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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】電子部品供給体、電子部品供給リール
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/86 20060101AFI20241108BHJP
   H05K 13/02 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B65D85/86 300
H05K13/02 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018100947
(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公開番号】P2019204933
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(72)【発明者】
【氏名】高松 宏
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 朋之
(72)【発明者】
【氏名】樋山 晃男
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】神山 茂樹
【審判官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】実開平4-106260(JP,U)
【文献】特開平4-31215(JP,A)
【文献】特開2005-35636(JP,A)
【文献】特開2015-164157(JP,A)
【文献】特表2014-532602(JP,A)
【文献】特開2014-25047(JP,A)
【文献】特開2014-218298(JP,A)
【文献】特開2013-154951(JP,A)
【文献】特開2014-34405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/86
B65D 73/02
H05K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状に形成され、各々一つの電子部品を収納した収容凹部を表面に複数備えたエンボスキャリアテープと、
長尺状に形成され、上記エンボスキャリアテープの表面に積層されることにより上記収容凹部を封止するカバーフィルムとを有し、
上記カバーフィルムの上記エンボスキャリアテープの表面に貼付される貼付面には、凹凸部が形成され、
上記凹凸部は上記カバーフィルムに形成された貫通孔の周囲が凸状に隆起することにより形成され、
上記貫通孔の周囲が凸状に隆起することにより形成される突起の高さが40μm以上60μm以下であって、上記カバーフィルムの全面にわたって形成されており、
上記カバーフィルムは、上記凹凸部が形成された部位と上記エンボスキャリアテープが接合されている電子部品供給体。
【請求項2】
上記電子部品は、熱伝導シートである請求項1に記載の電子部品供給体。
【請求項3】
上記エンボスキャリアテープに対する上記カバーフィルムの剥離強度の振れ幅は、2.5(N)未満である請求項1又は2に記載の電子部品供給体。
【請求項4】
長尺状の電子部品供給体と、
上記電子部品供給体が巻回されたリール部材とを有し、
上記電子部品供給体は、
長尺状に形成され、各々一つの電子部品を収納した収容凹部を表面に複数備えたエンボスキャリアテープと、
長尺状に形成され、上記エンボスキャリアテープの表面に積層されることにより上記収容凹部を封止するカバーフィルムとを有し、
上記カバーフィルムの上記エンボスキャリアテープの表面に貼付される貼付面には、凹凸部が形成され、
上記凹凸部は上記カバーフィルムに形成された貫通孔の周囲が凸状に隆起することにより形成され
上記貫通孔の周囲が凸状に隆起することにより形成される突起の高さが40μm以上60μm以下であって、上記カバーフィルムの全面にわたって形成されており、
上記カバーフィルムは、上記凹凸部が形成された部位と上記エンボスキャリアテープが接合されている、
電子部品供給リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、各種部品を収納するエンボスキャリアテープを用いた電子部品供給体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータ等の各種電気機器やその他の機器に搭載されている半導体素子においては、駆動により熱が発生し、発生した熱が蓄積されると半導体素子の駆動や周辺機器へ悪影響が生じることから、各種冷却手段が用いられている。半導体素子等の電子部品の冷却方法としては、当該機器にファンを取り付け、機器筐体内の空気を冷却する方式や、その冷却すべき半導体素子に放熱フィンや放熱板等のヒートシンクを取り付ける方法等が知られている。
【0003】
