IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人放射線医学総合研究所の特許一覧

特許7584141放射線検出器、シンチレータユニット、画像生成装置、及びシンチレータユニットの製造方法
<>
  • 特許-放射線検出器、シンチレータユニット、画像生成装置、及びシンチレータユニットの製造方法 図1
  • 特許-放射線検出器、シンチレータユニット、画像生成装置、及びシンチレータユニットの製造方法 図2
  • 特許-放射線検出器、シンチレータユニット、画像生成装置、及びシンチレータユニットの製造方法 図3
  • 特許-放射線検出器、シンチレータユニット、画像生成装置、及びシンチレータユニットの製造方法 図4
  • 特許-放射線検出器、シンチレータユニット、画像生成装置、及びシンチレータユニットの製造方法 図5
  • 特許-放射線検出器、シンチレータユニット、画像生成装置、及びシンチレータユニットの製造方法 図6
  • 特許-放射線検出器、シンチレータユニット、画像生成装置、及びシンチレータユニットの製造方法 図7
  • 特許-放射線検出器、シンチレータユニット、画像生成装置、及びシンチレータユニットの製造方法 図8
  • 特許-放射線検出器、シンチレータユニット、画像生成装置、及びシンチレータユニットの製造方法 図9
  • 特許-放射線検出器、シンチレータユニット、画像生成装置、及びシンチレータユニットの製造方法 図10
  • 特許-放射線検出器、シンチレータユニット、画像生成装置、及びシンチレータユニットの製造方法 図11
  • 特許-放射線検出器、シンチレータユニット、画像生成装置、及びシンチレータユニットの製造方法 図12
  • 特許-放射線検出器、シンチレータユニット、画像生成装置、及びシンチレータユニットの製造方法 図13
  • 特許-放射線検出器、シンチレータユニット、画像生成装置、及びシンチレータユニットの製造方法 図14
  • 特許-放射線検出器、シンチレータユニット、画像生成装置、及びシンチレータユニットの製造方法 図15
  • 特許-放射線検出器、シンチレータユニット、画像生成装置、及びシンチレータユニットの製造方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】放射線検出器、シンチレータユニット、画像生成装置、及びシンチレータユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20241108BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
G01T1/20 L
G01T1/20 E
G01T1/20 G
G01T1/20 B
G01T1/20 D
G01T1/161 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021050842
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148952
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】稲玉 直子
(72)【発明者】
【氏名】山谷 泰賀
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2018-0079681(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0241570(US,A1)
【文献】特開2018-109517(JP,A)
【文献】特開2009-128339(JP,A)
【文献】国際公開第2015/052977(WO,A1)
【文献】特開2013-007569(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0199748(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元的に配置した複数のシンチレータ素子と、
前記複数のシンチレータ素子と光学的に結合された受光素子とを備える放射線検出器において、
最外周に配置したシンチレータ素子には、他のシンチレータ素子と光学的に遮断し、他のシンチレータ素子側へのシンチレーション光の漏出を防止する光漏出防止手段を設け
前記最外周よりも内側に、複数の前記シンチレータ素子が配置されることを特徴とする、放射線検出器。
【請求項2】
前記光漏出防止手段は、光反射面を有し、スリットのない平板からなることを特徴とする、請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記光漏出防止手段は、1枚の平板によって、最外周に配置した複数のシンチレータ素子に対するシンチレーション光の漏出防止を行うものを含むことを特徴とする、請求項2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記最外周よりも内側に配置した前記複数のシンチレータ素子間に、シンチレーション光を反射する光反射手段を設け、
前記光反射手段は、光反射面を有し、かつスリットが設けられた平板を組み合わせてなることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記シンチレータ素子及び前記光漏出防止手段を含んでなるシンチレータアレイを形成し、
前記シンチレータアレイを複数積層することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一
項に記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記シンチレータ素子、前記光漏出防止手段及び前記光反射手段を含んでなるシンチレータアレイを形成し、
前記シンチレータアレイを、複数積層し、
各層ごとに、前記シンチレータアレイにおける前記光反射手段の配置箇所が異なる構造を有していることを特徴とする、請求項4に記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記光反射手段が、最外周に配置された前記シンチレータ素子間に対しても設けられ、
最外周よりも内側に配置した前記シンチレータ素子間から延伸して設けられる第1光反射手段と、
前記第1光反射手段とは独立して設けられる第2光反射手段と、を含むことを特徴とする、請求項6に記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記光漏出防止手段は、前記シンチレータアレイの積層方向にわたる一体的構造を有す
る部材からなることを特徴とする、請求項5~7のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【請求項9】
2次元的に配置した複数のシンチレータ素子を含んでなるシンチレータユニットであって、
最外周に配置したシンチレータ素子には、他のシンチレータ素子と光学的に遮断し、他のシンチレータ素子側へのシンチレーション光の漏出を防止する光漏出防止手段を設け
前記最外周よりも内側に、複数の前記シンチレータ素子が配置される、ことを特徴とする、シンチレータユニット。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の放射線検出器と、
前記放射線検出器で得られた検出データに基づく画像生成部と、を備えることを特徴と
する、画像生成装置。
【請求項11】
請求項9に記載のシンチレータユニットを製造するシンチレータユニットの製造方法であって、
第1の平板部材と前記第1の平板部材に接続される複数の第2の平板部材と、が一体化されてなる光漏出防止手段と、複数のシンチレータ素子と、を準備する工程と、
前記光漏出防止手段と、前記複数のシンチレータ素子とを組み合わせて、請求項9に記載のシンチレータユニットを製造する工程と、
を含むシンチレータユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出器、シンチレータユニット及び画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象から放出される放射線を検出する放射線検出器は、放射線汚染された物品や生体の検査のほか、医療分野において患者の治療あるいは診断に必要な情報となる画像取得にも活用されている。
特に、放射線検出器を利用する医療診断装置の一つとして、ポジトロン断層法(positron emission tomography;以下、「PET」という)を活用した陽電子放射断層撮像装置(以下、「PET装置」という)が挙げられる。PET装置は、放射性薬剤を投与した患者から放出される放射線を検知し、患者の体内での放射性薬剤の密度分布に係る画像取得を行う装置であり、がん検査などで活用されている。このため、PET装置などの医療診断装置に用いられる放射線検出器には、対象(患者)から放出される放射線の位置を精度高く検出することが求められる。
