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特許7584216真珠を保護するためのケース及び方法、並びに、真珠を封入する装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】真珠を保護するためのケース及び方法、並びに、真珠を封入する装置
(51)【国際特許分類】
   A45C 11/16 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
A45C11/16
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019212825
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2020203065
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】754581
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(73)【特許権者】
【識別番号】519421628
【氏名又は名称】リンアン チョウ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】チーフイ チョウ
(72)【発明者】
【氏名】シェン ジャー チュオ
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0213087(US,A1)
【文献】ベルギー国特許発明第816108(BE,A)
【文献】特表平3-503135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真珠用の保護ケースであって、前記ケースは、
前記ケースが閉じられたときに真珠を収容する閉鎖内容積部を画定している壁を有し、
第1のケース部品及び第2のケース部品を有し、前記第1及び前記第2のケース部品は各々、前記ケースの前記壁の相当大きな壁部分を形成し、前記第1及び前記第2のケース部品は、前記閉鎖内容積部を画定するよう互いに解除可能に閉じられるようになっており、前記前記第1及び前記第2のケース部品の各々は、透明な材料で形成され、
閉じられたときに前記第1のケース部品と前記第2のケース部品を互いにロックして前記第1のケース部品と前記第2のケース部品が開かれるのを阻止するようになった不可逆式ロック機構体を有し、前記ロック機構体は、前記ケースを開くためには壊されなければならず、
前記ロック機構体は、前記ケース内に配置されるとともに前記第1のケース部品及び前記第2のケース部品のうちの少なくとも一方の前記透明な材料越しに見え、その結果、前記ロック機構体の状態が前記ケースの外側から識別可能であり、前記ロック機構体の前記状態は、壊されていないか壊されているかのいずれかであり、
前記ロック機構体は、少なくとも1つの歯及び少なくとも1本のレバーを含み、前記ケースを閉じる際、前記レバーは、前記ロック機構体を損傷させないで前記歯上に乗っかり、前記ケースを開くと、前記少なくとも1つの歯及び/又は前記少なくとも1本のレバーが壊される、ケース。
【請求項2】
前記ケースは、前記閉じられた内容積部を画定するよう前記第1のケース部品と前記第2のケース部品を互いに解除可能に閉じるようになった結合機構体をさらに有する、請求項1記載のケース。
【請求項3】
前記第1のケース部品と前記第2のケース部品は、前記ケースを閉じるよう互いに解除可能に結合されるようになっており、そして前記ケースを開くよう互いに分離される、請求項2記載のケース。
【請求項4】
前記結合機構体は、ねじ山付き係合部を含み、前記ロック機構体は、前記第1のケース部品と前記第2のケース部品が前記ケースを開くよう外されると、壊される、請求項3記載のケース。
【請求項5】
前記ケースの外面は、実質的に球形である、請求項1~4のうちいずれか一に記載のケース。
【請求項6】
前記第1及び前記第2のケース部品の各々の外面は、実質的に半球形である、請求項1~5のうちいずれか一に記載のケース。
【請求項7】
前記第1及び前記第2のケース部品のうちの一方は、前記少なくとも1つの歯から成り、前記第1及び前記第2のケース部品のうちの他方は、前記少なくとも1本のレバーから成る、請求項1記載のケース。
【請求項8】
前記少なくとも1つの歯は、前記第1及び前記第2のケース部品のうちの一方と一体に形成されている、請求項7記載のケース。
【請求項9】
前記少なくとも1本のレバーは、前記第1及び前記第2のケース部品のうちの他方と一体に形成されている、請求項7又は8記載のケース。
【請求項10】
前記ロック機構体は、複数の歯を含む、請求項1~9のうちいずれか一に記載のケース。
【請求項11】
前記ロック機構体は、複数のレバーを含む、請求項1~10のうちいずれか一に記載のケース。
【請求項12】
前記ロック機構体は、ラチェットを含み、前記ケースを開くと、歯及び/又は前記ラチェットのレバー又は爪が壊される、請求項1~11のうちいずれか一に記載のケース。
【請求項13】
前記第1及び前記第2のケース部品のうちの一方は、ラチェット歯車から成り、前記第1及び前記第2のケース部品のうちの他方は、前記歯車の歯に係合するラチェット爪又はレバーから成る、請求項12記載のケース。
【請求項14】
前記ケースは、固有の識別子を有する、請求項1~13のうちいずれか一に記載のケース。
【請求項15】
前記ケースは、汚染物が前記ケースの内側に達するのを制限し又は阻止するためのシールを有する、請求項1~14のうちいずれか一に記載のケース。
【請求項16】
前記シールは、前記ケース内の制御された雰囲気を維持するための圧力又は気密シールである、請求項15記載のケース。
【請求項17】
前記ケースは、たった1つの真珠だけを収容するようになっている、請求項1~16のうちいずれか一に記載のケース。
【請求項18】
ケース入り真珠であって、
ケースと、真珠と、を備え、前記ケースは、請求項1~17のうちいずれか一に記載のケースであり、前記ケースは、前記真珠が前記ケースの内側に位置した状態で閉じられる、ケース入り真珠。
【請求項19】
前記真珠は、前記ケース内の不活性雰囲気内に封入されている、請求項18記載のケース入り真珠。
【請求項20】
前記不活性雰囲気は、正圧を有する、請求項19記載のケース入り真珠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、真珠を保護するためのケース及び真珠を保護するための方法に関する。本発明はまた、真珠を封入するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真珠は、希少な美しい物として何世紀にもわたって高く評価されている。海水中で真珠貝から採れる真珠(オイスターパール)は、最も良く知られておりかつ最も商業的に重要な真珠である。オイスターパールは、真珠の層、すなわち、真珠貝の殻を形成する真珠質層の分泌物で用いられるのと同一の物質で作られる。オイスターパールは、非常に魅力があり、しかも光が真珠の表面上で反射するときに光を散らばらせる真珠の互いにオーバーラップした層によって生じるその高い光沢及び虹色について高く評価されている。
