(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】旋回装置
(51)【国際特許分類】
H04N 5/222 20060101AFI20241108BHJP
G03B 17/56 20210101ALI20241108BHJP
【FI】
H04N5/222 100
G03B17/56 A
G03B17/56 H
(21)【出願番号】P 2020072807
(22)【出願日】2020-04-15
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋村 直人
(72)【発明者】
【氏名】浅井 康広
(72)【発明者】
【氏名】田中 賢享
【審査官】東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/058929(WO,A1)
【文献】特開2019-148639(JP,A)
【文献】特開2006-041895(JP,A)
【文献】特開2012-015907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222
G03B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、
前記ベース部に対して旋回可能に支持される旋回部と、
前記旋回部の旋回中心となる旋回軸部材と、
前記ベース部の内部に設けられると共に、前記旋回軸部材と接続し、延性材料で形成される補強板とを備える
ことを特徴とする旋回装置。
【請求項2】
前記ベース部の内部に設けられ、前記ベース部と前記補強板との間に配置される衝撃吸収部材を備える
ことを特徴とする請求項1記載の旋回装置。
【請求項3】
前記補強板は、前記ベース部の内面と接続する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の旋回装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、旋回装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ベース部に対して旋回部を旋回可能に支持するようにした旋回装置が提供されている。旋回部は、ベース部に支持される旋回軸部材を旋回中心として、旋回する。このような旋回装置は、各種装置に適用されている。特許文献1には、旋回装置の適用例として、撮影装置が開示されている。この撮影装置は、撮影用カメラ及びレンズを収容するハウジングを旋回可能に支持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された撮影装置においては、ハウジングは、ベース部に対して、旋回可能に支持されている。このとき、ベース部の内部に、ハウジングを旋回制御するための基板及び電子部品等を設ける場合がある。この場合、ベース部は、防水性を確保する必要があり、その多くは、鋳造品となっている。例えば、鋳造品となるベース部にパッキンを嵌め込む場合、パッキンを保持する複雑な溝形状を鋳造品では容易に形成できる。また、隙間の無い箱形状を鋳造品では容易に形成できる。
【0005】
しかしながら、鋳造品は、耐衝撃性が低いという問題を有している。従って、撮影装置に対して、外部から衝撃力が作用した場合、鋳造品となるベース部が破損してしまう。この結果、旋回軸部材は、ベース部から脱落してしまい、これに伴って、ハウジングは、下方に向けて落下する。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、旋回部の落下を防止することができる旋回装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る旋回装置は、ベース部と、ベース部に対して旋回可能に支持される旋回部と、旋回部の旋回中心となる旋回軸部材と、ベース部の内部に設けられると共に、旋回軸部材と接続し、延性材料で形成される補強板とを備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、旋回部の落下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る旋回装置の構成を示す縦断面図である。
【
図2】実施の形態1に係る旋回装置が固定される物に対して外部から衝撃力が作用したときの変形の様子を示す縦断面図である。
【
図3】
図3Aは従来の旋回装置の構成を示す縦断面図である。
図3Bは従来の旋回装置が固定される構造物に対して外部から衝撃力が作用したときの変形の様子を示す縦断面図である。
【
図4】実施の形態2に係る旋回装置の構成を示す縦断面図である。
【
図5】実施の形態3に係る旋回装置の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
実施の形態1に係る旋回装置10について、
図1から
図3を用いて説明する。
【0012】
図1は、実施の形態1に係る旋回装置10の構成を示す縦断面図である。この
図1に示した旋回装置10は、例えば、屋外用の監視カメラ装置に適用されるものである。この旋回装置10は、屋外に設置された構造物41の上面に固定されている。構造物41は、例えば、支柱である。
【0013】
実施の形態1に係る旋回装置10は、ベース部11、旋回部12、旋回軸部材13、基板14、及び、補強板15を備えている。
【0014】
ベース部11は、例えば、中空状をなす鋳造品である。このベース部11の内部には、基板14等が内蔵されている。また、ベース部11は、構造物41の上面に固定されている。
【0015】
旋回部12は、中空状に形成されている。この旋回部12は、ベース部11の上方に配置されており、当該ベース部11に対して、旋回可能に支持されている。旋回装置10が上記監視カメラ装置に適用される場合、旋回部12は、例えば、監視カメラの本体を構成するものである。
