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特許7584178治療剤の制御放出のための埋込み可能なデポー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】治療剤の制御放出のための埋込み可能なデポー
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20241108BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20241108BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20241108BHJP
【FI】
A61K9/70
A61K31/445
A61K47/26
A61K47/34
A61P25/04
A61K45/00
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023185463
(22)【出願日】2023-10-30
(62)【分割の表示】P 2020540693の分割
【原出願日】2018-10-06
(65)【公開番号】P2023181359
(43)【公開日】2023-12-21
【審査請求日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】62/569,349
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/670,721
(32)【優先日】2018-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/723,478
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/640,571
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520119079
【氏名又は名称】ファウンドリー セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】カルン ディー. ナガ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ダブリュー. ボイド
(72)【発明者】
【氏名】パトリック エイチ. ルアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャッキー ジョー ハンコック
(72)【発明者】
【氏名】マイケル フェルドスタイン
(72)【発明者】
【氏名】テウ クーン キアト
(72)【発明者】
【氏名】ワン ホンレイ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ ジンナン
(72)【発明者】
【氏名】シート ダニエル ブーン リム
(72)【発明者】
【氏名】ハンソン エス. ギフォード ザ サード
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-017329(JP,A)
【文献】特表2006-512312(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159885(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0325879(US,A1)
【文献】特表2015-522649(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0123508(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0184037(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61L 15/00-33/18
A61K 31/33-33/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
ブピバカイン塩酸塩、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、およびポリソルベートを含む治療領域であって、前記治療領域が、第1の面、前記第1の面とは反対側にある第2の面、および前記第1の面と第2の面との間の側壁を有し、前記ブピバカイン塩酸塩が、前記デポーの全重量の少なくとも50%を構成する、治療領域、
前記治療領域の前記第1の面に配置される第1の制御領域であって、PLGAを含む第1の制御領域、および
前記治療領域の前記第2の面に配置される第2の制御領域であって、PLGAを含む第2の制御領域
を含み、
前記第1および第2の制御領域のそれぞれが、前記治療領域の厚さの1/50未満の厚さを有し、
前記治療領域の前記側壁が露出しており、前記第1および第2の制御領域の露出した表面積が、前記側壁の露出した表面積よりも大きく、
前記デポーが、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、14日間以上の放出持続期間にわたり前記処置部位で前記ブピバカイン塩酸塩を放出するように構成されている、デポー。
【請求項2】
前記ブピバカイン塩酸塩が、前記デポーの全重量の少なくとも60%を構成する、請求項1に記載のデポー。
【請求項3】
前記治療領域が、前記治療領域の前記PLGAと混合した複数のブピバカイン塩酸塩粒子を含む、請求項1に記載のデポー。
【請求項4】
前記ポリソルベート対前記治療領域における前記PLGAの重量比が、0.1:10から2:10の範囲内である、請求項1に記載のデポー。
【請求項5】
前記PLGA対前記デポーにおける前記ブピバカイン塩酸塩の重量比が、約1:2である、請求項1に記載のデポー。
【請求項6】
前記ポリソルベート対前記治療領域における前記PLGA対前記治療領域における前記ブピバカイン塩酸塩の重量比が、約0.1:10:20から約2:10:20の範囲内である、請求項1に記載のデポー。
【請求項7】
前記ブピバカイン塩酸塩の約20%から約50%が、前記放出持続期間の最初の約3日から約5日間で放出され、残りの前記ブピバカイン塩酸塩の少なくとも80%が、前記放出持続期間の残りの日で放出される、請求項1に記載のデポー。
【請求項8】
前記ブピバカイン塩酸塩の15%以下が、前記放出持続期間の最初の2日間で放出される、請求項1に記載のデポー。
【請求項9】
前記放出持続期間が21日以上である、請求項1に記載のデポー。
【請求項10】
第1の期間に関しては第1の速度で、および第2の期間に関しては第2のより大きい速度で前記ブピバカイン塩酸塩を放出するように構成されている、請求項1に記載のデポー。
【請求項11】
前記デポーが、前記処置部位に最初に配置され、前記第1の制御領域が、前記治療領域の前記第1の面と前記処置部位の生理学的流体との間にあり、前記第2の制御領域が、前記治療領域の第2の面と前記生理学的流体との間にあり、前記治療領域の前記側壁が、前記生理学的流体に曝露される、請求項1に記載のデポー。
【請求項12】
前記第1および第2の制御領域のそれぞれが、前記治療領域の厚さの1/75以下の厚さを有する、請求項1に記載のデポー。
【請求項13】
前記第1および第2の制御領域が、少なくとも前記処置部位での前記デポーの埋込み前に、前記ブピバカイン塩酸塩を含まない、請求項1に記載のデポー。
【請求項14】
前記第1および第2の制御領域が、前記ポリソルベートを含まない、請求項1に記載のデポー。
【請求項15】
前記デポーの総厚さが、1mm~3mmの範囲内である、請求項1に記載のデポー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりそのそれぞれの全体が本明細書に組み込まれる、2017年10月6日に出願された米国出願第62/569,349号、2018年5月12日に出願された米国出願第62/670,721号、2018年3月8日に出願された米国出願第62/640,571号、および2018年8月28日に出願された米国出願第62/723,478号の優先権の利益を主張する。
【0002】
本技術は、in vivoでの治療剤の制御された持続放出のための、インプラントに関する。
【背景技術】
【0003】
治療剤の制御放出のための埋込み可能なシステムは、経口的または非経口的方法などの他の薬物送達方法に勝る利点を提供する。生体適合性および/または生分解性ポリマーならびに治療剤で構成されるデバイスは、臨床的に望ましい解剖学的部位に埋め込むことができ、それによって、選択された薬剤の局在化送達がもたらされる。この局在化送達は、かなりの割合の薬剤を、意図される標的に到達させることができ、望ましくない全身性副作用を回避することができる。しかしこれらのシステムは、典型的には周囲の生理学的流体に接触したときに薬物のバーストをもたらしその後に薬物の残留物放出が続くという点で、しばしば、真の制御放出機序の欠如に悩まされる。
【0004】
ある特定のポリマー担体での薬物放出を改善するために、ポリソルベートなどの親水性ポリマーを湿潤剤としてこれらの担体に添加して、経口製剤中のポリエチレングリコール(PEG)などの生体適合性ポリマーからの薬物放出を加速させまたは強化してきた(Akbari, J., et al., ADV. PHARM. BULL., 2015, 5(3): 435-441)。しかしこれらの製剤は、疎水性薬物の親水性環境(in vivo生理学的流体)への即時放出をもたらすことが意図され、全薬物ペイロードのかなりの部分が即座にまたは積極的に放出され、可変的なまたは持続した制御放出ではない。
【0005】
これらの薬物放出動態は、一部の臨床適用例では望ましいと考えられるが、治療剤の制御された持続放出は、ある特定の状況において臨床上有益であり得る。特に、時間をわたっての制御された持続放出のため、大用量の治療剤を保持する生分解性担体を埋め込むことが望ましいと考えられる。これには、治療剤が負荷された担体を、介入的または外科的手技と併せてかつ必要に応じて埋込み可能な医療用デバイスと一緒にまたはその一部として埋め込むときに、特定の価値があり得る。
【0006】
Xaracoll(登録商標)(Innocoll Technologies、Athlone、Ireland)は、術後疼痛治療のための持続放出系の例である。Xaracoll(登録商標)は、手術野における局所疼痛ブロックが達成されるように、長期放出に向けてブピバカインが負荷された埋込み可能なコラーゲンスポンジである。図1に示されるように、血漿中のブピバカインHCl濃度は、埋込みから15時間以内にピークに達し、それによって不十分な作用の持続が示される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Akbari,J.ら、ADV.PHARM.BULL.(2015)5(3):435~441
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、薬物の高度に制御された放出を提供することが可能な、生体適合性の埋込み可能なシステムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術は、医学的状態を処置するための治療剤の制御放出のためのインプラント、ならびに関連するシステムおよび方法に関する。特に本技術は、手術または介入部位での治療剤の局所的な持続放出のためのインプラント、ならびに関連するシステムおよび方法に関する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
前記鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよび前記ポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、前記放出剤は、in vivoで前記デポーが配置されたとき溶解して前記制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、7日間以上にわたり前記処置部位で前記鎮痛薬を放出するように構成されている、デポー。
(項目2)
前記治療領域の前記鎮痛薬が、前記デポーの全重量の少なくとも50%を構成する、項目1に記載のデポー。
(項目3)
14日間以上にわたり前記処置部位で前記鎮痛薬を放出するように構成されている、項目1に記載のデポー。
(項目4)
前記鎮痛薬の約20%から約50%が、前記14日間の最初の約3から約5日間で放出され、残りの鎮痛薬の少なくとも80%が、前記14日間の最後の11日間で放出される、項目3に記載のデポー。
(項目5)
前記鎮痛薬の約20%から約40%が、前記14日間の最初の3日間で放出され、残りの鎮痛薬の少なくとも80%が、前記14日間の最後の11日間で放出される、項目3に記載のデポー。
(項目6)
残りの鎮痛薬の少なくとも90%が、前記14日間の最後の11日間で放出される、項目3に記載のデポー。
(項目7)
鎮痛薬の量の15%以下が、前記14日間の最初の2日間で放出される、項目3に記載のデポー。
(項目8)
第1の期間に関しては第1の速度で、および第2の期間に関しては第2の速度で前記鎮痛薬を放出するように構成されている、項目1に記載のデポー。
(項目9)
前記第1の速度が、前記第2の速度よりも大きい、項目8に記載のデポー。
(項目10)
前記治療領域における前記鎮痛薬の少なくとも90%を、14日以内に放出するように構成されている、項目9に記載のデポー。
(項目11)
1日当たり、前記処置部位に約100mgから約500mgの鎮痛薬を放出するように構成されている、項目1に記載のデポー。
(項目12)
鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
前記鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよび前記ポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、前記放出剤は、in vivoで前記デポーが配置されたとき溶解して前記制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
前記デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、14日間以上にわたり前記処置部位で前記鎮痛薬を放出するように構成され、
前記鎮痛薬の約20%から約40%は、前記14日間の最初の3日間で放出され、残りの鎮痛薬の少なくとも80%は、前記14日間の最後の11日間で放出される、デポー。(項目13)
鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
前記鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよび前記ポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、前記放出剤は、in vivoで前記デポーが配置されたとき溶解して前記制御領域に拡
散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
前記デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、3日間以上にわたり前記処置部位で前記鎮痛薬を放出するように構成され、
前記制御領域は、少なくとも前記処置部位での前記デポーの埋込み前に、前記鎮痛薬を含まない、デポー。
(項目14)
鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
前記鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよび前記ポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、前記放出剤は、in vivoで前記デポーが配置されたとき溶解して前記制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
前記デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、3日間以上にわたり前記処置部位で前記鎮痛薬を放出するように構成され、
前記制御領域は、前記治療領域の前記鎮痛薬とは異なる鎮痛薬を含む、デポー。
(項目15)
鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
前記鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよび前記ポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、前記放出剤は、in vivoで前記デポーが配置されたとき溶解して前記制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
前記デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、3日間以上にわたり前記処置部位で前記鎮痛薬を放出するように構成され、
前記放出剤は第1の放出剤であり、前記治療領域は、前記鎮痛薬と混合された第2の放出剤を含む、デポー。
(項目16)
鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
前記鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよび前記ポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、前記放出剤は、in vivoで前記デポーが配置されたとき溶解して前記制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
前記デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、3日間以上にわたり前記処置部位で前記鎮痛薬を放出するように構成され、
前記放出剤は第1の放出剤であり、前記ポリマーは第1のポリマーであり、前記治療領域は、第2の放出剤および前記鎮痛薬と混合された第2のポリマーを含む、デポー。
(項目17)
鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
前記鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよび前記ポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、前記放出剤は、in vivoで前記デポーが配置されたとき溶解して前記制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
前記デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、3日間以上にわたり前記処置部位で前記鎮痛薬を放出するように構成され、
前記制御領域の厚さは、前記治療領域の厚さの1/50未満またはそれに等しい、デポー。
(項目18)
鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
前記鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよび前記ポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、前記放出剤は、in vivoで前記デポーが配置されたとき溶解して前記制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
前記デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、3日間以上にわたり前記処置部位で前記鎮痛薬を放出するように構成され、
前記制御領域の厚さは、前記治療領域の厚さの1/75未満またはそれに等しい、デポー。
(項目19)
鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
前記鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよび前記ポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、前記放出剤は、in vivoで前記デポーが配置されたとき溶解して前記制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
前記デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、3日間以上にわたり前記処置部位で前記鎮痛薬を放出するように構成され、
前記制御領域の厚さは、前記治療領域の厚さの1/100未満またはそれに等しい、デポー。
(項目20)
鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
前記鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよび前記ポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、前記放出剤は、in vivoで前記デポーが配置されたとき溶解して前記制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
前記デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、3日間以上にわたり前記処置部位で前記鎮痛薬を放出するように構成され、
第1の制御層は、第1の量の前記放出剤を含み、第2の制御層は、前記第1の量とは異なる第2の量の前記放出剤を含む、デポー。
(項目21)
鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
前記鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよび前記ポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、前記放出剤は、in vivoで前記デポーが配置されたとき溶解して前記制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
前記デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、3日間以上にわたり前記処置部位で前記鎮痛薬を放出するように構成され、
前記デポーは、カバー領域の露出表面積に前記治療領域の露出表面積を加えたものを含む全表面積を有し、
前記デポーを、in vivoで前記処置部位に最初に置いたとき、前記治療領域の露出表面積の、前記カバー領域の露出表面積に対する比が、約5%から約20%、または約5%から約15%、または約5%から約10%である、デポー。
【0010】
本技術は、例えば図1~32の参照を含めた以下に記述される様々な態様により示される。本技術の態様の様々な例を、便宜上、番号を付けた箇条書き(1、2、3など)として記述する。これらは例として提供され、本技術を限定するものではない。
1. 鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよびポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、放出剤は、in vivoでデポーが配置されたとき溶解して制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、7日間以上にわたり処置部位で鎮痛薬を放出するように構成されている、デポー。
2. 治療領域の鎮痛薬が、デポーの全重量の少なくとも50%を構成する、条項1のデポー。
3. デポーが、14日間以上にわたり処置部位で鎮痛薬を放出するように構成されている、条項1または条項2のデポー。
4. 鎮痛薬の約20%から約50%が、14日間の最初の約3から約5日間で放出され、残りの鎮痛薬の少なくとも80%が、14日間の最後の11日間で放出される、条項3のデポー。
5. 鎮痛薬の約20%から約40%が、14日間の最初の3日間で放出され、残りの鎮痛薬の少なくとも80%が、14日間の最後の11日間で放出される、条項3のデポー。6. 残りの鎮痛薬の少なくとも90%が、14日間の最後の11日間で放出される、条項3から5のいずれか1つのデポー。
7. 鎮痛薬の量の15%以下が、14日間の最初の2日間で放出される、条項3から6のいずれか1つのデポー。
8. 鎮痛薬の量の20%以下が、14日間の最初の2日間で放出される、条項3から7のいずれか1つのデポー。
9. 鎮痛薬の量の25%以下が、14日間の最初の3日間で放出される、条項3から8のいずれか1つのデポー。
10. 鎮痛薬の量の30%以下が、14日間の最初の3日間で放出される、条項3から9のいずれか1つのデポー。
11. デポーが、第1の期間に関しては第1の速度で、および第2の期間に関しては第2の速度で鎮痛薬を放出するように構成されている、条項1から11のいずれか1つのデポー。
12. 第1の速度が、第2の速度よりも大きい、条項12のデポー。
13. 第1の期間が第2の期間よりも長い、条項12のデポー。
14. 第1の期間が第2の期間よりも短い、条項12のデポー。
15. 治療領域における鎮痛薬の少なくとも90%を、14日以内に放出するように構成されている、条項1から14のいずれか1つのデポー。
16. 1日当たり、処置部位に約100mgから約500mgの鎮痛薬を放出するように構成されている、条項1から15のいずれか1つのデポー。
17. 1日当たり、処置部位に約100mgから約400mgの鎮痛薬を放出するように構成されている、条項1から16のいずれか1つのデポー。
18. 1日当たり、処置部位に約100mgから約300mgの鎮痛薬を放出するように構成されている、条項1から17のいずれか1つのデポー。
19. 最初の3日以内に1日当たり300mg以下、および残りの日数で1日当たり200mg以下の鎮痛薬を放出するように構成されている、条項1から18のいずれか1つのデポー。
20. 最初の3日以内に1日当たり150mg以下、および残りの日数で1日当たり100mg以下の鎮痛薬を放出するように構成されている、条項1から19のいずれか1つのデポー。
21. 400mg以下の鎮痛薬が、14日のいずれかの日までに放出される、条項1から20のいずれか1つのデポー。
22. 300mg以下の鎮痛薬が、14日のいずれかの日までに放出される、条項1から21のいずれか1つのデポー。
23. 250mg以下の鎮痛薬が、14日のいずれかの日までに放出される、条項1から22のいずれか1つのデポー。
24. 200mg以下の鎮痛薬が、14日のいずれかの日までに放出される、条項1から23のいずれか1つのデポー。
25. 150mg以下の鎮痛薬が、14日のいずれかの日までに放出される、条項1から24のいずれか1つのデポー。
26. 100mg以下の鎮痛薬が、14日のいずれかの日までに放出される、条項1から25のいずれか1つのデポー。
27. 1日以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、7日以上、8日以上、9日以上、10日以上、11日以上、12日以上、13日以上、14日以上、15日以上、16日以上、17日以上、18日以上、19日以上、20日以上、21日以上、22日以上、23日以上、24日以上、25日以上、26日以上、27日以上、28日以上、29日以上、30日以上、40日以上、50日以上、60日以上、70日以上、90日以上、100日以上、200日以上、300日以上、または365日以上にわたり、in vivoで処置部位で鎮痛剤を放出するように構成されている、条項1から26のいずれか1つのデポー。
28. 10日目の、哺乳動物患者の血漿中の鎮痛薬の濃度が、5日目の患者の血漿中の鎮痛薬の濃度の70%以上である、条項1から27のいずれか1つのデポー。
29. 治療領域が、覆われた部分および露出した部分を含み、デポーをin vivoで処置部位に最初に置いたときに制御領域が、治療領域の覆われた部分と処置部位の生理学的流体との間にあり、治療領域の露出した部分が生理学的流体に曝露されるように、覆われた部分は制御領域によって覆われている、条項1から28のいずれか1つのデポー。30. デポーが、カバー領域の露出した表面積に、治療領域の露出した表面積を加えたものを含む、全表面積を有し、
デポーを、in vivoで処置部位に最初に置いたとき、治療領域の露出した表面積の、カバー領域の露出した表面積に対する比が、約5%から約20%、または約5%から約15%、または約5%から約10%である、
条項1から29のいずれか1つのデポー。
31. 制御領域の露出した表面積が、治療領域の露出した表面積よりも小さい、条項30のデポー。
32. 制御領域の露出した表面積が、治療領域の露出した表面積よりも大きい、条項30のデポー。
33. 制御領域が第1の制御領域であり、デポーが第2の制御領域を含む、条項1から32のいずれか1つのデポー。
34. 第1の制御領域が、治療領域の第1の面に配置され、第2の制御領域が、第1の面とは反対側にある治療領域の第2の面に配置される、条項33のデポー。
35. デポーが、複数の制御領域および複数の治療領域を含み、治療領域のそれぞれが、1つまたは複数の制御領域によって治療領域の隣接する1つから離間している、条項1から34のいずれか1つのデポー。
36. 治療領域のそれぞれおよび制御領域のそれぞれがマイクロ薄層である、条項35のデポー。
37. 約2から約100個の治療領域を含む、条項35または条項36のデポー。
38. 約2から約50個の治療領域を含む、条項35または条項36のデポー。
39. 約2から約10個の治療領域を含む、条項35または条項36のデポー。
40. デポーをin vivoで処置部位に置いたとき、制御領域が、治療領域と、処置部位の生理学的流体との間にあるように、治療領域が制御領域によって包囲されている、条項1から34のいずれか1つのデポー。
41. 制御領域が、第1の制御層および第2の制御層を含む、条項1から40のいずれか1つのデポー。
42. 第2の制御層が、治療領域に隣接しており、第1の制御層が、治療領域および第2の制御層をカプセル封入/包囲する、条項41のデポー。
43. 第1の制御層および第2の制御層が一緒になって、治療領域を包囲する、条項41または条項42のデポー。
44. 第1の制御層が、治療領域の第1の面に配置され、第2の制御層が、第1の面とは反対側にある治療領域の第2の面に配置される、条項41から43のいずれか1つのデポー。
45. 第1の制御層が、第1の複数の副層(sub-layer)を含み、第2の制御層が、第2の複数の副層を含む、条項41から44のいずれか1つのデポー。
46. 第1の制御層が、第1の量の放出剤を含み、第2の制御層が、第1の量とは異なる第2の量の放出剤を含む、条項41から45のいずれか1つのデポー。
47. 第2の制御層が、第1の制御層と治療領域との間に置かれ、第1の制御層が、第1の濃度の放出剤を含み、第2の制御層が、第1の濃度よりも大きい第2の濃度の放出剤を含む、条項41から46のいずれか1つのデポー。
48. 第2の制御層が、第1の制御層と治療領域との間に置かれ、第1の制御層が第1の濃度の放出剤を含み、第2の制御層が、第1の濃度よりも小さい第2の濃度の放出剤を含む、条項41から46のいずれか1つのデポー。
49. 第2の制御層が、第1の制御層と治療領域との間に置かれ、
第1の制御層は、放出剤を5重量%まで、放出剤を10重量%まで、放出剤を15重量%まで、放出剤を20重量%まで、放出剤を25重量%まで、放出剤を30重量%まで、放出剤を35重量%まで、放出剤を40重量%まで、放出剤を45重量%まで、または放出剤を50重量%まで含み、
第2の制御層は、放出剤を5重量%まで、放出剤を10重量%まで、放出剤を15重量%まで、放出剤を20重量%まで、放出剤を25重量%まで、放出剤を30重量%まで、放出剤を35重量%まで、放出剤を40重量%まで、放出剤を45重量%まで、または放出剤を50重量%まで含む、
条項41から48のいずれか1つのデポー。
50. 第2の制御層が、第1の制御層と治療領域との間に置かれ、第1の制御層が、第1の量の放出剤を含み、第2の制御層が、第2の量の放出剤を含み、第2の量が、第1の量の少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、または少なくとも5倍である、条項41から49のいずれか1つのデポー。
51. 制御領域の厚さが、治療領域の厚さの1/50未満でありまたはそれに等しい、条項1から50のいずれか1つのデポー。
52. 制御領域の厚さが、治療領域の厚さの1/75未満でありまたはそれに等しい、条項1から50のいずれか1つのデポー。
53. 制御領域の厚さが、治療領域の厚さの1/100未満でありまたはそれに等しい、条項1から50のいずれか1つのデポー。
54. 多数の小片に破壊されることなくかつ/またはその全体的な形状を失うことなく、通常の手術過程の最中に臨床医により取り扱われることが構造的に可能である柔軟な固体である、条項1から53のいずれか1つのデポー。
55. 患者の膝の内部に配置され、かつ多数の小片に破壊されることなくin vivoで鎮痛薬を最長7日間放出するように構成されている、条項1から54のいずれか1つのデポー。
56. デポーが幅および厚さを有し、幅の厚さに対する比が21またはそれよりも大きい、条項1から55のいずれか1つのデポー。
57. 比が30またはそれよりも大きい、条項56のデポー。
58. 比が40またはそれよりも大きい、条項56のデポー。
59. デポーが表面積および体積を有し、表面積の体積に対する比が少なくとも1である、条項1から58のいずれか1つのデポー。
60. 拡散開口が、少なくとも1つもしくは複数の細孔および/または1つもしくは複数のチャネルを含む、条項1から59のいずれか1つのデポー。
61. 生体吸収性ポリマーの2つまたはそれよりも多くのマイクロ薄層が、熱圧縮を介して結合されて治療領域を形成する、条項1から60のいずれか1つのデポー。
62. 制御領域および治療領域が、熱圧縮を介して結合される、条項1から61のいずれか1つのデポー。
63. 制御領域および治療領域が、熱により結合される、条項1から62のいずれか1つのデポー。
64. 処置部位にin vivoで配置した後の放出剤の溶解によって、制御領域および治療領域は、多孔度がより小さい状態から多孔度がより大きい状態に遷移して、デポーからの鎮痛薬の放出を容易にする、条項1から63のいずれか1つのデポー。
65. 制御領域が、少なくとも処置部位でのデポーの埋込み前に、鎮痛薬を含まない、条項1から64のいずれか1つのデポー。
66. 制御領域が、治療領域内の鎮痛薬とは異なる鎮痛薬を含む、条項1から64のいずれか1つのデポー。
66a. 治療領域が、処置部位でのデポーの埋込み前に、いかなる放出剤も含まない、条項1から66のいずれか1つのデポー。
67. 放出剤が第1の放出剤であり、治療領域が、鎮痛薬と混合された第2の放出剤を含む、条項1から66aのいずれか1つのデポー。
68. 放出剤が第1の放出剤であり、ポリマーが第1のポリマーであり、治療領域が、第2の放出剤、および鎮痛薬と混合された第2のポリマーを含む、条項1から67のいずれか1つのデポー。
69. 第1の放出剤が、第2の放出剤と同じである、条項1から68のいずれか1つのデポー。
70. 第1の放出剤が、第2の放出剤とは異なる、条項1から68のいずれか1つのデポー。
71. 制御領域内の第1の放出剤の濃度が、治療領域内の第2の放出剤の濃度よりも大きい、条項1から70のいずれか1つのデポー。
72. 制御領域内の第1の放出剤の濃度が、治療領域内の第2の放出剤の濃度よりも小さい、条項1から70のいずれか1つのデポー。
73. 制御領域内の第1の放出剤の濃度が、治療領域内の第2の放出剤の濃度と同じである、条項1から70のいずれか1つのデポー。
74. 制御領域内の第1の放出剤の濃度が、治療領域内の第2の放出剤の濃度とは異なる、条項1から72のいずれか1つのデポー。
