(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】消音器および真空排気装置
(51)【国際特許分類】
F01N 1/08 20060101AFI20241210BHJP
F01N 13/00 20100101ALI20241210BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20241210BHJP
F04C 29/06 20060101ALI20241210BHJP
F04B 53/10 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F01N1/08 A
F01N13/00 Z
F04B39/00 101M
F04C29/06 A
F04B53/10 J
(21)【出願番号】P 2023567364
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2021046145
(87)【国際公開番号】W WO2023112178
(87)【国際公開日】2023-06-22
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】591255689
【氏名又は名称】樫山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】井出 洋成
(72)【発明者】
【氏名】三浦 克樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 篤史
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-139056(JP,A)
【文献】特開2007-231935(JP,A)
【文献】中国実用新案第202811374(CN,U)
【文献】特開平9-184592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/08
F01N 13/00
F04B 39/00
F04C 29/06
F04B 53/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気流路と、前記排気流路の途中に形成された消音用の拡張室と、前記排気流路を流れる排気の逆流を防止する逆止弁とを備えた消音器において、
前記排気流路および前記拡張室が内部に形成されている消音器ケースを有しており、
前記排気流路は、上流側流路部分と、前記拡張室を介して前記上流側流路部分に連通している下流側流路部分とを備えており、
前記消音器ケースは、上流側ケースと、前記上流側ケースに取り外し可能に連結された下流側ケースとを備えており、
前記上流側流路部分は前記上流側ケースの内部に形成されており、
前記下流側流路部分は前記下流側ケースの内部に形成されており、
前記拡張室は、前記上流側ケースと前記下流側ケースとの間のケース連結部分の内部に形成されており、
前記逆止弁は、
前記拡張室の内部に移動自在の状態で挿入されている球状弁体と、
前記球状弁体の着座面が形成された弁座板と、
を備えており、
前記弁座板は、
前記排気流路の前記上流側流路部分に面している上流側端面と、
前記拡張室に面している下流側端面と、
前記上流側端面から前記下流側端面まで貫通している貫通穴と、
を備えており、
前記貫通穴は、前記排気流路における前記上流側流路部分と前記拡張室とを連通する連通路を規定しており、
前記着座面は、前記下流側端面において前記貫通穴を同軸に取り囲む状態に形成されており、
更に、
寸法および重量のうち少なくとも一方が異なる複数種類の交換用球状弁体と、
前記貫通穴の形状および寸法、並びに、前記着座面の形状および寸法のうちの少なくとも一つが異なる複数種類の交換用弁座板と、
を備えており、
前記交換用球状弁体の一つが前記球状弁体として前記拡張室に挿入されており、
前記交換用弁座板の一つが前記弁座板として前記上流側ケースに装着されている消音器。
【請求項2】
請求項1において、
前記着座面は、前記貫通穴の開口縁から前記拡張室に向かって内径が漸増する円錐面形状の面である消音器。
