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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】車両用速度制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/18 20120101AFI20241108BHJP
【FI】
B60W30/18
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024529475
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(86)【国際出願番号】 CA2021051652
(87)【国際公開番号】W WO2023087092
(87)【国際公開日】2023-05-25
【審査請求日】2024-07-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524109577
【氏名又は名称】ミラー テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MILLER TECHNOLOGY INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】175 Eloy Road,North Bay,Ontario P1B 9T9,Canada
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】サマーズ,ポール アンドリュー ロイ
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-159317(JP,A)
【文献】特開2015-51646(JP,A)
【文献】特開2010-280281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
B60T 7/12 - 8/1769
8/32 - 8/96
F02D 29/00 - 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に沿って走行する車両の速度を制御し、この車両の動作時アクティブである車速制御システムであって、該車速制御システムは、
a.少なくとも一つのコントローラ、
b.この少なくとも一つのコントローラに通信連絡する、(i)少なくとも一つの非電気車両用のスロットル又は(ii)少なくとも一つの電気車両用のアクセラレータンサ、
c. 前記少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つのブレーキセンサ、

d. PIDコントローラを更に有する前記少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つの車速センサ、および、

e.前記少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つの減速ブレーキングシステム、を有し、前記少なくとも一つのコントローラは、i)前記少なくとも一つの非電気車両用のスロットル又は(ii)前記少なくとも一つの電気車両用のアクセラレータセンサ、前記少なくとも一つの車速センサおよび記少なくとも一つのブレーキセンサから信号を受信し、そして信号を前記少なくとも一つの減速ブレーキングシステムに送信して、下記を含むファクターに基づいて前記車両の速度を制御する、車速制御システム。
i)許容可能な最大車速制限値、
ii)総車両重量(Wv)
iii)路面の最大下り勾配角度(θ)
iv)前記車両の静的荷重タイヤの半径(rT)
v)車両速度をどの程度積極的に低下させるべきかを示す値である減速ファクター(Fd)、および
vi)前記電気車両用の前記車両のホイール体と前記車両のモータとの比である総ギア比(RG)、又は、前記非電気車両用の牽引装置にリンクした駆動ホイールとリターダとの比である総ギア比、のうちの一つ、
そしてここで最大減速トルクはTB=[rT×Wv×(Fd+sinθ)]/RGとして規定される
【請求項2】
さらに、前記少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つのギアセンサを有する請求項1に記載の車速制御システム。
【請求項3】
前記少なくとも一つのスロットルセンサがスロットルペダル位置センサである請求項1に記載の車速制御システム。
【請求項4】
前記少なくとも一つのアクセラレータセンサはアクセラレータペダル位置センサである請求項1に記載の車速制御システム。
【請求項5】
前記少なくとも一つのブレーキセンサが、ブレーキペダル位置センサおよびブレーキパッド圧力からなる群から選択される請求項4に記載の車速制御システム。
【請求項6】
さらに、前記少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つのギアセンサを有し、この少なくとも一つのギアセンサがギア位置センサである請求項1に記載の車速制御システム。
【請求項7】
さらに、前記少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つのギアセンサを有し、この少なくとも一つのギアセンサがニュートラルギア位置センサである請求項1に記載の車速制御システム。
【請求項8】
少なくとも一つの方向レンジセンサを有する請求項1に記載の車速制御システム。
【請求項9】
前記車両は電気車両であり、前記車速制御システムは少なくとも一つの方向レンジセンサを有し、この少なくとも一つの方向レンジセンサが電気車両用のフォワード、ニュートラルおよびリバース(FNR)位置センサである請求項1に記載の車速制御システム。
【請求項10】
さらに、前記少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つのモータを有する請求項1に記載の車速制御システム。
【請求項11】
さらに、前記少なくとも一つのコントローラおよび前記モータ用の少なくとも一つのエネルギー源を有する請求項1に記載の車速制御システム。
【請求項12】
路面を走行する車両の速度を制御する方法であって、以下の工程a.~o.を有する方法。
a.前記車両を減速するために必要な最大減速トルクを少なくとも一つのコントローラに入力する工程、
b.前記車両に許容可能な最大車速制限値を前記少なくとも一つのコントローラに入力する工程、
およびこれと同時に行う、
c.前記車両のスロットルたはアクセラレータ作動しているかどうかを判定する工程、
d.前記車両の前記スロットルたはアクセラレータ作動時には必ず、現在の車速制限値を工程b.の前記許容可能な最大車速制限に設定する工程、
e. 前記車両の前記スロットルたはアクセラレータ非作動時には必ず、前記少なくとも一つのコントローラがスロットルたはアクセラレータ除時の現在の車速値を記録し、前記スロットルたはアクセラレータ除時の記録された現在の車速値を現在の車速制限値として設定する工程、
f.前記車両の操作全体を通して工程c.~e.を連続的に実施する工程、
g.同時に、前記車両の少なくとも一つのブレーキがいつ作動したかを判定する工程、
h.前記車両の前記少なくとも一つが作動した時には必ず、工程d.の現在の車速制限値を変更しない工程、
i.前記車両の前記少なくとも一つのブレーキが作動していない時には必ず、前記車両の前記少なくとも一つのブレーキが作動していない時の現在の車速値を判定かつ記録し、前記車両の前記少なくとも一つのブレーキが作動していない時における記録された現在の車速値を新たな現在の車速制限値として設定する工程、
j.前記車両の操作全体を通して工程g.~i.を連続的に行う工程、
k.現在の車速値と現在の車速制限値をアクティブに比較する工程、
l.前記現在の車速値が前記現在の車速制限値より大きい時には必ず、PIDループロジックコントローラを作動して、減速ブレーキング値をゼロ以上に設定するために必要な車速値の補正値を決定して、現在の車速値を前記現在の車速制限値に等しいか、それ以上に維持する工程、
m.前記現在の車速値が前記現在の車速制限値未満の時に必ず、前記減速ブレーキング値をゼロとして設定する工程、
n.前記車両の操作全体を通して工程k.~m.を連続的に実施する工程、および
o.前記車両の操作全体を通して工程c.~m.を同時かつ連続的に実施する工程。
【請求項13】
車速を前記現在の車速制限に等しいかそれ未満に維持するため減速ブレーキング値を設定するのに必要な補正値の設定時に、前記車両の方向レンジがニュートラルかどうかを決定し、
a.前記車両の方向レンジがニュートラルならば、前記補正値にニュートラルゲイン値を乗算し、
