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特許7584156錠剤分割装置、錠剤分包機及び錠剤分割方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】錠剤分割装置、錠剤分包機及び錠剤分割方法
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
A61J3/00 310F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022082196
(22)【出願日】2022-05-19
(65)【公開番号】P2023170434
(43)【公開日】2023-12-01
【審査請求日】2024-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100204456
【弁理士】
【氏名又は名称】調 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】大村 義人
(72)【発明者】
【氏名】大ヶ谷 俊治
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-45541(JP,A)
【文献】特開2012-179127(JP,A)
【文献】特開2012-29800(JP,A)
【文献】特開2001-61945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤の落下経路の途中に配置されて、前記錠剤を指定位置で保持するための保持部と、
前記落下経路に進退して前記錠剤を裁断可能な刃を備えた裁断部と、
前記錠剤の中心位置を前記裁断部の進入位置に一致させるための中心位置判定手段と、
を備える錠剤分割装置であって、
前記保持部は、前記進入位置よりも上部にあって前記落下経路の側面を形成するとともに、前記落下経路と垂直な方向に移動可能な第1の可動部材と、
前記進入位置の下部において当該落下経路を狭めるように位置し、前記第1の可動部材と平行かつ逆方向に移動可能な第2の可動部材と、
を有し、
前記中心位置判定手段は、前記第1の可動部材と前記第2の可動部材とが、それぞれの移動方向において一致したことを条件として、前記錠剤の中心位置が前記指定位置に一致したと判断することを特徴とする錠剤分割装置。
【請求項2】
請求項1に記載の錠剤分割装置において、
前記中心位置判定手段は、前記第1の可動部材と、前記第2の可動部材とが前記錠剤から押圧される圧力が均等になったことを条件として、前記錠剤の中心位置が前記指定位置に一致したと判断することを特徴とする錠剤分割装置。
【請求項3】
請求項1に記載の錠剤分割装置において、
前記第1の可動部材と前記第2の可動部材とに対向し、前記落下経路の一部を構成する第3の可動部材を有し、
前記第3の可動部材は、前記錠剤を前記第1の可動部材と前記第2の可動部材とに向けて押圧する押圧部を有することを特徴とする錠剤分割装置。
【請求項4】
請求項3に記載の錠剤分割装置において、
前記押圧部は、互いに前記進入位置を挟んで位置する2つの支柱によって前記第3の可動部材と接続され、
前記支柱の少なくとも1方に設けられて、前記押圧部が移動したことを検知する検知手段を有し、
前記中心位置判定手段は、前記押圧部が移動したときに前記錠剤の中心位置が前記指定位置に一致したと判断することを特徴とする錠剤分割装置。
【請求項5】
請求項1に記載の錠剤分割装置において、
前記第1の可動部材と、前記第2の可動部材とは、何れも前記落下経路に対して傾斜した傾斜部を有し、
前記傾斜部が前記錠剤の前端部及び後端部にそれぞれ当接して前記錠剤の中心位置が前記指定位置に一致するように保持することを特徴とする錠剤分割装置。
【請求項6】
請求項5に記載の錠剤分割装置において、
前記第1の可動部材と前記第2の可動部材とは互いに相対的に逆方向に移動し、
前記保持部は、前記第1の可動部材の傾斜部において最も下端の点と、前記第2の可動部材の傾斜部において最も上端の点と、が前記移動方向において重なり合う位置で前記錠剤を保持することを特徴とする錠剤分割装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1つに記載の錠剤分割装置において、
前記裁断部は、前記中心位置判定手段が、前記錠剤の中心位置が前記指定位置に一致したと判断した後に前記落下経路に進入して前記錠剤を裁断することを特徴とする錠剤分割装置。
【請求項8】
請求項7に記載の錠剤分割装置を有する錠剤分包機。
【請求項9】
錠剤の落下経路の途中に配置されて、前記錠剤を指定位置で保持するための保持手段と、
前記落下経路に進退して前記錠剤を裁断する錠剤裁断手段と、
前記錠剤の中心位置を前記錠剤裁断手段の進入位置に一致させるための中心位置判定手段と、
を用いて行う錠剤分割方法であって、
前記保持手段は、前記進入位置よりも上部にあって前記落下経路の側面を形成するとともに、前記落下経路と垂直な方向に移動可能な第1の可動部材と、
前記進入位置の下部において当該落下経路を狭めるように位置し、前記第1の可動部材と平行かつ逆方向に移動可能な第2の可動部材と、
を制御し、
前記錠剤が前記第2の可動部材に当接する位置まで移動してきた際に、前記第1の可動部材を前記落下経路の当該第1の可動部材と対向する壁面に向かって移動させるステップと、
前記第2の可動部材を前記落下経路の対向する壁面から離間する方向へ移動させるステップと、
前記中心位置判定手段が、前記第1の可動部材と前記第2の可動部材とを移動させるステップにおいて、前記中心位置と前記進入位置とが一致したと判断する判定ステップと、
前記錠剤裁断手段によって前記錠剤を裁断する裁断ステップと、
を実行する錠剤分割方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、錠剤を裁断部にて裁断して幾つかの錠剤裁断片に分割する錠剤分割装置と、当該錠剤分割装置を備える錠剤分包機及び錠剤分割方法に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤を分包して個別に包装する錠剤分包機において、服用量の調整等を目的として、錠剤を半分あるいは複数個の断片に分割して分包することがしばしば行われている。