【0016】
旋回軸部材13は、例えば、軸、軸受け、及び、モータ等の複数の部品から構成された複合部品であって、ベース部11に対して、旋回部12をその軸心周りに旋回可能に支持するものである。即ち、旋回軸部材13は、旋回部12の旋回中心となるものである。旋回軸部材13の下端は、ベース部11の上部を貫通し、当該ベース部11に固定されている。また、旋回軸部材13の上端は、旋回部12に固定されている。なお、ベース部11における旋回軸部材13が貫通する支持孔と、当該旋回軸部材13の外周面との間には、パッキン等のシール部材が介在されている。
【0017】
基板14は、旋回軸部材13の軸心に対して、略直交するように配置されている。この基板14は、例えば、ベース部11に対する旋回部12の旋回、即ち、旋回軸部材13におけるモータの回転を制御するものである。
【0018】
補強板15は、延性材料で形成されている。この補強板15は、ベース部11の内面に沿うように配置されている。また、補強板15は、旋回軸部材13の下端に接続されている。このように、補強板15は、旋回軸部材13に接続することにより、当該旋回軸部材13を補強するものである。
【0019】
なお、旋回軸部材13は、ベース部11を貫通せずに、当該ベース部11の上面に接続されても良い。このような構成を採用する場合、ベース部11、旋回軸部材13、及び、補強板15は、重ね合わされた状態で、複数の締結部材16によって接続される。
【0020】
具体的には、補強板15は、延性材料で形成される1枚の金属板を、板金加工することによって得られるものである。このような補強板15は、上板15a及び複数の縦壁15bを有している。
【0021】
上板15aは、ベース部11の天面全域と対向するように、拡がっている。この上板15aは、旋回軸部材13の下端に対して、複数の締結部材16によって締結されている。
【0022】
縦壁15bは、ベース部11の内側面と対向するように配置されている。この縦壁15bは、上板15aを補強するものである。また、縦壁15bは、上板15aの上方への変形を、ベース部11の内側面と接触することで、ガイドする役割を有する。
【0023】
次に、実施の形態1に係る旋回装置10と従来の旋回装置10Aとについて、
図2及び
図3を用いて対比する。
【0024】
図2は、実施の形態1に係る旋回装置10が固定される構造物41に対して衝撃力が作用したときの変形の様子を示す縦断面図である。
図3Aは、従来の旋回装置10Aの構成を示す縦断面図である。
図3Bは、従来の旋回装置10Aが固定される構造物41に対して外部から衝撃力が作用したときの変形の様子を示す縦断面図である。なお、
図2及び
図3Bに示した矢印は、衝撃力の作用方向を示している。
【0025】
図3Aに示した従来の旋回装置10Aは、
図1に示した旋回装置10の構成と比較して、補強板15を備えていない。即ち、旋回装置10Aは、ベース部11、旋回部12、旋回軸部材13、及び、基板14を備えている。
【0026】
そこで、
図3Bに示すように、旋回装置10Aが固定された構造物41に衝撃力が作用した場合、その衝撃力は、構造物41から旋回装置10Aのベース部11に伝達される。更に、そのベース部11に伝達された衝撃力は、旋回軸部材13から旋回部12に伝達される。このとき、一般的に質量が大きくなる旋回部12は、その慣性によって、その場に留まろうとする。この結果、ベース部11における旋回軸部材13を支持する支持孔の周辺部に、大きな力が作用し、当該ベース部11に割れが発生する。このため、旋回軸部材13は、ベース部11から脱落し、旋回部12は、下方に向けて落下する。
【0027】
上述したように、ベース部11は、鋳造品であるため、脆く、外部から衝撃が加えられると、割れ易い。従って、旋回軸部材13を補強するための補強板15を備えていない従来の旋回装置10Aでは、旋回軸部材13がベース部11から脱落するおそれがある。
【0028】
これに対して、
図2に示すように、旋回装置10が固定された構造物41に衝撃力が作用した場合、その衝撃力は、構造物41から旋回装置10のベース部11に伝達される。更に、そのベース部11に伝達された衝撃力は、旋回軸部材13から旋回部12に伝達される。
【0029】
そして、ベース部11における旋回軸部材13を支持する支持孔の周辺部に割れが発生しても、補強板15の上板15aは、ベース部11の割れによって開口した開口部の大きさよりも大きいため、その開口部の周囲に引っ掛かり、当該開口部から抜け出ることはない。このとき、補強板15の上板15aは、ベース部11の開口部に引っ掛かって変形し、この変形によって衝撃エネルギを吸収する。この結果、旋回軸部材13は、ベース部11から脱落することがないため、旋回部12には、落下のおそれがない。
【0030】
ここで、補強板15は、延性材料で形成されているため、外力を受けた場合、破断に至る前に、塑性変形を起こす。旋回装置10は、補強板15の塑性変形を利用して、衝撃エネルギを吸収可能としている。
【0031】
また、旋回装置10においては、平板を曲げた程度の簡単な板金加工によって、補強板15を製造可能としているため、製造コストが抑制されている。
【0032】
更に、補強板15は、ベース部11に内蔵される部品の大きさ又は設置位置等に応じた切り欠き部を有しても良い。このように、旋回装置10においては、補強板15が、上記切り欠き部を有することにより、当該補強板15を、ベース部11に内蔵される部品と干渉することなく設置することができる。
【0033】
以上、実施の形態1に係る旋回装置10は、ベース部11と、ベース部11に対して旋回可能に支持される旋回部12と、旋回部12の旋回中心となる旋回軸部材13と、ベース部11の内部に設けられると共に、旋回軸部材13と接続し、延性材料で形成される補強板15とを備える。このため、旋回装置10は、旋回部12の落下を防止することができる。
【0034】
実施の形態2.
