(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】火災報知設備
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20241108BHJP
G06F 1/26 20060101ALI20241108BHJP
G06F 1/28 20060101ALI20241108BHJP
H02J 9/00 20060101ALI20241108BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20241108BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
G08B17/00 L
G06F1/26 303
G06F1/28
H02J9/00 150
H02J9/06 110
H02J13/00 311N
(21)【出願番号】P 2020025611
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-114973(JP,A)
【文献】特開2013-115662(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0213763(US,A1)
【文献】特開2009-095073(JP,A)
【文献】特開2008-234105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 5/00-31/00
H02J 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機から引き出された信号回線に火災感知器を接続して火災を監視し、通常時は商用交流電源の供給を受けて動作し、前記商用交流電源が停電した場合はバッテリーによる予備電源に切替えて動作する火災報知設備に於いて、
前記受信機に、
所定震度以上又は前記所定震度を超える地震を検出して地震検出信号を出力する地震検出器と、
所定値以上又は前記所定値を超える前記商用交流電源の周波数低下を検出して周波数低下検出信号を出力する周波数低下検出器と、
前記地震検出信号と前記周波数低下検出信号に基づき、前記商用交流電源から前記予備電源に切替えて動作させることにより、前記商用交流電源の電力需要量を低下させる電力需要制御部と、
が設けられたことを特徴とする火災報知設備。
【請求項2】
請求項1記載の火災報知設備に於いて、
前記受信機に対しネットワーク回線を介して1又は複数の中継盤が接続され、前記中継盤から引き出された信号回線に火災感知器を接続して火災を監視し、前記中継盤は通常時に前記商用交流電源の供給を受けて動作し、前記商用交流電源が停電した場合はバッテリーによる予備電源に切替えて動作する分散システムが構成されており、
前記中継盤に、
所定震度以上又は前記所定震度を超える地震を検出して地震検出信号を出力する地震検出器と、
所定値以上又は前記所定値を超える前記商用交流電源の周波数低下を検出して周波数低下検出信号を出力する周波数低下検出器と、
前記地震検出信号と前記周波数低下検出信号に基づき、前記商用交流電源から前記予備電源に切替えて動作させることにより、前記商用交流電源の電力需要量を低下させる電力需要制御部と、
が設けられたことを特徴とする火災報知設備。
【請求項3】
請求項1
又は2記載の火災報知設備に於いて、
前記電力需要制御部は、
前記商用交流電源の供給設備側から需要抑制要請信号を受信したときに、前記地震検出信号と前記周波数低下検出信号の受信有無に関わらず、前記商用交流電源から前記予備電源に切替えて動作させることにより、前記商用交流電源の電力需要量を低下させることを特徴とする火災報知設備。
【請求項4】
商用交流電源又は予備電源で動作する火災報知設備に於いて、
前記火災報知設備に供給される商用交流電源の周波数低下を検出する周波数低下検出部と、
所定震度以上又は前記所定震度を超える地震を自ら又は外部からの信号の受信により検出する地震検出部と、
前記周波数低下検出部が商用交流電源の周波数低下を検出し
、かつ前記地震検出部が前記所定震度以上又は所定震度を超える地震を検出しない場合に、前記商用交流電源から前記予備電源に切替えて動作させることにより、前記商用交流電源の電力需要量を低下させる電力需要制御部と、
を備えたことを特徴とする火災報知設備。
【請求項5】
商用交流電源又は予備電源で動作する火災報知設備に於いて、
前記火災報知設備に供給される商用交流電源の周波数低下を検出する周波数低下検出部と、
所定震度以上又は前記所定震度を超える地震を自ら又は外部からの信号の受信により検出する地震検出部と、
前記周波数低下検出部が商用交流電源の周波数低下を検出し、かつ前記地震検出部が前記所定震度以上又は所定震度を超える地震を検出した場合に、前記商用交流電源から前記予備電源に切替えて動作させることにより、前記商用交流電源の電力需要量を低下させる電力需要制御部と、
を備えたことを特徴とする火災報知設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信機から引き出された信号回線に火災感知器を接続して火災を監視し、商用交流電源の停電時にバッテリーによる予備電源に切替えて動作する火災報知設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、震度5を超えるような揺れの大きな地震が発生した場合、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州とった電力供給地域の全域が停電するブラックアウト(大停電)が問題となっている。
【0003】
