(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】通信システム及び通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 76/10 20180101AFI20241108BHJP
H04W 36/12 20090101ALI20241108BHJP
H04W 88/18 20090101ALN20241108BHJP
H04W 92/24 20090101ALN20241108BHJP
【FI】
H04W76/10
H04W36/12
H04W88/18
H04W92/24
(21)【出願番号】P 2023120709
(22)【出願日】2023-07-25
(62)【分割の表示】P 2021193691の分割
【原出願日】2017-02-24
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】515068502
【氏名又は名称】株式会社ソラコム
(74)【代理人】
【識別番号】110003605
【氏名又は名称】弁理士法人六本木通り特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舩渡 大地
(72)【発明者】
【氏名】安川 健太
【審査官】野村 潔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-103771(JP,A)
【文献】国際公開第2005/027438(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/104324(WO,A1)
【文献】特表2013-502786(JP,A)
【文献】System Architecture for the 5G System; Stage 2(Release 15),3GPP TS 23.501 V0.2.0(2017-01),2017年02月06日,p.56 clause 6.3.3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のネットワークにアクセスするための識別番号が記憶された無線端末に、ビジティング・キャリアである第2のネットワークを介した、前記第1のネットワーク以外のネットワークへのアクセスを提供するための通信方法であって、前記第1のネットワークと接続されたコンピュータが、
前記第2のネットワークから、前記無線端末が前記第2のネットワークに送信した第1の接続開始要求に対応する第2の接続開始要求を受信するステップと、
前記第2の接続開始要求に応じて、前記第2のネットワークのネットワークIDに基づいて、前記第2のネットワークに接続される、前記ネットワークへのUプレーン上のゲートウェイであって、前記第1のネットワークの圏外のゲートウェイを選択するステップと、
選択された前記Uプレーン上のゲートウェイのゲートウェイIDを前記第2のネットワークに向けて送信するステップと
を含む。
【請求項2】
請求項1に記載の通信方法であって、
前記ゲートウェイIDは、IPアドレスである。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の通信方法であって、
前記Uプレーン上のゲートウェイは、クラウド上の1又は複数のインスタンスである。
【請求項4】
コンピュータに、第1のネットワークにアクセスするための識別番号が記憶された無線端末に、ビジティング・キャリアである第2のネットワークを介した、前記第1のネットワーク以外のネットワークへのアクセスを提供するための通信方法を実行させるためのプログラムであって、前記通信方法は、前記第1のネットワークと接続されたコンピュータが、
前記第2のネットワークから、前記無線端末が前記第2のネットワークに送信した第1の接続開始要求に対応する第2の接続開始要求を受信するステップと、
前記第2の接続開始要求に応じて、前記第2のネットワークのネットワークIDに基づいて、前記第2のネットワークに接続される、前記ネットワークへのUプレーン上のゲートウェイであって、前記第1のネットワークの圏外のゲートウェイを選択するステップと、
選択された前記Uプレーン上のゲートウェイのゲートウェイIDを前記第2のネットワークに向けて送信するステップと
を含む。
【請求項5】
第1のネットワークにアクセスするための識別番号が記憶された無線端末に、ビジティング・キャリアである第2のネットワークを介した、前記第1のネットワーク以外のネットワークへのアクセスを提供するための通信システムであって、
前記第2のネットワークから、前記無線端末が前記第2のネットワークに送信した第1の接続開始要求に対応する第2の接続開始要求を受信し、
前記第2の接続開始要求に応じて、前記第2のネットワークのネットワークIDに基づいて、前記第2のネットワークに接続される、前記ネットワークへのUプレーン上のゲートウェイであって、前記第1のネットワークの圏外のゲートウェイを選択し、
