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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】薬剤フィーダ
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
A61J3/00 310E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021035522
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022135599
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-11-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】大村 義人
(72)【発明者】
【氏名】大ヶ谷 俊治
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特許第6736075(JP,B1)
【文献】特開2020-025620(JP,A)
【文献】特開2017-164560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦線を中心として軸回転可能な外側の環状回転体と、前記縦線から傾いた傾斜線を中心として軸回転可能な状態で前記環状回転体の内側に装備されて前記環状回転体の中空を塞ぐ傾斜回転体と、前記傾斜回転体の回転によってその上から前記環状回転体の上端周縁部の上に運ばれた固形の薬剤を前記環状回転体の回転時に整列させる規制機構と、前記環状回転体の回転制御と前記傾斜回転体の回転制御とを行う制御部と、前記環状回転体によって落下排出口へ運ばれて落下した薬剤を検出する薬剤落下検出手段とを備え、前記制御部が前記回転制御を行いながら前記薬剤落下検出手段の薬剤検出を待って所定時間を超える時間切れになると収容薬剤が無くなったと判定するようになっている薬剤フィーダにおいて、前記傾斜回転体が、前記傾斜線を中心として正回転も逆回転もしうるものであり、前記制御部が、前記時間切れに先だって前記傾斜回転体に振動に対応した小さな正回転と前記正回転より小さ逆回転とを交互に行わせる制御を行うことで前記傾斜回転体を振動させつつ回転させる加振回転制御を行うようになっていることを特徴とする薬剤フィーダ。
【請求項2】
前記制御部が、前記加振回転制御の実行後に前記傾斜回転体を高速で逆回転させる振出逆転制御を行うようになっていることを特徴とする請求項1に記載された薬剤フィーダ。
【請求項3】
前記制御部が、前記振出逆転制御の実行後に前記傾斜回転体を高速で正回転させる振出正転制御を行うようになっていることを特徴とする請求項2に記載の薬剤フィーダ。
【請求項4】
前記規制機構が、前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤搬送経路の横幅を規制するものであって前記横幅の規制量を前記制御部の制御に応じて加減するようになっており、前記制御部が、前記加振回転制御の実行に先だって、前記薬剤落下検出手段での薬剤検出間隔が正常時間隔より大きな設定値の渋滞時間隔に達すると、前記規制機構を制御して前記横幅を拡大させるようになっている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載された薬剤フィーダ。
【請求項5】
前記制御部が前記規制機構を制御して前記横幅を拡大させた後に前記薬剤落下検出手段が薬剤落下を検出すると、それに応じて前記制御部が前記規制機構を制御して前記横幅を拡大前に戻すようになっている、ことを特徴とする請求項4記載の薬剤フィーダ。
【請求項6】
前記制御部が前記横幅の拡大を段階的に行うようになっていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載された薬剤フィーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病院や薬局等で行われる調剤を自動化するために、錠剤やアンプル剤といった粒状固形物の薬剤を自動供給するようになった薬剤フィーダに関し、詳しくは、形状の同じ多数の薬剤をランダム収容するとともに、それらの薬剤を回転体で整列させることで、それらの薬剤を一つずつ送り出す逐次送出・順次排出を行う薬剤フィーダに関し、更に詳しくは、収容薬剤の排出不能を排出待ちの時間切れ(タイムアウト,タイムオーバー)にて判定する薬剤排出動作制御における判定機能の強化に関する。
【背景技術】
【0002】
縦線を中心として軸回転可能な外側の環状回転体と、前記縦線から傾いた傾斜線を中心として軸回転可能な状態で前記環状回転体の内側に装備されて前記環状回転体の中空を塞ぐ傾斜回転体と、前記傾斜回転体の回転によってその上から前記環状回転体の上端周縁部の上に運ばれた固形の薬剤を前記環状回転体の回転時に整列させる規制機構と、前記環状回転体の回転制御と前記傾斜回転体の回転制御とを行う制御部と、前記環状回転体によって落下排出口へ運ばれて落下した薬剤を検出する薬剤落下検出手段とを備え、前記規制部材が前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤搬送経路の横幅を規制するようになっている薬剤フィーダが実用化されている(特許文献1~3参照)。
このような薬剤フィーダでは、回転体の中に固定の整流ガイドを設ける必要が無くなるとともに種々の形状やサイズの薬剤に対する共用範囲が広がっている。
【0003】
また(特許文献2~4参照)、環状回転体の上端周縁部の上面に溝や彫り込みを形成して薬剤搬送能力を高めたり、薬剤を整列させるための規制機構について整列対象の薬剤に対する幅規制機能に加えて高さ規制機能も持たせるとともに、薬剤搬送経路の上方に作用部を吊り下げる仕分け機構をも設けて薬剤の解し手段の多様化を企図したり、といった改良を重ねたことにより、固くて丈夫な薬剤から脆い薬剤まで、更には板状といった転がり難い薬剤から球状や紡錘状といった転がり易い薬剤まで、環状回転体の上端周縁部の薬剤搬送経路で固形薬剤を無理なく一列に整列させることができるようになっている。
