7584239 ウェビング巻取装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-11-07

(45)【発行日】2024-11-15

(54)【発明の名称】ウェビング巻取装置

(51)【国際特許分類】

   B60R 22/46 20060101AFI20241108BHJP

【ＦＩ】

B60R22/46 142

【請求項の数】 2

(21)【出願番号】P 2020084786

(22)【出願日】2020-05-13

(65)【公開番号】P2021178567

(43)【公開日】2021-11-18

【審査請求日】2022-11-18

【前置審査】

(73)【特許権者】

【識別番号】000003551

【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所

(74)【代理人】

【識別番号】110001519

【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】内堀 隼人

(72)【発明者】

【氏名】坂口 善輝

(72)【発明者】

【氏名】永峰 征典

(72)【発明者】

【氏名】鈴木 優太

【審査官】神田 泰貴

(56)【参考文献】

【文献】国際公開第２０１９／０２６４２６（ＷＯ，Ａ１）

【文献】特開２０１６－０３７１８４（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１５－０５４６５１（ＪＰ，Ａ）

【文献】国際公開第２０１２／０７３４３０（ＷＯ，Ａ１）

【文献】特開２０１１－１２６３１３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１９－１６３０３８（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｂ６０Ｒ ２２／００ － ２２／４８

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

巻取方向へ回転されることによってシートベルト装置のウェビングが巻取られるスプールと、
一側への回転によって前記スプールを巻取方向へ回転させる回転部材と、
軸方向先端側が開口された筒状のシリンダと、
前記シリンダの軸方向基端側に設けられ、車両緊急時に前記シリンダの内側に流体を供給する流体供給手段と、
前記シリンダの内側に設けられ、前記流体の圧力によって前記シリンダの軸方向先端側へ移動され、前記回転部材の歯部が食込み又は突刺さった状態で移動されることで前記回転部材を一側へ回転させる移動部材と、
前記移動部材において前記回転部材の前記歯部が食込み又は突刺さった部分よりも前記移動部材の移動方向側に設けられ、前記移動部材において前記回転部材の食込み又は突刺さりが解除された部分の移動方向先端部によって押圧されると共に前記回転部材の前記歯部が係合されることによって、前記回転部材の前記歯部が前記移動部材へ食込み又は突刺さる部分の側へ移動されて前記回転部材の一側への回転を抑制するストッパと、
を備え、
前記ストッパは、前記回転部材と前記移動部材とによる圧縮に抗する抵抗部を有している、
ウェビング巻取装置。

【請求項2】

前記抵抗部は、前記ストッパにおける前記歯部との係合部分よりも硬い請求項１に記載のウェビング巻取装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、回転部材が回転されることによってスプールが巻取方向へ回転されるウェビング巻取装置に関する。

【背景技術】

【0002】

例えば、下記特許文献１に開示されているウェビング巻取装置は、ストッパを備えている。ストッパは、移動部材の長手方向先端側へ移動された移動部材の長手方向先端側部分に押圧されて移動される。ストッパが移動されると、移動部材において回転部材の歯部が食込み又は突刺さった部分へ入る。これによって、回転部材の回転が抑制され、移動部材の移動が抑制される。

【0003】

このような構成では、ストッパは、移動部材において回転部材の歯部が食込み又は突刺さった部分へ向けて安定して移動できることが好ましい。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【文献】国際公開第２０１９／０２６４２６号

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

本発明は、上記事実を考慮して、ストッパが移動部材において回転部材の歯部が食込み又は突刺さった部分へ向けて安定して移動できるウェビング巻取装置を得ることが目的である。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明の第１の態様のウェビング巻取装置は、巻取方向へ回転されることによってシートベルト装置のウェビングが巻取られるスプールと、一側への回転によって前記スプールを巻取方向へ回転させる回転部材と、軸方向先端側が開口された筒状のシリンダと、前記シリンダの軸方向基端側に設けられ、車両緊急時に前記シリンダの内側に流体を供給する流体供給手段と、前記シリンダの内側に設けられ、前記流体の圧力によって前記シリンダの軸方向先端側へ移動され、前記回転部材の歯部が食込み又は突刺さった状態で移動されることで前記回転部材を一側へ回転させる移動部材と、前記移動部材において前記回転部材の前記歯部が食込み又は突刺さった部分よりも前記移動部材の移動方向側に設けられ、前記移動部材において前記回転部材の食込み又は突刺さりが解除された部分の移動方向先端部によって押圧されると共に前記回転部材の歯部によって弾かれることを抑制しつつ、前記回転部材の前記歯部が係合されることによって、前記回転部材の前記歯部が前記移動部材へ食込み又は突刺さる部分の側へ移動されて前記回転部材の一側への回転を抑制するストッパと、を備えている。

