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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】乳入り飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/38 20210101AFI20241108BHJP
   A23C 23/00 20060101ALI20241108BHJP
   A23F 5/00 20060101ALI20241108BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20241108BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A23L2/38 P
A23C23/00
A23F5/00
A23L2/00 B
A23L2/56
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020132857
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2022029542
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】西郷 亮子
(72)【発明者】
【氏名】網野 紗与
【審査官】二星 陽帥
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-215451(JP,A)
【文献】特開2013-094131(JP,A)
【文献】特開2017-029163(JP,A)
【文献】国際公開第2016/084749(WO,A1)
【文献】特開2017-018025(JP,A)
【文献】特開2017-042157(JP,A)
【文献】特表2019-528732(JP,A)
【文献】特開2012-095596(JP,A)
【文献】特開2010-011781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00 - 2/38
A23C 23/00
A23F 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳固形分、デキストリン、3-メチル-1-ブタノール、2-ノナノン、2-ヘプタノン、及び、5-メチル-2-フルアルデヒドを含む乳入り飲料であって、
飲料全質量を基準として、
(A)乳固形分の含有量が6質量%以下であり、
(B)デキストリンの含有量が0.1~0.6質量%であり、
(C)3-メチル-1-ブタノールの含有量が50~1000μg/Lであり、
(D)2-ノナノンの含有量が75~1000μg/Lであり、
(E)2-ヘプタノンの含有量が300~1100μg/Lであり、
(F)5-メチル-2-フルアルデヒドの含有量が25~90μg/Lである、
乳入り飲料。
【請求項2】
さらに、コーヒー抽出物を含有する、請求項1に記載の乳入り飲料。
【請求項3】
乳入り飲料のミルク感を強化するための方法であって、
飲料全質量を基準として、
(A)乳固形分の含有量が6質量%以下、
(B)デキストリンの含有量が0.1~0.6質量%、
(C)3-メチル-1-ブタノールの含有量が50~1000μg/L、
(D)2-ノナノンの含有量が75~1000μg/L、
(E)2-ヘプタノンの含有量が300~1100μg/L、及び
(F)5-メチル-2-フルアルデヒドの含有量が25~90μg/Lとなるように、乳固形分、デキストリン、3-メチル-1-ブタノール、2-ノナノン、2-ヘプタノン、及び、5-メチル-2-フルアルデヒドを、乳入り飲料中に配合する工程を含、方法。
【請求項4】
さらに、コーヒー抽出物を配合する工程を含む、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳を含有する飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーは、世界各国で飲用されており、わが国においても身近な嗜好性飲料の一つとなっており、より高い嗜好性を提供する技術について現在も開発が進められている。例えば、特許文献1には、低糖や無糖のコーヒー含有飲料や茶飲料自体の呈味や香味立ちに影響を与えることなく、十分なコク味が付与され、かつ良好な香り立ちを有する飲料を提供するために、飲料には、糖類を2.5w/v%以下含有させ、馬鈴薯由来でDEが2以上5未満であるデキストリンを含有させることが記載されている。
