(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】豆乳含有飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/38 20210101AFI20241108BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20241108BHJP
A23L 11/00 20210101ALI20241108BHJP
【FI】
A23L2/38 D
A23L2/00 B
A23L11/00 Z
(21)【出願番号】P 2020062310
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】山口 航
【審査官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-102449(JP,A)
【文献】特開2014-117160(JP,A)
【文献】特開2005-058009(JP,A)
【文献】特開2018-170968(JP,A)
【文献】国際公開第1999/035920(WO,A1)
【文献】特開2000-093083(JP,A)
【文献】特開昭59-179033(JP,A)
【文献】特表2011-521667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C、A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム濃度(mg/100ml)対大豆固形分濃度(質量%)の比が、5~40であ
り、大豆固形分濃度が0.1~0.5質量%である、豆乳含有飲料(ただし、乳酸発酵したものを除く
、かつ、アルコール飲料及び次のa)~d)の理化学的性質を有する豆腐ピューレを含有する飲料を除く
a)粘度が20~3,000mPa・s
b)動的貯蔵弾性率が0.2~600Pa
c)動的損失弾性率が0.2~250Pa
d)豆腐ピューレ中に含有される粒子の平均粒子径が2~15μm、90%粒子径が35μm以下)。
【請求項2】
マグネシウム濃度(mg/100ml)対大豆固形分濃度(質量%)の比が、5~40であり、大豆固形分濃度が0.1~0.5質量%である、豆乳含有飲料
(ただし、アルコール飲料及び次のa)~d)の理化学的性質を有する豆腐ピューレを含有する飲料を除く
a)粘度が20~3,000mPa・s
b)動的貯蔵弾性率が0.2~600Pa
c)動的損失弾性率が0.2~250Pa
d)豆腐ピューレ中に含有される粒子の平均粒子径が2~15μm、90%粒子径が35μm以下)。
【請求項3】
pHが4.6以下である、請求項1
又は2に記載の飲料。
【請求項4】
クエン酸酸度が0.1~0.5質量%である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆乳含有飲料に関し、より詳しくは、豆乳風味が向上した豆乳含有飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、多種多様なターゲットに合わせた様々な乳性飲料が開発されている。一方で、乳アレルギーの問題や近年の健康志向や嗜好性の多様化などを背景に、乳性飲料に代わる、新しい豆乳含有飲料の開発も進められている。これまで、豆乳は栄養価の高い植物性ミルクとして親しまれており、常温で保存可能な製品も多数販売されている。しかしながら、豆乳及び豆乳含有飲料は、独特な大豆臭があるため、例えば清涼飲料水に豆乳を多量に含有させると、所望の止渇性を提供することが困難であった。このような課題に対し、例えば、豆乳にフルーツの味わいを付与して飲みやすくする工夫がなされているが、豆乳本来の味わいも損なわれてしまう可能性がある。
【0003】
そこで、様々な手段で豆乳含有飲料の豆乳風味を向上させることが試みられている。
例えば、特許文献1には、高温で過変性させたタンパク質を含む豆乳にマグネシウム塩系凝固剤を添加する、豆乳の嗜好性向上方法が記載されている。また、特許文献2には、豆乳を加工する過程においてカリウムイオン生成物を加えることで、得られる加工豆乳の「重い食感」を軽減する技術が記載されている。