b.前記車両の前記方向レンジがニュートラルでないならば、前記補正値を減速ブレーキング値として設定し、この減速ブレーキング値は、前記車速を前記路面用の現在の車速制限値に維持するため前記車速を減速するのに必要な追加トルク値である、請求項12に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一態様では、使用者が介入することなく、電気自動車(EV)を始めとする車両の速度および/または加速度を制御および/または調整するシステムおよび方法、もう一つの態様では、斜面を降下する車両、特に鉱業用車両の速度および/または加速度を制御および/または調整するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの採掘現場にはまさに鉱業および現場という理由により下り勾配(即ち傾斜路面)が伴う。多くの採掘車両運転者の場合、経時的に移動した壁の容量あるいは経時的に掘削した壁の容量に基づいて補償を受ける。一部の掘削車両運転者に限るが、安全手順を順守せずに(例えば基準速度よりも早く運転するなどして)壁の移動容量または掘削容量を大きく取って増収を図る者がいる。採掘車両の速度の調整および/または制御に車両運転者が介入するさいに、(1)車両の加速度および速度を制御するため下り勾配時に間欠的にブレーキ操作(例えばブレーキに半分足をのせるなど)を行う、(2)車両のドライブギアシステムをロアギアおよび/またはニュートラルギアに設定し、速度調整装置の使用を避ける、および/または(3)車両の常用ブレーキを使用して、下向きの傾斜路面での走行時に車両の速度および/または加速度の調整を行うなどがある。このような車両運転者の介入行為は(a)当該車両、他の車両および作業員を巻き込む事故の発生の恐れを強めるだけでなく、(b)車両のブレーキングシステムを始めとするエンジン部品の望ましくない早期の摩耗、(c)車両の騒音出力増加、(d)車両による望ましくない熱の発生の増加、(e)燃料/エネルギー消費量および排出量の増加の結果として生ずる燃料/エネルギー消費量の増加、および/または(f)車両の下り坂走行時に車両が高い回転(RPM)状態になるためエンジン/モータ部品の摩耗増大が見られ、ブレーキングシステムを始めとする車両および対応する部品の保守コストや修理コストの増大が生じる。
【0003】
車両の速度および加速度を調整し、および/または制御する現在の対処法は車両運転者が介入しかつ判断を行ってギアの速度を適正化することに頼っている。ところが、車両速度およびブレーキに関する運転者の判断および裁量はブレーキ摩耗が大きくなるだけでなく、運転者のミスを原因とする事故の可能性が大きくなる。現在試みられている別な解決策では、油圧リターダ(ブレーキ)、電気リターダやエンジン用圧縮リターダなどのリターダを使用して、下向き斜面走行時の車両の減速を行う。油圧リターダは流体充填チャンバーの動的羽根と静的羽根との間の粘性抗力を使用することによって作動し、減速を行う。工業用油圧リターダの一例はVoith社製のものであり、限定する意図はないが、Voith Retarder 115HVおよびVoith Aquatarder SWRを例示できる。電気リターダは電磁誘導を使用してアクスル、トランスミッションまたはドライブラインのいずれかに減速力を加える。工業用電気リターダの一例はTelma社製のものであり、限定する意図はないが、テルマ電磁式リターダ(AF30-35)を例示できる。エンジン用圧縮リターダはエンジンの圧縮行程を使用して、車両の動きからエネルギーを吸収する。このエンジン用圧縮リターダの場合、各ピストンの圧縮工程時に車両の運動エネルギーを消尽する。これは他のシリンダがシリンダの動力工程の時間中に動力を発生しないからである。現在利用されているリターダは少なくとも以下の欠点をもつ。適正レベルの減速を選択するためには熟練した手動作業員の判断に頼らければならず(即ち試行錯誤)、作業員の注意力が車両の運転から減速プロセスにそがれる結果、速度過剰状態に陥り、作業員が車両を制御できなくなり、潜在的に作業員および近くにいる人員も危険な状態に陥る事態が発生するだけでなく、過剰速度状態から目的の安全な状態への移行時に車両の部品だけでなく、作業員には常に車速を再調整することが求められている限り、超過速度状態から目的の安全速度への移行が“スムーズでない”ため、車速が変動し、不快な運転状態になる。従来システムの場合、車両重量が増加し、部品数も増えるため車両効率が悪化する。
【0004】
鉱業における一部の電気車両の場合、加速/減速が必要なさいにギアを自動的にスイッチするために行う、地形のマッピングに基づくシステムを備えている。ところが、このシステムは車両の積載重量や路面の等級変化などの各種の重要なファクターを考慮していないため、車両が高いRPMに相当するロアギアになり、望ましくない早期の部品摩耗が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、運転者が介入する必要のない、下り勾配を走行する車両の速度を自動的に調整および/または制御するシステムが求められている。また、常にアクティブで、車両運転者が電源を入れることができるが、車両運転時には車両運転者が電源を切ることができず、従って車両がニュートラル位置にあるときにはアクティブであるため、車両の超過速度を緩和できる速度調整システムも求められている。一つの態様では、車両を牽引モードにするためにはパスワードまたはコードが必要であり、コードを入力すると、車両が運転モードになる。本明細書では、超過速度は採掘現場などの現場、位置(地下または地上)、あるいは車両設計/OEM試験のいずれかによって決まる最大値をもつ傾斜路面に沿っての車両の安全運転の最大値と考えられる閾値よりも高い車両の速度として超過速度を定義する。カナダにおける一つの実例はカナダ規格協会(“CSA”)CAN/CSA―M424.3-M90(R2020)であり、これは定格総質量が45,000kgかそれ以下の坑内採掘車両の場合、坑内を32km/時以上で走行してはならないと規定している。また、常用ブレーキを使用しないため、常用ブレーキにかかる摩耗を最小限に抑え、かつこれから発生する過剰熱を最小限に抑制できる速度調整および/または制御システムも求められている。さらに、牽引モータをジェネレーターとして組み込み、抵抗を与えるとともに、排出を抑制した状態で、傾斜路面を走行する車両の速度および/または加速度を調整および/または制御する車速調整および/または制御システムも求められている。
【0006】
本明細書全体を通して以下の用語を使用する。
a.現在の車速値=走行時における車両の実際の速度;
b.現在の車速制限値=車両センサが検出した現在値に応じて本発明のシステムが設定した通りに車両が走行できる現在の上限速度値;
c.許容可能な最大車速制限値=車両がOEMまたは作業/採掘現場により設定された通りに車両が走行できる許容可能な最大速度;および
d.スロットルはアクセラレータと交換可能である。
【0007】
本発明の一態様は車両の速度を調整および/または制御するための車速調整および/または制御システムを提供するものである。一実施態様では当該車両は電気車両であり、別な実施態様では内燃車両であり、さらに別な実施態様ではハイブリッド車両であり、さらに別な実施態様では電気採鉱車両であり、いずれも路面に沿って走行する。
【0008】
一つの実施態様では、車両は下り勾配の路面に沿って走行する。車両の“牽引モード”設定時や車両がオフ設定時を除いて、車両オン設定時、車速調整および/または車速制御システムはアクティブである。本明細書では、“牽引モード”は車速調整および/または制御システムが動作停止状態にあると定義する。一つの実施態様では、(1)車両を牽引するために、そして(2)車両の点検、試験および/または保守を行うために設定したOEM最大速度で車両が走行できる状態で、パスワードで保護されたシステムによって動作停止を行う。本発明の一態様に係る車速調整および/または制御システムは少なくとも一つのコントローラ;少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つのスロットル(またはアクセラレータ)センサ;少なくとも一つのコントローラに通信連絡し、場合に応じて使用するブレーキセンサ;少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つの車速センサ;および少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つの減速ブレーキングシステムあるいは回生ブレーキングシステムを有する。この少なくとも一つのコントローラおよびこの少なくとも一つの減速ブレーキングシステムが現在の車速制限値と現在の(実際の)車速値との比較に基づいて車速を調整する。車速を調整するために利用することができる他のファクターは、限定する意図はないが、例示するとi)許容可能な最大車速制限値、ii)総車両重量、iii)路面の最大傾斜(下り勾配)角度、iv)車両の静的荷重タイヤの半径、v)減速ファクター、およびvi)電気車両のモータと当該車両のホイール体との比である総ギア比である。非電気車両の場合、この総ギア比は減速装置と(フリーホイーリングホイールの反対側にある)車両の牽引装置に連結した駆動ホイールとの比である。