【請求項5】
請求項1において、
前記弁座板は、前記上流側ケースに対する締結用の雄ネジが形成された締結用外周面を備えており、
前記上流側ケースは、前記雄ネジをネジ込み可能な雌ネジが形成された締結用内周面を備えている消音器。
【請求項6】
請求項5において、
前記弁座板の前記締結用外周面と前記上流側ケースの前記締結用内周面との間をシールするシール部材を備えている消音器。
【請求項7】
請求項1において、
前記弁座板の前記貫通穴は、非円形の断面形状をしている消音器。
【請求項8】
請求項5において、
前記弁座板の前記貫通穴は、多角形の断面形状をしている消音器。
【請求項9】
請求項1において、
前記排気流路は、前記拡張室の上流側に上流側拡張室を備えており、
前記上流側拡張室には、前記排気の逆流を防止するための上流側球状弁体が移動自在に挿入されており、
前記弁座板の前記上流側端面は、前記上流側拡張室に面しており、
前記弁座板の前記上流側端面に開口している前記貫通穴の上流端側内周縁部分は、非円形の輪郭形状をしている消音器。
【請求項10】
請求項1に記載の消音器を備えていることを特徴とする真空排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプが組み込まれた真空排気装置などから排出される排気に起因する振動、騒音を低減するために用いられる消音器に関する。更に詳しくは、排気流路に一段あるいは多段の消音用の拡張室が形成されていると共に排気流路を流れる排気の逆流を防止する逆止弁が備わっている消音器、および当該消音器を備えた真空排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプ等の機械装置は排気に起因して振動、騒音を発生する騒音源となる場合がある。排気に起因する騒音を抑制するために、騒音源となる機械装置には消音器が取り付けられる。また、真空ポンプ等においては、排気の逆流を防止するために排気口と消音器との間に逆止弁が配置されることがある。消音器および逆止弁を備えた真空ポンプは、例えば、特許文献1、2に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示の真空ポンプの消音器では、排気口から排出されたガスを第1の通路部、膨張室(拡張室)および第2の通路部を通過させて排出することで、ポンプ排気音を所定のレベル以下に低減している。また、消音器は、排気口と膨張室(拡張室)の間に、排気口を開閉可能な弁部材が収容された弁室を備えており、消音器側からポンプ本体内部へのガスの逆流を防止している。また、特許文献2には、逆止弁およびサイレンサ(消音器)が、排気ポートに外付けされた真空ポンプユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
逆止弁を備えた消音器においては、騒音源となる機械装置の排気口に、逆止弁と消音器とがタンデムに接続されるので、これらの設置スペースを多く必要とする。逆止弁付きの消音器を、小型で、コンパクトな構成にすることが望まれる。また、クラッキング圧力等の逆止弁の特性を、取付対象の真空ポンプ等の機械装置の排気に応じて簡単に変更できることが望まれる。
【0006】
本発明の目的は、このような点に鑑みて、設置スペースが比較的少なくて済み、かつ、逆止弁の弁特性を簡単に変更できる逆止弁付きの消音器、および当該逆止弁付きの消音器を備えた真空排気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、排気流路と、前記排気流路の途中に形成された消音用の拡張室と、前記排気流路を流れる排気の逆流を防止する逆止弁とを備えた消音器において、
前記逆止弁は、
前記拡張室の内部に移動自在の状態で挿入されている球状弁体と、
前記球状弁体の着座面が形成された弁座板と、
を備えており、
前記弁座板は、
前記排気流路の上流側流路部分に面している上流側端面と、
前記拡張室に面している下流側端面と、
前記上流側端面から前記下流側端面まで貫通している貫通穴と、
を備えており、