周知のように、電気は貯蔵することができないので、供給と需要を常に同じにすることが必要である。商用交流の周波数は50Hz又は60Hzに設定されており、周波数は電気の需要と供給のバランスで変化する。周波数を一定に保つためには、家庭や工場で消費される電力需要量と総発電量を一致させる必要がある。需要が供給より大きいと周波数は下がり、逆に需要より供給が大きくなると周波数は上昇する。
【0004】
周波数が0.2Hz程度変動すると一部の需要家の機器に悪影響が生じ、また、数パーセントの周波数変動が起きると、タービン翼共振や発電機軸のねじれを防ぐため発電機を停止せざるを得なくなる。このため電力会社は需要を予測しながら発電量を細かく増減させ、周波数が一定に保たれるように調整している。
【0005】
しかし、地震による大きな揺れを受けたとき、発電機が緊急停止する場合があり、電力供給量の大半が一挙に失われると、周波数が急激に下がり、発電所は周波数低下による故障を防ぐために次々と自動停止し、停電が全域に広がって広域停電となるブラックアウトに至る。
【0006】
このように地震により電力供給量が激減したときに、大口顧客や一部の地域に対する電力供給を停止して電力需要量を大きく減らすことができれば、周波数の低下が抑制され、隣接した地域から電力供給を受けるなどすることで、ブラックアウトを逃れることが可能となる。
【0007】
また、地震による発電量の低下に対し電力需要量を調整するため計画停電を行う場合もあるが、計画停電は一日の電力需要に合わせて需要者に計画で指示された節電を求めるものであり、地震発生直後に短時間で発生する電力供給量の激減には十分に対応できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-115885号公報
【文献】特開2017-010356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電力会社が地震による電力供給量の急減に対し、大口需要者や特定の地域への電力供給を止めて電力需要量を減らす電力調整を行うことは、地震の規模や地震による被害の状況が把握できない状況で適切且つ迅速に行うことが困難であり、電力需要に対し電力供給が激減してバランスが崩れることで周波数が低下し、発電所の自動停止を引き起こしてブラックアウトに至る可能性が高い。
【0010】
ところで、受信機から引き出された火災感知器により火災を監視する火災報知設備等の防災設備にあっては、通常時は商用交流電源の供給により動作しているが、商用交流電源が停電した場合はバッテリーによる予備電源に切替えて動作するようにしている。
【0011】
受信機の予備電源に設けられたバッテリーは、通常時と火災時に分けてバッテリー駆動を可能とする容量換算時間が定められており、受信機用の場合、通常時は1.8時間、火災時は0.6時間となっている。このためバッテリーによる予備電源を備えた火災報知設備にあっては、例えば、地震発生により停電となっても予備電源により所定時間は正常に動作することができる
このようにバッテリーによる予備電源を備えた火災報知設備は、電力会社の電力供給地域全体を見ると膨大な数となり、地震発生時に火災報知設備を含む全ての防災設備をバッテリーによる予備電源に切替えて動作できれば、電力需要量を大きく減らことが可能となる。
【0012】
本発明は、地震発生時にバッテリーによる予備電源を有効に活用することで、電力供給量の激減に伴うブラックアウト(大停電)を未然に防止可能とする火災報知設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(火災報知設備)
本発明は、受信機から引き出された信号回線に火災感知器を接続して火災を監視し、通常時は商用交流電源の供給を受けて動作し、商用交流電源が停電した場合はバッテリーによる予備電源に切替えて動作する火災報知設備に於いて、
受信機に、
所定震度以上又は所定震度を超える地震を検出して地震検出信号を出力する地震検出器と、
所定値以上又は所定値を超える商用交流電源の周波数低下を検出して周波数低下検出信号を出力する周波数低下検出器と、
地震検出信号と周波数低下検出信号に基づき、商用交流電源から予備電源に切替えて動作させることにより、商用交流電源の電力需要量を低下させる電力需要制御部と、
が設けられたことを特徴とする。
【0014】
(分散システムの中継盤)
受信機に対しネットワーク回線を介して1又は複数の中継盤が接続され、中継盤から引き出された信号回線に火災感知器を接続して火災を監視し、中継盤は通常時に商用交流電源の供給を受けて動作し、商用交流電源が停電した場合はバッテリーによる予備電源に切替えて動作する分散システムが構成されており、
中継盤に、
所定震度以上又は所定震度を超える地震を検出して地震検出信号を出力する地震検出器と、
所定値以上又は所定値を超える商用交流電源の周波数低下を検出して周波数低下検出信号を出力する周波数低下検出器と、
地震検出信号と周波数低下検出信号に基づき、商用交流電源から予備電源に切替えて動作させることにより、商用交流電源の電力需要量を低下させる電力需要制御部と、
が設けられる。
【0017】
(需要抑制要請)
電力需要制御部は、
商用電源の供給設備側から需要抑制要請信号を受信したときに、地震検出信号と周波数低下検出信号の受信有無に関わらず、商用交流電源から予備電源に切替えて動作させることにより、商用交流電源の電力需要量を低下させる。
【0018】
(火災報知設備2)
商用交流電源又は予備電源で動作する火災報知設備に於いて、
火災報知設備に供給される商用交流電源の周波数低下を検出する周波数低下検出部と、
所定震度以上又は所定震度を超える地震を自ら又は外部からの信号の受信により検出する地震検出部と、
周波数低下検出部が商用交流電源の周波数低下を検出し、かつ地震検出部が所定震度以上又は所定震度を超える地震を検出しない場合に、商用交流電源から予備電源に切替えて動作させることにより、商用交流電源の電力需要量を低下させる電力需要制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0019】