また、豆乳の風味改善の観点からではなく、栄養価、特にミネラルバランスを改善する観点から、例えば特許文献3には、カルシウムを強化した豆乳の製造法に関する技術が記載されており、具体的には、豆乳中のカルシウムとリンの比率やカリウムとナトリウムの比率を調整する工程を含む当該製造法が記載されている。
このように、豆乳又は豆乳含有飲料の風味や栄養価などを向上させたり、改善させたりする手段が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭59-179033号公報
【文献】特開2003-325121号公報
【文献】特開昭61-25458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、豆乳風味が向上した豆乳含有飲料、及びこのような豆乳含有飲料を提供するための手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、豆乳含有飲料の風味を向上や改善するための新しい手段等について鋭意検討するなかで、予想外にも、無調整豆乳や豆乳含有飲料における大豆固形分濃度とマグネシウム濃度との比率に着目しつつ、マグネシウム濃度を調整することで、豆乳含有飲料の風味をより良くできること、又は、当該風味を強化できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の態様を含むものである。
〔1〕マグネシウム濃度(mg/100mg)対大豆固形分濃度(質量%)の比が5~40である、豆乳含有飲料。
〔2〕pHが4.6以下である、前記〔1〕に記載の飲料。
〔3〕大豆固形分濃度が0.1~0.5質量%である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の飲料。
〔4〕クエン酸酸度が0.1~0.5質量%である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の飲料。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、豆乳風味が向上した豆乳含有飲料、及びこのような豆乳含有飲料を提供するための手段を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、少なくとも豆乳とマグネシウム(マグネシウム塩の態様を含む)とを含有する豆乳含有飲料であって、マグネシウム濃度(mg/100ml)対大豆固形分濃度(質量%)の比が、5~40である豆乳含有飲料に関する。さらに、本発明の豆乳含有飲料において、マグネシウム濃度(mg/ml)対大豆固形分濃度(質量%)の比が、10~35であることがより好ましく、15~30であることが特に好ましい。ここで、マグネシウム濃度(mg/100ml)対大豆固形分濃度(質量%)の比とは、豆乳含有飲料中のマグネシウム濃度(mg/100ml)の数値を、豆乳含有飲料中の大豆固形分濃度(質量%)の数値で割ったものである。
本発明の豆乳含有飲料において、当該比を上記範囲に調整することによって、豆乳含有飲料に求められる豆乳風味を向上、改善、及び/又は強化でき、かつ、好ましい塩味や後味をもたらすという利点をもたらす。本発明の豆乳含有飲料において、当該比が、5未満である場合、豆乳含有飲料の風味向上などに十分に寄与することができない恐れがあり、40を超えると、苦味や渋味等のミネラル味が強くなる恐れがある。本発明の豆乳含有飲料におけるマグネシウム濃度は、例えば飲料中のマグネシウム塩等の添加量から理論値計算した値とすることができる。なお、豆乳含有飲料中のマグネシウム濃度は、例えば原子吸光光度法による常法の分析により測定することもできる。また、本発明の豆乳含有飲料において、当該比は、2~10であることが好ましく、4~8であることがより好ましい。
【0009】
本発明の豆乳含有飲料のマグネシウム濃度は、豆乳由来のマグネシウムのほか、マグネシウム塩を添加して調整することができる。マグネシウム塩としては、例えば、塩化マグネシウム、塩化マグネシウム・6水和物、L-グルタミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、リン酸一水素マグネシウムなどを使用することができる。本発明の豆乳含有飲料のマグネシウムは、主に塩化マグネシウム・6水和物由来であることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る豆乳含有飲料は、例えば、平成30年3月29日農林水産省告示第683号に記載される豆乳、調製豆乳、又は豆乳飲料を含むものであれば特に限定はされない。