前記貫通穴は、前記排気流路における上流側流路部分と前記拡張室とを連通する連通路を規定しており、
前記着座面は、前記下流側端面において前記貫通穴を同軸に取り囲む状態に形成されていることを特徴としている。
【0008】
本発明の消音器では、流路断面積を大きくして所定の容積を有する消音用の拡張室を、逆止弁の構成部品である球状弁体を配置するスペースとして利用している。また、逆止弁の着座面が形成されている弁座板に形成した貫通穴を、排気流路における上流側流路部分と拡張室とを連通する連通路として用いている。
【0009】
本発明によれば、逆止弁の構成部品である球状弁体および弁座板の設置スペースが少なくて済む。また、消音器における排気流路の一部である連通路を、逆止弁の弁座板に形成した貫通穴によって規定しているので、逆止弁付きの消音器の構成部品の部品点数を削減できる。これにより、逆止弁付きの消音器を小型でコンパクトに構成でき、逆止弁付きの消音器を取り付けた真空ポンプ等の真空排気装置の小型化、コンパクト化に有利である。
【0010】
本発明の消音器を分割構造の消音器とすることができる。
この場合、本発明の消音器は、
前記排気流路および前記拡張室が内部に形成されている消音器ケースを有しており、
前記排気流路は、上流側流路部分と、前記拡張室を介して前記上流側流路部分に連通している下流側流路部分とを備えており、
前記消音器ケースは、上流側ケースと、前記上流側ケースに取り外し可能に連結された下流側ケースとを備えており、
前記上流側流路部分は前記装置側ケースの内部に形成されており、
前記下流側流路部分は前記外付け側ケースの内部に形成されており、
前記拡張室は、前記装置側ケースと前記外付け側ケースとの間のケース連結部分の内部に形成されている。
【0011】
消音器を拡張室の部分で分割可能な分割構造とすれば、拡張室に挿入されている球状弁体、上流側ケースに装着されている弁座板の交換を簡単に行うことができる。この場合には、例えば、異なる種類の交換用球状弁体と交換用弁座板を用意しておけば、取り付けた対象の真空排気装置に対して、逆止弁の特性、例えばクラッキング圧力等の最適化を図ることが容易である。
【0012】
本発明の消音器において、弁座板を、ネジ締結により、上流側ケースに対して着脱可能にすることができる。ボルト、ナット等の締結用金具を用いる必要がないので、弁座板の着脱作業が簡単になり、消音器の小型化、コンパクト化に有利である。
【0013】
本発明の消音器において、弁座板の貫通穴の形状を、多角形等などの非円形とすることが望ましい。これにより、球状弁体が弁座板の貫通穴(連通路にはまり込み難くなる。また、弁座板の着脱のために用いる工具、例えば弁座板を上流側ケースに対してねじ込み固定するための締結用工具の係合穴として、貫通穴を利用できる。
【0014】
次に、本発明の真空排気装置は、上記構成の逆止弁付きの消音器を備えたことを特徴としている。小型でコンパクトな構成を備えた消音器を用いることにより、真空排気装置の小型化、コンパクト化を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明を適用した実施の形態に係る消音器が取り付けられた真空排気装置を示す説明図である。
【
図3】
図1の消音器の外付け側ケース(下流側ケース)の部分を示す半断面斜視図である。
【
図4】
図1の消音器の主要部品を示す分解図である。
【
図5】(A)は
図1の消音器に取り付けた連通路形成板(逆止弁の弁座板)を示す斜視図、(B)はその下流側端面を示す端面図、(C)はその縦断面図、(D)はその上流側端面を示す端面図である。
【
図6】(A)は連通路形成板(逆止弁の弁座板)の別の例を示す斜視図、(B)はその下流側端面を示す端面図、(C)はその側面図、(D)はその上流側端面を示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して本発明を適用した消音器を備えた真空排気装置の実施の形態を説明する。なお、以下に述べる実施の形態は本発明の一例を示すものであり、本発明を実施の形態に限定することを意図したものではない。
【0017】