【0007】

本発明の第１の態様のウェビング巻取装置では、ストッパが移動部材の移動方向先端部によって押圧されると共に回転部材の歯部によって弾かれることを抑制しつつ、回転部材の歯部が係合されると、ストッパは、回転部材の歯部が移動部材へ食込み又は突刺さる部分の側へ移動される。これによって、回転部材の歯部が移動部材へ食込み又は突刺さる部分の側へストッパが移動されると、回転部材の一側への回転がストッパによって抑制される。このように、回転部材の歯部がストッパへ係合されることによってストッパは、回転部材の回転によって移動できる。このため、回転部材の歯部が移動部材へ食込み又は突刺さる部分の側へストッパは、安定して移動できる。

【0008】

本発明の第２の態様のウェビング巻取装置は、本発明の第１の態様のウェビング巻取装置において、前記ストッパは、前記回転部材と前記移動部材とによる圧縮に抗する抵抗部を有し、前記抵抗部が前記回転部材と前記移動部材との間に挟まれることで前記回転部材の一側への回転が抑制される。

【0009】

本発明の第２の態様のウェビング巻取装置では、ストッパは、抵抗部を有している。抵抗部は、回転部材と移動部材とによる圧縮に抗することができる。したがって、この抵抗部が回転部材と移動部材との間に挟まれることによって回転部材の一側への回転を抑制できる。
本発明の第３の態様のウェビング巻取装置は、巻取方向へ回転されることによってシートベルト装置のウェビングが巻取られるスプールと、一側への回転によって前記スプールを巻取方向へ回転させる回転部材と、軸方向先端側が開口された筒状のシリンダと、前記シリンダの軸方向基端側に設けられ、車両緊急時に前記シリンダの内側に流体を供給する流体供給手段と、前記シリンダの内側に設けられ、前記流体の圧力によって前記シリンダの軸方向先端側へ移動され、前記回転部材の歯部が食込み又は突刺さった状態で移動されることで前記回転部材を一側へ回転させる移動部材と、前記移動部材において前記回転部材の前記歯部が食込み又は突刺さった部分よりも前記移動部材の移動方向側に設けられ、前記移動部材において前記回転部材の食込み又は突刺さりが解除された部分の移動方向先端部によって押圧されると共に前記回転部材の前記歯部が係合されることによって、前記回転部材の前記歯部が前記移動部材へ食込み又は突刺さる部分の側へ移動されて前記回転部材の一側への回転を抑制するストッパと、を備え、前記ストッパは、前記回転部材と前記移動部材とによる圧縮に抗する抵抗部を有している。
本発明の第３の態様のウェビング巻取装置では、ストッパが移動部材の移動方向先端部によって押圧されると共に回転部材の歯部が係合されると、ストッパは、回転部材の歯部が移動部材へ食込み又は突刺さる部分の側へ移動される。これによって、回転部材の一側への回転がストッパによって抑制される。このように、回転部材の歯部がストッパへ係合されることによって、ストッパは回転部材の歯部と共に移動できる。このため、ストッパは、回転部材の歯部が移動部材へ食込み又は突刺さる部分の側へ安定して移動できる。
また、ストッパは抵抗部を有している。抵抗部は回転部材と移動部材とによる圧縮に抗することができる。

【0010】

本発明の第４の態様のウェビング巻取装置は、本発明の第２の態様または第３の態様のウェビング巻取装置において、前記抵抗部は、前記ストッパにおける前記歯部との係合部分よりも硬い。

【0011】

本発明の第４の態様のウェビング巻取装置では、ストッパの抵抗部は、ストッパにおける回転部材の歯部との係合部分よりも硬い。このため、抵抗部では、回転部材と移動部材とによる圧縮に抗することができ、ストッパにおける回転部材の歯部との係合部分は、回転部材の歯部が係合できる。

【発明の効果】

【0012】

以上、説明したように、本発明に係るウェビング巻取装置では、ストッパが移動部材において回転部材の歯部が食込み又は突刺さった部分へ向けて安定して移動できる。

【図面の簡単な説明】

【0013】

【図1】第１の実施の形態に係るウェビング巻取装置の分解斜視図である。

【図2】図３の２－２線に沿って切った断面図である。

【図3】移動部材がシリンダの軸方向先端から出た状態を示す車両前側からカバープレートの内側を見た側面図である。

【図4】移動部材の円錐部が回転部材の第２回転部の第２歯へ当接された状態を示す図３に対応する側面図である。

【図5】回転部材の第１歯及び第２歯が移動部材に食込み又は突刺さった状態を示す図３に対応する側面図である。

【図6】移動部材がストッパのストッパ凹部内に入った状態を示す図３に対応する側面図である。

【図7】回転部材の第１歯がストッパへ係合した図３に対応する側面図である。

【図8】ストッパの硬質部によって回転部材の回転が抑制された状態を示す図３に対応する側面図である。

【図9】第２の実施の形態のストッパの側面図である。

【図10】第３の実施の形態のストッパの側面図である。

【発明を実施するための形態】

【0014】

次に、図１から図９の各図に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において矢印ＦＲは、本ウェビング巻取装置１０が適用された車両の前側を示し、矢印ＯＵＴは、車幅方向外側を示し、矢印ＵＰは、車両上側を示す。また、各図において矢印Ａは、スプール１８がウェビング２０を巻取る際のスプール１８の回転方向である巻取方向を示し、矢印Ｂは、巻取方向とは反対の引出方向を示す。さらに、矢印Ｃは、ストッパ１００の長手方向先端側で、ストッパ１００の移動方向側を示す。