【0003】
また、近年、多種多様なターゲットに合わせた様々な乳入り飲料も開発されている。例えばコーヒー飲料にミルクを入れることでまろやかな風味を付加した飲料等は広く好まれている。しかしながら、コーヒーに乳成分を含有させる場合、コーヒー配合量を多くする、又は、コーヒー風味を立たせると、ミルク感が損なわれる傾向にあるため、コーヒーとミルク風味との絶妙なバランスが要求される。また、コーヒー以外の茶飲料やフルーツ飲料などにミルクを入れる場合においても、ミルク以外のベース液の甘味や苦味に応じて、味は大きく変化し、各原材料の配合によってはミルク感が損なわれる。
【0004】
そこで、様々な手段で飲料に好適なミルク風味を付与する手段の開発が試みられている。例えば、特許文献2には、劣化風味が抑制され、後味のコクを付与することにより、乳風味を増強した乳風味増強油脂、及びそれを使用した飲食品の乳風味を増強する方法が記載されており、当該乳風味増強油脂は、メチルケトン類の総含有量に対するδ-ラクトン類の総含有量の重量比が1~6であり、δ-ラクトン類の総含有量が55重量ppm以上であり、乳脂肪を含有することが開示されている。
また、特許文献3には、風香味や品質に優れ、生乳に近似した風香味を呈する粉乳を提供するために、粉乳において、加熱臭の成分である3-メチルブタノール、フルフラール、酪酸、カプロン酸、ジメチルスルフォンの少なくともひとつの生成量を抑制することが開示されている。
また、特許文献4には、多種多様なアルデヒド類、エステル類、アルコール類、ケトン類等の香気成分の組み合わせにより、より嗜好性の高い乳または乳製品様の香味を付与する香料組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-115247号公報
【文献】国際公開第2016/084749号
【文献】特開2003-180244号公報
【文献】特開2005-015685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、乳入り飲料において、乳固形分の含有量を6質量%以下に調整した場合であっても、ミルク本来のおいしさを強化することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述したように、例えば乳入りコーヒー飲料においては、コーヒー配合量を多くする、又は、香料などを利用してコーヒー風味を立たせることで、ミルク感が損なわれる傾向にある。
しかしながら、本発明者らは、乳入りコーヒー飲料には、コーヒー風味は絶妙なバランスで存在した方が却ってミルクのコクを感じることができ、ミルク感が強くなることに着目した。
本発明者らは、ミルク感をもたらす成分について鋭意検討した結果、予想外にも、特定の香気成分を特定の組成で用い、かつ、特定のデキストリン含有量に設定することで乳固形分の含有量が6質量%以下の場合であってもミルクのなめらかさや濃厚感を向上させつつ、すっきりとした後味を提供しうることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の態様を含むものである。
〔1〕乳固形分、デキストリン、3-メチル-1-ブタノール、2-ノナノン、2-ヘプタノン、及び、5-メチル-2-フルアルデヒドを含む乳入り飲料であって、
飲料全質量を基準として、
(A)乳固形分の含有量が6質量%以下であり、
(B)デキストリンの含有量が0.1~0.6質量%であり、
(C)3-メチル-1-ブタノールの含有量が50~1000μg/Lであり、
(D)2-ノナノンの含有量が75~1000μg/Lであり、
(E)2-ヘプタノンの含有量が300~1100μg/Lであり、
(F)5-メチル-2-フルアルデヒドの含有量が25~90μg/Lである、
乳入り飲料。
〔2〕さらに、コーヒー抽出物を含有する、前記〔1〕に記載の乳入り飲料。
【0009】
〔3〕乳入り飲料のミルク感を強化するための方法であって、
飲料全質量を基準として、
(A)乳固形分の含有量が6質量%以下、
(B)デキストリンの含有量が0.1~0.6質量%、
(C)3-メチル-1-ブタノールの含有量が50~1000μg/L、
(D)2-ノナノンの含有量が75~1000μg/L、
(E)2-ヘプタノンの含有量が300~1100μg/L、及び
