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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】リニアモータ、リニアモータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20241108BHJP
   H02K 41/02 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H02K41/03 A
H02K41/02 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019568881
(86)(22)【出願日】2018-11-21
(86)【国際出願番号】 JP2018042986
(87)【国際公開番号】W WO2019150718
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-04-14
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2018015032
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】和田 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 達矢
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】中野 浩昌
【審判官】大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-23954(JP,A)
【文献】特開2015-39263(JP,A)
【文献】国際公開第2008/152876(WO,A1)
【文献】特開2011-205841(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169908(WO,A1)
【文献】特開昭50-10402(JP,A)
【文献】特開平9-117088(JP,A)
【文献】特開2009-50048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
界磁磁石を含む可動子と、
前記可動子の可動方向に連結された複数のコイルモジュールを含む固定子と、
を備え、
前記コイルモジュールは、前記可動方向に配列された複数のコイルを含み、
前記複数のコイルのリード線に電気的に接続された電極を含むコネクタを有し、
前記コネクタは、前記複数のコイルの引き出し線に接続され、前記複数のコイルと一体化され、
前記コネクタ毎に接続される配線部材が前記複数のコイルモジュールを連結する梁部材の通路に収容されることを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
前記複数のコイルのコイル数は、3の整数倍であることを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記複数のコイルのコイル数は、6以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記コイルモジュールは、前記複数のコイルと前記コネクタとが樹脂に包まれることによって一体化されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【請求項5】
請求項1に記載のリニアモータを製造する方法であって、
ケースに複数のコイルを収容することと、
複数のコイルを収容したケースに樹脂を流し込みコイルモジュールを形成することと、
複数のコイルモジュールを前記可動方向に並べて梁部材に固定することと、
コイルに配線部材を電気的に接続することと、
を含むことを特徴とするリニアモータの製造方法。
【請求項6】
コイルモジュールを形成することは、
樹脂を流し込んだケースに蓋を固定することを含むことを特徴とする請求項5に記載のリニアモータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータおよびリニアモータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギーを直線運動に変換するためにリニアモータが利用される。リニアモータの一種として、マグネットがコイルに沿って走行するムービングマグネット型のリニアモータがある。例えば、特許文献1には、固定子に電機子コイルを有し、可動子に界磁マグネットを有するムービングマグネット型のリニアスライダが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2005/122369号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者はムービングマグネット型のリニアモータ(以下、単にリニアモータという)について以下の認識を得た。
多くの場合、リニアモータは用途によって可動子の可動ストロークが異なる。したがって、リニアモータは所望の可動ストロークに応じて長さの異なる電機子コイルを用意する必要がある。つまり、様々な用途に対応するためには、用途ごとに異なる長さの電機子コイルを製造する必要がある。
【0005】
可動方向に配列された複数のコイルを樹脂成形して電機子コイルを製造する場合がある。この場合、用途ごとに異なる長さの金型を用意する必要があるため不経済である。さらに、電機子コイルが特に長い場合には、通常の金型や樹脂成形設備では製造が難しい問題もある。これらから、本発明者らは、リニアモータには電機子コイルの製造を容易にする観点から、改善する余地があることを認識した。