【0015】

なお、以下の各実施の形態を説明するにあたり、説明している実施の形態と前出の実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。

【0016】

＜第１の実施の形態の構成＞
図１に示されるように、本実施の形態に係るウェビング巻取装置１０は、フレーム１２を備えている。フレーム１２は、車両の車体としてのセンターピラー（図示省略）の車両下側部分に固定されている。

【0017】

また、フレーム１２にはスプール１８が設けられている。スプール１８は、略円筒形状に形成されており、中心軸線周り（図１等の矢印Ａ方向及び矢印Ｂ方向）に回転可能とされている。スプール１８には、長尺帯状のウェビング２０の長手方向基端部が係止されており、スプール１８が巻取方向（図１等の矢印Ａ方向）へ回転されると、ウェビング２０は、長手方向基端側からスプール１８に巻取られる。また、ウェビング２０の長手方向先端側は、スプール１８から車両上側へ延び、フレーム１２の車両上側でセンターピラーに支持されたスルーアンカ（図示省略）に形成されたスリット孔を通って車両下側へ折返されている。

【0018】

さらに、ウェビング２０の長手方向先端部は、アンカプレート（図示省略）に係止されている。アンカプレートは、鉄等の金属板材によって形成されており、車両の床部（図示省略）又は本ウェビング巻取装置１０に対応するシート（図示省略）の骨格部材等に固定されている。

【0019】

また、本ウェビング巻取装置１０が適用された車両用のシートベルト装置は、バックル装置（図示省略）を備えている。バックル装置は、本ウェビング巻取装置１０が適用されるシート（図示省略）の車幅方向内側に設けられている。シートに着座した乗員の身体にウェビング２０が掛回された状態で、ウェビング２０に設けられたタング（図示省略）がバックル装置に係合されることによって、ウェビング２０が乗員の身体に装着される。

【0020】

また、図１に示されるように、フレーム１２の車両後側には、スプリングハウジング２２が設けられている。スプリングハウジング２２の内側には、ぜんまいばね等のスプール付勢手段（図示省略）が設けられている。スプール付勢手段は、スプール１８に直接又は間接的に係合され、スプール１８は、スプール付勢手段の付勢力によって巻取方向（図１等の矢印Ａ方向）へ付勢されている。

【0021】

さらに、本ウェビング巻取装置１０は、フォースリミッタ機構を構成するトーションバー２４を備えている。トーションバー２４の車両後側部分は、スプール１８の内側に配置され、スプール１８に対する相対回転が制限された状態でスプール１８に繋がっている。これに対して、トーションバー２４の車両前側部分は、フレーム１２に形成された孔を通ってフレーム１２の外側（車両前側）へ延びている。

【0022】

フレーム１２の車両前側には、プリテンショナ２６の回転部材２８が設けられている。図１及び図２に示されるように、回転部材２８は、第１回転部３０を備えている。第１回転部３０は、スプール１８に対する同軸上に配置されている。第１回転部３０には、トーションバー２４の車両前側部分が連結されており、回転部材２８は、トーションバー２４の車両前側部分に対する相対回転が制限されている。

【0023】

また、回転部材２８の第１回転部３０は、第１フランジ３２を備えている。第１フランジ３２は、円板状に形成されており、第１フランジ３２の厚さ方向は、車両前後方向（図１及び図２の矢印ＦＲ方向及びその反対方向）側とされている。第１フランジ３２の車両前側（図１及び図２の矢印ＦＲ方向側）には、複数の歯部としての第１歯３４が設けられている。これらの第１歯３４は、第１フランジ３２の中心軸線周り（すなわち、第１回転部３０の中心軸線周り）に所定の間隔をおいて配置されており、第１フランジ３２と一体に形成されている。

【0024】

さらに、図２に示されるように、第１回転部３０の車両前側には、第１回転部３０と共に回転部材２８を構成する第２回転部３６が設けられている。第２回転部３６は、第２フランジ３８を備えている。第２フランジ３８は、円板状に形成されている。第２フランジ３８は、第１フランジ３２と同一形状とされており、第１回転部３０の車両前側における第１フランジ３２に対する同軸上で第１フランジ３２に対向配置されている。