選択された前記Uプレーン上のゲートウェイのゲートウェイIDを前記第2のネットワークに向けて送信する。
【請求項6】
第1のネットワークと、
前記第1のネットワークにアクセスするための識別番号が記憶された無線端末に、ビジディング・キャリアである第2のネットワークを介した、前記第1のネットワーク以外のネットワークへのアクセスを提供するための通信システムと
を備える通信ネットワークであって、
前記通信システムは、
前記第2のネットワークから、前記無線端末が前記第2のネットワークに送信した第1の接続開始要求に対応する第2の接続開始要求を受信し、
前記第2の接続開始要求に応じて、前記第2のネットワークのネットワークIDに基づいて、前記第2のネットワークに接続される、前記ネットワークへのUプレーン上のゲートウェイであって、前記第1のネットワークの圏外のゲートウェイを選択し、
選択された前記Uプレーン上のゲートウェイのゲートウェイIDを前記第2のネットワークに向けて送信する。
【請求項7】
ビジティング・キャリアである第2のネットワークと、
第1のネットワークにアクセスするための識別番号が記憶された無線端末に、前記第2のネットワークを介した、前記第1のネットワーク以外のネットワークへのアクセスを提供するための通信システムと
を備える通信ネットワークであって、
前記通信システムは、
前記第2のネットワークから、前記無線端末が前記第2のネットワークに送信した第1の接続開始要求に対応する第2の接続開始要求を受信し、
前記第2の接続開始要求に応じて、前記第2のネットワークのネットワークIDに基づいて、前記第2のネットワークに接続される、前記ネットワークへのUプレーン上のゲートウェイであって、前記第1のネットワークの圏外のゲートウェイを選択し、
選択された前記Uプレーン上のゲートウェイのゲートウェイIDを前記第2のネットワークに向けて送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グローバル化の進展に伴い、インターネットなどのコンピュータネットワークに接続される機器が増え、あらゆるモノがネットワーク化されるInternet of Thingsという考え方が広まっている。以下、ネットワーク化された機器を「IoT機器」という。IoT機器のネットワーク接続方法は様々であるが、ここではセルラーネットワークを活用する場合に着目する。
【0003】
セルラーネットワークでネットワーク接続されるIoT機器が国境を越えて輸出されることも一般的になっており、たとえば、欧州の移動体通信事業者(MNO)ないしキャリアと契約されたSIMカードが欧州の工場で製品に挿入されて日本に輸入される場合が考えられる。
【0004】
このIoT機器が日本においてコンピュータネットワークにアクセスしようとすると、当該SIMカードには、IMSI、ICCIDなどの識別番号が割り振られており、ホーム・ロケーションである上記欧州キャリアを特定するための情報が当該識別番号に関連づけられていることから、コンピュータネットワークへの接続開始要求は、当該欧州キャリアと相互接続の関係にある日本のキャリアを経由して、欧州キャリアに転送されることとなる。
【0005】
より具体的には、
図1に示すように、欧州キャリア110と契約されたSIMカードが挿入された無線端末100が日本キャリア120に在圏していて、IPネットワーク130へのアクセスを開始する場合、まず、無線端末100は、日本キャリア120のエントリーポイントである無線基地局を通じて、日本キャリア120のコアネットワークに配備されたゲートウェイ(3GではSGSN、LTEではS-GW)(以下「ビジティング・ゲートウェイ」又は「ビジティング・キャリア・ゲートウェイ」ともいう)に対し、IMSIを含む接続開始要求を送信する。
【0006】
接続開始要求を受信したビジティング・ゲートウェイは、識別番号が日本キャリア120以外の欧州キャリア110と関連づけられていることを判定すると、欧州キャリア110と無線端末100に挿入されたSIMカードの情報などに基づき契約の有無などの認証を行った後に、無線端末100から受信したAPN (Access Point Name) に基づいて、DNSを参照し、当該APNに対応するIPアドレスを取得する。当該IPアドレスは、欧州キャリア110のコアネットワークのエンドポイントであるゲートウェイ(3GではGGSN、LTEではP-GW)(以下「ホーム・ゲートウェイ」又は「ホーム・キャリア・ゲートウェイ」ともいう)を指示しており、ビジティング・ゲートウェイは、GRXなどのキャリア間相互接続を提供するための網を介して、GTPなどのトンネリングプロトコルのCプレーン上で当該接続開始要求を当該ホーム・ゲートウェイに送信ないし転送し、日本キャリア120のビジティング・ゲートウェイと欧州キャリア110のホーム・ゲートウェイとの間にトンネルが形成される。無線端末100の通信は、日本キャリア120から欧州キャリア110に当該トンネルを通じて転送され、欧州キャリア110から外部のIPネットワークなどに転送される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