半導体素子にヒートシンクを取り付けて冷却を行う場合、半導体素子の熱を効率よく放出させるために、半導体素子とヒートシンクとの間に熱伝導シートが設けられている。この熱伝導シートとしては、シリコーン樹脂に熱伝導性フィラー等の充填剤を分散含有させたものが広く用いられており、熱伝導性フィラーの1つとして、炭素繊維が用いられている(例えば、特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5671266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱伝導シートを供給する部材としては、熱伝導シート等の電子部品を収容する収容凹部を備えたテープ状の電子部品供給体が知られている。電子部品供給体は、長尺状に形成され、長手方向にわたって複数の収容凹部が形成されたエンボスキャリアテープと、長尺状に形成され、エンボスキャリアテープに積層されることにより収容凹部を封止するカバーフィルムとから構成される。
【0006】
収容凹部の底面には、複数の凹凸部が形成され、収容される電子部品と点接触することにより、電子部品と収容凹部の底面とが密着することによる取り出し性の低下を防止している。
【0007】
このような電子部品供給体は、収容凹部に電子部品を収容し、カバーフィルムで封止された後、リール状に巻回されたリール体として供給される。そして、電子部品供給体の使用時にはリール体から引き出されて、カバーフィルムが剥離された後、手作業あるいはバキュームノズル等のピックアップ機構により自動的に実装に供される。
【0008】
ここで、電子部品供給体は、リール状に巻回されることにより、巻き芯に近い部分では巻回量に応じて巻圧が累積してかかり、収容凹部内の電子部品が収容凹部底面の凸部以外の凹部や側壁、カバーフィルムなどとも密着する。そのため、熱伝導シートのような柔軟性を有し、且つタック性(微粘着性)を備える電子部品を収容する場合、カバーフィルムの剥離時に、電子部品がカバーフィルムに密着して取り出される、あるいはバキュームノズルによってもピックアップできず、作業効率を阻害する虞がある。
【0009】
なお、バキュームノズルの吸引力を上げると、厚みも薄く柔軟性を有する熱伝導シートの形状を維持できず実装に支障きたす。また、収容凹部からの取り出し性を改善するために熱伝導シートのタック性を低減させると、半導体素子やヒートシンクとの密着性が悪くなり、また、位置ずれを誘発し、却って熱伝導率の低下を招く恐れがある。
【0010】
そのため、柔軟性やタック性を有する熱伝導シート等の電子部品の、収容凹部からの取り出し性を改善する方法が求められている。
【0011】
そこで、本技術は、上記に鑑みてなされたものであり、柔軟性やタック性を有する電子部品の取り出し性を向上できる電子部品供給体、及び電子部品供給リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本技術に係る電子部品供給体は、長尺状に形成され、各々一つの電子部品を収納した収容凹部を表面に複数備えたエンボスキャリアテープと、長尺状に形成され、上記エンボスキャリアテープの表面に積層されることにより上記収容凹部を封止するカバーフィルムとを有し、上記カバーフィルムの上記エンボスキャリアテープの表面に貼付される貼付面には、凹凸部が形成され、上記凹凸部は上記カバーフィルムに形成された貫通孔の周囲が凸状に隆起することにより形成され、上記貫通孔の周囲が凸状に隆起することにより形成される突起の高さが40μm以上60μm以下であって、上記カバーフィルムの全面にわたって形成されており、上記カバーフィルムは、上記凹凸部が形成された部位と上記エンボスキャリアテープが接合されているものである。
【0013】
また、本技術に係る電子部品供給リールは、長尺状の電子部品供給体と、上記電子部品供給体が巻回されたリール部材とを有し、上記電子部品供給体は、長尺状に形成され、各々一つの電子部品を収納した収容凹部を表面に複数備えたエンボスキャリアテープと、長尺状に形成され、上記エンボスキャリアテープの表面に積層されることにより上記収容凹部を封止するカバーフィルムとを有し、上記カバーフィルムの上記エンボスキャリアテープの表面に貼付される貼付面には、凹凸部が形成され、上記凹凸部は上記カバーフィルムに形成された貫通孔の周囲が凸状に隆起することにより形成され、上記貫通孔の周囲が凸状に隆起することにより形成される突起の高さが40μm以上60μm以下であって、上記カバーフィルムの全面にわたって形成されており、上記カバーフィルムは、上記凹凸部が形成された部位と上記エンボスキャリアテープが接合されているものである。
【発明の効果】
【0014】
本技術によれば、カバーフィルムの貼付面に凹凸部が形成されているため、電子部品がカバーフィルムに接触した場合にも、カバーフィルムと電子部品とが密着することによりカバーフィルムの剥離時に電子部品が取り出される事態を防止することができる。
【0015】
また、本技術によれば、カバーフィルムの貼付面に凹凸部を形成することにより、カバーフィルムの剥離時に発生する剥離力(シ-ル強度)のばらつきを抑え、スムーズに剥離させるとともに、収容凹部に対する衝撃を低減し、電子部品のずれや飛び出しを押さえ、後のピックアップ工程における取り出し性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は電子部品供給体を示す図であり、(A)は平面図、(B)はX-X断面図、(C)はY-Y断面図である。
図2図2は、電子部品供給リールの外観斜視図である。
図3図3(A)はカバーフィルムに突起を形成する工程の一例を示す断面図であり、(B)は凹凸部を示す上面図である。
図4図4は、ベースフィルムに支持されたカバーフィルムを輪転式エンボス機に通す工程を示す図である。