【0009】
一つの実施態様では、少なくとも一つのスロットル(またはアクセラレータ)センサはスロットル(またはアクセラレータ)ペダル位置センサである。
【0010】
一つの実施態様では、少なくとも一つのブレーキセンサはブレーキペダル位置センサである。
【0011】
一つの実施態様では、少なくとも一つのコントローラはさらにPID(proportional integral and derivative)コントローラを有する。
【0012】
一つの実施態様では、車速調整および/または制御システムはさらに前記少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つのギアセンサを有する。
【0013】
一つの実施態様では、少なくとも一つのギアセンサはギア位置センサである。
【0014】
別な実施態様では、少なくとも一つのギアセンサはニュートラルギア位置センサである。
【0015】
一つの実施態様では、少なくとも一つのギアセンサは電気車両を対象とする方向レンジセンサ/方向範囲センサ/測距センサ(direction range sensor)またはFNR(Forward、Neutral and Reverse)位置センサである。別な実施態様では、車速調整および/または制御システムはさらに少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つの牽引モードインジケータを有する。
【0016】
本発明の第2態様は車両、一つの実施態様では電気車両、別な実施態様では内燃車両、さらに別な実施態様ではハイブリッド車両、さらに別な実施態様では電気採鉱車両の速度を調整および/または制御する車速調整および/または制御システムを提供するもので、いずれの車両も路面に沿って走行し、あるいは一つの実施態様では下り勾配の路面に沿って走行する。当該車速調整および/または制御システムは、この車両が牽引モードにある時以外は、当該車両の走行時にアクティブである。当該車速調整および/または制御システムは少なくとも一つのコントローラ;この少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つのスロットル(またはアクセラレータ)センサ;(一つの実施態様では当該少なくとも一つのスロットル(またはアクセラレータ)はスロットル(またはアクセラレータ)ペダル位置センサである);適宜使用する、当該少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つのブレーキセンサ;(一つの実施態様では当該少なくとも一つのブレーキセンサはブレーキペダル位置センサである);および当該少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つの車速センサを有し、当該少なくとも一つのコントローラがさらにPIDコントローラおよび当該少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つの減速ブレーキングシステムを有し、当該PIDコントローラおよび当該少なくとも一つの減速ブレーキングシステムが限定する意図はないが、例示するとi)許容可能な最大車速制限値、ii)総車両重量、iii)当該路面の最大傾斜角度、iv)車両の静的荷重タイヤの半径、v)減速ファクター、およびvi)当該電気車両のモータと当該車両のホイール体との総ギア比などのファクターに基づいて車速を調整する。
【0017】
一つの実施態様では、当該車速調整および/または制御システムはさらに当該少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つのギアセンサを有する。
【0018】
一つの実施態様では、当該少なくとも一つのギアセンサはギア位置センサである。
【0019】
別な実施態様では、当該少なくとも一つのギアセンサはニュートラルギア位置センサである。
【0020】
一つの実施態様では、当該少なくとも一つのギアセンサは電気車両用のフォワード、ニュートラル、リバース(FNR)センサである。
【0021】
別な実施態様では、当該車速調整および/または制御システムはさらに当該少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つの牽引モードセンサを有する。
【0022】
一つの実施態様では、当該少なくとも一つのスロットル(またはアクセラレータ)はアナログセンサであり、限定を意図するものではないが、例示すると、スロットルまたはアクセラレータペダルの位置によってレバー作動し、走行25mm(1インチ)の間に線形出力を出すParker ADS(TM)50アナログセンサである。
【0023】
一つの実施態様では、このアナログセンサは非接触式のホール効果技術を利用する。このホール効果技術では磁場の存在および大きさを検出する非接触方法を組み込む。一つの実施態様では、限定を意図するものではないが、例示するとParker IQAN-MC(TM)マスターコントローラなどの電子コントローラなどのコントローラにこのアナログセンサを接続し、当該少なくとも一つのスロットル(またはアクセラレータ)センサからの信号を受け取りかつ処理する。
【0024】
一つの実施態様では、前記少なくとも一つのブレーキセンサはアナログセンサであり、限定を意図するものではないが、例示すると、ブレーキペダルの位置によってレバー作動し、走行25mm(1インチ)の間に線形出力を出すParker ADS50(TM)アナログセンサである。
【0025】
一つの実施態様では、このアナログセンサは非接触式のホール効果技術を利用する。
【0026】
一つの実施態様では、限定を意図するものではないが、例示するとParker IQAN-MC(TM)マスターコントローラなどの電子コントローラなどのコントローラにこのアナログセンサを接続し、前記少なくとも一つのブレーキセンサからの信号を受け取りかつ処理する。
【0027】
別な実施態様では、当該少なくとも一つのブレーキセンサはブレーキパッドまたはブレーキラインにかかる圧力を検出し、この圧力を電圧出力に転換する圧力センサである。圧力センサの一例はParker SCP Compact Pressure Sensorである。
【0028】
一つの実施態様では、限定を意図するものではないが、例示するとParker IQAN-MC(TM)マスターコントローラなどの電子コントローラなどのコントローラにこの圧力センサを接続し、この圧力センサからの信号を受け取りかつ処理する。
【0029】
一つの実施態様では、前記少なくとも一つの速度センサは車両のモータまたはホイールのRPMを測定するセンサである。限定を意図するものではないが、例示すると、車両の速度に移行する、車両のモータまたはホイールのRPMをホール効果技術によって測定するParker Ground Speed(GS)100(TM)である。ホール効果技術では磁場の存在および大きさを検出する非接触式の方法を応用する。この場合、車両のモータまたはホイールの磁石が一回転するたびにそれを検出し、RPMを測定し速度を求める。別な例はParker True Ground Speed Sensor(“TGSS”)740(TM)であり、このセンサはドップラーシフトを応用することによって車両の真の対地速度を測定する。TGSSからマイクロ波信号が発信し、この信号が路面から反射し、反射信号をTGSSが受信する。路面がTGSSに対して相対的に移動する状態では、反射信号(ドップラーシフト)周波数が変化する。この周波数変化を測定することによって真の対地速度を算出する。一つの実施態様では、限定を意図するものではないが、例示するとParker IQAN-MC(TM)マスターコントローラなどの電子コントローラなどのコントローラにこの前記少なくとも一つの速度センサを接続し、前記少なくとも一つの速度センサからの信号を受け取りかつ処理する。
【0030】
一つの実施態様では、前記少なくとも一つのギアセンサは少なくとも一つのフォワード、ニュートラル、リバース(FNR)位置センサである。
【0031】
一つの実施態様では、前記少なくとも一つのFNRポジションセンサはデジタルセンサである。限定する意図はないが、例示するとCOBO Group Controller Area Network(CAN)FNRセンサである。このCOBO Group CAN FNRセンサはホール効果技術によって動作し、回転が生じているかどうか(即ちニュートラル)を、そして回転がフォワードまたはリバースであるかどうかを決定する。