このような課題は、樹脂成形によって製造される電機子コイルに限らず、他の方法により製造される電機子コイルについても生じうる。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的は、電機子コイルの製造を容易にするリニアモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のリニアモータは、界磁磁石を含む可動子と、可動子の可動方向に連結された複数のコイルモジュールを含む固定子と、を備える。コイルモジュールは、可動方向に配列された複数のコイルを含む。
【0008】
本発明の別の態様はリニアモータを製造する方法である。この方法は、上述のリニアモータを製造する方法であって、ケース22に複数のコイルを収容することと、複数のコイルを収容したケースに樹脂を流し込みコイルモジュールを形成することと、複数のコイルモジュールを可動方向に並べて梁部材に固定することと、コイル26に配線部材34を電気的に接続することと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電機子コイルの製造を容易にするリニアモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係るリニアモータを示す平面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図1のリニアモータの固定子を概略的に示す平面図である。
図4図1の固定子の配線を概略的に説明する説明図である。
図5図1のリニアモータの固定子の製造工程を説明する工程図である。
図6】第1変形例に係るリニアモータの断面図である。
図7】第2変形例に係るリニアモータの断面図である。
図8】第3変形例に係るリニアモータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施の形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
なお、以下の説明において、「平行」、「垂直」は、完全な平行、垂直だけではなく、誤差の範囲で平行、垂直からずれている場合も含むものとする。また、「略」は、おおよその範囲で同一であるという意味である。
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
また、リニアモータは、可動子が円弧状など湾曲した軌道を移動するものを含み、可動子が直線状の軌道を移動するものに限定されない。
【0013】
[実施の形態]
図面を参照して、本発明の実施の形態に係るリニアモータ100について説明する。図1は、実施の形態に係るリニアモータ100を示す平面図である。図2はリニアモータ100のA-A線に沿った側断面図である。
【0014】
以下、主にXYZ直交座標系をもとに説明する。X軸方向は、図1において紙面左右方向に対応し、図2において紙面に垂直な方向に対応する。Y軸方向は、図1図2において紙面上下方向に対応する。Z軸方向は、図1において紙面に垂直な方向に対応し、図2において紙面左右方向に対応する。Y軸方向およびZ軸方向はそれぞれX軸方向に直交する。X軸、Y軸、Z軸のそれぞれの正の方向は、各図における矢印の方向に規定され、負の方向は、矢印と逆向きの方向に規定される。また、X軸の正方向側を「右側」、X軸の負方向側を「左側」ということもある。また、Y軸の正方向側を「前側」、Y軸の負方向側を「後側」、Z軸の正方向側を「上側」、Z軸の負方向側を「下側」ということもある。このような方向の表記はリニアモータ100の使用姿勢を制限するものではなく、リニアモータ100は、用途に応じて任意の姿勢で使用されうる。
【0015】
(リニアモータ)
リニアモータ100は、固定子10と、可動子50と、を備える。可動子50は磁気的空隙60に磁気回路を形成する。リニアモータ100は、磁気的空隙60において固定子10に可動方向の推力を生じさせるエネルギー変換機構として機能する。実施の形態では、可動方向はX軸方向と一致するように配置されている。
【0016】
(可動子)
先に可動子を説明する。可動子50は、一対の界磁磁石52と、一対のヨーク54と、スペーサ56と、を含む。界磁磁石52、一対のヨーク54は、磁気的空隙60に界磁磁界を形成する磁気回路を構成する。磁気的空隙60は、一対の界磁磁石52の間の空隙である。
【0017】
一対のヨーク54は、X軸方向およびY軸方向に延在してZ軸方向に薄い板状の部材である。平面視において、一対のヨーク54は、X軸方向に平行な2辺とY軸方向に平行な2辺とを有する略矩形の輪郭を有する。一対のヨーク54は、公知の様々な軟磁性材料で形成される。一対のヨーク54は、Z軸方向に離れて互いに平行に配置されている。
【0018】
スペーサ56は、一対のヨーク54間の上側領域に配置され、一対のヨーク54のZ軸方向の間隔を保持する。一対のヨーク54は、その上端近傍に設けられた複数の貫通孔を介して固定具58(例えばボルト)によりスペーサ56に固定される。
【0019】
界磁磁石52は、磁気的空隙60に界磁磁界を形成する磁束の供給源として機能する。界磁磁石52は、1または複数の磁石を含んでもよい。界磁磁石52は、複数の磁石をハルバッハ配列に配置して構成されてもよい。界磁磁石52の表面には、X軸方向に所定の間隔で複数の磁極が設けられる。実施の形態では6極の磁極が設けられている。界磁磁石52は、公知の様々な磁石材料で形成されてもよい。この例では、界磁磁石52は、NdFeBなどの希土類磁石材料で形成されている。界磁磁石52は、接着など公知の手段によってヨーク54に固定されてもよい。