75. 治療領域が複数のマイクロ層を含む、条項1から74のいずれか1つのデポー。
76. 鎮痛薬の質量が、デポーの質量の少なくとも50%を構成する、条項1から75のいずれか1つのデポー。
77. デポー中の鎮痛薬の質量の、デポーポリマー質量に対する比が、少なくとも3:1である、条項1から76のいずれか1つのデポー。
78. デポー中の鎮痛薬の質量の、デポーポリマー質量に対する比が、少なくとも4:1である、条項1から76のいずれか1つのデポー。
79. デポー中の鎮痛薬の質量の、デポーポリマー質量に対する比が、少なくとも5:1である、条項1から76のいずれか1つのデポー。
80. デポー中の鎮痛薬の質量の、デポーポリマー質量に対する比が、少なくとも6:1である、条項1から76のいずれか1つのデポー。
81. デポー中の鎮痛薬の質量の、デポーポリマー質量に対する比が、少なくとも7:1である、条項1から76のいずれか1つのデポー。
82. デポー中の鎮痛薬の質量の、デポーポリマー質量に対する比が、少なくとも8:1である、条項1から76のいずれか1つのデポー。
83. デポー中の鎮痛薬の質量の、デポーポリマー質量に対する比が、少なくとも10:1である、条項1から76のいずれか1つのデポー。
84. デポー中の鎮痛薬の質量の、デポーポリマー質量に対する比が、少なくとも16:1である、条項1から76のいずれか1つのデポー。
85. 治療領域が、鎮痛薬を少なくとも60重量%、鎮痛薬を60重量%、鎮痛薬を少なくとも70重量%、鎮痛薬を少なくとも80重量%、鎮痛薬を少なくとも90重量%、または鎮痛薬を100重量%含む、条項1から84のいずれか1つのデポー。
86. 鎮痛薬を少なくとも15重量%、鎮痛薬を少なくとも20重量%、鎮痛薬を少なくとも30重量%、鎮痛薬を少なくとも40重量%、鎮痛薬を少なくとも50重量%、鎮痛薬を少なくとも60重量%、鎮痛薬を少なくとも70重量%、鎮痛薬を少なくとも80重量%、鎮痛薬を少なくとも90重量%、または鎮痛薬を100重量%含む、条項1から84のいずれか1つのデポー。
87. 鎮痛薬が、単なる鎮痛薬、局所麻酔薬、NSAID、およびオピオイドの少なくとも1種を含む、条項1から86のいずれか1つのデポー。
88. 鎮痛薬が、ブピバカイン、ロピバカイン、メピバカイン、およびリドカインの少なくとも1種から選択される局所麻酔薬を含む、条項1から87のいずれか1つのデポー。
89. 抗生物質、抗真菌薬、および/または抗菌薬をさらに含み、抗生物質、抗真菌薬、および/または抗菌薬が、アモキシシリン、アモキシシリン/クラブラネート、セファレキシン、シプロフロキサシン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、アジスロマイシン、レボフロキサシン、スルファメトキサゾール/トリメトプリム、テトラサイクリン(複数可)、ミノサイクリン、チゲサイクリン、ドキシサイクリン、リファムピン、トリクロサン、クロルヘキシジン、ペニシリン(複数可)、アミノグリシド、キノロン、フルオロキノロン、バンコマイシン、ゲンタマイシン、セファロスポリン(複数可)、カルバペネム、イミペネム、エルタペネム、抗菌性ペプチド、セクロピン-メリチン、マガイニン、デルマセプチン、カテリシジン、α-デフェンシン、およびα-プロテグリン、ケトコナゾール、クロルトリマゾール、ミコナゾール、エコナゾール、イントラコナゾール、フルコナゾール、ビフォコナゾール、テルコナゾール、ブタコナゾール、チオコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、サペルコナゾール、ボリコナゾール、テルビナフィン、アモロルフィン、ナフチフィン、グリセオフルビン、ハロプロギン、ブテナフィン、トルナフテート、ニスタチン、シクロヘキサミド、シクロピロックス、フルシトシン、テルビナフィン、およびアムホテリシンBの少なくとも1種から選択される、条項1から88のいずれか1つのデポー。
90. ステロイド、プレドニゾン、ベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、およびメチルプレドニゾロン、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム、ジクロフェナク、ジクロフェナク-ミソプロストール、セレコキシブ、ピロキシカム、インドメタシン、メロキシカム、ケトプロフェン、スリンダク、ジフルニサール、ナブメトン、オキサプロジン、トルメチン、サルサレート、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトロラク、メクロフェナメート、メフェナム酸、およびCOX-2阻害剤の少なくとも1種から選択される抗炎症剤をさらに含む、条項1から89のいずれか1つのデポー。
91. エピネフリン、クロニジン、トランセキサム酸の少なくとも1種をさらに含む、条項1から90のいずれか1つのデポー。
92. 放出剤が非イオン性界面活性剤である、条項1から91のいずれか1つのデポー。
93. 放出剤が親水性を有する、条項1から92のいずれか1つのデポー。
94. 放出剤がポリソルベートである、条項1から93のいずれか1つのデポー。
95. 放出剤がTween 20である、条項1から94のいずれか1つのデポー。
96. 放出剤がTween 80である、条項1から94のいずれか1つのデポー。
97. 放出剤が非ポリマー性である、条項1から96のいずれか1つのデポー。
98. 放出剤が可塑剤ではない、条項1から97のいずれか1つのデポー。
99. ポリマーが、鎮痛薬の実質的に全てがデポーから放出された後でのみ分解するように構成されている、条項1から98のいずれか1つのデポー。
100. ポリマーがコポリマーである、条項1から99のいずれか1つのデポー。
101. ポリマーがターポリマーである、条項1から99のいずれか1つのデポー。
102. ポリマーが、ポリグリコリド(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(DL-乳酸)(PLA)、ポリ(アルファ-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGAまたはDLG)、ポリ(DL-ラクチド-co-カプロラクトン)(DL-PLCL)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリ(4-ヒドロキシブチレート)(PHB)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ(ホスファゼン)、ポリリン酸エステル)、ポリ(アミノ酸)、ポリデプシペプチド、ポリ(ブチレンスクシネート)(PBS)、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンフマレート、ポリイミノカーボネート、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)(PLCL)、ポリ(グリコリド-co-カプロラクトン)(PGCL)コポリマー、ポリ(D,L-乳酸)、ポリグリコール酸、ポリ(L-ラクチド-co-D,L-ラクチド)、ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(グリコリド-トリメチレンカーボネート)、ポリ(エチルグルタメート-co-グルタミン酸)、ポリ(tert-ブチルオキシ-カルボニルメチルグルタメート)、ポリ(グリセロールセバケート)、チロシン誘導ポリカーボネート、ポリ1,3-ビス-(p-カルボキシフェノキシ)ヘキサン-co-セバシン酸、ポリホスファゼン、エチルグリシネートポリホスファゼン、ポリカプロラクトンco-ブチルアクリレート、ポリヒドロキシブチレートのコポリマー、無水マレイン酸のコポリマー、ポリ(トリメチレンカーボネート)のコポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびセルロース誘導体、多糖類(ヒアルロン酸、キトサン、およびデンプンなど)、タンパク質(ゼラチンおよびコラーゲンなど)またはPEG誘導体、ポリアスピリン、ポリホスファゲン、コラーゲン、デンプン、アルファ化デンプン、ヒアルロン酸、キトサン、ゼラチン、アルギネート、アルブミン、フィブリン、ビタミンE類似体、例えばアルファトコフェリルアセテート、d-アルファトコフェリルスクシネート、D-ラクチド、D,L-ラクチド、L-ラクチド、D,L-ラクチド-カプロラクトン(DL-CL)、D,L-ラクチド-グリコリド-カプロラクトン(DL-G-CL)、デキストラン、ビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA-g-PLGA、PEGT-PBTコポリマー(ポリアクティブ(polyactive))、メタクリレート、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、PEO-PPO-PEO(プルロニクス)、PEO-PPO-PAAコポリマー、PLGA-PEO-PLGA、PEG-PLG、PLA-PLGA、ポロキサマー407、PEG-PLGA-PEGトリブロックコポリマー、SAIB(スクロースアセテートイソブチレート)ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、Carbopol(登録商標)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メトキシエチルメタクリレート)、ポリ(メトキシエトキシ-エチルメタクリレート)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート(MMA)、ゼラチン、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、およびポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド-co-カプロラクトン)の少なくとも1種を含む、条項1から101のいずれか1つのデポー。
103. ポリマーが、ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド-co-カプロラクトン)およびポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)の1種である、条項1から102のいずれか1つのデポー。
104. ポリマーが、60:30:10のモル比にあるポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド-co-カプロラクトン)である、条項1から102のいずれか1つのデポー。
105. ポリマーが、50:50のモル比にあるポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)である、条項1から102のいずれか1つのデポー。
106. ポリマーがエステルで終端している、条項1から105のいずれか1つのデポー。
107. ポリマーが、下記:ポリグリコリド(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(L-乳酸)(PLA)、ポリ(DL-乳酸)(PLA)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリ(4-ヒドロキシブチレート)(PHB)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ(ホスファゼン)、およびポリエチレングリコールから選択される3種のポリマーを含むターポリマーである、条項1から102のいずれか1つのデポー。
108. ポリマーが第1のポリマーであり、治療領域が、鎮痛薬と混合された第2のポリマーを含む、条項1から107のいずれか1つのデポー。
109. 第1のポリマーおよび第2のポリマーが同じである、条項108のデポー。
110. 第1のポリマーおよび第2のポリマーが異なる、条項108のデポー。
111. 第1のポリマーおよび/または第2のポリマーが、ポリグリコリド(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(DL-乳酸)(PLA)、ポリ(アルファ-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGAまたはDLG)、ポリ(DL-ラクチド-co-カプロラクトン)(DL-PLCL)、ポリ(トリメチレンカーボネート(PTMC)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリ(4-ヒドロキシブチレート)(PHB)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ(ホスファゼン)、ポリリン酸エステル)、ポリ(アミノ酸)、ポリデプシペプチド、ポリ(ブチレンスクシネート)(PBS)、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンフマレート、ポリイミノカーボネート、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)(PLCL)、ポリ(グリコリド-co-カプロラクトン)(PGCL)コポリマー、ポリ(D,L-乳酸)、ポリグリコール酸、ポリ(L-ラクチド-co-D,L-ラクチド)、ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(グリコリド-トリメチレンカーボネート)、ポリ(エチルグルタメート-co-グルタミン酸)、ポリ(tert-ブチルオキシ-カルボニルメチルグルタメート)、ポリ(グリセロールセバケート)、チロシン誘導ポリカーボネート、ポリ1,3-ビス-(p-カルボキシフェノキシ)ヘキサン-co-セバシン酸、ポリホスファゼン、エチルグリシネートポリホスファゼン、ポリカプロラクトンco-ブチルアクリレート、ポリヒドロキシブチレートのコポリマー、無水マレイン酸のコポリマー、ポリ(トリメチレンカーボネート)のコポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびセルロース誘導体、多糖(ヒアルロン酸、キトサン、およびデンプンなど)、タンパク質(ゼラチンおよびコラーゲンなど)またはPEG誘導体、ポリアスピリン、ポリホスファゲン、コラーゲン、デンプン、アルファ化デンプン、ヒアルロン酸、キトサン、ゼラチン、アルギネート、アルブミン、フィブリン、ビタミンE類似体、例えばアルファトコフェリルアセテート、d-アルファトコフェリルスクシネート、D-ラクチド、D,L-ラクチド、L-ラクチド、D,L-ラクチド-カプロラクトン(DL-CL)、D,L-ラクチド-グリコリド-カプロラクトン(DL-G-CL)、デキストラン、ビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA-g-PLGA、PEGT-PBTコポリマー(ポリアクティブ)、メタクリレート、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、PEO-PPO-PEO(プルロニクス)、PEO-PPO-PAAコポリマー、PLGA-PEO-PLGA、PEG-PLG、PLA-PLGA、ポロキサマー407、PEG-PLGA-PEGトリブロックコポリマー、SAIB(スクロースアセテートイソブチレート)ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、Carbopol(登録商標)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メトキシエチルメタクリレート)、ポリ(メトキシエトキシ-エチルメタクリレート)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート(MMA)、ゼラチン、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド-co-カプロラクトン)の少なくとも1種を含む、条項108から110のいずれか1つのデポー。
112. 第1のポリマーおよび/または第2のポリマーが、下記:ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド-co-カプロラクトン)およびポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)から選択される、条項108から111のいずれか1つのデポー。
113. 第1のポリマーおよび/または第2のポリマーが、ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド-co-カプロラクトン)であり、60:30:10のモル比を有する、条項108から111のいずれか1つのデポー。
114. 第1のポリマーおよび/または第2のポリマーが、ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)であり、50:50のモル比を有する、条項108から111のいずれか1つのデポー。
115. 第1のポリマーおよび/または第2のポリマーがエステルで終端している、条項108から114のいずれか1つのデポー。
116. 第1のポリマーおよび/または第2のポリマーが、下記:ポリグリコリド(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(L-乳酸)(PLA)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリ(4-ヒドロキシブチレート)(PHB)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ(ホスファゼン)、およびポリエチレングリコールから選択される3種のポリマーを含むターポリマーである、条項108から111のいずれか1つのデポー。
117. 放出剤の、制御領域内のポリマーに対する比が、少なくとも1:1である、条項1から116のいずれか1つのデポー。
118. 放出剤の、制御領域内のポリマーに対する比が、少なくとも2:1である、条項1から116のいずれか1つのデポー。
119. 放出剤の、制御領域内のポリマーに対する比が、少なくとも3:1である、条項1から116のいずれか1つのデポー。
120. 放出剤の、制御領域内のポリマーに対する比が、少なくとも4:1である、条項1から116のいずれか1つのデポー。
121. 放出剤の、制御領域内のポリマーに対する比が、少なくとも5:1である、条項1から116のいずれか1つのデポー。
122. 放出剤の、制御領域内のポリマーに対する比が、少なくとも6:1である、条項1から116のいずれか1つのデポー。
123. 放出剤の、制御領域内のポリマーに対する比が、少なくとも7:1である、条項1から116のいずれか1つのデポー。
124. 放出剤の、制御領域内のポリマーに対する比が、少なくとも8:1である、条項1から116のいずれか1つのデポー。
125. 放出剤の、制御領域内のポリマーに対する比が、少なくとも9:1である、条項1から116のいずれか1つのデポー。
126. 放出剤の、制御領域内のポリマーに対する比が、少なくとも10:1である、条項1から116のいずれか1つのデポー。
127. 放出剤の、制御領域内のポリマーに対する比が、少なくとも15:1である、条項1から116のいずれか1つのデポー。
128. ポリマーが第1のポリマーであり、治療領域が第2のポリマーをさらに含み、
デポーが、第1のポリマーの質量に第2のポリマーの質量を加えたものに等しいデポーポリマー質量を有し、
デポー内の鎮痛薬の質量の、デポーポリマー質量に対する比が、約1:1である、
条項1から127のいずれか1つのデポー。
129. 第1のポリマーが、第2のポリマーと同じである、条項128のデポー。
130. 第1のポリマーが、第2のポリマーとは異なる、条項128のデポー。
131. デポー内の鎮痛薬の質量の、デポーポリマー質量に対する比が、少なくとも2:1である、条項128から130のいずれか1つのデポー。
132. デポー中の鎮痛薬の質量の、デポーポリマー質量に対する比が、少なくとも3:1である、条項128から130のいずれか1つのデポー。
133. デポー中の鎮痛薬の質量の、デポーポリマー質量に対する比が、少なくとも4:1である、条項128から130のいずれか1つのデポー。
134. デポー中の鎮痛薬の質量の、デポーポリマー質量に対する比が、約5:1である、条項128から130のいずれか1つのデポー。
135. デポー中の鎮痛薬の質量の、デポーポリマー質量に対する比が、少なくとも6:1である、条項128から130のいずれか1つのデポー。
136. デポー中の鎮痛薬の質量の、デポーポリマー質量に対する比が、少なくとも7:1である、条項128から130のいずれか1つのデポー。
137. デポー中の鎮痛薬の質量の、デポーポリマー質量に対する比が、少なくとも8:1である、条項128から130のいずれか1つのデポー。
138. デポー中の鎮痛薬の質量の、デポーポリマー質量に対する比が、少なくとも10:1である、条項128から130のいずれか1つのデポー。
139. デポー中の鎮痛薬の質量の、デポーポリマー質量に対する比が、少なくとも16:1である、条項128から130のいずれか1つのデポー。
140. 鎮痛薬が局所麻酔薬であり、5日間にわたる処置部位への鎮痛薬の放出が、細菌および真菌の増殖を阻害する、条項1から139のいずれか1つのデポー。
141. デポー上の細菌の数が、鎮痛薬を含有しない同等のデポー上に存在する細菌の数の10分の1、20分の1、30分の1、40分の1、または50分の1になるように、細菌および真菌の増殖を阻害するように構成されている、条項140のデポー。
142. 鎮痛薬の放出が、感覚ブロック(sensory block)を創出するのに十分高く、それによって術後疼痛を処置するが、運動ブロック(motor block)を回避するのに十分低いレベルにある、条項1から141のいずれか1つのデポー。143. 鎮痛薬の放出が、術後疼痛からの、運動温存緩和(motor sparing relief)をもたらす、条項1から142のいずれか1つのデポー。
144. 治療剤の持続した制御放出のためのデポーであって、
治療剤を含む治療領域;
生体吸収性ポリマーおよびこのポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、放出剤は、デポーが流体と接触して配置されたとき溶解して制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み;
デポーが流体と接触して配置されたとき、デポーは、14日間以上にわたり周囲の流体中に治療剤を放出するように構成され、
治療剤の約20%から約50%が、14日間の最初の約3から約5日間で放出され、残りの治療剤の少なくとも80%が、14日間の最後の11日間で放出される、デポー。
145. 残りの治療剤の少なくとも85%が、14日間の最後の11日間で放出される、条項144のデポー。
146. 残りの治療剤の少なくとも90%が、14日間の最後の11日間で放出される、条項144のデポー。
147. 残りの治療剤の少なくとも95%が、14日間の最後の11日間で放出される、条項144のデポー。
148. 治療剤の量の15%以下が、14日間の最初の2日間で放出される、条項144から147のいずれか1つのデポー。
149. 治療剤の量の20%以下が、14日間の最初の2日間で放出される、条項144から147のいずれか1つのデポー。
150. 治療剤の量の25%以下が、14日間の最初の3日間で放出される、条項144から147のいずれか1つのデポー。
151. 治療剤の量の30%以下が、14日間の最初の3日間で放出される、条項144から147のいずれか1つのデポー。
152. 放出剤が、デポーがリン酸緩衝生理食塩液に接触して配置されたとき溶解して拡散開口を形成するように構成されている、条項144から147のいずれか1つのデポー。
153. 術後疼痛を処置するための方法であって、
生理学的流体を有するin vivoの処置部位に、(a)生体吸収性ポリマーおよびこのポリマーと混合された放出剤を含む制御領域、ならびに(b)鎮痛薬を少なくとも50重量%含む治療領域を含むデポーを置くこと;および
デポーから、7日間以上にわたり鎮痛薬を処置部位に放出すること
を含む方法。
154. 放出剤を第1の速度で溶解すること、およびポリマーを第2の速度で分解することをさらに含み、第1の速度が第2の速度よりも大きい、条項153の方法。
155. 制御領域と処置部位での生理学的流体との間の接触に応答して放出剤を溶解することをさらに含む、条項153または条項154の方法。
156. 処置部位での生理学的流体に応答した放出剤の溶解を介して制御領域に拡散開口を創出することをさらに含む、条項153から155のいずれか1つの方法。
157. 放出剤が第1の放出剤であり、治療領域が第2の放出剤を含み、方法が、第1および/または第2の放出剤の溶解を介して治療領域および制御領域にマイクロチャネルを創出することをさらに含む、条項153から156のいずれか1つの方法。
158. マイクロチャネルの少なくともいくつかが、治療領域と制御領域の両方を貫通する、条項153から157のいずれか1つの方法。
159. 治療領域が複数のマイクロ層を含み、マイクロチャネルの少なくともいくつかが、連続するマイクロ層を通って延びる、条項153から158のいずれか1つの方法。160. 制御領域が、第1の複数のマイクロ層を含み、治療領域が、第2の複数のマイクロ層を含み、マイクロチャネルの少なくともいくつかが、第1および第2の複数のマイクロ層を通って延びる、条項153から159のいずれか1つの方法。
161. 放出剤の溶解を介してデポーの多孔度を増大させることをさらに含む、条項153から160のいずれか1つの方法。
162. 鎮痛薬が、埋込み後に実質的に別個の用量で1回または複数回放出される、条項153から161のいずれか1つの方法。
163. 鎮痛薬が、埋込み後に少なくとも7日間にわたり、連続して放出される、条項153から162のいずれか1つの方法。
164. 鎮痛薬が、10日間以上にわたり放出される、条項153から163のいずれか1つの方法。
165. 鎮痛薬が、14日間以上にわたり放出される、条項153から163のいずれか1つの方法。
166. 鎮痛薬の量の20%以下が、7日間の初日に放出される、条項153から165のいずれか1つの方法。
167. 取着手段を介して処置部位にデポーを固定することをさらに含む、条項153から166のいずれか1つの方法。
168. 取着手段が、埋込み前にデポーに連結される、条項153から167のいずれか1つの方法。
169. デポーが第1のデポーであり、方法が、第2のデポーを処置部位に置くことをさらに含む、条項153から168のいずれか1つの方法。
170. 第1および第2のデポーが一緒になって、7日以上の期間にわたり、処置部位に少なくとも1400mgの鎮痛薬を放出する、条項169の方法。
171. 条項1から152および196から198のデポー、ならびに/または条項179から195のシステムのいずれかで、整形外科手術に関連した術後疼痛を処置するための方法。
172a. 整形外科手術の後の患者の術後疼痛を処置するための方法であって、
複数のデポーを手術部位に埋め込むことであって、デポーのそれぞれが、(a)生体吸収性ポリマーおよびこのポリマーと混合された放出剤を含む制御領域、ならびに(b)鎮痛薬を少なくとも50重量%含む治療領域を含む、埋め込むこと;および
デポーから鎮痛薬を、7日間以上にわたり部位に放出すること
を含む方法。
172b. 整形外科手術の後の患者の術後疼痛を処置するための方法であって、
デポーを手術部位に埋め込むことであって、デポーが、(a)生体吸収性ポリマーおよびこのポリマーと混合された放出剤を含む制御領域、ならびに(b)鎮痛薬を少なくとも50重量%含む治療領域を含む、埋め込むこと;および
デポーから鎮痛薬を、7日間以上にわたり部位に放出すること
を含む方法。
172c. 全膝関節形成術の後の患者の術後疼痛を処置するための方法であって、
患者の膝にデポーを置くことであって、デポーが、(a)生体吸収性ポリマーおよびこのポリマーと混合された放出剤を含む制御領域、ならびに(b)鎮痛薬を少なくとも50重量%含む治療領域を含む、置くこと;および
デポーから鎮痛薬を、7日間以上にわたり患者の膝に放出すること
を含む方法
172a. デポーが、条項1から152および196から198のデポーのいずれかである、条項172の方法。
173. デポーを置くことが、少なくとも1つのデポーを、膝蓋上嚢部、外側溝、内側溝、後嚢、四頭筋腱、皮膚切開、関節切開、内転筋管、伏在神経、膝神経の少なくとも1つに置くことを含む、条項172または条項172aの方法。
174. デポーを置くことが、伏在神経、内転筋管、および大腿神経の少なくとも1つに隣接して少なくとも1つのデポーを置くことを含む、条項172から173のいずれか1つの方法。
175. デポーを置くことが、少なくとも1つのデポーの嚢内配置を含む、条項172から174のいずれか1つの方法。
176. デポーを置くことが、少なくとも1つのデポーの嚢外配置を含む、条項172から174のいずれか1つの方法。
177. デポーを置くことが、膝の関節を妨げることなしに嚢内配置を含む、条項172から176のいずれか1つの方法。
178. 少なくとも1つのデポーを、膝蓋上嚢部、外側溝、内側溝、後嚢、四頭筋腱、皮膚切開、関節切開、内転筋管の少なくとも1つに配置する、条項172の方法。
179. 整形外科手術に関連した術後疼痛を処置するためのシステムであって、
複数のデポーを含み、そのそれぞれが、先の条項に記述されるデポーのいずれかであり、
複数のデポーが、患者の処置部位に埋め込まれかつ処置部位に鎮痛薬を放出するように構成されている、システム。
180. デポーが、鎮痛薬を処置部位に、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも11日間、少なくとも12日間、少なくとも13日間、または少なくとも14日間放出するように構成されている、条項179のシステム。
181. デポーが、最初の3日以内に1日当たり250mg以下の鎮痛薬を、残りの日数で1日当たり150mg以下の鎮痛薬を、まとめて放出するように構成されている、条項180のシステム。
182. 送達システム;ならびに
送達システムと共にin vivoで処置部位に埋め込まれるように構成されたデポーであって、条項1から152および196から198のデポーのいずれかを含むデポー
を含む、術後疼痛を処置するためのシステム。
182a. 取着手段;ならびに
in vivoで処置部位に埋め込まれかつ取着手段を介して処置部位に固定されるように構成されたデポーであって、条項1から152および196から198のデポーのいずれかを含むデポー
を含む、術後疼痛を処置するためのシステム。
183. 取着手段が、埋込み前にデポーに連結される、条項182aのシステム。
184. 取着手段が、縫合糸、タイン(tine)、バーブ(barb)、フック、およびネジの少なくとも1つである、条項182または条項183のシステム。
185. 疼痛が、整形外科手術に関連する、条項182aから184のいずれか1つのシステム。
186. 疼痛が、関節置換手術に関連する、条項182aから185のいずれか1つのシステム。
187. 疼痛が、膝関節置換手術に関連する、条項182aから186のいずれか1つのシステム。
188. 疼痛が、部分膝関節置換手術に関連する、条項187のシステム。
189. 疼痛が、全膝関節置換手術に関連する、条項187のシステム。
190. 疼痛が、膝関節置換手術の修正手術に関連する、条項187のシステム。
191. デポーが、伏在神経、内転筋管、および大腿神経の少なくとも1つに隣接して置くように構成されている、条項182aから190のいずれか1つのシステム。
192. デポーが、膝の後嚢、膝蓋骨の上方領域、または膝関節包内への切開の少なくとも1つに隣接して置くように構成されている、条項182aから191のいずれか1つのシステム。
193. デポーが、内側および/または外側溝内の膝関節包内に置くように構成されている、条項182aから191のいずれか1つのシステム。
194. 送達システム、ならびに条項1から152および196から198のデポーのいずれかを含む、術後疼痛を処置するためのシステム。
195. 複数のデポーを含み、そのそれぞれが条項1から152および196から198のデポーのいずれかを含む、術後疼痛を処置するためのシステム。
196. 特定の状態または疾患を処置しまたは管理するように治療剤を放出するためのデポーであって、
治療剤および生体吸収性ポリマー担体を含む治療領域;
生体吸収性ポリマー層およびこのポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、放出剤が、in vivo配置の後に第1の期間にわたって溶解して制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、処置部位で第2の期間にわたって治療剤を放出するように構成され;
第2の期間は第1の期間よりも長く;
第2の期間の後、治療領域のポリマー担体および制御領域のポリマー層は、コアの酸性化なしにin vivoで分解するように構成された高度に多孔質のポリマー構造を含む、デポー。
197. 第2の期間の終わりの高度に多孔質のポリマー構造が、in vivo配置前のデポーの質量の50%以下である質量を有する、条項196のデポー。
198. 高度に多孔質のポリマー構造が、表面浸食を介してin vivoで分解するように構成されている、条項197のデポー。
199. 非整形外科手術手技の後の術後疼痛を処置するための方法であって、
生理学的流体を有するin vivoの処置部位に、(a)生体吸収性ポリマーおよびこのポリマーと混合させた放出剤を含む制御領域、ならびに(b)鎮痛薬を少なくとも50重量%含む治療領域を含むデポーを置くこと;
放出剤と生理学的流体との間の接触に応答して放出剤を溶解し、それによって制御領域に拡散開口を形成すること;および
拡散開口を通して治療領域から処置部位に、5日間以上鎮痛薬を放出すること
を含む方法。
200. 外科的手技が、開胸術、食道手術、心臓手術、肺切除術、または胸部手術の少なくとも1つを含む、条項199の方法。
201. 処置部位が、胸部傍脊椎腔を含む、条項200の方法。
202. デポーから放出された鎮痛薬が、肋間神経を少なくとも部分的にブロックする、条項200または条項201の方法。
203. 外科的手技が、乳房切除術、豊胸術、乳房縮小術、または乳房再建術の少なくとも1つを含む、条項199の方法。
204. 処置部位が、鎖骨下腔を含む、条項203の方法。
205. デポーから放出された鎮痛薬が、肋間神経、内側胸筋神経、または外側胸筋神経の少なくとも1つを少なくとも部分的にブロックする、条項203または条項204の方法。
206. 外科的手技が、筋腫摘出術、帝王切開、子宮摘出術、卵巣摘出術、または骨盤底再建術の少なくとも1つを含む、条項199の方法。
207. 外科的手技が、直腸結腸切除術、膵切除術、虫垂切除術、痔核切除術、胆嚢切除術、腎臓移植、腎切除術、根治的前立腺切除術、胃切除術、小腸切除術、脾臓切除術、切開創ヘルニア修復、鼠径ヘルニア修復、S状結腸切除術、肝切除術、腸瘻造設術、直腸切除術、腎臓結石除去、または膀胱切除術の少なくとも1つを含む、条項199の方法。208. デポーから放出された鎮痛薬が、腹横筋膜面にあるかまたはそれに隣接する神経を少なくとも部分的にブロックする、条項207の方法。
209. 外科的手技が、扁桃切除術、粘膜下切除術、鼻形成術、副鼻腔手術、内耳手術、耳下腺摘出術、または顎下腺手術の少なくとも1つを含む、条項199の方法。
210. 外科的手技が、歯槽手術、歯科インプラント、外科的歯科矯正術、顎関節(TMJ)手術、または口腔再建術の少なくとも1つを含む、条項199の方法。
211. 外科的手技が、腫瘍切除を含む、条項199の方法。
212. 外科的手技が、脂肪吸引術を含む、条項199の方法。