【0003】
真珠は、刺激物が真珠貝、イガイ、又は二枚貝の中に取り込まれたときに自然のプロセスによって作られる。軟体動物は、殻を形成するのと同一の材料で刺激物を覆うよう働く。何層も重ねる手法を真珠が形成されるまで行う。
【0004】
真珠は、天然物か養殖物かのいずれかである。天然(又は自然に生じる)真珠は、自然に生じる刺激物(通常、寄生生物)周りに形成され、したがって、人間の介在なしに形成される。天然真珠は、極めて希少である。1つでも自然に生じる真珠を見つけ出すためには、何百個の真珠用の真珠貝又はイガイが集められて開かれ、かくして死にいたらされなければならない。多くの国々に関し、このことが、真珠を得る唯一の手法であり、真珠が歴史的にかかる桁外れの価格で売れる理由であった。
【0005】
養殖真珠は、刺激物(種又は核)を熟練者によって真珠貝の中に手作業で配置することによって人間の介在によって作られる。真珠貝は、海中(真珠養殖場)のラック内に吊り下げられ、成長するよう放置され、真珠は、種付けされた刺激物に真珠質層を何層も重ねることで、天然真珠の場合と同一の自然なプロセスによって真珠貝内で形成される。かくして、養殖真珠は、X線によって核が真珠内に存在しているかどうかを判定する方法以外では、天然真珠とは識別できない。
【0006】
真珠は、コレクターのアイテムとして個々に販売され、宝石類に嵌め込まれ又は紐に通した状態又は首飾りの状態で販売される。真珠の価値は、他の貴重な宝石用原石の価値とほぼ同じに認められ、価値は、サイズ、形状(例えば、真円度)、色、表面品質及び光沢で決まる。
【0007】
天然産出の真珠よりは希少ではないが、養殖真珠は、真珠形成プロセスを大量生産向きにすることができないので依然として高く評価されている。真珠貝は、核(nucleus)を受け入れるための操作をする前に、成熟した年齢に達しなければならない。真珠貝を産卵から養殖場内で成長させ、かかる真珠貝は、成熟するには3年を要する場合がある。真珠貝を一度に1個の真珠で種付けすることしかできず、核周りに真珠質層を形成する自然のプロセスは、何年もかかる。その場合でさえ、形成される真珠の一部分だけが宝石用原石の品質のものである。養殖プロセスはまた、極めて労働力を要し、したがってコスト高であり、真珠貝は、殻の成長を除くために洗浄を必要とし、しかも真珠貝の健康は、モニタリングを必要とする。種付けプロセスは、秘匿事項であり、真珠会社及びさらに個々の技術者は、自分たちの好ましいかつ最も首尾良い種付け作業を秘匿状態に保っている。かくして、一流の宝石製造業者によって使用されるのに適し又は個々のコレクション品として適している高品質養殖真珠もまた、極めて希少であり、したがって、極めて魅力がありかつ極めて高価である。
【0008】
他の宝石用原石、例えばダイヤモンドとは異なり、真珠の光沢及び表面品質は、使用によって経時的にゆっくりと低下する場合があり、しかも化学薬品又は研磨性表面との接触によって損傷を受ける場合がある。ダイヤモンドは、真珠よりも2~4倍硬い。真珠質層は、ほぼ100%の炭化カルシウム及びコキオリンである。コンキオリンは、炭化カルシウムを結合する有機物質である。炭化カルシウムは、酸性溶液中に溶け、それどころか、弱酸溶液でも真珠の表面を損傷させる場合がある。あるプラスチックは、真珠の表面を劣化させる化学物質を放出する場合がある。真珠は、長期間にわたって安全な貴重品箱内に保管されてはならず、と言うのは、安全な貴重品箱を保つ乾燥大気条件が真珠を乾燥させてしまう場合があり、それにより真珠が小さな表面割れ目を成長させる場合があるからである。真珠の所有者に提供されるアドバイスは、真珠は、所有者が「身につけるときに手に取る最後のものであり、そして帰宅したときに最初に外すべきものである」ということである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
真珠を保護するための方法及び/又は使用により又は化学物質もしくは他の表面との接触によって劣化しないよう保護するための保護ケースを提供することが望ましい。また、真珠を保存し、しかも真珠を人が見ることができるとともに/あるいは楽しむことができるようにする方法又は保護ケースを提供することが望ましい。さらに、真正性及び元の状態(及びかくして価値及び品質)を維持して確認することができるよう真珠を保持する方法又は保護ケースを提供することが望ましい。
【0010】
本発明の目的は、上述の欠点のうちの1つ又は2つ以上を解決し又は少なくとも有用な選択肢を公衆に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点によれば、真珠用の保護ケースであって、ケースは、
ケースが閉じられたときに真珠を収容する閉鎖内容積部を画定している壁を有し、
第1のケース部品及び第2のケース部品を有し、第1及び第2のケース部品は各々、ケースの壁の相当大きな壁部分を形成し、第1及び第2のケース部品は、閉鎖内容積部を画定するよう互いに解除可能に閉じられるようになっており、第1及び第2のケース部品の各々は、透明な材料で形成され、
閉じられたときに第1のケース部品と第2のケース部品を互いにロックして第1のケース部品と第2のケース部品が開かれるのを阻止するようになった不可逆式ロック機構体を有し、ロック機構体は、ケースを開くためには壊されなければならず、
ロック機構体は、ケース内に配置されるとともに第1のケース部品及び第2のケース部品のうちの少なくとも一方の透明な材料越しに見え、その結果、ロック機構体の状態がケースの外側から識別可能であり、ロック機構体の状態は、壊されていないか壊されているかのいずれかであることを特徴とするケースが提供される。
【0012】
幾つかの実施形態では、ケースは、閉じられた内容積部を画定するよう第1のケース部品と第2のケース部品を互いに解除可能に閉じるようになった結合機構体をさらに有する。
【0013】
幾つかの実施形態では、第1のケース部品と第2のケース部品は、ケースを閉じるよう互いに解除可能に結合されるようになっており、そしてケースを開くよう互いに分離される。
【0014】
幾つかの実施形態では、結合機構体は、ねじ山付き係合部を含み、ロック機構体は、第1のケース部品と第2のケース部品がケースを開くよう外されると、壊される。
【0015】
幾つかの実施形態では、ケースの外面は、実質的に球形である。
【0016】
幾つかの実施形態では、第1及び第2のケース部品の各々の外面は、実質的に半球形である。
【0017】
幾つかの実施形態では、ケースの内面は、実質的に球形である。
【0018】
幾つかの実施形態では、ロック機構体は、少なくとも1つの歯及び少なくとも1本のレバーを含み、ケースを閉じる際、レバーは、ロック機構体を損傷させないで歯上に乗っかり、ケースを開くと、少なくとも1つの歯及び/又は少なくとも1本のレバーが壊される。