(火災報知設備3)
商用交流電源又は予備電源で動作する火災報知設備に於いて、
火災報知設備に供給される商用交流電源の周波数低下を検出する周波数低下検出部と、
所定震度以上又は所定震度を超える地震を自ら又は外部からの信号の受信により検出する地震検出部と、
周波数低下検出部が商用交流電源の周波数低下を検出し、かつ地震検出部が所定震度以上又は所定震度を超える地震を検出した場合に、商用交流電源から予備電源に切替えて動作させることにより、商用交流電源の電力需要量を低下させる電力需要制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
(基本的な効果)
本発明は、受信機から引き出された信号回線に火災感知器を接続して火災を監視し、通常時は商用交流電源の供給を受けて動作し、商用交流電源が停電した場合はバッテリーによる予備電源に切替えて動作する火災報知設備に於いて、受信機に、所定震度以上又は所定震度を超える地震を検出して地震検出信号を出力する地震検出器と、所定値以上又は所定値を超える商用交流電源の周波数低下を検出して周波数低下検出信号を出力する周波数低下検出器と、地震検出信号と周波数低下検出信号に基づき、商用交流電源から予備電源に切替えて動作させることにより、商用交流電源の電力需要量を低下させる電力需要制御部とが設けられたため、例えば震度5を超えるような大きな揺れの地震が発生し、地震に伴う発電所の自動停止等により発電量が激減して商用交流電源の周波数が低下すると、商用交流電源からバッテリーによる予備電源に切り替えられ、電力供給地域に存在する施設に設置された多数の火災報知設備がバッテリーによる予備電源の動作に切り替わり、商用交流電源の使用が停止することで電力需要量が大きく低下し、これに加えて大口需要者や限られた一部地域に対する電力供給の停止を行うことによって、激減した電力供給量とのバランス調整が可能となり、周波数低下に伴い引き起こされる発電所の自動停止を抑制し、ほぼ全域が停電するブラックアウトに陥ることを未然に抑制可能とする。
【0025】
(分散システムの中継盤による効果)
また、受信機に対しネットワーク回線を介して1又は複数の中継盤が接続され、中継盤から引き出された信号回線に火災感知器を接続して火災を監視し、中継盤は通常時に商用交流電源の供給を受けて動作し、商用交流電源が停電した場合はバッテリーによる予備電源に切替えて動作する分散システムが構成されており、中継盤に、所定震度以上又は所定震度を超える地震を検出して地震検出信号を出力する地震検出器と、所定値以上又は所定値を超える商用交流電源の周波数低下を検出して周波数低下検出信号を出力する周波数低下検出器と、地震検出信号と周波数低下検出信号に基づき、商用交流電源から予備電源に切替えて動作させることにより、商用交流電源の電力需要量を低下させる電力需要制御部とが設けられたため、複数の住棟等の施設を対象に受信機からのネットワーク回線に接続される分散システムの中継盤についても、地震発生と周波数低下に基づきバッテリーによる予備電源の動作に切り替えられ、複数の中継盤による商用交流電源の使用が停止することで電力需要量を大きく低減し、地震により激減した電力供給量とのバランス調整が更に行い易くすることができる。
【0026】
(地震検出と周波数低下検出による予備電源切替の効果)
また、電力需要制御部は、地震検出信号と周波数低下検出信号の両方方を受信したときに、商用交流電源から予備電源に切替えて動作させることにより、商用交流電源の電力需要量を低下させるようにしたため、震源に近い強い揺れを受けた場所の火災報知設備がバッテリーによる予備電源の動作に切り替わって電力需要量の低下に貢献できる。
【0027】
(周波数低下検出のみによる予備電源切替のみの効果)
また、電力需要制御部は、地震検出信号と周波数低下検出信号の両方を受信したときは、商用交流電源の供給による動作を継続し、地震検出信号を受信せずに周波数低下検出信号のみを受信したときは、商用交流電源から予備電源に切替えて動作させることにより、商用交流電源の電力需要量を低下させるようにしたため、震源から離れた場所に設置された火災報知設備であっても、周波数の低下によりバッテリーによる予備電源の動作に切り替わることで電力需要量の低下に貢献し、一方、地震に近い強い揺れを受けた場所の火災報知設備は商用交流電源の動作を継続し、地震により発生した火災を確実に検出して警報することができる。
【0028】
(需要抑制要請の効果)
また、電力需要制御部は、商用電源の供給設備側から需要抑制要請信号を受信したときに、地震検出信号と周波数低下検出信号の受信有無に関わらず、商用交流電源から予備電源に切替えて動作させることにより、商用交流電源の電力需要量を低下させるようにしたため、地震の影響を受けていない地域であっても、ネットワークを経由した電力会社サーバ等からの需要抑制要請信号を受信すると、バッテリーによる予備電源の動作に切り替わり、電力需要量の低下に貢献できる。
【0029】
(予備電源切替時の省電力モードによる効果)
また、電力需要制御部は、商用交流電源から予備電源に切り替えたときに省電力モードを設定し、火災監視に最小限必要な所定の省電力監視制御を行い、例えば、省電力モードを設定したときに、少なくとも受信機又は中継盤による障害警報動作を停止させ、また、
受信機に設けられた表示部の定常監視表示を停止させるようにしたため、商用交流電源からバッテリーによる予備電源の動作に切り替わったときに、火災監視に最小限必要な所定の省電力監視制御によりバッテリーの消費電力が抑えられ、バッテリーによる動作時間を長くし、周波数調整のために電力需要量を低下させている時間を可能な限り伸ばすことができる。
【0030】
(所定時間後の商用交流電源への切替復旧による効果)