図5図5は、熱伝導シートの製造方法の流れの一例を示す模式図である。
図6図6は、熱伝導シート、放熱部材及び半導体装置を示す断面図である。
図7図7は、実施例に係る電子部品供給体のカバーフィルムの剥離長さに対する剥離強度(N)を示すグラフである。
図8図8は、比較例に係る電子部品供給体のカバーフィルムの剥離長さに対する剥離強度(N)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本技術が適用されたエンボスキャリアテープ、及びエンボスキャリアテープ巻装体について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0018】
[電子部品供給体]
本技術が適用された電子部品供給体1は、図1図2に示すように、長尺状に形成され、各々一つの電子部品2を収納した収容凹部3を表面に複数備えたエンボスキャリアテープ4と、長尺状に形成され、エンボスキャリアテープ4の表面に積層されることにより収容凹部3を封止するカバーフィルム5とを有する。以下では、収容凹部3に収容して供給する電子部品2として熱伝導シート10を用いた場合を例に説明する。
【0019】
[エンボスキャリアテープ]
エンボスキャリアテープ4は、図1に示すように、長尺帯状に構成されており、表面4aに長手方向にわたって複数の収容凹部3と複数の送り孔6とが形成されている。収容凹部3及び送り孔6は、エンボスキャリアテープ4の長手方向にそれぞれ等間隔に配置されている。収容凹部3の間隔は適宜設定することができ、例えば、0.3mm~2.5mm程度の間隔が設けられている。
【0020】
また、エンボスキャリアテープ4は数十メートルから数百メートルの長さとすることができ、数十mm角の熱伝導性シートであれば数千個を収納することができる。エンボスキャリアテープ4の素材は公知のプラスチック材料を用いることができるが、耐熱性、耐候性の点から、例えばPETやポリカーボネートを好適に用いることができる。
【0021】
収容凹部3は、収容する電子部品の形状に対応した形状に構成され、例えば矩形状の熱伝導シート10を収容する場合、収容凹部3は、熱伝導シート10が収まる程度の縦横幅および深さに形成されている。具体的には、収容凹部3の縦横幅は、熱伝導シート10の縦横幅よりも若干大きいサイズ(例えば、熱伝導シート10の縦横幅の0.05~0.2mm程度大きいサイズ)に構成されている。
【0022】
また、収容凹部3の深さは、熱伝導シート10の厚さより若干大きいサイズ(例えば、0.05mm~0.3mm程度大きいサイズ)に構成されている。収容凹部3をこのようなサイズに構成することにより、熱伝導シート10を収納し、カバーフィルム5で封止する工程中に熱伝導シート10が収容凹部3からはみ出す危険がない。また、バキュームノズルで熱伝導シート10を吸着して取り出す際に熱伝導シート10が収容凹部3に引っかかる危険性を低下でき、また、リール状に巻回した際にも収容凹部3の中で熱伝導シート10がずれてしまうこともないので、正しく吸引することができる。
【0023】
なお、収容凹部3は、底面3aを、複数の突起を形成した凹凸面としてもよい。この場合、収容凹部3のうち複数の突起を除く底面3a、複数の突起のうち頂部を除く部分、及び側面3bには、シリコーン樹脂層を形成してもよい。シリコーン樹脂層は、エンボスキャリアテープ4に収容凹部3を成型後に突起頂部にマスキングを施した状態でシリコーン樹脂を塗布することにより形成することができる。
【0024】
[カバーフィルム]
カバーフィルム5は、エンボスキャリアテープ4の表面4aに貼付され、熱伝導シート10が収容された収容凹部3を封止するものであり、エンボスキャリアテープ4と略同幅か若干狭い幅に形成され、かつエンボスキャリアテープ4の長手方向にわたって積層可能に長尺状に形成されている。また、カバーフィルム5の素材は公知のプラスチック材料を用いることができるが、耐熱性、耐候性の点から、例えばPETやポリエステルフィルムを好適に用いることができる。
【0025】
カバーフィルム5とエンボスキャリアテープ4との接合方法としては、ヒートシールによる接合方法が好適である。また、カバーフィルム5の側縁部に長手方向にわたって接着剤を塗布し、エンボスキャリアテープ5の側縁部の糊代に接着させてもよい。また、側縁部に長手方向にわたって接着剤を塗布したカバーフィルム5とエンボスキャリアテープ5を長手方向にわたって熱圧着させる方法でもよい。
【0026】
[接合強度]
接合強度は、電子部品供給体1をリール状に巻回した際にかかる圧力、特に巻き芯に近い部分では巻回量に応じて巻圧が累積して大きくなること、また、リール体を輸送する際の振動や熱、熱衝撃に耐え、経時でも安定していることを考慮して適宜設定する。接合強度が弱すぎると、巻圧が相対的に大きくなるリール体の巻き芯に近い部分や、輸送中等の振動等によりカバーフィルム5が剥がれてしまい、接合強度が強すぎると実装時にカバーフィルム5を剥がす際に余分な負荷や衝撃がかかり、熱伝導シート10の取り出し性にも支障をきたすおそれがある。
【0027】
[凹凸部]