GRXなど、キャリア間相互接続網による国際ローミングによって、SIMカードを発行したキャリアのサービスエリア外であっても、提携先のキャリアのサービスエリア内であれば、通信サービスの利用が可能ではあるものの、
図1の例のように、ホーム・ロケーションを経由してからアクセスしなければならず、通信距離やネットワークホップ数の増加などにより、データ通信遅延の原因となっている。いわゆる「三角ルーティング」とも呼ばれる問題である。
【0008】
同様の問題は、たとえば欧州キャリアが発行したSIMカードを世界中で車載機等のIoT機器に挿入して使うような場合においても発生する。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、第1のネットワーク(たとえば、欧州キャリア)にアクセスするための識別番号が(直接的又は間接的に)記憶された無線端末に第2のネットワーク(たとえば、日本キャリア)を介したネットワークへのアクセスを提供するための通信システム又は通信方法であって、遅延を抑制することのできるものを提供することにある。
【0010】
また、本発明の第2の目的は、第1のネットワーク(たとえば、欧州キャリア)にアクセスするための識別番号が記憶された無線端末に自らを介したネットワークへのアクセスを提供するための第2のネットワーク(たとえば、日本キャリア)又は通信方法であって、遅延を抑制することのできるものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、第1のネットワークにアクセスするための識別番号が記憶された無線端末に第2のネットワークを介したネットワークへのアクセスを提供するための通信システムであって、前記無線端末から、Cプレーン上の接続開始要求を受信する受信部と、前記接続開始要求に応じて、取得した前記第2のネットワークのネットワークIDに基づいて、前記第2のネットワークに接続される前記ネットワークへのUプレーン上のゲートウェイを選択する選択部と、選択された前記Uプレーン上のゲートウェイのゲートウェイIDを前記第2のネットワークに向けて送信する送信部とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記取得は、前記第2のネットワークのIPアドレスにより行われることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記IPアドレスに基づいて、IPアドレスレンジとネットワークIDとの対応づけを参照して前記第2のネットワークのネットワークIDが取得されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第4の態様は、第2又は第3の態様において、前記IPアドレスは、前記第2のネットワークからのシグナリングに含まれるUプレーンの宛先であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第5の態様は、第1から第4のいずれかの態様において、前記Uプレーン上のゲートウェイは、前記ネットワークIDに基づいて、前記ネットワークIDを有するネットワークからの距離を基準に選択されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の第6の態様は、第5の態様において、前記距離は、ネットワーク上の距離であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第7の態様は、第5の態様において、前記距離は、地理的距離であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の第8の態様は、第5から第7のいずれかの態様において、前記Uプレーン上のゲートウェイは、複数のネットワークIDと各ネットワークIDを有するネットワークに関連づけられた1又は複数のUプレーン上のゲートウェイとの対応づけを保持するゲートウェイテーブルを参照して選択されることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の第9の態様は、第1から第8のいずれかの態様において、前記Uプレーン上のゲートウェイは、前記ネットワークID及び前記識別番号に基づいて選択されることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の第10の態様は、第1から第9のいずれかの態様において、前記Uプレーン上のゲートウェイは、クラウド上の1又は複数のインスタンスにより構成されていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の第11の態様は、第10の態様において、前記Uプレーン上のゲートウェイは、前記無線端末が前記第2のネットワークを介して前記ネットワークにアクセスする上で、Cプレーン上の機能を発揮しないことを特徴とする。