また、電力需要制御部は、予備電源に切り替えてから所定時間が経過したときに、予備電源から商用交流電源に切替えて復旧させるようにしたため、火災報知設備の予備電源による動作可能時間は、バッテリーの容量換算時間に基づき決まっており、例えば、バッテリーの容量換算時間に到達してバッテリー切れとなる前に商用交流電源に切替え復旧することで、火災監視機能が失われないようにする。また、バッテリーの容量換算時間に基づく所定時間、商用交流電源の電力需要量を低下できるので、その間に、電力会社は緊急停止した発電機の起動や他の電力会社からの給電を受けて電力供給量を回復させる時間が確保され、時間に余裕をもって電力供給量を回復させる対応措置を講ずることが可能となる。
【0031】
(火災検出時の商用交流電源への切替復旧の効果)
また、電力需要制御部は、予備電源に切り替えた状態で火災感知器から火災信号を受信したときに、予備電源から商用交流電源に切替えて復旧させるようにしたため、火災が検出されたときには、バッテリーを用いた予備電源の動作による制約を受けることなく、主音響鳴動、地区音響鳴動、防排煙機器の連動といった火災警報制御を確実に行うことを可能とする。
【0032】
(防災設備の効果)
また、本発明の他の形態にあっては、通常時は商用交流電源の供給を受けて動作し、商用交流電源が停電した場合はバッテリーによる予備電源に切替えて動作する防災設備に於いて、所定震度以上又は所定震度を超える地震を検出して地震検出信号を出力する地震検出器と、所定値以上又は所定値を超える商用交流電源の周波数低下を検出して周波数低下検出信号を出力する周波数低下検出器と、地震検出信号と周波数低下検出信号に基づき、商用交流電源から予備電源に切替えて動作させることにより、商用交流電源の需要を低下させる電力需要制御部とが設けられたため、火災報知設備に限定されず、バッテリーによる予備電源に切替えて動作する防災設備の全てが地震発生時の電力需要量の低下に貢献することができ、電力需要量の低下量を更に増大させ、周波数調整を更に行い易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】火災報知設備に商用交流電源を供給する電力系統を示した説明図
【
図2】R型受信機を用いた火災報知設備の実施形態を示した説明図
【
図3】
図2の火災報知設備のR型受信機における制御動作を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明に係る火災報知設備の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する 。なお、以下の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0035】
[実施の形態の基本的概念]
まずは、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、火災報知設備に関するものである。
【0036】
「火災報知設備」とは、火災を監視し、報知する設備であり、例えば、火災感知器、受信機等を備える。また、通常時は商用交流電源の供給を受けて動作し、商用交流電源が停電した場合は予備電源に切り替えて動作するものである。「商用交流電源」とは、発電所で発電される電力を、変電所を経由して変換された商用電源であり、例えば、AC100V、周波数50Hz又は60Hzの交流電源等を含む概念である。「発電所」とは、水力発電所、火力発電所、及び原子力発電所等を含む概念である。「予備電源」とは、商用交流電源の代わりに火災報知設備に電力を供給する電源であり、例えば、火災報知設備が備えるバッテリーによるもの等を含む概念である。
【0037】
また、「火災感知器」とは、受信機から引き出された信号回線に接続され、火災を検知する機器である。
【0038】
また、「受信機」とは、端末機器と接続し、警戒区域の火災を監視する機器であり、火災報知設備の電源を制御する機器でもあり、例えば、地震検出器、周波数低下検出器、受信機電源、及び電力需要制御部を備え、R型受信機又はP型受信機等を含む概念である。「R型受信機」とは、警戒区域に対し系統毎に分けて信号回線を配線する受信機であり、一方「P型受信機」とは、端末機器毎に信号回線を配線する受信機である。「端末機器」とは、受信機から引き出された信号回線に接続される機器であり、火災感知器、中継器等を含む概念である。「受信機」のさらなる詳細な機能構成については後述する。
【0039】
また、「地震検出器」とは、地震を検出する機能部であり、例えば、所定震度以上又は所定震度を超える地震を検出して地震検出信号を出力する機能部等を含む概念である。「所定震度以上又は超える地震」とは、例えば、被害が予想される震度5強を超える地震等である。
【0040】
また、「周波数低下検出器」とは、商用交流電源の周波数低下を検出する機能部であり、例えば、所定値以上又は所定値を超える商用交流電源の周波数低下を検出して周波数低下検出信号を出力する機能部等を含む概念である。「所定値以上又は超える商用交流電源の周波数低下」とは、例えば、日常的に0.2Hz以下に周波数変動が調整されていることから、1Hz以上の周波数低下、又は1パーセント以上の周波数低下等である。
【0041】
また、「受信機電源」とは、受信機に設けられる電源であり、例えば、電源回路部、予備電源部、及び電源切替部等を備える。「電源回路部」とは、通常時に電源を供給する機能部であり、例えば、商用交流電源からの供給を受けて、火災報知設備各部に直流電源電圧を供給する機能部等を含む概念である。「予備電源部」とは、通常時でないときに電源を供給する機能部であり、例えば、商用交流電源が停電した場合に、火災報知設備が備えるバッテリーによる予備電源を火災報知設備各部に供給する機能部等を含む概念である。「電源切替部」とは、使用する電源を切り替える機能部であり、例えば、商用交流電源が正常な場合は電源回路部から供給し、商用交流電源が停電した場合は予備電源部からの供給に切り替える機能部等を含む概念である。