213. 放出剤を第1の速度で溶解すること、およびポリマーを第2の速度で分解することをさらに含み、第1の速度が第2の速度よりも大きい、条項199から212のいずれか1つの方法。
214. 鎮痛薬が、10日間以上にわたり放出される、条項199から213のいずれか1つの方法。
215. 鎮痛薬が、14日間以上にわたり放出される、条項199から214のいずれか1つの方法。
216. 鎮痛薬の量の20%以下が、5日間の初日に放出される、条項199から215のいずれか1つの方法。
217. 取着手段を介して処置部位にデポーを固定することをさらに含む、条項199から216のいずれか1つの方法。
218. 取着手段が、埋込み前にデポーに連結される、条項217の方法。
219. デポーが第1のデポーであり、方法が、第2のデポーを処置部位に置くことをさらに含む、条項199から218のいずれか1つの方法。
220. 第1および第2のデポーが一緒になって、7日以上の期間にわたり、処置部位に少なくとも1400mgの鎮痛薬を放出する、条項219の方法。
221. 400mg以下の治療剤が、5日間のいずれかの日までに放出される、条項199から220のいずれか1つの方法。
222. 非整形外科手術手技の後の術後疼痛を処置するための方法であって、
生理学的流体を有するin vivoの処置部位に、(a)生体吸収性ポリマーおよびこのポリマーと混合させた放出剤を含む制御領域、ならびに(b)鎮痛薬を少なくとも50重量%含む治療領域を含むデポーを置くこと;および
デポーから処置部位に、5日間以上にわたり鎮痛薬を放出すること
を含む方法。
223. 外科的手技が、開胸術、食道手術、心臓手術、肺切除術、または胸部手術の少なくとも1つを含む、条項222の方法。
224. 処置部位が、胸部傍脊椎腔を含む、条項223の方法。
225. デポーから放出された鎮痛薬が、肋間神経を少なくとも部分的にブロックする、条項223または224の方法。
226. 外科的手技が、乳房切除術、豊胸術、乳房縮小術、または乳房再建術の少なくとも1つを含む、条項222の方法。
227. 処置部位が、鎖骨下腔を含む、条項226の方法。
228. デポーから放出された鎮痛薬が、肋間神経、内側胸筋神経、または外側胸筋神経の少なくとも1つを少なくとも部分的にブロックする、条項226または227の方法。
229. 外科的手技が、筋腫摘出術、帝王切開、子宮摘出術、卵巣摘出術、または骨盤底再建術の少なくとも1つを含む、条項222の方法。
230. 外科的手技が、直腸結腸切除術、膵切除術、虫垂切除術、痔核切除術、胆嚢切除術、腎臓移植、腎切除術、根治的前立腺切除術、胃切除術、小腸切除術、脾臓切除術、切開創ヘルニア修復、鼠径ヘルニア修復、S状結腸切除術、肝切除術、腸瘻造設術、直腸切除術、腎臓結石除去、または膀胱切除術の少なくとも1つを含む、条項222の方法。231. デポーから放出された鎮痛薬が、腹横筋膜面にあるかまたはそれに隣接する神経を少なくとも部分的にブロックする、条項230の方法。
232. 外科的手技が、扁桃切除術、粘膜下切除術、鼻形成術、副鼻腔手術、内耳手術、耳下腺摘出術、または顎下腺手術の少なくとも1つを含む、条項222の方法。
233. 外科的手技が、歯槽手術、歯科インプラント、外科的歯科矯正術、顎関節(TMJ)手術、または口腔再建術の少なくとも1つを含む、条項222の方法。
234. 外科的手技が、腫瘍切除を含む、条項222の方法。
235. 外科的手技が、脂肪吸引術を含む、条項222の方法。
236. 患者の胸に関わる外科的手技の後の術後疼痛を処置するための方法であって、
生理学的流体を有する処置部位で、肋間神経の近傍に、(a)生体吸収性ポリマーおよびこのポリマーと混合させた放出剤を含む制御領域、ならびに(b)鎮痛薬を少なくとも50重量%含む治療領域を含むデポーを置くこと;および
デポーから肋間神経に、5日間以上にわたり鎮痛薬を放出すること
を含む方法。
237. 外科的手技が、開胸術、食道手術、心臓手術、肺切除、または胸部手術の少なくとも1つを含む、条項236の方法。
238. 処置部位が、胸部傍脊椎腔を含む、条項236または237の方法。
239. 患者の乳房に関わる外科的手技の後の術後疼痛を処置するための方法であって、
生理学的流体を有する処置部位で、肋間および/または胸筋神経の近傍に、(a)生体吸収性ポリマーおよびこのポリマーと混合させた放出剤を含む制御領域、ならびに(b)鎮痛薬を少なくとも50重量%含む治療領域を含むデポーを置くこと;および
デポーから肋間および/または胸筋神経に、5日間以上にわたり鎮痛薬を放出することを含む方法。
240. 外科的手技が、乳房切除術、豊胸術、乳房縮小術、または乳房再建術の少なくとも1つを含む、条項239の方法。
241. 処置部位が、鎖骨下腔(intraclavicular space)を含む、条項239または240の方法。
242. 全身、腹部、または泌尿器の外科的手技の後の術後疼痛を処置するための方法であって、
生理学的流体を有する処置部位で、腹横筋膜面の近傍に、(a)生体吸収性ポリマーおよびこのポリマーと混合させた放出剤を含む制御領域、ならびに(b)鎮痛薬を少なくとも50重量%含む治療領域を含むデポーを置くこと;および
デポーから肋間および/または胸筋神経に、5日間以上にわたり鎮痛薬を放出することを含む方法。
243. 外科的手技が、直腸結腸切除術、膵切除術、虫垂切除術、痔核切除術、胆嚢切除術、腎臓移植、腎切除術、根治的前立腺切除術、胃切除術、小腸切除術、脾臓切除術、切開創ヘルニア修復、鼠径ヘルニア修復、S状結腸切除術、肝切除術、腸瘻造設術、直腸切除術、腎臓結石除去、または膀胱切除術の少なくとも1つを含む、条項242の方法。244. 治療剤の持続した制御放出のためのデポーであって、
治療剤を含む治療領域と;
生体吸収性ポリマーおよびこのポリマーと混合した放出剤を含む制御領域であって、放出剤は、in vivoでデポーが配置されたとき溶解して制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域と
を含み、デポーは、7日間にわたる緩衝溶液中でのデポーの浸漬後に、デポーの曲げ強さが最大75%減少するように構成されている、デポー。
245. 7日間にわたる緩衝溶液中でのデポーの浸漬後に、デポーの曲げ強さが最大70%減少するように構成されている、条項244のデポー。
246. 7日間にわたる緩衝溶液中でのデポーの浸漬後に、デポーの曲げ強さが最大65%減少するように構成されている、条項244のデポー。
247. 7日間にわたる緩衝溶液中でのデポーの浸漬後に、デポーの曲げ強さが最大60%減少するように構成されている、条項244のデポー。
248. 7日間にわたる緩衝溶液中でのデポーの浸漬後に、デポーの曲げ強さが最大55%減少するように構成されている、条項244のデポー。
249. 7日間にわたる緩衝溶液中でのデポーの浸漬後に、デポーの曲げ強さが最大50%減少するように構成されている、条項244のデポー。
250. デポーが、7日間にわたる緩衝溶液中でのデポーの浸漬後に、デポーの曲げ強さが最大45%減少するように構成されている、条項244のデポー。
251. 治療剤の持続した制御放出のためのデポーであって、
治療剤を含む治療領域と;
生体吸収性ポリマーおよびこのポリマーと混合した放出剤を含む制御領域であって、放出剤は、in vivoでデポーが配置されたとき溶解して制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域と
を含み、治療剤の約75重量%が放出されるまで緩衝溶液中に浸漬された後、デポーの曲げ強さが最大75%減少するように構成されている、デポー。
252. 治療剤の約75重量%が放出されるまでデポーを緩衝溶液中に浸漬した後、デポーの曲げ強さが最大70%減少するように構成されている、条項251のデポー。
253. 治療剤の約75重量%が放出されるまでデポーを緩衝溶液中に浸漬した後、デポーの曲げ強さが最大65%減少するように構成されている、条項251のデポー。
254. 治療剤の約75重量%が放出されるまでデポーを緩衝溶液中に浸漬した後、デポーの曲げ強さが最大60%減少するように構成されている、条項251のデポー。
255. 治療剤の約75重量%が放出されるまでデポーを緩衝溶液中に浸漬した後、デポーの曲げ強さが最大55%減少するように構成されている、条項251のデポー。
256. 治療剤の約75重量%が放出されるまでデポーを緩衝溶液中に浸漬した後、デポーの曲げ強さが最大50%減少するように構成されている、条項251のデポー。
257. 治療剤の約75重量%が放出されるまでデポーを緩衝溶液中に浸漬した後、デポーの曲げ強さが最大45%減少するように構成されている、条項251のデポー。
258. 鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよびポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、放出剤は、in vivoでデポーが配置されたとき溶解して制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、14日間以上にわたり処置部位で鎮痛薬を放出するように構成され、
鎮痛薬の約20%から約40%は、14日間の最初の3日間で放出され、残りの鎮痛薬の少なくとも80%は、14日間の最後の11日間で放出される、デポー。
259. 鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよびポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、放出剤は、in vivoでデポーが配置されたとき溶解して制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、3日間以上にわたり処置部位で鎮痛薬を放出するように構成され、
制御領域は、少なくとも処置部位でのデポーの埋込み前に、鎮痛薬を含まない、デポー。
260. 鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよびポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、放出剤は、in vivoでデポーが配置されたとき溶解して制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、3日間以上にわたり処置部位で鎮痛薬を放出するように構成され、
制御領域は、治療領域の鎮痛薬とは異なる鎮痛薬を含む、デポー。
261. 鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよびポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、放出剤は、in vivoでデポーが配置されたとき溶解して制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、3日間以上にわたり処置部位で鎮痛薬を放出するように構成され、
放出剤は第1の放出剤であり、治療領域は、鎮痛薬と混合された第2の放出剤を含む、デポー。
262. 鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよびポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、放出剤は、in vivoでデポーが配置されたとき溶解して制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、3日間以上にわたり処置部位で鎮痛薬を放出するように構成され、
放出剤は第1の放出剤であり、ポリマーは第1のポリマーであり、治療領域は、第2の放出剤および鎮痛薬と混合された第2のポリマーを含む、デポー。
263. 鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよびポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、放出剤は、in vivoでデポーが配置されたとき溶解して制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、3日間以上にわたり処置部位で鎮痛薬を放出するように構成され、
制御領域の厚さは、治療領域の厚さの1/50未満またはそれに等しい、デポー。
264. 鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよびポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、放出剤は、in vivoでデポーが配置されたとき溶解して制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、3日間以上にわたり処置部位で鎮痛薬を放出するように構成され、
制御領域の厚さは、治療領域の厚さの1/75未満またはそれに等しい、デポー。
265. 鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよびポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、放出剤は、in vivoでデポーが配置されたとき溶解して制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、3日間以上にわたり処置部位で鎮痛薬を放出するように構成され、
制御領域の厚さは、治療領域の厚さの1/100未満またはそれに等しい、デポー。
266. 鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよびポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、放出剤は、in vivoでデポーが配置されたとき溶解して制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、3日間以上にわたり処置部位で鎮痛薬を放出するように構成され、
第1の制御層は、第1の量の放出剤を含み、第2の制御層は、第1の量とは異なる第2の量の放出剤を含む、デポー。
267. 鎮痛薬の持続した制御放出を介して、術後疼痛を処置するためのデポーであって、
鎮痛薬を含む治療領域、
生体吸収性ポリマーおよびポリマーと混合された放出剤を含む制御領域であって、放出剤は、in vivoでデポーが配置されたとき溶解して制御領域に拡散開口を形成するように構成されている、制御領域
を含み、
デポーは、in vivoで処置部位に埋め込まれ、埋め込まれている間、3日間以上にわたり処置部位で鎮痛薬を放出するように構成され、
デポーは、カバー領域の露出表面積に治療領域の露出表面積を加えたものを含む全表面積を有し、
デポーを、in vivoで処置部位に最初に置いたとき、治療領域の露出表面積の、カバー領域の露出表面積に対する比が、約5%から約20%、または約5%から約15%、または約5%から約10%である、デポー。
【0011】
本開示の多くの態様は、以下の図面を参照することによってより良く理解することができる。図面中の構成要素は、必ずしも拡大縮小比を合わせてはいない。代わりに、本開示の原理を明確に示すように強調されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、Xaracoll(登録商標)スポンジからの、時間をわたってのブピバカイン塩酸塩の放出を示す。
【0013】
図2図2は、本技術により構成されたデポーの等角図である。
【0014】
図3図3は、本技術の1つまたは複数のデポーの時間をわたっての放出プロファイルを示す。
【0015】
図4図4は、本技術の一部の実施形態によるデポーの等角図である。
【0016】
図5図5は、本技術の一部の実施形態によるデポーの等角図である。
【0017】
図6図6は、本技術の一部の実施形態によるデポーの断面図である。
【0018】
図7図7は、本技術の一部の実施形態によるデポーの断面図である。
【0019】
図8図8は、本技術の一部の実施形態によるデポーの断面図である。
【0020】
図9A図9Aは、本技術の一部の実施形態によるデポーの等角図である。
【0021】
図9B図9Bは、図9Aに示されるデポーの断面図である。
【0022】
図10図10は、本技術の一部の実施形態によるデポーの断面図である。
【0023】
図11図11は、本技術の一部の実施形態によるデポーの断面図である。
【0024】
図12図12は、本技術の一部の実施形態によるデポーの断面図である。
【0025】
図13図13は、本技術の一部の実施形態によるデポーの等角図である。
【0026】
図14図14A~Hは、本技術による、種々の断面積および形状を有するデポーである。
【0027】
図15図15は、緩衝溶液に浸漬させたインプラント試料で行なわれた試験からの、時間をわたってのインプラントの最大曲げ荷重を示す。
【0028】
図16A-C】図16A~16Eは、本技術による、ベース領域および/または遅延放出領域を含む、様々なデポーの実施形態を示す。
図16D-E】図16A~16Eは、本技術による、ベース領域および/または遅延放出領域を含む、様々なデポーの実施形態を示す。
【0029】
図17図17は、従来技術のコア酸性化の概略図である。
【0030】
図18図18は、20日間の分解後の従来技術のポリマー錠剤の走査型電子顕微鏡画像である。
【0031】
図19A図19Aは、本技術のデポーの分解の概略図である。
【0032】
図19B-C】図19Bおよび19Cは、分解中の種々の時点での、本技術のデポーの断面の走査型電子顕微鏡(「SEM」)画像である。
【0033】
図20図20は、本技術による、実施例1で記述したデポーに関するin vitro放出プロファイルを示す。
【0034】
図21図21は、本技術による、実施例2Aで記述したデポーに関するin vitro放出プロファイルを示す。
【0035】
図22図22は、本技術による、実施例2Bで記述したデポーに関するin vitro放出プロファイルを示す。
【0036】
図23図23は、本技術による、実施例3で記述したデポーに関するin vitro放出プロファイルを示す。
【0037】
図24A図24Aは、本技術による、実施例4で記述したデポーが埋め込まれたウサギに関する、時間をわたってのin vivo血漿中ブピバカイン濃度を示す。
【0038】
図24B図24Bは、本技術による、実施例4で記述した試料デポーに関する、時間をわたってのin vitro放出プロファイルを示す。
【0039】
図24C図24Cは、本技術による、実施例4で記述したデポーが埋め込まれたウサギに関する、時間をわたってのin vivo血漿中ブピバカイン濃度を示す。
【0040】
図24D図24Dは、本技術による、実施例4で記述した試料デポーの、時間をわたってのin vitro放出プロファイルを示す。
【0041】
図25図25は、本技術による、実施例5で記述したデポーが埋め込まれたイヌに関する、時間をわたってのin vivo血漿中ブピバカイン濃度を示す。
【0042】
図26A図26Aは、本技術による、実施例6で記述したデポーが埋め込まれたヒツジに関する、時間をわたってのin vivo血漿中ブピバカイン濃度を示す。
【0043】
図26B図26Bは、本技術による、実施例6で記述したデポーが埋め込まれたヒツジに関する、時間をわたってのin vivo滑液中ブピバカイン濃度を示す。
【0044】
図26C図26Cは、本技術による、実施例6で記述したデポーが埋め込まれたヒツジに関する、時間をわたっての血漿中ブピバカイン濃度対滑液中ブピバカイン濃度を示すプロットである。
【0045】
図27図27Aおよび27Bは、手術が実施される部位およびデポーを投与することができる場所となり得る、患者における一般的な場所を示す。
【0046】
図28-1】図28は、術後疼痛を処置するために本技術のデポーが利用され得る、一般的な外科的手技を示す表である。図28は、種々の手術による神経標的および解剖学的アクセス/配置も示す。
図28-2】図28は、術後疼痛を処置するために本技術のデポーが利用され得る、一般的な外科的手技を示す表である。図28は、種々の手術による神経標的および解剖学的アクセス/配置も示す。
図28-3】図28は、術後疼痛を処置するために本技術のデポーが利用され得る、一般的な外科的手技を示す表である。図28は、種々の手術による神経標的および解剖学的アクセス/配置も示す。
【0047】
図29図29A~29Cは、膝を神経支配する神経の場所を示す、ヒト膝の前面、外面、および内面図である。
【0048】
図30A図30Aは、関節内腔を露出させ、1つまたは複数のデポーを置くための潜在的な場所を特定した、ヒト膝を切り拡げた図である。
【0049】
図30B図30Bは、関節内腔を露出させ、術後疼痛を処置するために内部に置かれたいくつかのデポーを示す、ヒト膝を切り拡げた図である。
【0050】
図31図31Aおよび31Bは、ヒト膝の前面および後面の関節嚢外を示し、関節嚢外の場所で膝を神経支配する神経の場所を示している。
【0051】
図32図32は、部分的に拡げられたヒト膝の前面図であり、関節嚢外腔を示しており、術後疼痛を処置するために関節嚢外腔に置かれた本技術のいくつかのデポーを示している。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本技術は、治療剤の持続した制御放出のための埋込み可能なデポー、ならびに関連するデバイス、システム、および使用方法に関する。本技術のデポーおよび関連する放出動態の概観を、図2および3ならびにセクションIを参照しながら以下に記述する。本技術のデポーの選択された実施形態を、図4~19CおよびセクションIIを参照しながら以下に記述する。本技術のデポーの選択された例および関連する放出プロファイルは、図20~26CおよびセクションIIIを参照しながら以下に記述する。整形外科手術に関連した術後疼痛を処置するために本技術のデポーを使用するための選択されたデバイス、システム、および方法は、図27A~32およびセクションIVを参照しながら以下に記述する。他の手術に関連した術後疼痛を処置するために本技術のデポーを使用するための選択されたデバイス、システム、および方法は、セクションVで以下に記述する。
【0053】
I. 概観
本明細書には、デポーがin vivoで処置部位に埋め込まれている間、治療剤の持続した制御放出を介して術後疼痛を処置する(即ち、予防し、低減し、かつ/または排除する)ための、埋込み可能なデポーならびに関連するデバイス、システム、および方法が開示される。本技術の多くの実施形態は、手術後の疼痛を処置するために患者の手術部位にまたは手術部位の近くに埋め込まれるように構成された、1つまたは複数のデポーを含む。in vivoで埋め込まれている間、デポー(複数可)は、埋込み後少なくとも3日間にわたり、制御され規定された通りに手術部位に治療剤(鎮痛薬など)を放出するように構成される。
【0054】
本明細書で使用される場合、「デポー」は、少なくとも1種の治療剤が患者の身体に投与される組成物を含む。したがってデポーは、所望の部位(例えば、膝関節の関節内および/または関節嚢外腔の組織)での埋込みおよび保持を容易にする物理的構造または担体を含んでいてもよい。デポーは、治療剤そのものも含む。「デポー」は、フィルム、シート、細片、リボン、カプセル、コーティング、マトリクス、ウエハ、丸薬、ペレット、もしくは他の医薬送達装置またはこれらの組合せを含むがこれらに限定するものではない。さらに、本明細書で使用される場合、「デポー」は、単一のデポーを指してもよく、または多数のデポーを指してもよい。例として、「デポーは、2gの治療剤を処置部位に放出するように構成されてもよい」という記述は、(a)2gの治療剤を処置部位に放出するように構成された単一のデポー、および(b)2gの治療剤を処置部位に放出するようまとめて構成された複数のデポーについて記述する。
【0055】
図2は、本技術のいくつかの実施形態による埋込み可能なデポー100の等角図である。デポー100は、治療剤(鎮痛薬など)を含有する治療領域200、および制御され持続した形でデポー100からの治療剤の放出を調節するように構成された制御領域300を含む、処置部位に埋め込まれるように構成された薄い多層ポリマーフィルムであってもよい。デポー100は、等しい厚さまたはポリマー重量パーセンテージの他の公知のフィルムと特に比較して、高い治療ペイロードの治療剤を含んでいてもよい。例えば、一部の実施形態では、デポー100は、治療剤を少なくとも50重量%含む。
【0056】
制御領域300は、生体吸収性ポリマーおよびこのポリマーと混合された放出剤を含んでいてもよく、治療領域200は、生体吸収性ポリマーおよびこのポリマーと混合された放出剤、ならびに治療剤を含んでいてもよい。制御領域300は、治療剤を必要に応じて含んでいてもよく、または制御領域は、治療剤を全く含まなくてもよい。以下のセクションIIで詳述するように、一部の実施形態では、治療領域200および/または制御領域300は、異なる構成成分および/または製剤を有していてもよい。
【0057】
流体がデポー100と接触すると、放出剤は、制御領域300および/または治療領域200の周囲のポリマー中に、ポリマーが分解するよりも速く溶解する。放出剤が溶解するにつれ、溶解した放出剤によって空になった空間が、周囲のポリマー領域に拡散開口(例えば、チャネル、空隙、細孔など)を形成する。他のパラメーターの中でも放出剤の濃度およびタイプは、所望の期間にわたり制御された投薬速度で、治療領域200からかつ制御領域300を通して周囲の流体への治療剤の放出を調節するように、選択することができる。
【0058】
図2に示されるように、制御領域300の少なくとも一部は、デポー100をin vivoで最初に置いたとき、制御領域300が治療領域200の少なくとも一部と処置部位の生理学的流体との間にあるように、治療領域200の上にまたは隣接して配置されてもよい。例えば、制御領域300は、治療領域200の1つまたは複数の側面または縁部の全てまたは一部を覆うことができる。デポー100が生理学的流体に曝露されると、放出剤の溶解によって創出された拡散開口を用いて、治療領域200の露出表面から制御領域300を経て治療剤が溶出する。一般に治療剤は、制御領域300を経た場合よりも速い(例えば、大きい)速度で、治療領域200の露出表面から溶出する。その結果、制御領域300は、治療領域200からの治療剤の放出を延ばして、より長い放出時間をもたらし、所望の程度の疼痛緩和が得られるようにかつ過剰投与に関連した合併症が回避されるように投薬速度を調節する。
【0059】
本技術のデポーは、処置される医学的状態および使用される治療剤に特に合わせて調整された、高度に制御された所定の形で治療剤を放出するように構成される。以下のセクションIIでさらに詳細に記述されるように、デポーの放出動態は、デポーの形状およびサイズ;治療領域200の露出した表面積;ポリマーのタイプ(治療領域200内および/または制御領域300内);治療剤、ポリマー、および/または放出剤の重量パーセンテージ(特定の領域内または一般にデポー100の全体を通して);ならびに治療領域200および制御領域300の組成など、デポーの組成および/または構造の1つまたは複数の態様を変えることにより、特定の適用例に合わせてカスタマイズされてもよい。
【0060】
図3に示されるように、多くの実施形態では、デポー100(またはデポー100のシステム)は、第1の期間にわたり、より長い第2の期間の場合よりも1日当たり不釣合いに大きい体積の治療剤を放出するように構成される。一部の実施形態では、デポー100(またはデポー100のシステム)は、埋込み後(または流体に浸漬後)少なくとも14日間、治療剤を放出するように構成され、治療剤ペイロードの約20%から約50%の制御されたバーストは最初の3~5日で放出され、残りの治療剤ペイロードの少なくとも80%は、最後の10~11日にわたってより遅い速度で放出される。一部の実施形態では、治療剤ペイロードの少なくとも90%が、14日の終わりまでに放出される。
【0061】
2段階、2次放出プロファイル、例えば図3に示されるものなどは、全膝関節形成術(「TKA」)からもたらされる疼痛を処置する文脈において特に有益となり得る。TKAの患者は、典型的には、手術の後、最初の1~3日以内に最大限の疼痛を経験し(臨床的には「急性疼痛」と呼ぶ)、次の7~10日間にわたって徐々に疼痛が少なくなる(臨床的には「亜急性疼痛」と呼ぶ)。急性期間はしばしば、患者の入院治療(通常、1~3日)と重なりまたは同時であり、亜急性期間は一般に、患者が退院し家に戻るときに始まる。図3に示される2段階、2次放出プロファイルは、他の外科的適用例、例えば他の整形外科的適用例(例えば、靭帯修復/置換、および膝、肩、足首などに対する他の損傷)、または非整形外科手術適用例でも有益である。任意の手術後の過剰な疼痛は、入院治療を延ばし、精神的苦痛を引き起こし、オピオイドの消費を増大させ、かつ/または理学療法での患者の参加を損ない、そのいずれも患者の回復を延ばしかつ/または回復の程度を軽減する可能性がある。亜急性期間中の疼痛緩和は、患者が入院から家庭環境に変わるときに規定された疼痛管理レジメンに対する患者のコンプライアンスが低下するので、管理するのが特に複雑であり得る。
【0062】
術後疼痛管理における前述の課題に対処するため、本技術のデポー100(または多数のデポー100を含むデポーシステム)は、急性および亜急性期間に特異的な疼痛管理のニーズを満たすように調整された放出プロファイルを有していてもよい。例えば、手術直後に生じる、より大きい急性疼痛に対処するために、デポー100は、埋込み後最初の3~5日間にわたり、その後の9~11日の期間と比較してより速い速度で治療剤を放出するように(図3に示されるように)構成されてもよい。一部の実施形態では、デポー100は、この第1の急性期間中、約150mg/日から約400mg/日の速度で局所麻酔薬を送達してもよい。亜急性期間中に減少する疼痛に対処するために、デポー100は、残りの9~11日間にわたり、より遅い速度で治療剤を放出するように構成されてもよい。一部の実施形態では、デポー100は、この第2の亜急性期間中、約50mg/日から約250mg/日の速度で局所麻酔薬を送達してもよい。一部の実施形態では、放出の速度は、第1の期間および/または第2の期間の全体を通して連続的に減少する。
【0063】
デポー100の放出プロファイルは、構造、組成、およびデポーが製造されるプロセスを調節することによって、他の持続期間にわたりかつ/または他の放出速度で治療剤を放出するように調整されてもよい。例えば、一部の実施形態では、デポー100は、放出の全持続期間全体を通して一定速度で治療剤を放出するように構成されてもよい。特定の実施形態では、デポー100は、第1の期間にわたり一定速度で、かつ第2の期間(第1の期間の前または後に生じ得る)にわたり非一定速度で治療剤を放出するように構成されてもよい。
【0064】
一部の実施形態では、デポー100は、放出持続期間の1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、または13日目に、治療剤の20%以下、25%以下、30%以下、35%以下、40%以下、45%以下、50%以下、55%以下、60%以下、65%以下、または70%以下を放出するように構成され、残りの治療剤の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%が放出の持続期間の残りの日数で放出される。意図される放出の持続期間は、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも15日、少なくとも16日、少なくとも17日、少なくとも18日、少なくとも19日、少なくとも20日、少なくとも21日、少なくとも22日、少なくとも23日、少なくとも24日、少なくとも25日、少なくとも26日、少なくとも27日、少なくとも28日、少なくとも29日、または少なくとも30日であってもよい。
【0065】
一部の実施形態では、デポー100は、デポー100内の治療剤の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%を、意図される処置の持続期間内に放出するように構成される。意図される処置の持続期間は、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも15日、少なくとも16日、少なくとも17日、少なくとも18日、少なくとも19日、少なくとも20日、少なくとも21日、少なくとも22日、少なくとも23日、少なくとも24日、少なくとも25日、少なくとも26日、少なくとも27日、少なくとも28日、少なくとも29日、少なくとも30日、少なくとも40日、少なくとも50日、少なくとも60日、少なくとも70日、少なくとも90日、少なくとも100日、少なくとも200日、少なくとも300日、または少なくとも365日であってもよい。
【0066】
一部の実施形態では、デポー100は、処置部位に約50mg/日から約600mg/日、100mg/日から約500mg/日、または約100mg/日から約400mg/日、または約100mg/日から約300mg/日の治療剤を放出するように構成される。一般に放出速度は、所望の投薬量を送達して、外科的手技の後の所与の時間で必要とされる疼痛緩和の程度を提供し、毒性を制御し、かつ疼痛緩和に十分な期間にわたって治療剤を送達するように、選択することができる。
【0067】
一部の実施形態では、デポー100は、第1の放出期間内に、処置部位に約50mg/日から約600mg/日、約100mg/日から約500mg/日、または約100mg/日から約400mg/日、または約100mg/日から約300mg/日の治療剤を放出するように構成される。デポー100は、第2の放出期間内に、処置部位に約500mg/日から約600mg/日、約100mg/日から約500mg/日、または約100mg/日から約400mg/日、または約100mg/日から約300mg/日の治療剤を放出するように、さらに構成することができる。第1の期間中の放出速度は、第2の期間中の放出速度と同じであってもよく、異なってもよく、それ未満であってもよく、またはそれより大きくてもよい。さらに第1の期間は、第2の期間より長くても短くてもよい。第1の期間は、第2の期間の前または後に生じてもよい。
【0068】
一部の実施形態では、デポー100は、第1の放出期間のいずれかの日までに50mg以下、100mg以下、150mg以下、200mg以下、250mg以下、300mg以下、350mg以下、400mg以下、450mg以下、500mg以下、600mg以下、700mg以下、800mg以下、900mg以下、または1000mg以下の治療剤を放出するように構成される。これは外科的手技後の種々の時間に種々の程度の疼痛緩和をもたらすのに有用であり得、毒性を制御するのにも有用であり得る。そのような実施形態では、デポー100は、第2の放出期間のいずれかの日までに50mg以下、100mg以下、150mg以下、200mg以下、250mg以下、300mg以下、350mg以下、400mg以下、450mg以下、500mg以下、600mg以下、700mg以下、800mg以下、900mg以下、または1000mg以下の治療剤を放出するように構成されてもよい。第1の放出期間および/または第2の放出期間は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、または30日であってもよい。デポー100は、第1の期間中に第1の速度で、かつ第2の期間中に第2の速度で治療剤を放出するように構成されてもよい。第1の速度は、第2の速度と同じであってもよく、異なってもよく、それ未満であってもよく、またはそれより大きくてもよい。さらに、第1の期間は第2の期間より長くても短くてもよい。第1の期間は、第2の期間の前にきても後にきてもよい。
【0069】
一部の実施形態では、デポー100は、放出の持続期間のいずれかの日までに50mg以下、100mg以下、150mg以下、200mg以下、250mg以下、300mg以下、350mg以下、400mg以下、450mg以下、500mg以下、600mg以下、700mg以下、800mg以下、900mg以下、または1000mg以下の治療剤を放出するように構成される。
【0070】