【0022】
また、本発明の第12の態様は、第1から第11のいずれかの態様において、クラウド上の1又は複数のインスタンスにより構成されていることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の第13の態様は、第1から第12のいずれかの態様において、前記無線端末に前記第2のネットワークを介した前記ネットワークへのアクセスを提供する上で、Uプレーン上の機能を発揮しないことを特徴とする。
【0024】
また、本発明の第14の態様は、第1から第13のいずれかの態様において、前記第1のネットワークは、第1のMNOのネットワークであり、前記第2のネットワークは、前記第1のMNOとは異なる第2のMNOのネットワークであることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の第15の態様は、第14の態様において、前記無線端末には1又は複数の識別番号が直接的又は間接的に記憶されており、前記無線端末が接続開始要求を送信した時に使用されている識別番号が前記第1のネットワークにアクセスするためのものであることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の第16の態様は、第14又は第15の態様において、前記識別番号は、IMSIであることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の第17の態様は、第14から第16のいずれかの態様において、前記第1のネットワークと前記第2のネットワークは相互接続されていることを特徴とする。
【0028】
また、本発明の第18の態様は、第14から第17のいずれかの態様において、前記第1のネットワークに相互接続システムを介して接続されていることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の第19の態様は、第1から第18のいずれかの態様において、前記送信部は、選択された前記Uプレーン上のゲートウェイに対して、トンネルエンドポイントの生成要求を送信することを特徴とする。
【0030】
また、本発明の第20の態様は、ホーム・ゲートウェイにアクセスするための識別番号が記憶された無線端末にビジティング・ゲートウェイを介したネットワークへのアクセスを提供するための通信システムであって、前記無線端末から、Cプレーン上の接続開始要求を受信する受信部と、前記接続開始要求に応じて、取得した前記ビジティング・ゲートウェイのネットワークIDに基づいて、前記ビジティング・ゲートウェイに接続される前記ネットワークへのUプレーン上のゲートウェイを選択する選択部と、選択された前記Uプレーン上のゲートウェイのゲートウェイIDを前記ビジティング・ゲートウェイに向けて送信する送信部とを備えることを特徴とする。
【0031】
また、本発明の第21の態様は、第1のネットワークにアクセスするための識別番号が記憶された無線端末に第2のネットワークを介したネットワークへのアクセスを提供するための通信方法であって、前記無線端末から、Cプレーン上の接続開始要求を受信するステップと、前記接続開始要求に応じて、取得した前記第2のネットワークのネットワークIDに基づいて、前記第2のネットワークに接続される前記ネットワークへのUプレーン上のゲートウェイを選択するステップと、選択された前記Uプレーン上のゲートウェイのゲートウェイIDを前記第2のネットワークに向けて送信するステップとを含むことを特徴とする。
【0032】
また、本発明の第22の態様は、コンピュータに、第1のネットワークにアクセスするための識別番号が記憶された無線端末に第2のネットワークを介したネットワークへのアクセスを提供するための通信方法を実行させるためのプログラムであって、前記通信方法は、前記無線端末から、Cプレーン上の接続開始要求を受信するステップと、前記接続開始要求に応じて、取得した前記第2のネットワークのネットワークIDに基づいて、前記第2のネットワークに接続される前記ネットワークへのUプレーン上のゲートウェイを選択するステップと、選択された前記Uプレーン上のゲートウェイのゲートウェイIDを前記第2のネットワークに向けて送信するステップとを含むことを特徴とする。
【0033】