【0004】
さらに(特許文献2~4参照)、コントローラ(制御部)が行う回転制御についても、低速回転から始まって高速回転に移行することや、最初の落下薬剤の検出時に計測した薬剤検出時間長に基づいて薬剤サイズを推定して回転速度を調整すること、指定された総排出数と計数した排出済み個数とから算出した残数が少なくなると回転速度を落とすこと、薬剤排出完了後に不所望な過剰落下の防止のため逆回転(後退側の回転)を行わせることなど、いろいろな工夫が試みられているが、薬剤フィーダ内の全薬剤の排出が完了して薬剤フィーダが空になったことの検出は、部材追加のコストや配置に係る制約から、薬剤落下検出手段による薬剤検出待ち時間が所定時間を超えたときの時間切れに委ねられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-108277号公報
【文献】特許6736074号公報
【文献】特許6736075号公報
【文献】特願2020-012424号(出願)
【文献】特願2020-214571号(出願)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
もっとも、そのような薬剤検出時の時間切れを以て薬剤フィーダの排出完了とする制御手法には、逐次薬剤排出中に規制機構の所で稀とはいえ薬剤渋滞が発生して薬剤の順次排出機能が大きく損なわれると、薬剤落下検出手段による落下薬剤の検出が途絶えてしまい、それに起因した薬剤排出検出の不所望な時間切れによって、フィーダ内の全薬剤の排出が完了して薬剤フィーダが空になったとの誤判定を招くことにもなりかねない、という不満もある。これについては(特許文献5参照)、薬剤搬送経路の横幅を徐々に広げることで渋滞を時間切れ前に緩和・解消するといった対策が講じられている。
【0007】
しかしながら、薬剤渋滞発生時の状況とは異なり、傾斜回転体や環状回転体といった回転体の中の残留薬剤が一個だけになった状況下や、例え複数個が残っていても少数にとどまり相互影響が生じない程に薬剤がばらけている状況下では、静電気による引き付け力や湿気などによる付着力さらには表面の微細な凹凸などによる引っ掛かりといった物体表面同士の相互作用などによって、例えその作用が僅少なものであったとしても、薬剤が傾斜回転体の上にとどまり続けたり、環状回転体に乗った薬剤であっても排出ガイドやその先端の搬送面ガイド等の所に止まり続けることが、全く無いとは言い切れない。
【0008】
しかも、薬剤毎に専用容器のカセットを割り当てるカセット着脱式の薬剤フィーダと異なり、内外二重の回転体を組み込んだ本願対象の薬剤フィーダは、容器部相当の傾斜回転体や環状回転体を通常使用時に着脱することは想定されておらず、各種の薬剤に共用されるため、薬剤が残留しているのに収容薬剤が無くなって薬剤フィーダが空になったと誤って判定することは的確に回避することが求められる。
そこで、残留薬剤が僅かになったときでも薬剤排出検出の時間切れまでには残留薬剤が排出されるように、薬剤の停留要因を低減や解消することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の薬剤フィーダは(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、縦線を中心として軸回転可能な外側の環状回転体と、前記縦線から傾いた傾斜線を中心として軸回転可能な状態で前記環状回転体の内側に装備されて前記環状回転体の中空を塞ぐ傾斜回転体と、前記傾斜回転体の回転によってその上から前記環状回転体の上端周縁部の上に運ばれた固形の薬剤を前記環状回転体の回転時に整列させる規制機構と、前記環状回転体の回転制御と前記傾斜回転体の回転制御とを行う制御部と、前記環状回転体によって落下排出口へ運ばれて落下した薬剤を検出する薬剤落下検出手段とを備え、前記制御部が前記回転制御を行いながら前記薬剤落下検出手段の薬剤検出を待って所定時間を超える時間切れになると収容薬剤が無くなったと判定するようになっている薬剤フィーダにおいて、前記傾斜回転体が、前記傾斜線を中心として正回転も逆回転もしうるものであり、前記制御部が、前記時間切れに先だって前記傾斜回転体に振動に対応した小さな正回転と前記正回転より小さな逆回転とを交互に行わせる制御を行うことで前記傾斜回転体を振動させつつ回転させる加振回転制御を行うようになっていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の薬剤フィーダは(解決手段2)、上記解決手段1の薬剤フィーダであって、前記加振回転制御が、振動に対応した小さな正回転(進行側の回転)とそれよりも小さな逆回転(後退側の回転)との繰り返しによって実行されるようになっていることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の薬剤フィーダは(解決手段3)、上記解決手段1,2の薬剤フィーダであって、前記制御部が、前記加振回転制御の実行後に前記傾斜回転体を高速で逆回転させる振出逆転制御を行うようになっていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の薬剤フィーダは(解決手段4)、上記解決手段3の薬剤フィーダであって、前記制御部が、前記振出逆転制御の実行後に前記傾斜回転体を高速で正回転させる振出正転制御を行うようになっていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の薬剤フィーダは(解決手段5)、上記解決手段1~4の薬剤フィーダであって、前記規制機構が、前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤搬送経路の横幅を規制するものであって前記横幅の規制量を前記制御部の制御に応じて加減するようになっており、前記制御部が、前記加振回転制御の実行に先だって、前記薬剤落下検出手段での薬剤検出間隔が正常時間隔より大きな設定値の渋滞時間隔に達すると、前記規制機構を制御して前記横幅を拡大させるようになっている、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