ここで、カバーフィルム5は、エンボスキャリアテープ4の表面4aに貼付される貼付面5aに、複数の突起21が形成された凹凸部20が形成されている。電子部品供給体1は、カバーフィルム5の貼付面に凹凸部20を形成することにより、カバーフィルム5と熱伝導シート10との接触面積を小さくし、カバーフィルム5への張り付きのリスクを低減することができる。特に、電子部品供給体1をリール状に巻回することにより、高い巻圧がかかる巻き芯に近い部分において熱伝導シート10がカバーフィルム5に接触した場合にも、カバーフィルム5と熱伝導シート10とが密着することによりカバーフィルム5の剥離時に熱伝導シート10が取り出される事態を防止することができる。
【0028】
また、電子部品供給体1は、カバーフィルム5の貼付面に凹凸部20を形成することにより、カバーフィルム5の剥離時に発生する剥離力(シ-ル強度)のばらつきを抑え、スムーズに剥離させるとともに、収容凹部3に対する衝撃を低減し、熱伝導シート10のずれや飛び出しを押さえ、後のピックアップ工程における取り出し性を向上させることができる。
【0029】
なお、カバーフィルム5は、エンボスキャリアテープ4からスムーズに剥離可能であることから、フッ素処理等の剥離処理が不要となる。もちろんカバーフィルム5は、凹凸部20を形成するとともに貼付面に剥離処理を施してもよい。
【0030】
図3(A)に示すように、突起21は、例えばカバーフィルム5に針を突き通して貫通孔22を形成することにより、針先が突き出た貫通孔22の周囲が凸状に隆起することにより形成することができる。突起21のサイズを例示すると、貫通孔21の周囲に隆起する突起21は、高さが40μm~60μm、貫通孔22の直径は50μmである。図3(B)に示すように、貫通孔22は、カバーフィルム5の全面に一様に形成することが好ましい。なお、突起21や貫通孔22の寸法は例示であり、本技術においては様々な寸法で形成することができる。但し、突起21の高さは、低すぎると熱伝導シート10とカバーフィルム5との密着性が上がるため、好ましくは40μm以上とする。
【0031】
また、貫通孔22は、例えば図4に示すように、ベースフィルム9に支持されたカバーフィルム5を輪転式エンボス機に通す際に、エンボス機のエンボスロール表面に一様に設けられた複数の先鋭体がカバーフィルム5を突き通すことにより形成される。また、突起21は、カバーフィルム5を貫通した先鋭体の尖端部に沿って形成される。カバーフィルム5は突起21が形成された面をエンボスキャリアテープ4への貼付面5aとする。
【0032】
なお、凹凸部20の形成方法としては、輪転式エンボス機により貫通孔21を形成する以外にも、熱プレスによりカバーフィルム5の貼付面に突起21を成型してもよく、その他の公知のシボ加工、微細加工や粗面化処理等により形成してもよい。また、凹凸部20は、複数の突起21を形成する他にも、凸条部が直線状、曲線状、ジグザグ状等に並列するにパターンその他のパターンとしてもよい。
【0033】
[電子部品供給リール]
電子部品供給体1は、エンボスキャリアテープ4の各収用部3内に熱伝導シート10が収容された後、カバーフィルム5が接合されて収容部3が封止される。カバーフィルム5とエンボスキャリアテープ4との接合は、例えば、カバーフィルム5の両側縁がエンボスキャリアテープ4にヒートシールされることにより行うことができる。これにより、収容部3に熱伝導シート10が収容された長尺状の電子部品供給体1を得る。
【0034】
[リール部材]
電子部品供給体1は、リール部材30の巻芯31に巻回されることにより、電子部品供給リール40として、保管、輸送される。
【0035】
リール部材30は、例えば図2に示すように、巻芯31と、巻芯31の側面に形成された側板32を備える。巻芯31は、電子部品供給体1を巻き付け可能となるように、例えば筒状に形成されている。巻芯31は、巻付装置、繰出装置等の回転軸が挿入される軸穴33を有する。軸穴33は、例えば断面が円形状であり、巻付装置、繰出装置等の回転軸を軸穴に差し込んだ状態で回転軸を駆動した場合、リール部材30が回転するようになっている。巻芯31は、例えば種々のプラスチック材料(例えばポリスチレン樹脂)を用いて形成することができる。
【0036】
側板32は、巻芯31の側面にそれぞれ形成されている。側板32は、例えば巻芯31に対して十分に大きな径を有する円板状である。
【0037】
電子部品供給体1は、テープ状に成形されており、リール部材30の巻芯31に、カバーフィルム5が外周側となるように巻回されることにより、巻芯31と側板32との間で形成された領域に巻装体を構成する。
【0038】
[熱伝導シート]
次いで、熱伝導シート10の構成例について説明する。熱伝導シート10は、バインダ樹脂と、炭素繊維と、熱伝導性フィラーとを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0039】
<バインダ樹脂>
バインダ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性ポリマーなどが挙げられる。熱硬化性ポリマーとしては、例えば、架橋ゴム、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、ポリイミドシリコーン、熱硬化型ポリフェニレンエーテル、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
架橋ゴムとしては、例えば、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ポリイソブチレンゴム、シリコーンゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