【0032】
一つの実施態様では、限定を意図するものではないが、例示するとParker IQAN-MC(TM)マスターコントローラなどの電子コントローラなどのコントローラにこの圧力センサを接続し、前記少なくとも一つのFNR位置センサからの信号を受け取りかつ処理する。
【0033】
一つの実施態様では、前記システムはさらに車両が走行する地形の勾配または斜面を測定する勾配センサを有する。限定する意図はないが、Signal Quest SQ-GIX(TM)などの傾斜計を例示できる。
【0034】
一つの実施態様では、この傾斜計はParker IQAN-MC(TM)マスターコントローラと併用できる。
【0035】
一つの実施態様では、前記少なくとも一つの減速ブレーキングシステムは限定を意図するものではないが、油圧リターダ、電気リターダ、およびエンジン用圧縮リターダなどの少なくとも一つのリターダ(retarder)を有し、下向き斜面走行時の車両を減速するのに役立つ。油圧リターダは流体充填チャンバーの動的羽根と静的羽根との間の粘性抗力を使用することによって作動し、減速を行う。工業用油圧リターダの一例はVoith社製のものであり、限定する意図はないが、Voith Retarder 115HVおよびVoith Aquatarder SWRを例示できる。電気リターダは電磁誘導を使用してアクスル、トランスミッションまたはドライブラインのいずれかに減速力を加える。工業用電気リターダの一例はTelma社製のものであり、限定する意図はないが、テルマ電磁式リターダ(AF30-35)を例示できる。エンジン用圧縮リターダはエンジンの圧縮行程を使用して、車両の動きからエネルギーを吸収する。このエンジン用圧縮リターダの場合、各ピストンの圧縮工程時に車両の運動エネルギーを消尽する。これは他のシリンダがシリンダの動力工程の時間中に動力を発生しないからである。一つの実施態様では、前記減速ブレーキングシステムは回生ブレーキングシステムである。
【0036】
本発明の第2態様は、a)i)アクセラレータまたはスロットルを解除した瞬間に、および/またはii)ブレーキペダルを解除した瞬間に車両の速度センサから速度信号を受信する工程、b)車両の速度センサから受信した現在の速度信号が現在の車速制限値より大きいかどうかを判断する工程、c)車両の速度センサから受信した現在の速度信号が現在の車速制限値よりも大きい場合には、コントローラ内のPIDループロジックによって補正値を計算し、減速ブレーキ作動を開始し、車両の速度を調整し、現在の速度値を現在の車速制限値に維持する工程、d)車両の速度センサから受信した現在の速度信号が現在の車速制限値未満か、あるいは等しい場合には、補正値を計算しない工程、およびe)車両の走行操作全体を通してこれら行程を繰り返す工程を有する車両の速度を調整および/または制御する方法を提供するものである。前記車両は一実施態様では電気車両であり、別な実施態様では内燃車両であり、さらに別な実施態様ではハイブリット車両であり、更に別な実施態様では電気採鉱車両であり、いずれも路面に沿って走行し、一つの実施態様では下がり勾配路面に沿って走行する。一つの実施態様では、前記減速ブレーキ装置は油圧リターダ、電気リターダおよびエンジン用圧縮リターダからなる群から選択する少なくとも一つの減速装置であり、下向き傾斜面に沿っての走行時に車両を減速するのに役立つ。油圧リターダは流体充填チャンバーの動的羽根と静的羽根との間の粘性抗力を使用することによって作動し、減速を行う。工業用油圧リターダの一例はVoith社製のものであり、限定する意図はないが、Voith Retarder 115HVおよびVoith Aquatarder SWRを例示できる。電気リターダは電磁誘導を使用してアクスル、トランスミッションまたはドライブラインのいずれかに減速力を加える。工業用電気リターダの一例はTelma社製のものであり、限定する意図はないが、テルマ電磁式リターダ(AF30-35)を例示できる。エンジン用圧縮リターダはエンジンの圧縮行程を使用して、車両の動きからエネルギーを吸収する。このエンジン用圧縮リターダの場合、各ピストンの圧縮工程時に車両の運動エネルギーを消尽する。これは他のシリンダがシリンダの動力工程の時間中に動力を発生しないからである。本発明の別な態様は車両の速度を調整および/または制御する方法を提供するものである。
【0037】
前記車両は一実施態様では電気車両であり、別な実施態様では内燃車両であり、さらに別な実施態様ではハイブリット車両であり、更に別な実施態様では電気採鉱車両であり、いずれも路面に沿って走行し、一つの実施態様では下がり勾配の路面に沿って走行する。前記方法では前記車両が牽引モードにある場合を除いて、以下の工程を有する。
工程1:前記車両の少なくとも一つのコントローラに
i)許容可能な最大車速制限値;
ii)総車両重量;
iii)前記路面の最大傾斜角度;
iv)車両の静的荷重タイヤの半径;
v)減速ファクター;および
vi)電気車両のモータと当該車両の車輪との比である総ギア比を入力して、前記少なくとも一つのコントローラによって前記車両を速度ゼロまで減速するために必要な最大減速トルク値を計算する工程。
工程2:前記車両を速度ゼロに減速するために必要な最大減速トルク値を求め、この値を少なくとも一つのコントローラに入力する工程であって、前記車両を速度ゼロに減速するために必要な前記最大減速トルク値が、一つの実施態様では、TB=[rT×Wv×(Fd+sinθ)]/RG(式中TB=必要な最大減速トルク、rT=静的荷重タイヤの半径、Wv=総車両重量、Fd=減速ファクター、θ=路面の最大傾斜角度、RG=モータ/ホイール体間の総ギア比)に基づく工程。
工程3:前記車両に対して許容可能な最大車速制限値を、現場条件、および/または設計、および/またはOEM試験、および/または政府または業界の規制のいずれか要求度の低い方によって定まる少なくとも一つのコントローラに入力する工程であって、一つの実施態様では、前記許容可能な車速制限値は現在の車両速度に対する業界の規制(限定する意図はないが、最大車両速度、あるいは作業現場仕様が定めている最大車両速度に対する現在の鉱業規制を例示できる)を選択する工程。これと同時に行う、
工程4:前記車両のスロットル(またはアクセラレータ)が作動しているかどうかを判定する工程であって、一つの実施態様ではスロットル(またはアクセラレータ)ペダルが作動しているかどうかを判定し、別な実施態様ではスロットル(またはアクセラレータ)が作動しているかどうかを判定し、スロットル(またはアクセラレータ)が作動しているかどうかの判定は少なくとも一つのスロットル(またはアクセラレータ)センサによって行う工程。
工程5:前記車両の前記スロットル(またはアクセラレータ)が作動しているときは必ず、車速制限値を工程4の前記許容可能な最大車速制限値に設定する工程。
工程6:前記車両の前記スロットル(またはアクセラレータ)が作動していない場合に必ず、前記少なくとも一つのコントローラがスロットル(またはアクセラレータ)解除時の現在の車速値を記録し、スロットル(またはアクセラレータ)解除時の現在の車速値を新たな車速制限値として設定する工程(但し、a.工程4~6は前記車両の走行動作全体を通して連続的に行う)。
工程7:一つの実施態様では、場合に応じて前記車両の少なくとも一つのブレーキが作動した場合に必ず判定を行い、一つの実施態様では前記車両のブレーキペダルが作動したかどうかを判定し、別な実施態様では、前記車両のブレーキペダルが踏み込まれたかどうかを判定する工程であって、前記車両の少なくとも一つブレーキが作動したかどうかの判定は少なくとも一つのブレーキセンサによって行う工程。
工程8:前記車両の前記少なくとも一つのブレーキ作動時には必ず、工程6の車速制限値の変更を行わない工程。
工程9:前記車両の前記少なくとも一つのブレーキの解除時または非作動時に必ず、前記車両の前記少なくとも一つのブレーキの解除時の現在の車速値を記録し、新たな車速制限値として設定する工程であって、一つの実施態様では現在の車速値の判定は少なくとも一つの速度センサ、前記車両の同じアクスルの少なくとも二つの対向ホイールの少なくとも一つのRPMセンサによって行い、RPMを車両の速度に変換し、一つの実施態様では、前記現在の車速値は限定するものではないが、ドップラーレーダーなどの対地速度センサによって判定し、別な実施態様では前記現在の車速値はモータのRPMを車両速度またはその組み合わせ値に変更することによってモータ速度エンコーダによって判定する工程(但し、a.工程7~9は前記車両の運転全体を通して連続的に行うが、一つの実施態様では場合に応じて行う)。