の薬剤フィーダは(解決手段6)、上記解決手段5の薬剤フィーダであって、前記制御部が前記規制機構を制御して前記横幅を拡大させた後に前記薬剤落下検出手段が薬剤落下を検出すると、それに応じて前記制御部が前記規制機構を制御して前記横幅を拡大前に戻すようになっている、ことを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の薬剤フィーダは(解決手段7)、上記解決手段5,6の薬剤フィーダであって、前記制御部が前記横幅の拡大を段階的に行うようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このような本発明の薬剤フィーダにあっては(解決手段1)、薬剤を傾斜回転体の上から環状回転体の上へ移載するために傾斜回転体を回転させるに際して時間切れが近づくと回転に振動を重畳させるようにしたことにより、傾斜回転体上の薬剤が少なくなって薬剤を傾斜回転体の上にとどめようとする付着力等の作用が相対的に利きやすくなったときでも、その作用が振動によって抑制や解消されるので、傾斜回転体に係る不所望な薬剤残留を回避することができる。また、傾斜回転体の回転に重畳した振動は上下方向の振動成分も含んでおり、その振動が環状回転体に伝達され更には支持部材や排出ガイド等にも伝達されるので、環状回転体等についても不所望な薬剤残留を回避することができる。
したがって、この発明によれば、残留薬剤が僅かになったときでも薬剤排出検出の時間切れ前には薬剤が排出されるように薬剤の停留要因を低減や解消することができる。
【0017】
また、本発明の薬剤フィーダにあっては(解決手段2)、振動に対応した小さな正回転すなわち進行側の回転とそれよりも小さな逆回転すなわち後退側の回転との繰り返しによって加振回転制御が実行されるようにしたことにより、傾斜回転体の回転駆動モータに双方向回転可能なものを選定すれば、加振モータ等の増設無しで容易に実現することができる。
【0018】
さらに、本発明の薬剤フィーダにあっては(解決手段3,4)、加振回転制御にて薬剤の付着力等が抑制や解消されたところへ更に傾斜回転体の高速逆回転(速い後退側の回転)や高速正回転(速い進行側の回転)を間髪を入れずに追加することで、不所望な付着力等が回復する前に、傾斜回転体上の残留薬剤が速やかに環状回転体の上へ乗り移ることになる。
そのため、先行の加振回転制御による薬剤停留要因の低減効果や解消効果を無駄にすることなく的確に薬剤残留を回避することができる。
【0019】
また、本発明の薬剤フィーダにあっては(解決手段5,6)、環状回転体によって落下排出口へ運ばれて落下した薬剤に係る薬剤検出間隔が、正常な薬剤排出動作の下では既知の正常時間隔(正常時の時間間隔)かそれに近い時間になるところ、それより長い渋滞時間隔(渋滞時の時間間隔)に達したときには、環状回転体の上端周縁部の薬剤搬送経路において不所望な薬剤渋滞状態が発生した可能性が高いとして、規制機構が作動して薬剤搬送経路の横幅が広げられるので、規制機構の所を薬剤が通過することへの規制が一時的に緩和される。
【0020】
このように、多数の薬剤が規制部材の所で詰まって搬送方向に連なる薬剤渋滞状態が発生したときには、そのことが排出遅れとして検出されて、規制が緩和されるので、渋滞の先頭の薬剤が前進し易くなる。
そして、先頭の薬剤の僅かな動きが後続の薬剤同士の押し合い状態の緩和を招き、薬剤の連なり状態が変化するので、薬剤渋滞状態の解消に役立つ。しかも、規制機構を少し追加動作させることで簡便に実施することができるうえ、不所望な薬剤同士の押し合いが緩和されるので、薬剤が脆いものであってもそれを毀損するおそれは無い。
したがって、この発明によれば、脆い薬剤でも毀損しない範囲で且つ簡便な手法で規制機構の幅規制機能が薬剤渋滞解消にも役立つようにすることができる。
【0021】
また、本発明の薬剤フィーダにあっては(解決手段7)、薬剤搬送経路の横幅の緩和いいかえると薬剤搬送経路の横幅の拡大が連続的でなく段階的に行われるようにしたことにより、規制対象になった薬剤が間欠的に横移動することから、移動時には薬剤同士の摩擦が抑制されるとともに薬剤同士の押し合い状態も緩和され、移動と移動の合間には薬剤の整列状態が整えられるので、薬剤への衝撃を抑えて無理なく而も効率良く薬剤の渋滞状態を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例1について、薬剤フィーダの全体構造を示し、(a)が外観斜視図、(b)が縦断正面図である。
図2】薬剤フィーダの傾斜回転体の構造を示し(a)が全体の外観斜視図、(b)が傾斜回転体の円盤部に係る三面図である。
図3】薬剤フィーダの環状回転体の構造を示し、(a)が全体の縦断面図、(b)がその一部の拡大図、(c)が傾斜状態を示す縦断面図である。
図4】(a)が環状回転体の上端周縁部の平面図、(b)がその一部の拡大図である。
図5】薬剤フィーダの仕分け機構と規制機構の構造を示し、(a)が薬剤を仕分けしている仕分け機構などに係る外観斜視図であり、(b)が仕分け機構の中段の作用部の斜交当接面による仕分け状況をしめす外観斜視図である。
図6】薬剤フィーダの規制機構の構造と制御部の概要構成とを示し、(a)が型置場に薬剤を置いたときの規制機構の平面図、(b)が第1規制部材に係る平面図と端面図であり、(c)が制御部の機能ブロック図である。
図7】薬剤排出動作制御機能の略半分を示すフローチャートである。
図8】薬剤排出動作制御機能の残部を示すフローチャートである。
図9】薬剤フィーダに薬剤が投入された直後の状態を示し、(a)が平面図、(b)が縦断正面図である。
図10】薬剤が順調に整列させられて順に排出されているところの動作状態を示し、(a)が平面図、(b)が縦断正面図である。
図11】薬剤が規制部材のところで渋滞しているところの動作状態を示し、(a)が平面図、(b)が縦断正面図である。
図12】薬剤搬送経路の拡幅によって薬剤の渋滞が解消されたところの動作状態を示し、(a)が平面図、(b)が縦断正面図である。
図13】薬剤が一個だけ排出されずに残っているところの動作状態を示し、(a)が平面図、(b)が縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