【0025】

第２フランジ３８の車両後側（図１及び図２の矢印ＦＲ方向とは反対側）で第１回転部３０の第１歯３４の車両前側には、複数の歯部としての第２歯４０が設けられている。これらの第２歯４０は、第２フランジ３８と一体にされている。また、これらの第２歯４０は、第２回転部３６の中心軸線周りに所定の間隔をおいて形成されており、第２歯４０の各々は、回転部材２８の中心軸線方向に見て、回転部材２８の第１回転部３０の中心軸線周りに隣合う第１回転部３０の第１歯３４の間の略中央に配置される。この状態で、第２回転部３６は、第１回転部３０に連結され、第２回転部３６の第１回転部３０に対する相対移動が制限されている。

【0026】

また、第２回転部３６の車両前側部分は、ロック機構４２のロックベース４４とされている。ロックベース４４は、ロックパウル４８を備えている。ロックパウル４８は、ロックベース４４に形成されたボス４６によって支持されており、ボス４６を中心に回動可能とされている。

【0027】

一方、フレーム１２の車両前側の脚板１２Ａには、ロック機構４２及びプリテンショナ２６の双方を構成するカバープレート５０が固定されている。カバープレート５０は、車両後側へ開口されており、カバープレート５０の底板５２は、フレーム１２から車両前側へ離れた状態でフレーム１２に対向されている。底板５２には、ラチェット孔５４が形成されている。ラチェット孔５４の内周部には、ラチェット歯が形成されており、ロックベース４４のロックパウル４８がボス４６周りの一方へ回動されると、ロックパウル４８の先端部がラチェット孔５４のラチェット歯に噛合う。これによって、ロックベース４４の引出方向（図１等の矢印Ｂ方向）への回転が制限され、スプール１８の引出方向への回転が間接的に制限される。

【0028】

また、カバープレート５０の車両前側には、ロック機構４２のセンサホルダ５６が設けられている。センサホルダ５６は、車両後側へ開口されており、直接又はカバープレート５０を介して間接的にフレーム１２に固定されている。センサホルダ５６の内側には、車両の緊急状態を検出するセンサ機構を構成する各部品が収容されており、車両緊急時にセンサホルダ５６内のセンサ機構が作動されると、ロック機構４２のロックベース４４の引出方向への回転に連動してロックベース４４のロックパウル４８がボス４６周りの一方へ回動される。

【0029】

一方、ウェビング巻取装置１０は、プリテンショナ２６を構成する筒状部材としてのシリンダ５８を備えている。シリンダ５８は、円筒形状に形成されており、シリンダ５８の軸方向基端部は、フレーム１２の車両後上側に配置されている。シリンダ５８の軸方向基端部には、流体供給手段としてのマイクロガスジェネレータ６０（以下、マイクロガスジェネレータ６０を「ＭＧＧ６０」と称する）が挿入されている。ＭＧＧ６０は、制御手段としてのＥＣＵを介して車両に設けられた衝突検知センサ（何れも図示省略）に電気的に接続されており、車両衝突時の衝撃が衝突検知センサによって検知されると、ＭＧＧ６０がＥＣＵによって作動され、ＭＧＧ６０において発生された流体の一態様であるガスが、シリンダ５８の内側へ供給される。

【0030】

プリテンショナ２６のシリンダ５８の内側には、ピストンとしてのシールボール６２が配置されている。シールボール６２は、合成樹脂材によって形成されており、シールボール６２に荷重が付与されていない状態でのシールボール６２の形状は、略球形状とされている。シリンダ５８の内部空間は、シールボール６２によってシールボール６２よりも軸方向基端側とシールボール６２よりも軸方向先端側とに仕切られている。

【0031】

ＭＧＧ６０が作動されると、ＭＧＧ６０で発生されたガスがシリンダ５８におけるＭＧＧ６０とシールボール６２との間に供給される。これによって、シリンダ５８におけるＭＧＧ６０とシールボール６２との間で内圧が上昇されると、シールボール６２は、シリンダ５８の軸方向先端側へ移動されると共にシリンダ５８の軸方向に圧縮されて変形される。

【0032】

また、プリテンショナ２６のシリンダ５８の内側には、移動部材６４が配置されている。移動部材６４は、合成樹脂材によって形成されており、外力を受けることによって変形可能とされている。移動部材６４は、シールボール６２よりもシリンダ５８の軸方向先端側に配置されており、シールボール６２がシリンダ５８の軸方向先端側へ移動されると、移動部材６４は、シールボール６２に押圧されてシリンダ５８の軸方向先端側へ移動される。さらに、移動部材６４は、円柱の棒状に形成されている。

【0033】

一方、プリテンショナ２６のシリンダ５８は、軸方向中間部で曲がっており、シリンダ５８の軸方向先端部は、フレーム１２の車両前側における車両前上側に配置され、カバープレート５０とフレーム１２とに挟まれて保持されている。シリンダ５８の軸方向先端は、略車両下側（更に言えば、車両下側に対して車幅方向外側へ傾斜した方向側）へ開口されている。