これらの中でも、成形加工性、耐候性に優れると共に、半導体装置等の電子部品における密着性及び追従性の点から、熱硬化性ポリマーは、シリコーン樹脂であることが特に好ましい。
【0042】
シリコーン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、液状シリコーンゲルの主剤と、硬化剤とを含有することが好ましい。そのようなシリコーン樹脂としては、例えば、付加反応型シリコーン樹脂、過酸化物を加硫に用いる熱加硫型ミラブルタイプのシリコーン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、電子部品の発熱面とヒートシンク面との密着性が要求されるため、付加反応型シリコーン樹脂が特に好ましい。
【0043】
付加反応型シリコーン樹脂としては、ビニル基を有するポリオルガノシロキサンを主剤、Si-H基を有するポリオルガノシロキサンを硬化剤とした、2液性の付加反応型シリコーン樹脂が好ましい。
【0044】
液状シリコーンゲルの主剤と、硬化剤との組合せにおいて、主剤と硬化剤との配合割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0045】
バインダ樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10体積%~50体積%が好ましく、15体積%~40体積%がより好ましく、20体積%~40体積%が特に好ましい。
【0046】
なお、本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
【0047】
<炭素繊維>
炭素繊維としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、PBO繊維を黒鉛化した炭素繊維、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法(化学気相成長法)、CCVD法(触媒化学気相成長法)等で合成された炭素繊維を用いることができる。これらの中でも、熱伝導性の点から、PBO繊維を黒鉛化した炭素繊維、ピッチ系炭素繊維が特に好ましい。
【0048】
なお、炭素繊維は、絶縁性材料で被覆された炭素繊維ではなく、導電性を有する。また、炭素繊維は、必要に応じて、密着性を高めるために、その一部又は全部を表面処理して用いてもよい。表面処理としては、例えば、酸化処理、窒化処理、ニトロ化、スルホン化、あるいはこれらの処理によって表面に導入された官能基若しくは炭素繊維の表面に、金属、金属化合物、有機化合物等を付着あるいは結合させる処理などが挙げられる。官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基などが挙げられる。
【0049】
炭素繊維の平均繊維長(平均長軸長さ)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50μm~250μmが好ましく、75μm~200μmがより好ましく、90μm~170μmが特に好ましい。炭素繊維の平均繊維径(平均短軸長さ)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、4μm~20μmが好ましく、5μm~14μmがより好ましい。
【0050】
炭素繊維のアスペクト比(平均長軸長さ/平均短軸長さ)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、8以上が好ましく、9~30がより好ましい。アスペクト比が、8未満であると、炭素繊維の繊維長(長軸長さ)が短いため、熱伝導率が低下してしまうことがある。ここで、炭素繊維の平均長軸長さ、及び平均短軸長さは、例えばマイクロスコープ、走査型電子顕微鏡(SEM)などにより測定することができる。
【0051】
炭素繊維の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2体積%~40体積%が好ましく、3体積%~38体積%がより好ましく、4体積%~30体積%が特に好ましい。炭素繊維の含有量が2体積%未満であると、十分に低い熱抵抗を得ることが困難になることがあり、40体積%を超えると、熱伝導シート10の成型性及び炭素繊維の配向性に影響を与えてしまうことがある。
【0052】
炭素繊維とバインダ樹脂との質量比(炭素繊維/バインダ樹脂)は、1.30未満であり、0.10以上1.30未満が好ましく、0.30以上1.30未満がより好ましく、0.50以上1.30未満が更により好ましく、0.60以上1.20以下が特に好ましい。炭素繊維とバインダ樹脂との質量比が、1.30以上であると、熱伝導シート10の絶縁性が不十分となる。また、熱伝導シート10が炭素繊維を含有しないと、熱伝導シート10の熱特性(特に熱伝導性)が不十分となる。
【0053】
<熱伝導性フィラー>
熱伝導性フィラーとしては、炭素繊維以外の熱伝導性フィラーであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機物フィラーなどが挙げられる。
【0054】