このような本発明の薬剤フィーダについて、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1により説明する。
図1図13に示した実施例1は、上述した解決手段1~7(出願当初の請求項1~7)を総て具現化したものである。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ボルト等の締結具や,モータドライバ等の電気回路などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0024】
本発明の薬剤フィーダの実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、薬剤フィーダ10の全体構造を示し、(a)が外観斜視図、(b)が縦断正面図である。
また、図2は、傾斜回転体30の構造を示し(a)が外観斜視図、(b)が円盤部30aの三面図である。
さらに、図3図4は、環状回転体20の構造を示し、図3(a)が全体の縦断面図、図3(b)がその一部の拡大図、図3(c)も全体の縦断面図、図4(a)が環状回転体20の上端周縁部23の平面図、図4(b)がその一部の拡大図である。
【0025】
また、図5は、仕分け機構60と規制機構70の構造を示し、(a)が薬剤5,5,5b,5cを仕分けしている仕分け機構60などに係る外観斜視図であり、(b)が仕分け機構60の中段の作用部62bの斜交当接面による仕分け状況をしめす外観斜視図である。
また、図6(a),(b)は、規制機構70の構造を示し、(a)が規制機構70の要部を簡略表示した平面図、(b)が第1規制部材71に係る平面図と端面図である。
また、図6(c)は、コントローラ80(制御部)の機能ブロック図であり、図7図8は、コントローラ80の薬剤排出動作制御機能を示すフローチャートである。
【0026】
薬剤フィーダ10は(図1参照)、二重回転タイプのものであり、筐体と、その最上部に位置しており中央部分が略円形に刳り抜かれて中空になっている周壁11と、その内周壁面11a即ち周壁11の中空の内周の壁面に上端部が遊嵌された状態で設置されている又は周壁11の中空の直下に設置されている環状回転体20と、この環状回転体20の中空内に設置された傾斜回転体30と、その外側の環状回転体20を軸回転可能に支持する支承機構40と、それらの回転の駆動を担う回転駆動機構50と、周壁11の上側に設けられていて作用部を内周壁面11aの内側に位置させている仕分け機構60及び規制機構70と、環状回転体20によって落下排出口14へ運ばれて落下した薬剤を検出するフォトセンサ等からなる薬剤落下検出手段56と、環状回転体20の回転制御と傾斜回転体30の回転制御とを行うコントローラ80(制御部)とを備えたものである。
【0027】
それらの構成部分それぞれについて詳細な説明を行う前に、先ず、それらのうち主要なものについて、役割分担等を把握しやすよう概要構成と主要機能を説明する。
環状回転体20は、支承機構40によって支承されて、鉛直線かそれから僅かに傾いた縦線を中心として軸回転できる状態に保たれている。
傾斜回転体30は、環状回転体20の内側に装備されて、上記の縦線よりも大きく鉛直線から傾いた傾斜線を中心として軸回転しうる状態に保たれている。
また、傾斜回転体30は環状回転体20の中空を下寄り部位で塞いでおり、両回転体20,30を組み合わせものは、上面開放の回転容器20+30になっている。
【0028】
更に、傾斜回転体30は、軸回転時に傾斜面上の固形薬剤を運び上げて環状回転体20の上端周縁部23の上へ送り込むようになっており、環状回転体20は、正回転時(進行側の回転の時)に上端周縁部23の循環運動にて薬剤を落下排出口14へ向けて搬送するようになっている。
仕分け機構60は、環状回転体20の上端周縁部23の循環回転によって搬送されてきた薬剤に対して柔らかく当接することで無理のない適度な範囲で薬剤の重なりを崩したり塊を解したりするようになっている。
規制機構70は、環状回転体20の上端周縁部23の循環回転によって搬送されてきた薬剤を上下一段かつ横一列に整列させるようになっている。
【0029】
回転駆動機構50は、傾斜回転体30を回転させる回転駆動モータ54aと、環状回転体20を回転させる回転駆動モータ54bとが設けられており、その独立駆動によって環状回転体20と傾斜回転体30とが個々に回転できるようになっている。両モータ54a,54bには例えばステッピングモータが採用されており、それらの同期や協動はコントローラ80の制御に委ねられている。
コントローラ80(制御部)は、プログラマブルなマイクロプロセッサを主体としたものであり、薬剤落下検出手段56の出力を入力するとともに、回転駆動機構50の回転駆動モータ54a,54bの制御に加え、仕分け機構60の昇降駆動モータ60aや規制機構70の進退駆動モータ70aの制御も担っている(図1(a),図6(c)参照)。
【0030】
次に、そのような種々の構成部分それぞれについて具体的な説明を行う。
先ず、周壁11については(図1図13,特許文献2~5参照)、上述した中央の中空と内周壁面11aとを外周側へ斜めに延伸させた先端に当たる部位に、周壁11を上下に貫通する落下排出口14が形成されており、その落下排出口14から下方へ延びた薬剤落下経路に臨んで薬剤落下検出手段56が設けられている。また(図13参照)、落下排出口14へ環状回転体20の上端周縁部23の上の薬剤を環状回転体20の回転にて送り込むために、周壁11の中空には中央寄りへ斜めに突き出た排出ガイド13が形成されている。さらに、排出ガイド13の先端部には、そこより下側に延び且つ先にも延びて最先端となる搬送面ガイド12が形成されていて、薬剤が排出ガイド13に当接した反動で傾斜回転体30の方へ不所望に落下するといったことを防止するようになっている。
【0031】