図1は実施の形態に係る消音器を備えた真空排気装置を示す説明図である。真空排気装置1は、直方体形状の装置筐体2の内部に、直列に接続した2台のドライ真空ポンプを備えている。例えば、真空排気装置1は、前段のメカニカルブースターポンプ3と後段のドライ真空ポンプ4を備えている。ドライ真空ポンプにはスクリュー式真空ポンプ、ルーツ式、クロー式、スクロール式等の各種のドライ真空ポンプを用いることができることは勿論である。
【0018】
真空排気装置1の吸気口5および排気口6は、例えば、装置筐体2の筐体上面2aに配置されている。吸気口5には不図示の吸気口ジョイントを介して吸気管8が接続される。排気口6には、実施の形態に係る消音器10が取り付けられている。排気口6からの排気は、消音器10を経由した後に、消音器10に接続した排気管9を介して排出される。
【0019】
図2は消音器10を示す概略縦断面図であり、
図3は消音器10の外付け側ケースの部分を示す半断面斜視図であり、
図4は消音器10の主要部品を示す分解図である。消音器10は、排気口6から排出される排気が流れる排気流路11が内部に形成されている消音器ケース10Aを備えている。消音器ケース10Aは、筒状の装置側ケース20(上流側ケース)と、この装置側ケース20に取り外し可能に取り付けた筒状の外付け側ケース30(下流側ケース)とから構成されている。
【0020】
排気流路11には、排気の流れ方向に沿って、排気口6に連通した流入口12、流入路13、上流側拡張室14、連通路15、下流側拡張室16、流出路17および流出口18が形成されている。装置側ケース20の内部には上流側流路部分(流入口12、流入路13、上流側拡張室14および連通路15)が形成されている。本例では、連通路15は、装置側ケース20の内部に装着した連通路形成板40に形成した貫通穴によって規定されている。一方、外付け側ケース30の内部には、下流側拡張室16と、下流側流路部分(流出路17および流出口18)とが形成されている。
【0021】
また、本例の消音器10は逆止弁付きの消音装置であり、流入路13と上流側拡張室14との間を、上流側拡張室14の側から封鎖可能な上流側逆止弁50、および、連通路15と拡張室16との間を下流側拡張室16の側から封鎖可能な下流側逆止弁60が備わっている。
【0022】
上流側逆止弁50は、上流側拡張室14に移動自在に挿入した球状弁体52と、この球状弁体52の着座面51とを備えている。着座面51は、装置側ケース20の内周面部分に形成され、流入路13に連通する上流側拡張室14の上流側連通口を同軸状に取り囲んでいる。下流側逆止弁60は、下流側の拡張室16に移動自在に挿入した球状弁体62と、この球状弁体62の着座面61とを備えている。着座面61は、連通路形成板40において、連通路15を同軸状に取り囲む状態に形成されている。連通路形成板40は、下流側逆止弁60における着座面61が形成された弁座板として機能する。以下の説明においては、連通路形成板40を、連通路形成板(弁座板)40として説明する。
【0023】
装置側ケース20に外付け側ケース30を取り付けると、外部から密閉された拡張室16が形成され、装置側ケース20から外付け側ケース30を取り外すと下流側拡張室16が外部に開口するように、装置側ケース20と外付け側ケース30との間のケース連結部分が構成されている。また、装置側ケース20から外付け側ケース30を取り外すと、装置側ケース20から連通路形成板(弁座板)40を取り出すことができる。
【0024】
真空排気装置1の排気は、排気口6から消音器10の排気流路11における流入口12から流入路13に流れ込み、上流側逆止弁50を介して上流側拡張室14に流れ込む。上流側拡張室14は流入路13よりも流路面積が広い所定の容積を備えている。排気は上流側拡張室14から流路面積を絞った連通路15および下流側逆止弁60を介して、再び流路面積を広くした所定容積の下流側拡張室16に流れ込む。下流側拡張室16に流れ込んだ排気は、流路面積を絞った流出路17を介して流出口18から排出される。流出口18から流出する排気は、当該流出口18に接続される排気管9に排出される。真空排気装置1の排気を、二段式の消音用拡張室構造を備えた消音器10を介して排気管9に排出することで、排気に起因する振動、騒音が抑制される。また、上流側逆止弁50および下流側逆止弁60によって、排気の逆流を防止でき、真空排気装置1が稼働していない状態などにおいて上流側の真空を保つことができる。
