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特許7584246耐火性鉱物の微粒子の除去による石英粉の精製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】耐火性鉱物の微粒子の除去による石英粉の精製
(51)【国際特許分類】
   C03B 20/00 20060101AFI20241108BHJP
   C01B 33/12 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C03B20/00 D
C01B33/12 Z
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020119141
(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公開番号】P2021014398
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】19186021.2
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Heraeusstr.12-14, 63450 Hanau, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】510255381
【氏名又は名称】ヘレウス コナミック ユーケー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Conamic UK Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】イアン・ジョージ・セイス
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン・シュルト
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアルド・ビスノー
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-187138(JP,A)
【文献】特公昭55-040545(JP,B2)
【文献】特開昭51-028596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 20/00,
C01B 33/12,
B03B 5/62-5/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火性鉱物の微粒子を石英粉から水簸工程によって分離する工程を含む、石英粉の精製のためのプロセスであって、耐火性鉱物の微粒子は希土類金属を含有する鉱物および/またはトリウムおよび/またはウランを含み、そして水簸工程は流動床反応器において実行され、流動床反応器中には液体水簸相の制御された上昇流がもたらされ、それによって耐火性鉱物の微粒子は流動床反応器中で上方に運ばれ、一方で石英粉は流動床反応器の下部領域にとどまることを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
流動床中で上方に運ばれる耐火性鉱物の微粒子は、流動床反応器から外部に排出されるか、または液体水簸相から分離されるかの何れかであることを特徴とする、請求項1のプロセス。
【請求項3】
液体水簸相は水簸工程中でリサイクルされ、そこに含まれている耐火性鉱物の微粒子は濾過によって水簸相から分離されることを特徴とする、請求項2のプロセス。
【請求項4】
耐火性鉱物の微粒子は水簸相から、0.7μmまたはそれ未満の孔径を有するフィルターで、フィルターを使用して濾過によって分離されることを特徴とする、請求項3のプロセス。
【請求項5】
フィルターは耐酸性フィルターであることを特徴とする、請求項4のプロセス。
【請求項6】
耐火性鉱物の微粒子の石英粉からの分離は、水簸の前または間における超音波撹拌によって促進されることを特徴とする、請求項1から5の何れか1のプロセス。
【請求項7】
水簸工程は、焼成工程および/または高温塩素化工程の前または後に実行されることを特徴とする、請求項1から6の何れか1のプロセス。
【請求項8】
精製された石英粉の粒径分布は、流動床反応器からの取り出し前に均一化されることを特徴とする、請求項1から7の何れか1のプロセス。
【請求項9】
精製された石英粉の均一化は、撹拌、特に液体またはガスの流れまたは超音波によって実行されることを特徴とする、請求項8のプロセス。
【請求項10】
精製される石英粉は75μmから1000μmの大きさを有し、これに対して希土類鉱物は50μm未満の粒径を有することを特徴とする、請求項1から9の何れか1のプロセス。
【請求項11】
液体水簸相は浸出酸であり、特にフッ化水素酸、塩酸、硝酸、および硫酸の一つまたはより多くを含む酸性水溶液であることを特徴とする、請求項1から10の何れか1のプロセス。
【請求項12】
耐火性鉱物の微粒子を石英粉から水簸工程によって分離する工程を含む、石英粉の精製のためのプロセスであって、精製する石英粉は75μmから1000μmの大きさを有し、これに対して耐火性鉱物の微粒子は50μm未満の粒径を有することを特徴とする、プロセス。
【請求項13】
請求項1から12の何れか1の特徴によって特徴付けられる、希土類鉱物を除去することにより石英粉を精製するための、水簸工程の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類化合物を含有する特定の鉱物を含めて、石英粉から耐火性鉱物の微粒子を排除することにより、石英粉を精製するためのプロセスに関する。さらにまた、本発明は、これらの耐火性鉱物の微粒子を石英粉から排除するための、水簸(エルトリエーション)プロセスの使用に向けられている。最後に本発明はまた、請求の範囲に記載された発明に従って製造され、こうした耐火性鉱物の微粒子の含有量の少ない石英粉に関する。
【背景技術】
【0002】
熔融石英ガラス、すなわち精製された天然石英粉を熔融することによって作成されるガラスは、今日、多くの産業用途に使用されている。それを電球のバルブ、実験器具その他に使用することは昔から知られており、それは半導体製造におけるコンテナまたはコンタクト材料として、そしてさらには光ファイバーの製造においても使用されてきている。しかしながら、これら後者の幾つかの用途について、現在知られている石英精製手順によって達成される純度は理想的とは言えない。この理由から、光ファイバーの大多数は現在、合成ヒュームドシリカから全部が作成されており、そして高品質の半導体用途についても、やはり合成ガラスが望ましい。
【0003】
遠隔通信用の光ファイバーの初期においては、ファイバーの大多数は、高度に精製された天然石英結晶を熔融して作成されたガラスで構成されていた。しかしながら、産業が進歩するにつれて、ファイバーの破損が深刻な問題となり、またそうした破損の主たる要因は、当時利用可能であった石英精製技術によっては除去されなかった、ミクロンサイズまたはサブミクロンサイズの離散した耐火性鉱物粒子、典型的にはモナザイトやゼノタイムのような鉱物、すなわち希土類元素リン酸塩、場合によっては希土類元素酸化物の混合物に起因することが発見された。これらの微粒子は、天然石英結晶のあらゆる原料において、多かれ少なかれ存在し、そして今日の業界において使用されている高純度石英粉の主原料を構成する、ペグマタイト石から得られる石英において特に顕著である。
【0004】
こうした商業的に入手可能な精製石英粉において、これらの耐火性耐火性微粒子は、一般には25μm未満の大きさ、典型的には5μm未満の大きさを有し、そして実際のところ大多数はずっと小さく、典型的には1μm未満、すなわちコロイド粒子の大きさである。いかなる理論にも拘束されるものではないが、大きさが小さいために、これらの粒子は水性懸濁液中にあるときに表面が電位を帯び、より寸法の大きな粒子に影響する重力および引力に優越する力によって、シリカ粒子に静電的に結合されうるようになると考えられる。こうした相互作用は、10μm未満の粒径において、より著しくなる。さらにまた、これらの微粒子は極めて不活性であり融点が非常に高いため、石英粉から排除することが困難であることが判明している一方、得られた熔融石英ガラス製品から排除することは不可能であることが、これまでに判明している。