傾斜回転体30は(図2,特許文献2~5参照)、概ね円盤状の円盤部30aを主体としたものであり、円盤部30aの中心部には軸心部31が挿着されて上下へ突き出ている。円盤部30aは、その央部32の上面が概ね平坦になっているが、低速でも効率良く薬剤を押し上げて環状回転体20へ引き渡すことができるように、周縁部33には引渡部34と押上部35とが周方向で交互に形成されている。図示した引渡部34は、薬剤より大きめの局所的な面取状の外下がり切欠であり、押上部35は、そのような引渡部34の周方向両端のうち後端側に位置する立ち上がり部分である。また、円盤部30aの上面には、斜面における薬剤の転動を促進するために、概ね径方向に延びる細くて浅い直線状の溝を多数並べて彫った並行波状凹凸が随所に形成されている。
【0032】
環状回転体20は(図3,特許文献2~5参照)、椀状体の底を抜いたかのような全体形状をしており、外周部は筒状の下部21と鍔状の上部22とからなり、内周部は、中空の直径が最上位置の上端周縁部23のところで最大であり、そこから下がるほど中空の直径が小さくなっている。そのため、環状回転体20の中空に対して傾斜回転体30を収めるのも抜き取るのも自在にでき、組立や部品交換を行うのが容易である。
そのような環状回転体20の上部22の上端周縁部23の上面(薬剤搬送経路)には(図3図4参照)、転がり易い薬剤の転動を防止・抑制するために溝23aや彫り込み23bが周方向に等ピッチで多数列設されており、その上端周縁部23の外周側の部分には傾斜角度αの面取23cが一周に亘って形成されている。
【0033】
さらに、(図3(c)参照)、上部22ひいては環状回転体20の回転中心軸に相当する縦線(図では二点鎖線)は、鉛直線(図では一点鎖線)から角度βだけ傾いている。この傾斜角度βは、図では強調表示されているが、薬剤搬送機能を損なわないよう例えば3.5゜程度に抑えられており、上述した上端周縁部23の面取23cの傾斜角度αより小さい。そのため、上端周縁部23の面取23cの水平からの傾きが、上端周縁部23の回転に伴って下降時(図では左方)の最大傾斜(α+β)と上昇時の(図では右方)の最小傾斜(α-β)との間で変動しても、上端周縁部23の面取23cの部分は常に外周側ほど下さがりの状態が維持されるようになっている。なお、そのような環状回転体20の回転中心軸の傾斜と比べて、上述の傾斜回転体30の回転中心軸の傾斜は何倍も大きい。
【0034】
仕分け機構60は(図1図5,特許文献5参照)、横に伸びた長短二つのアーム部を持った支持部61と、支持部61によって上端部を保持されて下端の作用部62a,62b,62cを環状回転体20の上端周縁部23の上方に位置させる何れも縦長の三種の仕分け部材を具備したものであり、コントローラ80の制御に従って昇降駆動モータ60aが支持部61を昇降させることで、三種の仕分け部材の作用部62a,62b,62cの下端と環状回転体20の上端周縁部23の薬剤搬送経路との上下方向間隔を拡縮することができるようになっている。
【0035】
図5に例示したものでは、支持部61の短いアーム部から垂れ下がっていて薬剤搬送経路上の薬剤に対して最初に作用する作用部材(62a)は、ボールチェーンなど小さめの数珠状部材からなる。支持部61の長いアーム部の先端部位から垂れ下がっていて薬剤搬送経路上の薬剤に対して最後に作用する作用部材(62c)は、大きめの数珠状部材からなる。支持部61の長いアーム部の先端部から少し根元に寄った部位から垂れ下がっていて薬剤搬送経路上の薬剤に対して途中で作用する作用部材(62b)は、上端を遊嵌にて緩く保持された板状体からなる。何れも、当接薬剤に対して自由な下端部が逃げながら作用するので、薬剤に衝撃を与えない範囲で錠剤の重なりを崩すものになっている。
【0036】
規制機構70は(図1図5(a),図6(a),特許文献5参照)、環状回転体20の上端周縁部23の薬剤搬送経路の直ぐ上に後方の揺動端部を位置させていて薬剤搬送経路幅を外周側から狭める第1規制部材71及び第2規制部材72と、それら両部材71,72の何れにもピン状の回転許容軸部材等を介して連結されているリンク機構73と、サンプル薬剤5を収容しうる型置場74とを具備している。
第1規制部材71の揺動端部は、仕分け機構60の作用部62a,62bの間に位置し、第2規制部材72の揺動端部は、仕分け機構60の作用部62cの後方すなわち落下排出口14寄りに位置している。両規制部材71,72がリンク機構73の長手方向進退に応じて同時かつ同様に揺動するので、両規制部材71,72による薬剤搬送経路幅の拡縮状態が連動するようにもなっている。
【0037】
型置場74は、薬剤5を置けば薬剤5の長さ,幅,厚みといった寸法を測定する薬剤採寸を行うことができ、薬剤を置かなければその制約を受けることなく自由にリンク機構73の一端を押し引きして規制部材71,72の端部を揺動させることで薬剤搬送経路幅の拡縮を行うことができるようになっている。
薬剤採寸は、コントローラ80の制御に従って進退駆動モータ70aが型置場74の可動部材(薬剤挟持部材)を進退させて薬剤の採寸部位を挟んだときの進行距離をコントローラ80が取得することで行われるようになっている。
薬剤搬送経路幅の拡縮は、コントローラ80の制御に従って進退駆動モータ70aが型置場74の可動部材を進退させるとそれに応動してリンク機構73が進退し更に第1規制部材71,72が揺動することで行われるようになっている。
【0038】
第1,第2規制部材71,72は同形なので、一方71を説明すると(図6(b),特許文献5参照)、第1規制部材71は、図では左端の揺動中心部が周壁11側に位置し、図では右端の揺動端部が環状回転体20の上端周縁部23の上方に位置している。第1規制部材71の内周側面部には、横幅規制機能を担う下段部分71aと、それよりも内周側に張り出している上段部分71bとが形成されており、両者71a,71bの間は傾斜面になっている。そのため、第1規制部材71aは、下段部分71aがリンク機構73の進退に応じた厳密な横幅規制機能を行うのに加えて、上段部分71bが重畳薬剤を確実に崩す高さ規制を行うものとなる。第2規制部材72も同じである。
【0039】
コントローラ80は(図1(a),図6(c),特許文献2~5参照)、手動操作や制御信号などで初期化指示を受けると、初期化を行って薬剤排出個数データなど種々のデータ値をクリアするとともに、各モータ54a,54b,60a,70a等を初期状態にするようになっている。