【0025】
次に、
図2~
図4を参照して、装置側ケース20、外付け側ケース30および連通路形成板(弁座板)40について順次説明する。まず、装置側ケース20は、真空排気装置1の装置筐体2の筐体上面2aを規定している筐体構成部品、筐体内部に配置されている後段のドライ真空ポンプ4のポンプ筐体構成部品などの装置構成部品19に一体形成された部分、あるいは、当該装置構成部品19に固定した部品である。この装置側ケース20は、排気流れ方向の上流側から下流側に向けて、上流側筒部21、中間筒部22および下流側筒部23を備えている。
【0026】
上流側筒部21の上流側の端面には流入口12が開口しており、上流側筒部21の内部には流入路13が形成されている。中間筒部22の内部には、流入路13よりも流路面積を広くした所定容積の直方体形状をした上流側拡張室14が形成されている。上流側筒部21において、流入路13と上流側拡張室14との間の内周面部分には、流入路13から上流側拡張室14に向かって内径が漸増しているテーパー状の着座面51が形成されている。着座面51と、上流側拡張室14に移動自在の状態で挿入されている球状弁体52とによって、上流側逆止弁50が構成される。
【0027】
装置側ケース20の下流側筒部23には、その下流側に端面23aに開口する所定深さのネジ穴23bが形成されている。すなわち、下流側筒部23の円形内周面には端面23aの側から所定の範囲に亘って雌ネジ26が形成されている。また、ネジ穴23bの底には、ネジ穴内周面を一定幅で内側に突出させることによって、連通路形成板40の受け部27が形成されている。
【0028】
図5(A)は連通路形成板(弁座板)40を示す斜視図、(B)はその下流側端面を示す端面図、(C)はその縦断面図、(D)はその上流側端面を示す端面図である。
図5も参照して連通路形成板(弁座板)40について説明する。円盤形状をした弁座板40は、排気流路11の上流側拡張室14に面している円形輪郭の上流側端面42と、下流側拡張室16に面している円形輪郭の下流側端面43と、一定幅の円形外周面45とを備えている。弁座板40の中心部分には、上流側端面42から下流側端面43まで貫通して延びる円形断面の貫通穴41が形成されている。貫通穴41は、排気流路11における上流側拡張室14と下流側拡張室16とを連通する連通路15として機能する。
【0029】
弁座板40の下流側端面43には、貫通穴41を同軸に取り囲む状態に、球状弁体62の着座面61が形成されている。着座面61は、貫通穴41の開口縁41aから下流側拡張室16に向かって内径が漸増する円錐面形状の凹面である。この形状の着座面61に球状弁体62が下流側から押し付けられると、貫通穴41が封鎖される。球状弁体62は、円錐面形状の凹面である着座面61に対して、貫通穴41を同軸に取り囲む円に沿った線接触の状態で当接する。着座面61の内径、テーパー角、球状弁体62の外径、重量などが適切に設定されており、球状弁体62が所望のクラッキング圧力で動作するようになっている。
【0030】
また、弁座板40の上流側端面42に開口している貫通穴41の部分は、長円形輪郭をした段付き開口縁部41bとなっている。これにより、上流側拡張室14に挿入されている上流側逆止弁50の球状弁体52が貫通穴41にはまり込まないようにしている。
【0031】
再び、
図2、3を参照して説明すると、外付け側ケース30は、装置側ケース20に取り付けることで下流側拡張室16を形成可能な上流側筒部31と、流出路17が内部に形成され流出口18が下流側の端面に開口している下流側筒部32とを備えている。下流側筒部32の下流側端の外周には、円環状の取付用フランジ33が形成されており、ここに、排気管9を連結できるようになっている。
【0032】