(F)5-メチル-2-フルアルデヒドの含有量が25~90μg/Lとなるように、乳固形分、デキストリン、3-メチル-1-ブタノール、2-ノナノン、2-ヘプタノン、及び、5-メチル-2-フルアルデヒドを、乳入り飲料中に配合する工程を含み、
さらに、コーヒー抽出物を配合する工程を含んでもよい、方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、乳固形分の含有量を6質量%以下に調整した場合であっても、ミルク本来のおいしさが強化された乳入り飲料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、飲料全質量を基準として、(A)乳固形分の含有量が6質量%以下であり、(B)デキストリンの含有量が0.1~0.6質量%であり、(C)3-メチル-1-ブタノールの含有量が50~1000μg/Lであり、(D)2-ノナノンの含有量が75~1000μg/Lであり、(E)2-ヘプタノンの含有量が300~1100μg/Lであり、(F)5-メチル-2-フルアルデヒドの含有量が25~90μg/Lである、乳入り飲料に関する。本発明の乳入り飲料は、さらにコーヒー抽出物を含有することが好ましい。
ここで、本発明に係る乳入り飲料における乳(乳成分)は、動物性乳成分を含む。動物性乳成分としては、例えば、牛乳、山羊乳、羊乳及び馬乳等が挙げられるが、牛乳であることが特に好ましい。また、飲料に含まれる乳成分の形態としては、例えば、生乳、全脂乳、脱脂乳、乳清、乳たんぱく濃縮物、バターミルク粉、無糖練乳、脱脂加糖練乳、全脂加糖練乳、生クリーム、及び発酵乳が挙げられる。また、粉乳や濃縮乳から還元した乳も使用できる。また、乳成分は、単一種類の原料由来であっても、数の種類の原料由来であってもよい。
本発明の乳入り飲料における、デキストリン、並びに、3-メチル-1-ブタノール、2-ノナノン、2-ヘプタノン、及び、5-メチル-2-フルアルデヒドの香気成分の含有量は、市販品のこれらの香気成分を添加することで調整できる。また、これらの香気成分やデキストリンを含む組成物等を乳入り飲料に配合して、乳入り飲料中の各構成成分の含有量を調整してもよい。また、既知濃度のこれらの香気成分やデキストリンを含有する飲食品、例えば乳、コーヒーやココア、茶等を乳入り飲料に配合して、その香気成分の含有量を調整してもよい。
本発明の乳入り飲料は、特に限定されないが、例えば、コーヒー飲料、紅茶飲料、茶系飲料、清涼飲料水、果実飲料、スポーツ飲料、健康飲料又はアルコール飲料等である。
【0012】
ここで、本発明における「ミルク本来のおいしさを強化すること」、すなわち、ミルクのなめらかさや濃厚感を向上させて(「ミルク感を強化」させて)、後味のすっきり感を低下させないことをいう。本発明者らは、乳入り飲料にデキストリンを含有させるとミルクのなめらかさや濃厚感は向上するが、後味のすっきり感の向上には不十分であったところ、デキストリンと特定の香気成分を組み合わせて、各含有量を調整することで、ミルク本来のおいしさを強化できることを見出した。
以下、本発明に係る飲料の各構成成分や物性等について詳述する。
【0013】
・(A)乳固形分
本発明の飲料において、乳固形分の含有量は、飲料全質量を基準として、6質量%以下であり、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下である。本発明における乳入り飲料においては、乳固形分の含有量が低い場合であっても、十分なミルク感を感じられながらも牛乳のような後味のすっきり感を両立することができる。なお、一般に、乳入り飲料において、乳固形分の含量量を単純に6質量%超に設定すると、沈殿や凝集物の発生や褐変が生じ、飲料の風味や外観の面で保存安定性を保つことが難しくなり、また、製品コストも上がる恐れがある。また、乳固形分の含有量の下限は特に限定されないが、ミルク感の強化の観点から、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは1.4質量%以上である。
【0014】