また、薬剤採寸指示を受けると(図6(a),特許文献5参照)、進退駆動モータ70aを駆動して型置場74の薬剤5について幅や厚みを計測して、そのデータを取得や保持したり、更には上位装置へ転送したりするようになっている。
【0040】
さらに、コントローラ80は(図6(c),特許文献5参照)、薬剤排出指示を受けると、対象薬剤に係る幅データと厚みデータとを含む寸法データを保持していれば直ちに、保持していなければ採寸処理やデータダウンロード等にて対象薬剤の幅と厚みの寸法データを取得してから、寸法データに基づいて昇降駆動モータ60aや進退駆動モータ70aを動作させることで規制機構70に対する駆動制御を行うようになっている。そして、薬剤搬送経路から仕分け機構60の作用部62a,62b,62cまでの高さや、規制機構70の規制部材71,72の先端で狭められた薬剤搬送経路の横幅といった規制量を、対象薬剤に適合させるようになっている。
【0041】
それから、コントローラ80は、回転駆動モータ54a,回転駆動モータ54bを回転させて薬剤排出動作制御を行いながら、薬剤落下検出手段56の出力を監視して一個毎の薬剤排出を把握するとともに、それを数え上げることで排出薬剤の計数値を得るようになっている。
また、取得した排出薬剤の計数値が指定個数(一患者分の処方指示量といった指定処方量)に達すると薬剤排出動作制御を止めるといった剤数管理も行うようになっている。
【0042】
そのような薬剤排出動作制御を詳述する(図7図8のフローチャートを参照)。
先ず、薬剤を傾斜回転体30の上に投入した直後の初期状態では、傾斜回転体30から環状回転体20の環状回転体20の上へ薬剤を速やかに送り込むために環状回転体20と傾斜回転体30とを一時的に所定時間だけ高速で正回転(進行側の回転)させ(ステップS11)、それから薬剤搬送安定化のため両回転体20,30を継続的に定速で正回転させるようになっている(ステップS12)。
【0043】
そして、薬剤落下検出手段56の出力に基づき薬剤排出の有無を調べて(ステップS13)、薬剤排出が検出されると(ステップS13のY)、排出剤数をカウントアップするとともに未検出時間tの値をクリアしてゼロにし(ステップS14)、そのときの薬剤排出によって指定個数の薬剤排出が終了したか否かを調べて(ステップS15)、指定個数の終了が判明したときには(ステップS15のY)、過剰排出防止のため両回転体20,30の回転を速やかに減速させ更に逆転させてから停止させて(ステップS23)、指定個数の薬剤排出制御を終了するようになっている。
【0044】
これに対し、指定個数の薬剤排出が未だ完了していないときには(ステップS15のN)、フローチャートでの図示は割愛したが、それまでにコントローラ80が進退駆動モータ70aを制御して薬剤搬送経路の横幅を拡大させていた場合には、進退駆動モータ70aを制御して薬剤搬送経路の横幅を縮小させて拡大前に戻すようにもなっている。
そして、直近の薬剤排出から経過した未検出時間tが所定時間t1未満[0≦t<t1](正常時間隔)の間は(ステップS16のY)、現状維持のまま、薬剤排出検出から繰り返すようになっている(ステップS13)。
【0045】
また、未検出時間tが所定時間[t1≦t<t2](渋滞時間隔)の間は、規制部材71,72の所で薬剤渋滞が発生している可能性を考慮した渋滞解消策として、進退駆動モータ70aを制御して環状回転体20の上端周縁部23の薬剤搬送経路の横幅を徐々に広げるようになっている(ステップS16のN,ステップS17,ステップS18のY)。
これにより、薬剤フィーダ10は、薬剤落下検出手段56での薬剤検出間隔(未検出時間t)が正常時間隔より大きな設定値(所定時間t1)の渋滞時間隔に達すると、規制部材71,72を制御して薬剤搬送経路の横幅を拡大させるものとなる。
なお、その薬剤搬送経路の横幅拡大は、少しずつ滑らかに拡大しても良いが、揺さぶりによる効果も期待してステップ状など段階的に行われるようになっている。
【0046】
さらに、未検出時間tが所定時間[t2≦t<t3]の間は、傾斜回転体30の上で幾つかの薬剤が凝集状態で塊になっている可能性なども考慮し、塊を崩す効果も期待して、傾斜回転体30を逆回転(後退側の回転)させるようになっている(ステップS18のN,ステップS19,ステップS20のY)。
それに加え、未検出時間tが所定時間[t3≦t<t4]の間は、傾斜回転体30の上の薬剤が残り少なくなって来た可能性なども考慮して、残留薬剤を速やかに搬送するために、両回転体20,30を高速で正回転させるようになっている(ステップS20のN,ステップS21,ステップS22のY)。
【0047】
また、それ以後は(t4~t10,残薬停留時間隔)、僅かになった残留薬剤が不所望な付着や引っ掛かり等によって停留している可能性まで考慮して、更なる排出動作が念入りに行われる(図8のステップS30~S40)。
具体的には、未検出時間tが所定時間[t4≦t<t5]の間は両回転体20,30が継続的に定速で正回転させるようになっている(ステップS22のN,ステップS30,ステップS31のY)。
【0048】
それから、未検出時間tが所定時間[t5≦t<t6]の間は、環状回転体20の上端周縁部23と排出ガイド13や搬送面ガイド12との境目などに薬剤がとどまっている可能性を考慮して、環状回転体20を穏やかに逆回転させ(ステップS31のN,ステップS32,ステップS33のY)、続く未検出時間tが所定時間[t6≦t<t7]の間は、傾斜回転体30を穏やかに逆回転させるようになっている(ステップS33のN,ステップS34,ステップS35のY)。
【0049】
その後、未検出時間tが所定時間[t7≦t<t8]の間は、傾斜回転体30を振動させながら穏やかに正回転させるようになっている(ステップS35のN,ステップS36,ステップS37のY)。この傾斜回転体30の加振回転運動は、コントローラ80が回転駆動モータ54bの回転制御を行うときに、振動に対応した小さな進行側の回転を行わせた後に続けてそれよりも小さな後退側の回転を回転駆動モータ54bに行わせる制御を繰り返すことで、振動モータ等の付加が無くても、実行されるようになっている。
【0050】