一部の実施形態では、デポー100は、in vivoでおよび/または1種もしくは複数の流体の存在下で、1日以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、7日以上、8日以上、9日以上、10日以上、11日以上、12日以上、13日以上、14日以上、15日以上、16日以上、17日以上、18日以上、19日以上、20日以上、21日以上、22日以上、23日以上、24日以上、25日以上、26日以上、27日以上、28日以上、29日以上、30日以上、40日以上、50日以上、60日以上、70日以上、90日以上、100日以上、200日以上、300日以上、または365日以上、処置部位に治療剤を放出するように構成される。
【0071】
II. 選択されたデポーの実施形態
本技術のデポーの放出動態は、治療領域200の露出した表面積、放出剤の溶解の最中および後での制御領域300の多孔度、治療領域での治療剤の濃度、ポリマーの製造後の性質、治療剤の突然の放出を回避するためのデポーの構造的完全性、制御領域300と比較した治療領域200の相対厚さ、およびデポーの他の性質など、デポーの構造の1つまたは複数の態様を変えることによって、特定の適用例に合わせて調整され得る。本技術のデポーのいくつかの実施形態を、これらの性質の1つまたは複数と組み合わせて、開示された予言的デバイスの欠点も克服しながら既存の注射可能なまたは埋込み可能なシステムよりも著しく優れた動物研究での並外れた2相放出プロファイルが生成されるようにする。例えば、いくつかの実施形態は、多過ぎる治療剤の突然の放出を回避する関節の力に耐えるのに十分な構造的完全性を維持しながら、14日間にわたり関節置換手術または他の適用例に関連した疼痛を処置するのに適切な質量の治療剤を送達する、2相放出プロファイルを示してきた。この意外な結果は、本技術のデポーによって、オピオイドの代わりとなるわけではないにしてもオピオイドを少なくとも低減させかつ/または整形外科手術の適用例、非整形外科手術の適用例、および他の適用例(例えば、腫瘍学)に関する他の既存の疼痛緩和システムを強化することを可能にする。
【0072】
例えば放出プロファイルは、少なくとも部分的には、治療領域200の露出表面積の量を制御することによって調整することができる。なぜなら、制御領域300によって部分的にのみ覆われた(例えば、図2、4~8、および13参照)治療領域200を有するデポーが一般に、治療領域200が制御領域300によって完全にカプセル封入された実施形態に比べて(例えば、図9A~12参照)、短い期間にわたって全ペイロードのより高い割合を放出することになるからである。より詳細には、露出した縁部を備えた治療領域200を有するデポーのデザインは、典型的には、第1の期間にわたり、高く実質的に線形の速度で治療剤を放出し、次いで第2の期間にわたり、より低く実質的に線形の速度で治療剤を放出することになる。あるいは、1つまたは複数の制御領域300で実質的に覆われた縁部を備えた治療領域200を有するデポーのデザインは、治療剤のペイロードの放出が実質的に同じ速度であるように、ゼロ次放出を達成し得る。
【0073】
図4に示されるように、一部の実施形態では、デポー100は、治療領域200と、治療領域200の対向する面100a、100bに置かれた第1および第2の制御領域300a、300bとを有する多層ポリマーフィルムを含んでいてもよい。デポー100は、長さL、幅W、および高さH(または厚さ)を有する柔軟な長方形の細片の形態であり得る。一部の実施形態では、デポー100は、約20mmから約30mm(例えば、約25mmなど)の長さL、約10mmから約20mm(例えば、約15mmなど)の幅W、および約0.4mmから約4mm(例えば、約1mmから約3mmの、約1mmから約2mmの、少なくとも0.4mm、少なくとも0.5mm、少なくとも0.6mm、少なくとも0.7mm、少なくとも0.8mm、少なくとも0.9mm、少なくとも1mm、少なくとも1.2mm、少なくとも1.4mm、少なくとも1.5mm、少なくとも1.6mm、少なくとも1.7mm、少なくとも1.8mm、少なくとも2mm、少なくとも約3mmなど)の高さHを有する。一部の実施形態では、デポー100は、以下に詳述するものなど、他の形状および/または寸法を有していてもよい。
【0074】
制御領域300a、300bは、in vivoでデポー100を埋め込んだ直後に治療領域200の面(例えば、側壁)のそれぞれの一部が生理学的流体に曝露されるように、治療領域200の一部を覆うだけでよい。デポー100が生理学的流体(またはin vitroの設定における任意の類似の流体)に曝露されると、治療剤が、露出表面202から(制御領域300a、300bを経ることに加えて)溶出するようになり、その結果、治療剤は、治療領域200が露出領域を持たない場合よりも速く放出される。したがって、露出表面202の表面積は、初期の制御バーストを提供し、その後、漸減する放出(例えば、図3に示されるものと同様の)を提供するように調整されてもよい。治療剤の初期のより積極的な放出は、部分的には、流体に曝露された治療領域200の表面積を最初に低減させる制御領域300a、300bによって遅くなる。本技術のデポー100とは異なり、多くの従来の薬物溶出技術は、生理学的流体に曝露されると薬物の初期の制御されないバースト放出をもたらす。本技術のデポーのいくつかの実施形態は、持続した耐久性のあるin vivo薬理学的処置を達成するために数日または数週間分の投薬量のために十分な治療剤を埋め込むことができるだけではなく、規定された通りに治療剤も放出し、それによって、患者に合併症をもたらし、かつ/または残りのペイロードを低減させ、その結果、残りの放出持続期間にわたって治療量を送達するのに十分な治療剤がデポー内に残らないようになる可能性のある制御されない形で全ペイロードのかなりの部分が放出されるのを防止する。
【0075】
一部の実施形態では、図4に示されるデポー100は、鎮痛薬の約20%から約50%が14日間の最初の約3日から約5日で放出されるように構成され、残りの鎮痛薬の少なくとも80%は、14日間の最後の約9日から約11日で放出される。この放出プロファイルは、亜急性期間に比べ、手術後の急性期間中に高い投薬量の治療剤を提供する。一部の実施形態では、図4に示されるデポー100は、1日当たり約100mgから約500mgの鎮痛薬を処置部位に放出するように構成され、一部の場合では、埋込みの最初の3日間以内で1日当たり400mg以下または300mg以下の鎮痛薬を、残りの日数で1日当たり200mg以下を放出するように構成される。さらに、図4に示されるデポーの一部の実施形態は、制御領域300aおよび300bの厚さが個々にまたはまとめて、治療領域200の厚さの1/50未満またはそれに等しくなるように構成される。制御領域300aおよび300bの厚さは、個々にまたはまとめて、さらに治療領域200の厚さの1/75または1/100以下とすることができる。さらに、図4に示されるデポー100は、少なくとも16:1、10:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、または2:1である、デポー中の鎮痛薬の質量の、デポーポリマー質量に対する比を有することができる。
【0076】
図4に示されるデポー100のいくつかの実施形態は、放出剤のかなりの部分がデポー100から溶出された後であっても、それらの構造的完全性を維持するようにも構成される。放出剤(複数可)が溶解しかつ治療剤(複数可)が溶出するにつれ、デポー100の機能的機械的態様は時間をわたって変化し得る。そのような機械的態様は、デポーの構造的完全性、曲げ強さ、引張り強さ、または他の機械的特性を含む。デポー100が、速すぎる過剰な分解を経験する場合、それは機械的に故障しかつ体内への治療剤の望ましくないバーストを放出する可能性がある。図4に示されるデポー100のいくつかの実施形態には、デポーが埋め込まれてから少なくとも14日まで大部分が無傷のままになるように、その構造的完全性を維持できるままの状態で1日当たり100mgから500mgの治療剤を送達するのに十分な治療剤が負荷される。例えば治療剤は、埋込み前のデポー100の全重量の少なくとも50重量%~95重量%、または埋込み前のデポー100の全重量の55重量%~85重量%、または埋込み前のデポー100の全重量の60重量%~75重量%とすることができる。デポーは、例えば多数の構成要素の小片に破砕されず、得られた小片の2つまたはそれよりも多くがデポーの以前のサイズの少なくとも5%である場合、十分無傷とすることができる。あるいは、または追加として、デポーは、緩衝溶液中に浸漬させた対照デポーの治療剤の放出速度と比較して、治療剤の放出速度が3倍よりも大きく増大しない場合、十分無傷であると見なすことができる。
【0077】
先の段落に記述されるパラメーターの1つまたは複数の組合せを有する図4に示されるデポー100のいくつかの実施形態は、本明細書に記述されるように動物研究で並外れた結果をもたらした。例えばデポー100は、(a)制御領域300a~bの厚さがそれぞれまたはまとめて、治療領域200の厚さの1/50未満またはそれに等しくなるように、(b)治療剤ペイロードの質量が、1日当たり処置部位に約100mgから約500mgの鎮痛薬を放出するのに十分であるように、かつ(c)構造的完全性は、デポーの大部分が、埋込み後少なくとも14日間にわたり無傷のままであるように構成された。これらの実施形態は、14日間の最初の約3日から約5日で鎮痛薬ペイロードの約20%から約50%を、次いで14日間の最後の約9日から約11日で残りの鎮痛薬ペイロードの少なくとも80%を放出することができた。これは少なくとも部分的には、(a)治療領域で治療剤のそのような大きなペイロードを提供することで、埋込み後14日目にまたはその前にデポー100の機械的故障が生じることが予測され、かつ(b)開示されたデバイスは、鎮痛薬の約20%から約50%が14日間の最初の約3日から約5日で放出され、次いで14日間の最後の約9日から約11日で残りの鎮痛薬の少なくとも80%が放出される放出プロファイルを達成しなかったので、予期せぬことであった。
【0078】
一部の実施形態では、デポー100の1つまたは複数の制御領域300は、2つまたはそれよりも多くの副制御領域を含んでいてもよい。例えば、図5に示されるように、デポー100は、第1の制御領域300aおよび第2の制御領域300bを有していてもよく、そのそれぞれは、第1および第2の副制御領域302a、302bと、302c、302dをそれぞれ含む。第1および第2の制御領域300a、300b、および/または副制御領域302a~302dの1つ、いくつか、もしくは全ては、同じもしくは異なる量の放出剤、同じもしくは異なる濃度の放出剤、同じもしくは異なる放出剤、同じもしくは異なる量のポリマー、同じもしくは異なるポリマー、同じもしくは異なるポリマーの放出剤に対する比、および/または同じもしくは異なる厚さを有していてもよい。一部の実施形態では、個々の外側制御副領域302a、302dにおける放出剤の濃度は、個々の内側制御副領域302b、302cにおける放出剤の濃度よりも小さく、したがって集合的な制御領域の外側部分は、集合的な制御領域の内側部分よりもゆっくりと、治療剤を溶出するようになる。一部の実施形態では、個々の外側制御副領域302a、302dにおける放出剤の濃度は、個々の内側制御副領域302b、302cにおける放出剤の濃度よりも大きい。制御領域が2つよりも多くの副領域を含む実施形態では、副領域または層当たりの放出剤の濃度は、副制御領域が治療領域200よりもさらに離れるので、増大しても、減少しても、一定のままであってもよい。
【0079】
ある特定の実施形態では、外側制御副領域は、放出剤を少なくとも5重量%、放出剤を少なくとも10重量%、放出剤を少なくとも15重量%、放出剤を少なくとも20重量%、放出剤を少なくとも25重量%、放出剤を少なくとも30重量%、放出剤を少なくとも35重量%、放出剤を少なくとも40重量%、放出剤を少なくとも45重量%、または放出剤を少なくとも50重量%含む。一部の実施形態では、内側制御副領域は、放出剤を少なくとも5重量%、放出剤を少なくとも10重量%、放出剤を少なくとも15重量%、放出剤を少なくとも20重量%、放出剤を少なくとも25重量%、放出剤を少なくとも30重量%、放出剤を少なくとも35重量%、放出剤を少なくとも40重量%、放出剤を少なくとも45重量%、または放出剤を少なくとも50重量%含む。一部の実施形態では、外側制御副領域は、第1の量の放出剤を含んでいてもよく、内側制御副領域は、第2の量の放出剤を含んでいてもよく、第2の量は、第1の量よりも少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、または少なくとも500%多い。
【0080】
図6~8は、本技術による、複数の交互の治療領域200および制御領域300を有するデポーの実施形態を示す。デポー100は、2つまたはそれよりも多くの制御領域300および/または副領域302(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20など)を有していてもよく、デポー100は、少なくとも1つの制御領域300および/または副領域302によって取り囲まれた1つまたは複数の治療領域200および/または副領域202(例えば、1、2、3、4、5、6、7、10、15、20など)を有していてもよい。一部の実施形態では、治療領域200のそれぞれは、単層を含んでいてもよく、かつ/または制御領域300のそれぞれは、単層を含んでいてもよい。一部の実施形態では、治療領域200の1つ、いくつか、もしくは全ては、多層を含んでいてもよく、かつ/または制御領域300の1つ、いくつか、もしくは全ては、多層を含んでいてもよい。一部の実施形態では、例えば図6および7に示されるように、2つまたはそれよりも多くの副領域302a~b(図6)ならびに302a~bおよび302c~d(図7)は、治療領域200の副領域202間で互いに隣接していてもよい。さらに、個々の制御領域300の1つもしくは複数、および/または治療領域200の1つもしくは複数は、同じまたは異なる量および/またはタイプの放出剤を有していてもよく、治療領域の1つまたは複数は、同じまたは異なる量および/またはタイプの治療剤を有していてもよい。
【0081】
図6~8に示される実施形態は、治療領域が治療剤の大きいペイロードを含む(例えば、多くの日数、週数、または月数の投薬量に等しい)場合、有益であり得る。これらの実施形態は、そのような大きなペイロードにより治療領域200が不意に体内で曝露されるなら、全ペイロードは早期に放出されて患者を異常かつ望ましくない高用量の治療剤に供することになるので、有益であり得る。例えば、制御領域300の完全性が損なわれた場合、患者は、意図されるよりも速い速度でin vivoで治療剤に曝露される可能性があり、おそらくはその結果、臨床的な合併症がもたらされる。特に、局所麻酔薬(例えば、ブピバカイン、ロピバカインなど)の投与に関し、製造指針は、400mg以下を24時間の期間内に投与すべきであることを推奨している。しかし多数の研究は、長期放出生成物からの400mgよりも高い用量が、長期間にわたるそれらのゆっくりとした放出に起因して安全であることを実証した。それにもかかわらず、制御領域300が損なわれた場合、患者は全ペイロードの一部のみに供されることが望ましく、それによって、患者が曝露されるその一部は、早期に放出された場合、特定の治療剤に関して安全域内にあると考えられる。制御領域300の構造的完全性、ならびに治療領域(複数可)200の構造的完全性は、長期間にわたって送達されることになる治療剤の質量が大きいデポーに関して重要な性質である。
【0082】
この懸念に対処するために、本技術の一部の実施形態では、デポー100は、1つまたは複数の制御領域300によって離間された多数の治療領域200を含んでいてもよい(例えば、図6~8に示されるような)。そのような構成は、各治療領域200中の治療剤(全ペイロードの一部を負荷する)を個々に隔離する。特定の制御領域が損なわれる場合、損なわれた制御領域に関連した治療領域に対応するペイロードの一部分のみが、早期に放出され得る。例えば、前述の実施形態の一部において、デポー100の全ペイロードは、少なくとも100mg、少なくとも150mg、少なくとも200mg、少なくとも300mg、少なくとも400mg、少なくとも500mg、少なくとも600mg、少なくとも700mg、少なくとも800mg、少なくとも900mg、または少なくとも1000mgの鎮痛薬(例えば、ブピバカイン、ロピバカインなど)などの治療剤であってもよい。同様に、一部の実施形態では、各治療領域または副領域のペイロードのその一部分は、デポー100内に含有される全ペイロードの最大1%、最大5%、最大10%、最大15%、最大20%、最大25%、最大30%、最大40%、最大50%、最大60%、最大70%、最大80%、最大90%、または最大100%であってもよい。その結果、治療領域200の任意の単一の副領域202が損なわれた場合、それはデポーの全ペイロードのうち、比例した割合のみを放出する可能性がある。
【0083】
一部の実施形態では、治療領域のそれぞれおよび制御領域のそれぞれは、マイクロ薄層である。一部の実施形態では、デポーは、約2から約100個の治療領域、または約2から約50個の治療領域、または約2から約10個の治療領域を含む。
【0084】
図9A~11は、デポー100が、1つまたは複数の制御領域300によって完全に包囲されたまたは取り囲まれた1つまたは複数の治療領域200を有していてもよい、本技術の一部の態様を示す。前述の実施形態とは対照的に、そのような完全に包囲された実施形態の少なくとも1つの治療領域は、露出した表面積を全く持たない。例えば、図9Aおよび9Bに示されるように、一部の実施形態では、治療領域200において制御領域300を通して露出される部分がないように、デポー100は、制御領域300によって取り囲まれたまたは完全に包囲された治療領域200を含んでいてもよい。その結果、制御領域300は、治療剤と生理学的流体との間の接触を実質的に防止し、それによって、埋め込まれたときに治療剤の制御されないバースト放出が防止される。時間をわたって、制御領域のポリマーに埋め込まれた放出剤は、生理学的流体に接触し、溶解し、それによって制御領域にマイクロ拡散開口を形成する。制御領域と、放出剤の溶解によって形成されたマイクロ拡散開口とにより課された制限の組合せは、数日、数週、または数カ月の過程にわたり、デポーからの治療剤の制御された線形放出を可能にする。デポー100は、図9Aおよび9Bで長方形の薄膜として示されるが、他の実施形態では、デポー100は他の形状、サイズ、または形を有していてもよい。
【0085】
図10は、第1の制御領域300aおよび第2の制御領域300bを有する制御領域300によって完全に包囲された治療領域を有するデポー100を示す。図10に示されるように、一部の実施形態では、治療領域200は、第1の制御領域300aと第2の制御領域300bとの間に挟まれてもよく、第1および第2の制御領域300a~bは、それらの間に治療領域200を包囲するように、治療領域200の周りで熱圧縮を介して結合されてもよい。ある特定の実施形態では、生体吸収性ポリマーは、デポー全体に巻き付き、頂部表面または底部表面で封止され、図9Aで示したものに類似する制御領域構造を創出してもよい。第1および第2の制御領域300a~bの外側部分は、縁部を封止する最終ラップ層として組み込まれてもよい。さらに第1および第2の制御領域300a~bは、治療領域200を制御領域材料の溶液に浸漬しまたは制御領域材料の溶液を治療領域200の表面に噴霧するなど、浸漬コーティングおよび/または噴霧コーティング技法を使用して、互いに一体的に形成することができる。
【0086】
図10において、第1の制御領域300aは、第1および第2の副領域302a~bを有することができ、第2の制御領域300bは、第1および第2の副領域302c~dを有することができる。第1の制御領域300aは、頂部制御領域部材を画定することができ、第1および第2の副領域302a~bは、第1の頂部制御層および第2の頂部制御層をそれぞれ含むことができる。第2の制御領域300bは、底部制御領域部材を画定することができ、第1および第2の副領域302c~dは、第1の底部制御層および第2の底部制御層をそれぞれ含むことができる。第1および第2の頂部/底部制御層は、図5に関して上記にて論じた第1および第2の制御副領域の任意の変形例とすることができる。さらに、頂部制御領域部材の第1の頂部制御層は、底部制御領域部材の第1の底部制御層と同じまたは異なる性質(例えば、厚さ、ポリマー、放出剤、放出剤の濃度、放出剤の総量、ポリマーの放出剤に対する比など)を有していてもよい。同様に、頂部制御領域部材の第2の頂部制御層は、底部制御領域部材の第2の底部制御層と同じまたは異なる性質を有していてもよい。層の負荷および構造の変形例は、意図される治療の目的に適する放出プロファイルまたは動態を達成するために、デポー100内に設計されてもよい。他の実施形態では、第1の制御領域300aおよび/または第2の制御領域300bは単層を有する。
【0087】
図11は、デポー100が、種々の副領域構成を有する制御領域300によって完全に包囲された治療領域200を有していてもよい、一部の実施形態を示す。図11のデポー100は、一緒になって治療領域200を完全に包囲する第1の制御領域300aおよび第2の制御領域300bを含む。図10に示されるデポー100とは対照的に、第1の制御領域300aは、それぞれ第1および第2の頂部副制御領域302aおよび302bを持つ外側頂部制御領域301aと、第1および第2の上層303aおよび303bを持つ内側頂部制御領域301bとを有する。第1および第2の上層303a~bは、治療領域200の頂部表面にのみあり、一方、第1および第2の頂部副制御領域302a~bは、治療領域200の側壁の一部および内側頂部制御領域301bを覆う。第2の制御領域300bは、それぞれ第1および第2の底部副制御領域302cおよび302dを持つ外側底部制御領域301cと、それぞれ第1および第2の底層303dおよび303eを持つ内側底部制御領域301dとを有する。したがって、デポー100をin vivoで処置部位に置くとき、外側頂部および底部制御領域301aおよび301cは、(a)治療領域200、ならびにそれぞれ内側頂部および底部制御領域301bおよび301dと、(b)処置部位での生理学的流体との間にある。図11に示されるものなどのある特定の実施形態では、外側頂部/底部制御領域301a/301cの1つまたは複数は、1つまたは複数の制御副領域を含んでいてもよく、1つまたは複数の内側頂部/底部制御領域301b/301dは、1つまたは複数の制御副領域を含んでいてもよい。
【0088】
図12は、本技術による複数の交互の治療領域200および制御領域300を有する、本技術のいくつかの実施形態による、球状デポー100の断面を示す。デポー100は、2つまたはそれよりも多くの制御領域300(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20など)を有していてもよく、デポーは、少なくとも1つの制御領域300によって取り囲まれた1つまたは複数の治療領域200(例えば、1、2、3、4、5、6、7、10、15、20など)を有していてもよい。一部の実施形態では、治療領域200のそれぞれは、単層を含んでいてもよく、かつ/または制御領域300のそれぞれは、単層を含んでいてもよい。一部の実施形態では、治療領域200の1つ、いくつか、もしくは全ては、多層を含んでいてもよく、かつ/または制御領域300の1つ、いくつか、もしくは全ては、多層を含んでいてもよい。さらに、個々の制御領域200の1つもしくは複数、および/または治療領域300の1つもしくは複数は、同じまたは異なる量および/またはタイプの放出剤を有していてもよく、治療領域200の1つまたは複数は、同じまたは異なる量および/またはタイプの治療剤を有していてもよい。
【0089】
図13は、制御領域300により、頂部表面および底部表面でならびに側壁の4つの面のうち2つで包囲された治療領域200を有する、本技術のいくつかの実施形態によるデポー100を示す。この構成は、同じ寸法の完全に露出した側壁を持つデポー(例えば、図4に示されるデポー100参照)と比較して、少なくとも最初に、治療剤をよりゆっくりと放出することが期待される。
【0090】
本技術のデポーの放出動態は、デポー100の形状およびサイズを変えることにより、特定の適用例に合わせて調整されてもよい。治療投薬のニーズ、解剖学的標的などに応じて、デポー100は、臨床医による体内への埋込みおよび/または注射に合わせて異なるサイズ、形状、および形にすることができる。デポー100の形状、サイズ、および形は、標的組織部位にデポーを置くことが容易にできるように、かつデポーが埋込みまたは注射後に移動する可能性を低減させまたは完全に防止するように、選択されるべきである。このことは、関節(膝関節など)内に置かれたデポーに関して特に言えることであり、この場合デポーは、多数の小片に破壊することなくかつ/またはその全体形状を失うことなく、手術の通常の過程で臨床医により取り扱われることが構造的に可能である柔軟な固体である。さらにデポーは、患者の膝に配置されるようにかつ多数の小片に破壊されることなく鎮痛薬をin vivoで最長7日間放出するように構成されてもよい。
【0091】
体内への埋込みおよび固定のためにデポー100から生成可能なまたはデポーに付属して使用される、形状因子のいくつかには、細片、リボン、フック、棒、チューブ、パッチ、コルクスクリュ形状のリボン、部分または完全リング、くぎ、ネジ、鋲、リベット、スレッド、テープ、織られた形、t字形アンカー、ステープル、ディスク、ピロー、バルーン、ブレイド、先細り形状、楔形、ノミ形状、キャッスル形態、ステント構造、縫合バットレス、コイルバネ、スポンジ、カプセル、コーティング、マトリクス、ウエハ、シート、細片、リボン、丸薬、ペレットが含まれる。
【0092】
デポー100は、先の段落で述べた形状因子の構成要素に加工されてもよい。例えば、デポーは、巻いてチューブに、ネジに、鋲に、または同様のものに組み込んでもよい。織られた実施形態の場合、デポーは、多層織フィルム/ブレイド/メッシュに組み込まれてもよく、この場合、使用されるフィラメントの一部は本発明のデバイスではない。一例において、デポーは、Dacron、ポリエチレン、または同様のものと相互に織り交ぜられる。明瞭にするために、形状因子の一部または断片のみがデポーを組み込むものを含む、本技術のデポーに対応する任意の形状因子を、本明細書では「デポー」と呼んでもよい。
【0093】
図14A~14Hに示されるように、様々な実施形態では、デポーは、球、棒もしくは繊維などの円筒、ディスク、フィルム、リボン、細片、もしくはシートなどの平面、ペースト、スラブ、微粒子、ナノ粒子、ペレット、メッシュ、または同様のもののように成形することができる。図14Aは、長方形(rectilinear)のデポー100を示す。図14Bは、円形のデポー100を示す。図14Cは、三角形のデポー100を示す。図14Dは、十字形のデポー100を示し、図14Eは、星状のデポー100を示し、図14Fは円環状のデポー100を示す。図14Gは、回転楕円状のデポー100を示し、図14Hは円筒状のデポー100を示す。デポー100の形状は、所与の空間内に適合するよう解剖構造に従い選択することができ、所望の固定および柔軟性を提供することができる。これはデポーの適合、固定、および柔軟性が、デポーの埋込みの容易さを高め、標的部位への治療剤の送達を確実にし、かつ動的埋込み部位でのインプラントの耐久性を延ばすことができるからである。
【0094】
様々な実施形態では、デポーは種々のサイズであり得、例えばデポーは、約0.4mmから100mmの長さであってもよく、約0.01から約5mmの直径または厚さを有していてもよい。様々な実施形態では、デポーは、約0.005から5.0mm、例えば0.05から2.0mmなどの層の厚さを有していてもよい。一部の実施形態では、形状は、20またはそれよりも大きい、25もしくはそれよりも大きい、30もしくはそれよりも大きい、35もしくはそれよりも大きい、40もしくはそれよりも大きい、45もしくはそれよりも大きい、または50もしくはそれよりも大きい範囲にある、幅の厚さに対する比を有する、長方形または正方形のシートであってもよい。
【0095】
一部の実施形態では、制御領域(単一の副制御領域または全ての副制御領域を合わせたもの)の厚さは、治療領域の厚さの1/50、1/75、または1/100未満でありまたはこれらに等しい。
【0096】
一部の実施形態では、デポー100は、幅および厚さを有し、幅の厚さに対する比は21またはそれよりも大きい。一部の実施形態では、比は22もしくはそれよりも大きく、23もしくはそれよりも大きく、24もしくはそれよりも大きく、25もしくはそれよりも大きく、26もしくはそれよりも大きく、27もしくはそれよりも大きく、28もしくはそれよりも大きく、29もしくはそれよりも大きく、30もしくはそれよりも大きく、35もしくはそれよりも大きく、40もしくはそれよりも大きく、45もしくはそれよりも大きく、または50もしくはそれよりも大きい。
【0097】
一部の実施形態では、デポー100は、表面積および体積を有し、表面積の体積に対する比は、少なくとも1、少なくとも1.5、少なくとも2、少なくとも2.5、または少なくとも3である。
【0098】
図2~14Hに関して上記にて示され記述された前述の実施形態のいずれかでは、放出剤(複数可)の溶解および治療剤(複数可)の溶出は、時間をわたってデポー100の機能的機械的態様を変化させる可能性がある。そのような機械的態様は、デポー100の構造的完全性、曲げ強さ、引張り強さ、または他の機械的特性を含む。ある場合には、早期の分解など、デポー100の望ましくない分解は、デポー100の機械的故障、ならびに体内への、治療剤の対応する望ましくないバースト放出を引き起こす可能性がある。したがって、デポー100は、十分な曲げ強さおよび/または機械的完全性をin vivoで、少なくとも所定の期間にわたりまたは治療剤の所定の割合がデポー100から放出されるまで、維持することが有益であり得る。デポー100は、大部分が無傷のままでありかつ治療剤の溶出または制御層もしくは放出剤の溶解に起因して部分的なまたは漸進的な縮小しかない場合、デポー100はその構造的完全性を維持すると見なすことができる。デポー100は、多数の構成要素の小片に分離(例えば、破砕)し、例えば得られた小片の2つまたはそれよりも多くがデポー100の以前のサイズの少なくとも5%である場合、その構造的完全性を失うと見なすことができる。あるいは、または追加として、治療剤の放出速度が、緩衝溶液中に浸漬させた対照デポーにおける治療剤の放出速度と比べて3倍を超えて増大する場合、デポー100はその構造的完全性を失うと見なすことができる。
【0099】
一部の実施形態では、デポー100は、その構造的完全性をin vivoで、少なくとも所定の期間にわたり維持するように構成される。例えば、デポー100は、その構造的完全性をin vivoで、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも15日、少なくとも16日、少なくとも17日、少なくとも18日、少なくとも19日、少なくとも20日、少なくとも21日、少なくとも22日、少なくとも23日、少なくとも24日、少なくとも25日、少なくとも26日、少なくとも27日、少なくとも28日、少なくとも29日、または少なくとも30日、少なくとも40日、少なくとも50日、少なくとも60日、少なくとも70日、少なくとも90日、少なくとも100日、少なくとも200日、少なくとも300日、または少なくとも365日間、維持するように構成することができる。
【0100】
一部の実施形態では、デポー100は、その構造的完全性をin vivoで、治療剤ペイロードの少なくとも所定の割合がデポーから放出されるまで維持するように構成される。例えば、デポー100は、その構造的完全性をin vivoで、当初のペイロードの少なくとも5重量%が放出されるまで、当初のペイロードの少なくとも10重量%が放出されるまで、当初のペイロードの少なくとも15重量%が放出されるまで、当初のペイロードの少なくとも20重量%が放出されるまで、当初のペイロードの少なくとも25重量%が放出されるまで、当初のペイロードの少なくとも30重量%が放出されるまで、当初のペイロードの少なくとも35重量%が放出されるまで、当初のペイロードの少なくとも40重量%が放出されるまで、当初のペイロードの少なくとも45重量%が放出されるまで、当初のペイロードの少なくとも50重量%が放出されるまで、当初のペイロードの少なくとも55重量%が放出されるまで、当初のペイロードの少なくとも60重量%が放出されるまで、当初のペイロードの少なくとも65重量%が放出されるまで、当初のペイロードの少なくとも70重量%が放出されるまで、当初のペイロードの少なくとも75重量%が放出されるまで、当初のペイロードの少なくとも80重量%が放出されるまで、当初のペイロードの少なくとも85重量%が放出されるまで、当初のペイロードの少なくとも90重量%が放出されるまで、または当初のペイロードの少なくとも95重量%が放出されるまで維持するように構成することができる。
【0101】
デポー100の構造的完全性の一態様は、それがin vivoにある場合、曲げ試験、例えば破壊前の試験片によって持続される曲げ強さおよび/または最大曲げ応力を含む曲げ特性を測定する3点曲げ試験を使用して、定量することができる。そのような曲げ試験は、デポー100が解剖学的関節(例えば、膝関節)においてin vivoで遭遇することになる力を表し(例えば、シミュレートし)てもよい。一例において、デポーは、ASTM-D790-17、”Standard Test Methods for Flexural Properties of Unreinforced and Reinforced Plastics and Electrical Insulating Materials”に基づく3点曲げ試験に供することができる。この規格のテキストは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。デポー100は、in
vivo条件をシミュレートするように構成された媒体、例えばリン酸緩衝生理食塩液(PBS)に、約37℃で懸濁してもよい。曲げ試験は、シミュレートされたin vivo条件で時間をわたってのデポー100の曲げ強さの変化を評価するために、媒体中での種々の浸漬期間後に行なってもよい。
【0102】
表1は、2.13mmで設定された最大撓みによる3点曲げ試験を使用して測定された、媒体中に浸漬後の種々の期間での、デポー100の4つの異なる試料によって持続される最大曲げ荷重を示す。表1の値は、列挙された試料のそれぞれの2つの場合から得られた測定値を反映する。図15は、グラフにプロットされかつトレンドラインを当て嵌めた、これらの値を示すグラフである。これら4つの試料のそれぞれにおいて、デポー100は、図4または5を参照しながら上に示されかつ記述されるように、上方および下方制御領域300a~bによって取り囲まれた治療領域200を含む。治療領域200は、第1および第2の制御領域300a~bの間に露出した側縁202を有する。デポー100はそれぞれ、約2.5cm×1.5cmの横寸法、約1mmの厚さを有する。
【0103】
試料1は、放出剤対ポリマー対治療剤の重量比が0.5:10:20である治療領域を有するデポーである。この試料におけるポリマーは、PDLLA:PGA:PCLの比が6:3:1であるP(DL)GACLであり、放出剤はTween 20であり、治療剤はブピバカイン塩酸塩である。この試料において、デポーは、図4を参照して上記にて示されかつ記述されるように、治療領域200の上面に単一制御層を含む第1の制御領域300aと、治療領域200の下面に単一制御層を含む第2の制御領域300bとを含む。各制御領域300a~bは個々に、放出剤のポリマーに対する比5:10を有する。
【0104】
試料2は、放出剤対ポリマー対治療剤の重量比が1:10:20である治療領域200を有するデポーである。この試料におけるポリマーは、PLA:PGAの比が1:1であるPLGAであり、放出剤はTween 20であり、治療剤はブピバカイン塩酸塩である。試料1と同様に、試料2のデポーは、図4を参照して上記にて示されかつ記述されるように、治療領域200の上面に単一制御層を持つ第1の制御領域300aと、治療領域200の下面に単一制御層を含む第2の制御領域300bとを含む制御領域300を含む。各制御領域300a~bは個々に、放出剤のポリマーに対する比5:10を有する。