また、本発明に係る豆乳含有飲料は原料として豆乳粉末を混合したものであってもよい。また、本発明に係る豆乳含有飲料においては、大豆固形分濃度は0.1~0.5質量%であることが好ましく、0.2~0.4質量%であることがより好ましい。当該大豆固形分濃度は、当該豆乳含有飲料の製造に用いられる原材料に基づいて算出に従い決定することができる。また、本発明に係る豆乳含有飲料において、大豆たんぱく質の濃度は、特に限定されないが、例えば0.05~0.3質量%であることが好ましく、0.1~0.2質量%であることが特に好ましい。本発明においては、例えば豆乳含有飲料約5gを量りとり、ケルダール法により窒素の量を求め、これに5.71を乗じて得た値の試料重量に対する百分比を大豆たんぱく質の濃度とすることができる。
【0011】
ここで、本発明に係る豆乳含有飲料は、pHが4.6以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.0以上であることが好ましく、3.3以上であることがより好ましい。pHが4.6を超える場合には、大豆たんぱく質の安定性が損なわれ、沈殿が増加する恐れがあり、pHが2.6未満であると酸味を強く感じるため、飲みやすさが低下する恐れがある。
【0012】
本発明の豆乳含有飲料においては、酸味料として通常使用される成分、例えば、リン酸や、クエン酸及び乳酸等の有機酸の添加量を調整して、飲料全体のクエン酸酸度が、0.1~0.5質量%となるように設定されることが好ましく、0.2~0.4質量%となるように設定されることがより好ましい。本発明の豆乳含有飲料のクエン酸酸度を0.1~0.5質量%に調整することによって、爽やかな酸味や後味をもたらし、かつ、豆乳風味を向上、改善、及び/又は強化するという利点をもたらす。本発明において、豆乳含有飲料中の酸味料としてのリン酸由来のクエン酸酸度は、本実施例に記載の方法で計算した値とすることができる。
【0013】
本発明の豆乳含有飲料における酸味料の含有量は、上述のクエン酸酸度を達成できる限りにおいて、特に限定されない。
また、本発明に係る豆乳含有飲料において、酸味料の成分の種類は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されないが、例えば乳酸(C3H6O3)、クエン酸(クエン酸(結晶)(C6H8O7・H2O)、及び無水クエン酸(C6H8O7)を含む)、リンゴ酸(C4H6O5)、グルコン酸(C6H12O7)、L-酒石酸(C4H6O6)、フマル酸(C4H4O4)及びリン酸(H3PO4)などを用いることができる。酸味料は、上記酸そのものの形態のほか、その塩の形態で当該豆乳含有飲料に添加されてもよい。
【0014】
また、本発明に係る豆乳含有飲料において、マグネシウム以外のミネラル分、例えばナトリウム、カリウム、カルシウムなどを、本発明の効果を損なわない程度において、適宜組み合わせて添加してもよい。例えば、豆乳含有飲料に、マグネシウムとカルシウムの組み合わせでミネラル分を添加する場合、豆乳風味が改善される傾向にある。
【0015】
本発明の豆乳含有飲料のナトリウム濃度は、20~60mg/100mlであり、より好ましくは30~50mg/100mlである。豆乳含有飲料が含有するナトリウムは、豆乳等の材料由来のナトリウムの量を考慮しつつ、ナトリウム塩を添加して調整することができる。使用される食塩については天然塩、岩塩、海塩、精製塩など食用に使用されるしお(塩)であれば、特に限定はない。本発明のナトリウム濃度は、例えば飲料中のナトリウム塩等の添加量から理論値計算した値とすることができる。なお、豆乳含有飲料中のナトリウム濃度は、例えば原子吸光光度法による常法の分析により測定することもできる。
【0016】
本発明の豆乳含有飲料のカリウム濃度は、2~10mg/100mlであり、より好ましくは、3~9mg/100mlである。当該カリウム濃度が10mg/100mlを超えると、塩味等のミネラル味が強くなる恐れがある。本発明の豆乳含有飲料のカリウムは、豆乳等の材料由来のカリウムのほか、カリウム塩を添加して調整することができる。本発明のカリウム濃度は、例えば飲料中のカリウム塩等の添加量から理論値計算した値とすることができる。なお、豆乳含有飲料中のカリウム濃度は、例えば原子吸光光度法による常法の分析により測定することもできる。