【0042】
また、「電力需要制御部」とは、火災報知設備の電源を制御する機能部であり、例えば、商用交流電源と予備電源の切り替え、省電力モードの設定等を行う。
【0043】
また、「商用交流電源と予備電源の切り替え」とは、例えば、地震検出信号と周波数低下検出信号に基づき切り替えるもの、需要抑制要請信号を受信して切り替えるもの、予備電源に切り替えた状態で所定時間経過して切り替えるもの、予備電源に切り替えた状態で火災信号を受信して切り替えるもの等を含む概念である。「需要抑制要請信号」とは、例えば、電力会社のサーバ等からネットワークを経由して火災報知設備に送信される信号等を含む概念である。「火災信号」とは、火災感知器が火災を検出して、接続された信号回線を通して送信される信号等を含む概念である。
【0044】
また、「省電力モード」とは、予備電源に切り替えたときに、火災監視に最小限必要な所定の省電力監視制御を行うモードであり、例えば、受信機及び中継盤による障害警報動作を停止させる制御、及び受信機に設けられた表示部の定常監視表示を停止させる制御等を含む概念である。障害警報動作を停止させる制御、及び定常監視表示を停止させる制御については、後述する。
【0045】
また、「分散システム」とは、大規模な監視対象に対する火災報知設備システムであり、例えば、火災感知器、受信機に加えて、中継盤等を備える。「大規模な監視対象」とは、複数の住棟に分かれている施設等を含む概念である。「中継盤」とは、分散システム内で中継される機器であり、例えば、複数の住棟毎に設置され、受信機に対しネットワーク回線を介して接続され、受信機と同様に地震検出器、周波数低下検出器、及び電力需要制御部を備える機器等を含む概念である。
【0046】
以下、具体的な実施の形態では、「受信機」はR型受信機であり、接続される信号回線は3系統とし、その内2系統は火災感知器、中継器等の端末機器を接続する火災監視系統とし、残りの1系統は端末機器である中継器を介して防火戸、防火ダンパー等の端末制御機器を接続する端末制御系統であり、予備電源となるバッテリーは受信機に設けられた場合について説明する。
【0047】
[商用交流電源の電力系統]
まず、火災報知設備に商用交流電源を供給する電力系統について説明する。電力会社の電力供給地域に存在するビル等の床面積が500平米を超える建物については火災報知設備の設置が義務付けられており、これにより電力供給地域には膨大な数の火災報知設備が存在している。
【0048】
図1に示すように、商用交流電源の電力系統は、水力発電所100、火力発電所102及び原子力発電所104で発電した27.5万ボルト又は50万ボルトの電気を超高圧変電所106に送って15.4万ボルトに変換し、続いて1次変電所108を経由して鉄道施設110などに15.4万ボルトで送ると共に6万6千ボルトに変換して中間変電所112及び配電用変電所116に送る。中間変電所112は大工場114等の大口需要者に6万6千ボルトの電気を送る。配電用変電所116は6万6千ボルトの電気を柱上変圧器118に送って100ボルト又は200ボルトに変換し、火災報知設備10及び一般店舗や一般住宅に電気を送っている。
【0049】
火災報知設備10は、通常時は電力系統により送られる商用交流電源AC100Vにより動作しているが、地震が発生し、電力系統の周波数が低下すると、バッテリーによる予備電源の動作に切り替えられ、これにより火災報知設備10は電力系統から切り離され、電力系統による電気需要量を低下させることができる。
【0050】
[火災報知設備の構成]
次に、R型受信機を用いた火災報知設備の実施形態について説明する。
図2は建物の一階の管理人室などに例えばR型受信機12が設置され、R型受信機12から警戒区域に対し系統毎に分けて信号回線14-1~14-3が引き出されている。ここで、信号回線14-1,14-2は火災監視系統となり、信号回線14-3は端末制御系統となる。
【0051】
信号回線14-1には、固有のアドレスが設定された伝送機能を有する複数のアナログ式の火災感知器15が接続されている。また、信号回線14-2には、アナログ式の火災感知器15に加え、固有アドレスが設定されると共に伝送機能を備えた中継器16が接続され、中継器16から引き出された感知器回線18にオンオフ式火災感知器20が接続されている。オンオフ式火災感知器20は、火災を検出したときに感知器回線18に発報電流を流すことで火災検出信号を中継器16に送信する。
【0052】
また、信号回線14-1,14-2には、必要に応じて、固有アドレスが設定されると共に伝送機能を備えた中継器を介してガス漏れ警報器や発信機を接続することができる。
【0053】
信号回線14-3には、固有アドレスが設定されると共に伝送機能を備えた中継器16を介して防火戸や防火ダンパーといった端末制御機器22が接続される。
【0054】
ここで、信号回線14-1~14-3に接続される火災感知器15、中継器16等の端末機器に設定される最大アドレス数は例えば255としており、信号回線14-1~14-3のそれぞれには最大255台の火災感知器15を含む端末機器が接続できる。また、以下の説明で信号回線14-1~14-3を区別する必要がない場合は、信号回線14という場合がある。
【0055】
[受信機の機能構成]
(受信機の概要)
R型受信機12には、メインCPU24と複数のサブCPU基板26-1~26-3が設けられ、サブCPU基板26-1~26-3にはサブCPU28と伝送回路部30が設けられている。
【0056】
メインCPU24とサブCPU28は、シリアル転送バス25で接続されており、相互にデータを送受信する。シリアル転送バス25としては、例えばコントロールエリアネットワーク(CAN)が使用され、フレーム(メッセージともいう)と呼ばれるパケット単位にデータを送受信する。