【0005】
ファイバー破損の研究により、大きさ0.5μm未満の粒子は、クラッドガラス中に存在していた場合に光ファイバーの破損を発生させうることが示されている。その結果として、光ファイバー製造業界の大部分は多年にわたり、そうした粒子が存在しないことが保証できる、合成熔融石英を求めてきた。
【0006】
より最近では、半導体産業におけるある用途については、幾つかの重要な石英ガラス部品を、合成熔融シリカから作成された部品で置き換えることが望ましいことも明らかになっている。その理由は、たまさかの耐火性鉱物粒子が石英ガラスの表面に露出され、そして塵埃粒子として環境中に入り込み、それが処理中のウエハーに到達して歩留りを下げるリスクがあるからである。また、これらの耐火性鉱物粒子の幾つかはトリウムやウランを含有しており、そうした放射性種の存在は、半導体製造プロセスにおいて特に望ましくないことも、同様に留意される。最後に、これらの不溶性微粒子は、石英の熔融のためのある種のプロセスにおいて問題を提示しうる、というのは、所定の状況の下では、それらは熔融石英製品中で気泡を成長させる、核生成部位をもたらす可能性があるからである。
【0007】
要するに、耐火性鉱物微粒子の存在は、それらが石英粉材料中に存在する場合、最終的な光学品質に関して、特に殆どの重要な半導体プラズマエッチング用途に必要とされる品質に関して、また光ファイバーのクラッドの製造における使用について、問題を引き起こす
【0008】
石英精製プロセスの過程で、これらの耐火性鉱物を排除できたなら、または少なくとも実質的に低減できたなら、熔融石英ガラスは上述した用途の幾つかにおいて、合成シリカの潜在的な代替物となるであろう。
【0009】
現在、熔融のための高純度石英粉を生成する標準的な方法は、原料(典型的にはペグマタイト石)を粗砕および粉砕し、篩分けし、磁力選鉱し、フロスフロテーション(浮遊選鉱)を行い、そして酸、例えば任意選択的に別の鉱酸(例えば塩酸、硝酸または硫酸)と混合されたフッ化水素酸で浸出(洗浄)することを包含している。石英粉は次いで純水で洗浄して乾燥され、その後熔融石英の製造に使用される。
【0010】
加えて、石英粉は反応性ガス中で高温処理されてよく、塩素含有雰囲気、例えばClまたはHClの存在下で、例えば回転炉を通されてよい。高純度の石英粉を生成するためのプロセスの一部としての、こうした高温塩素化処理は、例えば欧州特許公開0737653号および米国特許7837955号に記載されている。こうした高温塩素化処理の間に、粒子内部に存在する耐火性鉱物のような不純物粒子は、石英粒子に空隙を生じうるものであって、耐火性鉱物はそれにより露出されるようになり、または石英粉表面で遊離されさえする。かくして、石英粉精製に際して高温塩素化または他の高温処理工程が実行される場合には、耐火性鉱物微粒子が露出されることを期待してよく、そして適切なプロセスによりそれらの除去が容易化される。
【0011】
公知のプロセスによって提供される各種の精製にも関わらず、それによって得られる今日入手可能な石英粉は、殆どの重要な用途においては受け入れることのできない、ある程度の耐火性鉱物を依然として保持している。
【0012】
石英粉の精製についての従来技術の状況は、以下のように要約することができる:中国特許公開106082238号は、石英粉の製造のためのプロセスを開示しており、そこにおいては出発材料が粒状化され(粗砕および微粉砕され)、高温塩素化プロセスにかけられる。高温塩素化プロセスの後、得られた石英粉はさらに二つの一連のプロセス工程にかけられるが、そこにおける最初のプロセス工程は石英粉の水での急冷であり、第二の工程はフッ化水素酸、塩酸、硫酸およびシュウ酸を含む、酸混合物での石英粉の浸出である。この浸出工程の間に、超音波処理を適用してよい。その後、濾過によって固相が液相から分離され、その後に固体残渣が洗浄および乾燥される。中国特許公開106082238号は、不溶性の耐火性鉱物微粒子を石英粉から除去するという本発明と同じ課題を教示も示唆もしておらず、また浸出工程が石英粉粒子に取着している可能性のある耐火性鉱物粒子を幾らか解放することにつながる場合があるとしても、本発明の対象であるこの耐火性鉱物微粒子は上記の酸混合物に不溶であり、また粒径が小さいため、分離を行うために何らかの形で水簸が用いられない限り、後続する従来の濾過工程においては石英粉粒子に付着したまま汚染物質となることが予想される。分析に関する図表は提示されておらず、また耐火性鉱物微粒子の石英粉からの著しい分離が達成されたという証拠は存在していない。
【0013】
東ドイツ特許160967号は、石英粉の精製のためのプロセスを開示しており、そこにおいては出発材料は最初に破砕および粉砕工程にかけられ、そしてその後に塩酸で処理される。次の工程として、石英粉は高温塩素化プロセスにかけられ、フッ化水素酸で処理される。この酸処理の後に、酸は濾過によって石英粉から分離される。耐火性鉱物はフッ化水素酸での処理によって影響を受けないままであるため、東ドイツ特許160967号によって示唆される酸分離は、石英粉からの耐火性鉱物微粒子の除去につながるとは予想できず、また提示されている分析に関する図表は、これに反する何の証拠ももたらすものではない。
【0014】
特開昭62-30632号は、天然シリカ質原料から高純度の石英ガラスを製造するプロセスを開示している。この製造手順の間に、石英粉は塩素化処理を受け、その後フッ化水素酸と硝酸の混合液中で浸漬処理することによって精製される。硝酸、次いで水で洗浄した後に、石英粉は濾過および乾燥される。分析に関する図表は、アルカリ金属(リチウム、ナトリウムおよびカリウム)の含有量の著しい低減がこのプロセスによって達成されたこと、そしてまた、放射性元素ウランの含有量が大きく低減したことを示している。耐火性鉱物微粒子の分離に対する取り組みは行われていない。さらにまた、この日本の従来技術文献に記載された浸漬および洗浄処理は、耐火性鉱物微粒子の石英粉からの分離をもたらすものではない。
【0015】
米国特許4804422号は、粉砕および浮遊による初期選鉱および磁力分離の後に、ペグマタイト系原料から得ることのできる石英粉を処理するためのプロセスを開示している。通常は0.5mm未満の粒径を有する石英粉は、石英砂の少なくとも40重量%を溶解するのに十分な時間にわたってフッ化水素酸中で処理され、脱塩水で洗浄され、次いで高温の塩酸で少なくとも30分間にわたって処理される。この後者の工程は、リン酸塩不純物のレベルを低減させるのに有用であるとされている;しかしながら、この手順は耐火性鉱物微粒子の全部を排除するものではないことが判明している。こうした耐火性鉱物微粒子を水簸によって分離しようとする何らかの試みが行われたことを示すものはない。処理カラムの上部にはフィルターが備えられていて、粒子がカラムから漏出するのを防止し、酸が循環ポンプを通って前方へと通過されるようになっているが、フィルターで収集されたどのような粒子も、処理中の石英粉と共に浸出容器内にとどまることが明らかである。かくしてプロセスの終わりには、耐火性鉱物はより大きな石英粒子と十分に混合され、石英粉粒子に付着することさえありうる。微粒子の除去は、水簸を可能にするために低い流速で作動させること、そして付加的に微細な(サブミクロン)フィルターを液相の循環通路に使用することによってのみ回避されうるが、しかし開示されたプロセスでは、それは使用されていない。そうした微細なフィルターなしでは、フィルターを通過するミクロンサイズおよびサブミクロンサイズの粒子は循環する酸中にとどまり、浸出容器に戻る。このようなプロセスの後の製品である粉体は、かなりのレベルの耐火性微粒子汚染物質を保持していることが予想される。
【0016】
中国特許公開102303870号は、流動床で石英砂を浸出するためのプロセスを記載している。説明されている種々の構成はすべて、円筒形の流動容器を組み込んでおり、その中で粒子は加熱された酸の上昇流中に懸濁され、酸はポンプによって再循環される。容器の上部において、酸は周囲のトラフ中へとオーバーフローし、運び込まれた砂粒子は「砂粒盆」に収集される。この「砂粒盆」が、酸がポンプへと通過する前に、砂粒の沈降および除去(「沈澱」)を行うために使用されていることは明らかである。例えば5μm未満の粒径を有する耐火性鉱物微粒子は、この時点で沈降することはなく、流動する酸と共に再循環される懸濁液中にとどまる。かくして、5μm未満の粒径を有する耐火性鉱物微粒子をどのように除去するかの開示はない。