【0019】
幾つかの実施形態では、第1及び第2のケース部品のうちの一方は、少なくとも1つの歯から成り、第1及び第2のケース部品のうちの他方は、少なくとも1本のレバーから成る。
【0020】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの歯は、第1及び第2のケース部品のうちの一方と一体に形成されている。
【0021】
幾つかの実施形態では、少なくとも1本のレバーは、第1及び第2のケース部品のうちの他方と一体に形成されている。
【0022】
幾つかの実施形態では、ロック機構体は、複数の歯を含む。
【0023】
幾つかの実施形態では、ロック機構体は、複数のレバーを含む。
【0024】
幾つかの実施形態では、ロック機構体は、ラチェットを含み、ケースを開くと、歯及び/又はラチェットのレバー又は爪が壊される。
【0025】
幾つかの実施形態では、第1及び第2のケース部品のうちの一方は、ラチェット歯車から成り、第1及び第2のケース部品のうちの他方は、歯車の歯に係合するラチェット爪又はレバーから成る。
【0026】
幾つかの実施形態では、ケースは、固有の識別子を有する。
【0027】
幾つかの実施形態では、ケースは、汚染物がケースの内側に達するのを制限し又は阻止するためのシールを有する。
【0028】
幾つかの実施形態では、シールは、ケース内の制御された雰囲気を維持するための圧力又は気密シールである。
【0029】
幾つかの実施形態では、ケースは、たった1つの真珠だけを収容するようになっている。
【0030】
本発明の第2の観点によれば、ケース入り真珠が提供される。ケースは、真珠がケースの内側に位置した状態で閉じられる。ケースは、上記実施形態項のうちの任意の1つ又は2つ以上に記載されている。幾つかの実施形態では、真珠は、ケース内の不活性雰囲気内に封入されている。幾つかの実施形態では、不活性雰囲気は、正圧の状態にある。
【0031】
真珠を保管するとともに保護する方法が記載される。この方法は、
不活性ガスを有する封入チャンバ内に真珠及び開いたケースを配置するとともに/あるいはこのチャンバを不活性ガスでパージするステップを含み、
真珠を封入チャンバ内の開いたケース内に配置するステップを含み、
封入チャンバ内のケースを閉じて、閉じられたケースが不活性雰囲気及び真珠を収容するステップを含み、ケースは、ケース内に不活性雰囲気を封止するようになっており、
真珠がケースによって封入された状態で封入チャンバから閉じられたケースを取り出すステップを含む。
【0032】
幾つかの実施形態では、真珠及び開いたケースを封入チャンバ内に配置するステップは、
真珠及び開いたケースを前側移送チャンバ内に配置し、前側移送チャンバを不活性ガスでパージするステップと、
前側移送チャンバと封入チャンバを流体結合するステップと、
真珠及び開いたケースを前側移送チャンバから封入チャンバに移送するステップと、
移送チャンバを封入チャンバから流体的に切り離すステップとを含む。
【0033】
幾つかの実施形態では、ケースを包装チャンバから取り出すステップは、
後側移送チャンバをパージするステップと、
後側移送チャンバと包装チャンバを流体結合するステップと、
真珠がケースによって封入された状態で設置チャンバから閉じられたケースを後側移送チャンバに移送するステップと、
設置チャンバを後側移送チャンバから流体的に切り離すステップと、
真珠がケースによって封入された状態で後側移送チャンバから閉じられたケースを取り出すステップとを含む。
【0034】
この方法は、好ましくは、本発明の第1の観点に関して上述した記載内容のうちの任意の1つ又は2つ以上に記載されているように真珠をケース内に封入するために用いられる。
【0035】
真珠が本物であることを証明する方法は、本発明の第1の観点に関して上述した記載内容のうちの任意の1つ又は2つ以上に記載されているように真珠をケース内に封入するステップを含み、ケースは、固有の識別子を備えている。好ましくは、この方法は、複数の真珠に関して真珠仕様の登録簿を維持するステップを含み、登録簿は、各真珠に関する上述の固有の識別子を有する。各一義的識別子は、シリアルナンバーであるのが良い。
【0036】
真珠をケース内の不活性雰囲気中に封入する装置が記載される。ケースは、第1のケース部品及び第2のケース部品を有し、第1及び第2のケース部品は各々、第1のケース部品と第2のケース部品を互いに閉じてケースを閉じると、真珠を収容する閉じられた内容積部を画定するようケースの壁の相当大きな壁部分を形成し、この装置は、
封入チャンバを有し、
封入チャンバへの不活性ガス供給源を有し、この不活性ガス供給源は、このガス供給源によって提供される不活性ガスによって封入チャンバの中から空気をパージし、
第1及び第2のケース部品を保持するとともに/あるいは位置決めするトレーを有し、
第1のケース部品を取り扱うマニピュレータを有し、このマニピュレータは、第1のケース部品を第2のケース部品に動かして2つのケース部品を互いに閉じてケースを閉じるようになっている。
【0037】
幾つかの実施形態では、マニピュレータは、フレーム、第1のケース部品を捕捉するようフレームによって支持されたピックアップ、及びフレームを動かしてピックアップを第1のケース部品と第2のケース部品との間で動かすためのアクチュエータを有する。
【0038】
幾つかの実施形態では、トレーは、第2のケース部品の内側が真珠を受け入れるよう第2のケース部品の内側を上方に向けた状態で第2のケース部品を受け入れる凹部を有する。
【0039】
幾つかの実施形態では、トレーは、第1のケース部品の内側を下方に向けた状態で第1のケース部品が位置決めされる突出部を有する。
【0040】
幾つかの実施形態では、装置は、負圧を凹部に加えて第2のケース部品を凹部内に固定するための空気圧供給源を有する。
【0041】
幾つかの実施形態では、装置は、ノズルを有し、このノズルは、トレーのポートに係合して空気圧供給源をポートと凹部との間の導管経由で凹部に連結するよう動くことができる。
【0042】
幾つかの実施形態では、フレームは、第1のフレーム及び第2のフレームを有し、アクチュエータは、第1のフレームを第1の方向に動かし、第2のアクチュエータが第2のフレームを第1の方向と直交した第2の方向に動かす。
【0043】
幾つかの実施形態では、第1の方向は、水平であり、第2の方向は、垂直である。
【0044】
幾つかの実施形態では、ピックアップは、吸引カップを有し、この吸引カップは、負の空気圧をカップに加えてケースの第1の部品をピックアップに吸い付けることによってケースの第1の部品に固定される。
【0045】
幾つかの実施形態では、ケースは、第1のケース部品と第2のケース部品との間にねじ山付き係合部又は螺合部を有し、第1のケース部品と第2のケース部品は、ケースを閉じるよう互いに螺合され、装置は、ピックアップを回転したり伸長させたりして第1の部品を第2の部品に螺合してケースを閉じるための回転機構体を有する。
【0046】