【0057】
メインCPU24には、液晶表示パネル等を用いたタッチパネル付きのディスプレイ装置32、火災代表灯、ガス漏れ代表灯、障害代表灯等を備えた表示部34、所定の操作スイッチが設けられた操作部36、スピーカが設けられた音響警報部38、及び移報部40が接続され、更に、地震検出器42と周波数低下検出器44が接続されている。
【0058】
(地震検出器)
地震検出器42は、所定の震度、例えば、火災報知設備10の被害が予想される震度5強を超える地震を検出して地震検出信号をメインCPU24に出力する。また、地震検出器42は地震による揺れ(加速度)を検出するものであるが、これ以外に、緊急地震速報等の放送信号の受信機能を追加し、その受信を検出して地震検出信号を出力するものであっても良い。
【0059】
(周波数低下検出器)
周波数低下検出器44は、商用交流電源(AC100V)を入力し、設定周波数50Hz又は60Hzに対する周波数の低下を検出して周波数低下検出信号を出力する。商用交流電源の周波数は日常的に0.2Hz以下の周波数変動に調整されており、数パーセントの周波数変動が起きると、発電機のタービン翼共振や発電機軸ねじれを防ぐために発電機を自動停止することから、周波数低下検出器44は日常的な変動範囲を超える、例えば、1Hz又は1パーセントの周波数低下を検出して周波数低下検出信号を出力する。
【0060】
(受信機電源)
R型受信機12には電源回路部46が設けられ、商用交流電源(AC100V)の供給を受け、受信機動作に必要な所定の直流電源電圧に変換し、電源切替部52を介して各部に直流電源電圧を供給している。電源切替部52には、電源回路部46の他にバッテリー50を備えた予備電源部48が接続される。
【0061】
電源切替部52は、商用交流電源(AC100V)が正常なときには電源回路部46から所定の直流電源電圧が得られていることから、電源回路部46の出力に切替えて受信機各部に所定の電源電圧を供給して動作させており、また、電源回路部46は予備電源部48を介してバッテリー50を充電している。
【0062】
商用交流電源(AC100V)が停電した場合には、電源回路部46の出力が断たれることから、電源回路部46の出力停止を電源切替部52が検出して予備電源部48の出力に切替え、受信機各部に対する電源供給を予備電源部48によるバッテリー50からの予備電源供給に切り替える。また、電源切替部52はメインCPU24からの制御信号により切替えることができる。
【0063】
(監視制御部)
サブCPU基板26-1,26-2に設けられたサブCPU28は、伝送回路部30に指示してアナログ式の火災感知器15との間で所定の通信プロトコルに従って信号を送受信することで、火災監視制御を行っている。
【0064】
伝送回路部30からアナログ式の火災感知器15に対する下り信号は電圧モードで伝送している。この電圧モードの信号は、信号回線14の線路電圧を例えば18ボルトと30ボルトの間で変化させる電圧パルスとして伝送される。
【0065】
これに対しアナログ式の火災感知器15から伝送回路部30に対する上り信号は電流モードで伝送される。この電流モードにあっては、信号回線14に伝送データのビット1のタイミングで信号電流を流し、いわゆる電流パルス列として上り信号がR型受信機12に伝送される。
【0066】
サブCPU28による火災監視制御は、通常の監視中にあっては、一定周期毎に、伝送回路部30に指示して、一括AD変換コマンドを含むブロードキャストの一括AD変換信号を送信しており、この一括AD変換信号を受信した火災感知器15は、煙濃度又は温度をセンサデータとして検出して保持する。続いて、サブCPU28は、端末アドレスを順次指定したポーリングコマンドを含む呼出信号を送信している。
【0067】
火災感知器15は自己アドレスに一致するアドレスを持つ呼出信号を受信すると、そのとき保持しているセンサデータを含む応答信号を伝送回路部30に送信する。また、火災感知器15は火災を検出すると伝送回路部30に対し火災割込み信号を送信する。
【0068】
サブCPU28は伝送回路部30を介して火災割込み信号を受信すると、グループ検索信号を送信して火災を検出している火災感知器15を含むグループを特定し、続いて、グループ内検索信号を送信して火災を検出している火災感知器15のアドレスを特定し、火災が検出された感知器アドレスを含む火災検出情報を、シリアル転送バス25を介してメインCPU24に送信する。
【0069】
メインCPU24には、プログラムの実行により実現される機能として監視制御部54が設けられる。メインCPU24の監視制御部54は、サブCPU28から火災検出情報を受信すると、ディスプレイ装置32に火災が検出された感知器アドレスに基づき火災発生場所を含む火災警報情報を表示させ、音響警報部38のスピーカから火災発生を示す所定の主音響警報を出力させ、更に、移報部40により火災移報信号を外部に出力して所定の連動制御等を行わせる。
【0070】
(電力需
要制御部)
メインCPU24には、プログラムの実行により実現される機能として電力需要制御部56が設けられる。メインCPU24の電力需要制御部56は、地震検出器42からの地震検出信号と周波数低下検出器44の周波数低下検出信号に基づき、電源切替部52に指示して予備電源部48からのバッテリー50による予備電源の供給に切替え、電源回路部46による商用交流電源(AC100V)の使用を切り離すことで、
図1に示した電力系統から見た火災報知設備10の電力需要量を低下させる制御を行う。
【0071】
また、電力需要制御部56は、電源切替部52に指示して予備電源部48によるバッテリー50からの電源供給に切り替えてから所定時間、例えばバッテリー50の通常時の容量換算時間である1.6時間未満の所定時間が経過したときに、電源切替部52に指示して予備電源部48から電源回路部46による電源供給に切替え、商用交流電源(AC100V)による電源供給に復旧させる制御を行う。
