(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】電子制御部品用ブラケット
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20241108BHJP
H05K 7/12 20060101ALI20241108BHJP
F16B 19/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H05K5/02 E
H05K7/12 A
H05K5/02 L
F16B19/00 D
(21)【出願番号】P 2023046872
(22)【出願日】2023-03-23
(62)【分割の表示】P 2018238092の分割
【原出願日】2018-12-20
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 準弥
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】高田 和昇
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-117840(JP,A)
【文献】実開昭51-126151(JP,U)
【文献】特開2001-345720(JP,A)
【文献】特開2018-177155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00-5/06
H05K 7/12
F16B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子制御部品を車体側に組み付けるための電子制御部品用ブラケットであって、
前記電子制御部品の下面側に配置され、該下面を押し上げる複数の弾性片が設けられる底部と、
押し上げられる前記電子制御部品に対し上側から当接する当て止め部と、
を備え、
前記複数の弾性片は、前記電子制御部品の支持バランスを崩すよう、前記下面を押し付ける各押付位置が前記下面内において線対称性を有さず、かつ回転対称性を有するように分散している電子制御部品用ブラケット。
【請求項2】
前記複数の弾性片は、板厚と板幅と板長さと形状とが全て同じである
請求項1に記載の電子制御部品用ブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ECU等の電子制御部品を車体側に組み付けるための電子制御部品用ブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両のECU(Electronic Control Unit)は、筐体(ECUケース)内に回路基板を内包しており、ブラケットによって車体側のパネル部材に取り付けられる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたブラケットは、弾性片による押し付けを利用して、車両の走行振動を吸収し、走行振動によりECUに加えられる加速度(振動数)を抑制するように機能する。これにより、電子制御部品のコネクタの接点不良を防ぐことができる。ところが、そうした加速度(振動数)の抑制が図られている状況下においても、特定の周波数帯において加速度が高くなってしまう可能性がある。
【0005】
本発明の課題は、高い加速度(高速振動)が生じにくい電子制御部品用ブラケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
上記課題を解決する電子制御部品用ブラケットの一例として、
電子制御部品を車体側に組み付けるための電子制御部品用ブラケットであって、
前記電子制御部品の下面側に配置され、該下面を押し上げる複数の弾性片が設けられる底部と、
押し上げられる前記電子制御部品に対し上側から当接する当て止め部と、
を備え、前記電子制御部品を前記弾性片と前記当て止め部との間で挟圧した組み付け状態において振動を加えた場合に、1つの弾性片の上下方向における振幅及び振動周期のいずれか又は双方が、少なくとも他の1つの弾性片とは異なるように設定されている場合がある。
【0007】
なお、本発明の電子制御部品においては、電子制御部品用ブラケットが組み付けられたときに弾性片に押し付けられる側を下面側(下側)、当て止め部に当て止めされる側を上側と定義している。
【0008】
従来の構成によれば、電子制御部品の加速(振動)を軽減するために電子制御部品用ブラケットには複数の弾性片がスタビライザーとして設けられ、電子制御部品を押付状態で保持している。ところが、それら弾性片が全て同じ形状で、かつ同じ押付反力を有してバランスよく電子制御部品を押し付けているため、そのバランスの良さがかえって個々の弾性片における加速度(振動数)が高まる周波数帯を一致させ、その一致した周波数帯における加速度をより高くしていた。上記構成によれば複数の弾性片のうち少なくとも1つの弾性片の振幅や振動周期が他とは異なるように設定されている。つまり、複数の弾性片による電子制御部品の支持のバランスを意図的に崩すようにしている。これにより、個々の弾性片が共振する形で特定の周波数帯で加速度が高まることがない。即ち、個々の弾性片における加速度のピークが分散されることで、ピークを低くすることができる。
【0009】