【0017】
中国特許公開104843718号は、シリカの嫌気性塩素化のためのプロセスを開示しており、それによれば塩素化は縦型塩素化反応器中で行われ、続いて酸抽出タンク中での処理および比重タンク中での浮遊処理が行われて不純物が除去される。この従来技術文献による開示は、比重タンク中での浮遊処理の具体的な条件については、全く何も示していない。さらにまた、浮遊処理手順において、シリカからどの不純物が除去されるかも言及されていない。
【0018】
米国特許9776194号は、石英粉中における耐火性鉱物(いわゆる重鉱物)の大きな粒子、すなわち石英砂に匹敵する大きさの粒子の存在を検出するための分析方法を開示するが、製造プロセスにおいてそうした不純物をどのように除去するかの十分な手法を提示してはいない。米国特許9776194号に記載された方法は、重鉱物粒子のような耐火性鉱物を含んでいると思われる石英粉を、浮遊選鉱剤を使用して水性パルプのようにコンディショニングし;コンディショニングしたパルプを浮遊選鉱にかけて選鉱くずを取得し;選鉱くずを石英よりも大きく分離しようとする重鉱物よりも小さい密度を有する水溶液と組み合わせ;そして最後に、耐火性鉱物の沈降をもたらすためにこの組み合わせを遠心分離することからなる。この技術は、石英粉分析試料中における耐火性鉱物の存在を調べるためには便利かも知れないが、高価な化学試薬(例えばヘテロポリタングステン酸ナトリウム)の水溶液を必要とし、また試料を高速で遠心分離することを必要とするが、これは限られた大きさの試料については可能であるが、工業規模での石英の実用的な精製には不向きである。さらにまた、市販の高純度石英粉について過去に行われたところでは、この分析技術は10μm未満の大きさの耐火性鉱物微粒子の存在を明らかにするものではなかった。
【0019】
米国特許6746655号は、粒子を縦型反応器に充填し、それらを少なくとも1000℃の温度の流動ガス(HCl)(かくして流動床を形成する)の上昇流で処理して、排気ガスとして反応器から除去することのできるガス状金属塩化物または他の揮発性化合物を形成することにより、SiO粒子を洗浄するための方法に関する。流速は少なくとも10cm/sに設定され、そして保持時間は大体12時間であってよい。この方法は、Li、Na、Mg、Cu、Fe、Ni、Cr、Mn、V、Ba、Pb、C、BおよびZrの金属性汚染物質を除去するために使用され、耐火性鉱物微粒子を石英粉から分離することは全く言及されていない。さらにまた、米国特許6746655号は、孔径0.7μmまたはそれ未満のフィルターを開示しておらず、微細な塵埃および凝縮した化合物の形態の汚染物質を排気ガス流から分離するための、ダストセパレーターに関するだけである。ここに開示されたプロセスは、水簸プロセスではなく、液体流体は使用されていない。
【0020】
欧州特許公開1942078号は、シリカ粉の精製方法に関し、それによれば、シリカ粉は流動状態とされ(流動床において)、精製ガス(HClまたはCl)と高温(1200℃)で接触され、それによってシリカ粉のイオン性の高い不純物成分(アルカリ不純物成分)を取り除いている。この目的のために、流動状態のシリカ粉は磁場領域に配置される。米国特許6746655号の方法と同様に、この方法において不純物成分は(例えばLi、Na、K)シリカ粉の表面上で精製ガスと接触して反応されて蒸発され(塩素ガスその他になる)、生成されたガスは排出される。要するに、欧州特許公開1942078号のプロセスは、高温のガス流中での不純物との反応による精製プロセスであり、蒸気として除去される。液体媒体中での水簸のプロセスは記載されていない。
【0021】
カナダ特許公開1184740号は、高純度のシリカを製造するための方法に関し、それによれば、酸化鉄および長石その他のアルミナやカルシア担持化合物のような不純物をシリカまたは石英の濃縮物から(表面および閉塞部の両方から)、濃縮物を約50℃を超える温度において3から20重量%のHFを含有する水溶液で数時間撹拌処理することにより、除去することができる。不純物(長石、アルミナおよびカルシア担持化合物)はシリカよりも大きな速度で溶解し、スライムとして分離可能であり(スライム除去または浮遊)、または水で洗い流すことができる。カナダ特許公開1184740号によれば、石英またはシリカの濃縮物はすでに、サイズ分離、湿式または乾式スクリーニング、磁気分離、浮遊、またはこれらの組み合わせといった事前処理(選鉱)を受けている。さらにまた、記載されている処理の前または後のいずれかにおける希土類鉱物の含有量については何の言及もない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
かくして、汚染物質である耐火性鉱物微粒子を石英粉から除去することを可能にする、石英粉の精製のための新しいプロセスに対するニーズがある。
【0023】
したがって、本発明の課題は、耐火性鉱物微粒子が効率的に除去される、石英粉の精製(浄化)のための方法を提供することがである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この課題は本発明の第一の態様において、石英粉の精製のためのプロセスであって、耐火性鉱物の微粒子を石英粉から水簸工程によって分離する工程を含み、そこでは耐火性鉱物の微粒子が希土類金属および/またはトリウムおよび/またはウランを含有する鉱物を含み、そして水簸工程が流動床反応器において実行され、流動床反応器中で液体水簸相の制御された上昇流がもたらされ、それによって耐火性鉱物の微粒子が流動床反応器中で上方に運ばれ、これに対して石英粉は流動床反応器の下部領域にとどまる、プロセスによって解決される。
【0025】
さらにまた、この課題は本発明の第二の態様において、石英粉の精製のためのプロセスであって、耐火性鉱物の微粒子を石英粉から水簸工程によって分離する工程を含み、そこでは精製される石英粉が75μmから1000μmの大きさを有し、耐火性鉱物が50μm未満の粒径を有するプロセスによって解決される。本発明のこの第二の態様においては、水簸工程は好ましくは流動床反応器において実行されるものと理解され、流動床反応器中で液体水簸相の制御された上昇流がもたらされ、それによって耐火性鉱物の微粒子が流動床反応器中で上方に運ばれ、これに対して石英粉は流動床反応器の下部領域にとどまる。
【0026】
驚くべきことに、第一に耐火性鉱物が石英結晶に結合したままとならないことを確実にし、そして第二に石英粉が水簸工程を受ける、新たな精製プロセスの間に、汚染物質である耐火性鉱物微粒子を石英粉から除去可能であることが見出された
【0027】
本発明において、水簸(エルトリエーション)とは、粒子の大きさ、形状および/または密度に基づき、通常は沈澱方向とは反対の方向に流れる液体の流れを使用して、粒子を分離するためのプロセスを意味している。かくして、本発明で使用されるところでは、水簸は逆沈澱プロセスであり、そこでは分離すべき粒子、すなわち石英粒子および耐火性鉱物粒子は、上向きに流れる流体の流れに分散され、それにより、耐火性鉱物微粒子の密度がより大きいにも関わらず、垂直に方向付けられた液体の流れを使用することにより、それらを石英粉粒子から分離できるようになる。しかしながら、本発明においては、(通常と異なり)密度がより大きいにも関わらず、耐火性鉱物微粒子は液体の上昇流中において石英粒子よりも浮遊し、オーバーフロー液体中に出現し、そしてそこから分離されてよく、密度のより低い石英粒子を水簸容器中に残す。
【0028】
従って、本発明は、粒径の小さな重い希土類元素微粒子を密度の低い石英砂の大きな粒子から、その高い密度に関わらず、希土類元素微粒子の上向きの水簸によって分離することが可能である、という知見に基づいている。
【0029】
本発明において、耐火性微粒子とは、高い融点を有しおよび/または耐熱性のある、鉱物または他の合成無機材料の固体粒子を意味している。これらの粒子は一般に、50μm未満、特に25μm未満、特に10μm未満、特に5μm未満、特に1μm未満の粒径を有している。
【0030】