無機物フィラーとしては、その形状、材質、平均粒径などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。無機物フィラーの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、楕円球状、塊状、粒状、扁平状、針状などが挙げられる。これらの中でも、球状、楕円形状が充填性の点から好ましく、球状が特に好ましい。なお、本明細書において、無機物フィラーは、炭素繊維とは異なる。
【0055】
無機物フィラーとしては、例えば、窒化アルミニウム(窒化アルミ:AlN)、シリカ、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化亜鉛、炭化ケイ素、ケイ素(シリコン)、酸化珪素、酸化アルミニウム、金属粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、シリカが好ましく、熱伝導率の点から、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛が特に好ましい。
【0056】
なお、無機物フィラーは、表面処理が施されていてもよい。表面処理としてカップリング剤で無機物フィラーを処理すると、無機物フィラーの分散性が向上し、熱伝導シート10の柔軟性が向上する。
【0057】
無機物フィラーの平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。無機物フィラーがアルミナの場合、その平均粒径は、1μm~10μmが好ましく、1μm~5μmがより好ましく、3μm~5μmが特に好ましい。平均粒径が、1μm未満であると、粘度が大きくなり、混合しにくくなることがあり、10μmを超えると、熱伝導シート10の熱抵抗が大きくなることがある。
【0058】
無機物フィラーが窒化アルミニウムの場合、その平均粒径は、0.3μm~6.0μmが好ましく、0.3μm~2.0μmがより好ましく、0.5μm~1.5μmが特に好ましい。平均粒径が、0.3μm未満であると、粘度が大きくなり、混合しにくくなることがあり、6.0μmを超えると、熱伝導シート10の熱抵抗が大きくなることがある。
【0059】
無機物フィラーの平均粒径は、例えば、粒度分布計、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができる。
【0060】
熱伝導性フィラーの含有量は、48体積%~70体積%であり、50体積%~69体積%好ましい。熱伝導性フィラーの含有量が、48体積%未満、又は70体積%を超えると、絶縁性と高い熱伝導性との両立ができなくなる。なお、熱伝導性フィラーの含有量が、48体積%未満、又は70体積%を超えると、熱伝導シート10を作製することも困難となる。
【0061】
<その他の成分>
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チキソトロピー性付与剤、分散剤、硬化促進剤、遅延剤、微粘着付与剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤などが挙げられる。
【0062】
熱伝導シート10の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05mm~5.00mmが好ましく、0.07mm~4.00mmがより好ましく、0.10mm~3.00mmが特に好ましい。
【0063】
熱伝導シート10の表面は、突出した炭素繊維による凸形状を追従するように、熱伝導シート10から滲み出した滲出成分で覆われていることが好ましい。熱伝導シート10の表面をこのようにする方法は、例えば、後述する表面被覆工程により行うことができる。
【0064】
熱伝導シート10は、使用される半導体素子周辺の電子回路の短絡防止の点から、1,000Vの印加電圧における体積抵抗値が、1.0×108Ω・cm以上であることが好ましく、1.0×1010Ω・cm以上であることがより好ましい。体積抵抗値は、例えば、JIS K-6911に準じて測定される。
【0065】
体積抵抗率の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、体積抵抗率は、1.0×1018Ω・cm以下が挙げられる。
【0066】
熱伝導シート10は、電子部品及びヒートシンクに対する密着性の点から、荷重0.5kgf/cm2における圧縮率が、3%以上であることが好ましく、15%以上がより好ましい。熱伝導シート10の圧縮率の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱伝導シート10の圧縮率は、30%以下が好ましい。
【0067】
熱伝導シート10においては、炭素繊維が熱伝導シート10の厚み方向に配向している。そうすることにより、炭素繊維とバインダ樹脂との前述の特定の質量比、及び前述の熱伝導性フィラーの特定の含有量と相まって、高い熱伝導性を有しつつ、絶縁性にも優れる熱伝導シート10が得られる。
【0068】
[熱伝導シートの製造方法]
熱伝導シート10の製造方法は、成型体作製工程と、成型体シート作製工程とを少なくとも含み、好ましくは、表面被覆工程とを含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0069】
<成型体作製工程>
成型体作製工程は、上述したバインダ樹脂、炭素繊維、及び熱伝導性フィラーを含有する熱伝導性樹脂組成物を所定の形状に成型して硬化することにより、熱伝導性樹脂組成物の成型体を得る工程である。熱伝導性樹脂組成物の成型方法としては、例えば、押出し成型法、金型成型法などが挙げられる。また、熱伝導性樹脂組成物の硬化は熱硬化であることが好ましい。