前記複数の弾性片は、少なくとも1つの弾性片の前記下面を押し付ける押付反力が他の弾性片よりも大きくなるよう設けることができる。この構成によれば、個々の弾性片において加速度が高まる周波数帯が分散するため、特定の周波数帯で非常に大きな加速度が生じることが無くなる。具体的には、前記複数の弾性片において、少なくとも1つの弾性片の板厚と板幅と板長さと形状のうちいずれか又は複数が他の弾性片とは異なるように設けられることで、押付反力の大きさに違いを持たせることができる。
【0010】
ところで、上記課題を解決する本発明の電子制御部品用ブラケットは、
電子制御部品を車体側に組み付けるための電子制御部品用ブラケットであって、
前記電子制御部品の下面側に配置され、該下面を押し上げる複数の弾性片が設けられる底部と、
押し上げられる前記電子制御部品に対し上側から当接する当て止め部と、
を備え、
前記複数の弾性片は、前記電子制御部品の支持バランスを崩すよう、前記下面を押し付ける各押付位置が前記下面内において線対称性を有さず、かつ回転対称性を有する形で分散している。
これによれば、複数の弾性片において板幅、板厚、板長さ、形状が全て同じであったとしても、各押付位置のバランスの悪さによってうねりを生む電子制御部品の支持形態を形成することとなる。このため、電子制御部品に振動が加えられたときに個々の弾性片の押付反力や振幅に違いを生じさせることとなって、特定の周波数において発生しうる共振により高くなる加速度を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ECUブラケットに、ECUが組み付けられた状態を示した斜視図。
【
図8】従来のECUブラケットにECUを組み付けて振動を加えた時の、各周波数帯におけるECUの加速度を示す説明図。
【
図9】ECUブラケットにECUを組み付けて振動を加えた時の、各周波数帯におけるECUの加速度を示す説明図。
【
図10】
図1のECUブラケットの第一変形例を示した拡大図。
【
図11】
図1のECUブラケットの第二変形例を示した拡大図。
【
図12】
図1のECUブラケットの第三変形例を示した拡大図。
【
図13】
図1のECUブラケットの第四変形例を示した拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の参考例を、図面を用いて説明する。
【0013】
本参考例の電子制御部品用ブラケット1は、
図1~
図3に示すように、電子制御部品10を車体側に組み付けるための第一及び第二係合部2、6(係合部:
図3参照)と、電子制御部品10の下面10b側に配置されて該下面10bを押し上げる複数の弾性片3Aが設けられる底部3と、底部3の両側方を覆うように上方に立ち上がる側壁部4、4と、側壁部4の上端から上面10a側にオーバーラップするように延び出す当て止め部5と、を備える。電子制御部品
10は、両側壁部4、4に挟まれる形で底部3上に配置され、弾性片3Aと当て止め部5とで挟まれて挟圧された組み付け状態となる。
【0014】
第一係合部2は、
図3に示すように、ここでは底部3において電子制御部品10が配置される主表面3a側とは逆側の裏面3bから突出形成される。ここでの第一係合部2は、車体側のパネル部材100の第一固定孔102Hに挿入され、挿入した先で当該固定孔102の周辺部に対し係止する形で係合固定される挿通係合部である。なお、係合部2は、本参考例のものに限られるものではなく、別の形状、別の係合方法で車体側に組み付けられるものでもよい。
【0015】
第二係合部6は、ここでは底部3の裏面3bから下方に延び出し、その先で屈曲して底部3と略平行をなす形で延び出すアーム状をなし、先端側が上下方向に弾性変形可能な弾性アームとして形成されている。ここでの第二係合部6は、車体側のパネル部材100の第二固定孔106Hに挿入されると、先端側がパネル部材100の裏側に回り込み、先端部6Aがパネル部材100の裏面と係止(接触)する回り込み係止部である。この先端部6Aの接触の際、第二係合部6は、先端部6A側がパネル部材100の裏面から離れる方向に弾性変形を生じており、先端部6Aがパネル部材100を裏面側から正面側に押し付けている。
【0016】
第一及び第二係合部2、6をパネル部材100に取り付ける際には、まずは第二係合部6を、パネル部材100の第二固定孔106Hに挿通する。その上で、第一係合部2をパネル部材100の第一固定孔102Hに挿通する。これにより、第二係合部6の先端部6Aがパネル部材100を裏面側から正面側に押し付けつつ、第一係合部2が第一固定孔102Hに挿通係止された状態となり、底部3から下方に突出する当接部30にパネル部材100の表面が当接した状態、すなわち第一及び第二係合部2、6がパネル部材100に取り付けられた状態となる。
【0017】
底部3は、電子制御部品10の下面10b側に主表面3aが対向配置される。底部3には、下面10bを押し上げる複数の弾性片3Aが設けられる。ここでの弾性片3Aは、
図4~
図6に示すように、底部3において上下に貫通する貫通孔3Hの周辺部を基端側として貫通孔3H上を斜め上方へ片持ち状態で延び出しており、先端側が自由端となって上下方向に弾性変形可能とされている。電子制御部品用ブラケット1に電子制御部品10が組み付けられた際には、これら弾性片3Aが下方に撓む形で電子制御部品10を常時上方に押し上げる状態に保たれる(
図3参照)。
【0018】
側壁部4、4は、上端側が互いの対向方向の外向きに弾性変形可能な弾性壁部である。当て止め部5、5は、
図4~