【0003】
このような放射線検出器としては、放射線を吸収してシンチレーション光を発生させるシンチレータ素子と、発生したシンチレーション光の位置や光強度を検出する光検出部を備えるものが知られている。より具体的には、複数のシンチレータ素子を2次元的ないしは3次元的に配列し、光検出部では、シンチレータ素子から放出されるシンチレーション光を検知し、放射線の入射により応答したシンチレータ素子の識別を行うことで、放射線の入射位置を検出する放射線検出器の構成が知られている。
また、このような放射線検出器においては、応答したシンチレータ素子の識別に係る分解能、すなわち放射線検出器に入射した放射線の位置情報取得に係る放射線検出位置弁別能(以下、単に「位置弁別能」ともいう)の向上に係る技術についての検討がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、シンチレータ素子からのシンチレーション光をライトガイド内で拡散して光検出部(複数の光電子増倍管)に入射させ、このときの受光量の比が応答したシンチレータ素子の位置により異なることに基づき、放射線がどのシンチレータ素子に入射したのかについての演算を複数回路により行うことにより、位置弁別能を高めることが記載されている。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、シンチレータ素子群と、シンチレータ素子からの光を案内するライトガイドと、ライトガイドに対して光学的に結合されて光を電気信号に変換する光電子増倍管とを備えた放射線検出器において、ライトガイドの光入力面とシンチレータ素子群の光出力面の大きさを整合させるとともに、ライトガイドの光出力面と光電子増倍管の光入力面の大きさを整合させることで、シンチレータ素子のいかなる場所に放射線が入射しても、正確な位置弁別が可能になることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実全昭60-123683号公報
【文献】特開2004-354343号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2に記載されるように、放射線検出器において、シンチレータ素子と光電子倍増管の間にライトガイドを設け、位置弁別能の向上を図ることは知られている。
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載されたようなライトガイドを用いる場合、ライトガイド内でのシンチレーション光の減衰や、ライトガイド作成に係るコスト増といった問題が生じる。また、特許文献1に記載されるように、ライトガイドによって光検出部に入射するシンチレーション光の拡散を生じさせる場合、光検出部における受光量の低下が起こり、これに伴う演算精度の低下が問題となる。
【0008】
そして、従来の放射線検出器においては、ライトガイドの有無にかかわらず、応答したシンチレータ素子の識別に際し、放射線検出器の端に配置されたシンチレータ素子からの応答と、その隣のシンチレータ素子との応答において、光検出部における光強度分布が互いに類似したものになる。その結果、光強度分布に基づく位置演算を行った際に、放射線検出器の端に配置されたシンチレータ素子からの応答と、その隣のシンチレータ素子からの応答との位置演算結果が類似したものとなり、差異がなくなってしまう。このため、光検出部において2つのシンチレータ素子の応答を個々識別することが困難となることが多く、放射線検出器の端(周縁部)における位置弁別能の劣化が問題となっている。
【0009】
そこで、本発明の課題は、特に周縁部における位置弁別能の高い放射線検出器及びシンチレータユニットを提供することである。
また、本発明の課題は、上記放射線検出器を用い、高画質の画像生成が可能な空間分解能の高い画像生成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、2次元的に配置した複数のシンチレータ素子に対し、最外周に配置したシンチレータ素子からのシンチレーション光が他のシンチレータ素子側へ漏出することを防止する手段を設けることによって、最外周に配置したシンチレータ素子の応答(最外周に配置したシンチレータ素子から発せられた光)が光検出部に入力される際に、他のシンチレータ素子の応答との差異を生じさせることが可能となるという知見を得た。つまり、最外周(端)に配置したシンチレータ素子からのシンチレーション光の光検出部上の光強度分布を変えることで、位置演算結果を端隣のシンチレータ素子と有意な差のあるものにすることができることを見出した。さらに、これにより、周縁部における位置弁別能を向上させた放射線検出器及びシンチレータユニット、並びにこの放射線検出器を活用し、高画質の画像生成を可能とする空間分解能の高い画像生成装置を形成することができるという知見に至り、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の放射線検出器、シンチレータユニット及び画像生成装置である。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の放射線検出器は、2次元的に配置した複数のシンチレータ素子と、複数のシンチレータ素子と光学的に結合された受光素子とを備える放射線検出器において、最外周に配置したシンチレータ素子には、他のシンチレータ素子と光学的に遮断し、他のシンチレータ素子側へのシンチレーション光の漏出を防止する光漏出防止手段を設けることを特徴とするものである。
この特徴によれば、最外周に配置したシンチレータ素子と、他のシンチレータ素子とを光学的に遮断し、かつ光の漏出を防止することで、最外周に配置されたシンチレータ素子の応答が受光素子に入力される際の光強度分布と、他のシンチレータ素子の応答が受光素子に入力する際の光強度分布との間に差異を生じさせることが可能となる。このため、最外周に配置されたシンチレータ素子からの応答に係る位置演算結果と、その隣のシンチレータ素子からの応答に係る位置演算結果との間に有意な差が生じるものとなり、受光素子で検知する2つのシンチレータ素子の応答を個々識別することが可能となる。これにより、放射線検出器の周縁部における位置弁別能を向上させることが可能となる。
なお、以下、最外周に配置されたシンチレータ素子の応答(シンチレーション光)が受光素子に入力される際の光強度分布と、他のシンチレータ素子の応答が受光素子に入力される際の光強度分布との間に生じる差のことを、単に「(シンチレータ素子の)応答差」と呼ぶこともあるものとする。
【0012】
また、本発明の放射線検出器の一実施態様としては、光漏出防止手段は、光反射面を有し、スリットのない平板からなるという特徴を有する。
この特徴によれば、光漏出防止手段によるシンチレータ素子の応答差を生じさせることについて、細かい加工を必要としない部材(平板)を用いた簡易な構造で実現することが可能となる。また、光漏出防止手段に係る部材に対する細かい加工が不要であることから、放射線検出器としてのコスト減が可能になるとともに、部材の加工の精度に依存せず、シンチレータ素子の応答差を生じさせることが可能となる。これにより、放射線検出器の周縁部における位置弁別能をより一層向上させることが可能となる。
【0013】
また、本発明の放射線検出器の一実施態様としては、光漏出防止手段は、1枚の平板によって、最外周に配置した複数のシンチレータ素子に対するシンチレーション光の漏出防止を行うものを含むという特徴を有する。
この特徴によれば、光漏出防止手段に係る部材点数を減らすとともに、最外周に配置されたシンチレータ素子の応答に係る光強度分布と、他のシンチレータ素子の応答に係る光強度分布との間に差を生じさせることがより簡便となる。これにより、放射線検出器の周縁部における位置弁別能をより一層向上させることが可能となる。
【0014】
また、本発明の放射線検出器の一実施態様としては、最外周よりも内側に配置した複数のシンチレータ素子間に、シンチレーション光を反射する光反射手段を設け、光反射手段は、光反射面を有し、かつスリットが設けられた平板を組み合わせてなるという特徴を有する。
この特徴によれば、最外周に配置したシンチレータ素子以外のシンチレータ素子間に対し、光反射手段を設けることで、受光素子に入射するシンチレータ素子の応答についての区画化を行い、受光素子におけるシンチレータ素子の応答に係る識別を容易に行うことが可能となる。また、光反射手段に係る部材として、スリットを備える平板を組み合わせたものとすることで、シンチレータ素子の配置における位置決めや区画化を容易に行うことができるとともに、組立に係る作業負荷を低減させることが可能となる。
さらに、この特徴によれば、最外周に配置したシンチレータ素子以外のシンチレータ素子間については、光反射手段であるスリットからシンチレーション光が漏出することになる。このとき、最外周以外の箇所におけるシンチレータ素子の応答は、区画外に一定の広がりを有する光強度分布として受光素子に入射することになる。このため、本来区画された範囲よりも広域な光強度分布が入力されることになり、受光素子におけるシンチレータ素子の応答に係る識別に関する演算(特に重心演算)における演算精度を高めることが可能となる。これにより、放射線検出器全体としての位置弁別能を向上させることが可能となる。