また、本発明の第23の態様は、第1のネットワークにアクセスするための識別番号が記憶された無線端末に第2のネットワークを介したネットワークへのアクセスを提供するための通信システムと通信を行う第2のネットワークであって、前記無線端末から、Cプレーン上の接続開始要求及びAPNを受信する受信部と、前記APNに基づいて指示される前記通信システムに対し、前記接続開始要求を送信する送信部とを備え、前記通信システムにおいて前記接続開始要求に応じて、前記第2のネットワークのネットワークIDに基づいて選択された、前記第2のネットワークに接続される前記ネットワークへのUプレーン上のゲートウェイのゲートウェイIDを受信し、前記ゲートウェイIDで指示される前記Uプレーン上のゲートウェイとの間に通信経路を確立することを特徴とする。
【0034】
また、本発明の第24の態様は、第1のネットワークにアクセスするための識別番号が記憶された無線端末に第2のネットワークを介したネットワークへのアクセスを提供するための通信システムと通信を行う通信方法であって、前記無線端末から、Cプレーン上の接続開始要求及びAPNを受信するステップと、前記APNに基づいてDNSにより判定されたIPアドレスにより指示される前記通信システムに対し、前記接続開始要求を送信するステップと、前記通信システムにおいて前記接続開始要求に応じて、前記第2のネットワークのネットワークIDに基づいて選択された、前記第2のネットワークに接続される前記ネットワークへのUプレーン上のゲートウェイのゲートウェイIDを受信するステップと、前記ゲートウェイIDで指示される前記Uプレーン上のゲートウェイとの間に通信経路を確立するステップとを含むことを特徴とする。
【0035】
また、本発明の第25の態様は、コンピュータに、第1のネットワークにアクセスするための識別番号が記憶された無線端末に第2のネットワークを介したネットワークへのアクセスを提供するための通信システムと通信を行う通信方法を実行させるためのプログラムであって、前記通信方法は、前記無線端末から、Cプレーン上の接続開始要求及びAPNを受信するステップと、前記APNに基づいてDNSにより判定されたIPアドレスにより指示される前記通信システムに対し、前記接続開始要求を送信するステップと、前記通信システムにおいて前記接続開始要求に応じて、前記第2のネットワークのネットワークIDに基づいて選択された、前記第2のネットワークに接続される前記ネットワークへのUプレーン上のゲートウェイのゲートウェイIDを受信するステップと、前記ゲートウェイIDで指示される前記Uプレーン上のゲートウェイとの間に通信経路を確立するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明の一態様によれば、Cプレーン上の機能を果たすビジティング・ゲートウェイのネットワークIDに基づいて、当該ビジティング・ゲートウェイに接続されるUプレーン上のゲートウェイを選択し、両者間に通信経路を確立することによって、ホーム・ロケーションを経由することによる遅延を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】従来の国際ローミングについて示す図である。
【
図2】本発明の一態様にかかる通信システムを含む通信ネットワークを示す図である。
【
図3】本発明の一態様における通信ネットワーク内における信号の流れを示す図である。
【
図4】本発明の一態様における通信システムの詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0039】
(本発明の概要)
図2に、本発明の一態様にかかる通信システムを含む通信ネットワークを示す。便宜上、第1のネットワーク210は、そのサービスエリアを欧州内の所定地域とする欧州キャリアのネットワーク、第2のネットワーク220は、そのサービスエリアを日本国内の所定地域とする日本キャリアのネットワークとした場合を例に説明する。無線端末100に挿入されたSIMカードは、
図1と同様に欧州キャリアと契約されたものであり、欧州キャリアにアクセスするための識別番号を保持しているものとする。
【0040】
なお、無線端末100に挿入されたSIMカードには2以上の複数のIMSIが記憶されることも可能であり、更に、無線端末100が有する物理的なSIMカードに記憶されるのみではなく、無線端末100に組み込まれた半導体チップ(「eSIM」とも呼ばれる)上に1又は複数のIMSIが記憶されること、無線端末100のモジュール内のセキュアなエリアにソフトウェアを搭載し、当該ソフトウェア上に1又は複数のIMSIが記憶されることも可能であり、無線端末100が直接的又は間接的に識別番号を保持する態様は、さまざま考えられる。
【0041】
ここでは、通信システム200Aは、第1のネットワーク210に直接又はGRXなどのキャリア間相互接続網を介して接続される。MNOである第1のネットワーク210に対して、その無線通信インフラを利用してエンドユーザーに無線通信サービスを提供するための通信システム200Aは、仮想移動体通信事業者(MVNO)のネットワークの一部として位置付けられ、以下でさらに詳細に説明するが、IPネットワークなどのネットワーク130へのアクセスを要求する無線端末100がトンネルを形成するための第3のネットワーク200Bを複数のネットワークの中から選択する。このような構成は、通信システム200A及び第3のネットワーク200Bを同一事業者が国境を越えて運用することを試みて初めて可能となったものと言え、従来にない新規な着想である。