錠剤を2片に分割する錠剤分割装置として、1錠ずつ受けた錠剤にカッターを押し下げて錠剤を裁断する錠剤分割機の他、一錠単位で保持・収容されていた錠剤を一錠未満の単位で後続の包装装置等に自動供給できるよう、錠剤通過経路を断つ態様で切り込むことにより錠剤通過経路の中の錠剤を通過方向の先後に分割して錠剤裁断片を個々に排出する構成や(例えば特許文献1参照)、受けた錠剤をカッターの刃で上下に裁断して下側の錠剤裁断片を先に排出し、上側の錠剤裁断片はカッター上に一旦留め置き次のカッター動作にて遅れて排出する構成が実用化されている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
こうした錠剤分割装置としては、錠剤を等分することが求められる。例えば円形錠剤を2分割する場合には、逆ハの字となる保持機構で受け止め、中央を通るようにカッターを移動させて錠剤を半錠に分割する方法が考えられている。
その他にも、例えば錠剤の大きさをデータベース等で予め指定もしくは測定し、形状およびサイズが既知の錠剤について所定の位置に錠剤を固定して裁断する方法等が考えられている(例えば特許文献3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5627508号公報
【文献】特開平11-226089号公報
【文献】特開2021-178168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、こうした従来の錠剤分割装置は、基本的には円形錠剤のような定型の形状の錠剤にのみ有効であり、楕円錠剤や菱形等の様々な形状にまで対応可能であるとは言い難かった。さらに、錠剤の長さを測定する方法では、大きさを事前に測定する必要があり、さらにかかる測定した形状の状態で落下あるいは搬送されない場合には、等分が難しいということも知られている。また、楕円形状であれば特に円弧部分の曲率や長さも錠剤ごとに異なり、複数のパターンを想定しておく必要があり、正確なセンタリングが非常に難しい。
【0006】
本発明は、かかる技術的課題を解決するためのものであり、簡易な構成で錠剤の中心位置と裁断部の位置合わせを行うことで、様々な形状に対応可能な錠剤分割装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の錠剤分割装置は、錠剤の落下経路の途中に配置されて、前記錠剤を指定位置で保持するための保持部と、前記落下経路に進退して前記錠剤を裁断可能な刃を備えた裁断部と、前記錠剤の中心位置を前記裁断部の進入位置に一致させるための中心位置判定手段と、を備える錠剤分割装置であって、前記保持部は、前記進入位置よりも上部にあって前記落下経路の側面を形成するとともに、前記落下経路と垂直な方向に移動可能な第1の可動部材と、前記進入位置の下部において当該落下経路を狭めるように位置し、前記第1の可動部材と平行かつ逆方向に移動可能な第2の可動部材と、を有し、前記中心位置判定手段は、前記第1の可動部材と前記第2の可動部材とが、それぞれの移動方向において一致したことを条件として、前記錠剤の中心位置が前記指定位置に一致したと判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このような錠剤分割装置によれば、第1の可動部材と第2の可動部材との移動によって、従来は難しかった楕円形状や菱形形状の錠剤であっても錠剤の中心位置を裁断部の進入する指定位置に合わせることができるので、様々な形状に対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態の一例として、錠剤分割装置の構造を示した斜視図である。
図2図1に示した錠剤分割装置の内部構造を示した図である。
図3図1の保持機構のうち、錠剤を保持する主要部を示す斜視図である。
図4図3に示した保持機構の構成の一例を示す図である。
図5図3に示した保持機構の動作のうち、初期状態の一例を示す図である。
図6図3に示した保持機構の動作のうち、基準状態の一例を示す図である。
図7】従来の構成における錠剤半切手段の一例を示す図である。
図8図3に示した保持機構の動作のうち、センタリング動作時の動作の一例を示す図である。
図9】センタリング動作が完了したときの保持機構の一例を示す図である。
図10】制御装置による保持機構の制御動作の一例を示す図である。
図11】本発明の第2の実施形態として錠剤分割装置に包装装置を付加した構成の一例を示す図である。
図12】本発明の第3の実施形態の構成の一例を示す図である。
図13図12で示した構成によりセンタリング動作がなされた後の状態の一例を示す図である。
図14】本発明の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の錠剤分割装置の一例である具体的な形態を、図に沿って説明する。
図においては、簡略化のため、ボルト等の締結具や、電動モータ等の駆動源、ギヤ等の伝動部材、モータドライバ等の電気回路、コントローラ等の電子回路の詳細などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示する。
【0011】
まず、本発明の錠剤分割装置20について、外観斜視図及び側面図を図1図2に示す。
錠剤分割装置20は、図1に示すように、錠剤分割機能を単体で担う基本部分として、錠剤カセット21と、操作部22と、制御装置23と、本体部24と、受器25と、中継部26と、錠剤フィーダベース部27と、支持部材28と、保持機構30と、裁断部40と、図示しない電源部と、を有している。
制御装置23と中継部26と支持部材28と保持機構30と裁断部40と電源部とは本体部24の筐体の内部に収められており、操作部22と錠剤フィーダベース部27とは本体部24に固定的に装着されて操作面やカセット装着面を筐体外面に露出している。
錠剤カセット21は錠剤フィーダベース部27に着脱自在に装着され、受器25は本体部24の底部の前面開口から引き出し自在に挿着されるようになっている。
【0012】