本発明における乳固形分とは、動物性乳成分に由来する固形分を意味し、好ましくは、牛乳由来の固形分を意味する。より具体的には、牛乳から水分を除いた部分を乳固形分とし、乳固形分において、無脂乳固形分に対する乳脂肪分の割合は、0.1~1が好ましく、0.2~0.7がより好ましく、0.3~0.5がさらに好ましい。乳脂肪分は、飲料にミルク特有の濃厚感を付与する働きを有し、無脂乳固形分は、ミルク特有の旨みや甘みを付与する働きを有する。なお、乳脂肪分は、ミルク味のなめらかさや濃厚感の一因として知られている。また、本発明の乳入り飲料においては、単に乳固形分を増やしただけでは得られない後味のすっきり感を実現できる。
飲料中の乳固形分の含有量は、製造に用いられる原材料に基づいて算出に従い決定することができる。なお、原材料としての乳及び乳製品の乳固形分は、例えば、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令((昭和二十六年厚生省令第五十二号)令和元年十二月二十七日公布(令和元年厚生労働省令第八十七号)改正)の内容に従って測定された値としてもよい。
【0015】
・(B)デキストリン
本発明の飲料において、デキストリン含有量は、飲料全質量を基準として、0.1~0.6質量%であり、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上である。本発明において、デキストリンは、コク味出し(濃厚感やボディ感の強化)やテクスチャー付与、健康機能(難消化性デキストリン等)の付与に寄与している。そして、デキストリンの添加による生じる傾向にある後味の切れの悪さを、特定のデキストリン含有量と特定の香味成分の含有量と乳固形分の組成とで改善することができる。
ここで、一般にデキストリンは、デンプンを化学的あるいは酵素的な方法により低分子化したものである。この低分子化の指標にはデキストロース当量(DE)が用いられるところ、本発明においては、デキストリンのDEの値は効果にあまり影響を及ぼさないが、例えば、DE10~12の場合が、ミルクのなめらかさや濃厚感を付与する観点から好ましい。
【0016】
・(C)3-メチル-1-ブタノール(CAS:123-51-3)
3-メチル-1-ブタノールは、必要に応じて3-メチル-1-ブタノールやこれを含む香料等を添加して含有量を調整することができる。本発明の飲料において、3-メチル-1-ブタノールの含有量は、50~1000μg/Lであり、75~900μg/Lであることが好ましく、100~600μg/Lであることが特に好ましい。乳入り飲料における3-メチル-1-ブタノールの含有量は、例えば、本実施例に記載の条件によって、測定することができる。
【0017】
・(D)2-ノナノン(CAS:821-55-6)
2-ノナノンは、必要に応じて2-ノナノンやこれを含む香料等を添加して濃度を調整することができる。本発明の飲料において、2-ノナノンの含有量は、75~1000μg/Lであり、100~900μg/Lであることが好ましく、200~800μg/Lであることが特に好ましい。乳入り飲料における2-ノナノンの含有量は、例えば、本実施例に記載の条件によって、測定することができる。
【0018】
・(E)2-ヘプタノン(CAS:110-43-0)
2-ヘプタノンは、必要に応じて2-ヘプタノンやこれを含む香料等を添加して含有量を調整することができる。本発明の飲料において、2-ヘプタノンの含有量は、300~1100μg/Lであり、350~900μg/Lであることが好ましく、400~900μg/Lであることが特に好ましい。乳入り飲料における2-ヘプタノンの含有量は、例えば、本実施例に記載の条件によって、測定することができる。
【0019】
・(F)5-メチル-2-フルアルデヒド(CAS:620-02-0)
5-メチル-2-フルアルデヒドは、焙煎、発酵などで生成され、コーヒー(コーヒーエキスなど)、紅茶、焼酎などに含まれる成分である。必要に応じてコーヒー抽出物、5-メチル-2-フルアルデヒドやこれを含む香料組成物等を添加して含有量を調整することができる。本発明の飲料において、5-メチル-2-フルアルデヒドの含有量は、25~90μg/Lであり、25~80μg/Lであることが好ましく、25~70μg/Lであることが特に好ましい。乳入り飲料における5-メチル-2-フルアルデヒドの含有量は、例えば、本実施例に記載の条件によって、測定することができる。
【0020】
・(G)コーヒー抽出物
本発明における飲料は、さらに、コーヒー抽出物を含有することが好ましい。本発明におけるコーヒー抽出物とは、コーヒー豆由来の成分を含有する液体、例えば、粉砕した焙煎豆を水や温水を用いて抽出した溶液(以下、抽出液ともいう)、又は、該溶液を濃縮したコーヒーエキスや該溶液を乾燥させたインスタントコーヒーを含む。