【0017】
本発明の豆乳含有飲料のカルシウム濃度は、0.5~12mg/100mlであり、より好ましくは、1~10mg/100mlである。当該カルシウム濃度が12mg/100mlを超えると、雑味等のミネラル味が強くなる恐れがある。本発明の豆乳含有飲料のカルシウムは、豆乳等の材料由来のカルシウムのほか、カルシウム塩を添加して調整することができる。本発明のカルシウム濃度は、例えば飲料中のカルシウム塩等の添加量から理論値計算した値とすることができる。なお、豆乳含有飲料中のカルシウム濃度は、例えば原子吸光光度法による常法の分析により測定することもできる。
【0018】
本発明に係る豆乳含有飲料として好ましい態様は、限定はされないが、例えば、マグネシウム濃度(mg/100ml)対大豆固形分濃度(質量%)の比が5~40であり、当該飲料全体のクエン酸酸度が0.1~0.3質量%であり、pHが3.0~4.0であり、大豆固形分濃度が0.1~0.3質量%である、豆乳入り清涼飲料水が挙げられる。また、当該豆乳入り清涼飲料水において、2~10mg/100mgのカリウムをさらに含むことが好ましい。
【0019】
本発明に係る豆乳含有飲料の糖度は、ブリックス(Brix又はBxとも表記する)値と同義とする。すなわち、本発明において糖度は、20℃における糖用屈折計の示度とし、例えば、商品名「デジタル屈折計Rx‐5000」(アタゴ社製)を使用して20℃で測定した固形分量とすることができる。当該糖度は、3~12°Bxであることが好ましく、5~10°Bxであることがより好ましい。
本発明に係る豆乳含有飲料の糖度は、公知の甘味料を使用することで上記の値に調整することができる。たとえば、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、果糖、乳糖、及び麦芽糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖等の糖類;キシリトール、D-ソルビトール等の低甘味度甘味料;タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、及びサッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料を単独で、又は適宜2種類以上を組み合わせて調整することが好ましく、ショ糖や果糖ぶどう糖液糖、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテームで調整することが豆乳含有飲料に求められる自然な甘みや爽やかな酸味といった嗜好性の観点から特に好ましい。
【0020】
また、本発明に係る豆乳含有飲料は、たんぱく質の安定化剤を含有することが好ましい。安定化剤としては、食品や飲料に用いることができる増粘多糖類であれば特に制限無く用いることができるが、特に大豆多糖類が好ましい。増粘多糖類は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用しても良い。特に限定されないが、使用される増粘多糖類としては、例えば、大豆多糖類やペクチンなどが挙げられる。
大豆多糖類とは、大豆から得られる水溶性の多糖類であり、主な成分はヘミセルロースであり、さらにガラクトース、アラビノース、ガラクツロン酸、ラムノース、キシロース、フコース、グルコース等の糖類から構成される。この大豆多糖類は、大豆から大豆油や分離大豆たんぱく質を製造する際に生成するオカラ(繊維状の絞りかす)から抽出、精製、殺菌して得ることができる。また、大豆多糖類としては市販のものを用いてもよく、例えば、商品名「SM-700」、商品名「SM-900」、商品名「SM-1200」(いずれも三栄源エフ・エフ・アイ社製)が挙げられる。
当該豆乳含有飲料への安定化剤の配合割合は、その種類等に応じて本発明の効果を損なわない範囲で適宜決定できる。該配合割合は、例えば、たんぱく質の安定性の維持を良好なものとし、良好な風味を維持するためには、飲料の全質量を基準として、その下限は通常2g/L、好ましくは4g/Lであり、その上限は通常8g/L、好ましくは6g/Lとすることができる。安定化剤の配合割合を高くすると、安定化剤特有の風味やテクスチャーが強くなるおそれがある。
【0021】
本発明に用いる水は特に限定されず、例えば、イオン交換水を用いることができる。