工程10:PIDループロジックコントローラを使用して、現在の車速値を現在の車速制限値とアクティブに比較する工程。
工程11:前記現在の車速値が前記現在の車速制限値に近くなるか超えた場合には必ず、前記PIDループロジックコントローラによって減速ブレーキ値をゼロより大きく設定するために必要な車速値の補正値を判定し、現在の車速値を前記現在の車速制限値に等しい値かそれよりも小さい値に維持する工程。
工程12:前記現在の車速値が前記現在の車速制限値より小さい場合には、前記現在の車速値を前記車速度制限値に、あるいはこれ未満に維持する値に前記減速ブレーキ値に設定する工程(但し、a.前記車両の運転全体を通して工程10~12を連続的に行い、そしてb.前記車両の運転全体を通して工程4~12を同時かつ連続的に行う)。
工程13:場合に応じて、減速ブレーキ値に設定するために必要な補正値を設定し、現在の車速値を前記現在の車速制限値に等しい値かそれよりも小さい値に維持するさいに、車両駆動ギア(またはFNR位置の牽引駆動)がニュートラルであるかどうかを判定する工程。
工程14:車両駆動ギア(または牽引駆動またはFNR位置)がニュートラルの場合には、工程11で求めた補正値にニュートラルゲイン値を乗算する工程であって、一つの実施態様では前記ニュートラルゲイン値はゼロより大きくかつ1未満か1に等しく、好ましくは約0.5~1に等しいかそれ未満であり、別な実施態様では前記ニュートラルゲイン値は約0.8である工程。
工程15:車両駆動ギア(または牽引駆動)がニュートラルでない場合には、補正値を工程11の減速ブレーキ値に設定する工程であって、減速ブレーキ値が車速を減速して、前記道路面の下り勾配に応じて前記車速を現在の車速制限値に維持するために必要な追加トルク値である工程。
工程16:前記車両が牽引モードの場合には必ず、車両の速度を調整および/または制御する方法は解除される。一つの実施態様では、システムが車両に問題がある(即ち車両の運転は安全ではない)と判定した場合には、システムは車両の牽引を推奨することになる。前記システムに牽引モードコマンドが入力された場合には、車両の速度を調整および/または制御する前記方法は無効になる。
【0038】
一つの実施態様では、本明細書に記載するシステムは電源投入時に作動し、電源オン状態でシステムはアクティブ状態を維持し、車両は運転可能である。このシステムの場合、車両運転者は車両速度が過剰であるかを評価する必要がない。速度調整システムおよび方法では、車両の速度を補正するために車両の常用ブレーキを利用しないが、より正確に言えば、車両の牽引モータをジェネレーターとして使用して、(以下に記載するように)牽引モータに抵抗を与えるとともに、現在の車速値と現在の車速制限値との比較に基づいてコントローラからの信号に応答して車両の速度を制御する。本システムにはいくつかの作用効果があり、車両の速度超過を緩和でき、前記車両の速度を安全範囲内に維持でき、車両運転者の反復関節動作を抑制でき、特にペダル操作の減少による足首関節の反復動作を抑制でき、車両運転者の筋肉疲労を抑制でき、減速ブレーキングによる速度制御によって常用ブレーキの使用回数減少および無用な排出物の減少を考えた場合の車両および車両部品、限定は意図しないが、車両のブレーキやアクスルなどが発生する廃熱を抑えることができる。
【0039】
一つの実施態様に係る本発明の速度調整システムでは、PID制御ループロジックを利用して、減速ブレーキングが車両速度調整を補佐できるかの減速要請を判定する。
【0040】
PID制御は当業者には公知であり、最適な応答を得るために業界で使用されてきている。PID制御アルゴリズムは業界に既に許容されている標準アルゴリズムであり、一実施態様では電気車両である車両の速度調整にも現在の減速値を決定することによって応用し、車両の、特に下り勾配に沿って走行する車両の速度を調整するさいに減速ブレーキングを行う。
【0041】
減速ブレーキングは当業者には公知である。減速ブレーキングはその運動エネルギーを電気エネルギーや熱エネルギーなどの別なエネルギー形態に転換することによって走行車両または対象物を減速するエネルギー回収機構である。この機構では、電気トラクションモーターが車両の運動量を使用して、さもなければ熱としてブレーキディスクに吸収されるエネルギーを回収する。減速ブレーキングの一形態は回生ブレーキングとして当業者に公知である。
【0042】
一つの実施態様では、車両の現在の車速制限値に近づき、車両運転者がアクセラレータおよび/またはブレーキペダル(複数の場合もある)を解除すると、PIDコントローラによって現在の車速制限値が自動的に現在の(実際の)車速値として設定される。加えて、車両の最大道路速度が車両メーカー、政府または政策基準/規制によって、および/または現場の具体的な最大許容可能な車速制限値によって予め設定(PIDコントローラのデフォルトな現在の初期車速制限値になる)されるという意味で別なパラメーターも設定することができる。一つの実施態様では、車両が下り勾配を走行している状態で、車両運転者によってスロットル(またはアクセラレータペダルなどのアクセラレータ)が作動したことをシステムが判定する条件で、あるいは車両ギア位置またはFNR位置がニュートラルに設定されたことをシステムが判定する条件で(いずれも超過速度事象を誘発する試みである)、現在の車速値と現在の車速制限値との比較時に、本発明システムが減衰または調整を行い、車両が超過速度になることを抑制し、安全な下り勾配走行速度を維持できる。一つの実施態様では、これは一つかそれ以上の補正値を計算し、減速ブレーキング駆動指令(redartive braking drive command)をモータに与え、現在の車速値を超過速度条件に対応する閾値である車速制限値まで下げるのに十分な量でモータが車両の回生ブレーキングを行うことによって実施できる。
【0043】
もう一つの実施態様では、本発明の制御システムが現在の車速値が閾値である車速制限値以上になったことを検出し、さらに車両が下り勾配走行状態である条件を検出した場合に、PIDコントローラが現在の車速値(あるいは速度のデリバティブを使用する場合には現在の加速率または現在の速度を得るための現在の加速率の積分値)を現在の車速制限値(または標的加速率)と比較し、PIDコントローラアルゴリズムへの入力としての誤差項を求め、予め算出した減速ブレーキング補正値をモータに加えることができるため、モータの標的RPMを維持および/または獲得でき、これによって現在の車速制限値に到達でき、および/または超過速度状態を示す現在の車速制限値より小さく現在の車速値を維持できる。PIDアルゴリズムによって、誤差項または誤差値から減速ブレーキング補正値は以下のようにして求めることができる。
【0044】
第1ゲイン値PΔは比例ゲイン値である。比例ゲイン値は平行移動し、例えば誤差項Δ=誤差値が大きくなればなるほど、車両の超過速度を補正するために要求される減速度が大きくなる。現在の車速値が現在の車速制限値より高くなればなるほど、誤差項(誤差値)が大きくなり、また要求される減速度(即ち補正値またはU)が大きくなる。第2ゲイン値
は、積分ゲイン値であり、所定の時間間隔にわたって求められた誤差項の合計である。一つの実施態様では、求められた誤差項の合計である現在の時間間隔は10ミリ秒(ms)毎である。時間間隔の範囲は10ms~500msである。第3ゲイン値D(Δ-Δ(T-1))は、補正が行き過ぎないように将来必要になる補正を見越すために求められた誤差項の変化率を検証するデリバティブゲイン値である。これら3種類のゲイン値を計算に組み込み、必要に応じて求められる減速度としても知られている必要な減速ブレーキング補正Utを判定する。
【0045】
電気車両の電気モータのRPM制御または調整については、減速ブレーキング、本例では回生ブレーキングシステム(regenerative braking system)が発生する磁場の強度および電流量を調節することによって維持する。この調節によって望ましくない(または過剰な)運動エネルギーを電気エネルギーに変換する。この調節によって発生する電流が多いほど、モータに加わる抵抗(“減速トルク”)が大きくなり、従って車両が目的とする車速値に達するための減速度が大きくなる。既存のシステムとは逆に、本発明の減速ブレーキングは車両の加速時に行うが、従来の減速ブレーキングは減速時に行う。標的速度(または現在の車速制限値)に移行する標的RPMとしての発生電流は、車両運転者が減速を荒っぽい(突然の前傾姿勢でブレーキ操作を行うと、車両運転者がハンドルに向かって移動することになる)プロセスではなく、スムーズなプロセスとして感じることができる割合で減少するため、運転者に不快感を与えることはない。
【0046】