本発明において使用されるコーヒー抽出物の原料であるコーヒー豆は、アラビカ種でもロブスタ種でもよく、特に限定されない。例えば、当該生豆としては、メキシコ、グアテマラ、ブルーマウンテン、クリスタルマウンテン、コスタリカ、コロンビア、ベネズエラ、ブラジル・サントス、ハワイ・コナ、モカ、ケニア、キリマンジャロ、マンデリン、及びロブスタから選択される豆、又はこれらの混合豆が挙げられる。
また、本発明で用いられるコーヒー抽出物は、抽出液である場合には、コーヒー豆1~100g、より好ましくは20~80gに対して1Lの水で抽出されるのが好ましく、抽出時の水は、60~95℃であることが好ましい。また、当該コーヒー抽出液の抽出時間は30~120分間であることが好ましい。本発明のコーヒー抽出液の抽出方法は特に限定されず、例えば一般的なドリップ法や浸漬法、エスプレッソ法などで抽出されうる。
【0021】
ここで、本発明の乳入り飲料中のコーヒー抽出物由来の可溶性固形分(以下、「コーヒー固形分」とも呼ぶ)の含有量は、飲料全質量を基準として、好ましくは0.01~1.0質量%であり、より好ましくは0.05~0.5質量%であり、さらに好ましくは0.1~0.3質量%である。例えば、コーヒー固形分の含有量は、コーヒー抽出液のBrix(ブリックス)値と同義とすることもできる。また、コーヒー抽出物として、インスタントコーヒーを用いる場合には、コーヒー固形分の含有量は、インスタントコーヒーの含有量に対応する。また、コーヒー抽出物として、コーヒーエキスを用いる場合には、コーヒー固形分の含有量は、コーヒーエキスの濃度に基づいて算出することができる。
【0022】
・pH
本発明に係る乳入り飲料は、pHは特に限定されないが、例えば4.6~8.0であることが好ましく、5.0~7.0であることが特に好ましい。これは乳入り飲料に含まれるタンパク質等の安定性と、良好な風味の理由からである。
【0023】
・糖度
本発明に係る乳入り飲料の糖度は、ブリックス(Brix又はBxとも表記する)値と同義とする。すなわち、本発明において糖度は、20℃における糖用屈折計の示度とし、例えば、商品名「デジタル屈折計Rx-5000」(アタゴ社製)を使用して20℃で測定した固形分量とすることができる。当該糖度は、特に限定されないが、1~25°Bxであることが好ましく、2~12°Bxであることがより好ましく、4~9°Bxであることがさらに好ましい。
本発明に係る乳入り飲料の糖度は、公知の甘味料を使用することで上記の値に調整することができる。たとえば、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、果糖、乳糖、及び麦芽糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖等の糖類;キシリトール、D-ソルビトール等の低甘味度甘味料;タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、及びサッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料を単独で、又は適宜2種類以上を組み合わせて調整することが好ましく、ショ糖や果糖ぶどう糖液糖、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテームで調整することが乳入り飲料に求められる自然な甘みや爽やかな酸味といった嗜好性の観点から特に好ましい。また、糖分を含みうる果汁や野菜汁などを添加することで糖度を調整してもよい。
【0024】
・甘味度
また、嗜好性の評価としての乳入り飲料の甘味度は、4~10であることが好ましく、5~9であることが特に好ましい。当該甘味度が4未満であると、ミルク感の強化が感じられにくく、また、乳入り飲料としての嗜好性が付与されない恐れがある。一方、当該甘味度が10超過であると、飲みやすさが低下する恐れがある。本発明において、甘味度は、例えば後述する実施例に記載の方法で規定される。
本発明における甘味度も、上述の公知の甘味料や糖分を含みうる果汁や野菜汁を使用することで上記の値に調整することができる。
【0025】
本発明において、飲料の甘味度は、飲料の甘さの強さを示すパラメータであり、ショ糖の甘味度を1とした場合の相対値で表された飲料中に含まれる「各甘味料の甘味度」に基づき算出される。具体的には、以下の方法で特定される。