【0042】
なお、以下では、通信システム200Aが第1のネットワーク210とは別個のネットワークであることを前提に説明するが、本発明の精神は、たとえば、通信システム200Aを第1のネットワークの一部として、第1のネットワークと同一のネットワーク上に構築する場合にあっても適用可能であることを付言する。
【0043】
まず、無線端末100は、コンピュータネットワーク130へのアクセスを行うために、第2のネットワーク220に対して接続開始要求を送信する(S301)。接続開始要求を受信した第2のネットワーク220は、当該接続開始要求に含まれるIMSIなどの識別番号に基づいて当該識別番号に関連づけられたキャリアが第2のネットワーク220であるか否かを判定し、第2のネットワーク220でない場合、すなわち、無線端末100にとって第2のネットワーク220がビジティング・ゲートウェイである場合、第1のネットワーク210と無線端末100(に挿入されたSIMカード)の契約の有無などの認証を行った後に、無線端末100から受信したAPNに基づいて当該APNとゲートウェイのIPアドレスとの対応づけを保持するDNSに対して問い合わせる(S302)。DNSは、受信したAPNに基づいて当該APNに対応するアクセス先のサーバのIPアドレスを第2のネットワーク220に対して送信する(S303)。
【0044】
DNSは、通信システム200Aの一部とすることができ、また、通信システム200A又は第2のネットワーク220からアクセス可能な位置に配置することもできる。各APNに対しては、必ずしも1つのIPアドレスが対応するものではなく、複数のIPアドレスを対応させておき、APNを受信した際にラウンドロビン方式による割り振りを行ったり、IMSIなどの識別番号に応じて選択したり、第2のネットワーク220又は第2のネットワーク220のビジティング・ゲートウェイのIPアドレスに応じて選択したりすることが可能である。
【0045】
第2のネットワーク220は、次いで、当該APNに対応するIPアドレスで指示される通信システム200A又は通信システム200A内のサーバに対し、当該接続開始要求(本明細書において「接続開始要求」には、第2のネットワーク220が受信した接続開始要求に実質的に対応する、第2のネットワーク220が送信する要求も含むものとする。)又は当該接続開始要求に含まれていた識別番号、及び、第2のネットワーク220又は第2のネットワーク220のビジティング・ゲートウェイのIPアドレスを送信する(S304)。第2のネットワーク220から送信されるCプレーン上のシグナリングにはUプレーンの宛先として第2のネットワーク220又は第2のネットワーク220のビジティング・ゲートウェイのIPアドレスが含まれており、このIPアドレスを用いることが可能である。このIPアドレスは、接続開始要求の一部としてみることができる場合もある。
【0046】
第2のネットワーク220は、IPアドレスに加えて、通信システム200Aにおいて無線端末100が接続を確立するためのゲートウェイ又はそれを含む第3のネットワーク200Bを選択することを補助する補助情報をさらに通信システム200Aに対して送信してもよい。
【0047】
通信システム200Aにおいては、IPアドレスレンジと当該IPアドレスレンジに含まれるIPアドレスを有するネットワークのネットワークIDとの対応づけ、より具体的には、それを保持するIPアドレスレンジテーブルを参照することができ、取得ないし受信した第2のネットワーク220のIPアドレスにより、第2のネットワーク220のネットワークIDを取得あるいは推測することができる。ここで、IPアドレスレンジテーブルは、通信システム200Aの記憶部又は通信システム200Aがアクセス可能な記憶装置又は記憶媒体に記憶しておけばよい。代替的には、IPアドレスからドメイン名に変換するリバースルックアップ(reverse lookup)による推測、IPアドレスに関連づけられたドメインの登録者情報を提供するフーイズ(whois)クエリによる推測等も挙げることができる。
【0048】
通信システム200Aにおいては、ネットワークIDと当該ネットワークIDを有するネットワークの関連づけられたUプレーン上のゲートウェイとの対応づけを保持するゲートウェイテーブルが記憶されており、取得したネットワークIDに基づいて、無線端末100が接続を確立するためのゲートウェイ又はそれを含む第3のネットワーク200Bを選択することができる。加えて、通信システム200Aは、受信した接続開始要求に応じて、選択された第3のネットワーク200B又はそのゲートウェイに対してトンネルエンドポイント(TE)IDの生成をリクエストすることも必要に応じて行う(S305)。