また、本発明に係る豆乳含有飲料は、原料(豆乳など)を乳酸菌や酵母等を用いて発酵して得られる、液状又は糊状の発酵豆乳飲食品等を含むものであってもよい。
また、本発明に係る豆乳含有飲料は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、一般的に使用されうる、上述していない甘味料や香料、各種栄養成分、各種植物抽出物、着色料、希釈剤、酸化防止剤等の食品添加物を含有させてもよい。
本発明の豆乳含有飲料は、豆乳入りの飲料であれば特に限定されないが、例えば、無調整豆乳、調製豆乳、豆乳飲料、清涼飲料水、コーヒー飲料、茶系飲料、果実飲料、スポーツ飲料、健康飲料又はアルコール飲料等が挙げられる。
【0022】
また、本発明に係る豆乳含有飲料は、乳成分を含んでいてもよい。当該乳成分は、例えば、獣乳及び植物乳のいずれの原料乳を由来とするものであってもよい。獣乳としては、例えば、牛乳、山羊乳、羊乳及び馬乳等が挙げられる。乳成分の形態としては、例えば、全脂乳、脱脂乳、乳清、乳たんぱく濃縮物、バターミルク粉、無糖練乳、脱脂加糖練乳、全脂加糖練乳、生クリーム、及び発酵乳が挙げられる。また、粉乳や濃縮乳から還元した乳も使用できる。なかでも、脱脂乳が好ましく、ハンドリングのよさから脱脂粉乳を用いることが特に好ましい。また、乳成分としては、単一種類の原料由来であっても、数の種類の原料由来であってもよい。
また、本発明の豆乳含有飲料の風味等を損なわない範囲で、必要に応じて任意の酸性成分として、果汁、例えば、オレンジ、レモン、グレープフルーツ等の柑橘系の果汁や、ブドウ、モモ、リンゴ、バナナ等の果汁を添加してもよい。
【0023】
本発明に係る豆乳含有飲料は、豆乳や上述したマグネシウム、甘味料や香料、各種栄養成分、各種植物抽出物、着色料、希釈剤、酸化防止剤等の食品添加物を適宜混合することで得られる。本発明の豆乳含有飲料においては、その製造工程において、適宜必要に応じて、均質化処理や殺菌処理を加えて行なうことができる。
均質化処理は、通常、ホモゲナイザーを用いて行うことができる。均質化条件は特に限定されず、常法に従うことができる。
殺菌処理の方法は特に制限されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌等の方法を採用することができる。
殺菌処理後の本発明の豆乳含有飲料を容器に充填する方法としては、例えば、飲料を容器にホットパック充填し、充填した容器を冷却する方法、又は容器充填に適した温度まで飲料を冷却して、予め洗浄殺菌した容器に無菌充填する方法により行うことができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本発明が何ら限定されるものでない。
【実施例】
【0024】
以下の実施例及び比較例の各種原料(成分)については、以下のものを用いた。
調製豆乳(大豆固形分18%の豆乳及び酸化防止剤からなる)
果糖ぶどう糖液糖(55%異性化糖)
大豆多糖類
ペクチン
50%乳酸
クエン酸三ナトリウム
イオン交換水(残部を構成する溶媒)
《ミネラル原料》
ナトリウム塩(塩化ナトリウム)
カリウム塩(塩化カリウム)
カルシウム塩(乳酸カルシウム)
マグネシウム塩(塩化マグネシウム・6水和物)
【0025】
各成分の含有値の分析値又は計算値を得るための方法については、以下の通りとした。
≪1 糖度(Bx°)≫
糖度測定は20℃のサンプルに対して、商品名「デジタル屈折計Rx‐5000」(アタゴ社製)を用いて、測定を行った。
【0026】
≪2 酸度(Ac(無水クエン酸))(質量%(w/w%))≫
飲料サンプル全体のクエン酸酸度は下記の滴定法で測定した。具体的には、クエン酸酸度は、フェノールフタレイン指示薬と水酸化ナトリウムとを用いて、以下の手順で滴定することにより求めた。
(1)200mL三角フラスコに対して5~15gの飲料を正確に秤量し、水を用いて50mL程度まで希釈する。
(2)希釈した前記飲料に対して1%フェノールフタレイン指示薬を数滴加えて撹拌する。
(3)三角フラスコ内の希釈飲料溶液をマグネティックスターラーで撹拌しながら、25mL容ビューレットに入れた0.1Mの水酸化ナトリウムを前記飲料溶液に滴下し、滴定試験を実施する。この滴定試験は、三角フラスコ内の飲料溶液の色が、30秒間赤色を持続した点を終点とする。
(4)クエン酸酸度(%)の値を、滴定試験の結果に基づき次式によって算出する。