【0072】
このため、バッテリー50の容量切れとなる前に商用交流電源(AC100V)による電源供給に復旧することで、火災監視機能が失われないようにする。また、バッテリー50の容量換算時間に基づく所定時間、商用交流電源(AC100V)の電力需要量を低下できるので、その間に、電力会社は緊急停止した発電機の起動や他の電力会社からの給電を受けて電力供給量を回復させる時間が確保され、時間的に余裕をもって電力供給量を回復させる対応措置を講ずることが可能となる。
【0073】
また、電力需要制御部56は、電源切替部52に指示して予備電源部48によるバッテリー50からの電源供給に切り替えた状態で、アナログ式の火災感知器15から火災信号に基づき火災を検出した場合、電源切替部52に指示して予備電源部48から電源回路部46による電源供給に切替え、商用交流電源(AC100V)による電源供給に復旧させる制御を行う。
【0074】
このため、火災が検出されたときには、バッテリー50からの電源供給による制約を受けることなく、主音響鳴動、地区音響鳴動、防排煙機器の連動といった火災警報制御を確実に行うことができる。
【0075】
また、電力需要制御部56は、電源切替部52に指示して予備電源部48によるバッテリー50からの電源供給に切り替えたときに監視制御部54に指示して省電力モードを設定し、火災監視に最小限必要な所定の省電力監視制御を行わせる。
【0076】
電力需要制御部56により省電力モードが設定された監視制御部54は、例えば次の(1)(2)の省電力監視制御を行う。
【0077】
(1) 障害警報動作の停止
電力需要制御部56により省電力モードが設定された監視制御部54は、断線障害や感知器障害等が検出されても、表示部34の障害代表灯を点灯又は点滅せず、音響警報部38のスピーカから障害警報音を出力させず、更に、ディスプレイ装置32に障害情報を画面表示させない制御を行うことにより、バッテリー50の電力消費を低減し、バッテリー50の容量が切れるまでの火災監視が有効に行われる時間を可能な限り伸ばす。
【0078】
(2) 定常表示動作の停止
電力需要制御部56により省電力モードが設定された監視制御部54は、ディスプレイ装置32及び表示部34の表示灯の定常監視表示を停止させる制御を行う。
【0079】
メインCPU24の監視制御部54は、通常監視状態で、ディスプレイ装置32に所定の定常画面を表示し、また、表示部34の表示灯によりスイッチの定位の有無を表示しているが、電力需要制御部56の指示により省電力モードを設定した場合に、ディスプレイ装置32の定常表示をオフして非表示画面とし、また、表示部34の表示灯を全て消灯してバッテリー50の電力消費を低減し、バッテリー50の容量が切れるまでの火災監視が有効に行われる時間を可能な限り伸ばす。
【0080】
(需要抑制要請)
電力需要制御部56の追加の制御機能として、
図1に示した電力系統側に設けられた電力会社のサーバ等からネットワークを経由して需要抑制要請信号を受信したときに、地震検出信号と周波数低下検出信号の受信有無に関わらず、電源切替部52に指示して予備電源部48からのバッテリー50による予備電源の供給に切替える制御を行う。
【0081】
電力会社のサーバ等からの需要抑制要請信号をR型受信機12で受信可能とするため、R型受信機12に有線又は無線によりインターネットに接続する通信アダプタを設け、通信アダプタを介して電力会社のサーバから送信された需要抑制要請信号を受信してメインCPU24に出力し、電力需要制御部56によりバッテリー50からの電源供給に切り替える制御を行わせる。
【0082】
このため、地震の影響を受けていない地域であっても、ネットワークを経由した電力会社のサーバ等からの需要抑制要請信号を受信すると、バッテリー50による予備電源の動作に切り替わり、周波数低下を調整するための電力需要量の低下に貢献することができる。
【0083】
[火災報知設備の制御動作]
次に、火災報知設備のR型受信機における制御動作について説明する。
図3は
図2のR型受信機における制御動作を示したフローチャートであり、R型受信機12に設けたメインCPU24による制御動作となる。
【0084】
(地震検出と周波数低下検出による需要抑制制御)
図3に示すように、メインCPU24はステップS1で火災監視制御を行っている。この状態で地震が発生して地震検出器42が地震検出信号を出力すると、メインCPU24はステップS2で地震検出を判別してステップS3に進み、商用交流電源(AC100V)の周波数低下の有無を判別する。
【0085】
地震発生に伴う電力系統の発電機の停止による電力供給量の激減に伴い周波数が大きく低下したとすると、周波数低下検出器44が周波数低下検出信号を出力し、メインCPU24はステップS3で周波数低下検出を判別してステップS5に進み、電源切替部52に指示して予備電源部48の出力に切替えてバッテリー50からの予備電源の供給とし、商用交流電源(AC100V)が切り離されることで、電力系統から見た電力需要量の抑制に貢献する。
【0086】
続いて、メインCPU24はステップS6で省電力モードによる火災監視制御を行い、バッテリー50の電力消費を低減し、バッテリー50による動作時間を伸ばす制御を行う。
【0087】
また、メインCPU24は、ステップS7で予備電源に切替えてからの所定時間が経過したか否か判別しており、所定時間の経過を判別するとステップS9に進み、電源切替部52に指示して予備電源部48の出力から電源回路部46の出力に切替え、商用交流電源(AC100V)による電源供給を復旧させ、省電力モードを解除したステップS1の通常の火災監視制御に戻る。
【0088】