本体部24は、図1又は図2に示すように、最上部に固定的に配置された錠剤フィーダベース部27と、筐体内の前後方向中央部に鉛直な姿勢で固定配置された支持部材28と、筐体内で支持部材28の下部の手前に固定配置された中継部26と、を有している。中継部26の下方には受器25が筐体から出し入れできるようになっている。
本体部24の筐体内の中央部では、保持機構30と裁断部40とが支持部材28又は他の支持部材に取り付けられていて、保持機構30は支持部材28と同じ鉛直の姿勢をとり、裁断部40は保持機構30と垂直な水平の姿勢をとっている。
【0013】
裁断部40は、本実施形態では錠剤10を錠剤落下経路32の手前及び奥方向から挟み込むように裁断可能な裁断手段である裁断刃41を有する裁断手段である。裁断部40は、本実施形態では錠剤10を錠剤落下経路32の上下方向両側から、すなわち図4に示して後述する±Y方向に進入して錠剤10を裁断する構成としているが、かかる構成に限定されるものではない。また、裁断部40は、制御装置23によって裁断刃41を駆動する駆動手段等を有している。
また裁断刃41は、本実施形態では図4におけるX方向に平行に伸びて、錠剤落下経路32の途上に開口した裁断刃41の進入位置に配置された開口部である空隙部42から錠剤落下経路32を横断するように進入する。
【0014】
錠剤フィーダベース部27と、錠剤フィーダベース27上に装着された錠剤カセット21とは、錠剤10の1錠ずつの逐次供給を自動で行うためのものであり、制御装置23の制御に従って錠剤フィーダベース部27の駆動モータが動作すると、錠剤フィーダベース部27に装着された錠剤カセット21から錠剤10を1錠ずつ排出させ、導入口やダクトといったガイド経由で保持機構30の後述する錠剤落下経路32の上流部分経路32aへ上端から送り込むようになっている。
【0015】
制御装置23は、本実施形態においては錠剤分割装置20の各部を制御する制御手段であって、各センサ類やモータ等に電気信号を介して指示を行う制御部である。
かかる制御装置23は、各種センサとの信号の授受により、例えば保持機構30がセンタリング動作を行う際に、錠剤10の中心位置と空隙部42の位置とを一致させるための中心位置判定手段として動作する。
【0016】
保持機構30は、第1の可動部材であって図3におけるX方向に可動する第1ロケータ31Aと、第1ロケータ31の下方にあって同様にX方向に可動する第2の可動部材たる第2ロケータ31Bと、第1ロケータ31A及び第2ロケータ31Bと錠剤落下経路32を挟んで対向して配置される第3の可動部材である第3ロケータ31Cと、を用いて錠剤カセット21から錠剤フィーダベース部27及びガイド経由で落下して錠剤落下経路32のうち上流部分経路32aに入って来た分割対象の錠剤10を指定位置で保持するための保持部である。図1からも明らかなように、保持機構30は、錠剤カセット21から排出される錠剤の落下経路の途中に配置される。
第1ロケータ31Aには、図3図4に示すように、裁断部40の裁断刃41の進入位置の上側に、図4においては右下角部分、すなわち錠剤落下経路32側の側面と第2ロケータ31Bと対向する側の側面の間に、後端傾斜部33Aが設けられている。後端傾斜部33Aは、第1ロケータ31Aの錠剤落下経路32側の側面から所定の傾斜角度で傾いて形成された傾斜面である。
後端傾斜部33Aと、第1ロケータ31Aの下辺側側面との変曲点34Aとすると、変曲点34Aは、後端傾斜部33Aの最下端に位置しており、後述するセンタリング動作において基準点として用いられる。
【0017】
錠剤落下経路32において、裁断刃41の進入位置に相当する位置には、裁断刃41がY方向に通過可能なように空隙部42が設けられている。
保持機構30は、上流部分経路32aと錠剤落下経路32との間に設置されて錠剤10が通過したか否かを判定する上流側落下センサ53と、空隙部42のすぐ上方すなわち裁断刃41の進入位置の第1ロケータ31A側に設置されて錠剤10が空隙部42のある位置に到達したか否かを判定する下流側落下センサ54と、を有している。
上流側落下センサ53と、下流側落下センサ54とは、何れもそれぞれ一対で錠剤落下経路32を挟むように設置されており、錠剤10が通過したことを検知して、制御装置23へと信号を発信するセンサである。上流側落下センサ53と、下流側落下センサ54とは、例えば赤外線センサ等を用いることができる。
【0018】
第1ロケータ31Aと、第3ロケータ31Cとの間には、錠剤落下経路32の一部が形成されており、第1ロケータ31Aの+X側の側面と、第3ロケータ31Cの-X側の側面とが、錠剤落下経路32の側面を形成している。
また、かかる錠剤落下経路32は、手前側に配置された天井部材301と、奥側に配置されたベース部材302と、によって上面と下面とが構成されており、かかる天井部材301と、ベース部材302との間の間隔Hは、錠剤10の高さに応じて可変して設定可能なように設けられている。なお、ここで錠剤10の幅Sx、高さSy、長さSzはそれぞれ図に示したようにX方向、Y方向、Z方向を設定しているが、かかる構成に限定されるものではなく、錠剤10の形状に合わせて、適切な向きで落下するように、錠剤カセット21のガイドや上流部分経路32aによって規制されるとして良い。
【0019】
第2ロケータ31Bには、図3図4に示すように、裁断刃41の進入位置の下側に、図4における右上角部分、すなわち錠剤落下経路32側の側面と第1ロケータ31Aに対向する側の側面との間に、前端傾斜部33Bが設けられている。前端傾斜部33Bは、第2ロケータ31Bの錠剤落下経路32側の側面から所定の傾斜角度で傾いて形成された傾斜面であり、後端傾斜部33Aと同一の傾斜角度となるように、すなわち第1ロケータ31Aと空隙部42に対して線対称となるような角度で設けられている。
前端傾斜部33Bと、第2ロケータ31Bの上辺側側面との変曲点34Bとすると、変曲点34Bは、前端傾斜部33Bの最上端に位置しており、後述するセンタリング動作において基準点として用いられる。
第2ロケータ31Bは、錠剤落下経路32の上流部分経路32aに錠剤10が送られるまでの基本状態においては、図4に示すように錠剤落下経路32を狭めるように配置されており、言い換えると第1ロケータ31Aよりも+X方向に突出した状態で保持されている。