【0049】
通信システム200Aは、第3のネットワーク200BからトンネルエンドポイントのID (TEID) を受信し(S306)、ゲートウェイIDとともに第2のネットワーク220に送信する(S307)。ゲートウェイIDとしては、たとえば選択されたUプレーン上のゲートウェイのIPアドレスである。第2のネットワーク220と接続可能な2以上の複数のサーバを第3のネットワーク200Bのゲートウェイが有する場合には、それらのうちのいずれかのIPアドレスがゲートウェイIDとして選択される。
【0050】
ゲートウェイID及びTEIDを受信した第2のネットワーク220は、第2のネットワーク220のビジティング・ゲートウェイと、当該ゲートウェイIDで示される第3のネットワーク200Bのゲートウェイとの間にトンネルを形成する(S308)。
【0051】
従来の国際ローミングにおいては、常にホーム・キャリアである第1のネットワーク210に戻って通信を行うことが求められ、遅延の原因となっていたところ、本発明によれば、ビジティング・キャリアである第2のネットワーク220に関連づけられた第3のネットワーク200Bのゲートウェイとの間で無線端末100はUプレーンのトンネル形成を行うことができ、ホーム・ロケーションをショートカットすることができるため、遅延が著しく改善される。
【0052】
なお、無線端末100によるアクセス先のネットワークの例としては、インターネットなどのIPネットワークのほか、非IPネットワークも挙げられる。また、パブリックシステムのほか、プライベートシステムも挙げられる。オンプレミスのプライベートシステムのほか、第3のネットワーク200Bの少なくとも一部をクラウド上で実現する場合には同一クラウド上の異なるIPネットワーク又は異なるクラウド上のIPネットワークなどがプライベートシステムに含まれ、第3のネットワーク200Bとこれらのプライベートシステムとは専用線又は仮想的な専用線によって接続可能である。
【0053】
また、「のみに基づいて」、「のみに応じて」、「のみの場合」というように「のみ」との記載がなければ、本明細書においては、付加的な情報も考慮し得ることが当然に想定されていることに留意されたい。
【0054】
(通信システムの詳細)
図4に、本発明の一態様における通信システムが有するサーバの詳細を示す。通信システム200Aが有する1又は複数のサーバ400はそれぞれ、無線端末100からCプレーン上の接続開始要求を受信する通信インターフェイスなどの通信部401と、当該接続開始要求に応じて、取得した第2のネットワーク220のネットワークIDに基づいて、メモリ、ハードディスクなどの記憶装置又は記憶媒体を含む記憶部402に記憶された上記ゲートウェイテーブルを参照して、第2のネットワーク220に接続されるコンピュータネットワーク130へのゲートウェイを選択するプロセッサ、CPUなどの処理部403とを備えるサーバとすることができる。通信部401は、選択された当該ゲートウェイのゲートウェイIDを第2のネットワーク220に向けて送信する。通信部401は、選択された当該ゲートウェイにより生成されたトンネルエンドポイントのIDを受信していれば、これについても第2のネットワーク220に向けて送信する。
【0055】
当該サーバは、物理的に単一のサーバに限られず、複数のアクセス可能なサーバとすることもでき、また、記憶部402は、当該サーバからコンピュータネットワーク上でアクセス可能な記憶装置としてもよい。また、通信部401及び処理部403の一方又は双方における動作は、当該動作をコンピュータに行わせるための1又は複数のプログラムを実行させることによって実現することができ、当該プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録して非一過性のプログラムプロダクトとすることができる。
【0056】
サーバ400は、パブリッククラウド又はプライベートクラウド上のインスタンスとすることができる。ここで、本明細書において「クラウド」とは、ネットワーク上で需要に応じてCPU、メモリ、ストレージ、ネットワーク帯域などのコンピューティングリソースを動的にプロビジョニングし、提供できるシステムを言う。たとえば、AWS等によりクラウドを利用することができる。
【0057】
通信システム200Aは、無線端末100に第2のネットワーク220を介したネットワーク130へのアクセスを提供する上で、接続開始に当たってCプレーン上の機能を果たすが、Uプレーン上の機能を果たさないものとすることができる。Uプレーン上の機能は、国外等、第1のネットワーク210及び通信システム200Aの一方又は双方のサービスエリア外又は圏外をサービスエリアとする第3のネットワーク200Bにおいて行うことができる。第3のネットワーク200Bが通信システム200Aのサービスエリア外又は圏外である場合、必ずしも国外を意味するものではない。第3のネットワーク200Bは、無線端末100に第2のネットワーク220を介したコンピュータネットワーク130へのアクセスを提供する上でUプレーン上の機能を果たすが、Cプレーン上の機能を果たさないものとすることができる。