一つの実施形態において、耐火性鉱物は、希土類鉱物(=希土類金属を含有する鉱物)および/または希土類金属のような、希土類材料を含んでいる。かくして、本発明によるプロセスは特に、耐火性鉱物としての希土類材料を石英粉から分離および除去するのに適している。本発明の意味での希土類材料は、いわゆる「重鉱物」であり、これには限定するものではないが、全ての種類のモナザイト(希土類元素リン酸塩の混合物)およびゼノタイム(すなわちリン酸イットリウムを主成分として含有する希土類鉱物複合体)を含んでいる。これらの希土類材料に加えて、石英粉から除去される希土類材料には、トリウムおよびウランにような低レベルの放射性金属が含まれていてよい。こうした鉱物は、バルクの石英結晶粉中には比較的僅かな量(1ppm未満)で存在していてよいが、しかし業界で標準的な方法によっては除去が困難であることが判明しており、そして既に上記で扱ったように、こうした僅かなレベルであっても、透明な熔融石英ガラス製品には望ましくない。
【0031】
かくして、石英粉から除去される希土類材料は大部分が希土類元素リン酸塩であり、そして例えばモナザイト-(Ce)(Ce、La、Nd、Th)PO、モナザイト-(La)(La、Ce、Nd)PO、モナザイト-(Nd)(Nd、La、Ce)PO、モナザイト-(Sm)(Sm、Gd、Ce、Th)POおよびオルトリン酸イットリウム(YPO)を含み種々の他の希土類元素、そして潜在的にはCa、U、Th、Si、FおよびAsと組み合わせられたゼノタイムからなる群より選択される。さらにまた、水簸のプロセス工程はまた、トリウムおよびウランのような放射性材料を石英粉から除去する可能性をもたらすことが見出されている。
【0032】
市販の精製石英粉中に見出され、レーザーアブレーション(LA)ICP-MS分析によって分析された、例示的なモナザイト粒子およびゼノタイム粒子は、以下の表1に示す化学組成を有していた。
【0033】
【表1】
【0034】
表1は、米国特許9776194号の方法を使用して、市販の石英粉から抽出した複合希土類元素粒子の幾つの個別の粒子についての分析を示している。
【0035】
他の耐火性鉱物の微粒子が存在する場合もあるかも知れないが、モナザイトおよびゼノタイムがが大部分であることが見出されているから、石英粉から分離される材料は、以下ではまとめてRE(すなわち希土類(Rare Earth))微粒子と称する。
【0036】
本発明による石英粉の精製のためのプロセスは、以下のように概括できる:既に説明したように、この石英粉の精製のためのプロセスは、RE微粒子を石英粉から水簸工程によって分離する工程を含んでいる。
【0037】
本発明による水簸工程は、流動床反応器中で実施されてよい。流動床反応器は、当業者には知られている。この種の反応器では、流体(通常は気体または液体、好ましくは液体)が、精製される石英粉のスラリーを通って、固体の少なくとも一部分を懸濁して、固体が流体であるかのように振る舞うようにするのに十分な速度で通過される。この過程は、流動化として知られている。本発明では、流動床反応器をフッ化水素酸のような反応性流体と共に使用し、水簸の間に石英粒子の表面上でエッチング反応を行わせることが可能である。代替的には、懸濁された粉体を水のような不活性流体で処理し、粉体と流体とを反応させずに水簸を行うことも可能である。
【0038】
流動床反応器中の固体物質材料(すなわちRE微粒子を伴う石英粉)は典型的には、ディストリビューターとして知られている多孔性プレートによって支持されている。ここでは液体水簸相と呼ばれる流体が、次いでディストリビューターを介して、固体材料を通過して押し上げられる。低い流速では、固体はその場にとどまり、流体が材料中の空隙を通過する。流速が増大されるにつれて、反応器は、固体に加わる流体の力が、全部の粒子の流動化を生じさせるのに十分となる段階に達する。本発明では、容器は好ましくは円錐形状であり、底部に向けて直径が小さくなるよう先細りになっている。かくして流体の上向きの速度は、高さが増大するにつれて減少する。この場合、石英粒子の大きさによる分離が生じ、石英の大きな粒子は流動床反応器の下部領域に蓄積され(ディストリビューターにすぐ近接して)、そして小さな石英粒子は上部へと上昇する。RE微粒子の密度は石英の密度よりも大きいが、これらの微粒子はその大きさがずっと小さいことに起因して、流動床反応器の上部まで上昇することが見出されている。この段階において、意図していた石英粉とRE微粒子の分離が生ずる。
【0039】
かくして、本発明によるプロセスは、RE微粒子を石英粉から水簸工程によって分離する工程を含んでおり、そこにおいては液体水簸相の制御された上昇流がもたらされ、それによってRE微粒子は流動床反応器中で上方に運ばれ、これに対して石英粉粒子は流動床反応器の下部領域にとどまる。流動床反応器の下部領域はディストリビューターにごく接近した流動床反応器の領域であり、液体水簸相の上昇流の間、石英粉はそこにとどまる。
【0040】
かくして、本発明の一つの具体的な特徴は、本発明によるプロセスが流動床反応器中で行われる点にある。流動床反応器という技術用語は本発明において、全部の粒子を均一または不均一な懸濁液中に保持することが必要とされる場合に、懸濁された粒子の流動化を可能にする水簸容器を意味している。その意味において、本発明による方法に使用される水簸容器は、酸中での粉体の浸出を可能にするよう使用されてよく、そして任意選択的に水簸を含んで流動化を可能にする条件の下で使用する潜在力を備えた水簸容器である。本発明によるプロセスにおいては、流動床中で上方へと運ばれたRE微粒子は好ましくは、液体水簸相と共に流動床反応器から排出されるか、または後にリサイクル可能な液体水簸相から分離される。
【0041】
液体水簸相は流動床反応器の上部から流動床の下部へとリサイクルすることが好ましいから、除去されたRE微粒子は好ましくは、リサイクル前に液体水簸から取り出す必要がある。
【0042】
かくして、本発明によるプロセスの一つのさらなる好ましい実施形態においては、液体水簸相は水簸工程中へとリサイクルされ、そしてRE微粒子は、例えば濾過によって液体水簸相から分離される。
【0043】
RE微粒子は水簸相から、好ましくは0.7μmまたはそれ未満の孔径のフィルターを使用して水簸相を濾過することによって分離される。
【0044】
水簸工程の前に石英粉からRE微粒子を分離するためには、RE微粒子の石英粉からの分離を超音波撹拌または液体または気体の流れによって生ずる撹拌によって支援することがさらに好ましい。
【0045】
また、酸処理および続いての水簸の間に、容器に対して、再循環される液体について、または両者について、適切な加熱を行うことも好ましくありうる。大きな石英粒子からの微粒子の脱凝集は、pHの制御によって、解膠剤、界面活性剤、キレート剤その他の添加によって促進されてよく、また超音波撹拌または他の手段によって容易化されてよい。この液相の加熱は、これらの工程の幾つかの有効性を増大させるについて有用でありうる。
【0046】
完全を期すために付言すると、水簸は液体の上昇流が実現されている任意の段階の間に適用可能であり、特にエッチング(HFでのエッチングの如き)の間、後続の洗浄(HClでの洗浄の如き)の間、および水洗浄の間、そしてこれらの工程の一つまたはより多くの間に行うことができる。
【0047】
プロセスの最中には、HF浸出工程の後に希HClで洗浄を行うことが有用であるが、その理由は、HF浸出の直後に水洗浄を行った場合には、この液相中に存在するヘキサフルオロケイ酸の加水分解によりシリカゲルの沈澱が調製される場合があるからである。これは望ましくないが、しかしエッチング用の酸混合物が、HClまたはNOのようなHF以外の酸を既に含有している場合には、問題はより小さくなる。
【0048】
以下でより詳細に概要を述べるように、本発明による水簸工程は、石英粉の精製のための連続したプロセス工程の中で、特に石英粉の焼成および/または高温塩素化工程の前または後に実施されてよい。石英粉の精製のための他のプロセス工程の殆どは、当業者に知られたものである。
【0049】
水簸条件の下で、流動床浸出および洗浄動作は粒径による石英粉の分離をもたらし、小さな石英粒子は浸出容器の上部領域へと上昇する。かくして、水簸工程の後、流動床反応器から除去する前に、精製された石英粉が均一(均質)になっていることが好ましい。これは、石英粒子のスラリーを反応器から流出させた際に、粉体の粒径分布がバッチの全体にわたって一貫して均一であることを確実にする。精製された石英粉の均一化は、撹拌、特に液体または気体の流れによる、或いは超音波による撹拌によって実施されてよい。