本発明では、システムおよび方法から生じる回生曲線は自然に変調するが、大半の電気自動車は一定の回生曲線を有する。回生ブレーキングの変調率については、本発明の場合、本明細書に記載するように現在の車速値と現在の車速制限値との比較時に望ましくない加速が見られない限り、減速は必要ない程度である。従って、本明細書に記載する回生ブレーキングは車速の制御または調整を行うためのダイナミックレートで使用する。
【0047】
本発明では、システムは減速時にパルス動作するため、現在の車速制限値を維持できるが、現状のクルーズコントロールの場合は加速モード中にパルス動作する。換言すると、本発明ではシステムから運動エネルギーを排除するが、従来技術ではシステムに運動エネルギーを加える。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は一実施態様に係るシステム部品を示す概略図である。
図2図2は一実施態様に係るシステムおよび方法の意思決定フローチャートの概略図である。
図3図3は一実施態様に係るブレーキセンサおよび/またはアクセラレータセンサ用のアナログセンサを示す図である。
図4図4は一実施態様に係るブレーキセンサ用の圧力センサを示す図である。
図5図5は一実施態様に係る対地速度センサを示す図である。
図6図6は一実施態様に係る真の対地速度センサを示す図である。
図7図7は一実施態様に係るコントローラを示す図である。
図8図8は立下りエッジの一つの考えを示す図である。
図9A-B】図9Aおよび図9Bはブレーキ作動時の、そしてブレーキ非作動時の速度コントローラを備えた車両の各種センサ曲線を示す図である。
図10図10は減速ブレーキングを調整し、車両速度を車両の速度制限値に、あるいはこれ未満に維持した状態にある図9のモータトルクを示す展開図である。
図11A-B】図11Aおよび図11Bはブレーキ作動時の、そしてブレーキ非作動時で、車両ギアがニュートラルの速度コントローラを備えた車両の各種センサ曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1に車両20、特に電気車両用の車速調整装置10を示す。車速調整装置10は多数の部品を有する。即ち、複数のセンサ類、特に車速センサ40、適宜使用するブレーキセンサ50、アクセラレータ(またはスロットル)センサ60および適宜使用する測域センサまたはギア位置(FNR位置)センサ70に通信連絡するPIDコントローラなどのコントローラ30、車両モータ80(非電気車両の場合、80は限定するものではないが、油圧減速装置や直流モータなどの減速装置を指す)、および電源90である。センサ40、50、60および70はコントローラ30と通信連絡し、各センサから信号をコントローラ30に送信する。特に、センサ40としてはデジタルセンサを使用することができ、車両モータ80の回転を検出し、秒単位でパルス値を送信し、次にコントローラ30によって車両速度に変換されるモータ80の回転数RPMを送信する。あるいは、センサ40としてはドップラー波の原理で動作する“真の対地速度”センサを使用することができる。また、当業者に公知の衛星測位システム(GPS)センサも使用可能であり、当業者に公知のホール効果も使用可能である。ブレーキセンサ50について説明すると、このセンサとしてはアナログポテンショメータを使用することができ、一つの実施態様ではリニアまたはロータリーポテンショメータを使用することができ、ブレーキ作動を測定し、一つの実施態様では非作動第1位置から作動第2位置までのブレーキペダルの相対位置を測定する。この場合、非作動第1位置は踏み込み度0%として検出され、作動第2位置は0%以上100%までの踏み込み度として検出され、また完全踏み込み時には、前記第2位置は踏み込み度が100%である。この実施態様では、ブレーキセンサからコントローラへの信号は電圧値または電流値から選択する。別な実施態様では、前記ブレーキセンサは力ロードセルで(load cell)、ブレーキペダルにかかる荷重を測定する。別な実施態様では、前記ブレーキセンサは圧力トランスデューサ(transducer)によってブレーキ圧力を測定し、電圧信号または電流信号をコントローラに送信するブレーキ圧力センサである。
【0050】
アクセラレータ(スロットル)センサ60としてはアナログポテンショメータを使用することができ、別な実施態様ではリニアまたはロータリーポテンショメータを使用することができ、これはアクセラレータ作動を測定し、一つの実施態様では非作動第1位置から作動第2位置までの相対位置を測定する。この場合、非作動第1位置は踏み込み度0%として検出され、作動第2位置は0%以上100%までの踏み込み度として検出され、また完全踏み込み時には、前記第2位置は踏み込み度が100%である。この実施態様では、アクセラレータセンサ60からコントローラ30への信号は、コントローラによって0%非作動度から100%の完全作動度に変換される電圧値または電流値から選択する。別な実施態様では、前記アクセラレータセンサ60は力ロードセルであり、アクセラレータセンサ60に加わる力を測定する。
【0051】
場合に応じて使用するギア位置センサ(またはFNRセンサ)70は少なくとも一つのスイッチ、好ましくは複数のスイッチ、より好ましくはデジタルスイッチであり、スイッチが入っているか、あるいは入っていないかを検出する。好ましくは、前記少なくとも一つのスイッチはフォワード、ニュートラルおよびリバース(Forward、Neutral and Reverse)のうちの少なくとも一つのギア位置を制御する。一つの実施態様では、2つのスイッチを使用し、これら2つのスイッチのうちの一方がフォワード位置に係合し、他方がリバース位置に係合する。3つのスイッチを使用するのが好ましく、一つはフォワード位置に、一つはニュートラル位置に、一つはリバース位置に対応する。前記ギア位置センサ70はデジタル電圧信号をコントローラに送り、フォワード、ニュートラルまたはリバースに作動しているか否かを検出する。あるいは、アナログポテンショメータを使用して、車両のギア位置を判定してもよい。あるいは、静電容量タッチセンサを使用して、ギア位置を判定し、デジタル信号をコントローラに送ることも可能である。
【0052】
車両20の速度は車速センサ40が測定する。一つの実施態様では10msの周波数で車両20の速度を測定し、別な実施態様では周波数は1~1000ms、好ましくは1~500msである。この測定は当業者には公知であり、車両モータ80のRPMを測定することができる。車速センサ40は本明細書に記載するセンサから選択することができる。車速センサ40がデジタルセンサかホール効果型センサの場合には、送電経路に沿っている限りどこに設けてもよい。一つの実施態様では、コモンアクスルにある各ホイール21に車速センサ40を設ける。別な実施態様では、前記センサは牽引装置に接続した回転部材の任意の位置に設けることができる。ドップラー波を利用するセンサの場合、車両20の地面に対する視線がクリアな箇所に設ければよい。GPSセンサの場合には、衛星と通信連絡する車両内に、あるいは車両上に設ければよい。
【0053】
ブレーキセンサ50の場合、ブレーキによって車両10に加わるブレーキングのレベルを測定する。ブレーキペダル位置(即ち作動しているか否か)に基づいて、あるいは当業者にとって公知なブレーキ測定値、限定は意図しないが例示すると、モータトルクおよび/またはモータアンペア数に基づいてブレーキングのレベルを測定することができる。ブレーキセンサ50は本明細書に記載するセンサから選択することができる。一つの実施態様では、ブレーキセンサ50としてアナログポテンショメータおよび/または力ロードセルを使用し、これをブレーキペダル上か、これに近接して設けることができる。ブレーキが圧力パッドで、ブレーキセンサ50がブレーキ圧力センサの場合には、ブレーキ油圧回路内にある限りどこに設けてもよく、ブレーキ圧力パッドにかかる圧力を測定することができる。
【0054】
車両20の加速度(またはスロットル位置)はアクセラレータ(またはスロットル)センサ60が測定する。この測定のさいには、車両20内のアクセラレータ(またはスロットル)ペダル位置を測定することができ、あるいは当業者にとって公知な他の方法も使用してよい。アクセラレータ(またはスロットル)センサ60は本明細書に記載するセンサから選択することができる。アクセラレータセンサがアナログポテンショメータかあるいは力ロードセルの場合には、アクセラレータペダルに、あるいはこれに近接して設けることができる。
【0055】
適宜使用する側域センサ、ギア位置センサまたはFNR位置センサ70が、車両20のギア位置またはFNR位置がフォワード、ニュートラルまたはリバース位置にあるかを測定する。この測定のさいには、ギアシフトレバーの位置を測定することができ、あるいは当業者にとって公知な他の方法も使用してよい。側域センサ70は本明細書に記載のセンサから選択することができる。このギア位置センサ70は牽引装置に、あるいは牽引装置に近接して設ければよく、車両が電気車両の場合には、前記牽引装置の回転方向を検出する。あるいは、前記ギア位置センサ70はトランスミッションに、あるいはこれに近接して設ければよく、車両20が非電気車両の場合にギア作動を検出する。