【0034】

移動部材６４がシリンダ５８の軸方向先端に到達した状態で移動部材６４がシールボール６２によって更に押圧されて移動されると、図３に示されるように、移動部材６４は、シリンダ５８の軸方向先端から車両下側へ出て、カバープレート５０の内側に入る。この状態で移動部材６４が更に車両下側へ移動されると、図４に示されるように、移動部材６４の長手方向先端側部分は、回転部材２８の第１回転部３０の第１歯３４又は第２回転部３６の第２歯４０に当接される。

【0035】

この状態で、第１歯３４又は第２歯４０が移動部材６４によって車両下側へ押圧されることによって、回転部材２８は、移動部材６４からの巻取方向（図４等の矢印Ａ方向）への回転力が付与される。これによって、回転部材２８は、巻取方向へ回転され、移動部材６４は、シールボール６２からの圧力によって更に車両下側へ移動される。

【0036】

このように、移動部材６４が車両下側へ移動され、回転部材２８が巻取方向へ回転されることによって、図５に示されるように、回転部材２８の第１回転部３０の第１歯３４及び第２回転部３６の第２歯４０の一方は、移動部材６４に食込み又は突刺さる。この状態で、移動部材６４が更に車両下側へ移動されることにより、回転部材２８には、更に巻取方向への回転力が付与され、回転部材２８は、更に巻取方向へ回転される。

【0037】

一方、図１及び図２に示されるように、カバープレート５０は、レバー支持部（抑制部材支持部）としての底板５２を備えている。底板５２は、板状とされ、底板５２の厚さ方向は、概ね、車両前後方向（図１及び図２の矢印ＦＲ方向及びその反対方向）側とされている。また、カバープレート５０は、ガイド手段を構成する側壁７２を備えている。側壁７２は、カバープレート５０の底板５２の外周部に沿って設けられており、図２及び図３等に示されるように、回転部材２８は、側壁７２の内側に配置される。

【0038】

また、図３に示されるように、カバープレート５０の内側には、側壁７２と共にガイド手段を構成するガイド部材８２が設けられている。ガイド部材８２は、第１ガイド部８４及び第２ガイド部８６を備えている。第１ガイド部８４は、側壁７２の内側における車幅方向外側端部における車両下側端部に設けられている。第１ガイド部８４は、第１ガイド面８８を備えている。第１ガイド面８８は、第１ガイド面８８よりも車両上側で且つ車幅方向内側を曲率中心として湾曲されている。図６に示されるように、移動部材６４がシリンダ５８の軸方向先端から所定長さ延び出ると、移動部材６４は、カバープレート５０の側壁７２におけるカバープレート５０の内側の面及び第１ガイド部８４の第１ガイド面８８に案内されて移動する。

【0039】

一方、ガイド部材８２の第２ガイド部８６は、第１ガイド部８４よりも車両上側に設けられている。第２ガイド部８６の車幅方向外側の面、第２ガイド部８６の車両上側の面、第２ガイド部８６の車幅方向内側の面は、第２ガイド面９０とされている。図６から図８の各図に示されるように、カバープレート５０の側壁７２の車両上下方向中間部よりも車両上側では、移動部材６４は、側壁７２の内側の面と、第２ガイド部８６の第２ガイド面９０において車幅方向外側へ向いた部分と、の間に入り、側壁７２の内側の面と第２ガイド部８６の第２ガイド面９０とに案内されて移動する。

【0040】

さらにガイド部材８２は、第３ガイド部９２を備えている。第３ガイド部９２は、第３ガイド面９４を備えている。第３ガイド面９４は、第２ガイド部８６の第２ガイド面９０において車幅方向内側へ向いた部分と対向されている。移動部材６４が第２ガイド部８６において最も車両上側の部分を通過すると、移動部材６４は、第２ガイド部８６の第２ガイド面９０において車幅方向内側へ向いた部分と第３ガイド部９２の第３ガイド面９４とに案内されて車幅方向内側に対して車両下側へ傾いた方向へ移動する。

【0041】

また、図３に示されるように、ガイド部材８２における第２ガイド部８６と第３ガイド部９２との間には、ストッパ１００が設けられている。ストッパ１００は、本実施の形態においては軟質部としてのストッパ本体１０２は、例えば、硬化状態で回転部材２８の第１回転部３０及び第２回転部３６よりも剛性が低い合成樹脂材によって形成されている。ストッパ本体１０２の幅方向は、概ね、車両前後方向とされている。また、ストッパ本体１０２の厚さ方向は、ストッパ１００の初期状態（図３図示状態）で、概ね、ガイド部材８２の第２ガイド部８６の第２ガイド面９０と第３ガイド部９２の第３ガイド面９４との対向方向とされている。