【0020】
(固定子)
固定子10は、X軸方向に延在する複数のコイルモジュール20と、梁部材30と、第2梁部材31と、配線部材34と、を含む。複数のコイルモジュール20は可動方向であるX軸方向に並べられている。コイルモジュール20は、例えば、平面視にて略矩形を呈し、Z軸方向に薄い略板状の部材である。この例では、コイルモジュール20は、平面視にて、長辺がX軸方向に沿い、短辺がY軸方向に沿うように配置されている。
【0021】
コイルモジュール20は、コイル組立24と、ケース22と、を含む。コイル組立24は、X軸方向に配列された複数のコイル26と、コネクタ36と、を含む。複数のコイル26は樹脂24mに包まれることによって一体化されている。ケース22を設ける場合、一例として、コイル組立24は、複数のコイル26が配置されたケース22に樹脂24mを注入することによって形成される。なお、ケース22を設けることは必須ではない。ケース22を設けない場合、一例として、コイル組立24は、複数のコイル26が配置された金型内に樹脂24mを注入して成形するインサート成形によって形成される。これらの製法はあくまでも一例であって、コイル組立24は、その他の様々な製造方法によって形成されてもよい。
【0022】
コイル26は、X軸方向に平行な2辺とY軸方向に平行な2辺とを有し、四隅がR形状に丸められた略矩形の輪郭を有する。コイル26は、辺を有しない全体として楕円などの曲線により構成される輪郭を備えてもよいし、その他の様々な形状の輪郭を備えてもよい。コイル26は、有鉄芯コイルであってもよいが、この例では、空芯コイルである。コイル26は、Z軸の周りを周回するように巻かれたワイヤから構成される。コイル26に駆動電流が供給されると、コイル26は、Z軸方向の磁束を発生させ、界磁磁石52にX軸方向の推力を発生させる電機子コイルとして機能する。
【0023】
コネクタ36は、複数のコイル26のリード線に電気的に接続された電極を含む。コネクタ36は、インサート成形前に、複数のコイル26のリードワイヤ(引き出し線)に接続され、インサート成形により複数のコイル26と一体化されてもよい。あるいは、コネクタ36は、インサート成形後の複数のコイル26のリード線に接続されてもよい。この場合、コイル26のからリード線を直出しにして、そのリード線の先端にコネクタ36を接続するようにしてもよい。
【0024】
ケース22は、コイル組立24の周囲を覆うように設けられる。ケース22は、コイル26やコイル26の周囲を取り囲む樹脂24mから発生するガスの外部への流出を抑制する。ケース22は、上面が開放された5面からなる箱形状のケース本体22bと、ケース本体22bの上面を覆う蓋22cと、から構成される直方体の箱体である。蓋22cは、コイル組立24を収容したケース本体22bの上面に、例えば溶接などによって固定されてもよい。ケース22は、非磁性ステンレスなどの金属材料や、セラミックなどの非金属材料で形成されてもよい。
【0025】
次に、配線部材34について説明する。図3は、固定子10を概略的に示す平面図である。図4は、固定子10の配線を説明する説明図である。配線部材34は、駆動回路40からコイル26に電流を供給する経路として機能する。駆動回路40からの電流は、配線部材34とコネクタ36とコネクタ36の電極に接続されたリードワイヤ26bとを介してコイル26に流れる。配線部材34は、例えばワイヤモジュールやプリント配線基板である。実施の形態では、配線部材34は、コネクタ36と接続するための別のコネクタ(不図示)を搭載したプリント配線基板である。実施の形態では、配線部材34は、後述する梁部材30の通路凹部30bに収容される。
【0026】
複数のコイルモジュール20に駆動電流を供給する方式として、全励磁方式と部分励磁方式とが考えられる。全励磁方式は、1つの相を構成する全コイルに駆動電流を供給する方式である。全励磁方式は、配線が比較的容易であるという特徴を有する。部分励磁方式は、可動子50の近傍のコイル26に選択的に駆動電流を供給する方式である。部分励磁方式は、無駄な電力が小さいという特徴を有する。実施の形態では、部分励磁方式を採用している。図4に示すように、それぞれのコイルモジュール20は、他のモジュールとは独立して駆動回路40に接続されている。
【0027】
梁部材30および第2梁部材31は、複数のコイルモジュール20を連結するとともに、固定子10に所望の剛性を付与するための梁として機能する。この例では、梁部材30および第2梁部材31は、X軸方向に延びる断面矩形の棒状部材である。図2に示すように、梁部材30には、X軸方向に延びる通路凹部30bが設けられている。通路凹部30bは、コイルモジュール20側が開放されており、上向きに後退する凹部である。通路凹部30bは、コネクタ36および配線部材34を収容する。梁部材30はコイルモジュール20の上面に、第2梁部材31はコイルモジュール20の下面にそれぞれ接するように配置される。複数のコイルモジュール20は、梁部材30および第2梁部材31にボルトなどの固定部材32によって固定される。梁部材30は、シームレスな一体部材として形成されてもよいし、複数の部材が一体化されてもよい。第2梁部材31についても同様である。
【0028】
