軌跡
RP1、RP2 基準面
RT1~RT6 周回軌跡
W 高圧水
P パイプ
S 付着物

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21