【0050】
精製される石英粉は、通常は75μmから1000μm、好ましくは75μmから250μmの大きさを有するが、これに対してRE微粒子は通常は50μm未満、特に25μm未満、特に10μm未満、特に5μm未満、特に1μm未満の粒径を有している。
【0051】
以下でより詳しく説明するように、液体水簸相は好ましくは、一般的な生成プロセスの間に石英粉を浸出するために使用される浸出酸である。こうした場合、リサイクルモードにおいて使用される液体水簸相からRE微粒子を除去するためのフィルターは、好ましくは耐酸性フィルターである。代替的に、または付加的に、液体水簸相は、浄化された石英を容器から取り出す前に浸出酸および可溶性生成物の痕跡を除去するために使用される、水流を含んでいてよい。
【0052】
さらにまた、液体水簸相は特に、フッ化水素酸以外の酸性水溶液であり、酸での浸出後に粉体を洗浄するために使用される。
【0053】
さらにまた、液体水簸相は特に水であり、酸での浸出後に粉体を洗浄するために使用される。
【0054】
本発明による精製プロセスにおいて出発材料として使用される石英粉の原料は、ペグマタイト、すなわち粒子の粗い花崗岩質の火成岩から誘導されてよい。これらは典型的には、長石、雲母および石英結晶、並びに多様な範囲のRE微粒子の緊密な混合物を含んでいる。粉砕、浸出、浮遊選鉱その他といったプロセスによって、石英の相当な程度の精製は可能である;実際、浮遊選鉱は業界で標準的な技術である。McEwenらの論文、「混合されたカチオン性/アニオン性コレクターでのアルカリ長石、イルメナイト、ルチル、ガーネットおよびモナザイトの一段階浮遊選鉱」、採鉱技術者協会、AIME、vol.260、pp97-100(1976)は、カチオン性/アニオン性コレクターを使用する、石英からの長石および他の重鉱物の浮遊選鉱について記載している。しかしながら、これらの技術は、汚染物質種の完全な分離をもたらすものではなく、多くのより小さなRE微粒子の結晶が石英粉中に残存し、石英精製のための従来法によっては取り除くことができない。
【0055】
RE微粒子の密度が石英粒子のそれよりもかなり高いという事実にも関わらず、この 大きさの小さな汚染物質であるRE微粒子は驚くべきことに、水簸のプロセス工程によって、石英粉粒子からRE微粒子を分離することを可能にする。
【0056】
以下では、石英粉を精製するための水簸工程をより詳細に説明する。
【0057】
第一に、石英粉から除去するRE微粒子が石英粉から露出されていることが有利であり、そして第二に、水簸工程に際してRE微粒子がずっと大きな石英結晶粒子に結合したままでないことを確実にすることが有利である。この第一の側面は好ましくは、水簸の前の石英粉の適切な予備処理によって達成され、そして第二の側面は好ましくは、液体水簸相の適切な上昇速度によって達成される。例えば表面電荷の相違に起因するRE微粒子の石英粒子に対する付着(凝集)は、連続的または間欠的な超音波撹拌によって、pHの選択によって、または他の手段によって克服されてよい。
【0058】
石英粉の一つの適切な予備処理は、例えば好ましい流動床反応器における石英粉の酸での浸出および洗浄工程であってよく、これに続いて流動床反応器は特定の水簸モードで作動される。代替的には、これらの工程は全体として、プロセス全体を通じて各段階において水簸を可能にするように調節された、低い流体流速で行われてよい。
【0059】
流動床を水簸モードで作動させることは、酸(浸出工程について使用される)または水(洗浄工程について使用される)が流動床中へと、石英粒子の大部分は容器の下部領域にとどまるが、その一方でRE微粒子は上方へと運ばれ容器の上部にある堰を越えて流動床システムから除去されるのを確実にするように選ばれた、上昇流速においてもたらされることを意味している。上記したように、この分離は円錐形状の流動床容器を使用することによって促進されうる。
【0060】
代替的にまたは付加的に、酸浸出工程は高温塩素化工程に先立って行ってよいが、その理由は塩素化での高温処理が、他の場合には石英粒子に付着したままとなるRE微粒子の幾らかを遊離させうるからであるが、浸出、洗浄、および水簸を塩素化工程の後に実施することが有利でありうる。
【0061】
塩素化工程は、石英粉の精製手順において通常のプロセス工程であり、公知の技術水準が参照される。
【0062】
石英結晶の比重(石英粒子の比重は2.65)と比較して高い、RE微粒子の密度(例えばモナザイトの比重は4.6から5.7であり、そしてゼノタイムの比重は4.4から5.1である)からは、RE微粒子を上昇させる手段として水簸は現実的でないように見えるかも知れない。しかしなお、石英粒子が沈み、そしてRE微粒子が浮き上がるような条件下で流動床反応器を作動させることが可能であることが判明している。これが生ずるのは、それぞれの粒子の大きさが著しく異なっているためである。対象となる石英粉の粒径は典型的には75μmから250μmの範囲にあり、これに対して本発明者らが排除しようとしているRE微粒子は典型的には10μm未満、多くの場合に5μm未満、そして大多数(数で言って)は1μm未満の大きさである。
【0063】
このより小さなまたはより軽量の粒子は上部まで上昇する(オーバーフローする)が、その理由は、それらの終末沈降速度が上昇する流体の速度よりも小さいからである。任意の流体媒体中における球形粒子の終末速度、すなわち沈降速度は、流れが層流であり、粒子が希薄懸濁液である場合には、ストークスの式を用いて見積もることが可能である。この計算によれば、上昇する流体の速度は、流動床反応器中における具体的な条件に従って規定することができる。粒子が非球形な形状であり、また少なくとも容器の下部領域において粒子の濃度が高いことから、この計算は、RE微粒子を石英粒子に対して浮遊させるのに必要な、好ましい速度範囲についての、有用な指針をもたらす。
【0064】
最も小さなRE微粒子の多く、恐らくはその全部は、石英粒子に対して化学的または物理的な結合によって付着しており、または幾つかの粒子の内部に含有されている場合もあると推測される。かくして、そうしたRE微粒子を液体媒体中へと遊離させることを可能にする手段を見出さねばならない。そのような手段には、先に既に言及したように、任意選択的に超音波撹拌の影響下での、石英粉の酸での浸出またはエッチング、および任意選択的に塩素含有環境下での、水簸プロセスに先立つ、やはり超音波撹拌によって促進されうる高温焼成または熱処理が含まれてよい。
【0065】
流動床の撹拌は代替的には、ガス、例えば窒素を流動床の下部に導入することによって、液体の再循環なしに達成されてよいが、その場合は容器には、スクラバーへと延びるガス用の排出口が備えられる。かくして、ガス、または循環される酸または水が供給される、円錐形構造の容器は、石英粒子の穏やかな撹拌および粒径に関する均一化を可能にするが、しかし液体の上昇流がRE微粒子の沈降速度を上回る、低速に制御された水簸モードにある場合には、これらのRE微粒子は浴中において石英粒子に対して上昇されてよく、そしてオーバーフローを介して容器から流出し、そのときに液体の濾過が行われてよい。
【0066】
液体水簸媒体をRE微粒子と共に排除するために用いられるオーバーフローは、好ましくは、液体水簸媒体が流動床反応器の下部へと再循環されるより前に、RE微粒子を液体水簸媒体から除去するためのフィルターを備えている。使用されるフィルターは、好ましくは、0.7μmに等しいかまたはそれ未満の孔径を有し、流動床の下部に戻る前に、不純物鉱物を取り除く。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1図1は、本発明による一つのプロセス経路の概略図を示している。
図2図2は、図1に記載されたプロセスの変形を示している。
図3図3は、図1に記載されたプロセスの変形を示している。
図4図4は、本発明によるプロセスのさらなる経路を示している。
図5図5は流動床反応器を概略的に示している。
図6図6は、大部分が5μm未満の大きさであるが、10μmまたは20μmといった大きな粒子も含む微粒子のSEM写真である。
図7A図7Aは、石英および希土類リン酸塩についての20℃における水中での粒子沈降速度についてのプロットを示すグラフである。
図7B図7Bは、石英および希土類リン酸塩についての60℃における水中での粒子沈降速度についてのプロットを示すグラフである。