幾つかの実施形態では、装置は、トレーを動かして入口ハッチを経て封入チャンバに入り、そして出口ハッチを経て封入チャンバを出るようにするための器具を有する。
【0047】
幾つかの実施形態では、トレーは水平方向に動かされる。
【0048】
幾つかの実施形態では、フレームは、トレーの水平方向と直交した水平方向に動くようになっている。
【0049】
幾つかの実施形態では、装置は、前側移送チャンバ、入口ハッチ、入口ハッチを開閉するアクチュエータを有し、前側移送チャンバは、入口ハッチが開かれると封入チャンバに流体結合され、入口ハッチが閉じられると封入チャンバから流体的に分離され、装置は、入口ハッチが閉じられると、不活性ガスにより前側移送チャンバの中から空気をパージするよう前側移送チャンバに連結された不活性ガス供給源及び、入口ハッチが開かれるとトレーを前側移送チャンバから封入チャンバに動かすための器具をさらに有する。
【0050】
幾つかの実施形態では、装置は、後側移送チャンバ、出口ハッチ、出口ハッチを開閉するアクチュエータを有し、後側移送チャンバは、出口ハッチが開かれると封入チャンバに流体結合され、出口ハッチが閉じられると封入チャンバから流体的に分離され、装置は、出口ハッチが閉じられると、不活性ガスにより後側移送チャンバの中から空気をパージするよう後側移送チャンバに連結された不活性ガス供給源及び、出口ハッチが開かれるとトレーを封入から後側移送チャンバに動かすための器具をさらに有する。
【0051】
幾つかの実施形態では、移送チャンバの容積は、封入チャンバの容積よりも実質的に小さい。
【0052】
幾つかの実施形態では、装置は、複数の真珠を同時に処理するようになっており、トレーは、複数のケース及び複数の真珠を保持するとともに/あるいは位置決めする。
【0053】
全ての新規な観点で考慮されるべき本発明の別の観点は、本発明の実用的応用の少なくとも一実施例を提供する以下の説明を読むと当業者には明らかになろう。
【0054】
以下において、以下の図面を参照して、本発明の1つ又は2つ以上の実施形態を例示としてのみ、しかも本発明を限定する意図なく、説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る真珠のためのケースを示す図である。
図1a】ケースを宝石類に取り付ける取り付け部を有する真珠のためのケースを示す図である。
図2】ケースが部分的に分離された状態の図1のケースを示す図である。
図3】ケースの壁の相当大きな部分を提供し又は形成するケースの第1の部品を示す図である。
図4】シール及びケースの壁の相当大きな部分を提供し又は形成するケースの第2の部品を示す図であり、第1の部品と第2の部品が一緒になって、第1の部品と第2の部品を互いに閉じたときにケースの閉鎖壁を形成している状態を示す図である。
図5】ケースの第1の部品の内側を示すためのケースの第1の部品の端面図である。
図6】ケースの第2の部品の内側を示すためのケースの第2の部品の端面図である。
図7】閉じられたケースの断面図であり、断面がケースの中心線上に位置している状態を示す図である。
図8】ケースの一方向ロック機構体の断面図である。
図9】真珠をケース内のケース不活性雰囲気中に封入するための装置を示す図であり、この装置が封入チャンバを有している状態を示す図である。
図10】真珠をケース内のケース不活性雰囲気中に封入するための装置を示す図であり、この装置が封入チャンバを有している状態を示す図である。
図11】装置の開いた前側移送チャンバ内に位置決めされた開いたケース及び真珠を保持するための図9及び図10の装置のトレーを示す図である。
図12図9及び図10の装置のトレーを示す図である。
図13】トレー内に受け入れられた真珠を封入するための開いたケースの2つのケース部品を示す図であり、真珠が2つのケース部品のうちの一方の中に受け入れられている状態を示す図である。
図14】装置の前側移送チャンバと封入チャンバとの間の閉じられた入口ハッチを示す図である。
図15】トレーがハッチを経て装置の封入チャンバ中に移送されている状態及び真珠を封入チャンバ内のケース内に閉じ込めるようケースを取り扱うマニピュレータを示す図である。
図16】トレーがハッチを経て装置の封入チャンバ中に移送されている状態及び真珠を封入チャンバ内のケース内に閉じ込めるようケースを取り扱うマニピュレータを示す図である。
図17】トレーのポート及びこのポートに係合して負圧をトレーの凹部に加えて凹部内に受け入れられたケース部品を固定するための空気圧システムのノズルを示す図である。
図18】負圧をトレー凹部に加えるためにトレーのポート内に受け入れられたノズルを示す図である。
図19】マニピュレータのフレームを動かすためのアクチュエータを示す図である。
図20】マニピュレータがケースの第1の部品と整列した状態を示す図である。
図21】ケースの第1の部品に係合しているマニピュレータのピックアップを示す図である。
図22】マニピュレータがケースの第1の部品をケースの第2の部品に係合させている状態を示す図である。
図23】マニピュレータが封入された真珠から引っ込められた状態を示す図である。
図24】封入チャンバと開いた後側移送チャンバとの間の開いた出口ハッチを示す図である。
図25】トレーが装置から取り出された封入状態の真珠を支持している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1図8を参照して本発明の実施形態にかかる真珠を保護するためのケースについて説明する。ケース100は、真珠を保持し又は収容するための閉じられた内容積部を画定する壁3を有する。ケース100は、ケースの第1のケース部品1又は側部及びケースの第2のケース部品2又は側部を有する。第1及び第2のケース部品1,2は各々、ケース100の壁3の相当大きな部分を画定している。図示の実施形態では、第1の部品1と第2の部品2は、一緒になって、ケースの壁3全体を形成している。第1及び第2の部品1,2は、真珠を収容するための閉じられた内容積部を画定するよう互いに解除可能に閉じられるようになっている。部品1,2は、閉じられると、ケース100の閉じられた壁3を一緒になって形成し又は実質的に形成する。図示の実施形態では、第1及び第2の部品1,2は、互いに解除可能に結合されるようになっている。図1は、ケース内の閉じられた容積部内に収容された真珠を保護するための閉じられたケースを形成するよう互いに結合された第1及び第2の部品を示している。図2は、ケースの内部又はケースの第1及び第2の部品/壁部分の各々の内部への接近を可能にするよう互いに分離された第1の部品1と第2の部品2を示している。
【0057】
好ましい実施形態では、閉じられると、ケースは、図1に示されているように実質的に球形である外面4を有する。閉じられたケース100の内面5もまた、好ましくは、実質的に球形である。図示の実施形態では、外面4と内面5は、同一の曲率半径を共有し、その結果、ケースの壁3は、内面と外面との間に一定の壁厚を有するようになっている。
【0058】