さらに、その後、振動効果で動けるようになった薬剤があればそれを速やかに送り出すために、未検出時間tが所定時間[t8≦t<t9]の間は、傾斜回転体30を高速で逆回転させる振出逆転制御を行い(ステップS37のN,ステップS38,ステップS39のY)、それから、未検出時間tが所定時間[t9≦t<t10]の間は、傾斜回転体30を高速で正回転させる振出正転制御を行うようになっている(ステップS39のN,ステップS40,ステップS41のY)。なお、上述の振出逆転制御は、一回転ほどが一応の目安だが、それより多くても少なくても良い。また、その後の振出正転制御は、最後の送り出し動作なので、数回転ほどが望ましいが、それより多くても少なくても良い。
【0051】
そして、それらの薬剤排出動作制御を行いながら薬剤落下検出手段56の薬剤検出を待った結果、薬剤排出を検出することなく未検出時間tが所定時間[t10]に達すると(ステップS41のN)、時間切れになり、収容薬剤が無くなったと判定して、コントローラ80は、両回転体20,30の回転を停止させ(ステップS42)、薬剤排出制御を終了するようになっている。
【0052】
このような実施例1の薬剤フィーダ10について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。
図9図13は、何れも、(a)が平面図、(b)が縦断正面図である。
【0053】
それらのうち、図9は、薬剤5が傾斜回転体30の上に投入された直後の状態を示しており、図10は、薬剤5が環状回転体20の上端周縁部23の薬剤搬送経路の上に整列させられて逐次排出が順調に行われているときの動作状態を示しており、図11は、薬剤5が第2規制部材72のところで渋滞したときの動作状態を示しており、図12は、規制機構70が薬剤搬送経路の横幅を広げたことによって薬剤5の渋滞が解消されたときの動作状態を示しており、図13は、薬剤5が一個だけ排出されずに残ったときの動作状態を示している。
【0054】
薬剤フィーダ10を調剤に使用するに先だち、コントローラ80に薬剤の形状データのうち少なくとも幅と厚みとを保持させておくことが必要であり、予めデータ入力されていた場合は省けるが、そうでない場合は、データ入力か、採寸とデータ設定を行う。
なお、薬剤の外寸については[長さ≧幅≧厚み]の関係があり、真球体では[長さ=幅=厚み]であり、筒体や楕円球体では[長さ>幅=厚み]となるものが多く、円板や円盤状のものでは[長さ=幅>厚み]となるものが多い。
【0055】
採寸は別の機器で行い、その寸法値を薬剤フィーダ10に手動の操作や上位装置からのダウンロード等でデータ入力しても良いが、この薬剤フィーダ10では、薬剤5を横倒しにして型置場74にセットしてから(図6(a)参照)、横幅測定モードで動作させると、コントローラ80が進退駆動モータ70aを動作させることで薬剤の幅に係る採寸とデータ設定とが自動で行われる。また、薬剤5を縦にして型置場74にセットしてから、厚み測定モードで動作させると、同様にして薬剤の厚みに係る採寸とデータ設定とが自動で行われる。その後、薬剤5は型置場74から取り出して回転容器20+30に入れることで調剤対象に含めることができる(図9参照)。
【0056】
そして、薬剤フィーダ10を準備モードで動作させると、仕分け機構60については、コントローラ80が薬剤の厚みデータに基づいてモータ60aを動作させ、それに従って仕分け機構60の支持部61が昇降し、それによって作用部62a,62b,62cの高さが薬剤の厚みに適合させられる(図5図9(b)参照)。また、規制機構70については、コントローラ80が薬剤の幅データに基づいてモータ70aを動作させ、それに従って型置場74を介して規制機構70のリンク機構73が長手方向に移動することで規制部材71,72が揺動し、それによって環状回転体20の上端周縁部23の上の薬剤搬送経路の該当箇所の横幅が薬剤の幅に適合させられる(図5(a),図9(a)参照)。
【0057】
そして、薬剤処方での指定個数やその他の初期値をコントローラ80にデータ設定するとともに、その個数かそれを超える多数の薬剤5を薬剤フィーダ10に投入する。具体的には環状回転体20に囲まれた傾斜回転体30の上に投入する(図9参照)。
そうしてから、薬剤フィーダ10を自動調剤モードで動作させると、両回転体20,30が一時的に高速で正回転して(図7S11参照)、薬剤が速やかに傾斜回転体30から環状回転体20へ移載される。そして(図7S12参照)、環状回転体20の上端周縁部23の薬剤搬送経路に薬剤が並び始めた傾には、両回転体20,30の回転速度が安定搬送に適した所定の定速に落とされて、両回転体20,30が正回転を継続する。
【0058】
両回転体20,30が定速正回転を継続すると、薬剤5が、次々に、傾斜回転体30によって持ち上げられて環状回転体20の上端周縁部23(薬剤搬送経路)の上に載り移り(図10参照)、環状回転体20の回転に伴って薬剤搬送経路を進んで仕分け機構60の作用部62a,62b,62cの下を次々に潜り抜けようとする。
そのとき、上下に重なった薬剤5b,5cについては、上側の薬剤5bが、仕分け機構60の下端の作用部62a,62b,62cに当接し(図5(b)参照)、その反力で重なりを崩されることが多いが、仕分け機構60は作用部を横に押されると逃げるので、薬剤5は傷つけないが、重なりが崩れず残ることもある。
【0059】
もっとも、重なったまま仕分け機構60を潜り抜ける重畳薬剤は僅かなものであり、それについては、環状回転体20の回転に伴って薬剤搬送経路を進行すると、その後の第1規制部材71や第2規制部材72との干渉により、上の薬剤は規制部材71,72の上段部分71b等に押されて下の薬剤の上から環状回転体20の上端周縁部23の上か傾斜回転体30の上に落とされる。これに対し、最下の薬剤は、重畳状態から解放されて規制部材71,72の上段部分71b等とは間接的にすら干渉しない状態になるので、下段部分71aの脇を擦り抜けて、落下排出口14へ運ばれる(図10参照)。
【0060】
薬剤の排出が検出されると(図7S13Y参照)、その度に、未検出時間tの値がクリアされて零になる(図7S14参照)。また、図示は割愛したが、両回転体20,30の回転が定速の正回転に戻されるとともに、薬剤搬送経路の横幅が拡大されていれば元の幅に戻される。さらに、薬剤排出個数がカウントアップされるとともに、薬剤排出個数が指定個数に到達したか否かが確認される(図7S15参照)。