図6に示すように、側壁部4、4の上端側からそれぞれ上記対向方向の内向きに突出形成されており、上面に上記対向方向内側に向かって下る斜面5aを有する。電子制御部品10を組み付ける際、電子制御部品10は、それら斜面5aを下方に押し下げることで側壁部4、4を互いの対向方向の外向きに押し広げて、側壁部4、4の対向間に進入する。進入後には側壁部4、4が弾性復帰し、当て止め部5、5が電子制御部品10に対し上側から当接した当て止め状態となる。ここでの当て止め部5、5は、電子制御部品10の上面10aに対し上側から当接する。
【0019】
ところで、本参考例の複数の弾性片3Aは、電子制御部品用ブラケット1に電子制御部品10が挟圧状態で組み付けられた組み付け状態において、車両の走行振動に含まれる振動を加えた時に、少なくとも1つの弾性片3A1の振幅及び振動周期が他の弾性片3A2とは異なるよう設けられている。
【0020】
ここでの弾性片3A2は、電子制御部品10の下面10bを押し付ける押付反力が他の弾性片3A1よりも大きくなるよう設けられている。具体的にいえば、弾性片3Aが、2つずつの弾性片3A1と弾性片3A2とで構成され、各弾性片3A2の板幅が各弾性片3A1とは異なって設けられており、この板幅の違いにより押付反力の違い、ひいては振幅及び振動周期のいずれかの違いを生み出している。ここでの4つの弾性片3Aは、上下方向Zに直交する平面に対し上下方向Zに投影させた場合に、その投影面上で、略長方形状の主表面3aに対し第一の対角方向に細幅の2つの弾性片3A1が設けられ、第二の対角方向に太幅の2つの弾性片3A2が設けられている(
図5参照)。なお、
図5は投影図ではないが投影面と同様に弾性片3Aが平面的に図示されている。
【0021】
このように複数の弾性片3Aの中に振動を加えた時に振幅や振動周期が異なるものを含めておくことにより、上記組み付け状態の電子制御部品10は、うねるような形の振動(弾性片3A1側の振幅が大きく、弾性片3A2側の振幅が小さい)を生じることになる。しかしながら、このようなうねりを許容するバランスの悪い支持形態は、個々の弾性片3Aにおける加速度(振動数)が高まる周波数帯を異ならせる形態といえる。つまり、このバランスの悪い支持形態は、個々の弾性片において加速度が高まる周波数帯が分散された形態であるため、特定の周波数帯で共振して非常に大きな加速度が生じることが無くなる。
【0022】
図7は、従来の電子制御部品用ブラケット1000を示すものである。上記参考例と共通の構成については同一の符号を付している。既に述べた参考例の電子制御部品用ブラケット1(
図4参照)では、弾性片3A1、3A2との間に板幅の違いがあったが、
図7の電子制御部品用ブラケット1000では、4つの弾性片3A0(3A)の板幅、板厚、板長さ、形状の全てが同じである。
図8は、この従来の電子制御部品用ブラケット1000において、電子制御部品10のコネクタ部に加速度センサを取り付けて加振台上で振動させ、各周波数における加速度を調べた結果を示したものである。一方、
図9は、参考例の電子制御部品用ブラケット1に電子制御部品10が挟圧状態で組み付けられた組み付け状態において、同様の方法で各周波数における加速度を調べた結果を示したものである。
図8において50~60Hzの間で高くなっている加速度のピークが、
図9においては小さくなっている。つまり、参考例では、特定の周波数において高くなる加速度が従来よりも大きく抑制され、規定値(図中の破線)を下回っていることがわかる。
【0023】
以上、本発明の一参考例を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、追加及び省略等の種々の変更が可能である。
【0024】
以下、上記参考例とは異なる別例について説明する。なお、上記参考例と共通の機能を有する部位には同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、上記参考例と下記例とは、技術的な矛盾を生じない範囲において適宜組み合わせて実施できる。
【0025】
上記参考例における複数の弾性片3Aには、少なくとも1つの弾性片3A1に対し板幅の違いを有する弾性片3A2が含まれているが、
図10~
図12に示すように、少なくとも1つの弾性片3A1における板幅と板厚と板長さと形状とのうちいずれか又は複数が他の弾性片3A3、3A4、3A5とは異なるように設けられてもよい。
【0026】
上記参考例における複数の弾性片3Aは、電子制御部品10の下面10bを押し付ける各押付位置が、上下方向Zに直交する平面に対し4つの弾性片3Aを上下方向Zに投影させた場合に、その投影面上で回転対称性を有する形で配置されている(
図5参照)。なお、
図5は投影図ではないが投影面と同様に弾性片3Aが平面的に図示されている。ところが、本発明のように、複数の弾性片3Aの各押付位置は、上述の投影面において回転対称性又は線対称性を有さないよう分散していてもよい(
図13参照)。この場合、複数の弾性片3Aにおいて板幅、板厚、板長さ、形状が全て同じであったとしても、各押付位置のバランスの悪さによって、
(弾性片3Aの板幅に差が形成された)上記参考例のようなうねりを生む電子制御部品10の支持形態を形成すること
となる。このため、
電子制御部品10に振動が加えられたときに個々の弾性片3Aの押付反力や振幅に違いを生じさせ
ることとなって、特定の周波数において
発生しうる共振により高くなる加速度を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 電子制御部品用ブラケット
10 電子制御部品
10a 電子制御部品の上面
10b 電子制御部品の下面
2 係合部
3 底部
3a 底部の主表面
3A 弾性片
4 側壁部
5 当て止め部
5a 斜面