球形ケースは、丸形真珠に特に適しており、丸形又は球の形をした真珠は、最も魅力がありかつ高く評価される。しかしながら、本発明の逸脱することなく、他の形状を想定することができる。例えば、ケース100は、異なる形状の真珠、例えば、涙滴形をした真珠に合致するよう形作られても良く、あるいは、ケースによって収容されるべき真珠の形状以外の形状のものであっても良い。好ましくは、ケースは、特定の形をした真珠、例えば丸形(球形)又は涙滴形と一致するよう形作られる。
【0059】
図示の実施形態では、第1及び第2の部品1,2の各々は、形状は実質的に半球形である。第1及び第2の部品1,2の各々の外面4a,4bは、実質的に半球形である。第1及び第2の部品1,2の各々は、実質的に半球形の内面5a,5bを有する。第1及び第2の部品1,2の実質的に半球形の内面は、2つの部品1,2を互いに係合させて好ましくは丸形真珠を収容する場合、閉じられた実質的に球形の表面5を形成するよう互いに組み合わさる。
【0060】
第1及び第2の部品は、2つの部品を解除可能に閉じ又は互いに結合するための係合特徴部又は結合機構体を有する。図示の実施形態では、結合機構体は、2つの部品相互間のねじ山付き係合部又は螺合部を有する。第1及び第2の部品のうちの一方は、雄ねじ7を有し、第1及び第2の部品のうちの他方は、これと合致する雌ねじ6を有し、その結果、2つの部品1,2を互いに螺合させて、2つの部品1,2を互いに解除可能に結合することができるように成っている。ケースを開くため、部品をケース部品相互間の相対回転により互いに外す。雄ねじ及び雌ねじは、半球形の内面5a,5bの半径方向外方に形成される。他の別の係合特徴部又は結合機構体、例えば2つの部品相互間のヒンジ留め構造が可能である。好ましくは、図示の実施形態の場合と同様、結合機構体は、ケースの内側、すなわちケースの外面の内側に位置する。
【0061】
ケース100は、好ましくは実質的に、透明な材料で作られる。好ましくは、第1及び第2の部品1,2の各々は、実質的に、透明な材料から作られ、その結果、ケース内の真珠は、ケースの第1及び第2の部品越しに実質的に見えるようになっている。真珠の実質的に全体がケース越しに見える。好ましい1つの透明な材料は、アクリル樹脂、アクリルガラス、プレキシガラスとも呼ばれ、商標名Crylux(商標)、Plexiglas(商標)、Acrylite(商標)、Lucite(商標)及びPerspex(商標)として知られているPMMA(ポリメチルメタクリレート)である。PMMAは、高い透明度(99%)を有し、しかも他の重要な属性、例えば耐ひっかき性を有し、軽量であり、しかも熱可塑性樹脂であるため、PMMAは、射出成形に適している。他の材料、例えばガラス又は他のガラス状エンジニアリングプラスチックが可能である。好ましくは、材料は、90%の最小透明度を有する。
【0062】
本発明によれば、ケースは、ロック又はいたずら防止機構体10(本明細書においてはロック機構体)を有する。ロック機構体10は、ロック機構体が第1及び第2の部品1,2を互いに結合してケースを閉じることができるよう一方向性であり、この場合、ロック機構体は、ケースを閉じる間、部品の相対運動を阻止するよう働くことはない。しかしながら、一方向性ロック機構体は、第1及び第2の部品1,2が開かれるのを阻止する。ロック機構体は、ロック機構体が壊され又は破壊されない限り、ケースが開かれるのを阻止するよう機能する。したがって、ロック機構体は、不可逆式ロック機構体である。ロック機構体は、ケースを開くことによって壊され又は破壊される。例えば、図示の実施形態では、ロック機構体は、一方のケース部品が他方から外されたときに壊される。
【0063】
好ましくは、第1及び第2の部品は各々、機械式突出部を有し、第1の部品の機械式突出部は、第2の部品の機械式突出部に係合し、それにより一方向性ロック機構体が提供される。図示の実施形態に関し、特に、図5図8を参照すると、第1及び第2の部品1,2のうちの一方は、少なくとも1つの歯11を有し、第1及び前記第2の部品のうちの他方は、歯11に係合するレバー12を有する。歯11は、傾斜面又はカム面11aを有し、その結果、2つの部品1,2を互いに閉じると、レバー12は、傾斜面又はカム面11a上に乗って歯11又はレバー12を損傷させることなく、2つの部品1,2を閉じることができるようになっている。歯は、肩11bを有する。レバー12もまた、肩12bを備える。レバーの肩12bは、ケースが開かれるのを阻止するよう歯の肩11bに当たる。ケースを開くためには、力をケースに加えて肩11b、12bを互いに押し、ついには、レバー12及び/又は歯11が破断し/ポキッと折れ、それによりケース100を開くことができる。
【0064】
図示の実施形態を参照すると、第1及び第2の部品1,2のうちの一方は、好ましくは、複数の歯11から成り、第1及び第2の部品1,2のうちの他方は、上述したように歯11に係合するための少なくとも1本のレバー12から成る。かかる実施形態では、一方向性ロック機構体は、ラチェットであり、第1及び第2の部品のうちの一方は、ラチェットの歯車13から成り、第1及び第2の部品のうちの他方は、ラチェットの爪11又はレバー11から成る。好ましくは、歯11は、等間隔を置いて配置される。図示の実施形態では、歯11は、円周方向に等間隔を置いて配置されている。好ましくは、1つ又は複数の歯は、第1及び/又は第2の部品と一体に形成される。
【0065】
図示の実施形態は、複数のレバー又は爪12を含む。レバー12は、ケースを閉じたときに弾性撓みにより歯11上に乗るよう動くが、レバーは、第1又は第2の部品に回転可能に結合されるとともにばねによって付勢されるのが良く、それにより第1及び第2の部品のうちの他方の歯に係合する。この図示の実施形態は、6本のレバー12を有するが、1本又は2本以上のレバー12が設けられても良く、この図示の実施形態は、7本以上のレバー12を有することができる。レバーは、好ましくは、等間隔を置いて配置される。図示の実施例では、レバーは、円周方向に互いに間隔を置いて配置されている。好ましくは、レバーは、第1及び/又は第2の部品と一体に形成される。
【0066】
図示の実施形態では、図4及び図6を参照すると、レバー12は、レバーの自由端部12bとは反対側のレバーの一端部12aのところでケース部品2に取り付けられている。レバーの端部は、ケース部品の円筒形壁2aに取り付けられている。レバーは、自由端部と反対側の端部から片持ちされるのが良い。少なくとも、レバーの自由端部12bの一部分は、例えばこれがケースを閉じる間に他方のケース部品の歯に乗ると、例えば半径方向外方に撓む。レバーの自由端部12bは、レバー12及び/又は歯11を破断することなく、ケースの開放を阻止するよう歯11に当接する。加うるに、図示の実施形態では、レバー12は、その長さに沿ってケース部品2の側面(図4では2bで示されている)に取り付けられている。側面は、ケースの直径面に平行である。幾つかの実施形態では、レバーは、一端部のところだけがケース部品2に取り付けられ又はケース部品2から片持ちされても良く、あるいはケース部品の円筒形表面への取り付けを行わないで、その長さに沿って側面に取り付けられても良い。