【0105】
試料3は、放出剤対ポリマー対治療剤の重量比が5:10:20である治療領域200を有するデポーである。この試料におけるポリマーは、PDLLA:PGA:PCLの比が6:3:1であるP(DL)GACLであり、放出剤はTween 20であり、治療剤はブピバカイン塩酸塩である。この試料において、デポーは、図5を参照して上記にて示されかつ記述されるように、治療領域200の上面に2つの副制御領域302a~bを持つ第1の制御領域300aと、2つの副制御領域302c~dを持つ第2の制御領域300bとを含む制御領域300を含む。内側副制御領域302bおよび302cのそれぞれは、治療領域200の表面に接触し、放出剤のポリマーに対する比5:10を有し、外側副制御領域302aおよび302dのそれぞれは、放出剤のポリマーに対する比1:10を有する。したがって、試料3のデポーは、合計で4つの副制御領域を含む。
【0106】
試料4は、放出剤対ポリマー対治療剤の重量比が5:10:20である治療領域200を有するデポーである。この試料におけるポリマーは、PLA:PGAの比が1:1であるPLGAであり、放出剤はTween 20であり、治療剤はブピバカイン塩酸塩である。試料3と同様に、試料4のデポーは、図5を参照して上記にて示されかつ記述されるように、それぞれが2つの副制御領域302a~bおよび302c~dをそれぞれ有する第1および第2の制御領域300a~bを有する制御領域300を含む。したがって試料4のデポーは、合計で4つの副制御領域302a~dも有し、2つは治療領域200の上面にあり、2つは治療領域200の下面にある。副制御領域302bおよび302cの内側は、放出剤のポリマーに対する比5:10を有し、副制御領域302aおよび302dの外側は、放出剤のポリマーに対する比1:10を有する。
【表1】
【0107】
表1に示されるように、全ての試料は無傷であり、媒体中に懸濁させた14日後に十分な構造的完全性を維持して、破断前の曲げ力に耐えた。各試料が耐えた最大荷重は時間をわたって減少したが、14日目のこれら試料の曲げ強さは、膝または肩などの活動関節内の埋込みに望まれる構造的完全性を維持するのに十分であった。上記にて示したように、28日目に試験した試料の2つの場合、試料は分解し、したがって、試料はもはや構造的に無傷ではないので試験を行なうことはできなかった。そのような場合、デポーが分解しかつ構造的完全性が失われる前に、全てまたは実質的に全ての治療剤ペイロードがデポーから放出されるように、デポーを構成することが望ましいと考えられる。
【0108】
表1にまとめたこの一連の実験において、試料デポーは一般に、PBSに浸漬する前の0日目は柔軟である。浸漬後、デポーの曲げ強さは減少して、デポーは時間と共により脆くなった。それでも7~14日目に、デポーは依然として十分に機能的に無傷であった。理論に拘束されないが、治療剤が溶出した後、デポーは徐々に、空のポリマーマトリクスになると考えられる。例えば、溶液中で14~28日後、デポーは、PBSに浸漬する前のそれらの出発重量の約30%の重さにしかならない可能性がある。このより低い重量でおよび多孔質状態で、デポーはより脆くなる可能性があり、それと共に曲げ強さが低くなりかつ曲げ荷重に対する耐性が少なくなる。
【0109】
上述のように、デポー100は、治療剤ペイロードが体内に放出されるにつれてそれらが徐々に分解する場合であっても、それらの構造的完全性および曲げ強さを維持することが有利であり得る。一部の実施形態では、デポー100は、3点曲げ試験を利用するin
vitro試験で、所定の期間にわたりPBS中に浸漬された後、デポー100の曲げ強さが最大95%、最大90%、最大85%、最大80%、最大75%、最大70%、最大65%、最大60%、最大55%、最大50%、最大45%、最大40%、最大35%、最大30%、最大25%、最大20%、最大15%、最大10%、または最大5%減少するように構成することができる。様々な実施形態では、3点曲げ試験に供する前にデポー100がPBS中に浸漬される所定の期間は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日後、22日後、23日、24日、25日、26日、27日、28日、またはそれよりも長い。少なくとも一部の実施形態では、デポー100の曲げ強さの変化は、0日目(例えば、PBSに浸漬する前)とPBS中にある期間浸漬した後の後続の時間との間で測定することができる。他の実施形態では、デポー100の曲げ強さの変化は、1日目(例えば、24時間PBS中に浸漬した後)とPBS中にさらに長く浸漬した後の後続の時間との間で測定することができる。
【0110】
一部の実施形態では、デポー100は、3点曲げ試験を利用するin vitro試験において、デポー100がPBS中に浸漬されている間に初期の治療剤ペイロードの所定のパーセンテージが放出される期間にわたり、デポー100の曲げ強さが最大95%、最大90%、最大85%、最大80%、最大75%、最大70%、最大65%、最大60%、最大55%、最大50%、最大45%、最大40%、最大35%、最大30%、最大25%、最大20%、最大15%、最大10%、または最大5%減少するように構成することができる。様々な実施形態では、3点曲げ試験に供される前にデポー100がPBS中に浸漬されたときに放出されたペイロードの所定のパーセンテージは、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%である。上述のように、少なくとも一部の実施形態では、デポー100の曲げ強さの変化は、0日目(PBS中に浸漬される前)または1日目(24時間PBS中に浸漬された後)と、PBS中にさらに長く浸漬した後の後続の時間との間で測定することができる。
【0111】
一部の実施形態では、デポー100は、(a)約1.0~3.0cmの横寸法、(b)約0.5~2.5mmの厚さ、および(c)最長7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20日にわたって1日当たり約100mgから約500mgの治療剤を放出するのに十分な治療剤のペイロードを有し、デポー100は、少なくとも7日間にわたって治療剤の持続した制御放出を提供するために、十分に機械的に無傷なままであるように構成される。デポー100のそのような実施形態は、治療剤を持つ治療領域200と制御領域300とを含むことができる。制御領域300は、図4~13を参照しながら上記にて示されかつ記述されるような第1および第2の制御領域300a~bを有することができ、制御領域300は、生体吸収性ポリマーおよびこの生体吸収性ポリマーと混合された放出剤を含む。放出剤は、デポー100がin vivoで配置されたときに溶解して拡散開口を制御領域300内に形成するように構成される。デポー100はさらに、7日間にわたって緩衝溶液中にデポー100を浸漬させた後、デポー100の曲げ強さが最大75%、または最大70%、または最大65%、または最大60%、または最大55%、または最大50%、または最大45%減少するように構成される。
【0112】
一部の実施形態では、デポー100は、(a)約1.0~3.0cmの横寸法、(b)約0.5~2.5mmの厚さ、および(c)最長7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20日間にわたって1日当たり約100mgから約500mgの治療剤を放出するのに十分な治療剤のペイロードを有し、デポー100は、少なくとも7日間にわたり治療剤の持続した制御放出を提供するために、十分に機械的に無傷なままであるように構成される。デポー100のそのような実施形態は、治療剤を持つ治療剤200と制御領域300とを含むことができる。制御領域300は、図4~13を参照しながら上記にて示されかつ記述されるような第1および第2の制御領域300a~bを有することができ、制御領域300は、生体吸収性ポリマーおよびこの生体吸収性ポリマーと混合された放出剤を含む。放出剤は、デポー100がin vivoで配置されたときに溶解して拡散開口を制御領域300内に形成するように構成される。デポーはさらに、治療剤の約75重量%が放出されるまで緩衝溶液中にデポーを浸漬させた後、デポーの曲げ強さが最大75%、または最大70%、または最大65%、または最大60%、または最大55%、または最大50%、または最大45%減少するように構成される。
【0113】
A. 治療領域
本技術のデポー100の全ペイロードおよび放出動態は、治療領域200の組成を変化させることにより、特定の適用例に合わせて調整されてもよい。多くの実施形態では、治療領域200は、特に等しい厚さまたはポリマー重量パーセンテージの他の公知のポリマーデバイスと比較して、治療剤の高い治療ペイロードを含んでいてもよい。一部の実施形態では、治療領域200における放出剤対ポリマー対治療剤の比は、約0.1:10:20から約2:10:20であり、一部の実施形態では、約0.1:10:20から約1:10:20であり、一部の実施形態では約0.1:10:20から約0.5:10:20であり、一部の実施形態では約0.5:10:20から約0.1:10:20である。
【0114】
一部の実施形態では、治療領域200(または1つもしくは複数の治療副領域)は、本質的に純粋な化合物として、または当業者に公知の希釈剤、補助剤、賦形剤、もしくはビヒクルなどの薬学的に許容される担体と共に製剤化されたものとして、治療剤を含む。一部の実施形態では、治療領域200は単層を含んでいてもよく、一部の実施形態では、治療領域は、同じおよび/または異なる量の治療剤を含有する複数のマイクロ層を含んでいてもよい。一部の実施形態では、治療領域200は、治療剤とポリマーおよび/または放出剤とを含有する1つまたは複数の副領域と、(b)本質的に純粋な化合物(即ち、いかなるポリマーおよび/または放出剤もない)として治療剤を含有する1つまたは複数の副領域とを含んでいてもよい。一部の実施形態では、治療領域200は放出剤を含み、一部の実施形態では、治療領域200は、処置部位でデポー100を埋め込む前にいかなる放出剤も含まない。
【0115】
この技術の一部の態様では、治療領域200は、生分解性、生体吸収性ポリマーの多数のマイクロ薄層シートのマイクロ層構造を含んでいてもよく、各マイクロ薄層シート(または層)には治療剤が負荷される。治療領域200のこのマイクロ層の実施形態では、マイクロ薄層シートは、実質的に均一な構造を有していてもよく、積層されかつ一緒に結合される。これらのマイクロ薄層ポリマーシートは、それぞれが、約5μmから100μm、5μmから50μm、5μmから25μm、5μmから10μm、5μmから7μm、または7μmから9μm厚の厚さを有していてもよく、治療領域の総厚さは、積層されるマイクロ薄層シートの総数に基づく。多層を持つ治療領域200を有することにより、時間をわたって治療剤のより線形の制御放出が提供され得る(埋込みの初日を越えて)。さらに、治療領域の層状化は、より柔軟な、構造的に能力のあるデポー(純粋な治療剤から構成された治療領域を有するデポーと比較して)にも寄与し得る。そのような耐久性は、デポー100を処置部位に置く前およびその間、デポーを取り扱い/操作するときに、臨床医にとって有益である。
【0116】
B. 制御領域
制御領域300の組成は変えてもよい。例えば、多くの実施形態では、制御領域300は、少なくとも処置部位にデポーを埋め込む前に、いかなる治療剤も含まない。一部の実施形態では、制御領域300は、治療領域200における治療剤と同じであっても異なっていてもよい治療剤を含んでいてもよい。
【0117】
制御領域300内で、放出剤の量は、治療剤のより速いまたは遅い放出を達成するために変化させてもよい。治療領域200および制御領域300が共に放出剤を含む実施形態では、治療領域200内の放出剤のタイプは、制御領域300における放出剤と同じであっても異なっていてもよい。一部の実施形態では、制御領域内の第1の放出剤の濃度は、治療領域内の第2の放出剤(第1の放出剤と同じまたは異なる)の濃度よりも大きい。一部の実施形態では、制御領域内の放出剤の濃度は、治療領域内の放出剤の濃度よりも小さい。一部の実施形態では、制御領域300内の放出剤の濃度は、治療領域200内の放出剤の濃度と同じである。
【0118】
既に述べたように、一部の実施形態では、デポー100は、多層から構成される制御領域300を含んでいてもよい。一部の実施形態では、制御領域内の層の1つ、いくつか、または全ては、マイクロ薄層シートを含む。理論に拘束されないが、そのような多層構成は、治療剤の放出を制御する制御領域の能力を改善することが考えられる(単層制御領域と比較して)。示されるように、制御領域の両方のマイクロ層における放出剤の溶解によって残されたチャネルは、放出された治療剤を移行させる経路であって、単層制御領域のチャネルによって創出されたさらに直接的な経路と比較してより長くかつ横断するのがおそらくはより厄介な経路を創出する。この実施形態における制御領域の多数のマイクロ薄層シートは、治療領域200上で一緒に熱圧縮され、放出剤によって独立した非隣接チャネルを、in vivo環境から治療領域まで各制御領域を通して形成させることにより、治療剤放出速度を調節してもよい。多層を持つ制御領域300を有することにより、時間をわたっての治療剤のより線形の制御放出が提供され得る(埋込みの初日を越えて)。さらに、制御領域300の層状化は、より柔軟な、構造的に有能なデポーにも寄与し得る(純粋な治療剤で構成された治療領域を有するデポーと比較して)。そのような耐久性は、処置部位にデポー100を置く前およびその間にデポー100を取り扱い/操作するときに、臨床医にとって有益である。
【0119】
本明細書に開示されるデポーの様々な実施形態では、制御領域は、いくつかの異なる形をとってもよい。一部の実施形態では(例えば、図4)、制御領域は、放出剤と混合された生分解性、生体吸収性ポリマーから構成された治療領域200の両側に単層を含んでいてもよい。一部の実施形態では、制御領域自体は、生分解性、生体吸収性ポリマーの多層を有する構造を含んでいてもよい。この多層構造の層は、さらにまたは代替として、多数のマイクロ薄層シートまたは層(即ち、マイクロ層)を含んでいてもよく、各マイクロ薄層は、約5μmから100μm、5μmから50μm、5μmから25μm、5μmから10μm、5μmから7μm、または7μmから9μmの厚さを有する。制御領域300のこれらの多層化実施形態では、多層構造の少なくとも1つの層は、放出剤と混合されたポリマーを含んでいてもよく、多層構造の少なくとも1つの他の層は、内部に混合された放出剤を持たないポリマーを含んでいてもよい。一部の実施形態では、制御領域300は、多層が各ポリマー層内に混合された放出剤を有する多層構造を含んでいてもよく、しかしこれらの層は、異なる濃度で放出剤を有していてもよい。特定の実施形態では、多数の制御層は、各ポリマー層内に混合された放出剤を有し、層の少なくとも1つは、他の層の少なくとも1つとは異なる放出剤を有していてもよい。
【0120】
C. 治療剤
本技術のデポー100によって運ばれる治療剤は、それを必要とする患者において治療効果をもたらす任意の生物学的に活性な物質(または物質の組合せ)であってもよい。本明細書で使用される場合、「治療剤」または「薬物」は、単一の治療剤を指してもよく、または治療剤の組合せを指してもよい。一部の実施形態において、治療剤は、単一の治療剤のみを含んでいてもよく、一部の実施形態では、治療剤は、同時または逐次放出のために2種またはそれよりも多くの治療剤を含んでいてもよい。
【0121】
いくつかの実施形態では、治療剤は、鎮痛剤を含む。「鎮痛剤」または「鎮痛薬」という用語は、疼痛を全体的に低減させ、予防し、緩和し、または除去するために投与される1種または複数の局所または全身麻酔剤を含む。鎮痛剤は、全身および/または局所麻酔薬、麻薬、および/または抗炎症剤を含んでいてもよい。鎮痛剤は、薬理学的に活性な薬物またはその薬学的に許容される塩を含んでいてもよい。適切な局所麻酔薬には、限定するものではないが、ブピバカイン、ロピバカイン、メピバカイン、エチドカイン、レボブピバカイン、トリメカイン、カルチカイン、アルチカイン、リドカイン、プリロカイン、ベンゾカイン、プロカイン、テトラカイン、クロロプロカイン、およびこれらの組合せが含まれる。好ましい局所麻酔薬には、ブピバカイン、リドカイン、およびロピバカインが含まれる。典型的には、局所麻酔薬は、神経終末の興奮を阻害することによってまたは末梢神経における伝達を遮断することによって、感覚脱失をもたらす。そのような阻害は、ナトリウムチャネルに可逆的に結合して不活性化する麻酔薬によって達成される。これらのチャネルを経たナトリウムの流入は、神経細胞膜の脱分極、および後続の、神経路に沿ったインパルスの伝搬に必要である。神経が、脱分極、およびインパルスを伝搬させる能力を失うと、個体は、神経によって供給された領域における感覚を失う。そのような麻酔特性を保有する任意の化合物は、本技術で使用するのに適切である。
【0122】
一部の実施形態では、治療剤は、麻薬、例えばコカイン、および抗炎症剤を含む。適切な抗炎症剤の例には、ステロイド、例えばプレドニゾン、ベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、およびメチルプレドニゾロンが含まれる。他の適切な抗炎症剤には、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えばアスピリン、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム、ジクロフェナク、ジクロフェナク-ミソプロストール、セレコキシブ、ピロキシカム、インドメタシン、メロキシカム、ケトプロフェン、スリンダク、ジフルニサール、ナブメトン、オキサプロジン、トルメチン、サルサレート、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトロラク、メクロフェナメート、メフェナム酸、および他のCOX-2阻害剤、ならびにこれらの組合せが含まれる。
【0123】
一部の実施形態では、治療剤は、抗生物質、抗菌剤もしくは抗真菌剤、またはこれらの組合せを含む。例えば、適切な抗生物質および抗菌物質には、限定するものではないが、アモキシシリン、アモキシシリン/クラブラネート、セファレキシン、シプロフロキサシン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、アジスロマイシン、レボフロキサシン、スルファメトキサゾール/トリメトプリム、テトラサイクリン(複数可)、ミノサイクリン、チゲサイクリン、ドキシサイクリン、リファムピン、トリクロサン、クロルヘキシジン、ペニシリン(複数可)、アミノグリシド、キノロン、フルオロキノロン、バンコマイシン、ゲンタマイシン、セファロスポリン(複数可)、カルバパネム、イミペネム、エルタペネム、抗菌ペプチド、セクロピン-メリチン、マガイニン、デルマセプチン、カテリシジン、α-デフェンシン、およびα-プロテグリンが含まれる。抗真菌剤には、限定するものではないが、ケトコナゾール、クロルトリマゾール、ミコナゾール、エコナゾール、イントラコナゾール、フルコナゾール、ビフォコナゾール、テルコナゾール、ブタコナゾール、チオコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、サペルコナゾール、ボリコナゾール、テルビナフィン、アモロルフィン、ナフチフィン、グリセオフルビン、ハロプロギン、ブテナフィン、トルナフテート、ニスタチン、シクロヘキサミド、シクロピロックス、フルシトシン、テルビナフィン、およびアムホテリシンBが含まれる。
【0124】
いくつかの実施形態では、治療剤は、副腎皮質安定剤(adrenocorticostatic)、β-抗アドレナリン薬、アンドロゲンまたは抗アンドロゲン、抗貧血薬、抗寄生生物薬、同化薬、麻酔薬もしくは鎮痛薬、興奮薬、抗アレルギー薬、抗不整脈薬、抗動脈硬化薬、抗生物質、抗糖尿病薬、抗線維素溶解薬、鎮痙薬、血管新生阻害剤、抗コリン薬、酵素、補酵素もしくは対応する阻害剤、抗ヒスタミン薬、抗高血圧薬、抗低血圧薬、抗凝固薬、抗かび剤、防腐剤、抗感染症薬、止血薬、β-受容体アンタゴニスト、カルシウムチャネルアンタゴニスト、抗筋無力症薬、消炎薬、解熱薬、抗リウマチ薬、強心薬、化学療法薬、冠動脈拡張薬、細胞増殖抑制薬、糖質コルチコイド、止血剤、免疫グロブリンもしくはその断片、ケモカイン、サイトカイン、マイトジェン、細胞分化因子、細胞毒性剤、ホルモン、免疫抑制薬、免疫刺激薬、モルヒネアンタゴニスト、筋弛緩薬、麻薬、ベクター、ペプチド、(副)交感神経様作用薬、(副)交感神経抑制薬、タンパク質、細胞、選択的エストロゲン受容体調節薬、(SERM)、鎮静剤、抗痙攣薬、骨の吸収を阻害する物質、血管収縮薬もしくは血管拡張薬、ウイルス増殖抑止薬、または創傷治癒剤であってもよい。
【0125】
様々な実施形態では、治療剤は、がんの処置に使用される薬物またはその薬学的に許容される塩を含む。そのような化学療法剤には、抗体、アルキル化剤、血管新生阻害剤、抗代謝産物、DNA切断剤、DNA架橋剤、DNA挿入剤、DNA小溝結合剤、エンジイン、熱ショックタンパク質90阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、免疫調節剤、微小管安定化剤、ヌクレオシド(プリンまたはピリミジン)類似体、核外輸送阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼ(IまたはII)阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、およびセリン/トレオニンキナーゼ阻害剤が含まれる。特定の治療剤には、限定するものではないが、アダリムマブ、アンサミトシンP3、アウリスタチン、ベンダムスチン、ベバシズマブ、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カリスタチンA、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セツキシマブ、シスプラチン、クラドリビン、シタラビン、クリプトフィシン、ダカルバジン、ダサチニブ、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、デュオカルマイシン、ジネマイシンA、エポチロン、エトポシド、フロキシウリジン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、イピリムマブ、ヒドロキシ尿素、イマチニブ、インフリキシマブ、インターフェロン、インターロイキン、ベータ-ラパコン、レナリドミド、イリノテカン、マイタンシン、メクロレタミン、メルファラン、6-メルカプトプリン、メトトレキセート、ミトマイシンC、ニロチニブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、プロカルバジン、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、6-チオグアニジン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、トラスツズマブ、トリコスタチンA、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびタモキシフェンが含まれる。
【0126】
一部の実施形態では、治療剤は、疼痛に関連する様々な神経筋障害および/または神経分泌腺障害(neuroglandular disorder)およびニューロパチーの処置に使用されるボツリヌス毒素(または神経毒)薬を含む。ボツリヌス毒素(または神経毒)は、薬理学的に活性な薬物またはその薬学的に許容される塩を含んでいてもよい。本明細書に記述され使用されるボツリヌス毒素(または神経毒)は、Clostridium botulinumの様々な株から選択されてもよく、薬理学的に活性な薬物またはその薬学的に許容される塩を含んでいてもよい。一実施形態では、ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素A、B、C、D、E、F、およびG型からなる群より選択される。好ましい実施形態では、ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素A型である。市販のボツリヌス毒素、BOTOX(登録商標)(Allergan,Inc.、Irvine、CA)は、滅菌真空乾燥形態に包装された、凍結乾燥した精製済みのボツリヌス毒素A型複合体、アルブミン、および塩化ナトリウムからなる。
【0127】
ボツリヌス毒素の麻痺作用は、商業的治療薬の最も一般的な利益であり、筋ジストニア、皺などを処置するために、筋肉を弛緩させる。しかし、筋肉および平滑筋に対するその抗コリン作動性効果に加え、神経毒は、他の非筋肉細胞型に対しておよび炎症そのものに対して治療効果を有し得ることが示されてきた。例えば、気道系全体を通して粘液を生成するコリン作動性杯細胞は、ボツリヌス毒素に反応してその導入により遮断される可能性があることが示されてきた。研究は、ボツリヌス毒素が直接的な抗炎症能力を有することも示す。これらの治療効果、筋肉、平滑筋、杯細胞、および抗炎症効果の全ては、本発明のデバイスからの毒素の送達から誘導され得る。
【0128】
薬学的に許容される塩は、生物学的有効性および中性治療剤の性質を保持しかつその他の点では薬学的使用に許容されないものではない塩を指す。薬学的に許容される塩は、酸性または塩基性の基の塩を含み、これらの基は治療剤中に存在し得る。性質が塩基性である本技術で使用される治療剤は、様々な無機酸および有機酸との広く様々な塩を形成することが可能である。本技術に使用される塩基性治療剤の薬学的に許容される酸付加塩は、無毒性酸付加塩、即ち、薬理学的に許容される陰イオンを含む塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、サッカレート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩[即ち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート)]塩を形成するものである。アミノ部分を含む本技術の治療剤は、上述の酸に加え、様々なアミノ酸との薬学的に許容される塩を形成し得る。適切な塩基性塩は、無毒性塩を形成する塩基から形成され、その例は、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛、およびジエタノールアミン塩である。
【0129】
薬学的に許容される塩では、水もしくは別の生物学的に適合可能な溶媒(溶媒和物)、酢酸イオン、コハク酸イオン、または他の対イオンなどの別の分子が含まれてもよい。対イオンは、親化合物上の電荷を安定化させる任意の有機または無機部分であってもよい。さらに、薬学的に許容される塩は、その構造内に1つを超える荷電原子を有していてもよい。多数の荷電原子が薬学的に許容される塩の部分である例は、多数の対イオンを有することができる。したがって、薬学的に許容される塩は、1つもしくは複数の荷電原子および/または1つもしくは複数の対イオンを有することができる。
【0130】
治療剤またはその薬学的に許容される塩は、本質的に純粋な化合物であってもよく、または当業者に公知の希釈剤、補助剤、賦形剤、もしくはビヒクルなどの薬学的に許容される担体と製剤化されてもよい。担体(複数可)は、製剤の他の成分に適合可能でありかつそのレシピエントに有害ではないという意味で、「許容され」なければならない。例えば希釈剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、およびグリシンなどを含む。他の薬学的に許容される担体の例に関しては、Remington: THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY(21st Edition, University of the Sciences in Philadelphia, 2005)を参照されたい。
【0131】
治療剤または薬学的に許容される塩の形態は、ジェットミリングされてもよく、またはその他の手法で篩に通して一貫した粒度を形成し、それによって治療剤の調節された制御放出をさらに可能にしてもよい。このプロセスは、高度に不溶性の治療剤に特に役立ち得る。
【0132】
一実施形態では、デポーの様々な層で使用される生分解性、生体吸収性ポリマーは、エレクトロスピニングされたマイクロ繊維またはナノ繊維の層として現れ得る。生体適合性のエレクトロスピニングされたマイクロ繊維/ナノ繊維は、当技術分野で公知であり、例えば、in vivoでの移植臓器の形成用に(米国特許公開第2014/0272225号;Johnson; Nanofiber Solutions, LLC)、筋骨格および皮膚組織工学のために(R. Vasita and D.S. Katti,
Int. J. Nanomedicine, 2006, 1:1, 15-30)、皮膚または口腔適用例のために(PCT公開第2015/189212号;Hansen; Dermtreat APS)、または術後疼痛の管理のために(米国特許公開第2013/0071463号;Palasis et al.)、埋込み可能な支持体を製造するのに使用され得る。製造技法として、エレクトロスピニングは、繊維メッシュの多孔度の制御と一緒にナノまたはマイクロ繊維の厚さおよび組成を制御する機会を提供する(Vasita and Katti, 2006)。これらのエレクトロスピニングされた足場は3次元であり、したがって組織形成のためにin vivoでの細胞の培養に理想的な支持体を提供する。典型的には、これらの足場は、70から90%の多孔度を有する(米国特許第9,737,632号;Johnson; Nanofiber Solutions, LLC)。エレクトロスピニングされたマイクロ繊維を製造するのに適切な生分解性ポリマーおよびコポリマーには、限定するものではないが、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、キトサン、シルクフィブリオン、およびヒアルロン酸などの天然材料、ならびにポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(l-ラクチド-co-ε-カプロラクトン)、およびポリ(乳酸)(PLA)などの合成材料が含まれる。
【0133】
生体吸収性ポリマーまたはコポリマーから作製されかつ治療剤と合わせて使用されてきた、エレクトロスピニングされたマイクロ繊維は、当技術分野で公知である。例えば、Johnsonらは、キトサンを含有する担体媒体と一緒に、生体適合性ポリマーのエレクトロスピニングされた繊維断片の注射による、関節炎症および他の状態の処置を開示した(米国公開出願第2016/0325015号;Nanofiber Solutions, LLC)。Weldonらは、ラット皮膚創傷モデルにおいてポリ(乳酸-co-グリコール酸)から製造された、エレクトロスピニングされたブピバカイン溶出縫合糸の使用を報告し、この縫合糸は、切開部位に局所麻酔を提供した(J. Control Release, 2012, 161:3, 903-909)。同様に、Palasisらは、手術部位に、オピオイド、麻酔薬、または非オピオイド鎮痛薬が負荷されたエレクトロスピニングされた繊維を埋め込むことによる、術後疼痛の処置を開示した(米国特許公開第2013/0071463号;Palasis et al.)。本技術で使用するのに適したエレクトロスピニングされたマイクロ繊維は、その全体が本明細書に組み込まれる上記の引用された参考文献で開示された方法によって得られ得る。
【0134】
特定の医学的状態の処置に必要な治療剤の量を決定するための重要な基準は、本技術のデポーからの薬物の放出速度である。放出速度は、放出剤がin vivoで周囲の流体に溶解する速度、利用される生体吸収性ポリマーまたはコポリマーのin vivo分解速度を含むがこれらに限定されない様々な因子によって制御される。例えば放出速度は、治療領域と生理学的流体との間の多数の制御領域の使用によって制御されてもよい。例えば、図6~8を参照されたい。
【0135】
本技術のデポーを利用する、適切な投薬量範囲は、特定の治療剤の効力に依存するが、一般に、1日につき、キログラム体重当たり約0.001mgから約500mgの薬物であり、例えばキログラム体重当たり約0.1mgから約200mgの薬物であり、kg体重当たり約1から約100mgである。投薬量範囲は、当業者に公知の方法によって容易に決定され得る。単位剤形は、一般に、約1mgから約500mgの間の活性成分を含有することになる。例えば、Marcaine(商標)(Pfizer;New York、NY)という商標名で販売されている、市販のブピバカイン塩酸塩は、0.25%濃度で37.5~75mgの投薬量範囲、および0.5%濃度で25mgから1日の最大レベル(400mgまで)を使用する末梢神経ブロックとして一般に投与される(Marcaine(登録商標)(商標)添付文書;FDA Reference ID: 3079122)。さらに、Naropin(登録商標)(Fresenius Kabi USA,LLC;Lake Zurich、IL)という商標名で販売されている、市販のロピバカイン塩酸塩は、非主要および主要神経ブロック用に5~300mgの用量で投与される(Naropin(登録商標)添付文書;Reference ID: 451112G)。本技術のデポーに関する適切な投薬量範囲は、注射によって習慣的に投与される市販の薬剤に等しい。
【0136】
一部の実施形態では、治療領域200は、鎮痛薬を少なくとも15重量%、鎮痛薬を少なくとも20重量%、鎮痛薬を少なくとも30重量%、鎮痛薬を少なくとも40重量%、鎮痛薬を少なくとも50重量%、鎮痛薬を少なくとも60重量%、鎮痛薬を少なくとも70重量%、鎮痛薬を少なくとも80重量%、鎮痛薬を少なくとも90重量%、または鎮痛薬を100重量%含む。
【0137】
一部の実施形態では、デポーは、鎮痛薬を少なくとも15重量%、鎮痛薬を少なくとも20重量%、鎮痛薬を少なくとも30重量%、鎮痛薬を少なくとも40重量%、鎮痛薬を少なくとも50重量%、鎮痛薬を少なくとも60重量%、鎮痛薬を少なくとも70重量%、鎮痛薬を少なくとも80重量%、鎮痛薬を少なくとも90重量%、または鎮痛薬を100重量%含む。多くの実施形態では、デポー100は、鎮痛薬を少なくとも50重量%含む。
【0138】
技術の一部の態様では、治療領域200は、多層を含んでいてもよい。そのような実施形態では、多数の層は、治療剤の効率的な負荷を改善し得る。例えば、多層化は、かなりの量の治療剤を負荷する直接的かつ有効な方法となり得る。しばしば、薬物のポリマーに対する比を増大させることによってまたは層の厚さを増大させることによってさえ、大量の治療剤を単一フィルム層に負荷することは難しい可能性がある。治療領域の厚さを理論的に増大させてより多くの薬物を負荷できる場合であっても、キャスティングを介した厚い治療領域の一貫した製作は、難しいことがわかるだろう。対照的に、それぞれが治療剤の所定の負荷を持つ、薄膜またはシートの積層および結合は、より信頼性あるキャスティングの代替例として提示され得る。鎮痛薬(即ち、ロピバカイン)を負荷する例からのデータを、表2に提示する。
【表2】
【0139】
単なる一例として、ロピバカインが負荷されかつ0.019mmの厚さを有する単層を生成した。0.046mmの厚さを有する、各層にロピバカインが負荷された5層フィルム試料も生成した。5層フィルム試料の厚さは単層の厚さの2.42倍に過ぎないが、5層試料中の治療剤の負荷は、単層試料の5.27倍であった。したがって、多層化手法は、実質的により高い密度の治療剤を可能にした。
【0140】
上述のように、多層の熱圧縮結合は、膜厚の有効な低減を可能にし、治療剤負荷の密度を増大させた。表2に例示される例では、多層構造は、治療剤の密度の124%の増大を可能にした。他の実施形態では、治療領域の多層構造により可能になった治療剤の密度の増大は、約50%、75%、100%、125%、150%、または200%であり得る。