図7C図7Cは、石英および希土類リン酸塩についての25℃におけるフッ化水素酸中での粒子沈降速度についてのプロットを示すグラフである。
図8図8は、超音波撹拌を組み込んだ実験的な水簸カラムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下では図1から図4を参照して、水簸工程を実施して石英粉の一般的な精製プロセスとするための、幾つかの好ましい実施形態を説明する。これらの実施形態のすべてにおいて、出発物質として使用される石英粉は、例えば粗砕、粉砕、篩分け、磁気および/または重力分離、および浮遊選鉱といった標準的な予備処理1(S1)を受け、それは典型的には、所望の粒径分布を有し、無関係な鉱物を実質的に含まない石英粒子をもたらすが、依然としてRE微粒子で汚染されている。
【0069】
図1は、本発明による一つのプロセス経路の概略図を示している。出発物質として使用される石英粉は好ましくは、工程1(S1)において、以下の粗砕、粉砕、篩分け、磁気および重力分離、および浮遊選鉱といった工程の一つまたはより多くによって予備処理される。第二のプロセス工程S2において、予備処理された出発物質は、塩酸または硝酸のような鉱酸と組み合わせせて使用することが可能な、例えばフッ化水素酸での酸浸出にかけられる。第三の工程S3において、浸出された石英粉は洗浄され、本発明にしたがって水簸される。水簸はRE微粒子の石英粉からの意図した除去を達成し、石英分は最終的に乾燥工程S4にかけられ、そして任意選択的に梱包工程S5にかけられる。
【0070】
図2は、図1に記載されたプロセスの変形を示しており、そこでは浸出され乾燥された粉体は続いて、水簸工程S3および乾燥工程S4の後であって梱包工程S5の前に、高温塩素化工程S6によって処理されてよい。この追加的な高温塩素化工程S6はさらなる浄化、すなわち痕跡量のアルカリ金属、特にナトリウムおよびカリウムの除去、および所定の遷移金属、例えば鉄の除去をもたらす。
【0071】
図3は、図1に記載されたプロセスの変形を示しており、そこでは石英粉は水簸工程S3の前に、付加的に高温塩素化S6によって処理されてよい。これは揮発性の塩化物のような所定の不純物の除去を可能にするが、高温塩素化プロセスはまた石英粒子の幾らかのデクレピテーションを生ずる可能性があり、結合した希土類微粒子の幾らかの露出および場合によっては遊離をも可能にすると考えられる。これに続けて、ここで提案する浸出工程、洗浄工程および水簸工程を行うと、RE微粒子の改善された除去が行われ得る。
【0072】
図4は、本発明によるプロセスのさらなる経路を示している。粗砕、粉砕、篩分け、磁気および重力分離、および浮遊選鉱といった予備処理工程S1の後、石英粉はフッ化水素酸と塩酸の混合物のような酸で浸出S2.1され、そして第一の洗浄および水簸工程S3.1が実行されて、対象となるRE微粒子の第一の部分が除去される。乾燥工程S4の後、高温塩素化S6が実行され、そして同じまたは類似の酸を用いた第二の酸浸出工程S2.2が、第二の洗浄および水簸工程S3.2の前に行われて、RE微粒子のさらなる除去がもたらされる。この水簸によるRE微粒子の第二の除去は特に有利であるが、その理由は、第一の水簸工程S3.1の後に行われる高温塩素化工程S6が、RE微粒子のさらなる放出をもたらしうるからである。最後に、乾燥S4および梱包S5という通常のプロセス工程が実行される。この図4の実施形態は、最も純度の高い石英粉を達成する。
【0073】
上記したように、酸浸出段階および洗浄段階の全部または殆どを制御された流体流れで作動させて、プロセスの各段階の間にRE微粒子の漸進的な水簸を可能にすることが好都合でありうる。
【0074】
上記した実施形態に記載された、本発明によるプロセスで実行される浸出工程は、酸、典型的にはフッ化水素酸を、任意選択的に追加の鉱酸、例えば塩酸または硝酸と共に使用する。この酸は、石英粉との反応によって、または外部加熱手段によって加熱されてよい。フッ化水素酸での浸出の後に、希塩酸による洗い流しを行い、次いで水で洗浄を行ってよい。
【0075】
本発明によるプロセスは通常、酸を除去するための石英粉の洗浄、および容器からの石英粒子の排出で終了する。水簸プロセスの間に石英は粒径によって分級されるから、排出に先立って流動床を良く撹拌して、石英粒子の完全な混合を可能にすることが有利であることが見出されている。これは浴の上部まで流体の強い流れをもたらすことによって行ってよく、または代替的にはガス、例えば窒素を流動床の下部において導入して流動床を撹拌することによって行ってよい。すると石英粒子のスラリーを排出したときに、一般的に必要とされるように、均一な粒径分布を有する一様な石英粉をもたらすことが可能になる。この粉体は次いで在来の手段によって乾燥され、梱包貯蔵され、輸送され、または直ちに使用される。
【0076】
酸浸出工程を、またさらには水洗浄工程であっても、別々の容器において行わせることが可能である。しかしながら、これらの動作すべてについて単一の容器を使用することもまた可能であり、そして適切な容器は、図5に概略的に示すような流動床反応器である。
【0077】
容器10および関連する配管は、適切な耐酸性材料、例えばポリプロピレン、PTFE、または代替的なポリマーから作成され、またはポリマーで被覆された金属その他から作成される。容器10の下部領域は好ましくは先細りまたは円錐形状であるが、これは上昇して流れる液体の速度が漸減されることを確実にし、またプロセスの水簸段階の間に微粒子が分離されるのを補助するためである。容器の底部には適切な多孔性材料の膜があり、これは石英粒子は保持するが、液体の通過、並びに流動化ガスの通過は許容する。この膜に適切な材料の代表は多孔性PTFEであるが、代替的な材料も入手可能である。
【0078】
処理する石英粉は容器へと、入口11を介して導入されてよい。酸(または後には水)が、容器の底部から導入されてよく、そして上方へと流れて流動床を形成する。液体の再循環による流動化は石英粉のオーバーフローの可能性をもたらすことから、水簸なしに流動化を行うことが必要な場合には、ひとたび容器10が液体で満たされたならば、流入部14において流動化ガス(例えば窒素)を導入することによって、流動床の撹拌および混合を達成することが好ましい。こうした状況の下では、そのガスは出口ベント23を介して排気され、何らかの飛沫や酸の蒸気を除去するために、適切なスクラバーへと導かれてよい。代替的には、粒子の漸次的な分離が生ずるモードにおいては、酸の処理量を少なくして作動させることが可能であり、そして最小の粒子は容器の上部へと運ばれ、オーバーフローする液体中に出現してよい。
【0079】
懸濁された石英粒子の酸浸出、および流動床が十分に撹拌されうる任意選択的な希塩酸での洗い流しに続いて、懸濁された粉体は、やはり任意選択的に流動床をガスで撹拌しながら高純度の水で洗浄され、次いで流動床は、水簸、すなわちRE微粒子は浮上させるが(より大きな)石英粒子の沈降を可能にするように選ばれた、低減された液体の流れにおいて作動される。水をゆっくりと再循環させることによって、流動床中の粉体は、粒径によって分離することが許容される。容器が先細りの形状であることの結果として、流体の上向きの速度は高さの増大と共に減少する。かくして、沈降速度の速いより大きな石英粒子容器の下部(底部)に向けて集積され、一方でより小さな石英粒子は容器の上部高くに蓄積される。より遅い沈降速度を有するRE微粒子は上方へと浮遊し、容器が液体で満たされるにつれて、容器12の上部領域に集積されるようになり、次いで周縁の堰19を介してオーバーフローする。それらは次に0.7μmに等しいかまたはより小さな孔径を有する微細フィルター20に集められ、一方で水簸液体は再循環されてよい。
【0080】
図5においては、以下の参照番号が使用されている:
10 流動床浸出および洗浄容器
11 精製する石英粉の入口
12 水簸モードの流動床
13 精製された石英粉の出口
14 任意選択的な流動化ガスの流入部
15 液体循環ポンプ
16 浸出用の酸の入口
17 洗浄水の入口
18 液体用の出口
19 周縁の堰
20 耐火性粉体用の微細フィルター
21 表層液体中の微粒子
22 微粒子用出口
23 曝気ガス用ベント
24 超音波プローブ