クエン酸酸度(%)=A×f×(100/W)×0.0064 式(1)
[式(1)において、Aは、0.1M水酸化ナトリウム溶液の滴定量(mL)を、fは、0.1M 水酸化ナトリウム溶液の力価を、Wは、サンプルの質量(g)を示す。また、式(1)において乗算している「0.0064」という値は、1mLの0.1M水酸化ナトリウム溶液に相当する無水クエン酸の質量(g)を指す。]
なお、前記滴定試験においては、フェノールフタレイン指示薬に代えて、水素イオン濃度計を用いて実施してもよい。この場合、滴定試験の終点は、三角フラスコ内の飲料溶液のpHが8.1になった時とする。
【0027】
≪3 pH≫
pHは、pHメーター計を用いて、測定を行った。
≪4 大豆固形分濃度(質量%(w/w%))≫
大豆固形分濃度は、各飲料サンプル製造に用いられる原材料に基づいて算出した。
≪5 ナトリウム濃度測定 Na(mg/100ml)≫
ナトリウム濃度は、飲料中のナトリウム塩の添加量から理論値計算した値とした。
≪6 カリウム濃度測定 K(mg/100ml)≫
カリウム濃度は、飲料中のカリウム塩の添加量から理論値計算した値とした。
≪7 カルシウム濃度測定 Ca(mg/100ml)≫
カルシウム濃度は、飲料中のカルシウム塩の添加量から理論値計算した値とした。
【0028】
≪8 マグネシウム濃度測定 Mg(mg/100ml)≫
マグネシウム濃度(Mg濃度)は、飲料中のマグネシウム塩等の添加量から理論値計算した値とした。
【0029】
[対照例]
0.26質量%の大豆固形分となるように調製豆乳を配合し、下記表1に示すBx、クエン酸酸度、pHとなるように安定剤(大豆多糖類、ぺクチン);酸味料(50%乳酸、及びクエン酸三ナトリウム);果糖ぶどう糖液糖(55%異性化糖)を加えた、調合液を製造した。得られた調合液のNa濃度、K濃度、Ca濃度、及びMg濃度は、表1に示すとおりであった。得られた調合液を95℃瞬間殺菌にて殺菌した後、PETボトルに充填して容器詰の飲料サンプルを得た。
【0030】
[実施例1~3]
調合液のMg濃度が、表1に示す各値になるように、調合液に塩化マグネシウム・6水和物を加えた以外は対照例と同様にして、各飲料サンプルを得た。
[実施例4]
調合液のNa濃度、K濃度、Ca濃度、Mg濃度、及びMg濃度が、表1に示す値になるように、調合液にミネラル原料を加えた以外は対照例と同様にして、各飲料サンプルを得た。
[比較例1]
調合液のNa濃度が、表1に示す値になるように、調合液に塩化ナトリウムを加えた以外は対照例と同様にして、飲料サンプルを得た。
[比較例2]
調合液のK濃度が、表1に示す値になるように、調合液に塩化カリウムを加えた以外は対照例と同様にして、飲料サンプルを得た。
[参考例]
調合液のCa濃度が、表1に示す値になるように、調合液に乳酸カルシウムを加えた以外は対照例と同様にして、飲料サンプルを得た。
【0031】
【0032】
<官能試験>
対照例、実施例1~4、比較例1及び2、並びに参考例で得られた各飲料サンプルを4℃に冷やし、5名の専門パネリストが「対照例」の飲料サンプルを基準として官能評価し、その評点を平均化した。官能評価基準は、下記表2に示したものに従った。
【0033】
【0034】
官能試験においては、「対照例」を基準とし、このスコアを4点に調整した。専門パネリストに各飲料サンプルの「豆乳風味の良さ」、「豆乳風味の強さ」、「塩味の良さ」、「後味の良さ」を1~7点の7段階評価してもらい、専門パネリスト5名の評点の平均値の小数第2位を四捨五入したものを最終評点とした。なお、「塩味の良さ」は、鋭い塩味が目立たず、飲みやすいかどうかを指標としている。各専門パネリスト間の評価には、ばらつきはなかった。官能試験の官能評価結果は表3に示される。
【0035】
【0036】
表3に示される全体の結果から、マグネシウム濃度(mg/100ml)対大豆固形分濃度(質量%)の比が、5~40である場合において、豆乳風味の良さや後味の良さを向上させる傾向にあることが確認された。一方で、ナトリウム又はカリウムを添加した比較例1及び2では、豆乳風味の向上は認められなかった。また、表3の参考例の結果から、豆乳含有飲料において、マグネシウム量が本発明の範囲よりも低い場合において、ミネラル分としてカルシウムを添加した場合に、豆乳風味の向上は見られたものの、塩味の良さが低下し、全体的な嗜好性が損なわれる傾向にあることが分かった。