【0141】
D. 生分解性ポリマー
本技術のデポー100は、生体吸収性ポリマーから構成される。一部の実施形態では、治療領域200および制御領域300は共に、ポリマー(またはポリマーのミックス)を含み、これらは同じまたは異なる量、濃度、および/または重量パーセンテージの同じまたは異なるポリマー(またはポリマーのミックス)であり得る。一部の実施形態では、制御領域300はポリマーを含み、治療領域200はポリマーを含まない。一部の実施形態では、治療領域200はポリマーを含み、制御領域300はポリマーを含まない。少なくともこのセクションで使用される場合、「ポリマー」は、治療領域200中および/または制御領域300中で使用され得るポリマーに当て嵌まる。
【0142】
本技術で使用される生体吸収性ポリマーは、好ましくは所定の分解速度を有する。「生体吸収性(bioresorbable)」または「生物吸収性(bioabsorbable)」という用語は、例えば細胞または組織によってポリマーが患者の体内に吸収されることを意味する。これらのポリマーは、ポリマーフィルムの全てまたは部分が酵素の作用によって、加水分解作用によって、および/または患者の体内での他の類似の機序によって時間をわたって分解することになるという点で、「生分解性」である。様々な実施形態では、生分解性、生体吸収性ポリマーフィルムは、体内で無毒性の構成要素に破壊または分解することができ、それと共に治療剤が放出される。本技術のデポーのベース構成要素として使用されるポリマーは、治療剤が完全に放出された後に破壊されまたは分解され得る。生体吸収性ポリマーは、少なくとも部分的には、周囲の組織、流体に見出される物質との接触に起因して、または細胞作用によって、時間をわたって浸食されまたは分解されることになるという点で、「生体内浸食性」でもある。
【0143】
本技術で使用するのに適した生体吸収性ポリマーの選択のための基準は、1)in vivoでの安全性および生体適合性;2)治療剤負荷容量;3)治療剤放出能力;4)分解プロファイル;5)炎症応答の可能性;および6)形状因子および製造可能性に関係し得る機械的性質を含む。したがって、生体吸収性ポリマーの選択は、特定の治療の臨床目的に依存する可能性があり、競合目的同士で二律背反が伴う可能性がある。例えばPGA(ポリグリコリド)は、比較的速い分解速度を有することが公知であるが、非常に脆くもある。逆に、ポリカプロラクトン(PCL)は、比較的遅い分解速度を有し、非常に弾性がある。共重合は、多数のポリマーの性質を混合したものを有することが臨床的に望ましい場合、いくらか多様性をもたらす。生物医学的適用例の場合、特に薬物放出のための生分解性デポーとして、ポリ(L-乳酸)(PLA)、PCL、およびPGAの少なくとも1種を使用するポリマーまたはコポリマーが一般に好ましい。これらのポリマーのいくつかに関する物理的性質を、以下の表3に提示する。
【表3】
【0144】
多くの実施形態では、ポリマーは、ポリグリコリド(PGA)を含んでいてもよい。PGAは、最も単純な直鎖状脂肪族ポリエステルの1種である。これは環状ラクトン、グリコリドの開環重合によって調製される。これは高度に結晶質であり、その結晶化度は45~55%であり、したがってほとんどの有機溶媒に可溶ではない。これは高融点(220~225℃)およびガラス転位温度35~40℃を有する(Vroman, L., et al., Materials, 2009, 2:307-44)。PGAの急速なin vivo分解は、機械的強さの損失およびグリコール酸の実質的な局所生成をもたらし、かなりの量で、炎症応答を誘発させ得る。
【0145】
多くの実施形態では、ポリマーはポリラクチド(PLA)を含んでいてもよい。PLAは、ポリマー主鎖から出るメチル(-CH3)側基の存在により、疎水性ポリマーである。それは、メチル側基の立体遮蔽効果により、PGAよりも、加水分解に対して耐性がある。代表的な商用のPLAに関する典型的なガラス転移温度は63.8℃であり、破断点伸びは30.7%であり、引張り強さは32.22MPaである(Vroman, 2009)。PLAの物理的性質および生分解性の調節は、ヒドロキシ酸コモノマー構成要素を用いることによって、またはD-およびL-異性体のラセミ化によって達成することができる(Vroman, 2009)。PLAは、4つの形:ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(D-乳酸)(PDLA)、メソ-ポリ(乳酸)、ならびにPLLAおよびPDLAのラセミ混合物であるポリ(D,L-乳酸)(PDLLA)で存在する。PLLAおよびPDLLAは、生物医学的適用例に関して最も研究されてきた。
【0146】
PLA(L-およびD,L-ラクチド形態の両方)およびPGAの共重合は、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)をもたらし、これは生物医学的適用例で最も一般的に使用される分解性ポリマーの1種である。多くの実施形態では、ポリマーはPLGAを含んでいてもよい。多くの実施形態では、ポリマーはPLGAを含んでいてもよい。PLAおよびPGAは著しく異なる性質を有するので、PLGA組成物の慎重な選択により、意図される臨床適用例での性能を最適化することができる。物理的性質の調節は、PLGAコポリマーに関してさらにより有意である。組成物が25~75%のラクチドから構成される場合、PLGAは、より安定なホモポリマーと比較して、非常に加水分解的に不安定な非晶質ポリマーを形成する。このことは、50:50 PLGA、75:25 PLGA、および85:15 PLGAの分解時間で実証され、それぞれ1~2カ月、4~5カ月、および5~6カ月である。一部の実施形態では、ポリマーは、モル比が50:50のエステル終端ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)(「PLGA」)であってもよい(DURECT Corporation)。
【0147】
一部の実施形態では、ポリマーは、ポリカプロラクトン(PCL)を含んでいてもよい。PCLは、高い有機溶媒溶解度、55~60℃の融解温度、および-54℃のガラス転移温度を持つ半結晶質ポリエステルである(Vroman, 2009)。PCLは、低いin vivo分解速度および高い薬物透過性を有し、それによって、より長期の薬物送達のためのデポーとして、より適切になる。例えば、Capronor(登録商標)は、1年にわたってin vivoでレボノルゲストレルを送達することができる商用の避妊PCL生成物である。PCLはしばしば、PLLA、PDLLA、またはPLGAのような他のポリマーとブレンドされまたは共重合される。ポリエーテルとのブレンドまたは共重合は、全体的なポリマー浸食を早める。さらにPCLは、比較的低い引張り強さ(約23MPa)を有するが、非常に高い破断点伸び(4700%)を有し、非常に良好な弾性生体材料になる。PCLは加工性も高く、多くの潜在的な形状因子および生成効率を可能にする。
【0148】
本技術で使用するのに適切な生体吸収性ポリマーおよびコポリマーには、限定するものではないが、ポリ(アルファ-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGAまたはDLG)、ポリ(DL-ラクチド-co-カプロラクトン(DL-PLCL)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(L-乳酸)(PLA)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリ(4-ヒドロキシブチレート)(PHB)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ(ホスファゼン)、ポリリン酸エステル)、ポリ(アミノ酸)、ポリデプシペプチド、ポリ(ブチレンスクシネート)(PBS)、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンフマレート、ポリイミノカーボネート、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)(PLCL)、ポリ(グリコリド-co-カプロラクトン)(PGCL)コポリマー、ポリ(D,L-乳酸)、ポリグリコール酸、ポリ(L-ラクチド-co-D,L-ラクチド)、ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(グリコリド-トリメチレンカーボネート)、ポリ(グリコリド-co-カロラクトン)(PGCL)、ポリ(エチルグルタメート-co-グルタミン酸)、ポリ(tert-ブチルオキシ-カルボニルメチルグルタメート)、ポリ(グリセロールセバケート)、チロシン誘導ポリカーボネート、ポリ1,3-ビス-(p-カルボキシフェノキシ)ヘキサン-co-セバシン酸、ポリホスファゼン、エチルグリシネートポリホスファゼン、ポリカプロラクトンco-ブチルアクリレート、ポリヒドロキシブチレートのコポリマー、無水マレイン酸のコポリマー、ポリ(トリメチレンカーボネート)のコポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびセルロース誘導体、多糖(ヒアルロン酸、キトサン、およびデンプンなど)、タンパク質(ゼラチンおよびコラーゲンなど)、またはこれらのPEG誘導体およびコポリマーが含まれる。他の適切なポリマーまたはコポリマーには、ポリアスピリン、ポリホスファゲン、コラーゲン、デンプン、アルファ化デンプン、ヒアルロン酸、キトサン、ゼラチン、アルギネート、アルブミン、フィブリン、ビタミンE類似体、例えばアルファトコフェリルアセテート、d-アルファトコフェリルスクシネート、D-ラクチド、D,L-ラクチド、L-ラクチド、D,L-ラクチド-カプロラクトン(DL-CL)、D,L-ラクチド-グリコリド-カプロラクトン(DL-G-CL)、デキストラン、ビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA-g-PLGA、PEGT-PBTコポリマー(ポリアクティブ)、メタクリレート、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、PEO-PPO-PEO(プルロニクス)、PEO-PPO-PAAコポリマー、PLGA-PEO-PLGA、PEG-PLG、PLA-PLGA、ポロキサマー407、PEG-PLGA-PEGトリブロックコポリマー、SAIB(スクロースアセテートイソブチレート)ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、Carbopol(登録商標)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メトキシエチルメタクリレート)、ポリ(メトキシエトキシ-エチルメタクリレート)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート(MMA)、ゼラチン、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、またはこれらの組合せが含まれる。
【0149】
様々な実施形態では、ポリマーの分子量は、広範な値にすることができる。ポリマーの平均分子量は、約1000から約10,000,000;または約1,000から約1,000,000;または約5,000から約500,000;または約10,000から約100,000;または約20,000から50,000とすることができる。
【0150】
上述のように、治療剤の制御された送達のためにデポーを使用するある特定の臨床適用例では、PGA、PLA、PCL、PDO、およびPVAの少なくとも2種を含むコポリマーを使用することが望ましいと考えられる。これらには、例えば、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)(PLCL)(例えば、90:10から60:40の、PLAのPCLに対する比を有する)またはその誘導体およびこれらのコポリマー、ポリ(DL-ラクチド-co-カプロラクトン)(DL-PLCL)(例えば、90:10から50:50の、DL-PLAのPCLに対する比を有する)またはその誘導体およびこれらのコポリマー、ポリ(グリコリド-co-カプロラクトン)(PGCL)(例えば、90:10から10:90の、PGAのPCLに対する比を有する)またはその誘導体およびこれらのコポリマー、あるいはPCLとPLAとのブレンド(例えば、1:9から9:1のwt:wt比を有する、PCLおよびPLAのブレンドの比)が含まれる。1つの好ましい実施形態では、生体吸収性ポリマーは、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(L-乳酸)(PLA)、およびポリグリコリド(PGA)のコポリマーを含む。そのような好ましい実施形態では、コポリマーのPGA対PLA対PCLの比は、5~60%のPGA、5~40%のPLAおよび10~90%のPCLであってもよい。追加の実施形態では、PGA:PLA:PCL比は40:40:20、30:30:50、20:20:60、15:15:70、10:10:80、50:20:30、50:25:25、60:20:20、または60:10:30であってもよい。一部の実施形態では、ポリマーは、モル比が60:30:10であるエステル終端ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド-co-カプロラクトン)である(DURECT Corporation)。
【0151】
一部の実施形態では、ターポリマーは、分解速度を増大させかつ製造を容易にするなどのために有益であり得る。
【0152】
生体吸収性デポーのサイズを最小限に抑えるには、治療剤の最も高い可能性ある密度が達成されるよう、ポリマーにおける治療剤の負荷を最大限にすることが一般に好ましい。しかし、高密度の治療剤を有するポリマー担体は、バースト放出動態をより受け易く、その結果、時間をわたっての放出の制御が不十分である。上述のように、本明細書に記述されるデポー構造、特にデポーの制御領域フィーチャーの1つの著しい利益は、他の担体において不安定性を引き起こし得る治療剤密度であっても、治療剤放出動態を制御し減衰させることができることである。ある特定の実施形態では、治療剤負荷容量は、約1:3、1:2、1:1、3:2、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、12:1、14:1、または16:1の、治療剤の生分解性ポリマーに対する比(wt:wt)を含む。一部の実施形態では、同じまたは類似のポリマーの治療剤に対する比を依然として維持しつつ、本明細書に記述されるデポーから放出された治療剤の治療効果または効力を増大させることが望ましいと考えられる。これは塩誘導体とは対照的に、本質的に純粋な形の治療剤を使用することによって達成することができる。さらにまたは代替として、治療剤は、ある特定の薬物の治療効果を増大させることが公知のクロニジンまたはエピネフリンと混合することができる。
【0153】
患者の関節(例えば、膝関節)に埋め込まれた場合、上述の生分解性デポーは、放出の持続期間全体を通して関節を繋ぐように、関節内に置いてもよい。鎮痛薬の早期放出が回避されるように、デポーは、鎮痛薬のほとんどが放出されるまで機械的完全性および安定性の閾値レベルを有することが望ましい。上述のように、生分解性デポーにおいて治療剤の負荷を最大限にすることが望ましいと考えられるが、そのような最大化は、典型的にはデポーの機械的完全性および安定性を犠牲にする可能性がある。急性および亜急性の両方の術後疼痛期間を通してかつ膝の限られた空間に痛覚脱失をもたらすのに必要な高い投薬量の麻酔薬を考慮すると、本明細書に記述されるデポーは、膝における十分な機械的完全性および安定性を依然として維持しつつ、麻酔薬の高密度負荷を有することが望ましい。層状化構造、特に制御領域の存在は、麻酔薬の早期放出に対するいくらかの予防策をもたらす。さらに、製造プロセスにおける熱圧縮の使用は、治療領域への麻酔薬の実質的な負荷を可能にし、それと共に治療領域と制御領域との間の熱結合を創出し、それによって、デポーが膝において機械的応力に供されたときに、層剥離およびその結果制御されない薬物放出が防止される。
【0154】
一般に、埋め込まれたポリマーは、治療剤の完全送達後に完全に分解することが望ましい。完全な分解が好ましいが、それは埋め込まれたポリマーがいくらかの構造的機能または支持を提供しない限り、臨床医は機能的な目的なしに異物を残して折合いをつけなければならず、それが炎症もしくは感染の源となる可能性があるからであり、または、残りのポリマーを除去するためにだけ別の手術を行なわなければならないと考えられるからである。完全分解の代替例として、任意の残りのポリマーを、身体により完全にカプセル封入することが望ましいと考えられる。
【0155】
埋め込まれたポリマーの分解は、本質的に、以下の2つの逐次的なプロセスからなる:水溶液(即ち、生理学的流体)の拡散、その後の加水分解。分解は通常、2つの形態:(1)表面浸食;および(2)バルク分解の1つをとる。ポリマーの表面浸食は、ポリマーが表面から内向きに浸食したときに生じ、表面での加水分解浸食は、ポリマー内への水の進入よりも速い。逆に、バルク分解は、ポリマー全体にわたって生じ、水が浸透し、表面を浸食することができるよりも速く材料の内側を分解する。PLA、PGA、PLGA、およびPCLなどのポリマーは全て、バルク分解を介して体内に吸収される。
【0156】
完全な分解に必要な時間は、選択された材料およびデポーの臨床性能要件に基づいて大幅に変化する可能性がある。例えば、術後疼痛を処置し管理する場合、ポリマーデポーが治療剤(即ち、鎮痛薬)を、5から30日にわたるいずれかで放出することが望ましいと考えられる。人工関節(例えば、膝または股関節インプラント)の感染を処置しまたは予防する場合、ポリマーデポーが抗感染剤を、2から4カ月のいずれかで放出することが望ましいと考えられる。あるいは、ポリマー内に負荷された治療剤の全量が放出された場合であっても、ポリマーが、薬物放出の持続期間よりも長い期間にわたって分解することが望ましいと考えられる。例えば急速分解は、しばしばポリマーを脆くしかつ壊れ易くする可能性があり、それによって機械的性能が損なわれまたは身体からの炎症性応答を誘発させる。特に、ある特定の臨床適用例では、治療剤の実質的に全てが放出された後にのみポリマーの分解が開始される、実施形態を有することが望ましいと考えられる。
【0157】
本技術のある特定の実施形態では、内部に負荷された実質的に全ての治療剤が放出された後に、ポリマーを体内に完全に吸収させることが望ましいと考えられる。ある特定の実施形態では、この分解は、1カ月程度に短くすることができる。あるいは、他の実施形態では、完全分解は、2カ月、3カ月、4カ月、6カ月、9カ月、または12カ月程度の長さがかかることがある。一部の実施形態では、生体吸収性ポリマーは、約1カ月、約2カ月、約3カ月、約4カ月、約5カ月、または約6カ月以内で実質的にin vivoで分解する。一部の実施形態では、埋め込まれたポリマーの機械的性質が、埋込み後の最初の2カ月にわたって保存されるように、完全分解を6カ月にすることが望ましいと考えられる。
【0158】
コア酸性化
伝統的な生分解性整形外科用インプラントは、しばしば、「コア酸性化」として公知の現象に起因して、組織炎症をもたらす。例えば、図17に概略的に示されるように、1mmよりも大きい厚さを有するポリマーインプラントは、バルク浸食によって分解する(即ち、分解が、材料全体にわたって均等に生じ;材料の表面および内側の両方が、実質的に同時に分解する)。ポリマーが分解するにつれ、ラクテートがインプラントの内部領域に蓄積される。最終的に、インプラントの内部領域の高いpHにより、ラクテートは乳酸になる。蓄積された乳酸は体内に常に放出することになり、それによって炎症性応答が誘発される。例えば図18は、20日間の分解後の従来技術のポリマー錠剤の走査型電子顕微鏡(「SEM」)画像である。人工関節の内部および周りの炎症は、炎症によって誘発される骨溶解のリスクがあり、新たに埋め込まれた関節の緩みを引き起こす可能性があるので、特に懸念され得る。さらに、コア酸性化は、細胞外pHを降下させ、次いで遊離塩基ブピバカインの量を低下させる。遊離塩基ブピバカインのみが、細胞膜を形成する脂質二重層を横断してニューロンに達することができる。ブピバカインがニューロン内に入ると、ブピバカインHClのパーセントが増加する。これはナトリウムがニューロンに進入するのを遮断することによって活性になり、したがって痛覚脱失を誘発させる、ブピバカインHCl形態である。このように、細胞外pHの任意の低減(例えば、コア酸性化を介した)は、ニューロン内への鎮痛薬の移動を遅くし、それによって鎮痛薬の治療効果が低減しまたは全くなくなる。
【0159】
コア酸の程度は、大部分が、ポリマーインプラントの幾何形状および寸法によって決定される(例えば、Grizzi et al., Hydrolytic degradation of devices based on poly(dl-lactic
acid) size-dependence, BIOMATERIALS, 1995, Vol. 16 No. 4, pp. 305-11;Fukuzaki et al., in vivo characteristics of high molecular weight copoly(l-lactide/glycolide) with S-type degradation pattern for application in drug delivery systems, Biomaterials 1991, Vol. 12 May, pp. 433-37;Li et al., Structure-property relationships in the case of degradation of massive alipathic poly-(α-hydroxy acids) in aqueous media, JOURNAL OF MATERIALS SCIENCE: MATERIALS IN MEDICINE I (1990), pp.
123-130を参照されたい)。例えば、より大きなモノリシックデバイス(mmサイズの規模およびそれよりも大きい)の分解は、その内部で、その表面におけるよりもはるかに急速に進行し、内部ゾーンの自己触媒からより進行した内部分解生成物を捕捉する、ゆっくり分解するポリマーの外層をもたらす(いわゆる「S型」非線形動的分解プロファイル)。より厚いフィルムとは対照的に、1mmの厚さ未満の薄膜は、表面浸食を介して典型的には分解することになり、分解から得られたラクテートはフィルムの内部に蓄積されなくなる。薄膜は、その表面積の体積に対する高い比により、均一に分解することが公知であり、コア酸化をもたらさない(Grizzi et al.を参照されたい)。
【0160】
図18に概略的に示されるように、本技術のデポーは、麻酔薬を放出する過程で(例えば、5日、7日、10日、14日、20日、30日など)その個々の質量(麻酔および放出剤)の50%、60%、70%、または80%を失う可能性があり、その結果、その表面積の体積に対する高い比により薄膜のように振る舞う(少なくとも分解の目的で)高度に多孔質のメッシュ様の系が得られる。体液は、高度に多孔質なポリマー担体に侵入して、表面浸食を介して残りのポリマーを分解することになり、それによって、コア酸性化および結果として生じる炎症性応答が回避される。理論に拘束されないが、治療領域の薬物コアマトリクスは、分解が継続するにつれて高度に多孔質になると考えられる。例えば、図19Bおよび19Cは、それぞれ溶出の前および後の治療領域を示す走査型電子顕微鏡(「SEM」)画像である。しかし、治療剤を放出した後であっても、明確な多孔質構造は依然としてそのままであり、それを通って水および酸が有効に拡散できる。このように、約1mmよりも大きい厚さを有する本技術のデポー100は、薄膜のように分解し、意外にもコア酸性化を示さない。
【0161】
E. 放出剤
多くの埋込み可能な薬物溶出技術において、デポーは、薬物の初期の非制御バースト放出と、その後の残留物放出を提供する。これらの薬物放出動態は、ある特定の臨床適用例に望ましいと考えられるが、望ましくない場合であっても回避できない可能性がある。ポリマー担体に負荷された親水性薬物は、典型的には、生理学的流体に曝露されたときにバースト放出を提供することになる。この動力学は、制御された持続in vivo投与のために大容量の薬物を負荷することが特に望ましい場合、難題を提示する可能性がある。例えば、持続した耐久性あるin vivo薬理学的処置を達成するには数日または数週分の投薬量を埋め込むことが望ましいと考えられるが、治療剤は規定された通りに放出されることが必要不可欠であり、そうでない場合には全ペイロードの放出によって重度の合併症が患者にもたらされる可能性がある。
【0162】
流体に曝露されたときに治療剤の放出のより細かい制御を達成するために、本技術のデポー100は、放出剤を含んでいてもよい。一部の実施形態では、治療領域200および制御領域300が共に、同じまたは異なる量、濃度、および/または重量パーセンテージの、同じまたは異なる放出剤(または放出剤の混合物)とすることができる放出剤(または放出剤の混合物)を含む。一部の実施形態では、制御領域300は放出剤を含み、治療領域200は放出剤を含まない。一部の実施形態では、治療領域200は放出剤を含み、制御領域300は放出剤を含まない。少なくともこのセクションで使用される場合、「放出剤」は、治療領域200および/または制御領域300で使用され得る放出剤に当て嵌まる。
【0163】
治療領域200および/または制御領域300内の放出剤のタイプおよび/または量は、周囲の生物学的流体への治療剤の所望の放出速度に応じて変えてもよい。例えば、異なる溶解時間を持つ放出剤の選択は、放出速度に影響を及ぼすことになる。また、ポリマーの領域における放出剤の重量パーセンテージは、後でポリマーに形成される拡散開口の数およびサイズに影響を及ぼすことになり、それによってデポー100からの治療剤の放出速度が影響を受ける(例えば、放出剤の重量パーセンテージが大きくなるほど、放出はより速くなる)。選択領域での放出剤の存在も、治療剤の放出速度に影響を及ぼす。例えば、制御領域300および/または治療領域200で放出剤を持つデポーは、一般に、放出剤のないデポーと比較して、より速い速度で治療剤を放出することになる。同様に、制御領域300および治療領域200の両方における放出剤は、一般に、放出剤が制御領域にのみある場合よりも速い速度で治療剤を放出することになる。
【0164】
本技術のある特定の実施形態では、放出剤の生体吸収性ポリマーに対する層ごとの比を調節して、デポー100から放出される治療剤の速度を制御することができる。例えば、本技術の多くの実施形態では、デポー100は、制御領域200中の放出剤の重量パーセンテージとは異なる放出剤の重量パーセンテージを有する治療領域200を含む。例えば、治療領域200は、制御領域300よりも大きいまたは小さい重量パーセンテージの放出剤を有していてもよい。一部の実施形態では、制御領域300は、治療領域200中の放出剤の重量パーセンテージよりも少なくとも2倍大きい放出剤の重量パーセンテージを有していてもよい。一部の実施形態では、制御領域300は、治療領域200中の放出剤の重量パーセンテージよりも少なくとも3~20倍大きい放出剤の重量パーセンテージを有していてもよい。
【0165】
本技術の多くの実施形態では、放出剤は界面活性剤である。本明細書に記述される放出剤としての使用とは異なり、界面活性剤は通常、薬物またはポリマーの分散、凝集、および濡れ性を制御するのに使用される。基本的に、界面活性剤は、ポリマーと薬物との間の界面、または薬物と生体膜との間の界面で動作する。製剤のタイプに応じて、界面活性剤は典型的に、薬物送達のいくつかの態様において、ある役割を演じる:(1)溶液中での薬物分子との複合体形成を通して疎水性薬物を溶媒和させるエントロピーコストを低下させることによる、疎水性薬物の可溶化または安定化(C. Bell and K.A.
Woodrow, ANTIMICROB. AGENTS CHEMOTHER.,
2014, 58:8, 4855-65);(2)急速崩壊のための錠剤またはポリマーの濡れの改善(M. Irfan, et al., SAUDI PHARM. J., 2016, 24, 537-46);(3)逆ミセル、小胞、液晶分散体、ナノエマルジョン、およびナノ粒子など、コロイド状薬物送達系の形成(M. Fanun, Colloids in Drug Delivery, 2010, p. 357);ならびに(4)生体膜の透過性を変えることによる薬物の生物学的性能、およびその結果として薬物の浸入/浸透プロファイルの改善(S. Jain, et al.,
Lipid Based Vesicular Drug Delivery Systems, 2014, Vol. 2014, Article ID 574673)。
【0166】
本技術においてマイクロチャネルを形成するのに、ポリマー制御領域で放出剤を使用する独自の態様を例示するために、親水性分子を使用して薬物放出を強化する、より一般的な手法を説明することは助けになる。従来、薬物放出は、薬物と体液との間の接触を増大させ、それによって薬物放出を加速させるために、より広い表面積を創出することによって強化される。最も一般的な細孔形成機序は、コーティング層または自立型フィルムのいずれかとして、ポリマー層内の細孔形成剤として非界面活性剤親水性分子を使用することである(Kanagale, P., et al., AAPS PHARM. SCI.TECH., 2007; 8(3), E1-7)。通常、細孔は、親水性分子をポリマーとブレンドし、次いで水と接触させることにより親水性分子を除去することによって、事前に形成される。しかし、親水性分子が疎水性ポリマーとブレンドされると、分子は、親水性ドメインおよび疎水性ドメインを形成する傾向があり、これはエントロピーの増大に起因してエネルギー的に好ましい。フィルムが水と接触すると、親水性ドメインは除去され、大きい細孔に置き換えられる。この場合の薬物放出速度は、フィルムの多孔度のみによって制御され、結果的に全表面積が増大する。この場合の典型的な薬物放出曲線は、高く、制御されていない初期バーストであり、続けてその後に、非常にゆっくりと残留薬物が放出される。
【0167】
以前は、非界面活性剤親水性分子をポリマーと混合し、次いで除去した場合、多孔質構造を持つフィルムが創出される。この多孔質層は、機械的強さおよび弾性を低減させ、ある特定の適用例にはそれほど適切ではなくなる。さらに、この構造は、細孔が潰れる可能性があるのでフィルムの熱圧縮結合に耐えられない。熱圧縮中の多孔質構造の損失は、親水性分子を使用する当初の意図を否定するものであり、したがって、いかなる高い治療剤放出能力もない、稠密に充填されたフィルムが得られる。
【0168】
さらに、親水性分子が、熱圧縮中にポリマー層内にあり続ける場合、in vivoでの親水性分子の溶解は、非常に大きい細孔、直径約3~10μmの細孔の形成を引き起こす。そのような大きい細孔は、広い表面積を提供し、それによって薬物のバースト放出を引き起こす。親水性分子の使用とは対照的に、本技術における放出剤としての界面活性剤の使用は、直径が約5~20ナノメートルのマイクロチャネルの形成を可能にし、これは親水性分子の使用から得られる細孔よりも2桁小さい。このことは、拡散による、および望ましい場合には埋め込み後の非制御バースト放出のない、薬物放出の緊密な制御を可能にする。さらに、放出剤としての界面活性剤の使用により、薬剤は、使用前にポリマー中に存在したままにすることが可能になり、事前に形成された細孔は創出されない。この手法は、ポリマーの機械的性質が保存されるので特に有利であり、それによってポリマーを容易に加工しかつ異なる構成に作り込むことが可能になる。
【0169】
本技術において、放出剤は生態吸収性ポリマーに予備混合されて、ポリマーの各層が隣接しかつ稠密になるようにする。次いで、これらの層が、フィルムの機能的能力に対するいかなる悪影響もなしに熱圧縮を介して一緒に結合されたとき、デポー100が形成される。稠密に充填されたフィルムが最終的に埋め込まれると、放出剤が溶解して、治療剤の効率的な制御放出が可能になる。
【0170】
一部の実施形態では、放出剤は、ポリソルベートを含む。ポリソルベートは一般に、賦形剤および可溶化剤として医薬品工業で使用される。ポリソルベートは、ソルビタンのエトキシ化およびその後のラウリン酸によるエステル化によって形成される非イオン性界面活性剤である。ポリソルベート20[IUPAC名:ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート]は、ソルビタン分子中の4つの異なる部位の中で分配された、エトキシ化ソルビタンと20個の反復単位のポリエチレングリコールとの混合物を含有する。一般的な商品名にはTween(商標)およびTween 20(商標)(Croda International Plc、Goole、East Yorkshire、UK)およびAlkest(登録商標)TW 20(Oxiteno、Houston、TX)が含まれる。
【0171】
ポリソルベートはしばしば、水難溶性/疎水性薬物の経口バイオアベイラビリティを改善するのに利用される。例えば、ポリソルベートは、低い溶解度および/または腸管上皮透過率を保有する活性分子のバイオアベイラビリティを改善するのに使用され、この水難溶性薬物のバイオアベイラビリティは、ポリソルベートまたは類似の界面活性剤を持つ製剤において大幅に高められることが観察された(WO2008/030425;Breslin;Merck.)。Akbariらは、親水性担体ポリエチレングリコール(PEG)をポリソルベートと共に使用することにより、ポリソルベートは薬物をPEGと緊密に接触させるので、より速い経口強化型薬物放出速度がもたらされることを観察した(Akbari, J., et al., ADV. PHARM. BULL., 2015, 5(3): 435-41)。
【0172】
ポリソルベートは、油/水エマルジョンの形成を促進させる水溶性乳化剤としても機能する。例えば、薬物ファモチジンは、水中で高い溶解度を有することが公知であるが、in vivo透過率が低い。ポリソルベートは、ファモチジンのバイオアベイラビリティを高めるために経口マイクロエマルジョン製剤で使用された(Sajal Kumar Jha, et al., IJDDR, 2011, 3(4): 336-43)。ポリソルベートは、急速な薬物送達を達成する湿潤剤としても使用される。例えば、Ballらは、ポリビニルピロリドン(PVP)エレクトロスピニングナノ繊維と2.5wt%のTween 20との組合せを介したマラビロクの急速送達を達成し、わずか6分で28wt%のマラビロクの完全放出を可能にした。湿潤剤としてのTween 20の使用により、水をPVPナノ繊維マトリクスにさらに素早く浸透させることが可能になり、それによって薬物放出の速度が増大すると考えられた(Ball, C., et al., ANTIMICROB. AGENTS CHEMOTHERAPY, 2014, 58:8, 4855-65)。
【0173】
上述のように、ある特定のポリマー担体での薬物放出を改善するために、ポリソルベートなどの親水性ポリマーをこれらの担体に添加して、経口製剤におけるポリエチレングリコール(PEG)などの生体適合性ポリマーからの薬物放出を加速させまたは高めた(Akbari, J., et al., ADV. PHARM. BULL., 2015, 5(3): 435-441)。しかし、これらの製剤は、制御領域の一部として可変または持続した制御放出ではなく、親水性環境(in vivo生理学的流体)への疎水性薬物の即時放出を提供することが意図される。
【0174】