酸処理および続いての水簸の間に、容器に対して、再循環される液体について、または両者について、適切な加熱を行うことも好ましくありうる。大きな石英粒子からの微粒子の脱凝集は、pHの制御によって、解膠剤、キレート剤その他の添加によって促進されてよく、また超音波撹拌または他の手段によって容易化されてよい。この液相の加熱は、これらの工程の幾つかの有効性を増大させるについて有用でありうる。
【0081】
現在の状況において汚染物質となっているRE微粒子の高レベルの除去を確実にするためには、適切な設計の単一の容器で十分であるが、直列に接続された二番目の、またはさらなる容器を用いることも可能である。かくして最初の容器からのオーバーフローは、二番目の、より大きな、直径が漸増する容器の入口に直接差し向けてよい。このようにして、必要ならばRE微粒子のより明確な分離を達成することが可能である。
【0082】
微粒子の排除に続いて、そして石英粒子のスラリーを流動床から排出する前に、例えば流動床を通してガス(例えば窒素)を上方へと通過させることにより、または代替的には高流量の水を導入することにより、スラリーを効率的に撹拌して、分離された石英の層を混合させることが好ましい。ひとたび適度に均一化されたならば、スラリーは出口13を介して適切な容器内へと排出して、在来の手段により濾過およびその後の乾燥を行うことができる。
【0083】
本発明はさらにまた、希土類鉱物を除去することによって石英粉を精製するための、水簸工程の使用に関する。この使用は特に、請求項記載のプロセスの、上述した特徴によって特徴付けられる。
【0084】
最後に、本発明は、上述した精製プロセスに従って得られる、精製された石英粉に関する。こうした精製された石英粉は、従来技術で知られた石英粉に鑑みれば、新規である。本発明による上述したプロセスは、RE微粒子でドープされた石英粒子の混合物からの石英の大きな粒子から、そうした微粒子を分離する能力を提供する。従って、本発明による精製された石英粉は、例えば米国特許6746655号;欧州特許公開1942078号;およびカナダ特許公開1184740号に従うプロセスによって得られる石英粉と比較して、RE微粒子を低減されたレベルで含む。これらの従来技術文献に記載されたプロセスは、少なくとも本発明に従う方法によって初めて提供される効率の点において、石英からRE微粒子を低減させるについて不適切なものである。
【実施例
【0085】
本発明は以下の実施例を参照することによってより詳細に説明されるが、これらは請求項に記載の発明を制限するものではない。
【0086】
最初に、典型的な精製された石英粉と、大量のこうした石英粉から事前に取り出したRE微粒子の既知の添加量との混合物に基づく水簸トライアルによって、この手法の実験的検証を行った。数値的には、これらの微粒子の大部分は5μm未満の大きさである。しかし時々は、大きさ10μm、または20μmといった大きな粒子がSEM写真(図6)に見られてよい。
【0087】
これらのトライアルで使用された石英粉は、商業的に入手可能な精製された石英粉であり、高温塩素化精製プロセスによってさらに処理されており(典型的には石英粉の純度は99.998%SiOを超え、公称粒径は85~225μmである)、これに対して、こうした石英粉から事前に得られ計量されたRE微粒子が、図6に見られるように添加されている。
【0088】
例1
20gの精製された石英粉に0.0125gのRE微粒子が添加されたものを含むスラリーを調製した。ガラス容器内に入れたこのスラリーを、市販の超音波洗浄浴内で2分間にわたって撹拌し、次いで水簸カラムに添加したが、水簸カラム内では水が、石英粒子はすべて降下する一方で水は上部でオーバーフローするといった流量において、ゆっくりと流されていた。オーバーフローする水は、孔径0.7μmのガラス繊維フィルターを通して濾過した。次いでこのフィルターおよび残渣を希釈したフッ化水素酸で処理してガラス繊維を溶解し、石英とRE微粒子の残渣を残した。フッ化水素酸の除去に続いて、米国特許9776194号に記載された分析プロセスの一部をなす密度分離法を使用して、水簸された微粒子を処理した。このプロセスを使用して、0.0025gのRE微粒子が回収されたが、これは当初の石英試料からの、こうした粒子の20%の回収を表していた。
【0089】
この例1において出発材料として使用した精製石英粉は、この例で実行されたプロセスによって得られた最終的な石英粉に対応していなかった。
【0090】
出発材料の精製石英粉は商業的に入手可能であり、RE微粒子を取り除くようにさらに処理されてはいない。添加したRE微粒子のみが除去され、より多くのRE微粒子が除去されていないという事実は、出発材料がRE微粒子を含まないことを意味していないが、その理由は、この例が小規模で実行されており、小規模の出発材料中にはRE微粒子は殆ど含まれておらず、さらにまた、既存のRE微粒子の幾らかを石英粉から遊離させるには、例えばHFエッチングを使用することが必要でありうるからである。秤量された微粒子の差は最小限のものであろうが、しかし依然として差は存在している。
【0091】
例2
上述したトライアルを繰り返し、すなわち20グラムの石英に0.0085グラムのRE微粒子をドープ(添加)した。水簸に続いて、同じ技術を使用して0.0032gのRE微粒子が回収されたが、これは当初の石英粉からの、38重量%のRE微粒子の分離および回収を示していた。
【0092】
例3
上述の例を繰り返したが、水の上昇流を測定したところ速度は120mm/分であり、水簸は90分間であった。0.0095グラムのRE微粒子でドープした20グラムの石英を処理し、0.0064gのRE微粒子が回収されたが、これは当初の石英粉からの、67重量%のRE微粒子の分離および回収を示していた。
【0093】
20℃において球形粒子に対する水の粘性抗力がストークスの式によって与えられ、20℃の水中における密度が石英(2.65g/cm)および典型的な希土類リン酸塩(4.75g/cm)であるという前提の下において、この水簸プロセスのモデルは、これら二つの材料の粒子沈降速度について、図7Aに示すプロットを導く。約240mm/分の上昇速度で、約67μmよりも大きな石英粒子は沈降が可能となり、これに対して約45μmよりも小さな希土類リン酸塩粒子は上昇するようになり、そして石英砂のバルクから除去されうるように見受けられる。
【0094】
以上に示された例は、作動条件に関する指針をもたらしており、当業者は簡単な実験を通じて、好ましい上昇流の速度を容易に見出すことができる。適用される流れの速度は、流体媒体の性質、作動温度および作動粘度、そしてまた容器の形状にも依存している。さらにまた、上述したストークスの式による計算は、十分な指針をもたらす。温度および粘度がやはり大きな影響を有しうることも知られている。水簸は、加熱流体で行われた場合に(例えば酸浸出の間に)有利でありうる。60℃の水中におけるこれら両方のパラメーターの効果を、図7Bに見ることができ、これから結論付けてよいこととして、240mm/分の上昇流速度においては、45μmよりも大きな石英粒子は沈降すると予測されてよいが、これに対して30μm未満の希土類リン酸塩粒子は上昇し、オーバーフローする流体中に現れると予測されてよい。
【0095】
さらなる任意選択的事項は、浸出工程を水簸モードで作動させることである。25℃の温度領域にあるフッ化水素酸(30%wt)水溶液の密度および粘度に関して、数値が利用可能である。図7Cは、こうした条件の下における石英およびRE微粒子の予測沈降速度を示している。そのプロットは、240mm/分の上昇速度において、70μmよりも大きな石英粒子は降下すると予測されるが、これに対して45μm未満のRE微粒子は上昇すると予測され、オーバーフロー液体中において容器から外へと運ばれて除去されることを示している。
【0096】
上記に基づき、そして石英の公称粒径範囲が85~225μm(先に記載したように)であることから、上昇流速度240mm/分の水カラムにおいて、より定量的な実験を行うことを決定した。
【0097】
例4
図8に示すように、PVC部品から、超音波撹拌を組み込んだ実験的な水簸カラムを組み立てた。このカラム(30)それ自体は、内径68mm、長さ500mmの円筒形のチューブから構成され、そしてその上端にはオーバーフロー(32)が備えられていた。下端には、水の入口(31)があり、また多孔性のPTFEプレート(33)があって、これを介して水が既知の流量で供給される。超音波プローブ(34、QSonica社のQ55)は必要な場合に、制御されたパワーで超音波撹拌を可能にするものであった。