実施の形態2に係る旋回装置20について、
図4を用いて説明する。
図4は、実施の形態2に係る旋回装置20の構成を示す縦断面図である。
【0035】
図4に示すように、実施の形態2に係る旋回装置20は、実施の形態1に係る旋回装置10の構成に対して、衝撃吸収部材21が追加されたものである。
【0036】
衝撃吸収部材21は、衝撃エネルギを吸収するものである。この衝撃吸収部材21は、ベース部11の内部において、ベース部11の天面と補強板15における上板15aの上面との間に配置されている。
【0037】
衝撃吸収部材21は、ベース部11の強度よりも低い力で潰れるような、樹脂材料で形成されている。このとき、衝撃吸収部材21は、衝撃エネルギを吸収したときに、弾性変形しなくても良い。又は、衝撃吸収部材21は、ベース部11の強度よりも低い力で潰れるような、金属製の構造体となっている。このため、衝撃吸収部材21は、補強板15の変形と共に変形し、この変形によって衝撃エネルギを吸収可能となっている。従って、旋回装置20は、補強板15の変形、及び、衝撃吸収部材21の変形によって、多くの衝撃エネルギを吸収することができる。
【0038】
以上、実施の形態2に係る旋回装置20は、ベース部11の内部に設けられ、当該ベース部11と補強板15の上板15aとの間に配置される衝撃吸収部材21を備える。このため、旋回装置20は、旋回部12の落下を防止することができる。
【0039】
なお、衝撃吸収部材21は、ベース部11に対して、旋回軸部材13及び補強板15の変位を制限するように働けば、どこに設置しても良い。例えば、衝撃吸収部材21は、ベース部11と縦壁15bとの間に、粘着テープ、接着剤、及び、摩擦力等を介して設けられることにより、それらの位置を制限することができる。
【0040】
実施の形態3.
実施の形態3に係る旋回装置30について、
図5を用いて説明する。
図5は、実施の形態3に係る旋回装置30の構成を示す縦断面図である。
【0041】
図5に示すように、実施の形態3に係る旋回装置30は、実施の形態1に係る旋回装置10の構成に対して、補強板15がベース部11の内面に接続する接続構造が追加されたものである。
【0042】
具体的には、縦壁15bの下端は、ベース部11の底面に対して、複数の締結部材31によって締結されている。このため、衝撃力が伝達されたベース部11が割れた場合、補強板15は、上板15aにおける旋回軸部材13との接合面から縦壁15bにおける締結部材31による締結部までの広範囲で、変形することとなり、多くの衝撃エネルギを吸収することができる。
【0043】
なお、上記実施の形態3に係る旋回装置30においては、縦壁15bの下端は、ベース部11の底面に接続しているが、これに限るものではなく、例えば、ベース部11の内側面に接続されても良い。
【0044】
以上、実施の形態3に係る旋回装置30においては、補強板15は、ベース部11の内面と接続する。このため、補強板15は、上板15aから縦壁15bに亘って、全体的に変形することができるため、多くの衝撃エネルギを吸収することができる。この結果、旋回装置30は、旋回部12の落下を防止することができる。
【0045】
なお、本開示は、その開示の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは、各実施の形態における任意の構成要素の変形、もしくは、各実施の形態における任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0046】
10,10A,20,30 旋回装置、11 ベース部、12 旋回部、13 旋回軸部材、14 基板、15 補強板、15a 上板、15b 縦壁、16 締結部材、21 衝撃吸収部材、31 締結部材、41 構造物。