【0015】
また、本発明の放射線検出器の一実施態様としては、シンチレータ素子及び光漏出防止手段を含んでなるシンチレータアレイを形成し、シンチレータアレイを複数積層するという特徴を有する。
この特徴によれば、周縁部における位置弁別能を向上させることのできるシンチレータ素子と光漏出防止手段の組み合わせからなるシンチレータアレイを複数積層することで、特にシンチレータアレイ端部に係る放射線検出器の位置弁別能を向上させるとともに、放射線検出器の応答性(感度)を高めることが可能となる。
【0016】
また、本発明の放射線検出器の一実施態様としては、シンチレータ素子、光漏出防止手段及び光反射手段を含んでなるシンチレータアレイを形成し、シンチレータアレイを、複数積層し、各層ごとに、シンチレータアレイにおける光反射手段の配置箇所が異なる構造を有しているという特徴を有する。
シンチレータ素子及び光反射手段を含んでなるシンチレータアレイを単に積層した場合、積層方向に光反射手段が連続して配置される箇所が生じることになる。このとき、各層におけるシンチレータ素子の区画分けが重なることから、シンチレータアレイの積層による放射線検出器としての応答性(分解能)向上に係る効果が得られないことになってしまう。また、シンチレータアレイの端部においては、シンチレータ素子からの応答に係る光強度分布が、隣のシンチレータ素子の応答に係る光強度分布と類似してしまい、放射線検出器の位置弁別能低下につながることになってしまう。
一方、この特徴によれば、シンチレータアレイの端部(最外周)では、光漏出防止手段によりシンチレータ素子の応答差が生じることで、シンチレータアレイ端部におけるシンチレータ素子の応答を適切に識別することが容易になるとともに、シンチレータアレイの最外周より内側においては、シンチレータアレイの各層ごとに光反射手段の配置箇所を異なるものとすることで、積層方向に隣接する光反射手段が全て連続した配置とはならないような構造とすることができる。これにより、各層からのシンチレータ素子の応答を適切に区画分けした状態で、受光素子に入射させることができ、放射線検出器の位置弁別能を向上させることと、放射線検出器の応答性(感度)を高めることを両立することが可能となる。また、シンチレータアレイ全体としての構造設計が容易となる。
【0017】
また、本発明の放射線検出器の一実施態様としては、光反射手段が、最外周に配置されたシンチレータ素子間に対しても設けられ、最外周よりも内側に配置したシンチレータ素子間から延伸して設けられる第1光反射手段と、第1光反射手段とは独立して設けられる第2光反射手段と、を含むという特徴を有する。
この特徴によれば、シンチレータアレイの最外周側とその内側に対し、それぞれ光反射手段を設けることで、最外周側のシンチレータ素子間においても区画化が容易となるとともに、位置演算精度の向上が図られる。また、シンチレータアレイの最外周においては、その内側に設けられた光反射手段とは配置箇所が異なる構造を形成可能とすることで、最外周(端)における位置弁別能を高めるための最適構造を独立して形成することが可能となる。これにより、放射線検出器の周縁部における位置弁別能をより一層向上させることが可能となる。
【0018】
また、本発明の放射線検出器の一実施態様としては、光漏出防止手段は、シンチレータアレイの積層方向にわたる一体的構造を有する部材からなるという特徴を有する。
この特徴によれば、シンチレータアレイを積層して用いる際に、光漏出防止手段の作製及び配置が容易になるとともに、光漏出防止手段によるシンチレータ素子の応答差をより確実に生じさせることが可能となる。
【0019】
上記課題を解決するための本発明のシンチレータユニットは、2次元的に配置した複数のシンチレータ素子を含んでなるシンチレータユニットであって、最外周に配置したシンチレータ素子には、他のシンチレータ素子と光学的に遮断し、他のシンチレータ素子側へのシンチレーション光の漏出を防止する光漏出防止手段を設けるという特徴を有する。
この特徴によれば、受光素子と組み合わせた際に、受光素子に入力される最外周に配置したシンチレータ素子の応答に係る光強度分布と、他のシンチレータ素子の応答に係る光強度分布との間に差を生じさせることが可能となるシンチレータユニットを形成することができる。これにより、最外周に配置されたシンチレータ素子からの応答に係る位置演算結果と、その隣のシンチレータ素子からの応答に係る位置演算結果との間に有意な差を生じさせ、受光素子が検知する2つのシンチレータ素子の応答を個々識別することを可能とし、周縁部における位置弁別能を向上させた放射線検出器を容易に形成することができる。
【0020】
上記課題を解決するための本発明の画像生成装置は、上記放射線検出器と、放射線検出器で得られた検出データに基づく画像生成部と、を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、上記放射線検出器で得られた検出データを用いることで、放射線の入射位置情報に係る精度の高いデータを基に、画像生成を行うことが可能となる。これにより、高画質の画像生成を可能とする空間分解能の高い画像生成装置を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、特に周縁部における位置弁別能の高い放射線検出器及びシンチレータユニットを提供することができる。
また、本発明によれば、上記放射線検出器を用い、高画質の画像生成が可能な空間分解能の高い画像生成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施態様に係る放射線検出器の構造を示す概略説明図である。
図2】本発明の第1の実施態様に係る放射線検出器の光漏出防止手段の一例を示す概略説明図である。
図3】本発明の第1の実施態様に係る放射線検出器の光漏出防止手段の別態様を示す概略説明図である。
図4】本発明の第1の実施態様に係る放射線検出器の光漏出防止手段の別態様を示す概略説明図である。
図5】本発明の第1の実施態様に係る放射線検出器の光反射手段の一例を示す概略説明図である。
図6】本発明の第1の実施態様に係る放射線検出器に放射線が入射した際の模式図である。
図7】比較例としての放射線検出器に放射線が入射した際の模式図である。
図8】本発明の第1の実施態様に係る放射線検出器を用いたシンチレータ素子の応答結果を示す図である。
図9】比較例としての放射線検出器を用いたシンチレータ素子の応答結果を示す図である。
図10】本発明の第1の実施態様に係る画像生成装置の構造を示す概略説明図である。
図11】本発明の第2の実施態様に係る放射線検出器全体の構造を示す概略説明図(斜視図)である。
図12】本発明の第2の実施態様に係る放射線検出器の別態様に係る構造(シンチレータアレイの構造)の一例を示す概略説明図である。
図13】本発明の第2の実施態様に係る放射線検出器の別態様に係る構造(シンチレータアレイの構造)の一例を示す概略説明図である。
図14】比較例としての放射線検出器(4層DOI検出器)におけるシンチレータアレイの構造を示す概略説明図である。
図15】本発明の第2の実施態様に係る放射線検出器を用いたシンチレータ素子の応答結果を示す図である。
図16】比較例としての放射線検出器を用いたシンチレータ素子の応答結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の放射線検出器、シンチレータユニット及び画像生成装置に係る実施形態を詳細に説明する。
なお、実施形態に記載する放射線検出器、シンチレータユニット及び画像生成装置については、本発明を説明するために例示したに過ぎず、これに制限されるものではない。
【0024】
[第1の実施態様]
(放射線検出器)
図1は、本発明の第1の実施態様に係る放射線検出器の構造を示す概略説明図(斜視図)である。
本実施態様に係る放射線検出器1Aは、対象から放出される放射線を検出するものであり、放射線検出器1Aに入射した放射線の位置情報を得ることができる位置弁別機能を有するものである。
【0025】
図1に示すように、放射線検出器1Aは、2次元的に配置された複数のシンチレータ素子2と、受光素子3とを備えている。また、放射線検出器1Aは、最外周に配置されたシンチレータ素子2Aと最外周以外に配置された他のシンチレータ素子2Bとを光学的に遮断する光漏出防止手段4と、最外周以外に配置された複数のシンチレータ素子2B間に設けられる光反射手段5とを備えている。
【0026】
シンチレータ素子2は、放射線を吸収してシンチレーション光と呼ばれる光を発生させるものである。このシンチレーション光は、吸収した放射線の線量に対応する光強度を有している。
【0027】