【0067】
歯11及び/又は爪/レバー12の数は、ケースを開くことができるようにするためにロック機構体を壊すための所望の力を達成するよう提供されるのが良い。ロック機構体は、必ずトルクをケースに加えるための工具、例えばプライヤ又は他の把持もしくはクランプ工具を使用しなければならないよう設計されるのが良い。
【0068】
他の一方向性ロック機構体が可能である。例えば、ケースが凹部に受け入れられるべき舌部を有する一方向性留め具を有するのが良く、舌部の肩は、舌部又は凹部を破断することなく、ケースが開くのを阻止するよう凹部の肩に係合する。舌部は、凹部内に受け入れられるよう弾性的に撓むことができる。留め具は、複数の舌部及び対応の凹部を有するのが良い。かかる実施形態では、2つの部品1,2は、2つの部品を互いに閉じてケースを閉じるために互いにヒンジ留めされても良く、あるいは互いに圧接されても良い。ケースを開けるためには、ケース部品を引き離してケース部品を分離するとともに舌部及び/又は凹部肩突出部を破断しなければならない。
【0069】
ロック機構体11,12は、ケースの内側に、すなわちケースの外面の内側に設けられる。図示の実施形態では、ロック機構体は、ケースの内面と外面との間に設けられる。図示の実施形態では、ロック機構体は、内面の半径方向外方に設けられる。図示の実施形態では、ロック機構体は、結合器後退6,7の半径方向内方に設けられる。
【0070】
ロック機構体は、ケースの内側に設けられるので、ロック機構体をいたずらすることができず又は無効化することができない。ロック機構体は、閉じられたケースの外側から接近可能ではない。例えば、キー溝が設けられていない。ロック機構体をロック位置からロック解除位置に動かすには、必ず、ロック機構体及び/又はケース、すなわちケースの壁を壊さなければならない。ケースは、ロック機構体を壊すことによってのみ又は切断工具でケースの壁を切り開くことによってのみ開放可能である。したがって、ロック機構体は、不可逆式である。
【0071】
上述したように、ケース100の第1及び第2の部品1,2は、透明である。ケース内に配置されたロック機構体は、ケースの外側からケースの第1及び第2の部品1,2のうちの少なくとも一方の透明な材料越しに見える。ロック機構体11,12をケースの透明な材料越しに見ることによって、ロック機構体11,12の状態を確かめることができ、この状態は、無傷/壊されていないか、破られている/壊されているかのいずれかである。無傷のロック機構体は、真珠がケース内に閉じ込められた後に開かれてはいないことを証明する。閉じられたケースの外側から見える壊されたロック機構体は、真珠がケース内に閉じ込められた後に少なくとも1回ケースが開かれて再び閉じられたことを証明している。したがって、閉じられたケース内のロック機構体の状態は、ケースによって保護された真珠の真正性を確認するために使用できる。
【0072】
好ましい実施形態では、ケースは、汚染物がケースの内側に達するのを制限し又は阻止するためのシールを有する。図示の実施形態では、シール15を含む。シールは、制御された雰囲気をケースの内側に維持するための圧力又は気密シールである。シールは、Oリング又は他の封止部材もしくはガスケットであるのが良い。図示の実施形態では、シールは、Oリング形シールであり、これは、第2の部品2に設けられているOリング形溝16内に受け入れられる。しかしながら、シールは、第1の部品1に設けられた溝その他の中に受け入れられても良い。シール15は、エラストマー材料から成るのが良い。好ましい一実施形態では、シールは、透明であり、例えば、透明なエラストマー材料、例えば透明なシリコーンゴムである。幾つかの実施形態では、シール溝は、従来の金属、例えば金で覆われるのが良く、その結果、シールは、透明なケースの外側から見ることができないようになっている。幾つかの実施形態では、シールは、貴金属から成っていても良くかつ/あるいは従来の金属コーティングから成っていても良い。例えば、シールは、金から成っていても良くあるいは金メッキであっても良い。シールは、フェース/軸方向シール又はバレル/円周方向シールであるのが良い。ケースの内側とその周りの雰囲気との間のシールの健全性を高めるよう2つ以上のシール部材が設けられるのが良い。シールは、ケースが閉じられたときに第1の部品と第2の部品との間でサンドイッチされたガスケットであるのが良く、ガスケットの外縁面は、ケースの外面、すなわちケースの球形外面の一部分をなす。
【0073】
好ましい実施形態では、シールは、不活性雰囲気をケースの内側に維持するようになっている。好ましくは、シールは、正圧(周囲圧力よりも高い圧力)をケースの内側に維持するようになっている。真珠のケース入れ作業の際、真珠を制御された雰囲気内で2つの部品のうちの一方の内側に配置する。次に、2つの部品を互いに結合して制御された雰囲気条件が閉じられたケース内に捕捉されるようにする。シールは、ケースを制御された雰囲気から取り出した後でも制御された雰囲気条件をケース内に維持する。
【0074】
制御された雰囲気条件は、不活性ガスを含むのが良い。例えば、制御された雰囲気条件は、1体積%未満、又は0.5体積%未満、又は0.3体積%未満の酸素を含む不活性ガスから成るのが良い。不活性ガスは、窒素又は他の適当な気体であるのが良い。制御された雰囲気条件は、正圧、例えば大気圧よりも約100~200kPA高い圧力を有するのが良い。
【0075】
好ましい実施形態では、ケースは、固有の識別子、例えば固有のシリアルナンバーを有し、その結果、サイズ、形状(例えば、真円度)、色、表面品質、光沢及び任意他の属性、例えば出所を含む真珠の仕様を登録簿に記録することができ、そしてケース内に入れられている真珠と照合することができるようになっている。固有の識別子は、ケースに型打ちされ、エッチングされ、又はレーザ又は他の適当な手段によって施されるのが良い。識別子は、ケースの内面に施されかつケースの第1及び/又は第2の部品の透明な材料越しにケースの外側から見えるのが良い。識別子は、ケースの外面に施されても良い。
【0076】
各ケースは、好ましくは、真珠を1つだけ保持するのに適している。様々なケースが提供されるのが良く、様々なケースの各ケースが同一サイズ範囲の真珠に適する。例えば、1つのケースは、同一直径範囲の真珠に適するのが良い。内面5と外面との間の最大隙間、例えば1mm~2mmの最大半径方向隙間が指定される場合がある。
【0077】
好ましくは、ケース寸法及びケース材料は、衝撃に耐えるのに適しており、例えば、硬い表面上に落下したときに壊れないようになっている。ケースがPMMA又は他の類似の材料で作られている場合、ケースの壁は、約2~4mmの厚さを有するのが良い。
【0078】