【0070】
成型体(ブロック状の成型体)の大きさ及び形状は、求められる熱伝導シート10の大きさに応じて決めることができる。例えば、断面の縦の大きさが0.5cm~15cmで横の大きさが0.5cm~15cmの直方体が挙げられる。
【0071】
<成型体シート作製工程>
成型体シート作製工程は、例えばスライス装置により成型体をシート状に切断し、成型体シートを得る工程である。なお、上述した押出し成型法により炭素繊維が押出し方向に沿って配向した成型体を作成した場合、成型体を押出し方向に対して垂直方向に切断することが好ましい。
【0072】
成型体シートの表面においては、炭素繊維が突出している。これは、成型体をスライス装置等によりシート状に切断する際に、バインダ樹脂の硬化成分と、炭素繊維との硬度差により、バインダ樹脂の硬化成分がスライス装置等の切断部材に引っ張られて伸長し、成型体シート表面において、炭素繊維表面からバインダ樹脂の硬化成分が除去されるためと考えられる。
【0073】
成型体シートの平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.06mm~5.01mmが好ましく、0.08mm~4.01mmがより好ましく、0.11mm~3.01mmが特に好ましい。
【0074】
<表面被覆工程>
表面被覆工程とは、成型体シートの表面を、突出した炭素繊維による凸形状を追従するように、成型体シートから滲み出した滲出成分により覆う工程をいい、例えば、プレス処理や、成型体シート放置処理により行うことができる。ここで、「滲出成分」とは、熱伝導性樹脂組成物に含まれるが、硬化に寄与しなかった成分であって、非硬化性成分、及びバインダ樹脂のうちの硬化しなかった成分などをいう。
【0075】
成型体シートより滲出成分を滲み出させ、滲出成分によって表面を被覆することにより、熱伝導シート10は、電子部品やヒートスプレッダの表面に対する追従性、密着性が向上し、熱抵抗を低減させることができる。また、滲出成分による被覆が熱伝導シート10表面の炭素繊維の形状を反映する程度の厚みである場合には、熱抵抗の上昇を回避できる。
【0076】
さらに、熱伝導シート10は、滲出成分によって被覆されることにより、タック性(微粘着性)を有し、電子部品やヒートシンクに貼付された際に、安定して保持され、また、繰り返して貼り直しても再度、滲出成分によって被覆されることで、タック性を回復することができる。
【0077】
なお、熱伝導シート10は、成型体シートがプレスされることにより厚み方向に圧縮され、炭素繊維及び熱伝導性フィラー同士の接触の頻度を増大させることができため、熱抵抗を低減させることが可能となる。
【0078】
図5は熱伝導シート10の製造工程の一例を示す模式図である。図5に示すように、熱伝導シート10は、押出し、成形、硬化、切断(スライス)などの一連の工程を経て製造される。まず、バインダ樹脂、炭素繊維、及び熱伝導性フィラーを混合、及び撹拌し熱伝導性樹脂組成物を調製する。次に、調製した熱伝導性樹脂組成物を押出し成型する際に、複数のスリットを通過させることで熱伝導性樹脂組成物中に配合された炭素繊維を押出し方向に配向させ、成型体を得る。次に、得られた成型体を硬化させた後、硬化した成型体を押出し方向に対し垂直方向に超音波カッターで所定の厚みに切断することにより、成型体シート(熱伝導シート)が作製できる。
【0079】
このような熱伝導シート10は、エンボスキャリアテープ4の収容凹部3に収容された後、カバーフィルム5によって封止されることにより、電子部品供給体1に収容される。また、上述したように、熱伝導シート10を収容した電子部品供給体1はリール状に巻回されて、電子部品供給リール40として搬送、保管等される。使用時においては、電子部品供給体1がリール部材30から巻き出され、カバーフィルム5が剥離された後、熱伝導シート10がバキュームノズル等によって収容凹部3からピックアップされる。
【0080】
このとき、電子部品供給体1は、カバーフィルム5の貼付面5aに凹凸部20が形成されているため、熱伝導シート10がカバーフィルム5に接触した場合にも、カバーフィルム5と熱伝導シート10とが密着することによりカバーフィルム5の剥離時に熱伝導シート10が取り出される事態を防止することができる。
【0081】
また、電子部品供給体1は、カバーフィルム5の貼付面に凹凸部20を形成することにより、カバーフィルム5の剥離時に発生する剥離力(シ-ル強度)のばらつきを抑え、スムーズに剥離させるとともに、収容凹部3に対する衝撃を低減し、熱伝導シート10のずれや飛び出しを押さえ、後のピックアップ工程における取り出し性を向上させることができる。
【0082】
[半導体装置]
このような熱伝導シート10は、例えば図6に示すように、半導体装置50に適用することができる。半導体装置50は、電子部品51と、ヒートスプレッダ52と、熱伝導シート10とを少なくとも有し、熱伝導シート10がヒートスプレッダ52と電子部品51との間に挟持される。
【0083】