【0020】
第3ロケータ31Cは、錠剤10を第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとに向けて押圧するための押圧部であるプッシャー35と、プッシャー35を±X方向に可動かつZ方向及びY方向に不動に支持する支持部材である支柱36と、支柱36に取り付けられてプッシャー35を付勢するバネ37と、支柱36のうち片方にプッシャー35とは逆側に取り付けられて、プッシャー35の移動を検知する検知手段たるコンタクトリング38と、コンタクトリング38に電気的に接続されるとともに制御装置23との間で信号を授受するための端子55と、を有している。なお、本実施形態では支柱36は、プッシャー35と締結可能な段付きボルトであって、第3ロケータ31Cに開けられた開口に挿入されて±X方向に摺動可能な態様で取り付けられている。
【0021】
プッシャー35は、互いに裁断刃41の進入位置を挟んで位置する2つの支柱36によって第3ロケータ31Cに支持されており、バネ37によって-X方向に緩く付勢されている。
第3ロケータ31Cは、既に述べたように錠剤落下経路32の側壁を構成しており、基本状態において第1ロケータ31Aと第3ロケータ31Cとの間の間隔L1は、予め与えられた、もしくは後述する初期状態での設定により規定された錠剤10の幅Sxよりも広くなるように配置されており錠剤10が落下可能である。
【0022】
図5には、最初に錠剤10が落下して、制御装置23が錠剤10に合わせて基本状態における第1ロケータ31Aと第3ロケータ31Cとの間隔L1を算出するまでの動作を示すために、錠剤落下経路32の上流部分経路32aに錠剤10が流れ込み、錠剤落下経路32の手前で止められるときの、第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bと第3ロケータ31Cとが互いに最もコンパクトに収まった状態すなわち閉じた状態を示している。かかる状態を初期状態とする。
また、図5の状態における縦方向すなわちYZ断面図を右方に別図として示した。このとき、Y方向の間隔Hは、錠剤10の高さに合わせて調整可能であるが、初期状態である閉じた状態では最も狭い状態を示している。このような状態においては、カセット21から排出されてきた錠剤10は、上流部分経路32aにおいてせき止められる態様で保持される。また、後述する保持機構30の実際の動作段階においては、錠剤10の寸法データから、制御装置23が天井部材301とベース部材302との間の間隔を調整して高さ規制を行うものであることが好ましい。しかしながら、かかる間隔Hは、例えばカセット21に投入される錠剤10の種類に応じて、複数パターンの天井部材301とベース部材302と組み合わせを予め定めておき、適宜部材を入れ替えることでかかる間隔Hを調整する構成であっても良く、この場合には予め判明している錠剤10の高さSyよりも大きい間隔Hとなるように選定される。
【0023】
かかる保持機構30の動作と、裁断部40による錠剤10の分割動作について、図5図10を用いて説明する。
錠剤10が上流部分経路32aに到達したとき、図5に示すように、第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bと第3ロケータ31Cとは何れも、錠剤落下経路32を狭めるように閉じた状態で保持されている(初期状態)。
従って、制御装置23が錠剤カセット21から錠剤10を1錠ずつ排出する(ステップS101)と、まず錠剤10は上流部分経路32aでせき止められる(ステップS102)。
次に、図6に示すように、天井部材301がY方向に移動するとともに第1ロケータ31Aが-X方向に向かって錠剤落下経路32の幅を広げるように移動する(ステップS103)。
ステップS103は、本実施形態では上流側落下センサ53によって錠剤10の錠剤落下経路32への落下が検知されるまで繰り返される。
このとき、制御装置23は、天井部材301の位置からY方向の間隔Hを測定しながら天井部材301を駆動しており、上流側落下センサ53によって錠剤落下経路32に錠剤10が落下したことを検知する(ステップS104)と、かかる天井部材301の位置から錠剤10の高さSyがH≧Syとなったことを検知可能であり、かかる間隔Hを、錠剤10の落下可能な天井部材301の位置として制御装置23に記憶しておくことで、錠剤10の排出までの速度を高速化することもできる。また、かかる間隔Hを錠剤10を排出する際の基本状態として記憶しても構わない。
ステップS103の移動によって広がった錠剤落下経路32を通って錠剤10が裁断刃41の進入位置、すなわち空隙部42の付近まで落下する。なお、第2ロケータ31Bはこの時初期状態のまま動いていないので、基本状態において錠剤10は第2ロケータ31Bの上部にせき止められる形で保持される(ステップS105)。
【0024】
さてこのとき、錠剤10の落下の態様としては、錠剤10の形状や錠剤カセット21からの移動時の形態にもよるが、例えば図6に示したように、錠剤落下経路32の延びる方向に対して傾斜した状態で落ちることが多い。
従来、錠剤10が円形やレンズ形等、比較的単純な形状の場合には、図7(a)に比較例として示すように、錠剤落下経路32を下流側に向かって狭めるように所謂逆ハの字の保持部材131を用いることで、錠剤落下経路32の中心にある空隙部42の位置が錠剤10の中心位置に一致し、中心での2等分割を行う構造とすることは比較的容易であった。
しかしながら、同じ比較例として図7(b)に楕円球形状の錠剤10を例示するように、形状によっては中心での2等分割を行えない形状も存在し、より汎用性の高い、簡易な構成で様々な形状に対応可能な錠剤分割装置が求められていた。
【0025】
傾斜して落下した錠剤10に対して、制御装置23は、図8に示すように第1ロケータ31Aを+X方向に徐々に移動させるとともに、第2ロケータ31Bを-X方向に徐々に移動させる(ステップS106)。このように、第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとは互いに平行かつ逆方向に移動する。