【0042】

ストッパ本体１０２には、一対の溝部１０４が形成されている。一方の溝部１０４は、ストッパ本体１０２の厚さ方向一方の側の面に形成されており、ストッパ１００の厚さ方向一方の側へ向けて開口されている。これに対して、他方の溝部１０４は、ストッパ１００の厚さ方向他方の側の面に形成されており、ストッパ１００の厚さ方向他方の側へ向けて開口されている。

【0043】

これらの溝部１０４の内側には、凸部１０６が入っている。一方の凸部１０６は、ガイド部材８２の第２ガイド部８６の第２ガイド面９０において第３ガイド部９２の第３ガイド面９４と対向する部分から突出形成されている。他方の凸部１０６は、ガイド部材８２の第３ガイド部９２の第３ガイド面９４から突出形成されている。このため、ストッパ１００の初期状態（図３図示状態）では、ストッパ本体１０２は、ガイド部材８２に保持されている。

【0044】

また、ストッパ本体１０２の長手方向中間部よりも長手方向一側（図６等の矢印Ｃ方向側）の部分では、ストッパ１００の厚さ方向一方の側の面が、ストッパ１００の厚さ方向一方の側の面よりも車両下側を曲率の中心として湾曲されている。さらに、ストッパ１００の長手方向先端は、シリンダ５８の軸方向先端でのシリンダ５８の軸方向に対して略平行な平面とされている。

【0045】

図３に示されるように、上記のようにストッパ１００は、ガイド部材８２の第２ガイド部８６の第２ガイド面９０と第３ガイド部９２の第３ガイド面９４との間に配置されている。このため、ストッパ１００が移動部材６４によってストッパ１００の長手方向基端側から押圧されて、溝部１０４内の凸部１０６が破断されると、ストッパ１００は、その長手方向一方の側（図３の矢印Ｃ方向側）へ移動される。

【0046】

このストッパ１００の移動によって、ストッパ本体１０２の長手方向一方の端部（ストッパ本体１０２において図３の矢印Ｃ方向側の端部）が回転部材２８の第１回転部３０及び第２回転部３６の回転軌跡内に入ると、第１回転部３０の第１歯３４又は第２回転部３６の第２歯４０がストッパ本体１０２の長手方向一方の端部における回転部材２８側へ係合される。第１歯３４又は第２歯４０がストッパ本体１０２の長手方向一方の端部に係合されると、ストッパ本体１０２の長手方向一方の端部は、回転部材２８と共に回転部材２８の第１歯３４又は第２歯４０が移動部材６４へ食込み又は突刺さる部分へ移動される。

【0047】

一方、ストッパ本体１０２にはストッパ凹部１０８が形成されている。ストッパ凹部１０８は、ストッパ本体１０２の長手方向中間部よりも長手方向他側（図６等の矢印Ｃ方向とは反対側）の部分に形成されている。ストッパ凹部１０８は、ストッパ本体１０２の厚さ方向一方の側の面で開口されている。ＭＧＧ６０の作動によって発生したガスの圧力で移動部材６４が長手方向先端側へ移動されると、移動部材６４の長手方向先端部は、ストッパ凹部１０８の内側へ入る（図６参照）。この状態で移動部材６４が更に長手方向先端側へ移動されると、ストッパ本体１０２におけるストッパ凹部１０８の内側部分が移動部材６４の長手方向先端部によって押圧される。これによって、ストッパ１００が長手方向一側へ移動される。

【0048】

また、ストッパ本体１０２には、孔部１１０が形成されている。孔部１１０は、ストッパ本体１０２における車両前側の面で開口されており、孔部１１０の内周形状は、車両前側から見て円形とされている。孔部１１０の内側には、抵抗部としての硬質部１１２が設けられている。硬質部１１２は、例えば、鉄等の金属によって形成されており、硬質部１１２は、例えば、回転部材２８の第１回転部３０及び第２回転部３６よりも硬くされている。硬質部１１２は、略円柱形状とされており、硬質部１１２の中心軸方向は、概ね、ストッパ本体１０２の幅方向（すなわち、車両前後方向）とされている。硬質部１１２の直径寸法は、回転部材２８の第１回転部３０の第１歯３４の歯先と、この第１歯３４に対して回転部材２８の周方向に隣合う第２回転部３６の第２歯４０の歯先との間隔以下とされている。

【0049】

＜第１の実施の形態の作用、効果＞
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。

【0050】

本ウェビング巻取装置１０では、車両緊急時の一態様である車両衝突時に、ＥＣＵによってプリテンショナ２６のＭＧＧ６０が作動されると、ＭＧＧ６０からシリンダ５８の内側へ高圧のガスが瞬時に供給される。このガスの圧力によってシールボール６２がシリンダ５８の軸方向先端側へ移動されると、移動部材６４がシールボール６２に押圧されて移動部材６４がシリンダ５８の軸方向先端側へ移動される。