薬剤排出個数が指定個数に到達したときには(図7S23参照)、慣性による過剰排出を抑えるために、両回転体20,30の回転が、速やかに減速され、更に少し逆転されてから、停止され、そこで指定個数の薬剤排出動作が終了する。
【0061】
これに対し、薬剤排出個数が未だ指定個数に達していないときには(図7S15N参照)、次の薬剤排出の検出を待ちながら(図7S13N参照)、以下のような排出動作が試行される(図7S16図8S42参照)。
具体的には、未検出時間tが時間t1に達するまでは両回転体20,30が定速で正回転させられるが(図7S16Y参照)、時間t1が経過しても薬剤が排出されないときには(図7S16N参照)、環状回転体20の上端周縁部23の薬剤搬送経路の上で薬剤が渋滞している場合の対処として、規制部材71,72がときどき揺動して、薬剤搬送経路の横幅が断続的に拡大される(図7S17参照)。薬剤搬送経路の上で薬剤が渋滞していた場合(図11参照)、それによって渋滞が解消される(図12参照)。
【0062】
それでも薬剤が排出されずに未検出時間tが時間t2に達したときには、傾斜回転体30の上で薬剤が凝集している場合の対処として、その塊を解すために、傾斜回転体30が逆回転させられる(図7S19参照)。
さらに、薬剤が排出されずに未検出時間tが時間t3に達したときには、傾斜回転体30の上の残留薬剤が少なくなった場合の対処として、両回転体20,30が高速で正回転させられる(図7S21参照)。
【0063】
それでも薬剤が排出されずに未検出時間tが時間t4に達したときには、僅かになった残留薬剤が不所望な付着や引っ掛かり等によって停留している場合の対処として、更なる排出動作が念入りに行われる(図8のステップS30~S40を参照)。
詳述すると、未検出時間tが所定時間[t4≦t<t5]の間は両回転体20,30が継続的に定速で正回転させられ(図8S31参照)、未検出時間tが所定時間[t5≦t<t6]の間は、環状回転体20の上端周縁部23と排出ガイド13や搬送面ガイド12との境目などに薬剤がとどまっている場合の対処として、環状回転体20が穏やかに逆回転させられる(図8S32参照)。
【0064】
それでも薬剤が排出されずに未検出時間tが時間t6に達したときには、傾斜回転体30が穏やかに逆回転させられ(図8S34参照)、未検出時間tが所定時間[t7≦t<t8]の間は、傾斜回転体30が振動を伴って穏やかに正回転させられる(図8S36参照)。
このような振動を伴った回転運動によって傾斜回転体30の上の残留薬剤については効果的に付着力等が解消や抑制されるので(図13参照)、傾斜回転体30上で不所望な薬剤残留が発生や継続するのを的確に回避することができる。
【0065】
しかも、傾斜回転体30の振動は、そこだけで消滅するものでなく、薬剤と接触する環状回転体20など他の部材にも伝達されるので、環状回転体20等についても、不所望な薬剤残留の発生や継続を回避や抑制することができる。
その後、残留薬剤の付着力等の十分な解消を見込める時刻である時間t8に未検出時間tが到達すると、振出逆転制御によって傾斜回転体30が高速で逆回転させられ(図8S38参照)、未検出時間tが時間t9に達すると振出正転制御によって傾斜回転体30が高速で正回転させられる(図8S40参照)。そのため、残留薬剤が傾斜回転体30の上に有ったときにはそれが迅速に環状回転体20の上端周縁部23の薬剤搬送経路に移されて落下排出口14へ送り込まれる。
【0066】
こうして種々の手を尽くしても薬剤が排出されずに未検出時間tが時間t10に達したときには、回転容器20+30が空になったことが確信できるので、コントローラ80は、時間切れに至ったと判定して、両回転体20,30の回転を止め(図8S42参照)、薬剤排出の処理を終了する。
後は人手による薬剤補充などを待つことになる。
【0067】
[その他]
上記実施例では、環状回転体20の上端周縁部23の薬剤搬送経路の横幅の拡大が先に実行され、それより後に傾斜回転体30の加振回転制御が実行されるようになっていたが、環状回転体20や傾斜回転体30の回転制御に係る他の手法たとえば回転方向の切替や回転速度の変更などについては、実行順序や実行時間などを適宜変更しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の薬剤フィーダは、錠剤分包機に搭載された多数の整列盤回転タイプ薬剤フィーダのうち一部のもの或いは全部を代替するのに用いても良く、薬剤フィーダを一個か少数個しか搭載しない錠剤分割器に搭載しても良く、さらには薬瓶へ錠剤等の薬剤を充填する装置などにおいて逐次送出した薬剤の個数を数え上げる錠剤カウンタ(薬剤カウンタ)などに搭載しても良い。
【符号の説明】
【0069】
5,5a,5b,5c 薬剤、
10…薬剤フィーダ、
11…周壁、11a…内周壁面(周壁の中空の内壁面)、
12…搬送面ガイド、13…排出ガイド、14…落下排出口、
20…環状回転体、21…下部、22…上部、
23…上端周縁部(薬剤搬送経路)、23a…溝、23b…彫り込み、23c…面取、
30…傾斜回転体、30a…円盤部、
31…軸心部、32…央部、33…周縁部、34…引渡部、35…押上部、
20+30…回転容器、40…支承機構、
50…回転駆動機構、
54a,54b…回転駆動モータ、56…薬剤落下検出手段、
60…仕分け機構、60a…昇降駆動モータ、
61…支持部、62a,62b,62c…作用部(薬剤当接部位)、
70…規制機構、70a…進退駆動モータ、
71…第1規制部材、71a…下段部分、71b…上段部分、
72…第2規制部材、73…リンク機構、74…型置場(採寸機構)、
80…コントローラ(制御部)
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図2
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図8
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図10
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