理想的には、第2ロケータ31Bと、第3ロケータ31Cとの間隔L2が、錠剤10の幅Sxと一致したときに、錠剤10は錠剤落下経路32を通過して再度落下を始める。
しかしながら、一般的な錠剤10は落下方向の前端部と後端部とにそれぞれ曲率Rをもった湾曲形状を有している。
第1ロケータ31Aは+X方向に移動し、第2ロケータ31Bは-X方向に移動しているので、後端傾斜部33Aと錠剤10との当接位置Pと、前端傾斜部33Bと錠剤10との当接位置Qとは、何れも錠剤10の曲率Rや、錠剤10の傾きによって位置を変えながら、錠剤10の姿勢が垂直になるように徐々に移動していく。この時の当接位置P、Qは、基本的には錠剤10の形状によって異なるが、後端傾斜部33Aと前端傾斜部33Bとが何れも裁断刃41の進入位置に対して線対称の形状であるから、図10に示すように錠剤10が落下方向に対して直立したとき、当接位置Pと当接位置Qとの位置も、裁断刃41の進入位置に対して幾何学的に対称な位置となる。すなわち、裁断刃41の進入位置が、錠剤10の中心位置と略一致する。ここでの「略一致」とは、かかる進入位置において錠剤10が半切されたとき、半切された錠剤10の上半分、下半分が成分・分量などが処方量に影響を及ぼさない程度に一致していることを指しており、厳密な意味での「等分」ではない場合も含んで良い。
いずれにせよ、裁断刃41が進入する空隙部42にはある程度幅があるため、厳密な中心ではない場合を含んでしまうものの、錠剤10が錠剤落下経路32の延びる方向に真っすぐ保持された状態は、錠剤10の中心位置が、空隙部42ひいては裁断刃41の進入位置に一致した状態を示している。
【0026】
さて、錠剤10が落下経路32の延びる方向に向かって直立するとき、第2ロケータ31Bと、第3ロケータ31Cとの間隔L2は、錠剤10の幅Sxよりも狭い状態であることが推定される。どの程度狭いかは前端傾斜部33Bの傾斜角度と、錠剤10の湾曲形状の曲率Rによっても異なる。また、この時第1ロケータ31Aも+X方向に移動しており、後端傾斜部33Aも錠剤10に当接しているので、後端傾斜部33Aの最も低い点(Xa,Ya)と、前端傾斜部33Bの最も高い点(Xb,Yb)と、がX方向において重なり合う位置にあることとなる。
すなわち、かかる後端傾斜部33Aの最も低い点を基準点A(Xa,Ya)、前端傾斜部33Bの最も高い点を基準点B(Xb,Yb)としたとき、Xa=Xbとなる位置で錠剤10は錠剤落下経路32に対して直立した姿勢で保持される。また、このときの錠剤10の位置が、「指定位置」に相当する。さらにこのときP(Xp,Yp)、Q(Xq,Yq)についてもXp=Xqとなることが推定される。後端傾斜部33Aと前端傾斜部33Bとの傾斜角が等しいので、裁断刃41の進入位置が第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとの間の中心にあるときには、かかる裁断刃41が、線分PQの垂直二等分線の位置を占めることとなるので、錠剤10を2等分することができる。
また、このように保持機構30が、第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとを用いて、錠剤10の中心位置を空隙部42の開口位置と一致させるような動作をセンタリング動作という。
【0027】
制御装置23は、第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとを駆動するモータの回転数などから移動距離を割り出し、第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとが、それぞれの移動方向において一致したことを条件として、錠剤10の中心位置がこの指定位置に一致したと判断する(ステップS107)。保持機構30は、このような判定ステップであるステップS107において錠剤の中心位置と裁断刃41の進入位置とを一致させるための保持手段として動作する。
制御装置23は、ステップS107において錠剤10の中心位置と指定位置とが一致するまで、ステップS106の移動を徐々に繰り返す。
なお、ここでは制御装置23が中心位置判定手段として、錠剤10の中心位置と指定位置とが一致したと判断する条件を、第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとの位置が一致することとしたが、かかる条件に用いる基準点は、例えば錠剤落下経路32側の壁面の位置として、第1ロケータ31Aの錠剤落下経路32側の側面の位置と、第2ロケータ31Bの錠剤落下経路32側の側面の位置とが一致するとしても良いし、後端傾斜部33Aの最も低い点を基準点A(Xa,Ya)、前端傾斜部33Bの最も高い点を基準点B(Xb,Yb)としたとき、Xa=Xbとなる位置を制御装置23によって検知しても良い。
しかしながら、このような位置の調整は、例えば駆動源としてサーボモータを使用したとしても、第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとを独立して駆動する関係上、若干の誤差を生じ得る。また、精度を向上するためには、単にモータの回転数を用いた移動距離の算出だけではなく、実際に第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとが動作している状態を把握することが肝要である。
【0028】
そこで、本実施形態ではさらなる精度向上のため、プッシャー35が、バネ37によって錠剤10を緩く図9中左方向である-X方向に付勢している。プッシャー35が、錠剤10を介して第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとから上下に均等に押圧されると、プッシャー35はコンタクトリング38と支柱36との導通が切れる程度に緩く後退して、コンタクトリング38がプッシャー35の移動を検知する。
ここで、プッシャー35は第3ロケータ31Cに嵌り合っているので、支柱36が延びるX方向に水平な力がプッシャー35にはたらく場合にはプッシャー35が緩く後退するが、錠剤10が直立しておらず、力が均等に伝わらないことで不均等に押圧される場合には、プッシャー35が移動しないために支柱36とコンタクトリング38の導通も切れない。