幾つかの実施形態では、ケースは、封入された真珠付きのケースを1個の宝石類として着用することができるようになっている。例えば、ケースは、ケースを別の宝石類、例えばネックレスに取り付けるための取り付け具を受け入れるためのケースの外面に設けられた、閉じられた/止り穴を有するのが良い。ケースは、ケースを別の宝石類、例えばネックレスに取り付けるための取り付け機構体を有するのが良い。図1aに示されているように、取り付け機構体25は、ケースが閉じられたときに第1の部品1と第2の部品2との間にサンドイッチされるフランジ26を含むのが良く、取り付け機構体の一部分/タブ27は、フランジ及びケースの外面から外方に伸びている。フランジの外縁面は、ケースの外面、例えばケースの球形外面の一部をなすのが良い。タブは、別の宝石類への取り付けのための穴を備えるのが良い。
【0079】
本発明に係るケースは、真珠を着用し又は取り扱うことにより、又は別の物体もしくは化学物質との接触により生じる劣化が起こらないよう保護し、さらに、真珠の真正性及び元の状態を確認できるようにする仕組み又は機構体を提供する。ケースをいったん開くと、真珠の状態は、もはや制御されない。真珠は、再評価されそして新たな固有の識別子のついた新たなケース内に入れられる必要がある。真珠は、本発明に係るケースに封入された状態で販売されるのが良い。
【0080】
外側ケース又はボックスが提供されるのが良い。外側ケース又はボックス、例えば外側球形ボックスが提供されるのが良く、外側球形ボックスは、木材又は他の魅力的な材料で作られるのが良い。外側ボックスは、ケース100と同一の形状を有するのが良い。例えば、外側ボックスは、球形であり、球形の外面及び球形の内面を備えるのが良く、内面及び外面は、球形ケース100に合うよう同一の曲率半径を有する。ボックスは、2つの半部、例えば、2つの半球形半部をから成るのが良い。ボックスは、拡大鏡又はルーペ付きの窓を有するのが良く、その結果、ケース100ないに封入されている真珠を拡大鏡窓越しに見ることができるようになっている。ボックスの2つの半部は、2つの半部を開き位置と閉じ位置との間で動かすことができるようにするための結合機構体を有するのが良く、例えば、結合機構体は、ヒンジであるのが良い。ボックスは、ボックスの半部を閉じ形態で保持するための機構体、例えばラッチ又は留め具を有しても良く、あるいは、2つの半部を磁力により結合するために一方の半部に設けられた磁気材料及び他方の半部に設けられた磁石を有しても良い。
【0081】
図9図25を参照して真珠を封入する装置及び方法について説明する。装置は、封入チャンバ51を有する。装置を操作するためのヒューマン・マシン・インターフェース55,57が設けられている。
【0082】
開いたケース100(図16参照)付きの真珠20が封入チャンバ51内に配置される。封入チャンバは、このチャンバ内に封入する不活性雰囲気を真珠に提供する。このチャンバは、不活性ガス供給源54を備え、その結果、ガス供給源によって提供される不活性ガスによってチャンバ51から空気をパージすることができるようになっている。開いたケース及び真珠がチャンバ内の不活性ガス中にいったん配置されると、ケースは、真珠が内部に配置された状態で閉じられる。ケースをチャンバ内で閉じることにより、閉じられたケース内に不活性ガスが捕捉され、その結果、真珠は、ケース100内の不活性ガス中に封入されるようになっている。ケースは、不活性雰囲気をケース100内に封止する。ケースをいったん閉じ状態で封止すると、真珠入りの閉じられたケースをチャンバから取り出す。
【0083】
真珠20及び開いたケース100を封入チャンバ51内に配置するため、装置50は、好ましくは、前側移送チャンバ52を有する。真珠及び開いたケースは、図11に示されているように移送チャンバ52内に配置される。移送チャンバを封入チャンバから最初に閉鎖/分離する。前側移送チャンバ内にいったん受け入れられると、移送チャンバを閉じ、不活性ガス供給源、例えば供給源54によって移送チャンバから空気をパージする。不活性雰囲気が封入チャンバ51内に維持される。不活性雰囲気が移送チャンバ52内にいったん達成されると、前側移送チャンバ52を封入チャンバ51内に流体結合する。図示の実施形態では、チャンバ51,52をエントリー又は入口ハッチ経由で互いに流体結合する。図14は、チャンバ51,52を分離するよう閉じられるとともに封止されたハッチ58を示し、図15は、2つのチャンバ51,52を互いに連結するよう開かれたハッチ58を示している。ハッチ58は、アクチュエータ67、例えば空気圧アクチュエータによって閉じ及びシール位置と開き位置との間で動かされる。ハッチを開くと、真珠及び開いたケースを前側移送チャンバからハッチ経由で封入チャンバに移送する。真珠及びケースが封入チャンバ内にいったん受け入れられると、ハッチを閉じる。次に、前側移送チャンバのローディング及びパージを次の封入作業のために繰り返す。
【0084】
真珠20及び閉じられて封止されたケース100を封入チャンバから取り出すため、装置50は、好ましくは後側移送チャンバ53を有する。後側移送チャンバ53は、閉じられ、そして不活性ガス供給源、例えば供給源54によってこれから空気がパージされる。不活性雰囲気が後側移送チャンバ53内にいったん達成されるとともに真珠封入作業が封入チャンバ51内でいったん完了すると、後側移送チャンバ53を封入チャンバ51に流体結合する。図示の実施形態では、チャンバ51,53を出口ハッチ59経由で互いに流体結合する。図22は、チャンバ51,53を分離するよう閉じられるとともに封止されたハッチ59を示し、図24は、2つのチャンバ51,53を互いに連結するよう開かれたハッチ59を示している。ハッチ59は、アクチュエータ、例えば空気圧アクチュエータによって開き位置と閉じ位置との間で動かされる。ハッチが開くと、真珠及び閉じられたケースを封入チャンバ51から開かれたハッチ59経由で後側移送チャンバ53に移送する。真珠20及びケース100が後側移送チャンバ53内にいったん受け入れられると、ハッチ59を閉じる。次に、後側移送チャンバを開き、その結果、封入された真珠20,100を装置50から取り出すことができるようになっている。
【0085】
好ましくは、装置は、複数の真珠を同時に処理するようになっている。図示の実施形態では、装置は、15個の真珠を同時に取り扱うようになっているが、16個以上を含む任意の数の真珠を想定することができる。
【0086】
真珠20は、好ましくはトレー60内に支持される。トレーは、ケース100のケース部品1,2のうちの一方を受け入れるとともに保持/位置を行うための多数の凹部62(図21参照)を有する。一方のケース部品2は、部品2の内側が真珠20を受け入れるためにケース部品2の内側を上方に向けて配置された状態でトレーの凹部62内に受け入れられる。他方のケース部品1は、ケース部品1の内側が下方に向いた状態で配置される。トレーは、ケース部品1を位置決めする突出部61(図21参照)を有するのが良い。真珠は、上方に配置されたケース部品2内に受け入れられる。
【0087】