飲料中に含まれる各甘味料について水溶液を作製し、ショ糖1質量%水溶液と同等の甘さとなるような濃度Xを求める。そして、「1(質量%)/X(質量%)」を求め、この値を「各甘味料の甘味度」とする。飲料中に含まれる「各甘味料の甘味度」の合計値が「飲料の甘味度」である。
【0026】
・その他の添加成分
また、本発明の乳入り飲料に対して、風味等を損なわない範囲で、必要に応じて任意の酸性成分として、果汁、例えば、オレンジ、レモン、グレープフルーツ等の柑橘系の果汁や、ブドウ、モモ、リンゴ、バナナ等の果汁を添加してもよい。
【0027】
また、本発明に係る乳入り飲料において、さらに植物性ミルクを含有させてもよい。当該植物性ミルクは、豆乳、アーモンドミルク、カシューミルク、ココナッツミルク、ライスミルク等から選択されるが、例えば、平成30年3月29日農林水産省告示第683号に記載される豆乳、調製豆乳、又は豆乳飲料を含むことが好ましい。また、植物性ミルクは、液状体のほか、粉末体のものを用いてもよい。より具体的には、本発明に係る乳入り飲料は原料として、例えば豆乳粉末を混合したものであってもよい。
【0028】
また、本発明に係る乳入り飲料は、乳化状態を良好に保持する点において、乳化剤を含有することが好ましい。乳化剤としては、食品や飲料に用いられうるものであれば、特に制限無く使用できるが、例えば、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム、レシチン等が挙げられる。乳化剤は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用しても良い。
当該乳入り飲料への乳化剤の配合割合は、その種類等に応じて本発明の効果を損なわない範囲で適宜決定できる。該配合割合は、特に制限されないが、例えば、飲料の全質量を基準として、その下限は通常0.0001質量%であり、その上限は通常0.5質量%とすることができる。
本発明に用いる水は特に限定されず、例えば、イオン交換水を用いることができる。
【0029】
また、本発明に係る乳入り飲料は、原料(生乳など)を乳酸菌や酵母等を用いて発酵して得られる、液状又は糊状の発酵乳飲食品等を含むものであってもよい。
また、本発明に係る乳入り飲料は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、一般的に使用されうる、上述していない甘味料や香料、各種栄養成分、各種植物抽出物、着色料、希釈剤、酸化防止剤等の食品添加物を含有させてもよい。
【0030】
・製法
本発明に係る乳入り飲料は、乳原料、各香気成分やデキストリンを上述した含有量になるように各成分を配合する工程により得られる。また、上述した甘味料や香料、各種栄養成分、各種植物抽出物、着色料、希釈剤、酸化防止剤等の食品添加物を適宜混合してもよい。本発明の乳入り飲料においては、その製造工程において、適宜必要に応じて、均質化処理や殺菌処理を加えて行なうことができる。
均質化処理は、通常、ホモゲナイザーを用いて行うことができる。均質化条件は特に限定されず、常法に従うことができる。
殺菌処理の方法は特に制限されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌等の方法を採用することができる。
殺菌処理後の本発明の乳入り飲料を容器に充填する方法としては、例えば、飲料を容器にホットパック充填し、充填した容器を冷却する方法、又は容器充填に適した温度まで飲料を冷却して、予め洗浄殺菌した容器に無菌充填する方法により行うことができる。
【0031】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものでなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更させてもよい。
【実施例
【0032】
各成分の含有値を測定又は算出するための方法、及び官能評価方法については、以下の通りとした。
(1)香気成分(3-メチル-1-ブタノール、2-ノナノン、2-へプタノン、5-メチル-2-フルアルデヒド、シクロヘキサノール)の量(μg/L)の分析方法
分析対象であるサンプル飲料10mLを20ml容バイアルに入れ、内標を添加し密栓した。各バイアルを50℃で5分間振盪した後、SPME用ファイバー(DVB/CAR/PDMS,Stableflex 23Ga(Gray)50/30μm:SIGMA-ALDRICH社製)をバイアル中のヘッドスペースに露出させた。50℃で30分間、揮発性成分をファイバーに吸着させた後、注入口で5分間脱着させ、GC/MSにより分析を行った。検量線は標準添加法にて作成し、内標としてシクロヘキサノールを用いた。