このように、コンタクトリング38を用いることによれば、プッシャー35が押されるときには錠剤10が錠剤落下経路32に対して直立した状態であることが確定し、コンタクトリング38と支柱36との導通が断たれることによって、制御装置23は精度良く錠剤10が指定位置に保持されたことを検知することが可能となる。
なお、かかる構成はプッシャー35の後退を検知可能であれば良く、特にコンタクトリング38を用いずとも、その他のセンサや制御手段を用いても構わない。本実施形態では、特に安価にかつ導通の切断という制御装置23での検知を行いやすい手段として、コンタクトリング38を用いている。
【0029】
なお、制御装置23は、ステップS107において、これらの複数の手段を組み合わせて、例えば基準点となる変曲点34Aと変曲点34BとのX方向における位置が重なったと判断した上で、さらにコンタクトリング38による導通の検知を行って、両者が共に真であった場合にのみ、錠剤10が指定位置に保持されたと判断しても良い。
【0030】
制御装置23は、錠剤10が落下してから、指定位置にて保持されるまでの第1ロケータ31A、第2ロケータ31Bそれぞれの移動量を記憶しておき、錠剤カセット21のRFID等から読み込んだ錠剤10の薬剤情報とともに記憶手段に記憶する(ステップS108)。このように、錠剤10の寸法データ等がない状態であっても、本実施形態では錠剤10の中心位置を算出することが可能であり、かつこれらの動作によって、錠剤10の種類と、第1ロケータ31A、第2ロケータ31Bの移動距離の組み合わせが記憶可能なので、2回目以降の動作においては、既に求められた移動距離付近まで高速に動作させても良く、錠剤10を指定位置にて保持するまでの時間を短縮可能である。
【0031】
このように錠剤10が指定位置に保持されると、裁断刃41が錠剤10の両側から、本実施形態では±Y方向の両側から錠剤10に進入して、指定位置に保持された錠剤10が半分に切断される(ステップS109)。ステップS109の裁断ステップにおいて、裁断部40もしくは裁断刃41が錠剤裁断手段として動作する。
かかる裁断ステップにおいては、互いに対向して配置された裁断刃41が、対向間隙を縮小しながら錠剤10を挟んで裁断するように移動し、錠剤10に当接する。その際には、裁断刃41が裁断完遂前に錠剤10を錠剤落下経路32の底部であるベース部材302からも天井部材301からも浮かせた状態で挟持するとともに、第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとが制御装置23の制御に従って錠剤落下経路32を拡げる方向に、つまり-X方向へと若干開いて、裁断刃41に錠剤10を挟持させてから裁断が完了するまでの間、錠剤10は裁断刃41のみによって挟持されることが好ましい。このとき第3ロケータ31Cの+X方向への移動を含んでも良い。
このように、裁断ステップの裁断完了直前において、第1ロケータ31A、第2ロケータ31B、第3ロケータ31Cによる錠剤10の一時保持が解除されることとすれば、裁断完遂前に錠剤10が裁断刃41だけで挟持されることとなって、裁断の際に一時的に強い力がかかるときにも、中心位置がずれることがないため、精度良い半切が可能となる。なお、このように第1ロケータ31A、第2ロケータ31B、第3ロケータ31Cによる錠剤10の一時保持を解除せずとも、錠剤10を裁断することは可能であり、また裁断時の細かな制御や移動については、かかる構成に限定されるものではない。
錠剤10が半切された後、裁断刃41が錠剤落下経路32を塞ぐ形で残った状態で、第2ロケータ31Bのみがさらに-X方向へと移動する(ステップS110)。なお、既に述べたように、かかる第2ロケータ31Bの移動は、錠剤10を裁断する裁断ステップの最中においても行われているが、ステップS110における第2ロケータ31Bの移動は、第2ロケータ31Bと第3ロケータ31Cとの間隔L2が、錠剤10の幅Sx以上になるまで行われるものであって、半切された錠剤10の下片を下方へと落下可能にするための移動を示しており、この順序は前後しても良い。具体的には、ステップS109において裁断完遂前に裁断刃41に挟持された状態で既にステップS110の移動が完遂していた場合には単に裁断ステップS109の完遂と同時に下片が落下・排出されてステップS111へと移行するにすぎない。
第2ロケータ31Bと第3ロケータ31Cとの間隔L2が、錠剤10の幅Sx以上になると、支えを失った錠剤10は下方へと錠剤落下経路32に沿って落下し、排出される(ステップS111)。
このとき制御装置23は、第2ロケータ31Bの移動距離を、錠剤幅Sxに合わせて移動させるとしても良いし、逆に錠剤落下経路32の、第2ロケータ31Bよりも下方に図示しない落下センサ56を設け、かかる落下センサ56によって落下を検知した間隔L2を、錠剤幅として記憶しても良い。何れにせよ、裁断ステップの完了後、第2ロケータ31Bと第3ロケータ31Cとで挟まれた錠剤落下経路32の幅である間隔L2が錠剤幅Sx以上となったときに、錠剤10の下半分は保持機構30から排出される。
制御装置23は、第2ロケータ31Bが移動した後、所定時間後に裁断刃41を後退させて、第1ロケータ31Aを移動させ、錠剤10の上半分を保持機構30から排出する。
錠剤10が等分された2片とも排出されると、制御装置23は、第2ロケータ31Bを+X方向に移動させて、錠剤落下経路32が記憶されている錠剤幅Sxよりも狭くなるような位置で停止して、次の錠剤カセット21からの排出を待つ。
【0032】
以降、これらステップS101~ステップS111の動作を繰り返し行うことで、錠剤分割装置20は、錠剤カセット21から排出された錠剤10を半切することができる。
【0033】
本実施形態の第2の実施形態として、図11に示すように、第1の実施形態における錠剤分割装置20よりも錠剤落下経路32の下流側に包装機201を設け、半切された錠剤10を分包する錠剤分包機200とする構成も考えられる。
かかる構成の包装機201の構成については既知の装置と同一であって良いため説明を省略する。
本実施形態では、錠剤落下経路32を経て落下した錠剤10の上片及び下片は、それぞれ中継部26を経て包装機201によって包装紙に包装されて排出される。
【0034】