【0098】
超音波撹拌は必須ではないが、しかし石英の粒子からのRE微粒子の離脱を補助するのに有用であると考えられる。かくして、水簸モードでの作動の間に、そしてRE微粒子の水簸が求められる場合には、この液相中に激しい動きを引き起こさないように、超音波撹拌は低パワーで、または代替的には間欠的に適用され、また短時間だけとすべきである。
【0099】
この水簸装置は、温度が約20℃の脱塩水供給源に接続され、流量はカラム内に240mm/分の平均上昇速度をもたらすように調節された。
【0100】
0.0112グラムのRE微粒子がドープされた40.0グラムの石英粒子を含むスラリーが、水簸カラムの開放された上部に添加された。このスラリーに対して超音波撹拌が、15秒間にわたって適用された(制御ボックスの振幅は70に設定した)。水簸装置は30分間にわたって作動するようにされ、その時間の間に超音波撹拌が、5分ごとに10秒間にわたって適用された。
【0101】
カラム上部から洗い出された粒子は、公称で0.7μmの粒子を保持するWhatman(登録商標)GF/Fガラス繊維フィルターディスク上に集められた。
【0102】
このガラスフィルターは続いてフッ化水素酸中に溶解して、RE微粒子および石英の残渣を残した。フッ化水素酸を除去した後、RE微粒子および残存する石英粒子は、米国特許9776194号に記載の重鉱物分析方法を使用して分離し、そして0.0101gのRE微粒子が回収されたが、これは当初の石英粉からの、90.2重量%のRE微粒子の分離および回収を示していた。
【0103】
こうした条件の下に作動することで、水簸プロセスはまた出発材料から微細な石英粒子の幾らか、すなわち1.0190g、つまり開始時に導入された石英の2.5重量%を除去した。これらの石英粒子の大部分(75%)は、80μm(処理する石英粉について特定された下限)未満の大きさであった。
【0104】
かくして、精製された石英粉からRE微粒子の相当部分を排除するという水簸の潜在能力は、これらの数値から明らかである。
【0105】
例5
商業的に入手可能なまたは文献記載の石英ガラス粉の分析
一つのグレードの粉体について数年の期間にわたる平均の分析値が、以下の表2 (ppM)に示されている。これらの数値は、出願人による研究所での分析によって得られたものであり、また、これらの粉体から作成された熔融石英のインゴットについての分析値も示されている。
【0106】
【表2】
【0107】
ジルコニウムの含有量が熔融の結果として増大したように見えることが注目されるが、最も可能性の高い説明は、石英ガラスの熔融の結果として幾らかのジルコニアが熔解し、分析溶液を調製するのに使用されたフッ化水素酸により溶解し易くされた、ということである。通例的に分析された唯一の希土類不純物はイットリウムであり、平均して丁度0.1ppMを超える量で存在している。しかしながら、この数値は時期によって変化し、0.05ppMと0.32ppMの間の範囲にあった。他の希土類元素であるトリウムおよびウランもまた、より少ない量で存在しているが、石英が取り出される鉱石本体の品質に依存して、同様の範囲にわたって変動すると考えられうる。
【0108】
こうした粉体がガラスへと熔融されるに際して、上記の表に羅列された元素は、ガラス中に可溶な形態で存在してよく、かくして溶体中に、比較的一様に分散されてよい。さらにまた、されらは分析用の溶液を調製するために使用される酸(通常はフッ化水素酸)に可溶であってよく、そうした分析を比較的容易なものとする。しかしながら、大部分の希土類元素は上記の表には示されておらず、すなわちトリウムおよびウランはずっと低いレベルで存在しているのであるが、しかし個別の粒子として存在しうるものであり、熔融の間および後に、ガラス中に解離せず熔解せずにとどまりうる。これらの局在化した不純物を分析することは、特にこの不純物が1ppM未満の濃度で存在しうることから、問題がある。ガラス中におけるそれらの濃度は試料によって大きく異なる場合があり、さらにまたそれらは多くの場合、分析用の溶液を調製するために使用される酸に溶けない、耐火性リン酸塩の複合体の形態にある。このことは、分析を行う者が低レベルの不純物を測定することの可能な代替的な技術、例えば粉体の熔融によって作成されるガラスの中性子放射化分析に依拠しなければならないことを意味するが、その場合であっても、中程度の大きさの試料は関連する微粒子を表すだけの量を含まないかも知れない。
【0109】
一つの例として、熔融によって生成した熔融石英の二つのインゴットを、同じ供給源からの粉体の二つのバッチを使用して作成し、そしてそれらを中性子放射化分析にかけて、表3に示す結果を得た。これらの結果は、こうした重要な不純物の濃度について生じうる、変動の範囲を例証している。
【0110】
【表3】
【0111】
二つの異なる供給元からの幾つかの高純度石英粉について長期にわたり研究を行って本出願人により開拓された、粉体についてのさらなる一連の分析データにおいては、セリウム、イットリウム、トリウムおよびウランのレベルは一般に、以下の表4に示す範囲内にあることが見出された。これらの粉体は、耐火性金属から作成された坩堝で熔融し、生成物を坩堝の底部にセットしたダイを通して連続的に引き伸ばすことによって、ロッドおよびチューブの両方の形態において、ガラスへと熔融された。
【0112】
【表4】
【0113】
これらの値は相対的に小さいように見えるかも知れないが、これらの不純物は均一に分散されている訳ではなく多数の微粒子として存在し、その大部分がサブミクロンの大きさであって(図6参照)、その各々がファイバーの破損を生じたり、またはガラスが特定の半導体用途において使用された場合には歩留りの低下を招くことに留意しなければならない。
【0114】
微粒子による汚染は、種々の技術、例えば火炎熔融、電気熔融によって製造された熔融石英において、例えば電気加熱された耐火性金属坩堝から引き伸ばされた熔融ガラスにおいて、並びに石英結晶粉のプラズマ噴射熔融(例えば米国特許6269663号)によって形成され、光ファイバープリフォームの外側表面上に堆積されて熔融天然石英粉から構成されるクラッド層を形成するガラスにおいて検出されている。
【0115】
こうした商業的に入手可能な精製された石英粉において、そうした耐火性微粒子は一般的に全てが25μm未満、典型的には5μm未満の大きさであり、実際には大部分がずっと小さく、典型的には1μm未満である。それらが極めて不活性であり融点が非常に高いため、それらの微粒子を石英粉から排除することは困難であることが判明している。
【0116】
前述したように、ファイバーの破損の研究が示すところによれば、0.5μm未満の大きさの粒子は、クラッド層のガラス中に存在する場合に光ファイバーの破損を生じうる。その結果として、光ファイバー業界の大多数は多年にわたり、そうした粒子が存在しないことを保証可能な、合成熔融石英を求めてきた。
【0117】
高品質の熔融石英部品はまた、半導体ウエーハの製造においても使用されており、この場合にも、特定の用途においては、こうした耐火性粒子は歩留り低下について考えられる原因でありうる。熔融石英部品は、フッ素含有ガスを伴うプラズマエッチングプロセスにおいてウエーハの表面をエッチングする間、ウエーハを支持するために使用されているが、その間に石英部品の幾らかのエッチングも生じうる。このことは、そうしたエッチングの生成物がガス状であること、すなわち四フッ化ケイ素SiF4であることから、受け入れ可能であろう。しかしながら、耐火性微粒子がこのプロセスに曝される場合、塵埃が生じる場合があり、それがウエーハを汚染し、受け入れることのできない歩留りの低下につながる可能性がある。さらにまた注意すべきは、それらの耐火性鉱物粒子の幾らかはトリウムおよびウランを含有しており、そうした放射性種の存在は、半導体製造プロセスにおいて特に望ましくないということである。
【0118】
かくして、光ファイバー用途および半導体用途の両者にとって、そうした微粒子が石英精製プロセスの過程において排除され、または少なくとも実質的に低減されれば、熔融石英が受け入れ可能となりうることは明らかである。そうでない場合には重要な用途について、そうした耐火性含有物のない、合成熔融シリカを使用することが必要になる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8