外付け側ケース30の上流側筒部31の端面31aからは、同軸に、連結用円筒部34が突出している。連結用円筒部34(第2筒状端部)はその端面34aが開口部となっており、その円形外周面には雄ネジ35が形成されている。雄ネジ35は、装置側ケース20の下流側筒部23(第1筒状端部)のネジ穴23bに同軸にねじ込み固定可能である。本例では、外付け側ケース30の上流側筒部31の長さは、装置側ケース20の下流側筒部23のネジ穴23bの深さよりも短い。ネジ穴23bにねじ込まれた連結用円筒部34の端面34aと、装置側ケース20のネジ穴23bの底に形成されている円環状の受け部27との間に、連通路形成板40を挟み込むことで、連通路形成板40が装置側ケース20の内部に装着される。
【0033】
外付け側ケース30の取り付けに際しては、装置側ケース20の上流側拡張室14に球状弁体52を挿入する。装置側ケース20の下流側筒部23のネジ穴23bに、連通路形成板40を挿入して円環状の受け部27に載せ、球状弁体62を挿入して連通路形成板40の着座面61に載せる。次に、連通路形成板40を挟み、外付け側ケース30の連結用円筒部34(第2筒状端部)を装置側ケース20の下流側筒部23(第2筒状端部)のネジ穴23bに同軸にねじ込み固定する。この結果、外付け側ケース30の上流側筒部31の内部空間が外部から封鎖され、上流側筒部31の内周面と、装置側ケース20に装着した連通路形成板40の下流側端面43との間に、下流側拡張室16が形成される。また、下流側拡張室16の内部に、球状弁体62を備えた下流側逆止弁60が組み込まれた状態になる。
【0034】
なお、連通路形成板40の上流側端面42の外周縁部、および、装置側ケース20の下流側筒部23の端面23aには、それぞれ、Oリング装着溝44、28が形成されている。Oリング装着溝44、28にそれぞれOリング71、72を装着した状態で、装置側ケース20に外付け側ケース30がねじ込み固定されている。これにより、装置側ケース20と外付け側ケース30との間のケース連結部分のネジ締結面がシールされ、排気流路11の気密性が確保される。
【0035】
以上説明したように、本例の消音器10では、上流側逆止弁50、下流側逆止弁60として、球状弁体52、62を備えたボール弁機構を用いている。流路断面を広げて所定の容積を有する消音用の上流側拡張室14および下流側拡張室16を、球状弁体52、62の配置スペースとして用いている。また、下流側逆止弁60の着座面61が形成されている連通路形成板(弁座板)40に形成した貫通穴41によって、排気流路11における上流側拡張室14と下流側拡張室16とを連通する連通路15を規定している。よって、上流側逆止弁50および下流側逆止弁60を、設置スペースを多く必要とすることなく消音器10に組み込むことができる。また、連通路15を、連通路形成板(弁座板)40に形成した貫通穴41によって規定しているので、逆止弁付き消音器の構成部品の部品点数を削減できる。これにより、逆止弁付き消音器を小型でコンパクトに構成でき、当該逆止弁付き消音器を取り付けた真空ポンプ等の真空排気装置の小型化、コンパクト化に有利である。
【0036】
また、本例の消音器10の消音器ケース10Aは、装置側ケース20に外付け側ケース30が取り外し可能に取り付けられた分割構造をしている。装置側ケース20から外付け側ケース30を取り外すと、下流側拡張室16の部分が開口し、装置側ケース20に対する連通路形成板(弁座板)40の着脱、下流側の拡張室16に対する球状弁体62の出し入れ、上流側拡張室14に対する球状弁体52の出し入れが可能になる。よって、真空排気装置1の側の騒音に応じて、逆止弁の特性を容易に調整可能である。
【0037】
例えば、下流側逆止弁60の構成部品として、着座面61の形状(内径、テーパー角、貫通穴の穴径等)が相違する複数種類の交換用弁座板および外径、重量の異なる複数種類の交換用球状弁体を用意しておく。消音器10の取り付け対象の機械装置に応じて、連通路形成板(弁座板)40および球状弁体62として、交換用弁座板のうちの一つ、および交換用球状弁体のうちの一つを、それぞれ選択して用いることで、目的圧力等に応じた逆止弁を取り付けることができる。
【0038】