次に、コイルモジュール20を構成する複数のコイル26のコイル数(以下、単にコイル数という)について説明する。3相駆動する場合は、コイル数は3の整数倍であることが望ましい。なお、コイル数は3の整数倍であることは必須ではなく、コイル数は任意に設定されてもよい。つまり、コイルモジュール20は必要に応じて3の整数倍以外の個数のコイル26で構成されてもよい。特に、ムービングマグネット型で部分励磁をする場合、3の整数個のコイル26を励磁すればよいため、3の整数個以外でモジュール化してもよい。
【0029】
可動ストロークが長いモータの場合、コイル数が3個だと、コイルモジュール数が増えて製造コストが高くなるので、コイル数は6個が望ましい。可動ストロークが短いモータの場合、コイル数が6個以上だと、固定子が不必要に長くなる可能性があるのでコイル数は3個が望ましい。
【0030】
1つのコイルモジュール20が長くなり過ぎると、コイルモジュール20が反って可動子50に接触する可能性が高くなる。この観点から、コイル数は6個以下が望ましい。
【0031】
次に、リニアモータ100の製造工程の一例について説明する。図5は、リニアモータ100の製造工程S80を説明する工程図である。特に、製造工程S80は、固定子10を製造する工程S82~S92を含んでいる。
【0032】
工程S82において、表面が絶縁されたワイヤを巻線して空芯のコイル26を製造する。
【0033】
工程S84において、複数のコイル26をケース本体22bに収容する。ケース本体22bに収容する前または後に複数のコイル26にコネクタ36を取付ける。実施の形態では、コネクタ36は、ケース本体22bに収容する前にコイル26に取付けられる。コネクタ36は、次工程で流し込まれる樹脂24mによってコイル26と一体化される。
【0034】
工程S86において、複数のコイル26を収容したケース本体22bに、樹脂24mを流し込むことによって複数のコイル26を一体化し、コイル組立24を形成する。
工程S88において、樹脂24mが流し込まれたコイル26を収容したケース本体22bに蓋22cを被せる。
【0035】
工程S90において、ケース本体22bに蓋22cを例えば溶接により固定する。蓋22cには、開口22eが設けられており、蓋22cを固定した状態で、コネクタ36は開口22eから露出している。
【0036】
工程S92において、複数のコイルモジュール20をX軸方向に配列し、コネクタ36を配線部材34の配線部に電気的に接続し、梁部材30および第2梁部材31を固定する。このようにして固定子10は製造される。
【0037】
このように製造された固定子10を、別に製造された可動子50の磁気的空隙60に挿入することにより、リニアモータ100が製造される。この製造工程S80は一例に過ぎず、他の工程を追加したり、工程の一部を変更または削除したり、工程の順序を入れ替えたりしてもよい。
【0038】
図1に示すように、コイルモジュール20と隣のコイルモジュール20の間にはケース22の壁面が2重に介在する。このような壁面を有しない場合と比べて、樹脂24mからのガスの流出を減らすことができる。
【0039】
このように構成されたリニアモータ100の動作を説明する。駆動回路40からコイルモジュール20に交番する駆動電流が供給されると、コイルモジュール20は可動方向の移動磁界を発生し、可動子50の界磁磁石52に可動方向の推力を付与する。リニアモータ100は、この推力により可動子50に連結された駆動対象を駆動する。
【0040】
本発明の一態様の概要は、次の通りである。本発明のある態様のリニアモータ100は、界磁磁石52を含む可動子50と、可動子50の可動方向に連結された複数のコイルモジュール20を含む固定子10と、を備える。コイルモジュール20は、可動方向に配列された複数のコイル26を含む。
【0041】
この態様によると、リニアモータ100の可動ストロークを変更して設計する場合、連結するコイルモジュール20の数を変更することで対応できるので、設計の標準化が可能になり、設計工数を低減できる。リニアモータ100の可動ストロークを変更して製造する場合、連結するコイルモジュール20の数を変更することで対応できるので、金型、治工具および製造設備などを共用できる。コイルモジュール20を製造に適した長さにできるので、長尺なリニアモータ100を製造する場合、治工具やコイルモジュール20の取り回しが容易になる。また、コイルモジュール20を連結する作業を、リニアモータ100を設置する現場において行うことができる。
【0042】
複数のコイル26のコイル数は、3の整数倍であってもよい。この場合、コイルの数が3の整数倍以外の場合と比べて、不必要なコイルにより固定子が不必要に長くなる可能性を低減できる。
【0043】
複数のコイル26のコイル数は、6以下であってもよい。この場合、コイルの数が7以上の場合と比べて、コイルモジュール20を短くできるので、コイルモジュール20が反って可動子50に接触する可能性を低減できる。
【0044】
コイルモジュール20は、複数のコイル26に電気的に接続された電極を含むコネクタ36を有する。この場合、コイルモジュール20を連結する際、コネクタ36を配線部材34の配線部に容易に接続できる。また、コネクタが着脱可能であれば、既存のリニアモータを容易に分解して再利用できる。既設のリニアモータのストロークを変更する場合に、追加のコイルモジュール20を容易に連結できる。既設のリニアモータを廃棄して新たなリニアモータを設置する場合と比べて、無駄になる資源を大幅に低減できる。
【0045】
本発明の別の態様はリニアモータを製造する方法である。この方法は、ケース22に複数のコイル26を収容することと、複数のコイル26を収容したケース22に樹脂24mを流し込みコイルモジュール20を形成することと、複数のコイルモジュール20を可動方向に並べて梁部材30に固定することと、コイル26に配線部材34を電気的に接続することと、を含む。