また、本発明の第3の実施形態として、図12に示すように、第3の可動部材である第3ロケータ31Cを持たず、単なる固定された錠剤落下経路32の壁面である場合についても説明する。
なお、本実施形態でも、第1の実施形態で既に説明した構成については付番を同一として説明を省略する。
第3の実施形態においては、図12に示すように、第1ロケータ31Aと、第2ロケータ31Bと、を有し、第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとに接続された駆動源である第1モータ51と、第2モータ52と、を有している。
【0035】
第1モータ51は、サーボモータであり、第1ロケータ31Aを駆動させる際に生じる負荷を検知することで、第1ロケータ31Aが錠剤10から押圧される圧力を検知可能な圧力検知手段としても機能する。
なお、かかる構成は例えば制御装置23が第1モータ51の制御機構として有していても良い。
【0036】
第2モータ52も第1モータ51と同様に、サーボモータであり、第2ロケータ31Bを駆動させる際に生じる負荷を検知することで、第2ロケータ31Bが錠剤10から押圧される圧力を検知可能な圧力検知手段としても機能する。
なお、かかる構成は例えば制御装置23が第2モータ52の制御機構として有していても良い。
【0037】
錠剤落下経路32に錠剤10が落ちてきたとき、保持機構30は、図10のステップS101~S105と同様に操作を行い、制御装置23は、第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとを基本状態に配置する。図12はかかる基本状態における錠剤10の様子を示している。
次いで、ステップS106と同様に第2ロケータ31Bを-X方向に移動させるとともに、第1ロケータ31Aを+X方向に移動させる。
このとき制御装置23は、第1モータ51と第2モータ52との負荷が均等になったことを条件として、錠剤10の中心位置が指定位置に一致したと判断する(ステップS107)。
【0038】
かかるステップS107において、錠剤10は、第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとによって錠剤落下経路32の対向する壁面である壁面330に向かって図中Fの圧力で押圧されるから、第1ロケータ31Aは反作用として、錠剤10から-X方向に圧力F′を受ける。錠剤10が錠剤落下経路32に対して斜行した状態では、第1ロケータ31Aにかかる負荷と、第2ロケータ31Bとにかかる負荷とは図12に略式に示したように一致しないはずである。
また、第2ロケータ31Bにかかる負荷は、錠剤10が前端傾斜部33Bに当接していることによって-X方向に生じる負荷であるが、かかる負荷は第2ロケータ31Bと錠剤10とが離間したときには0となり、第1ロケータ31Aと壁面330とによって錠剤10が挟持されていない状態すなわち移動し始めの状態が最も大きくなるものと考えられる。
【0039】
逆に、第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとにかかるそれぞれの圧力F′が一致する場合を考える。
このとき、第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとが均等に錠剤10を押しているということになるので、図13に示すように、保持位置に対して線対称な形状の第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとを用いた場合には、かかる保持位置について対称な状態で錠剤10が保持されると考えて良い。
【0040】
なお、かかる保持位置において保持された後は、第1の実施形態と同様に、ステップS108~ステップS111のように処理が行われて、錠剤10は半切されてそれぞれが錠剤落下経路32を経て排出される。
【0041】
上記の構成により、制御装置23は、第1モータ51と第2モータ52とを用いて、第1ロケータ31Aと、第2ロケータ31Bとが錠剤10から押圧される圧力が均等になったことを条件として、錠剤10の中心位置が指定位置に一致したと判断する。
かかる構成によれば、制御装置23は錠剤10が錠剤落下経路32に対して直立した状態であることを検知できるから、保持機構30が錠剤10の中心位置と裁断刃41の進入位置とが一致するように錠剤10を保持して、簡易な構成で錠剤の中心位置と裁断部の位置合わせを行えるから、錠剤分割装置20が様々な形状の錠剤に対応可能である。
【0042】
また、第1の実施形態で既に述べたようにこのような第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとにおいては、後端傾斜部33Aと、前端傾斜部33Bとが、それぞれ錠剤10の前端部、後端部に当接することが望ましい。しかしながら錠剤10の長さSzに対して傾斜度が急すぎる場合には、錠剤10の前端部や後端部が正しく後端傾斜部33Aと、前端傾斜部33Bとに当接しない場合もあり得る。
従って、かかる後端傾斜部33Aや、前端傾斜部33Bの傾斜度は、図14に示すように錠剤10の大まかな長さに応じて変更可能であることが好ましい。例えば、錠剤10の長さSzが大きい場合には、後端傾斜部33Aと前端傾斜部33Bとの傾斜角度を緩くできるように、また長さSzが短い場合には、急な傾斜角度となるように、第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bの後端傾斜部33A、前端傾斜部33Bをそれぞれ構成するロケータガイド部333、334を複数種類に交換可能である。
かかる構成とすれば、錠剤10のさらに幅広い種類に対して保持機構30が錠剤10の中心位置と裁断刃41の進入位置とが一致するように錠剤10を保持して、簡易な構成で錠剤の中心位置と裁断部の位置合わせを行うことができる。
【0043】
<1>
本発明の錠剤分割装置20は、錠剤10の錠剤落下経路32の途中に配置されて、錠剤10を指定位置で保持するための保持機構30と、落下経路32に進退して錠剤10を裁断可能な裁断刃41を備えた裁断部40と、錠剤10の中心位置を裁断刃41の進入位置に一致させるための制御装置23と、を備える。