一部の実施形態では、放出剤は、Tween 20(商標)として商業的に公知のポリソルベート20である。本技術での使用に適した他の放出剤には、ポリソルベート、例えばPolysorbate 80、Polysorbate 60、Polysorbate 40、およびPolysorbate 20;ソルビタン脂肪酸エステル、例えばモノステアリン酸ソルビタン(Span 60)、トリステアリン酸ソルビタン(Span 65)、トリオレイン酸ソルビタン(Span 85)、モノオレイン酸ソルビタン(Span 80)、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、およびトリベヘン酸ソルビタン;スクロースエステル、例えばモノデカン酸スクロース、モノラウリン酸スクロース、ジステアリン酸スクロース、およびステアリン酸スクロース;ヒマシ油、例えばポリエトキシ化ヒマシ油、ポリオキシル水素化ヒマシ油、ポリオキシル35ヒマシ油、Polyoxyl 40水素化ヒマシ油、Polyoxyl 40ヒマシ油、Cremophor(登録商標)RH60、およびCremophor(登録商標)RH40;ポリエチレングリコールエステルグリセリド、例えばLabrasol(登録商標)、Labrifil(登録商標)1944;ポロキサマー;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン1800;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、例えばPolyoxyl 20ステアリルエーテル、ジエチレングリコールオクタデシルエーテル、モノステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸トリグリセロール、Polyoxyl 20ステアレート、Polyoxyl 40ステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノイソステアレート、ポリエチレングリコール40ソルビタンジイソステアレート;オレイン酸;デソキシコール酸ナトリウム;ラウリル硫酸ナトリウム;ミリスチン酸;ステアリン酸;ビタミンE-TPGS(ビタミンE d-アルファ-トコフェロールポリエチレングリコールスクシネート);飽和ポリグリコール化グリセリド、例えばGelucire(登録商標)44/14およびGelucire(登録商標)50/13;ならびにポリプロポキシ化ステアリルアルコール、例えばAcconon(登録商標)MC-8およびAcconon(登録商標)CC-6が含まれる。
【0175】
拡散開口
放出剤の溶解によって治療領域200および/または制御領域300内で形成されたチャネルまたは空隙は、複数の相互接続された開口もしくは細孔、および/または複数の相互接続された経路の形をとってもよい。一部の実施形態では、チャネルの1つまたは複数は、それぞれの治療および/または制御領域内で個別の経路、チャネル、または開口の形をとってもよい。治療および制御領域の化学および材料組成に応じて、形成されたチャネルの1つまたは複数は、(a)治療領域内の第1の端部からやはり治療領域内の第2の端部まで;(b)治療領域内の第1の端部から、治療領域および制御領域の界面にある第2の端部まで;(c)治療領域内の第1の端部から制御領域内の第2の端部まで;(d)治療領域内の第1の端部から、制御領域を経て、制御領域の外面にある第2の端部まで;(e)治療領域および制御領域の間の界面にある第1の端部から、制御領域を経て、制御領域内の第2の端部まで;(f)治療領域および制御領域の間の界面にある第1の端部から、制御領域の外面にある第2の端部まで;(g)制御領域内の第1の端部から、やはり制御領域内の第2の端部まで;および(h)制御領域内の第1の端部から、制御領域の外面にある第2の端部まで、延びてもよい。さらに、チャネルの1つまたは複数は、治療領域および/または制御領域の2つまたはそれよりも多くのマイクロ層の間に延びてもよい。
【0176】
F. 構成成分比
一部の実施形態では、制御領域300内のポリマーの、制御領域300内の放出剤の比は、少なくとも1:1である。一部の実施形態では、比は、少なくとも1.5:1、少なくとも2:1、少なくとも2.5:1、または少なくとも3:1であってもよい。
【0177】
一部の実施形態では、デポー100内の治療剤の質量の、デポーのポリマー質量に対する比は、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、少なくとも11:1、少なくとも12:1、少なくとも13:1、少なくとも14:1、少なくとも15:1、または少なくとも16:1である。
【0178】
一部の実施形態では、治療領域200における放出剤対ポリマー対治療剤の比は約0.1:10:20から約2:10:20であり、一部の実施形態では、約0.1:10:20から約1:10:20であり、一部の実施形態では約0.1:10:20から約0.5:10:20である。
【0179】
一部の実施形態では、制御領域300における放出剤のポリマーに対する比は、約1:2から約1:10である。一部の実施形態では、制御領域の1つまたは複数は、1:2の放出剤のポリマーに対する比を有していてもよく、他の制御領域の1つまたは複数は、1:10の放出剤のポリマーに対する比を有していてもよい。
【0180】
G. ベース領域を含む、選択されたデポーの実施形態
一部の実施形態では、デポー100は、治療剤を全方向に放出するように構成されてもよい。他の実施形態では、治療剤の放出が、ある特定の方向に限定されるように、デポーは、治療領域200および/または制御領域300の1つまたは複数の部分を覆う1つまたは複数のベース領域を含んでいてもよい。ベース領域は、デポーの構造的支持を提供してもよい。ベース領域は、デポーに指向的放出能力を提供するように構成された、低多孔度、高密度の生体吸収性ポリマーを含んでいてもよい。この構成では、ベース領域のこの低多孔度、高密度ポリマー構造のかなりの不透過性が、治療領域200から放出された薬剤の通過を遮断しまたは妨げる。したがって、治療領域200から放出された薬剤は、特に制御領域300での拡散開口の創出後、ベース領域とは反対の制御領域300を通る、それほど抵抗のない経路をとる。
【0181】
ベース領域を有する本技術のデポー100の例を、図16Aに示す。ベース領域は、多重領域デポーに指向性放出能力を提供するように構成された、低多孔度、高密度の生体吸収性ポリマーを含んでいてもよい。この構成では、ベース領域における低多孔度、高密度のポリマー構造は、治療領域200からの薬剤放出の通過を遮断しまたは妨げる。したがって、治療領域200から放出された薬剤は、特に制御領域でのチャネルの創出後、ベース領域とは反対の制御領域を通る、より抵抗が少ない経路をとる。追加の実施形態では、多重領域デポーの他の領域の多孔度を変化させて、治療剤の放出を容易にすることができる。例えば、この実施形態では、図16Aに示される多重領域デポーのベース領域、治療領域200、および制御領域300は、ベース領域の低多孔度から治療剤および制御領域のより高い多孔度に及ぶ異なる多孔度を有して、多重領域デポーからの治療剤の放出を容易にしてもよい。追加の実施形態では、多重領域デポーの縁部または個々の領域のいずれかの部分における多孔度は、治療剤の放出を適正に調節しまたは操作するために変えることができる。
【0182】
図16Bに示す実施形態では、多重領域デポーは、治療剤の両側または二方向放出を提供する。この二方向放出能力は、高密度ベース領域に対する対称領域形成を経て達成され、上述のように、治療剤はそれほど抵抗のない経路に沿って放出され、それによって高密度ベース領域から離れて放出される。より詳細には、ベース領域の一方の面には制御領域300aおよび治療領域200aが配置され、ベース領域の他方の面に制御領域300bおよび治療領域200bが配置され、これらは他方の面上の対に実質的に類似している。ベース領域の両側のこれらの対は、治療剤の実質的に同等な二方向放出をもたらすように構成される。代替の実施形態では、等しくない二方向放出(即ち、治療剤および/または各方向での放出速度が同じではない)は、非対称領域形成によって達成されてもよく、それによってベース領域の両側にある制御領域および治療領域の対は、実質的に異なる。
【0183】
追加の実施形態では、多重領域デポーは、多数の治療剤を放出することが望ましいと考えられる。この能力は、集学的薬理療法が示されたときに特に有用であり得る。図16Cに示される実施形態では、多重領域デポーは、最上または最外制御領域300a、制御領域に隣接する第1の治療領域200a、第1の治療領域200aに隣接する第2の治療領域200b、および第2の治療領域200bに隣接するベース領域を含む。この実施形態では、第1の治療領域200aおよび第2の治療領域200bは、それぞれ第1の治療剤および第2の治療剤を含む。ある特定の実施形態では、第1および第2の治療剤は異なる。一実施形態では、多重領域デポーは、補完的なまたは相乗的な利益が得られるよう、第1および第2の治療剤を逐次、同時に、または重なり合う形で放出するように構成される。この構成では、制御領域300aの存在および機能は、一貫していること、および望む場合には、下に存在する多数の治療剤の実質的に均等な放出を、確実なものにしてもよい。多くの従来の薬物送達デバイスは、異なる分子量、溶解度などを持つ多数の薬物の均等な放出を提供できないので、異なる治療剤の実質的に均等な放出を達成する際の制御領域の役割は、著しい利点であり得る。
【0184】
一部の実施形態では、第1の治療剤および第2の治療剤は同じ治療剤であるが、それぞれ第1および第2の治療領域に異なる相対濃度で存在しており、異なる投薬量が投与されることを表している。一部の実施形態では、第1および第2の治療領域の第1および第2の治療剤はそれぞれ、臨床的関連性も関係も少しも持たなくてもよい。例えば、全関節置換術(例えば、全膝関節形成術、全股関節形成術)または他の外科的手技の部分として使用される実施形態では、手術の後に数日間または数週間にわたり術後疼痛を処置しかつより良く管理するための鎮痛薬(例えば、局所麻酔薬)、および手術の後に数週間または数カ月にわたり手術または埋め込まれた補綴(存在する場合)に関連した手術部位感染を処置しまたは予防するための抗生物質の両方を、手術部位付近に投与することが臨床的に望ましいと考えられる。この実施形態では、第1の治療領域200aは、手術後3日間以上かつ最長15日間にわたり疼痛緩和を実質的に提供するために、治療有効用量の局所麻酔薬を含んでいてもよく、第2の治療領域200bは、手術後最長3カ月間にわたり手術部位付近に最小有効濃度の抗生物質を実質的に提供するために、治療有効用量の抗生物質を含んでいてもよい。
【0185】
一部の実施形態では、図16Dに示されるように、デポー100は、第1の投薬領域および第2の投薬領域を含み、第1および第2の投薬領域は、第1および第2の投薬レジメンに対応する。より詳細には、各投薬領域は、制御領域および治療領域の対を含み、各対は、所定の投薬レジメンによる治療領域200a、200bからの治療剤の制御放出のために構成される。例えば、術後疼痛の処置および/または管理では、多重領域デポーは、手術後少なくとも2~3日間にわたり、50~400mg/日の局所麻酔薬(例えば、ブピバカイン、ロピバカイン、および同様のもの)を一貫して放出し(即ち、第1の投薬レジメン)、次いで、次の5から10日間にわたり、より遅い速度(例えば、25~200mg/日)で局所麻酔薬を放出する(即ち、第2の投薬レジメン)ことが望ましいと考えられる。この例示的な実施形態では、第1の投薬領域と、その内部の制御領域および治療領域の対とを、規定された第1の投薬レジメンに一致した形で多重領域デポーが第1の治療剤を放出するようにサイズ決めされ、寸法決めされ、構成される。同様に、第2の投薬領域と、その内部の制御領域および治療領域の対とは、規定された第2の投薬レジメンに一致した形で多重領域デポーが第2の治療薬を放出するようにサイズ決めされ、寸法決めされ、構成される。別の実施形態では、第1および第2の投薬領域は、異なる治療剤を利用する投薬レジメンに対応してもよい。一実施形態では、多重領域デポー100は、補完的なまたは相乗的な利益が得られるよう、第1および第2の投薬レジメンを逐次、同時に、または重なり合う形で投与するように構成される。このシナリオの代替の実施形態では、第1および第2の投薬レジメンはそれぞれ、臨床的関連性も関係も少しも持たなくてもよい。例えば、図16Cに示される実施形態に関連して上記にて記述されたように、第1の投薬領域を介して投与される第1の投薬レジメンは、術後疼痛管理を処置しまたは管理してもよく、第2の投薬領域を介して投与される第2の投薬レジメンは、手術部位または埋め込まれた補綴(存在する場合)の感染を処置しまたは予防してもよい。
【0186】
本発明のある特定の実施形態は、遅延放出剤を利用する。図16Eに示されるように、デポー100は、多重領域デポーに対してかつ放出剤を含む制御領域300に隣接して、最外(即ち、最上)領域として遅延領域を含んでいてもよい。遅延領域は、制御領域内で生理学的流体が放出剤に到達しそれを溶解することに対する障壁となる。一実施形態では、遅延領域は、生体吸収性ポリマーに混合された遅延放出剤を含んでいてもよいが放出剤は含まない。遅延放出剤は、本発明の多重領域デポーで使用される放出剤とは異なる。遅延放出剤は、放出剤の場合よりもゆっくりと生理学的流体に溶解し、したがって、多重領域デポーの埋込み後、定められた時間の量にわたって治療剤を放出する可能性をもたらす。遅延放出剤が遅延領域に存在しない実施形態では、生理学的流体が遅延領域を横断しかつ放出剤と接触するのに、より長い時間がかかる可能性がある。生理学的流体が制御領域と接触して初めて放出剤は溶解し始め、したがって、治療剤の制御放出が可能になる。遅延放出剤は、有利には、治療剤が即座に必要とされない本発明の治療方法で使用され得る。例えば神経ブロック剤は、外科的手技の前に注射されてもよく、手術部位の周りの領域全体を麻痺させる。局所麻酔薬の制御放出は、神経ブロックが切れるまで、そのような手術で必要ではない。
【0187】
本発明で使用される、適切な遅延放出剤は、脂肪酸エステルなどの薬学的に許容される疎水性分子である。そのようなエステルには、限定するものではないが、ミリストレイン酸、サピエン酸、バクセン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、パルミチン酸、エルカ酸、オレイン酸、アラキドン酸、リノール酸、リノエライジン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸のエステルが含まれる。好ましいエステルには、ステアリン酸メチルエステル、オレイン酸エチルエステル、およびオレイン酸メチルエステルが含まれる。他の適切な遅延放出剤には、トコフェロールおよびトコフェロールのエステル、例えばニコチン酸トコフェリルおよびリノール酸トコフェリルが含まれる。
【0188】
H. 例示的な製造方法
本技術のデポーは、生分解性、生体吸収性ポリマー層の様々な組合せを使用して構築されてもよく、これらの層は、意図される臨床適用例(複数可)の要件を満たすために、治療剤、放出剤、遅延放出剤などを様々な組合せおよび濃度で含んでいてもよい。一部の実施形態では、ポリマー層は、特定の構造の多層フィルムを形成する任意の数の公知の技術を使用して、構築されてもよい。例えば、生体吸収性ポリマーおよび治療剤は、可溶化し、次いで、噴霧コーティング、浸漬コーティング、溶媒キャスティング、および同様のものを介してフィルムに付着させることができる。代替の実施形態では、制御層および/または治療剤層として使用されるポリマー層を、エレクトロスピニングされたナノ繊維から構築することができる。
【0189】
本明細書に記述されるデポー100は、治療領域(および/または副領域)および/または制御領域(および/または副領域)を互いの上に所望の順序で配置し、得られた多層構成を熱圧縮してこれらの層を一緒に結合することにより、構築されてもよい。熱圧縮は、当技術分野で公知の任意の適切な装置を使用して達成されてもよい。一実施形態では、熱圧縮プロセスは、熱圧縮器(Kun Shan Rebig Hydraulic Equipment Co. Ltd.、China)を利用し、治療領域200および/または制御領域300の積層アセンブリを、室温よりも高い温度(例えば、少なくとも30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、または120℃など)および約0.01MPaから約1.0MPa、または約0.10MPaから約0.8MPa、または約0.2MPaから約0.6MPaの圧力で熱圧縮することからなる。本発明者らは、圧縮中の治療および制御領域を加熱すること(別々にまたは積層後)が、デポー100における治療剤の密度を増大させることを発見した。本発明者らは、より低い圧力での熱圧縮が、より高い薬物密度を可能にすることも発見した。
【0190】
治療投薬のニーズ、解剖学的標的などに応じて、デポー100を、加工し、成形し、およびその他の手法で作出して、臨床医による体内への埋込みにより患者に投与することができる形状因子を生成することができる。例えば、フィルムの様々な構成は、事前に成形された切欠きを持つ治具を使用することによって、所望の形状に手作業で切断することによって、またはそれらの両方によって達成されてもよい。体内に埋め込むために多層フィルムから生成可能な形状因子のいくつかは、細片、リボン、フック、棒、チューブ、パッチ、コルクスクリュ形状のリボン、部分または完全リング、くぎ、ネジ、鋲、リベット、スレッド、テープ、織られた形、T字形アンカー、ステープル、ディスク、ピロー、バルーン、ブレイド、先細り形状、楔形、ノミ形状、キャッスル形態(castellated form)、ステント構造、縫合バットレス、コイルバネ、およびスポンジを含む。デポー100は、上述の形状因子の構成要素に加工されてもよい。例えばデポー100は、巻かれてチューブに、ネジに、鋲に、または同様のものに組み込まれてもよい。織られた実施形態の場合、デポー100は、多層織フィルムに組み込まれてもよく、この場合、使用されるフィラメントの一部は本発明のデバイスではない。一例において、デポー100は、Dacron、ポリエチレン、または同様のものと相互に織り交ぜられる。
【実施例
【0191】
III. 実施例
下記の実施例は、例示として提供され、限定するものではない。
【0192】
(実施例1)
生体吸収性ポリマー/薬物フィルムの調製。高いペイロード、局所麻酔薬ブピバカインを含有する本技術の2つのデポーを、下記の手順に従い調製した。
【0193】
試料デポーのそれぞれは、図5に示す構成を有する熱圧縮された多層フィルムからなるものであった。治療領域は単層からなり、2つの内側制御層(治療層に最も近い、例えば図5の302bおよび302cであり、以下の表4では「制御層A」と呼ぶ)と2つの外側制御層(治療領域から最も遠く、例えば図5の302aおよび302dであり、表4では「制御層B」と呼ぶ)との間に挟まれていた。治療領域および制御領域の構成成分を表4に詳述する。
【表4】
【0194】
治療領域構成要素。治療領域は、ポリマー、放出剤、麻酔薬、および3.15mgのアセトン(Merck;Kenilworth、NJ)を、ガラスバイアル内で合わせ、完全に混合することによって調製した。得られたブレンドを、平板上に注ぎ、多数回圧縮して、乾燥により厚い膜(約1mmの厚さ)を形成した。
【0195】
制御領域構成要素。制御領域は、ポリマー、放出剤、および4.7mgのアセトン(Merck;Kenilworth、NJ)をガラスバイアル内で合わせ、完全に混合することによって調製した。得られたブレンドを平板上に注ぎ、フィルムアプリケーターで引き、乾燥により薄膜(<200μmの厚さ)を形成した。
【0196】
試料デポーの場合、単層治療領域と、制御領域を含む4層とを整列させ、熱圧縮器により圧縮した。薄膜を切断して、全膜厚が<1.2mmである25mm×15mm試料を形成した。
【0197】
ブピバカインデポーのin vitro薬物放出試験。この手順の目的は、生体吸収性ポリマーデポーから、1×PBSの受容流体へのブピバカインの放出を測定することであった。各放出実験を、二連で実施した。in vitro放出手順は、受容流体を含有する装置内に公知のサイズのフィルムを配置することからなるものであった。in vitro放出装置は、200mLのガラス瓶からなるものであった。100mLの量の受容流体を、各試料瓶に加えた。放出研究中、装置は、37±2℃で維持した水浴内に入れた。所定の間隔で、受容流体の試料を取り出し、UV-可視分光光度計によってブピバカイン濃度に関して分析した。
【0198】
図20は、有効に低減させた初期バースト効果を有するデポーに関する薬物放出プロファイルを示し、薬物の所望の一貫した制御放出を実証した。
【0199】
(実施例2A)
生体吸収性ポリマー/薬物フィルムの調製。局所麻酔薬ブピバカインを含む、本技術の2つのデポーは、本実施例のデポーが互いの上に積層された実施例1のデポーの2つを含みかつ熱圧縮されて約2mmの全膜厚を有する新たなより厚い試料を形成すること以外、実施例1に記述された通りに調製した(例えば、図6に示した構成を参照)。
【0200】
ブピバカインデポーのin vitro薬物放出試験。デポーのin vitro薬物放出試験を、実施例1に記述した通りに行った。
【0201】
放出プロファイル。図21は、ブピバカインフィルムの平均累積用量プロファイルを示す。グラフは、500時間超にわたる制御放出を示し、最初の24時間の放出は約20%である。
【0202】
(実施例2B)
生体吸収性ポリマー/薬物フィルムの調製。局所麻酔薬ブピバカインを含む、本技術の2つのデポーは、本実施例のデポーが互いの上に積層された実施例1のデポーの3つを含みかつ熱圧縮されて約3mmの全膜厚を有する新たなより厚い試料を形成すること以外、実施例1に記述された通りに調製した(例えば、図7に示した構成を参照)。
【0203】
ブピバカインデポーのin vitro薬物放出試験。デポーのin vitro薬物放出試験を、実施例1で記述した通りに行った。
【0204】
放出プロファイル。図22は、ブピバカインフィルムの平均累積用量プロファイルを示す。グラフは、500時間超にわたる制御放出を示し、その最初の24時間の放出は約20%である。
【0205】
(実施例3)
生体吸収性ポリマー/薬物フィルムの調製。局所麻酔薬ブピバカインを含む本技術の4つのデポーを、以下に記述する通りに調製した。
【0206】
試料デポーのそれぞれは、異なる制御領域によりカプセル封入された、図5に示されるものに類似した内側デポーで形成された、熱圧縮された多層フィルムからなるものであった(以下に記述する)。各試料デポーの内側デポーは、2つの内側制御層(治療領域に最も近く、例えば図5の302bおよび302cであり、以下の表5では制御層Aと呼ぶ)と2つの外側制御層(治療領域から最も遠く、例えば図5の302aおよび302dであり)、表5では制御層Bと呼ぶ)との間に挟まれた治療領域(10個の熱圧縮治療層で形成される)からなるものであった。治療領域および制御領域の構成成分を、表5に詳述する。
【表5】
【0207】
治療領域。治療領域の構成成分(上記表5参照)を、ガラスバイアルに加え、完全に混合した。得られたブレンドを平板上に注ぎ、フィルムアプリケーターで引き、乾燥により薄膜を形成した(<200μmの厚さ)。
【0208】
制御領域。制御領域の構成成分(上記表5参照)を、ガラスバイアルに加え、完全に混合した。得られたブレンドを平板上に注ぎ、フィルムアプリケーターで引き、乾燥により薄膜を形成した(<200μmの厚さ)。
【0209】
各試料フィルムごとに、10個の薬物層(それぞれ最初は<200μmの厚さ)および4つの制御層を整列させ(制御B-制御A-10個の治療層-制御A-制御B)、熱圧縮器(Kun Shan Rebig Hydraulic Equipment Co. Ltd.;People’s Republic of China)により圧縮した。得られた薄膜を切断して、全膜厚が<0.2mmである20mm×20mmの三角形の試料を形成した。三角形の試料をさらに整列させ、(a)両側の制御層A(即ち、2つの追加の制御層)、(b)両側の制御層B(即ち、2つの追加の制御層)、(c)両側の制御層Aの2つ(即ち、4つの追加の制御層)、(d)両側の制御層Bの2つ(即ち、4つの追加の制御層)で完全にカプセル封入した。次いで得られたアセンブリを、熱圧縮器(Kun Shan Rebig Hydraulic Equipment Co. Ltd.;People’s Republic of China)により圧縮した。
【0210】
ブピバカインデポーのin vitro薬物放出試験。この手順の目的は、生体吸収性ポリマーデポーから1×PBSの受容流体への、ブピバカインの放出を測定することであった。各放出実験を、二連で実施した。in vitro放出手順は、受容流体を含有する装置内に公知のサイズのフィルムを配置することからなるものであった。in vitro放出装置は、20mLまたは100mLのいずれかのガラス瓶からなるものであった。12mLまたは50mLの量の受容流体を、各試料瓶に加えた。放出研究中、装置は、37±2℃で維持した水浴内に入れた。所定の間隔で、受容流体の試料を取り出し、UV-可視分光光度計によってブピバカイン濃度に関して分析した。
【0211】
放出プロファイル。図23は、ブピバカインフィルムの平均累積用量プロファイルを示す。グラフは、構成のいくつかに関する、1500時間超にわたる制御放出を示す。
【0212】
(実施例4)
本技術の試料デポーを、生きているウサギの皮下に埋め込んだ(ウサギ当たり1つのデポー)。デポーを、皮下ポケットに配置した。
【0213】
試料デポーのそれぞれは、図5に示される構成を有する、熱圧縮された多層フィルムからなるものであった。治療領域は、単層からなり、2つの内側制御層(治療層に最も近い、例えば図5の302bおよび302c)と2つの外側制御層(治療領域から最も遠い、例えば図5の302aおよび302d)との間に挟まれた。
【0214】
本実施例は、それぞれが異なるポリマーを利用するデポーの2つの群を試験した。A群のデポーは、ポリ(DL-ラクチド-グリコリド-ε-カプロラクトン)を60:30:10のモル比で含み、B群のデポーは、ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)を50:50のモル比で含んでいた。各群は、低、中、または高用量のブピバカインHClを有するデポーを含んでいた。
【0215】
A群のデポーの場合、各内側制御層は、3.9mg、4.0mg、または4.7mgのポリマー(それぞれ、低、中、および高用量群の場合)、および1.9mg、2.0mg、または2.3mgの放出剤(ポリソルベート20)(それぞれ、低、中、高用量群の場合)からなるものであった。各外側制御層は、5.3mg、5.5mg、または6.3mgのポリマー(それぞれ、低、中、および高用量群の場合)、および1.9mg、2.0mg、または2.3mgの放出剤(ポリソルベート20)(それぞれ、低、中、および高用量群の場合)からなるものであった。
【0216】
A群のデポーの場合、治療領域は、71.5mg、152.6mg、または269mgのポリマー(それぞれ、低、中、および高用量群の場合)、34.9mg、74.6mg、または131.5mgの放出剤(ポリソルベート20)(それぞれ、低、中、および高用量群の場合)、および142.9mg、305.2mg、または538.1mgの局所麻酔薬(ブピバカインHCl)からなるものであった。
【0217】
B群のデポーの場合、各内側制御層は、4.7mg、5.1mg、または5.3mgのポリマー(それぞれ、低、中、および高用量群の場合)、および2.3mg、2.5mg、または2.6mgの放出剤(ポリソルベート20)(それぞれ、低、中、および高用量群の場合)からなるものであった。各外側制御層は、6.4mg、6.9mg、または7.3mgのポリマー(それぞれ、低、中、および高用量群の場合)、および0.6mg、0.7mg、または0.7mgの放出剤(ポリソルベート20)(それぞれ、低、中、および高用量群の場合)からなるものであった。
【0218】
B群のデポーの場合、治療領域は、87.0mg、171.1mg、または317.7mgのポリマー(それぞれ、低、中、および高用量群の場合)、42.5mg、83.6mg、または155.2mgの放出剤(ポリソルベート20)(それぞれ、低、中、および高用量群の場合)、および173.9mg、342.2mg、または635.4mgの局所麻酔薬(ブピバカインHCl)からなるものであった。
【0219】
A群およびB群のそれぞれにおいて、低用量デポーは約20mm×20mm×<1mm(例えば、0.89mmおよび0.9mm)であり、中用量デポーは約20mm×20mm×<2mm(例えば、1.8mmおよび1.6mm)であり、高用量デポーは約20mm×20mm×<3mm(例えば、約2.7mmおよび約2.8mm)であった。
【0220】
ブピバカイン濃度分析用の採血を、28日目まで収集した。
【0221】
A群
A群のデポーを、ウサギ3匹/用量群に投与し、PK試料を28日目まで収集した。各用量ごとの群平均データの片対数プロットを、図24Aに示す。用量とは無関係に、生成物は、最初の72時間以内にピーク曝露を示し、次いで用量により決定される曝露のプラトーになり(用量が高くなるほど、プラトーは長くなる)、その後、より急速な終末クリアランスになる。ブピバカインの放出は、各ウサギごとに、一貫した類似のプロファイルにより急速であり、最初の72時間にわたって中程度の変動性がある。
【0222】
A群に関するin vitro薬物動態(「PK」)プロファイルを、図24Bに示す。最初の72から96時間を通した初期分布相の半減期は、一般に、3つの用量強度(インプラントサイズ)を通して一貫しており、全てのウサギに関してTmaxが最初の24時間以内に生じ、メジアンTmaxは4~8時間の間であった。高用量に関するピーク曝露(Cmax)は、17.6%という低いCV%を示した。このデータは、TKA手術後の不快が最大である期間中、ブピバカインの制御された初期急速放出を示すと考えられる。曝露プロファイルは、72時間から少なくとも436時間まで安定であった。終末相半減期は、特に終末相t1/2が17.4時間である高用量において、ブピバカインのより固有の半減期を示し始めた。これはデポーが、21日目までに薬物をほぼ完全に放出したことを示唆すると考えられる。
【0223】
高用量、A群のデポーは、3日目から18日目まで平均曝露が一貫しており、一方、中および低用量のデポーは、3日目から14日目まで一貫していた。3~14日目の中および高用量群の間で曝露に有意差はなく、一方、低用量は、この期間中の曝露レベルのほぼ半分であった。
【0224】
B群
製剤50:50コポリマーを、ウサギ3匹/用量群に投与し、PK試料を672時間(28日目)まで収集した。各用量ごとの群平均データの片対数プロットを、図24Cに提示する。生成物は、用量と無関係に、最初の72時間以内にピーク曝露を示し、次いで曝露が徐々に低下し、その後、約19~21日目の曝露の2次ピークに関連した2次高速放出になる。2次ピークの後、ブピバカイン曝露は、用量に応じて異なる速度で低下した(用量が低くなるほど、クリアランスは速くなる)。図24Cは、群平均(SD)を強調し、最初の96時間を通して、低用量(126mg)での個々のウサギがパネルAに、中用量(252mg)がパネルBに、高用量(420mg)がパネルCにある。ブピバカインの放出は、最初の72時間にわたる中程度の変動性で、各ウサギごとに、一貫した類似のプロファイルをともなって急速である。
【0225】
in vitro薬物動態プロファイルを図24Dに示す。50:50コポリマーは、631ターポリマーのような初期分布半減期を示さなかったが、全てのウサギに関してTmaxが最初の24時間以内に生じ、メジアンTmaxは、若干時間が経った、16~20時間の間で生じた。ピーク曝露(Cmax)は、5.99%という非常に低いCV%を示した。このデータは、急性術後疼痛期間(即ち、TKA手術後の不快が最大である期間)中に、ブピバカインの制御された初期急速放出、その後、亜急性術後疼痛期間を通して放出速度がさらに徐々に低下することを示すと考えられ、これはその同じ期間中の疼痛の推定される着実な低下と一致する。急性術後疼痛期間中の放出速度の着実な低下を有するこの放出プロファイルは、放出速度状態が術後疼痛期間全体を通して実質的に一定である631ポリマー製剤の放出速度とは対照的である。
【0226】
3つの用量レベルの全ては、3日目から18日目の期間にわたり曝露をゆっくりと減少させた。
【0227】
(実施例5)
本技術の2つの試料デポーを、生きているイヌの膝関節の関節内腔に埋め込んだ。外科医は、内側および外側傍膝蓋骨関節切開術を行なって、1つの試料デポーを内側溝に挿入し、1つの試料デポーを外側溝に挿入した。デポーを、4-0 PDS II縫合糸により所定位置に固着した。2匹のイヌは、本研究の被験体であった。
【0228】
試料デポーのそれぞれは、図5に示される構成を有する、熱圧縮された多層フィルムからなるものであった。治療領域は、単層からなり、2つの内側制御層(治療層に最も近く、例えば図5の302bおよび302cである)と2つの外側制御層(治療領域から最も遠く、例えば図5の302aおよび302dである)との間に挟まれた。各内側制御層は、5.7mgの生体吸収性ポリマー(60:30:10ターポリマー、ポリ(DL-ラクチド-グリコリド-ε-カプロラクトン))および2.8mgの放出剤(ポリソルベート20)からなるものであった。各外側制御層は、7.7mgの生体吸収性ポリマー(60:30:10ターポリマー、ポリ(DL-ラクチド-グリコリド-ε-カプロラクトン))および0.8mgの放出剤(ポリソルベート20)からなるものであった。
【0229】
治療領域は、118mgの生体吸収性ポリマー(60:30:10ターポリマー、ポリ(DL-ラクチド-グリコリド-ε-カプロラクトン))、57.6mgの放出剤(ポリソルベート20)、および235.9mgの局所麻酔薬(ブピバカインHCl)からなる単層を含んでいた。
【0230】
デポーのそれぞれは、約15mm×約25mm×約1mmであった。
【0231】
埋込み後、イヌを所定の間隔で評価して、滑液および血漿中のブピバカインの術後薬物動態(PK)プロファイルを決定した。血漿中のブピバカインのPK値(即ち、全身ブピバカインレベルを表す)の場合、デポー埋込み後の計画された間隔で血液を採取した。血漿流体試料に関するPK結果を、図25に示す。
【0232】
図25に示されるように、デポー100は、最初の約3日間にわたり、初期制御バーストを放出し、その後、残りの11日間にわたって先細りする放出となった。
【0233】
(実施例6)
本技術の3つの試料デポーを、生きているヒツジの膝関節の関節内腔に埋め込んだ。外科医は、内側および外側傍膝蓋骨関節切開術を行なって、1つの試料デポーを内側溝に挿入し、2つの試料デポーを外側溝に挿入した。外側溝のデポーを、埋込み前に隣合せで縫合して、溝内で互いに対して所定位置にデポーを保持した。次いでデポーを、4-0 PDS II縫合糸により関節包組織に所定位置で固着させた。
【0234】
試料デポーのそれぞれは、図5に示される構成を有する、熱圧縮された多層フィルムからなるものであった。治療領域は、単層からなり、2つの内側制御層(治療層に最も近い、例えば図5の302bおよび302cである)と2つの外側制御層(治療領域から最も遠い、例えば図5の302aおよび302dである)との間に挟まれた。各内側制御層は、5.3mgの生体吸収性ポリマー(ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)、モル比50:50で)および2.6mgの放出剤(ポリソルベート20)からなるものであった。各外側制御層は、7.2mgの生体吸収性ポリマー(ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)、モル比50:50で)および0.7mgの放出剤(ポリソルベート20)からなるものであった。
【0235】
治療領域は、118.1mgの生体吸収性ポリマー(ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)、モル比50:50で)、57.7mgの放出剤(ポリソルベート20)、および236.3mgの局所麻酔薬(ブピバカインHCl)からなる単層を含んでいた。
【0236】
デポーのそれぞれは、約15mm×約25mm×約1mmであった。
【0237】
埋込み後、ヒツジを1、4、8、15、および30日目に評価して、滑液および血漿中のブピバカインの術後薬物動態(PK)プロファイルを決定した。