【0051】

移動部材６４が軸方向先端側へ移動されることによって、移動部材６４の長手方向先端側部分がシリンダ５８の軸方向先端から車両下側へ出て、回転部材２８の第１歯３４又は第２歯４０が移動部材６４の長手方向先端側部分へ当接される（図４参照）。これによって、回転部材２８の第１歯３４又は第２歯４０が移動部材６４の長手方向先端側部分によって車両下側へ押圧されると、回転部材２８は、移動部材６４からの巻取方向（図４等の矢印Ａ方向）への回転力が付与される。これによって、回転部材２８が巻取方向へ回転される。

【0052】

さらに、回転部材２８の複数の第１歯３４又は第２歯４０のうち、移動部材６４に押圧された第１歯３４又は第２歯４０よりも引出方向側（図４等の矢印Ｂ方向側）の第１歯３４又は第２歯４０は、図５に示されるように、回転部材２８の巻取方向への回転によって移動部材６４の外周面から移動部材６４の径方向中央側へ食込み又は突刺さる。

【0053】

このように、第１歯３４又は第２歯４０が食込み又は突刺さった移動部材６４が車両下側へ移動されることによって、回転部材２８には、更に巻取方向への回転力が付与され、回転部材２８は、回転部材２８が更に巻取方向（図５等の矢印Ａ方向）へ回転される。回転部材２８の巻取方向への回転は、トーションバー２４を介してスプール１８に伝わり、スプール１８が巻取方向へ回転される。これによって、ウェビング２０がスプール１８に巻取られて、ウェビング２０による乗員の拘束力が増加される。

【0054】

一方、移動部材６４がシールボール６２に押圧されることによって、移動部材６４がカバープレート５０の側壁７２の内側を移動すると、図６に示されるように、移動部材６４の長手方向先端部は、カバープレート５０の側壁７２とガイド部材８２の第２ガイド部８６の第２ガイド面９０との間を通る。これによって、移動部材６４の長手方向先端部がストッパ１００のストッパ本体１０２のストッパ凹部１０８の内側に入る。この状態で、移動部材６４がその長手方向先端側へ移動しようとすると、ストッパ本体１０２におけるストッパ凹部１０８の内側部分が移動部材６４の長手方向一方の端部によって押圧される。

【0055】

これによって、図７に示されるように、ガイド部材８２の第２ガイド部８６及び第３ガイド部９２の各々に形成された凸部１０６が、ストッパ１００の溝部１０４の内壁に押圧されて破断される。このように、凸部１０６が破断されることによって、ガイド部材８２によるストッパ１００の保持が解消され、ストッパ１００は、移動部材６４からの押圧力によってストッパ１００の長手方向一側へ移動される（図８参照）。

【0056】

このようなストッパ１００の移動によってストッパ本体１０２の長手方向一方の端部は、回転部材２８の第１回転部３０及び第２回転部３６の回転軌跡内に入る。ストッパ本体１０２は、例えば、硬化状態で回転部材２８の第１回転部３０及び第２回転部３６よりも剛性が低い合成樹脂材によって形成されている。このため、ストッパ本体１０２の長手方向一方の端部が回転部材２８の第１回転部３０及び第２回転部３６の回転軌跡内に入ると、第１回転部３０の第１歯３４又は第２回転部３６の第２歯４０がストッパ本体１０２の長手方向一方の端部における回転部材２８側の部分へ食込み又は突刺さるように係合される。

【0057】

このように、回転部材２８の第１歯３４又は第２歯４０がストッパ本体１０２の長手方向一方の端部に食込み又は突刺さるように係合されることで、ストッパ１００が回転部材２８の第１歯３４又は第２歯４０によって弾かれることを抑制でき、ストッパ本体１０２の長手方向一方の端部を回転部材２８と共に回転部材２８の第１歯３４又は第２歯４０が移動部材６４へ食込み又は突刺さる部分へ安定して移動させることができる。

【0058】

回転部材２８の第１歯３４又は第２歯４０が移動部材６４へ食込み又は突刺さる部分へストッパ本体１０２が移動されると、例えば、図８に示されるように、ストッパ本体１０２は、回転部材２８の第１歯３４又は第２歯４０と移動部材６４とによって変形（破断、破壊等を含む）されることがある。

【0059】

ここで、ストッパ本体１０２に設けられた硬質部１１２は、回転部材２８の第１回転部３０及び第２回転部３６よりも硬くされている。このため、上記のようにストッパ本体１０２は、回転部材２８の第１歯３４又は第２歯４０と移動部材６４とによって変形されても、回転部材２８の第１歯３４又は第２歯４０と移動部材６４とによる硬質部１１２の変形は、抑制される。