また、保持機構30は、進入位置よりも上部にあって錠剤落下経路32の側面を形成するとともに、錠剤落下経路32と垂直な方向に移動可能な第1ロケータ31Aと、進入位置の下部において錠剤落下経路32を狭めるように位置し、第1ロケータ31Aと平行かつ逆方向に移動可能な第2ロケータ31Bと、を有している。
制御装置23は、第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとが、それぞれの移動方向において一致したことを条件として、錠剤10の中心位置が指定位置に一致したと判断する。
かかる構成によれば、制御装置23は錠剤10が錠剤落下経路32に対して直立した状態であることを検知できるから、保持機構30が錠剤10の中心位置と裁断刃41の進入位置とが一致するように錠剤10を保持して、簡易な構成で錠剤の中心位置と裁断部の位置合わせを行えるから、錠剤分割装置20が様々な形状の錠剤に対応可能である。
【0044】
<2>
また、本発明の実施形態では<1>で述べた構成に加え、制御装置23は、第1ロケータ31Aと、第2ロケータ31Bとが錠剤10から押圧される圧力が均等になったことを条件として、錠剤10の中心位置が指定位置に一致したと判断する。
かかる構成によれば、制御装置23は錠剤10が錠剤落下経路32に対して直立した状態であることを検知できるから、保持機構30が錠剤10の中心位置と裁断刃41の進入位置とが一致するように錠剤10を保持して、簡易な構成で錠剤の中心位置と裁断部の位置合わせを行えるから、錠剤分割装置20が様々な形状の錠剤に対応可能である。
【0045】
<3>
また本発明の実施形態では、<1>または<2>で述べた構成に加え、錠剤分割装置20は第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとに対向し、錠剤落下経路32の一部を構成する第3ロケータ31Cと、を有している。第3ロケータ31Cは、錠剤10を第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとに向けて押圧するプッシャー35を有している。
【0046】
<4>
また、本発明の実施形態では、<1>乃至<3>の何れか1つに記載された構成に加え、プッシャー35は、互いに進入位置を挟んで位置する2つの支柱36によって第3ロケータ31Cと接続され、支柱36の少なくとも1方に設けられて、プッシャー35が移動したことを検知するコンタクトリング38を有している。また、制御装置23は、プッシャー35が移動したときに錠剤10の中心位置が指定位置に一致したと判断する。
かかる構成によれば、制御装置23は錠剤10が錠剤落下経路32に対して直立した状態であることを検知できるから、保持機構30が錠剤10の中心位置と裁断刃41の進入位置とが一致するように錠剤10を保持して、簡易な構成で錠剤の中心位置と裁断部の位置合わせを行えるから、錠剤分割装置20が様々な形状の錠剤に対応可能である。
【0047】
<5>
また、本発明の実施形態では、<1>乃至<4>の何れか1つに記載された構成に加え、第1ロケータ31Aと、第2ロケータ31Bとは、何れも錠剤落下経路32に対して傾斜した傾斜部として、それぞれ後端傾斜部33Aと、前端傾斜部33Bと、を有している。
前端傾斜部33Bが錠剤10の前端部に当接するとともに、後端傾斜部33Aが錠剤10の後端部に当接するので、保持機構30は、錠剤10の中心位置が指定位置に一致するように保持することが可能となる。
なお、ここでの錠剤10の「前端部」とは、錠剤10の長さ方向の前端の他、同方向において、曲率を持った湾曲形状の部分を含んで良い。同様に錠剤10の「後端部」とは、錠剤10の長さ方向の後端の他、同方向において、曲率を持った湾曲形状の部分を含んで良い。
【0048】
<6>
また、本発明の実施形態では、<1>乃至<5>の何れか1つに記載された構成に加え、錠剤分割装置20は、第1ロケータ31Aと第2ロケータBとは互いに相対的に逆方向に移動し、保持機構30は、第1ロケータ31Aの後端傾斜部33Aにおいて最も下端の点と、第2ロケータ31Bの前端傾斜部33Bにおいて最も上端の点と、が移動方向において重なり合う位置で錠剤10を保持する。
かかる構成によれば、制御装置23は錠剤10が錠剤落下経路32に対して直立し、裁断刃41の進入位置と対称な状態で保持されることを検知できるから、簡易な構成で錠剤の中心位置と裁断部の位置合わせを行えるから、錠剤分割装置20が様々な形状の錠剤に対応可能である。
【0049】
<7>
また、本発明の実施形態では、<1>乃至<6>の何れか1つに記載された構成に加え、錠剤分割装置20は、裁断部40は、制御装置23が、錠剤10の中心位置が指定位置に一致したと判断した後に錠剤落下経路32に進入して錠剤10を裁断する。
かかる構成によれば、錠剤10を中心位置を通る平面で分割することができて、錠剤10の等分を精度よく簡易な構成で行うことができる。
【0050】
<8>
また、本発明の実施形態では、<7>に記載された構成に加え、分包機200が、錠剤分割装置20と、錠剤分割装置20よりも錠剤落下経路32の下流側に包装機201を設け、半切された錠剤10を分包する構成を有している。
かかる構成によれば、分割された後の錠剤10を分包することができる。
【0051】
[その他]
上記実施例では、裁断刃41を錠剤落下経路32の上部と下部とから挟み込む態様で切断する構成の説明のみを行ったが、例えば第1ロケータ31Aと第2ロケータ31Bとの間から挿抜しても良いし、片側のみから刃を挿抜して切断する構成であっても良い。
【符号の説明】
【0052】
10…錠剤
20…錠剤分割装置
23…制御装置(中心位置判定手段)
30…保持部
31A…第1ロケータ(第1可動部材)
31B…第2ロケータ(第2可動部材)
31C…第3ロケータ(第3可動部材)
32…落下経路
33A、33B…傾斜部
34A、34B…基準点
35…プッシャー(押圧部)
38…コンタクトリング(検知手段)
40、41…裁断部(裁断手段)
42…空隙部(進入位置)
200…錠剤分包機
S107…判定ステップ
S109…裁断ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14