【0056】
一つの実施態様では、車両モータ80は車両20に牽引運動を与えるだけでなく、減速ブレーキシステムとしても作用する。車両モータ80もコントローラ30内のPIDによって判定した場合に減速ブレーキングのジェネレーターとして作用する。
【0057】
電源90がコントローラ30に電力を供給し、車両モータ80によって電源90を充電することができる。
【0058】
車両モータ80とコントローラ30との間の通信は(30から80への)単方向通信であるが、80からの信号は車速センサ40を介してコントローラ30に送信され、電源90およびコントローラ30からの通信連絡は両方向であり、コントローラ30内のPIDが要求する減速ブレーキングが容易になり、電源90が80からのエネルギーを保存できる。
【実施例1】
【0059】
本明細書に開示するシステムおよび方法の実施例を以下に示す。
【0060】
第1工程では、各種の値を前記コントローラに入力して、最大速度から安全に車両を減速するための最大設計減速トルクを算出する。即ち、i.操車現場において許容可能な最大車速制限値を入力する;ii.車両総重量を入力する;iii.車両の最大設計傾斜角(車両の最大下り勾配)を入力する;iv.静的荷重タイヤの半径(静的荷重半径)を入力する。この静的荷重半径は推奨圧力まで膨張した定置式タイヤの荷重半径である。荷重半径はホイール面内で測定したホイール中心に接触するタイヤの中心からの距離である。次に、
v.(車速をどの位積極的に減速するかのファクターである)減速ファクターを入力し;vi.モータとホイール体との総ギア比を入力して(トランスファケース、トランスミッションかあるいは異なるアクスルを備えた車両にPIDロジックを使用できるようにする)。電気車両用のトランスミッションまたはトランスファケースがない場合、1:1の総ギア比を使用する。最後に、viiこれら値を次式に代入し、必要な減速トルクを算出し、下向き勾配角度および下記の他のファクターに応じて車両を減速する。
TB=[rT×Wv×(Fd+sinθ)]/R(式中TB=必要な減速トルク、rT=静的荷重タイヤの半径、Wv=総車両重量、Fd=減速ファクター、θ=道路面の傾斜角度、R=モータ/ホイール体間の総ギア比)。
【0061】
ある場合にはTB値はそのまま使用することができ、別な場合にはコントローラに応じて必要な減速トルク値をゼロ~100のスケーリングされた数学的値であってもよいベクトルに変換することができる。ゼロは車両に減速トルクが作用していない状態を、そして100は車両に計算された最大の減速トルクが作用している状態を示す。
【0062】
基本的なシステムの場合、車速コントローラにTB計算値を手動入力する。より高度なシステムでは、TB式の各パラメーターを車速コントローラに入力し、コントローラによってTBを計算する。
【0063】
車両電源が入っている場合には、ギア設定またはギア位置に関係なくシステムは常にアクティブである。(ギアシステムの非作動時、あるいはFNR方向レンジがニュートラル時には)システムはニュートラルでアクティブである。本明細書に記載するように、従来システムの一つの欠点は車両ニュートラル時に減速システムが作動せず、車両運転者がニュートラル設定を行うことによって減速システムを回避せざるを得なくなる点にある。システムをニュートラル時にアクティブにしておくことの一つの作用効果は、車両がニュートラルになるかもしれない車両運転者の誤用回数を減少でき、ギア制限を取り払い、下り勾配での速やかな滑走を試みることができる上に、制御によって制限を受ける車速を凌駕し、および/またはブレーキングシステムの摩耗を抑制できる点にある。システムがアクティブでなくなる唯一の時間は車両休止時であり、牽引モード時である。
【0064】
本発明システムの方法のフローダイヤグラムを示す図2を参照して説明する。この方法の開始時点は車両始動時である。開始200に応じて、システムはスロットルが作動しているかどうかを(あるいはスロットルまたはアクセラレータペダル202が踏み込まれているかを)判定する。イエスなら、許容可能最大車速制限値204に車速制限値を設定する。許容可能な最大車速制限値204はOEMか、あるいは作業現場制限もしくは規制速度制限に応じて決定する。車両運転者が車両のギアを作動し、スロットルを作動して許容可能な最大車速制限値204より大きくない一定の速度に設定する。スロットルの非作動時には、換言すると、スロットルが踏み込まれていない非作動時に、システムはスロットル解除時の現在の車速を記録し、車速制限値205をスロットル解除時に記録された現在の車速として設定する。同時に、システムはブレーキが作動しているか(あるいはブレーキペダルが踏み込まれているか)206を判定する。ブレーキが作動している場合には、上記の車速制限値205はまだ変化しない。ブレーキペダルの解除時に、ブレーキペダル解除の瞬間にシステムは現在の車速値207を記録し、これを新たな現在の車速制限値205として設定する。システムは瞬時に、そして作動(即ちブレーキ作動または非作動、スロットル作動または非作動)から50ミリ秒以下で新たな車速値を測定し、かつ記録する。好適な実施態様では、この時間は10~500ミリ秒である。ペダル解除が生じると直ちにスロットルがリセットする。これは“立下りエッジ”として知られている。
【0065】
システムが現在の車速値を記録し、これを新たな現在の車速制限値205として設定した後は、システムは次にアクセラレータペダルが踏み込まれていない(作動していない)限り、現在の速度制限値205と現在の車速値207とをアクティブに比較する。アクセラレータペダル202の踏み込み時(非作動時)、システムは300で許容可能な最大(あるいは予めプログラムされた)車速制限値204と現在の車速値207とを比較する。
【0066】
アクセラレータペダル202が踏み込まれていない場合には、システムが次に300で現在の車速値207が現在の車速制限値205より大きいかどうかを判定する。
【0067】
207との比較後、300でノー回答ならば、現在の車速値207は現在の車速制限値205より小さいか、あるいは等しく、減速ブレーキングの必要はない。減速ブレーキングの必要がない前提で、システムは減速装置に“0”またはゼロ信号214を送り、システムは工程200に戻る。
【0068】
300でイエス回答ならば、そして現在の車速値が現在の車速制限値205より大きい場合には、コントローラ内のPIDロジックでの判定に従って、システムが次に減速ブレーキング222のために必要な補正値216を算出する。
【0069】
PIDループロジックについては、前記した通りである。ブレーキペダルの踏み込み角度に所定のゲイン値を乗算し、0%~100%の減速ブレーキングリクエストとしてコントローラに送信する。一例を挙げると、予め設定したゲイン値が3.3で、ブレーキペダルの踏み込み角が30%の場合には(即ちブレーキペダルがブレーキペダルの出発位置から30%踏み込まれると)、減速ブレーキングリクエストがコントローラに対して、そしてモータに対して99%になるため、モータにかかる抵抗が強くなり、モータが車両を安全な速度制限まで減速するために必要な減速の大部分を担うことになり、車両の常用ブレーキへの摩耗および熱が減少するため、常用ブレーキの寿命が長くなり、また保守コストも削減できる。
【0070】
一旦減速ブレーキングに必要な補正値216を算出した後は、ギア(または牽引モード)がニュートラル218になっているかどうかをシステムが判定する。イエス回答ならば、必要な補正値にニュートラルゲイン値を乗算して、新たな所要補正値220を求める。このニュートラルゲイン値はゼロ以上から1未満か1以下の範囲にある。好ましい範囲は0.5~1である。本実施例では、この値は0.8である。ノー回答ならば、ギアがニュートラルになっていないことを意味し、ニュートラルゲインマルチプライヤ(multiplier)を使用せずに補正値を求め、減速ブレーキング222に上記のように使用する。このニュートラルゲイン値によって車両運転者がニュートラルに移行することがなくなる。システムは常にアクティブであり、すべてのセンサの評価を続行し、必要に応じて計算を実行する。
【実施例2】
【0071】
以下は、本発明における作動状態および解除状態の速度コントローラを使用した、各種条件下にある車両の実施例である。以下の仕様を有する車両を各種勾配の道路面で走行させ、速度コントローラを試験した。

【0072】