【0046】
この態様によると、リニアモータ100の可動ストロークを変更して設計する場合、連結するコイルモジュール20の数を変更することで対応できるので、設計の標準化が可能になり、設計工数を低減できる。リニアモータ100の可動ストロークを変更して製造する場合、連結するコイルモジュール20の数を変更することで対応できるので、金型、治工具および製造設備などを共用できる。
【0047】
コイルモジュール20を形成することは、樹脂24mを流し込んだケース本体22bに蓋22cを固定することを含んでもよい。この場合、ケース本体22bに蓋22cを固定するので、樹脂24mからの発ガスを抑制することができる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態の例について詳細に説明した。前述した実施の形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施の形態の」「実施の形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。また、図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0049】
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施の形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施の形態と重複する説明を適宜省略し、実施の形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0050】
(第1変形例)
図6は、第1変形例に係るリニアモータ200aを示す断面図であり、図2に対応する。リニアモータ200aは、リニアモータ100に対して、第2梁部材31を備えない点で相違し、他の構成は同様である。第2梁部材31を備えることは必須ではない。
【0051】
(第2変形例)
リニアモータ100では、梁部材30と第2梁部材31とは結合されない例について説明したが、これに限定されない。図7は、第2変形例に係るリニアモータ200bを示す断面図であり、図2に対応する。リニアモータ200bは、リニアモータ100に対して、梁部材30と第2梁部材31の代わりに梁部材30Bと第2梁部材31Bとスペーサ35とを備える点で相違し、他の構成は同様である。梁部材30Bおよび第2梁部材31Bは、コイルモジュール20からY軸で負方向に張出しており、これらの張出部分の間にスペーサ35が設けられている。梁部材30Bおよび第2梁部材31Bは、スペーサ35を挟んで一体に結合される。
【0052】
リニアモータ200bでは、梁部材30Bおよび第2梁部材31Bは、磁気的空隙60内に進入する進入部30eを有する。進入部30eは、例えばX軸方向およびY軸方向に延在してZ軸方向に薄い板状の部分であってもよい。進入部30eは、コイルモジュール20の全部または一部を覆うように設けられる。進入部30eを有することにより、コイルモジュール20の反りを抑制できる。進入部30eは、実施の形態および他の変形例にも適用できる。
【0053】
(第3変形例)
図8は、第3変形例に係るリニアモータ200cを示す断面図であり、図2に対応する。リニアモータ200cは、リニアモータ200bに対して、梁部材30Bと第2梁部材31Bとスペーサ35の代わりに梁部材30Cを備える点で相違し、他の構成は同様である。梁部材30Cは、梁部材30Bと第2梁部材31Bとスペーサ35とをシームレスに一体化した形状を有する。
【0054】
(第4変形例)
実施の形態では、コイルモジュール20を製造する工程と、コイルモジュール20を連結する工程と、を連続して設ける例について説明したが、本発明はこれに限定されない。また、上述の梁部材を備えることは必須ではない。例えば、コイルモジュール20を製造する工程では、梁部材を備えないコイルモジュール20を製造するようにしてもよい。このように製造された梁部材を備えないコイルモジュール20はサイズなどの仕様ごとに保管されてもよい。この場合、コイルモジュール20を連結する工程は別工場に設けられてもよい。保管されたものうち所望の仕様のコイルモジュール20を別工場に輸送し、そこでコイルモジュール20を連結するようにしてもよい。
【0055】
(その他の変形例)
リニアモータ100は、コイル数が異なるコイルモジュール20を組み合わせて構成されてもよい。
リニアモータ100は、直線状のコイルモジュール20と湾曲したコイルモジュールとを含んでもよい。
一対のヨーク54とスペーサ56とはシームレスに一体に形成されてもよい。
コイルモジュール20を挟む一対の界磁磁石52のうちの一方は設けられなくてもよい。
上述の各変形例は、実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【符号の説明】
【0056】
10・・固定子、 18・・コイル、 20・・コイルモジュール、 22・・ケース、 22b・・ケース本体、 22c・・蓋、 24・・コイル組立、 24m・・樹脂、 26・・コイル、 30・・梁部材、 31・・第2梁部材、 34・・配線部材、 36・・コネクタ、 50・・可動子、 52・・界磁磁石、 54・・ヨーク、 60・・磁気的空隙、100・・リニアモータ。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、電機子コイルの製造を容易にするリニアモータを提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8