シンチレータ素子2としては、放射線の入射によってシンチレーション光を発生する結晶塊からなるものが挙げられる。より具体的には、例えば、BiGe12(BGO)、CeがドープされたLuSiO(LSO)、CeがドープされたLu2(1-X)2XSiO(LYSO)、CeがドープされたGd(Al,Ga)12(GAGG)、CeやZrがドープされたGdSiO(GSO)、CeがドープされたLu2(1-X)2XSiO(LGSO)、PrがドープされたLuAl12(LuAG)、CeがドープされたLaBr、CeがドープされたLaCl、CeがドープされたLu0.70.3AlO(LuYAP)、Lutetium Fine Silicate(LFS)などが挙げられる。
【0028】
シンチレータ素子2の形状については特に限定されないが、効率的な2次元的配置を行うために、略直方体状の外形形状を有するものとすることが好ましい。
また、シンチレータ素子2の大きさについても特に限定されない。シンチレータ素子2の大きさについては、例えば、所望する空間分解能等の検出精度や、シンチレータ素子2の加工に係るコスト等に応じ、適宜設定することが可能である。
【0029】
本実施態様におけるシンチレータ素子2は、図1に示すように、略直方体からなり、放射線が入射する側に位置する上面2aと、その反対側に位置し、かつ後述する受光素子3と光学的に結合される結合底面2bと、4つの側面2cとを有している。これらの面2a、2b、2cは、鏡面に加工されていてもよく、粗面に加工されていてもよい。より具体的には、これらの面2a、2b、2cは、切り出したままの粗面であってもよいし、切り出した後に機械研磨によって鏡面にされてもよいし、切り出した後に溶液に浸漬して表面を滑らかにする化学研磨によって鏡面にされてもよい。
【0030】
また、本実施態様におけるシンチレータ素子2は、側面2c同士が隣り合うように2次元的に配置される。なお、図1では、シンチレータ素子2を正方形状の平面的な2次元に配置しているが、円筒状の2次元に配置するものとしてもよい。
ここで、受光素子3上に配置するシンチレータ素子2の個数については特に限定されない。一般に、一列当たりに配置するシンチレータ素子2のサイズを小さくすることで、放射線検出器1Aとしての空間分解能は向上する。一方で、それにより一列当たりに配置するシンチレータ素子2の個数が増えることで、位置識別のためのシンチレータ素子2の応答差に精度が求められ、特に周縁部における位置弁別能が低下するおそれがある。しかし、本実施態様における放射線検出器1Aでは、後述する光漏出防止手段4を設けることにより、周縁部における位置弁別能を向上させることが可能となる。したがって、2次元的に配置されるシンチレータ素子2の個数は、所望する空間分解能を鑑み、適宜選択することが好ましい。
なお、本実施態様におけるシンチレータ素子2は、最外周に配置されたシンチレータ素子2Aと、最外周以外に配置されたシンチレータ素子2Bとを分けて説明及び図示を行っているが、これはシンチレータ素子2の配置箇所に伴う分類であり、シンチレータ素子2A及び2Bは同一の性質や構造を有するものである。
【0031】
受光素子3は、シンチレータ素子2と光学的に結合され、シンチレータ素子2からのシンチレーション光が入射した時の光強度に応じた電気信号を出力するものである。
また、本実施態様における受光素子3としては、1又は複数の受光素子3を平面配置し、入射したシンチレーション光の入射位置を検出可能とする。なお、受光素子3としては、シンチレーション光の入射位置が検出可能な構成であればよく、受光素子3の個数は特に限定されない。例えば、シンチレータ素子2の個数と受光素子3の個数を一致させるものとしてもよく、シンチレータ素子2の個数よりも受光素子3の個数を少なくするものとしてもよい。
【0032】
また、シンチレータ素子2の配置面積と受光素子3の配置面積は略同じとすることが好ましい。これにより、放射線検出器1Aに入射した放射線に対するシンチレータ素子2の応答全体に対し、受光素子3による検知が可能となるため、放射線検出器1Aの検出感度を高めることができる。
特に、後述するように、本実施態様における放射線検出器1Aを画像生成装置に適用する場合、受光素子3の配置面積よりもシンチレータ素子2の配置面積が小さいと、複数の放射線検出器1Aを配列させた際に、対象からの放射線がシンチレータ素子2に入射せず、応答が生じない隙間が存在することになる。この隙間の存在により、本来、受光素子3で検知すべき放射線(シンチレータ素子2の応答)を検知できなくなり、対象に係るデータの欠損が生じてしまう。そして、このデータ欠損が、画像の劣化につながってしまうことになる。したがって、シンチレータ素子2の配置面積と受光素子3の配置面積は略同じとし、放射線検出器1Aにおいてシンチレータ素子2の応答が生じない隙間を最小限とすることが好ましい。
【0033】
本実施態様における受光素子3は、例えば、位置検出型の光電子増倍管や半導体受光素子として公知のものを用いることができる。
【0034】
シンチレータ素子2と受光素子3を光学的に結合させる手段は特に限定されない。
例えば、シンチレータ素子2と受光素子3の間に、シンチレーション光に対して透明(シンチレーション光が透過可能)な光学部材を充填することが挙げられる。このような光学部材としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、空気、光学用透明接着剤等が挙げられる。
【0035】
光漏出防止手段4は、最外周に配置されたシンチレータ素子2Aと最外周以外に配置された他のシンチレータ素子2Bとを光学的に遮断し、シンチレータ素子2Aからのシンチレーション光が、シンチレータ素子2B側へ漏出することを防止するものである。
光漏出防止手段4を設けることにより、最外周に配置されたシンチレータ素子2Aの応答が受光素子3に入力される際の光強度分布と、他のシンチレータ素子2Bの応答が受光素子3に入力される際の光強度分布との間に差を生じさせることができ、最外周に配置したシンチレータ素子2Aの応答に係る位置演算結果と、他のシンチレータ素子2Bの応答に係る位置演算結果との間に有意な差を生じさせることが可能となる。これにより、放射線検出器1Aの周縁部における位置弁別能を向上させることが可能となる。
なお、光漏出防止手段4による位置弁別能向上に係る詳細については後述する。
【0036】
光漏出防止手段4としては、最外周に配置されたシンチレータ素子2Aと最外周以外に配置されたシンチレータ素子2Bとの間を光学的に遮断し、シンチレータ素子2A及び2Bの応答に係る光強度分布について差を生じさせることができるものであればよく、具体的な構造については特限定されない。
【0037】
図2は、本発明の第1の実施態様に係る放射線検出器における光漏出防止手段の一例を示す概略説明図である。図2Aは、図1のX-Y平面図である。また、図2Bは、光漏出防止手段の一例を示す斜視図である。
なお、図2は、最外周に配置されたシンチレータ素子2A及び光漏出防止手段4に係る構造を主に説明するためのものであり、シンチレータ素子2Bに係る構造は図示を省略している。
【0038】
光漏出防止手段4の具体的な例としては、例えば、図2に示すように、光反射面を有し、スリットのない平板40を用いることが挙げられる。
光漏出防止手段4として、このような平板40を2次元的に配置されたシンチレータ素子2の配列上に設置すると、最外周に配置されたシンチレータ素子2Aから他のシンチレータ素子2B側に向かって光が漏出する隙間が形成されない。また、平板40が光反射面を備えることで、最外周に配置されたシンチレータ素子2Aからのシンチレーション光は平板40で囲まれた空間内に反射し、他のシンチレータ素子2B側への光の漏出が抑制される。したがって、光漏出防止手段4によるシンチレータ素子の応答差を生じさせることについて、細かい加工を必要としない部材(平板40)を用いた簡易な構造で実現することが可能となる。また、光漏出防止手段4に係る部材に対する細かい加工が不要であることから、放射線検出器1Aとしてのコスト減が可能になるとともに、部材の加工の精度に依存せず、シンチレータ素子の応答差を生じさせることが可能となるという効果も奏する。
【0039】
本実施態様における平板40は、最外周に配置されたシンチレータ素子2Aと他のシンチレータ素子2Bの間を光学的に遮断し、光の漏出を防止することができるように設けられるものであればよい。例えば、図2には、平板40を折り曲げ、最外周に配置されたシンチレータ素子2Aを個々に平板40で囲むものを示しているが、これに限定されるものではない。
【0040】
図3及び図4は、本実施態様における放射線検出器1Aにおける光漏出防止手段の別態様を示す概略説明図である。図3A及び図4Aは、図1のX-Y平面図である。また、図3B及び図4Bは、光漏出防止手段の一例を示す斜視図である。
なお、図3及び図4は、最外周に配置されたシンチレータ素子2A及び光漏出防止手段4に係る構造を主に説明するためのものであり、図2と同様に、シンチレータ素子2Bに係る構造は図示を省略している。
【0041】