【0238】
血漿中のブピバカインのPK値(即ち、全身ブピバカインレベルを表す)の場合、全ての動物において、1mLの血液を、デポーの埋込みから1、2、4、8、12、16、20、24、および48時間後に採取し、次いで48時間ごとに(以前の日に採取したときと同じ時間に、±1時間)、屠殺前の28日まで採取した。血漿流体試料に関するPK結果を、図26Aに示す。図示されるように、全身血漿中ブピバカイン濃度は、最初の2~4日間にわたり初期制御バーストを示し、その後、残りの期間では先細りの放出を示した。
【0239】
滑液中のブピバカインのPK値では(即ち、局所ブピバカインレベルを表す)、最小限の0.5mLの滑液を、0時間(即ち、手術直前)、24時間、96時間、および192時間で関節から吸引した。滑液試料に関するPK結果を、図26Bに示す。図示されるように、局所滑液中濃度は、最初の2~4日間にわたる初期制御バーストを示し、その後、残りの期間で先細りの放出を示した。
【0240】
図26Cは、時間をわたっての血漿中ブピバカイン濃度対滑液中ブピバカイン濃度を示すプロットである。図26Cで実証されるように、PK値は、従来のin vitroおよびin vivo研究で達成された放出プロファイルを説明し、最初の2~4日間にわたる初期制御バーストは、急性術後疼痛期間中にブピバカインのかなりの投薬量を提供し、その後に続く先細りの放出は、亜急性術後疼痛期間中に治療投薬量を提供する。図示されるように、局所ブピバカインレベルは、全身ブピバカインレベルよりも一桁大きかった。それに対応した高い全身レベルなしに、ブピバカインの高い局所濃度を達成することにより、全身毒性のリスクなしに最適化された痛覚脱失が可能になる。
【0241】
IV. 整形外科手術に関連した術後疼痛を処置するために選択されたシステムおよび方法
本技術のデポー100を使用して、上述のように送達される治療剤の性質に応じて様々な整形外科的損傷または疾患を処置してもよい。治療剤は、処置される医学的状態に応じて、患者の身体の特定の領域に送達されてもよい。本技術のデポー100は、特定の状態の処置のために治療剤の制御された持続放出をもたらすように、患者の体内の標的組織(即ち、骨、軟組織など)の近傍にin vivoで置いてもよい。この埋込みは、特定の状態を急性的に処置するための手術または介入に関連付けられてもよく、それによってデポーは、手術または介入の完了後の慢性の持続した薬理学的処置を可能にする。デポーは、自立型要素であってもよく、または介入もしくは手術に関連した埋込み可能なデバイスもしくは補綴の一部に連結されもしくはその一部として一体化されてもよい。
【0242】
それを必要とする患者において有効になる治療剤の量は、状態の特定の性質に依存することになり、当技術分野で公知の標準の臨床技法により決定することができる。さらに、in vitroまたはin vivoアッセイが、最適な投薬量範囲を特定するのを助けるため、必要に応じて用いられてもよい。任意の特定の個体に関する特定の用量レベルは、薬物の活性、年齢、体重、全体の身体的および精神的健康状態、遺伝因子、環境影響、性別、食事、投与時間、投与場所、排泄速度、および処置される特定の問題の重症度を含む様々な因子に依存することになる。
【0243】
本技術の一部の態様は、臨床医による埋込みのために提供される複数のデポー(そのそれぞれは、本明細書に記述されるデポーのいずれかにすることができる)を含むシステムを含む。このシステムにおいて、各デポーは、デポーの埋込み部位の近傍の組織への治療剤の制御放出のために構成されてもよい。システム内のデポーは、同一であってもよく、またはいくつかの点で様々であってもよい(例えば、形状因子、治療剤、放出プロファイルなど)。例えばシステムは、治療剤の即時放出をもたらす放出プロファイルを有するデポーと、治療剤の遅延放出をもたらす放出プロファイルを有するデポーから構成された他のデポーとから構成されてもよい。
【0244】
本技術の多くのデポーは、手術部位に埋め込まれてその部位でまたは近くで術後疼痛を処置するように構成される。本明細書で使用される場合、「疼痛」という用語は、痛覚および痛みの感覚を含み、その両方は、疼痛スコア、およびオピオイドの使用などの当技術分野で周知の他の方法を使用して、客観的におよび主観的に評価することができる。様々な実施形態では、疼痛は、アロディニア(例えば、通常は有害ではない刺激に対して増大する応答)または痛覚過敏(例えば、通常は有害でありまたは心地良くない刺激に対して増大する応答)、即ちその性質が熱的または機械的(触覚)であり得るものを含んでいてもよい。一部の実施形態では、疼痛は、熱感受性、機械的感受性、および/または安静時痛によって特徴付けられる。他の実施形態では、疼痛は、機械的に誘発された疼痛または安静時痛を含む。さらに他の実施形態では、疼痛は安静時痛を含む。疼痛は、当技術分野で周知のように、一次または二次疼痛とすることができる。本明細書に開示された方法および組成物により低減可能であり予防可能でありまたは処置可能である疼痛の例示的なタイプには、限定するものではないが、術後疼痛、例えば、腰部の後ろ(腰背部痛)または頚部(首の疼痛)、足の疼痛、神経根痛(腰部手術から腰背部および足で、頚部手術から首および腕で経験する)、または腹部手術からの腹痛、ならびに腕、首、背中、腰背部、足の神経障害性疼痛、および椎間板または脊椎手術からもたらされた関連ある疼痛分布が含まれる。神経障害性疼痛は、神経根、後根神経節、または末梢神経への手術から生じる疼痛を含んでいてもよい。
【0245】
様々な実施形態では、疼痛は、「手術の後の疼痛(post-surgical pain)」または「術後疼痛(post-operative pain)」または「手術誘発性疼痛」からもたらされ、これらは本明細書では交換可能に使用されるものであり、外科的手技(例えば、ヘルニア修復、整形外科手術または脊椎手術など)の後の数秒、数分、数時間、数日、または数週間の回復期間に生じる疼痛を指す。外科的手技には、皮膚の下に侵入する任意の手技が含まれ、患者に疼痛および/または炎症を引き起こす。外科的手技には、関節鏡手術、腫瘤切除、脊椎固定、胸部、頚部、または腰椎手術、骨盤手術、またはこれらの組合せも含まれる。
【0246】
図27Aおよび27Bは、手術が実施される部位および本技術のデポーが投与できる場所となり得る、患者における一般的な場所を示す。図27Aおよび27Bに示される場所は、手術を行なうことができる、患者における多くの異なる場所の単なる例示であることが理解されよう。例えば手術は、患者の膝、股関節部、上肢、下肢、首、脊椎、肩、腹部、および骨盤部で必要とされ得る。図28は、本技術のデポー100を、術後疼痛を処置するために利用してもよい、一般的な外科的手技を示す表である。
【0247】
本技術の多くの実施形態は、全膝関節置換手術に関連した疼痛を処置するために、膝関節の手術部位にまたは近くに置くように構成された、同じまたは異なる構成および/または用量を有する1つまたは複数のデポーを含む。前述のように、本技術のデポーは、多数の小片に破壊することなくかつ/またはその全体的な形状を失うことなく、手術の通常の過程で臨床医が取り扱うことが構造的に可能な、固体の自己支持型の柔軟な薄膜であってもよい。このように臨床医は、特定の患者のニーズに対処するためおよび/または膝を神経支配する特定の神経を標的にするために必要に応じて、膝関節の嚢内および/または嚢外腔のまたはその近くの様々な場所に、デポーの1つまたは複数を置いてもよい。
【0248】
図29A~29Cは、例えば、膝関節の嚢外および嚢内部分を神経支配する神経の場所を示す、ヒト膝の正面、外面、および内面図である。一部の実施形態では、デポーは、膝を神経支配する1つまたは複数の神経(図29A~29Cに示される神経)に隣接して埋め込まれてもよい。
【0249】
ある場合には、関節包内にデポーの1つまたは複数を置くことが有益であり得る。例えば、図30Aは、嚢内腔を露出させ、1つまたは複数のデポーを置くための潜在的な場所を特定する、ヒト膝を切り拡げた図であり、図30Bは、嚢内腔を露出させ、術後疼痛を処置するために内部に置かれたいくつかのデポー100を示す、ヒト膝を切り拡げた図である。図30Aおよび30Bに示されるように、ある場合には、1つまたは複数のデポーを、膝蓋上嚢部SPPにまたはその付近に、特に骨膜下に置き、四頭筋腱に取着してもよい。1つまたは複数のデポー100を配置するための追加の領域は、一般に内側溝および外側溝MG、LG(それぞれの溝の内側または外側で組織への必要に応じた固定を含む)を、大腿骨F上、脛骨T上(例えば、伏在神経の膝蓋下枝を麻酔するための、前脛骨でのまたはその近くでの、脛骨プラトーへの後部取着)に含んでもよい。一部の実施形態では、1つまたは複数のデポーは、膝の後嚢PC、膝蓋骨Pの上方領域、および/または膝関節包内への関節切開部の少なくとも1つに隣接して置いてもよい。一部の実施形態では、1つまたは複数のデポー100は、伏在神経、内転筋管、および/または大腿神経にまたはそれらの近くに置いてもよい。一部の実施形態では、デポーの1つまたは複数は、伏在神経の膝蓋下枝、膝の1つまたは複数の膝神経、膝蓋骨Pの上方領域にまたはこれらの近くに置くように構成されてもよい。デポーを膝関節包内に、しかし膝関節そのものの任意の関節部分から離れて置くことが望ましいと考えられる。
【0250】
関節内腔でのデポーの配置の代わりにまたはそれに加えて、1つまたは複数のデポーを嚢外位置に配置してもよい。図31Aおよび31Bは、例えば、嚢外の場所に置く場合の神経の前面図および後面図をそれぞれ示す。一部の実施形態では、デポーは、1つまたは複数の嚢外神経に隣接して埋め込まれてもよい(図31Aおよび31Bに示される神経など)。図32に示されるように、一部の実施形態では、1つまたは複数のデポー100は、皮下皮膚切開部に沿ってまたは隣接して置いてもよい。
【0251】
一部の実施形態では、システムは、第1のデポー(または複数のデポー)および第2のデポー(または複数のデポー)を含み、その全ては、膝関節にまたはその付近に埋め込まれるように構成される。第1のデポー(複数可)は、第2のデポー(複数可)と、同じまたは異なる放出プロファイル、放出速度、治療剤(非麻酔鎮痛薬、NSAID、抗生物質など)、放出持続期間、サイズ、形状、構成、全ペイロードなどを有していてもよい。
【0252】
手術に際して患者に投与された末梢神経ブロックを妨げないようにまたは重なり合わないように、デポーの1つまたは複数は、埋込み後、6から24時間にわたる遅延放出能力を必要に応じて含んでもよい。一部の実施形態では、内転筋管および膝関節包に配置された1つまたは複数のデポーは、24時間を超える可能性がある治療剤の放出の遅延を有するように構成されてもよい。
【0253】
本明細書に開示されたデポー100は、他の膝手術に関連した術後疼痛を処置するのに使用されてもよい。例えば、1つまたは複数のデポーは、ACL修復手術、内側側副靭帯(「MCL」)手術、および/または後十字靭帯(「PCL」)手術に関連した術後疼痛を処置するのに使用されてもよい。ACL修復では、1つまたは複数のデポーは、鎮痛薬を大腿および/または坐骨神経に送達するよう置いてもよく、一方、PCL修復手術では、1つまたは複数のデポーを、坐骨神経に鎮痛薬を送達するよう仙骨傍に置いてもよい。1つまたは複数のデポーは、部分膝関節置換手術、全膝関節置換手術、および/または膝関節置換手術の修正手術に関連した術後疼痛を処置するのに使用されてもよい。そのような手技では、1つまたは複数のデポーを関節または修復部位に隣接して配置して局所ブロックをもたらすことができ、またはそうでない場合には、例えば内転筋管での配置を通して、大腿神経または坐骨神経の1つまたは複数に鎮痛薬を送達することにより局部ブロックがもたらされるように、適切に置いてもよい。
【0254】
上述の膝関連手術に加え、本明細書に開示されるデポーの実施形態は、以下により詳細に記述されるようなおよび図28に部分的にまとめられるような、他の整形外科手術に関連した術後疼痛を処置するのに使用することができる。その例には、足首、股関節、肩、手首、手、脊椎、足、または腕に関わる外科的手技が含まれる。これらの外科的手技の少なくともいくつかでは、術後疼痛を処置するために局所ブロックまたは局部ブロックが送達されるよう、鎮痛薬を提供することができる。局所ブロックの場合、1つまたは複数のデポーを、切開手術の際に、例えば関節形成術、観血的整復および内固定(ORIF)術、靭帯再建術などの最中に、直視下で取着することができる。関節に関わるそのような手技では、1つまたは複数のデポーを、関節包に(例えば、関節の嚢内および/または嚢外腔にまたはその近くに)、または関節表面から離間した隣接軟組織に置いて、デポーが関節の運動を妨げるのを回避しまたは関節表面との接触により損傷を受けるのを回避することができる。骨折修復または靭帯修復に関わる場合、1つまたは複数のデポーを、局所ブロックが得られるように修復部位にまたはそこに隣接させて、置くことができる。局部ブロックの場合、1つまたは複数のデポーを、鈍なトロカールカテーテルまたは他の適切な器具を使用して、超音波誘導を介して標的神経に隣接する処置部位に配置することができる。少なくとも一部の実施形態では、デポーによる鎮痛薬または他の治療剤の送達を、NSAID、術前に送達された長期作用型麻薬、および/またはアセトアミノフェンの送達と組み合せることが有益であり得る。1つまたは複数のデポーを介した鎮痛薬の、持続した制御放出は、これらの他の治療剤と協働して作用して、整形外科および他の外科的手技に関連した術後疼痛の低減をもたらすことができる。
【0255】
一例では、本明細書に記述される1つまたは複数のデポーを使用して、足および足首の手術、例えば足首関節形成術(足首関節修正、足首関節置換術、および全足首関節置換術を含む)、足首関節固定、靭帯再建術、矯正骨切り術(例えば、バニオン切除術、偏平足手術)、または足首もしくは足の骨折の観血的整復および内固定(ORIF)に関連した術後疼痛を処置することができる。そのような手術に関連した術後疼痛を処置する際、1つまたは複数のデポーは、局所ブロックが得られるように、関節または修復部位に隣接して構成し置くことができる。さらにまたは代替として、1つまたは複数のデポーは、仙骨傍に、または別の適切な場所に配置して、下位臀坐骨神経、膝窩坐骨神経、深腓骨神経、または浅腓骨神経の1つまたは複数を標的とすることができる。一部の実施形態では、足首または足の手術に関連した術後疼痛を処置するように置かれたデポーは、治療上有益なレベルの鎮痛薬を、3~7日の間の期間にわたって送達するように構成された放出プロファイルを有することができる。
【0256】
別の例では、本明細書に記述される1つまたは複数のデポーは、股関節形成術(股関節修正、部分股関節置換術、および全股関節置換術を含む)または股関節骨折の観血的整復および内固定(ORIF)など、股関節手術に関連する術後疼痛を処置するのに使用することができる。そのような手術に関連した術後疼痛を処置する際、1つまたは複数のデポーを、局所ブロックが得られるように関節または修復部位に隣接して構成し置くことができる。さらにまたは代替として、局部ブロックは、デポーを腰筋区画、腰部傍脊椎腔、腸骨筋膜、または腰神経叢、仙骨神経叢、大腿神経、坐骨神経、上殿神経、もしくは閉鎖神経の1つもしくは複数を標的とする他の適切な場所に配置することによって、得ることができる。一部の実施形態では、1つまたは複数のデポーを(例えば、本明細書に記述される固定機構を使用して)固定してデポーの前方位置を維持し、それによって運動神経(例えば、坐骨または大腿神経)への鎮痛薬の曝露を防止しまたは低減させることが有益であり得る。一部の実施形態では、股関節手術に関連した術後疼痛を処置するために置かれたデポーは、治療上利益のあるレベルの鎮痛薬を、特定の外科的手技に応じて5~7または7~10日の期間にわたり送達するように構成された放出プロファイルを有することができる。
【0257】
肩および上腕の手術に関連した術後疼痛も同様に、本明細書に開示される1つまたは複数のデポーを使用して処置することができる。そのような手術の例には、肩関節形成術(肩関節修正、部分肩関節置換術、および全肩関節置換術を含む)、上腕骨折修復術(肩甲骨、上腕骨)、靭帯/腱修復術(例えば、回旋腱板、関節唇、上腕二頭筋など)、または肩もしくは上腕の骨折の観血的整復および内固定(ORIF)が含まれる。そのような手術に関連した術後疼痛の処置において、1つまたは複数のデポーは、局所ブロックが得られるように関節または修復部位に隣接して構成し置くことができる。さらにまたは代替として、1つまたは複数のデポーは、頚部傍脊椎腔、斜角筋間、または鎖骨上腔に1つまたは複数のデポーを配置することによって、腕神経叢を標的とするように構成し置くことができる。一部の実施形態では、デポーの斜角筋間配置は、ネイティブの軟骨に対する鎮痛薬の曝露を回避することができ、それによって、軟骨毒性のリスクが低減される。一部の実施形態では、肩または上腕に関係する手術に関連した術後疼痛を処置するように置かれたデポーは、治療上有益なレベルの鎮痛薬を、3~7日の期間にわたって送達するように構成された放出プロファイルを有することができる。
【0258】
別の例では、本明細書に記述される1つまたは複数のデポーを使用して、肘関節形成術(肘関節修正、部分肘関節置換術、および全肘関節置換術を含む)、靭帯再建術術、または肘の骨折の観血的整復および内固定(ORIF)など、肘の手術に関連した術後疼痛を処置することができる。そのような手術に関連した術後疼痛の処置では、1つまたは複数のデポーを、局所ブロックが得られるように関節または修復部位に隣接して置くことができる。さらにまたは代替として、1つまたは複数のデポーは、例えば頚部傍脊椎腔、鎖骨下、もしくは腋窩部、または他の適切な場所にまたはその近くに配置することによって、腕神経叢神経を標的とするように構成し置くことができる。一部の実施形態では、肘の手術に関連した術後疼痛を処置するよう置かれたデポーは、治療上有益なレベルの鎮痛薬を、3~7日の期間にわたり送達するように構成された放出プロファイルを有することができる。
【0259】
手首および手の手術に関連した術後疼痛も、本明細書に記述される1つまたは複数のデポーを使用して処置することができる。手首および手の手術の例には、手首関節形成術(手首関節修正、部分手首関節置換術、および全手首関節置換術を含む)、手首固定、ならびに手首の骨折の観血的整復および内固定(ORIF)が含まれる。そのような手術に関連した術後疼痛を処置する際、1つまたは複数のデポーは、局所ブロックが得られるように手首関節または修復部位に隣接して構成し置くことができる。さらにまたは代替として、1つまたは複数のデポーは、例えば肘前窩、頚部傍脊椎腔、鎖骨下、または腋窩部での配置を介して、尺骨、正中、橈骨、および皮膚前腕神経を標的とするように構成し置くことができる。一部の実施形態では、手首および手の手術に関連した術後疼痛を処置するように置かれたデポーは、治療上有益なレベルの鎮痛薬を、3~7日の期間にわたり送達するように構成された放出プロファイルを有することができる。
【0260】
本明細書に開示されるデポーは同様に、他の整形外科手術からの術後疼痛を処置するのに使用されてもよい。例えば、脊椎固定に関連した術後疼痛は、皮下または傍脊椎腔での1つまたは複数のデポーの配置を介して処置することができる。腓骨骨折修復に関連した術後疼痛の処置では、1つまたは複数のデポーを、坐骨神経および/または膝窩坐骨神経を標的とするように構成し配置することができ、これは例えば仙骨傍に配置されるものである。整形外科的手技に関連した術後疼痛からの治療的緩和をもたらすのに、様々な他の配置および構成が可能である。
【0261】
V. 非整形外科手術に関連した術後疼痛を処置するために選択されたシステムおよび方法
本技術のデポー100は、上述のように送達される治療剤の性質に応じて、様々な医学的状態を処置するのに使用されてもよい。治療剤は、処置される医学的状態に応じて、患者の身体の特定の領域に送達されてもよい。本技術のデポー100は、特定の状態の処置のための治療剤の制御された持続放出をもたらすように、in vivoで、患者の体内の標的組織の近傍に置いてもよい。この埋込みは、特定の状態を急性的に処置するための手術または介入に関連付けられてもよく、それによってデポーは、手術または介入の完了後の慢性の持続した薬理学的処置を可能にする。デポー100は、自立型要素であってもよく、または介入もしくは手術に関連した埋込み可能なデバイスもしくは補綴の一部に連結されてももしくはその一部として一体化されていてもよい。
【0262】
それを必要とする患者において有効になる治療剤の量は、状態の特定の性質に依存することになり、当技術分野で公知の標準の臨床技法によって決定することができる。さらに、in vitroまたはin vivoアッセイは、最適な投薬量範囲を特定するのを助けるため、必要に応じて用いられてもよい。任意の特定の個体に関する特定の用量レベルは、薬物の活性、年齢、体重、全体の身体的および精神的健康状態、遺伝因子、環境影響、性別、食事、投与時間、投与場所、排泄速度、および処置される特定の問題の重症度を含む様々な因子に依存することになる。
【0263】
本技術の一部の態様は、臨床医による埋込みのために提供される複数のデポー(そのそれぞれは、本明細書に記述されるデポーのいずれかにすることができる)を含むシステムを含む。このシステムにおいて、各デポーは、デポーの埋込み部位の近傍の組織への治療剤の制御放出のために構成されてもよい。システム内のデポーは、同一であってもよく、またはいくつかの点で様々であってもよい(例えば、形状因子、治療剤、放出プロファイルなど)。例えばシステムは、治療剤の即時放出をもたらす放出プロファイルを有するデポーと、治療剤の遅延放出をもたらす放出プロファイルを有するデポーから構成された他のデポーとから構成されてもよい。
【0264】
本技術の多くのデポーは、手術部位に埋め込まれてその部位でまたは近くで術後疼痛を処置するように構成される。本明細書で使用される場合、「疼痛」という用語は、痛覚および痛みの感覚を含み、その両方は、疼痛スコア、およびオピオイドの使用などの当技術分野で周知の他の方法を使用して、客観的におよび主観的に評価することができる。様々な実施形態では、疼痛は、アロディニア(例えば、通常は有害ではない刺激に対して増大する応答)または痛覚過敏(例えば、通常は有害でありまたは心地良くない刺激に対して増大する応答)、即ちその性質が熱的または機械的(触覚)であり得るものを含んでいてもよい。一部の実施形態では、疼痛は、熱感受性、機械的感受性、および/または安静時痛によって特徴付けられる。他の実施形態では、疼痛は、機械的に誘発された疼痛または安静時痛を含む。さらに他の実施形態では、疼痛は安静時痛を含む。疼痛は、当技術分野で周知のように、一次または二次疼痛とすることができる。本明細書に開示された方法および組成物により低減可能であり、予防可能であり、または処置可能である疼痛の例示的なタイプには、限定するものではないが、術後疼痛、ならびに腕、首、背中、腰背部、足の神経障害性疼痛、および関連ある疼痛分布が含まれる。神経障害性疼痛は、神経根、後根神経節、または末梢神経への手術から生じる疼痛を含んでいてもよい。
【0265】
様々な実施形態では、疼痛は、「手術の後の疼痛(post-surgical pain)」または「術後疼痛(post-operative pain)」または「手術誘発性疼痛」からもたらされ、これらは本明細書では交換可能に使用されるものであり、外科的手技の後の数秒、数分、数時間、数日、または数週間の回復期間に生じる疼痛を指す。外科的手技には、皮膚の下に侵入する任意の手技が含まれ、患者に疼痛および/または炎症を引き起こす。外科的手技には、関節鏡手術、腫瘤切除、脊椎固定、胸部、頚部、または腰椎手術、骨盤手術、胸部関連手術、乳房関連手術、産婦人科手術、全身、腹部、または泌尿器科手術、耳、鼻、および喉(ENT)の手術、口腔および顎顔面手術、腫瘍学的手術、美容外科、またはこれらの組合せも含まれる。図28は、本技術のデポー100を利用して術後疼痛を処置するための、一般的な外科的手技を示す表である。
【0266】
本技術の多くの実施形態は、外科的手技からの回復に関連した疼痛を処置するために、手術部位にまたはその近くに置くように構成された、同じまたは異なる構成および/または用量を有する1つまたは複数のデポーを含む。前述のように、本技術のデポーは、多数の小片に破壊することなくかつ/またはその全体的な形状を失うことなく、手術の通常の過程で臨床医が取り扱うことが構造的に可能な、固体の自己支持型の柔軟な薄膜であってもよい。このように臨床医は、特定の患者のニーズに対処するためおよび/または手術部位を神経支配する特定の神経を標的にするために必要に応じて、処置部位のまたはその近くの様々な場所に、デポーの1つまたは複数を置いてもよい。
【0267】
一部の実施形態では、システムは、第1のデポー(または複数のデポー)および第2のデポー(または複数のデポー)を含み、その全ては、処置部位にまたはその近くに埋め込まれるように構成される。第1のデポー(複数可)は、第2のデポー(複数可)と、同じまたは異なる放出プロファイル、放出速度、含有される治療剤(非麻酔鎮痛薬、NSAID、抗生物質など)、放出持続期間、サイズ、形状、構成、全ペイロードなどを有していてもよい。
【0268】
手術に際して患者に投与された末梢神経ブロックを妨げないようにまたは重なり合わないように、デポーの1つまたは複数は、埋込み後、6から24時間にわたる遅延放出能力を必要に応じて含んでいてもよい。一部の実施形態では、処置部位に配置された1つまたは複数のデポーは、24時間を超える可能性がある治療剤の放出の遅延を有するように構成されてもよい。
【0269】
本明細書に開示されるデポーは、広く様々な手術に関連した術後疼痛を処置するのに使用されてもよい。例えば、図28にまとめたように、デポーは、胸部関連手術、乳房関連手術、産婦人科手術、全身、腹部、または泌尿器科手術、耳、鼻、および喉(ENT)の手術、口腔および顎顔面手術、腫瘍学的手術、または美容外科)に関する術後疼痛を処置するのに使用されてもよい。特定の手術または手術のクラスでは、1つまたは複数のデポーを、術後疼痛が処置されるように処置部位に置くことができる。処置部位は、手術部位であってもその近くにあってもよく、または一部の実施形態では、手術部位から離間していてもよく、手術部位を神経支配する標的神経もしくは神経束の近傍にあってもよい。
【0270】
一例において、本明細書に記述される1つまたは複数のデポーは、開胸術、食道手術、心臓手術、肺切除、胸部手術、または他のそのような手技などの胸部関連手術に関連した術後疼痛を処置するのに使用することができる。そのような手術に関連した術後疼痛を処置する際、1つまたは複数のデポーは、例えば胸部傍脊椎腔または他の適切な場所にまたはその近くに配置されることにより、肋間神経を標的とするように構成し置くことができる。肋間神経に送達された鎮痛薬は、患者の胸部領域における疼痛を低減させることができ、それによって、上述の胸部関連外科的手技に関連した術後疼痛が緩和される。
【0271】
別の例では、本明細書に開示される1つまたは複数のデポーは、乳房切除、豊胸、乳房縮小、乳房再建術、または他のそのような手技などの、乳房関連手術に関連した術後疼痛を処置するのに使用することができる。そのような手技からの術後疼痛を処置するために、1つまたは複数のデポーは、例えば患者の鎖骨下腔または他の適切な場所にまたはそれらの近くに配置することを介して、肋間神経に鎮痛薬または他の治療剤を送達するよう置き構成することができる。さらにまたは代替として、1つまたは複数のデポーは、例えば前鋸筋と広背筋との間または他の適切な場所での配置を介して、外側胸筋神経および/または内側胸筋神経に鎮痛薬または他の治療剤を送達するように、置き構成することができる。上述のように、肋間神経に送達された鎮痛薬は、患者の胸部領域の疼痛を低減させることができ、一方、外側および/または内側胸筋神経に送達された鎮痛薬は、大胸筋および小胸筋の疼痛を低減させることができ、それによって、上述の胸部関連外科的手技に関連した術後疼痛が低減される。
【0272】
別の例として、1つまたは複数のデポーは、全身、腹部、および/または泌尿器科手技に関連した術後疼痛を処置するのに使用することができる。そのような手技の例には、直腸結腸切除術、膵切除術、虫垂切除術、痔核切除術、胆嚢切除術、腎臓移植、腎切除術、根治的前立腺切除術、腎切除術、胃切除術、小腸切除術、脾臓切除術、切開創ヘルニア修復、鼠径ヘルニア修復、S状結腸切除術、肝切除術、腸瘻造設術、直腸切除術、腎臓結石除去、および膀胱切除術が含まれる。そのような手術の場合、術後疼痛は、腹横筋膜面(TAP)で神経を標的にするように、1つまたは複数のデポーを配置することによって、処置することができる。TAPに送達された鎮痛薬は、前腹壁に供給される神経を麻酔することができ、それによって、この領域での術後疼痛が低減される。一部の実施形態では、1つまたは複数のデポーは、内腹斜筋と腹横筋との間に配置される。一部の実施形態では、1つまたは複数のデポーは、腹壁にまたはそこに隣接して配置することができ、例えば以下により詳細に記述される固定機構を介して、所定位置に固定される。
【0273】
一部の実施形態では、1つまたは複数のデポーは、産婦人科手術、例えば筋腫摘出術、帝王切開、子宮摘出術、卵巣摘出術、骨盤底再建術、または他のそのような外科的手技に関連した術後疼痛を処置するのに使用される。そのような手技の場合、デポー(複数可)は、骨盤および/または生殖器領域を神経支配する神経、例えば陰部神経、肋間神経、または他の適切な神経の1つまたは複数に、鎮痛薬または他の治療剤を送達するように構成し置くことができる。
【0274】
一部の実施形態では、1つまたは複数のデポーは、耳、鼻、および喉(ENT)の外科的手技、例えば扁桃切除術、粘膜下切除術、鼻形成術、副鼻腔手術、内耳手術、耳下腺摘出術、顎下腺手術、または他のそのような手術に関連した術後疼痛を処置するのに使用することができる。同様に、1つまたは複数のデポーは、口腔および顎顔面手術、例えば歯槽手術、歯科インプラント手術、外科的歯科矯正術、顎関節(TMJ)手術、歯科再建手術、または他のそのような手術に関連した術後疼痛を処置するのに使用することができる。ENT外科的手技ならびに口腔および顎顔面外科的手技の場合、デポー(複数可)は、外科的手技により影響を受ける領域を神経支配する神経、例えば下顎神経、顎舌骨筋神経、舌神経、下歯槽神経、頬神経、耳介側頭神経、前篩骨神経、または他の適切な神経の1つまたは複数に、鎮痛薬または他の治療剤を送達するように構成し置くことができる。
【0275】
1つまたは複数のデポー100は、他の外科的手技、例えば腫瘍学的手術(例えば、腫瘍切除)、美容外科(例えば、脂肪吸引)、または術後疼痛をもたらす他の外科的手技に関する術後疼痛を処置するのに使用することもできる。任意の特定の手術に関連した術後疼痛を処置するには、デポーの数および個々のデポーの特徴を、所望の治療上の利益が送達されるように選択することができる。例えば、デポー(複数可)の寸法、デポー当たりの治療剤の量、放出プロファイル、および他の特徴を、術後疼痛の所望の処置が得られるように調整することができる。例えば、膝関節置換術から回復する患者は、少なくとも14日間の鎮痛薬の送達から利益が得られ得るが、扁桃摘出術から回復する患者は、同じレベルまたは持続期間の鎮痛薬送達を必要としなくてもよい。したがって、扁桃摘出術の後の術後疼痛の処置のために患者に送達されるデポーは、より少ないデポー、またはより小さいペイロードの治療剤を有するデポー、またはより急勾配の放出プロファイルを有するデポー(複数可)などを必要としてもよい。さらに、埋め込むために選択されたデポー(複数可)の数および特徴は、患者の体内に配置するために、標的の解剖学的領域に順応するよう調整することができる。
【0276】
VI. 結論
実施形態の多くについて、術後疼痛を処置するためのシステム、デバイス、および方法に関して上述されているが、この技術は、他の適用例および/または他の手法に適用可能である。さらに、本明細書に記述されたものに加えた他の実施形態は、技術の範囲内にある。さらに、この技術のいくつかの他の実施形態は、本明細書に記述されたものとは異なる構成、構成成分、または手順を有することができる。したがって当業者なら、この技術は、追加の要素と共に他の実施形態を有することができ、またはこの技術は、図2~32を参照して上記にて示され記述された特徴のいくつかがない、他の実施形態を有することができることを、相応に理解するであろう。
【0277】
技術の実施形態の上記詳細な記述は、包括的なものではなく、技術を上記開示された厳密な形態に限定するものでもない。文脈が許す場合には、単数形または複数形の用語は、それぞれ複数形または単数形の用語を含んでいてもよい。技術に関する特定の実施形態または実施例は、例示的な目的で上記にて記述するが、当業者が認識するように、様々な均等な修正例がこの技術の範囲内で可能である。例えば、ステップは所与の順序で提示されるが、代替の実施形態は、ステップを異なる順序で行なってもよい。本明細書に記述される様々な実施形態を組み合せて、さらなる実施形態を提供してもよい。
【0278】
さらに、「または」という単語が、2つまたはそれよりも多くの項目のリストを参照して他の項目から排他的な単一項目のみを意味することに明らかに限定されない限り、そのようなリストにおける「または」の使用は、(a)リスト内の任意の単一項目、(b)リスト内の項目の全て、または(c)リスト内の項目の任意の組合せを含むと解釈されるものである。さらに、「含む」という用語は、同じ特徴が任意のより大きい数だけあることおよび/または追加のタイプ追加の他の特徴があることが排除されないよう、少なくとも列挙された特徴(複数可)を含むことを意味するために、全体を通して使用される。特定の実施形態が、例示の目的で本明細書に記述されてきたが、この技術から逸脱することなく様々な修正を行なってもよいことも理解されよう。さらに、この技術のある特定の実施形態に関連する利点について、実施形態の文脈で記述してきたが、他の実施形態がそのような利点を示してもよく、必ずしも全ての実施形態が、そのような利点がこの技術の範囲内に包含されることを示すことを必要とするわけではない。したがって、本開示および関連する技術は、本明細書に明らかに示されておらず、記述されてもいない他の実施形態を包含することができる。
【0279】
他に指示しない限り、成分の量、材料のパーセンテージまたは割合、反応条件、ならびに本明細書および特許請求の範囲で使用される他の数値を表す全て数は、「約」という用語によって全ての場合に修飾されていると理解されたい。したがって、反対の内容を示さない限り、以下の明細書および添付される特許請求の範囲で記述される数値パラメーターは、本技術によって得ることが求められる所望の性質に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲に均等物の原理の適用例を限定する試みとしてではなく、各数値パラメーターは、報告された有効数字の数に照らしてかつ通常の丸め技法を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。さらに、本明細書に開示された全ての範囲は、その内部のありとあらゆる部分範囲を包含することが理解されよう。例えば、「1から10」という範囲は、最小値1と最大値10との間の(および含む)ありとあらゆる部分範囲、即ち、1に等しいまたはそれよりも大きい最小値および10に等しいまたはそれ未満の最大値を有するありとあらゆる部分範囲、例えば5.5から10を含む。
【0280】
本明細書および添付される特許請求の範囲で使用される、単数形「a」、「an」、および「the」は、1つの指示対象にはっきりとかつ明瞭に限定されない限り、複数指示対象を含むことに留意されたい。例えば、「治療剤」と言う場合は、1、2、3種、またはそれよりも多くの治療剤を含む。
【0281】
上記見出しは、本開示を如何様にも限定するものではない。いずれか1つの見出しの下での実施形態は、任意の他の見出しの下での実施形態と併せて使用されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A-C】
図16D-E】
図17
図18
図19A
図19B-C】
図20
図21
図22
図23
図24A
図24B
図24C
図24D
図25
図26A
図26B
図26C
図27
図28-1】
図28-2】
図28-3】
図29
図30A
図30B
図31
図32