装置は、トレー60を前側移送チャンバから封入チャンバに動かすための器具を有する。この器具は、トレーを動かすためのチェーン駆動装置又は他のアクチュエータから成るのが良い。器具は、トレーの下に配置されるのが良く、この器具は、図では見えないよう隠されている。案内が好ましくは、トレーをこれがいったん封入チャンバ内に受け入れられると正確に案内するとともに位置決めするために設けられている。図示の実施形態では、トレーは、側部レール63及び封入チャンバ内に設けられていてこれら側部レールに係合する案内64を有する。案内64は、トレー60との低摩擦力接触を可能にするための支承要素を有する。トレー60は、封入チャンバ中に水平に動く。
【0088】
上方に向いたケース部品2は、好ましくは、トレーの凹部内に固定される。図17及び図18を参照すると、図示の実施形態では、空気圧を採用して部品2をトレー60内に固定する。トレー60が封入チャンバ51内にいったん受け入れられると、空気ノズル/ニードル65がトレーに設けられた対応のポート66に係合するよう作動される。図17は、ポート66から間隔を置いて位置するノズル65を示し、図18は、ポート66と係合したノズル65を示している。トレーは、ノズルポート66及び1つ又は複数の凹部62との間に延びる導管/ポートを有する。空気ポンプ56がノズル及びポート65,66経由で負圧を凹部62に提供してケース部品2を凹部62に吸い付かせ、その結果、ケース部品が動かないよう固定される。
【0089】
装置50は、ケース部品1を取り扱うとともに第1及び第2の部品1,2を閉じるためのマニピュレータ70を有する。マニピュレータ70は、第1の部品と第2の部品との間で動くようになっており、その結果、第1の部品を第2の部品まで動かして2つの部品を互いに閉じることができるようになっている。図示の実施形態では、マニピュレータは、レール70上で摺動可能なフレーム71を有する。マニピュレータレール72は、トレーレール63と直交している。フレームは、図16及び図19に見えるアクチュエータ73に世って第1の部品と第2の部品との間で動かされる。アクチュエータ73は、空気圧アクチュエータであるのが良い。フレーム71は水平レール72上で第1のケース部品1と第2のケース部品2との間で水平方向に動かされる。
【0090】
フレーム71は、第2のフレーム74を支持している。第2のフレームは、図16及び図24に見える案内75上で摺動するよう第1のフレーム71によって支持されている。案内75により、第2のフレーム74は、垂直に動くことができる。アクチュエータ77(例えば、図23に示されている)が第2のフレームを第1のフレーム上で動かす。
【0091】
マニピュレータは、ケースの第1の部品を捕捉するためのピックアップを有する。図20は、ピックアップ76を示している。図示の実施形態では、ピックアップは、吸引カップ78を有する。マニピュレータを図20に示されているようにフレーム71の運動によってトレー60上において第1のケース部品と整列させると、ピックアップは、例えば、案内75上における第2のフレーム74の運動によって伸長し、ついには、ケースの第1の部品1が図21に示されているようにピックアップ内に受け入れられる。ピックアップは、この場合、負の空気圧を吸引カップに加えてケースの第1の部品をピックアップに吸い付けることによってケースの第1の部品を固定する。空気圧供給源56が負圧をカップに与える。次に、マニピュレータは、ケースの第1の部品1を動かしてこれをケースの第2の部品と整列させてケースを閉じる。例えば、マニピュレータは、第2のフレーム74の垂直運動によってケースの第1の部品を持ち上げ、次に、ケースの第1の部品を第1のフレーム71の水平運動によって水平に動かし、その結果、ケースの第1の部品がケースの第2の部品2の垂直方向上方に位置して整列するようになる。次に、マニピュレータは、ケースの第1の部品を第2のフレームの垂直運動によりケースの第2の部品上に下降させて、図22に示されているように第1の部品1と第2の部品2を係合させる。図示の実施形態では、第1及び第2の部品1,2を互いに螺合させてケースを閉じる。ピックアップは、ピックアップを開店させるとともに伸長させて第1の部品を第2の部品に螺合させてケースを閉じるための回転機構体79を備えている。
【0092】
ケースをいったん閉じると、ピックアップはケースを解除する。図示の実施形態では、マニピュレータは、図23に示されているようにピックアップを第2のフレーム74上で垂直に動かす。マニピュレータは、次の真珠封入作業においてケースの第1の部品をいつでも受け入れる状態にある位置、すなわち、図20に示されている位置に戻るのが良い。次に、トレーを上述するとともに図24及び図25に示されているように、封入チャンバから後側移送チャンバに移送する。トレー60を次の封入作業で再使用することができ、そして、前側移送チャンバ内にいつでも再装填できるケース及び真珠をトレーに装填する。
【0093】
文脈上明示の要求がなければ、原文明細書及び原文特許請求の範囲全体を通じて、“comprise”(訳文では、「~を有する」としている場合が多い)、“comprising”などの用語は、排他的又は網羅的な意味とは対照的に、包括的な意味、すなわち、“including, but not limited to”(「~を含むが~には限定されない」)という意味に解されるべきである。
【0094】
上記及び下記において引用する全ての特許出願、特許及び特許公開の開示内容全体(もしあれば)を参照により引用し、これらの開示内容全体を本明細書の一部とする。
【0095】
本明細書の任意の先行技術の参照は、その先行技術が世界中の任意の国における努力傾注分野における一般的な知識の一部をなすという承認又は任意の形態の示唆ではなく、しかもかかる承認又は任意形態の示唆として受け取られてはならない。
【0096】
本発明はまた、本願の明細書中に言及され又は指示された部品、要素及び特徴を個々に又はひとまとまりで、係る部品、要素又は特徴のうちの2つ又は3つ以上の任意の組み合わせ又は全ての組み合わせの状態で含むと広義に言われても良い。
【0097】
上記説明において、整数又はその既知の均等例を有する成分に言及した場合、これら整数は、本明細書では、あたかも個別的に記載されているかのように含まれる。
【0098】
注目されるべきこととして、本明細書において説明した現時点において好ましい実施形態に対する種々の変更及び改造は、当業者には明らかであろう。かかる変更及び改造は、本発明の付随の利点を減少させることなく、本発明の精神及び範囲から逸脱しないで実施できる。したがって、かかる変更及び改造は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0099】
1 第1のケース部品
2 第2のケース部品
3 壁
4a,4b 外面
5a 内面
6 ねじ山
7 雄ねじ
11,12 ロック機構体
12a 一端部
12b 肩
16 Oリング形溝
12 レバー
20 真珠
50 封入装置
51 封入チャンバ
52 前側移送チャンバ
53 後側移送チャンバ
55,57 ヒューマン・マシン・インターフェース
58 ハッチ
67 アクチュエータ
100 ケース
図1
図1a
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25