本実施態様における光漏出防止手段4の他の例としては、図3及び図4に示すように、1枚の平板41によって、最外周に配置した複数のシンチレータ素子2Aに対するシンチレーション光の漏出防止を行うものを含むことが挙げられる。なお、図3及び図4は、平板41の配置が異なる例を示しているものである。
これにより、光漏出防止手段4に係る部材点数を減らし、組立に係る作業負荷を低減させることが可能になるとともに、最外周に配置されたシンチレータ素子2Aの応答に係る光強度分布と、他のシンチレータ素子2Bの応答に係る光強度分布との間に差を生じさせることがより簡便となる。
【0042】
1枚の平板41により複数のシンチレータ素子2Aに対する光漏出防止手段4を形成する具体例としては、例えば、図3に示すように、最外周における各辺に配置された複数のシンチレータ素子2Aを囲うように平板41を配置することや、図4に示すように、最外周における各辺に配置された複数のシンチレータ素子2Aに対し、図3に示した平板41の構造と併せ、直線的に平板41を配置すること等が挙げられる。これにより、平板41がシンチレータ素子2Aと他のシンチレータ素子2Bとの間を光学的に遮断することができる。
また、図3及び図4に示すように、平板41で囲まれたシンチレータ素子2A間には、シンチレータ素子2Aと同幅の短冊状の平板42を別途設け、シンチレータ素子2A間の区画化を行うことが好ましい。これにより、放射線検出器1Aの周縁部における位置弁別能をより一層向上させることが可能となる。
さらに、図3及び図4に示すように、2次元的に配置されたシンチレータ素子2のうち、四方向の隅に当たるシンチレータ素子2Aについては、平板41とは別の平板43により個々に囲む形とすることが好ましい。これにより、最外周の隅に配置されたシンチレータ素子2Aと、最外周に配置されたその他のシンチレータ素子2Aとの間における光漏出についても防止することができ、位置弁別能を向上させることが可能となる。
【0043】
なお、本実施態様におけるシンチレータ素子2と光漏出防止手段4との組み合わせ(シンチレータアレイ)については、本発明におけるシンチレータユニットとして独立したものとすることができる。このシンチレータユニットは、既設の放射線検出器におけるシンチレータユニット(シンチレータアレイ)として適用することができる。これにより、周縁部における位置弁別能を向上させた本発明の放射線検出器を容易に形成することができる。
【0044】
光反射手段5は、最外周以外に配置されたシンチレータ素子2B間に設けられ、シンチレーション光を反射するものである。
光反射手段5を設けることで、最外周以外に配置されたシンチレータ素子2B間が区画され、受光素子3に入射するシンチレータ素子2Bの応答についての区画化を行うことができる。これにより、受光素子3におけるシンチレータ素子2Bの応答に係る識別が容易となる。
【0045】
光反射手段5に係る部材としては、光反射面を有し、かつスリットが設けられた平板50を組み合わせてなるものが挙げられる。
図5は、本実施態様の放射線検出器における光反射手段の一例を示す概略説明図である。なお、図5は、最外周以外に配置されたシンチレータ素子2B及び光反射手段5に係る構造を主に説明するためのものであり、シンチレータ素子2A及び光漏出防止手段4に係る構造は図示を省略している。
【0046】
例えば、図5に示すように、光反射手段5として、シンチレータ素子2Bの幅と略同間隔ごとにスリット51が設けられた平板50を複数枚組み合わせて格子構造を形成し、シンチレータ素子2Bを配置する空間Sを形成することが挙げられる。これにより、シンチレータ素子2Bの配置における位置決めや区画化を容易に行うことができるとともに、組立に係る作業負荷を低減させることが可能となる。また、光反射手段5の作製において、レーザー加工のような作業コスト等の面から負担となる作業工程を必要とせず、さらに、同一素材で形成することが可能となるため、放射線検出器1Aのイニシャルコストを低減することができるという利点もある。
【0047】
平板50に設けられるスリット51自体の幅は、平板50同士を組み合わせることができるものであればよく、特に限定されないが、組立の容易性や、シンチレータ素子2を配置する格子構造(空間S)の安定した保持という観点から、平板50の厚みよりもスリット51自体の幅が長くなるよう設計し、組み合わせた際のスリット51間に余白が生じるようにすることが好ましい。
【0048】
このとき、最外周以外に配置したシンチレータ素子2B間については、光反射手段5であるスリット51からシンチレーション光が漏出することになる。このとき、最外周以外の箇所におけるシンチレータ素子2Bの応答は、区画外に一定の広がりを有する光強度分布として受光素子3に入射することになる。このため、本来区画された範囲よりも広域な光強度分布が入力されることになり、受光素子3におけるシンチレータ素子2の応答に係る識別に関する演算(特に重心演算)における演算精度を高めることが可能となる。これにより、放射線検出器全体としての位置弁別能を向上させることが可能となる。
また、このとき、同じ受光素子3上にシンチレータ素子2Bが複数存在する場合であっても、隣の受光素子3が受ける光の割合の大きさが、シンチレータ素子2Bごとに異なるものとなるため、シンチレータ素子2Bの応答に係る識別が可能となる。具体例をもって説明すると、例えば、同じ受光素子3上に2個のシンチレータ素子2Bが左右に並んで存在した場合に、右側のシンチレータ素子2Bの応答に係る光強度分布が、右隣の受光素子3上に漏出する光の大きさと、左側のシンチレータ素子2Bの応答に係る光強度分布が、右隣の受光素子3上に漏出する光の大きさは異なるものになる。このため、重心演算による位置演算結果に有意な差が生じ、同じ受光素子3上で隣り合うシンチレータ素子2B間の応答に係る識別についても可能となる。したがって、放射線検出器全体としての位置弁別能向上と併せ、受光素子3とシンチレータ素子2の配置に関する緻密な調整等が不要となるという利点がある。
【0049】
本実施態様の放射線検出器1Aによる放射線の位置情報取得において、光漏出防止手段4を設けることによる位置弁別能向上について、図6及び図7に基づき、説明する。
図6は、本実施態様の放射線検出器1Aに対して放射線が入射した際の模式図である。なお、図6は、本実施態様の放射線検出器1Aを側面から見たものである(図1のX-Z図に相当)。
また、図7は、本実施態様とは異なる構成を有する放射線検出器100に対して放射線が入射した際の模式図であり、放射線検出器100を側面から見たものである。なお、図7に示した放射線検出器100は、本実施態様における光漏出防止手段4に代えて、光反射手段5を全面に設けたものであり、比較のために示すものである。
【0050】
図6及び図7に示すように、放射線検出器1A及び100に対し、対象から放出された放射線が入射することで、シンチレータ素子2は放射線を吸収し、シンチレーション光が発生する。そして、発生したシンチレーション光は、発生した位置から受光素子3に向かって進行しつつ、放射状に拡散する。これにより、シンチレーション光は、光強度分布として検出されることになる。この光強度分布の重心を求める演算(重心演算)を行うことで、シンチレーション光の発生位置に係る2次元的な位置情報を得ることが可能となる。
【0051】
図6及び図7に示すように、最外周以外に配置されたシンチレータ素子2Bに対し、放射線が入射すると、シンチレータ素子2Bからのシンチレーション光は、受光素子3に対して放射状に拡散した光強度分布Dとして入力される。そして、本発明者らは、特に光反射手段5がスリット51を設ける構造である場合、図6及び図7に示すように、光強度分布Dは、シンチレータ素子2B上部からスリット51を介して隣接するシンチレータ素子2B側に広がり、この光強度分布Dの広がり幅(光の漏出分)が有意な量になることを見出した。この場合、光反射手段5により区画された範囲よりも広域において受光素子3による検出データの取得が行われることになる。このため、放射線が入射した位置情報を得るための演算(特に重心演算)を行う際に、演算精度を高めることが可能となる。
【0052】
しかし、図7に示すように、光漏出防止手段4を設けずに、スリット51を設けた平板50からなる光反射手段5を全面に設ける場合、最外周に配置されたシンチレータ素子2Aの応答(光強度分布D)が、光反射手段5のスリット51を介し、その隣のシンチレータ素子2B側に偏在化した形で受光素子3に入射することとなる。このため、シンチレータ素子2Aの応答に係る光強度分布を用いた重心演算による位置演算結果と、シンチレータ素子2Bの応答に係る位置演算結果とが近接してしまい、シンチレータ素子2A及び2Bの応答に係る位置情報の区別が困難となり、十分な位置弁別能が得られない。
【0053】
一方、図6に示すように、光漏出防止手段4を設けることにより、最外周に配置されたシンチレータ素子2Aの応答が受光素子3に入力される際の光強度分布と、他のシンチレータ素子2Bの応答が受光素子3に入力される際の光強度分布との間に差を生じさせることが可能となる。すなわち、シンチレータ素子2Aの応答(光強度分布D)は、シンチレータ素子2Aの直下に配置され、光学的に結合している受光素子3のみに入射されることになる。