【0058】
(ゲートウェイテーブルの詳細)
通信システム200Aが保持又はアクセス可能なゲートウェイテーブルは、ネットワークIDに対し、当該ネットワークIDを有するネットワークに関連づけられたゲートウェイ若しくはサーバ又はそれを含むネットワークとの対応関係を定めるものである。
【0059】
一態様では、ゲートウェイテーブルは、ネットワークIDに対し、各地に点在したネットワーク又はそのゲートウェイのうち、当該ネットワークIDを有するネットワーク(すなわち、第2のネットワーク220)又はそのゲートウェイの近傍に位置する1又は複数のゲートウェイ又はそれを含むネットワーク(すなわち、第3のネットワーク200B)との対応関係を定めるものである。ここでゲートウェイまでの「距離」は、遅延時間により計測されるネットワーク上の距離とすることができる。ネットワーク上の距離は、たとえば、ホップ数により算出することができる。また、地理的距離が近いものから順に近傍に位置するとすることもできる。
【0060】
また、別の態様では、ネットワークIDに対し、当該ネットワークIDを有するネットワーク(すなわち、第2のネットワーク220)のサービスエリア外の1又は複数のゲートウェイ又はそれを含むネットワークとの対応関係を定めることもできる。
【0061】
また、たとえば、1つのネットワークIDに対して複数のゲートウェイ又はそれを含むネットワークが関連づけられ、接続開始要求に含まれるIMSIなどの識別番号に応じて、いずれのゲートウェイに対応させるかを定めることもできる。そして、特定の識別番号については、距離とは無関係に、Uプレーン上の特定のサービスを利用可能なゲートウェイ又はそれを含むネットワークに対応づけることができ、一例として識別番号のみによって、Uプレーン上のゲートウェイの選択を行うことができる。
【0062】
また、通信システム200A又はそこからアクセス可能なサーバにおいて、第2のネットワーク220に関連づけられた複数のUプレーン・ゲートウェイのそれぞれの処理能力のメトリックスを監視し、処理負荷のより低いゲートウェイを選択してもよい。監視するメトリックスとしては、例として、CPU負荷、メモリ利用率、ディスク読み出し、ディスク書き込み、ネットワークトラフィック受信量、ネットワークトラフィック送信量等が挙げられる。第2のネットワーク220に関連づけられた各ゲートウェイが有する1又は複数のサーバは、パブリッククラウド又はプライベートクラウド上のインスタンスとすることができる。上述した距離を基準としたUプレーン上のゲートウェイの選択では同等の複数のゲートウェイが存在するときに、処理負荷のより低いものを最終的に選択するようにすることも有益である。
【0063】
また、別の態様では、通信システム200Aは、第2のネットワーク220から上記補助情報を受け取ることがある。具体例としては、第2のネットワーク220と第3のネットワークとの間の接続の出口となるサーバが1又は複数存在し、各サーバのIPアドレスを補助情報として受け取ることがある。この場合、通信システム200Aにおいては、各サーバを基準として、接続先のゲートウェイ又はそれを含む第3のネットワーク200Bの選択を行い、第2のネットワーク220と第3のネットワーク200Bとの間の距離が最も短い組み合わせを選択してもよい。
【0064】
(第2のネットワークの詳細)
第2のネットワーク220は、通信システム200Aと同様に、1又は複数のサーバを有し、各サーバは、通信インターフェイスなどの通信部、メモリ、ハードディスクなどの記憶装置又は記憶媒体を含む記憶部、及び、プロセッサ、CPUなどの処理部を備え、上述したデータの送信及び/又は受信を通信部で行い、所要の処理を処理部にて行う。記憶部は、当該サーバからコンピュータネットワーク上でアクセス可能な記憶装置としてもよく、また、通信部及び処理部の一方又は双方における動作は、当該動作をコンピュータに行わせるための1又は複数のプログラムを実行させることによって実現可能であり、当該プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録して非一過性のプログラムプロダクトとすることができる。また、第2のネットワーク220が有する1又は複数のサーバは、パブリッククラウド又はプライベートクラウド上のインスタンスとすることができる。
【符号の説明】
【0065】
100 無線端末
110 欧州キャリア
120 日本キャリア
130 IPネットワーク
200A 通信システム
200B 第3のネットワーク
210 第1のネットワーク
220 第2のネットワーク
400 サーバ
401 通信部
402 記憶部
403 処理部