さらに、本例では、上流側拡張室14と下流側の拡張室16を連通する連通路15を規定している連通路形成板40を、外付け側ケース30と装置側ケース20との間に挟持するようにしている。これにより、連通路形成板40を、装置側ケース20に固定するための構造を簡素化できるので、消音器10のコストを低減でき、寸法増加を抑制できる。また、連通路形成板40は所定厚さの円板状の部品であるので、消音器10の寸法増加の抑制に有効である。
【0039】
一方、本例の消音器10では、消音器ケース10Aが分割構造となっているので、必要に応じて、外付け側ケース30を交換することで下流側拡張室16を異なる容積の拡張室に変更でき、連通路形成板(弁座板)40を交換することで、連通路15を異なる流路径あるいは流路長に変更できる。これらの部品を交換することで、消音器10による消音効果を、より効果的に発揮させることができる。
【0040】
例えば、外付け側ケース30として、その連結用円筒部34の外周面に形成した雄ネジ35が共通で、その下流側拡張室16を形成している部分の内径および長さの異なるもの、その流出路17の内径、長さが異なる複数種類の交換用外付け側ケースを用意しておく。この場合には、これらの交換部品の中から、消音対象の機械装置の騒音低減に最も効果のあるものを選択して、装置側ケース20に取り付けるようにすればよい。
【0041】
また、本例の消音器10では、外付け側ケース30を装置側ケース20に対して着脱可能に締結するための機構として、ネジ締結を採用している。ボルト、ナット等の締結金具を用いる締結機構に比べて、部品点数が少なくて済み、消音器10の寸法の増加、コストの増加も抑制できる。また、ネジ部にシールテープを貼り付け、シール剤を塗布することで、気密性も確保できる。
【0042】
(弁座板の別の例)
図6は、上記の連通路形成板(弁座板)40の代わりに用いることのできる弁座板を示す。
図6(A)はその斜視図、
図6(B)はその下流側端面を示す端面図、
図6(C)はその側面図であり、
図6(D)はその上流側端面を示す端面図である。
【0043】
図6に示す弁座板80の基本構成は、連通路形成板(弁座板)40と同様であり、全体として円盤形状をしており、円形の上流側端面82、円形の下流側端面83、円形外周面85、および連通路15として機能する貫通穴81、下流側端面83において貫通穴81の開口縁部81bを取り囲む状態に形成した円錐面形状をした着座面86を備えている。また、上流側端面82に露出している貫通穴81の上流側内周縁部は、長円形輪郭の段付き内周縁部81aとなっている。
【0044】
相違点は、円形外周面85は、雄ネジ87が形成された締結用外周面となっている点と、貫通穴81の断面形状が非円形、図示の例では、直径方向において対峙する面が平行に延びる平面状内周面となっている長円形断面となっている点である。
【0045】
弁座板80の円形外周面85に形成した雄ネジ87は、装置側ケース20の下流側筒部23の内周面に形成した雌ネジ26にねじ込み可能である。弁座板80の取り付けに際しては、弁座板80を装置側ケース20に同軸となるように挿入して、長円形断面の貫通穴81の内周面に締結用工具を係合させ、締結用工具を用いて弁座板80をねじ込むことができる。
【0046】
弁座板80をねじ込み固定式にすることで、弁座板80を装置側ケース20に取り付ける作業が簡単になる。また、締結面に、シール剤を塗布し、あるいは、シールテープを用いることで、装置側ケース20と弁座板80との間の締結面の気密性を確保することができる。勿論、
図2、3に示すように、Oリング等のシールリングを挟むことで気密性を確保することもできる。
【0047】
なお、弁座板80の貫通穴81の断面形状としては、図示のような長円形に限定されるものではなく、多角形等の非円形であってもよい。貫通穴81における少なくとも開口縁部の輪郭形状(断面形状)は、球状弁体52、62が嵌り難い形状となっていればよい。また、貫通穴81の断面形状は、完全な円形ではなく、多角形等の非円形とすることで、締結用工具の引掛け部ができればよい。例えば、貫通穴を六角形等の多角形断面にすることで、六角レンチやマイナスドライバーなどを用いて、弁座板80を回すことができ、弁座板80の取り付け・取り外し作業が容易になる。