このため、最外周に配置されたシンチレータ素子2Aからの応答に係る光強度分布が、その隣のシンチレータ素子2B側の受光素子3に入射することがなく、受光素子3が検知する2つのシンチレータ素子2A及び2Bの応答に係る光強度分布の間に差を生じさせることができる。そして、最外周に配置されたシンチレータ素子2Aからの応答に係る位置演算結果と、その隣のシンチレータ素子2Bからの応答に係る位置演算結果との間に有意な差が生じるものとなり、受光素子3で検知する2つのシンチレータ素子2A及び2Bの応答を個々識別することが可能となる。これにより、放射線検出器1Aの周縁部における位置弁別能を向上させることが可能となる。
【0054】
(放射線検出器によるシンチレータ素子の応答に関する実施例)
以下、本実施態様の放射線検出器1Aによる放射線の位置情報取得に係る実施例を示す。
実施例としては、放射線検出器1Aに入射した放射線の位置情報取得において、シンチレータ素子2からのシンチレーション光を受光素子3で検出し、さらに受光素子3で検出した電気信号を重心演算により演算して得られた位置情報に係るXYマップを、シンチレータ素子の応答結果として説明する。
【0055】
図8は、本実施態様における放射線検出器1Aを用いたシンチレータ素子の応答結果を示す図(XYマップ)である。
また、図9は、放射線検出器100を用いたシンチレータ素子の応答結果を示す図(XYマップ)である。なお、図9における放射線検出器100は、図7に示した放射線検出器100と同様の構成を有するものであり、比較のために示すものである。
実施例(放射線検出器1A)及び比較例(放射線検出器100)とも、シンチレータ素子2を17列×17列に配列し、シンチレータ素子2の配置面積と受光素子3の配置面積を略同じとしたものを用いた。また、シンチレータ素子2としてはLYSOを用いた。
【0056】
放射線検出器1Aに入射した放射線は、1本ずつが検出され、位置演算によって求められた1本の放射線検出の位置情報がXYマップ上の1点として表される。そして、放射線検出器1Aに一定量の放射線を入射することで、XYマップ上には位置演算結果が蓄積していく。そして、蓄積した位置演算結果(位置情報を示す点)をカウントし、これを基に作成したものが図8及び図9に示す図(XYマップ)となる。
図8及び図9において、黒く示されたエリアは、位置情報を示す点のカウントが低い部分であり、白い点は、位置情報を示す点に関する分布のピークを示している。1つのシンチレータ素子からの応答であるシンチレーション光は、毎回略同じ光強度分布を示すため、位置情報を示す点はXYマップ上の同じ位置に蓄積していき、ピークを形成することになる。したがって、XYマップ上の白い点1つと、シンチレータ素子1個とが対応することになる。
【0057】
図8及び図9に示すようなXYマップは、放射線検出器ごとにあらかじめ作成されるものである。これにより、その放射線検出器で新たに放射線を検出したときに、位置演算結果がXYマップ上のどこに来たかによって、どのシンチレータ素子で検出したかを判断することができる。
【0058】
比較例として図9に示したXYマップでは、周縁部とその隣におけるシンチレータ素子の応答(位置情報)が近接し、位置情報の識別が十分ではないことが分かる。これは、最外周(端)に配置されたシンチレータ素子(本実施態様におけるシンチレータ素子2Aに相当)とその隣に配置されたシンチレータ素子(本実施態様におけるシンチレータ素子2Bに相当)からの応答に係る光強度分布が類似してしまい、この光強度分布に基づく位置演算結果がXYマップ上の同じような位置に蓄積されてしまっていることによるものである。
このため、新しく放射線検出を行い、位置演算結果が周縁部領域を示した場合、最外周に配置されたシンチレータ素子とその隣に配置されたシンチレータ素子のどちらで検出したのかを判断することができなくなる。
【0059】
一方、本実施態様の放射線検出器1Aを用いたシンチレータ素子の応答結果として、図8に示したXYマップでは、周縁部とその隣におけるシンチレータ素子の応答(位置情報)について明確に区別され、周縁部における位置弁別能が向上していることが分かる。これは、本実施態様における放射線検出器1Aにより、最外周(端)に配置されたシンチレータ素子2Aとその隣に配置されたシンチレータ素子2Bからの応答に係る光強度分布に差が生じるため、この光強度分布に基づく位置演算結果がXYマップ上でそれぞれ別の位置に蓄積され、明確に区別することができ、内側に配置されたシンチレータ素子2B間と同様の分解能が、最外周(端)に配置されたシンチレータ素子2Aにおいても得られることになる。
このため、本実施態様における放射線検出器1Aでは、新しく放射線検出を行い、位置演算結果が周縁部領域を示した場合に、最外周に配置されたシンチレータ素子とその隣に配置されたシンチレータ素子のどちらで検出したのかを判断することが可能となる。
【0060】
以上のように、本実施態様における放射線検出器1Aでは、最外周に配置したシンチレータ素子2Aに対し、他のシンチレータ素子2Bと光学的に遮断し、他のシンチレータ素子2B側へのシンチレーション光の漏出を防止する光漏出防止手段4を設けることで、最外周に配置されたシンチレータ素子2Aの応答が受光素子3に入力される際の光強度分布と、他のシンチレータ素子2Bの応答が受光素子3に入力される際の光強度分布との間に差異を生じさせることが可能となる。このため、最外周に配置されたシンチレータ素子2Aからの応答に係る位置演算結果と、その隣のシンチレータ素子2B(2B)からの応答に係る位置演算結果との間に有意な差が生じるものとなり、受光素子3で検知する2つのシンチレータ素子の応答を個々識別することが可能となる。これにより、放射線検出器1Aの周縁部における位置弁別能を向上させることが可能となる。
【0061】
(画像生成装置)
図10は、本発明の第1の実施態様における画像生成装置の構造を示す概略説明図である。
図10に示すように、本実施態様における画像生成装置10は、上述した放射線検出器1Aと、画像生成部11を備えている。また、放射線検出器1Aと画像生成部11は、データの送受信が可能となるように接続されている。
【0062】
図10には、1つの放射線検出器1Aと画像生成部11が接続されているものを示しているが、本実施態様における画像生成装置10に組み込まれる放射線検出器1Aの数は、特に限定されない。例えば、対象を囲むように、複数の放射線検出器1Aをリング状に配置するものとし、それぞれの放射線検出器1Aからの検出データを、画像生成部11に送信するものとしてもよい。
【0063】
画像生成部11は、放射線検出器1Aで得られた検出データを用い、画像生成を行うものである。
画像生成部11としては、放射線検出器1Aで得られた放射線の入射位置情報に係る検出データを取得し、この検出データを基に、画像生成することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、放射線検出器1Aからの検出データを基に、対象から放出される放射線の位置情報に係る断層像を得るための画像処理手段を備えること等が挙げられる。
また、画像生成部11としては、放射線検出器1Aで得られた検出データに対する演算(重心演算)などを行う演算手段を設けるものとしてもよい。なお、演算手段は画像処理手段の中に組み込まれるものとしてもよい。
さらに、画像生成部11で生成した画像は、図示しない保存部に保存し、必要に応じて外部に出力するものとしてもよい。
なお、画像生成部11は、例えば、CPUなどのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現されることが好ましい。
【0064】
画像生成装置10において、放射線検出器1Aで得られた放射線の入射位置情報に係る検出データの取得及び画像生成部11における画像生成に係る一連の操作については、必要なプログラムを作成し、CPUなどのハードウェアプロセッサにより実行することが好ましい。これにより、大量のデータを速やかに取得、演算することができ、画像生成に係る一連のプロセスを円滑に実施することが可能となる。また、このプログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよく、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納し、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされるものとしてもよい。
【0065】
本実施態様における画像生成装置10は、放射線検出器1Aで得られた検出データを用いることで、放射線の入射位置情報に係る精度の高いデータを基に、画像生成を行うことが可能となる。これにより、高画質の画像生成を可能とする空間分解能の高い画像生成装置を提供することが可能となる。
【0066】