【0060】

このため、このような硬質部１１２が回転部材２８の第１歯３４又は第２歯４０が移動部材６４へ食込み又は突刺さる部分へ移動されると、この状態で移動部材６４に食込み又は突刺さった第１歯３４又は第２歯４０よりも回転部材２８の回転方向とは反対側の第１歯３４又は第２歯４０の移動部材６４への食込み又は突刺さりが制限される。これによって、回転部材２８の回転が抑制されるため、移動部材６４のそれ以上の長手方向先端側への移動が抑制される。

【0061】

これによって、移動部材６４の長手方向基端が、シリンダ５８の軸方向先端から抜けるまで移動部材６４が移動することを抑制できる。これによって、ＭＧＧ６０からシリンダ５８内に供給されたガスが、シリンダ５８の軸方向先端から抜けることを抑制できる。

【0062】

次に、ストッパ１００の変形例を第２の実施の形態及び第３の実施の形態として説明する。

【0063】

＜第２の実施の形態＞
図９に示されるように、第２の実施の形態では、硬質部１１２の中心軸方向は、ストッパ本体１０２の長手方向（図９の矢印Ｃ方向及びその反対方向）とされており、硬質部１１２は、ストッパ本体１０２の内部に埋まっている。このような構成の第２の実施の形態は、基本的に前記第１の実施の形態と同様の作用を奏し、基本的に前記第１の実施の形態と同様の効果を得ることができる。

【0064】

なお、上記の第１の実施の形態及び第２の実施の形態では、硬質部１１２は、円柱形状とされ、硬質部１１２の数は１つとされていた。しかしながら、例えば、直方体形状や三角柱形状等の他の形状であってもよいし、また、硬質部１１２を複数にしてもよい。すなわち、硬質部１１２の形状や数に関しては特に限定されるものではない。

【0065】

＜第３の実施の形態＞
図１０に示されるように、第３の実施の形態では、ストッパ１００は、抵抗部としての硬質部１２２と軟質部１２４とを備えている。硬質部１２２は、例えば、硬化状態で回転部材２８の第１回転部３０及び第２回転部３６よりも硬い合成樹脂材によって形成されている。これに対して、軟質部１２４は、例えば、硬化状態で回転部材２８の第１回転部３０及び第２回転部３６よりも剛性が低い合成樹脂材によって形成されている。

【0066】

軟質部１２４は、ストッパ１００における長手方向一方（図１０の矢印Ｃ方向）の側の端部における回転部材２８側の曲面部分の少なくとも一部を形成している。ストッパ１００における軟質部１２４の形成範囲は、ストッパ１００の長手方向一端から回転部材２８の第１歯３４と、この第１歯３４に対して回転部材２８の周方向に隣合う回転部材２８の第２歯４０との回転部材２８の周方向の間隔以上とされている。

【0067】

このため、ストッパ１００がストッパ１００の長手方向一方の側へ移動され、ストッパ１００の長手方向一方の側の端部が回転部材２８の第１歯３４及び第２歯４０の回転軌跡内に入ると、回転部材２８の第１歯３４の先端又は第２歯４０の先端がストッパ１００の軟質部１２４へ食込み又は突刺さるように係合される。

【0068】

このように、回転部材２８の第１歯３４又は第２歯４０がストッパ１００の軟質部１２４に食込み又は突刺さるように係合されることで、ストッパ１００が回転部材２８の第１歯３４又は第２歯４０によって弾かれることを抑制でき、ストッパ１００の長手方向一方の端部を回転部材２８と共に回転部材２８の第１歯３４又は第２歯４０が移動部材６４へ食込み又は突刺さる部分へ移動させることができる。

【0069】

すなわち、本実施の形態は、基本的に前記第１の実施の形態と同様の作用を奏し、基本的に前記第１の実施の形態と同様の効果を得ることができる。

【0070】

なお、軟質部１２４は、所謂「二色成形」によって硬質部１２２と共に一体成形されてもよいし、軟質部１２４と硬質部１２２とを別体で構成し、軟質部１２４が硬質部１２２に固定される構成であってもよい。

【0071】

また、本実施の形態では、硬質部１２２を形成する合成樹脂材と軟質部１２４を形成する合成樹脂材とを異ならせた。しかしながら、例えば、硬質部１２２を形成する合成樹脂材と同じ合成樹脂材で軟質部１２４を形成し、軟質部１２４の部分を、肉抜き等によって構造的に剛性を低くしてもよい。

【符号の説明】

【0072】

１０・・・ウェビング巻取装置、１８・・・スプール、２０・・・ウェビング、２８・・・回転部材、３４・・・第１歯（歯部）、４０・・・第２歯（歯部）、６０・・・マイクロガスジェネレータ（流体供給手段）、６４・・・移動部材、１００・・・ストッパ、１１２・・・硬質部（抵抗部）、１２２・・・硬質部（抵抗部）

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】