コントローラとしてはParker IQAN-MC(TM)マスターコントローラを使用した。スロットル/アクセラレータセンサとしてはMakersanアクセラレータペダルMO450_H10_P009を使用した。速度センサとしてはTM4インバータ/コントローラCO150-HV-A2を使用した。ブレーキセンサとしてはParker ADS50アナログ距離センサ01710ECDを使用した。FNRセンサとしてはCobo OMNIA F-N-Rスイッチ01-1113-0000を使用した。減速ブレーキングシステムとしてはTM4インバータ/コントローラCO150-HV-A2を使用した。
【0073】
図9Aおよび図9Bは速度コントローラを備えた車両の各種の経時的パラメーターを示す図表である。この図表には実際の、あるいは現在の車速値400、車速制限値500、モータトルク値600、ロードピッチ値700、車両ギア位置800、アクセラレータ(スロットル)ペダル位置900およびブレーキペダル位置1000を示す。t=5秒からt=48秒にかけて、速度コントローラが作動し、車両が60km/hr(kph)まで加速し、60kphの車速制限値500かそれ未満に留まる。t=48秒で、車両運転者が速度コントローラを解除し、現在の車速値400が車速制限値500のすぐ上まで加速した。但し、アクセラレータは作動していなかった(t=51秒~t=75秒におけるアクセラレータペダル位置900を参照)。超過速度状態を回避するために、ブレーキペダルを踏み込む必要があった(t=64秒~t=87秒におけるブレーキペダル位置1000を参照)。ブレーキペダルを解除するたびに、および/またはスロットルペダルを解除するたびに(t=86秒~t=97秒を参照)、車速制限値500を本発明方法によって調整した。t=105秒頃、速度コントローラシステム作動を行い、かつスロットル作動を行って、60kphの車速制限値500である60kphに実際の車速値を設定した。スロットルを作動したが、実際の速度値は60kphをわずかに超えたにもかかわらず、スロットルの作動、非作動(t=123秒~t=207秒を参照)に関係なく、また車両のブレーキを作動する必要もなく、速度コントローラによって望ましくない加速や超過速度を阻止できた。速度コントローラシステムの滑らかな作動については、図9のt=123秒~t=138秒における速度コントローラの減速ブレーキングシステムが加えたモータトルク値600の展開図である図10に示す通りである。図10に示す通り、t=123秒~t=138秒間のモータトルク値600の曲線の滑らかな変動によって、車両の滑らかな運転により車速制限値500を維持でき、車両運転者に不快感を与えることはない。
【0074】
図11Aおよび図11Bからよく理解できるように、試験期間中ギアをニュートラルに設定して上記と同じ試験を行う。t=80秒で速度コントローラをオフ設定(動作不能)にし、車両ギアをニュートラルに設定した(t=81秒)。車両速度は60kphから(60kphの車両速度制限値以上の)70kphまで増速した。t=104秒で速度コントローラをオンに設定(動作可能)し、t=106秒で車両ギアをフォワードに設定した。速度コントローラによって減速ブレーキングシステムを介してトルクをモータに加え、実際の車両速度トルクをt=107秒までに60kphに設定した。速度コントローラの作動状態で、t=186秒で車両ギアをニュートラルに設定した。車両は減速したが、路面に勾配があるため増速が生じたが、ニュートラルギアのため第2コントローラシステムにより車速制限値500未満を維持した。車両ギアはt=197秒でフォワードに移行した。
【0075】
図3にブレーキおよび/またはスロットルセンサ用のアナログセンサ1100を示す。一端にあるレバー1110をブレーキおよび/またはスロットルペダルに取り付け、動作不能時(位置は0%で、レバーの移行距離は0インチである)から完全動作可能(位置は100%で、レバーの移行距離は1インチである)時にあるブレーキおよび/またはスロットルペダルの位置を判定する。アナログセンサ1100の他端1120はコントローラに接続する。電圧信号(0.5Vは0%、4.5Vは100%)としての0~100%の値を通信ライン1130によってこのコントローラに送信する。
【0076】
次に説明する図4に、ブレーキおよび/またはスロットル圧力パッドセンサ用の圧力センサ2100を示す。端部2120が圧力パッドに連絡し、動作不能時(0%または圧力なし)から完全動作可能時(100%または最大圧力)にパッドに加わる圧力を判定する。圧力センサ2100の他端2110はコントローラに接続する。電圧信号(0.5Vは0%、4.5Vは100%)としての0~100%の値を通信ライン2130によってこのコントローラに送信する。
【0077】
次に説明する図5に、対地速度センサ3100を示す。第1端部3110がホール効果によって接触せずに、ギア上の磁石または車両のホイールまたはモータの回転数(毎分)を測定する。他端3120はコントローラと連絡し3130、回転数(毎分)についてデジタル信号をコントローラに送信し、RPMを車両の速度に変換する。
【0078】
次に説明する図6に、真の対地速度センサ(TGSS)を示す。このTGSSセンサ4100はドップラーシフトを応用して、車両の真の対地速度を測定する。TGSSセンサ4100については、信号を路面に送り、路面から信号を反射させ、反射信号をTGSS4100によって受け取る位置に設ければよい。路面がTGSS4100に対して移動している場合には、反射信号(ドップラーシフト)周波数が変化する。車両の真の対地速度はこの周波数変化を測定することによって求める。
【0079】
次に説明する図7に、速度コントローラシステムの一環としてのコントローラ(またはコンピュータ)5100を示す。このコントローラ5100は本明細書に記載する各種センサ類に接続し、本明細書に記載する各種センサ類から受信した信号に基づいて、補正ファクターを算出するために必要な工学単位にセンサ電圧信号に変換し、信号を送信し、減速ブレーキングシステムを動作可能にして、車両速度が車両速度制限値を超えないように車両の速度を制御する。このコントローラは前記車両を速度ゼロに減速するために必要な最大減速トルク値も算出する。一つの実施態様では、この算出は次式に基づく。
TB=[rT×Wv×(Fd+sinθ)]/RG
(式中TB=必要な最大減速トルク、rT=静的荷重タイヤの半径、Wv=総車両重量、Fd=減速ファクター、θ=道路面の傾斜角度、RG=モータ/ホイール体間の総ギア比)。
【0080】
次に説明する図8に、立ち上がりエッジ6100および立下りエッジ6110を示す図表を示す。本発明では、コントローラはスロットル解除時およびブレーキ解除時に立下りエッジ6110における新たな車両速度制限値を記録し、調整する。
【0081】
本発明では、発明の範囲から逸脱せずに各種態様に変更を加えることが可能であり、本発明に包含されるすべての事項は例示であり、限定を意図するものではない。
【符号の説明】
【0082】
10 車速調整装置
20 車両
30 コントローラ
40 センサ
50 ブレーキセンサ
60 アクセラレータセンサ
70 測域センサ、ギア位置センサ
80 車両モータ
90 電源
400 車速値
500 車速制限値
600 モータトルク値
700 ロードピッチ値
800 車両ギア位置
900 アクセラレータペダル位置
1000 ブレーキペダル位置
1100 アナログセンサ
1110 レバー
1130 通信ライン
2100 圧力センサ
2120 他端
3100 対地速度センサ
3110 第1端部
4100 TGSSセンサ
5100 コントローラ
6100 立ち上がりエッジ
6110 立下りエッジ
【要約】
【構成】路面に沿って走行する車両の速度を調整するシステムは、少なくとも一つのコントローラ、この少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つのスロットルセンサ、この少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つのブレーキセンサ、この少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つのギアセンサ、この少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つの速度センサ、この少なくとも一つのコントローラに通信連絡する少なくとも一つのモータ、およびこの少なくとも一つのコントローラおよびこの少なくとも一つのモータに通信連絡する少なくとも一つのエネルギー源を有し、この少なくとも一つのコントローラがさらにPIDコントローラ、およびこの少なくとも一つのコントローラに通信連絡し、かつこのPIDコントローラによって制御する減速ブレーキングシステムを有する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B