電子部品51としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CPU、MPU、グラフィック演算素子などが挙げられる。ヒートスプレッダ52は、電子部品51の発する熱を放熱する部材であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。熱伝導シート10は、ヒートスプレッダ52と電子部品51との間に挟持される。また熱伝導シート10は、ヒートスプレッダ52とヒートシンク53との間に挟持されることにより、ヒートスプレッダ52とともに、電子部品51の熱を放熱する放熱部材を構成する。
【実施例
【0084】
次いで、本技術の実施例について説明する。実施例として貼付面に凹凸部を設けたカバーフィルムでエンボスキャリアテープの収容凹部を封止した電子部品供給体と、比較例として貼付面に凹凸部を設けないカバーフィルムでエンボスキャリアテープの収容凹部を封止した電子部品供給体とを用意し、剥離強度を測定、対比した。
【0085】
<エンボスキャリアテープ>
実施例及び比較例に用いるエンボスキャリアテープとしては、(株)アドバンテックジャパン社製エンボスキャリアテープ(品番:GS28419、テープ幅:24mm、収容凹部ピッチ:12mm、テープ材質:PS帯電防止材、収容凹部厚み:t0.3mm)を用いた。
【0086】
<カバーフィルム:実施例>
実施例に用いたカバーフィルムとしては、ニッポー(株)社製カバーテープ(品番:600600410 ALS-S21.0X720-3)を用いて、このカバーフィルムをベースフィルムで支持した状態で輪転式エンボス機に通し、エンボス機のエンボスロール表面に一様に設けられた複数の先鋭体によってカバーフィルムを突き通すことにより、カバーフィルムを貫通した先鋭体の尖端部に沿って隆起する突起をフィルム全面にわたって形成した。
【0087】
<カバーテープ/比較例>
比較例に用いたカバーフィルムとしては、ニッポー(株)社製カバーテープ(品番:600600410 ALS-S21.0X720-3)を用いた。比較例では、特にカバーフィルムに加工を施さなかった。
【0088】
<カバーフィルムシール条件>
これら実施例及び比較例に係るカバーフィルムをエンボスキャリアテープにヒートシールにより接合し、電子部品供給体を得た。シール条件は、シール設定温度:184℃、シール時間:0.4秒、送りピッチ:12mmとした。
【0089】
<剥離試験>
実施例及び比較例に係る電子部品供給体のカバーフィルムをエンボスキャリアテープから剥離し、剥離強度(ヒートシール部の強度)を測定した。剥離試験測定機は、(株)パルメック社製剥離強度テスター(製品名:PFT-50S)を使用した。剥離試験条件は、剥離速度:120mm/min、剥離角度:170°とした。
【0090】
図7に実施例に係る電子部品供給体の剥離試験の結果を示し、図8に比較例に係る電子部品供給体の剥離試験の結果を示す。なお、剥離試験では、カバーフィルムの剥離長さに対する剥離強度(N)を示す波形群が周期的に現れるが、これは、実施例、比較例ともに2つのサンプルを用意し、サンプルの入れ替え時において剥離強度(N)がゼロに下がったことによる。
【0091】
図7は、実施例に係る電子部品供給体のカバーフィルムの剥離長さに対する剥離強度(N)を示すグラフである。図7に示すように、実施例に係る電子部品供給体では、カバーフィルムの剥離強度(N)を示す波形群の振れ幅が2.3(N)、2.6(N)、平均2.45(N)であった。
【0092】
図8は、比較例に係る電子部品供給体のカバーフィルムの剥離長さに対する剥離強度(N)を示すグラフである。図8に示すように、比較例に係る電子部品供給体では、カバーフィルムの剥離強度(N)を示す波形群の振れ幅が2.8(N)、3.0(N)、平均2.9(N)であった。
【0093】
実施例は、比較例と比較してカバーフィルムの剥離強度の振れ幅が小さく(2.5N以下)スムーズに剥離できることが分かる。これは、凹凸加工によりヒートシールされたカバーフィルムのエンボスキャリアテープに対する接地面積が小さくなることでスムーズに剥離することができ、剥離強度の振れ幅を抑えられるためと推測される。
【0094】
そのため、実施例に係る電子部品供給体は、比較例と比べシール強度調整が容易となり、熱伝導シートの取り出し性を向上することが可能となる。すなわち、カバーフィルムの剥離強度の振れ幅が大きいと剥離時にエンボスキャリアテープ及び収容部に収容された熱伝導シートに対する衝撃も大きくなるため、収容部内において熱伝導シートがズレたり、収容部の側壁やカバーフィルムに付着したりする虞がある。剥離強度の振れ幅を下げるために剥離強度そのものを下げると、輸送中や保管中にカバーフィルムが剥離する虞が出てくる。特にリール部材に巻回されると巻き芯に近い部分では高い巻圧によりカバーフィルムが剥離する虞も高まる。
【0095】
一方、実施例によれば、カバーフィルムの剥離強度を高く維持することにより、電子部品供給体をリール状に巻回した際の巻圧に対する耐性を確保するとともに、剥離時には剥離強度の振れ幅を抑え、熱伝導シートの取り出し性を向上できる。
【符号の説明】
【0096】
1 電子部品供給体、2 電子部品、3 収容凹部、3a 底面、3b 側面、4 エンボスキャリアテープ、4a 表面、5 カバーフィルム、5a 貼付面、6 送り孔、9 ベースフィルム、10 熱伝導シート、20 凹凸部、21 突起、22 貫通孔、30 リール部材、31 巻芯、32 側板、33 軸穴、40 電子部品供給リール、50半導体装置、51 電子部品、52 ヒートスプレッダ、53 ヒートシンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8