また、本実施態様における画像生成装置10は、医療診断装置の一つであるPET装置として利用することが好ましい。本実施態様における画像生成装置10をPET装置として利用することで、高画質の画像生成が可能となり、患者に投与された放射性薬剤に由来する放射線の位置情報について精度よく把握することができる。これにより、患者に対する適切な処置(治療)等につなげることが可能となる。
【0067】
〔第2の実施態様〕
第2の実施態様に係る放射線検出器1Bは、第1の実施態様に係る放射線検出器1Aにおけるシンチレータ素子2と光漏出防止手段4の組み合わせをシンチレータアレイ6とし、このシンチレータアレイ6を複数積層するものである。
【0068】
本実施態様におけるシンチレータアレイ6は、上述した2次元的に配置されたシンチレータ素子2と光漏出防止手段4の組み合わせからなるものである。したがって、第1の実施態様における説明と同様、上述した光漏出防止手段4による効果に基づき、シンチレータアレイ6端部に係る位置弁別能を向上させることが可能となる。
すなわち、本実施態様における放射線検出器1Bは、シンチレータ素子2、光漏出防止手段4を設けたシンチレータアレイ6を形成し、積層することにより、シンチレータアレイ6の各層において、最外周に設けられたシンチレータ素子2Aの応答に係る光強度分布と、他のシンチレータ素子2Bの応答に係る光強度分布との間に差を生じさせることができ、各シンチレータ素子からの応答に係る位置演算結果の間に有意な差が生じるものとなることで、各シンチレータ素子の応答を個々識別することが可能となるものである。
これにより、積層したシンチレータアレイ6においても、シンチレータアレイ6端部に係る位置弁別能を向上させるとともに、放射線検出器1Bの応答性(感度)を高めることができる。
【0069】
また、本実施態様におけるシンチレータアレイ6には、最外周以外に配置されたシンチレータ素子2B間に、上述した光反射手段5を備えるものとしてもよい。これにより、第1の実施態様における説明と同様、上述した光漏出防止手段4による効果及び光反射手段5による効果に基づき、シンチレータアレイ6全体としての位置弁別能を向上させることが可能となる。
【0070】
図11は、本発明の第2の実施態様における放射線検出器全体の構造を示す概略説明図(斜視図)である。
図11に示すように、第2の実施態様に係る放射線検出器1Bは、第1の実施態様に係る放射線検出器1Aにおけるシンチレータ素子2と、光漏出防止手段4と、光反射手段5の組み合わせをシンチレータアレイ6とし、このシンチレータアレイ6を複数積層するものである。なお、第1の実施態様の構造と同じものについては、説明を省略する。
【0071】
図11に示した放射線検出器1Bは、第1の実施態様における説明と同様、上述した光漏出防止手段4及び光反射手段5による効果に基づき、シンチレータアレイ6端部に配置されたシンチレータ素子2Aに係る位置弁別能を向上させるとともに、シンチレータアレイ6端部以外に配置されたシンチレータ素子2Bの応答に係る識別を容易に行うことが可能となる。
【0072】
また、本実施態様における放射線検出器1Bの別態様としては、シンチレータ素子2、光漏出防止手段4及び光反射手段5を含んでなるシンチレータアレイ6を形成し、積層する際に、複数積層したシンチレータアレイ6の各層ごとに、シンチレータアレイ6における光反射手段5の配置箇所を異なる構造とすることが挙げられる。
【0073】
ここで、従来の放射線検出器においても、2次元的に配置した複数のシンチレータ素子からなるシンチレータアレイを複数積層することで、放射線検出器としての応答性(感度)を高めることは知られている。このような放射線検出器としては、例えば、4層DOI検出器と呼ばれるものが挙げられる。
【0074】
4層DOI検出器としては、シンチレータ素子と、シンチレータ素子間を区画する手段(本実施態様における光反射手段5に相当)とを備えるシンチレータアレイを積層する構造が知られている。このとき、積層方向に隣接する各層同士におけるシンチレータ素子間を区画する手段(光反射手段5の位置)が全て連続した配置となると、シンチレータ素子の応答に係る適切な区画化が困難となる。このため、このシンチレータ素子間を区画する手段は、全て連続した配置とはならないように設計し、積層した全てのシンチレータアレイにおけるシンチレータ素子の応答を適切に区画させて、識別可能とすることが好ましい。
【0075】
以下、本実施態様における放射線検出器1Bの別態様に係る構造の一例について、従来の4層DOI検出器の構造と比較して説明を行う。なお、以下、本実施態様の放射線検出器1Bとしては、シンチレータアレイ6が、シンチレータ素子2、光漏出防止手段4及び光反射手段5を備えるものについて説明を行うが、これに限定されるものではない。
【0076】
図12及び図13は、本実施態様の放射線検出器1Bにおける各層のシンチレータアレイ6の構造についての一例を示すものである。なお、図12A及び図13Aは、各層におけるシンチレータアレイの構造(平面図)を示し、図12B及び図13Bは、シンチレータアレイを積層した際の構造(側面図)を示すものである。
一方、図14は、従来の4層DOI検出器におけるシンチレータアレイ構造の一例を示すものである。なお、図14Aは、各層におけるシンチレータアレイの構造(平面図)を示し、図14Bは、シンチレータアレイを積層した際の構造(側面図)を示すものである。また、図14におけるシンチレータ素子及び光反射手段は、それぞれ本実施態様におけるシンチレータ素子2及び光反射手段5に相当するものとして示している。
なお、図12図14においては、説明のために、シンチレータ素子2を6列×6列に配列したシンチレータアレイ6を4層分積層したものを示しているが、これに限定されるものではない。
【0077】
従来の放射線検出器(4層DOI検出器)200では、シンチレータアレイ6として、各層(第1層~第4層)で光反射手段5が配置される箇所が異なる構造のものが知られている。より具体的には、例えば、図14Aに示すように、第1層(最上段)のシンチレータアレイ6において、シンチレータ素子2間に設けられる光反射手段5が一列置きとなるように配置されるものとし、他の層(第2層~第4層)においては、第1層のシンチレータアレイ6における光反射手段5の配置位置から、シンチレータ素子2の一列分ずつ、X方向あるいはY方向にずらしていくものが挙げられる。
このシンチレータアレイ6を積層した場合、図14Bに示すように、Y方向から見た積層状態のシンチレータアレイ6では、積層方向に隣接したシンチレータアレイ6同士における光反射手段5は交互に配置され、連続した配置とはなっていない。しかし、X方向から見た積層状態のシンチレータアレイ6では、第1層及び第2層、並びに、第3層及び第4層において、光反射手段5が連続した配置となる。
このため、従来の放射線検出器200では、シンチレータアレイ6のX方向端部においては、シンチレータ素子2の区画分けが重なるため、位置弁別能の低下につながることになってしまっている。また、従来の放射線検出器200では、特にシンチレータアレイの端部において、光反射手段5が連続した配置とならないような構造とするための設計上の制約が大きく、機器全体としての構造設計が複雑化するという問題もある。
【0078】
一方、本実施態様における放射線検出器1Bとしては、シンチレータアレイ6として、シンチレータアレイ6端部(最外周)には光漏出防止手段4が設けられ、各シンチレータアレイ6層(第1層~第4層)において光反射手段5が配置される箇所が異なる構造とすることが挙げられる。ここで、光反射手段5の配置箇所については、上述した従来の放射線検出器200と同様に、シンチレータアレイ6の各層ごとに異なるものとなればよく、特に限定されない。
【0079】
本実施態様における放射線検出器1Bの一例としては、図12Aに示すように、シンチレータ素子2B間に配置される光反射手段5については、従来の放射線検出器200と同様に、第1層(最上段)のシンチレータアレイ6において、シンチレータ素子2に対して一列置きとなるような配置がなされるものとし、他の層(第2層~第4層)においては、第1層のシンチレータアレイ6における光反射手段5の配置位置から、シンチレータ素子2の一列分ずつ、X方向あるいはY方向にずらしていくものが挙げられる。そして、各層のシンチレータアレイ6の最外周には、光漏出防止手段4により個々区画されたシンチレータ素子2Aを設けるものが挙げられる。
これにより、シンチレータアレイ6の端部(最外周)では、光漏出防止手段4によりシンチレータ素子からの応答差が生じることで、シンチレータアレイ6端部におけるシンチレータ素子2Aの応答を適切に区画することが容易になる。また、一方、シンチレータアレイ6の最外周より内側では、従来の放射線検出器200のように、シンチレータアレイ6の各層ごとに光反射手段5の配置箇所を異なるものとすることで、シンチレータ素子2Bに対して設けられる光反射手段5については、積層方向に隣接する光反射手段5が全て連続した配置とはならないような構造とすることができる。すなわち、各層からのシンチレータ素子2Bの応答を適切に区画分けした状態で、受光素子3に入射させることが可能となる。