また、メインCPU24は、バッテリー50からの予備電源による動作中にステップS8で火災感知器15からの火災信号に基づき火災発報が判別されると、ステップS9に進んで商用交流電源(AC100V)による電源供給を復旧させ、省電力モードを解除したステップS1の通常の火災監視制御に戻り、火災警報を出力させる。
【0089】
一方、メインCPU24はステップS2で地震検出が判別されないときや、地震検出が判別されてもステップS3で周波数低下が判別されないときは、ステップS4に進んで電力会社のサーバ等からの需要抑制要請信号の受信有無を判別しており、需要抑制要請を判別するとステップS5に進み、地震検出や周波数低下の判別有無に関わらず、電源切替部52に指示して予備電源部48の出力に切替えてバッテリー50からの予備電源とし、商用交流電源(AC100V)が切り離されることで、需要抑制要請に対処する。
【0090】
(周波数低下検出のみによる需要抑制制御)
図2のR型受信機12に設けた電力需要制御部56による他の需要抑制制御として、地震検出信号と周波数低下検出信号の両方を受信したとき、電源切替部52は電源回路部46からの出力を維持して商用交流電源(AC100V)の供給による動作を継続し、一方、地震検出信号を受信せずに周波数低下検出信号のみを受信したときは、電源切替部52に指示して予備電源部48の出力に切替え、バッテリー50による予備電源の供給に切替える制御を行うようにしてもよい。
【0091】
このような需要抑制制御によれば、震源から離れた場所に設置された火災報知設備であっても、周波数の低下によりバッテリー50による電源供給に切り替わることで電力需要量の低下に貢献し、一方、地震に近い強い揺れを受けた場所の火災報知設備は商用交流電源(AC100V)による電源供給を継続し、地震により発生した火災を確実に検出して警報することができる。
【0092】
[分散システム]
次に、中継盤を用いた分散システムの実施形態について説明する。
図4は分散システムの実施形態を示した説明図である。監視対象とする施設が複数の住棟に分かれる等の大規模になる場合には、
図4に示すように、防災センター等に設置したR型受信機12に対し例えば住棟毎に分けて中継盤60が設置され、R型受信機12と中継盤60の間をイーサネット(登録商標)等のネットワーク回線62により通信接続している。
【0093】
R型受信機12は、
図2に示したものと同じであり、これに対し中継盤60は、
図2のR型受信機12からディスプレイ装置32、表示部34、操作部36及び音響警報部38を含む操作表示機能を除いた構成となり、監視制御部54に対応して中継盤60には中継盤制御部64の機能が設けられている。それ以外は、R型受信機12と基本的に同じとなり、警戒区域に引き出された信号回線14にアナログ式の火災感知器15を含む端末機器がR型受信機12と同様に接続されている。
【0094】
また、R型受信機12と同様に、中継盤60に電力需要制御部56が設けられ、中継盤60に設けられた地震検出器42からの地震検出信号と周波数低下検出器44の周波数低下検出信号に基づき、バッテリー50からの予備電源の供給による動作に切り替え、複数の中継盤60による商用交流電源(AC100V)の使用が停止することで電力需要量を大きく低減し、地震により激減した電力供給量とのバランス調整に大きく貢献する。
【0095】
なお、分散システムの他の実施形態として、地震検出器42と周波数低下検出器44はR型受信機12にのみ設け、中継盤60には設けないようにし、R型受信機12で地震検出と周波数低下の両方を判別したときに、需要抑制指示信号をネットワーク回線62により中継盤60に送信し、中継盤60の電力需要制御部56でバッテリー50からの予備電源の供給による動作に切り替える制御を行うようにしても良い。これにより中継盤60に地震検出器42と周波数低下検出器44を設ける必要がないことから、中継盤60の構成を簡単にすることができる。
【0096】
[本発明の変形例]
(火災報知設備)
上記の実施形態は、火災感知器等の端末アドレスを取得して火災発生場所を特定可能なR型受信機を用いた火災報知設備を例にとるものであったが、これに限定されず、受信機から引き出され信号回線単位に火災を検出して警報するP型受信機を用いた火災報知設備についても同様に適用できる。
【0097】
また、上記の実施形態は火災報知設備を例にとるものであったが、商用交流電源の停電時にバッテリーからの予備電源の供給に切り替えて動作する防災設備であれば、適宜の防災設備に、地震検出信号と周波数低下検出信号に基づいて、バッテリーからの予備電源の供給に切り替えることで、地震発生時の電力需要量の抑制に貢献することができる。
【0098】
(省電力制御)
地震検出と周波数低下に基づきバッテリーからの予備電源供給に切り替えたときの省電力モードでの省電力制御は、上記の実施形態に限定されず、火災監視に最小限必要な所定の省電力監視制御を行うものであれば、適宜の動作の停止や制限を行って消費電力を低減するものを含む。
【0099】
(その他)
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0100】
10:火災報知設備
12:R型受信機
14,14-1~14-3:信号回線
15:火災感知器
24:メインCPU
25:シリアル転送バス
26-1~26-3:サブCPU基板
28:サブCPU
30:伝送回路部
32:ディスプレイ装置
34:表示部
36:操作部
38:音響警報部
40:移報部
42:地震検出器
44:周波数低下検出器
46:電源回路部
48:予備電源部
50:バッテリー
52:電源切替部
54:監視制御部
56:電力需要制御部
60:中継盤
62:ネットワーク回線
64:中継盤制御部
100:水力発電所
102:火力発電所
104:原子力発電所
106:超高圧変電所
108:1次変電所
110:鉄道施設
112:中間変電所
114:大工場
116:配電用変電所