したがって、図12に示した放射線検出器1Bでは、放射線検出器1Bの位置弁別能を向上させることと、放射線検出器1Bの応答性(感度)を高めることを両立することが可能となる。また、シンチレータアレイ6全体としての構造設計が容易となるという効果も奏する。
【0080】
また、本実施態様における放射線検出器1Bの別態様としては、光反射手段5を、最外周に配置されたシンチレータ素子2A間に対しても設けることが挙げられる。
【0081】
本実施態様における放射線検出器1Bの別態様に係る一例としては、例えば、図13Aに示すように、シンチレータ素子2B間に配置される光反射手段5については、従来の放射線検出器200と同様に、第1層(最上段)のシンチレータアレイ6において、シンチレータ素子2に対して一列置きとなるような配置がなされるものとし、他の層(第2層~第4層)においては、第1層のシンチレータアレイ6における光反射手段5の配置位置から、シンチレータ素子2の一列分ずつ、X方向あるいはY方向にずらしていくものが挙げられる。
一方、最外周に配置されたシンチレータ素子2Aについては、光漏出防止手段4で区画された範囲内において、積層方向に隣接する光反射手段5同士が連続した配置とならないように、光反射手段5の配置箇所を設定することが挙げられる。具体的には、シンチレータ素子2Bに設けられた光反射手段5から延伸して設けられる第1光反射手段5Aと、第1光反射手段5Aとは独立して設けられる第2光反射手段5Bとを用い、図13Aに示すように、シンチレータアレイ6の最外周における光漏出防止手段4で区画された範囲内で、第1光反射手段5Aと第2光反射手段5Bとが連続した配置とならないように、各光反射手段5A及び5Bの配置箇所を設定する。
このシンチレータアレイ6を積層した場合、図13Bに示すように、X方向及びY方向のいずれの方向から見ても、積層方向に隣接したシンチレータアレイ6同士における各光反射手段5A及び5Bは交互に配置され、連続した配置とはなっていない。
また、図13Aに示すように、本実施態様における放射線検出器1Bでは、シンチレータアレイ6の端部(最外周)において光漏出防止手段4を設け、かつ光反射手段5として、第1光反射手段5A及び第2光反射手段5Bとを設けることにより、シンチレータ素子2A側における構造設計に際し、シンチレータ素子2B側に設けられる光反射手段5の構造とは切り離し、位置弁別能を高めるための最適構造を独立して設計することができる。これにより、シンチレータアレイ6としての構造設計に係る制約が大きく低減する。また、シンチレータ素子2A間全てに光漏出防止手段4を設けるよりも、部品点数を少なくすることが可能である。
したがって、図13に示す放射線検出器1Bでは、各シンチレータアレイ6層からのシンチレータ素子2の応答に係る光強度分布について差を生じさせた状態で、受光素子3に入射させることができ、放射線検出器1Bの位置弁別能を向上させることと、放射線検出器1Bの応答性(感度)を高めることを両立することが可能となる。また、シンチレータアレイ6全体としての構造設計及び組立が容易となるという効果を奏する。
【0082】
また、シンチレータアレイ6を積層する場合、光漏出防止手段4は、シンチレータアレイ6の積層方向にわたる一体的構造を有する部材からなるものとすることが好ましい。より具体的には、光漏出防止手段4を、シンチレータアレイ6の積層分の高さ(図12及び図13では、シンチレータアレイ6の4層分の高さ(Z方向の高さ))を有する平板とすることが挙げられる。また、このとき、光漏出防止手段4としての平板の高さは、シンチレータアレイ6の積層分の高さと一致させることに限定するものではない。光漏出防止手段4の別の例としては、例えば、4層からなるシンチレータアレイ6に対し、シンチレータアレイ6の2層分の高さ(Z方向の高さ)を有する平板からなるものを光漏出防止手段4とすることなどが挙げられる。
これにより、シンチレータアレイ6を積層する際に、光漏出防止手段4の作製及び配置が容易になるとともに、光漏出防止手段4による光学的遮断をより確実に行うことが可能となる。
【0083】
さらに、光漏出防止手段4としては、シンチレータアレイ6の積層方向にわたる一体的構造と併せて、シンチレータアレイ6内のシンチレータ素子2の配列方向にわたる一体的な構造を有するものとしてもよい。より具体的には、シンチレータアレイ6の積層分の高さ(図12及び図13では、シンチレータアレイ6の4層分の高さ(Z方向の高さ))を有し、かつシンチレータアレイ6の辺の長さ(図12及び図13では、シンチレータ素子2の6列分の長さ(X方向あるいはY方向の長さ))を有する平板とすることが挙げられる。これにより、光漏出防止手段4に係る部材点数を減らすとともに、最外周に配置されたシンチレータ素子2Aの応答に係る光強度分布と、他のシンチレータ素子2Bの応答に係る光強度分布との間に差を生じさせることがより簡便となる。
また、上述したように、光漏出防止手段4としての平板の高さは、シンチレータアレイ6の積層分の高さと一致させることに限定するものではなく、例えば、図12及び図13に示した光漏出防止手段4を、シンチレータアレイ6の2層分の高さ(Z方向の高さ)を有する平板からなるものとして、積層するものとしてもよい。
【0084】
(放射線検出器によるシンチレータ素子の応答に関する実施例)
以下、本実施態様の放射線検出器1Bによる放射線の位置情報取得に係る実施例を示す。
実施例としては、放射線検出器1Bに入射した放射線の位置情報取得において、シンチレータ素子2からのシンチレーション光を受光素子3で検出し、さらに受光素子3で検出した電気信号を重心演算により演算して得られた位置情報に係るXYマップを、シンチレータ素子の応答結果として説明する。
【0085】
図15は、本実施態様における放射線検出器1Bを用いたシンチレータ素子の応答結果を示す図(XYマップ)である。
また、図16は、比較例となる放射線検出器を用いたシンチレータ素子の応答結果を示す図(XYマップ)である。なお、図16における放射線検出器は、本実施態様における光漏出防止手段4に代えて、光反射手段5を全面に設けたものであり、比較のために示すものである。
実施例(図13に示した放射線検出器1B)及び比較例とも、シンチレータアレイ6内のシンチレータ素子2を16列×16列に配列し、このシンチレータアレイ6を4層分積層している。また、シンチレータアレイ6の面積と受光素子3の配置面積を略同じとしたものを用いている。さらに、シンチレータ素子2としてはGAGGを用いている。
【0086】
比較例として図16に示したXYマップでは、周縁部とその隣におけるシンチレータ素子の応答(位置情報)が近接し、位置情報の識別が十分ではないことが分かる。
一方、本実施態様の放射線検出器1Bを用いたシンチレータ素子の応答結果として、図15に示したXYマップでは、周縁部とその隣におけるシンチレータ素子の応答(位置情報)について明確に区別され、周縁部における位置弁別能が向上していることが分かる。
【0087】
以上のように、本実施態様における放射線検出器1Bでは、周縁部における位置弁別能を向上させることのできるシンチレータ素子と光漏出防止手段の組み合わせからなるシンチレータアレイを複数積層することで、放射線検出器の位置弁別能を向上させるとともに、放射線検出器の応答性(感度)を高めることが可能となる。
【0088】
また、本実施態様における放射線検出器1Bは、第1の実施態様に示した画像生成装置における放射線検出器として用いるものとしてもよい。これにより、さらに高画質の画像生成を可能とする空間分解能の高い画像生成装置を提供することが可能となる。
【0089】
なお、上述した実施態様は、放射線検出器、シンチレータユニット及び画像生成装置の一例を示すものである。本発明に係る放射線検出器、シンチレータユニット及び画像生成装置は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る放射線検出器、シンチレータユニット及び画像生成装置を変形してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の放射線検出器、シンチレータユニットは、対象から放出される放射線の検出に利用されるものである。特に、入射した放射線の位置情報を得ることができる位置弁別機能を有するものとして好適に利用される。
また、本発明の画像生成装置は、対象から放出される放射線の位置情報に基づく画像生成に利用されるものである。特に、医療診断装置の一つであるPET装置として好適に利用される。
【符号の説明】
【0091】
1A,1B 放射線検出器、2,2A,2B シンチレータ素子、2a 上面、2b 結合底面、2c 側面、3 受光素子、4 光漏出防止手段、40,41,42,43 平板、5 光反射手段、5A 第1光反射手段、5B 第2光反射手段、50 平板、51 スリット、6 シンチレータアレイ、10 画像生成装置、11 画像生成部、100,200 比較例となる放射線検出器、D~D 光強度分布、S 空間

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16