【0033】
[GC/MSの分析条件]
GC:Agilent Technologies社製 7890A
MS:Agilent Technologies社製 5975C
カラム:AgilentTechologies社製 DB-WAX UI 30m×0.25mm、膜厚0.25μm
流量:0.8ml/min(圧力一定モード)
注入法:スプリットレス
キャリアガス:He
注入口温度:240℃、トランスファーライン:240℃
オーブン温度:40℃(5分)→5℃/分→240℃(0分)
MS条件:スキャンモード
定量イオン:3-メチル-1-ブタノール m/z70、
2-ノナノン m/z58、
2-へプタノン m/z58、
5-メチル-2-フルアルデヒド m/z110、
シクロヘキサノール(内標) m/z82
【0034】
(2)糖度(Bx°)
糖度測定は20℃のサンプルに対して、商品名「デジタル屈折計Rx-5000」(アタゴ社製)を用いて、測定を行った。
(3)pH
pHは、pHメーター計を用いて、測定を行った。
(4)乳固形分(質量%)
液状の乳を含む原材料に含まれる乳固形分(測定値)と、乾燥状態の乳原料(例えば脱脂粉乳、全粉乳)の質量とを合計した値とした。乳脂肪分についても同様に算出した。
(5)コーヒー固形分(質量%)
コーヒー固形分は、コーヒーエキスの濃度と使用量から算出した値とした。
(6)甘味度
甘味度は、飲料中に含まれる各原料の「甘味度」を算出し、合計した値とした。
(7)官能評価方法
官能評価は、実験1と実験4は7名、実験2と実験3-1と実験3-2は5名、実験3-3と3-4と3-5は6名の専門パネリストによって、25℃のサンプルに対し、各実験系の「対照」を基準点である「3.0」とした分量評定法を用いて行われた。評価項目は、ミルクのなめらかさ、ミルクの濃厚感、後味のすっきり感とし、それぞれ5段階評価し、その評点を平均化した。なお、各パネリストの評点にばらつきはあまりなかった。官能評価基準は、1点:ない、2点:ややない、3点:対照と同程度、4点:ややある、5点:あるとした。そして、ミルクのなめらかさと濃厚感のいずれかが3点を上回り、かつ、後味のすっきり感が3点を下回らなければ、ミルクのなめらかさや濃厚感を向上させつつ、後味のすっきり感を低下させない効果を有するものとして判断した。
【0035】
<実験1> デキストリン配合量の違いによる香味への影響を確認する。
≪実施例1~3、及び、比較例1~3≫
ベース液の原材料は、配合量が多い順に、牛乳、砂糖、脱脂粉乳、全粉乳、コーヒーエキス、加糖脱脂練乳、生クリーム、乳化剤、香料、重曹、食塩、アセスルファムカリウム、スクラロースであり、これらとイオン交換水(残部を構成する溶媒)を配合してベース液を調製した。また、調製したベース液は、糖度が7.4°Bx、pHが6.7、乳固形分が3.3質量%、乳脂肪分が0.8質量%、コーヒー固形分が0.1%、甘味度が7.4であった。また、ベース液の香気成分の分析結果は以下の表1の通りであった。
なお、表1の組成については、3-メチル-1-ブタノール、2-ノナノン、2-ヘプタノンは、ミルク香料と乳原料(主に牛乳、粉乳)に起因すると考えられ、5-メチル-2-フルアルデヒドはコーヒーエキス由来と考えられる。
【0036】
【表1】
【0037】
当該ベース液を比較例1(対照)のサンプルとし、実施例1~3は、当該ベース液のデキストリン含有量がそれぞれ0.2質量%、0.4質量%、及び、0.6質量%となるようにデキストリン(「パインデックス(登録商標)#2」マルトデキストリン(DE10~12)松谷化学工業社製)を添加したサンプルとした。そして、比較例2、及び、比較例3は、当該ベース液のデキストリン含有量がそれぞれ0.8質量%、及び、1.0質量%となるようにデキストリン(「パインデックス(登録商標)#2」マルトデキストリン(DE10~12)松谷化学工業社製)を添加したサンプルとした。
得られた各サンプルについて、比較例1のサンプルを対照として官能評価した。比較例1に対するデキストリン配合量と官能評価の関係について表2に結果を示す。
【0038】
【表2】
【0039】
実験1の結果から、本発明の香気成分の配合量とデキストリン配合量とを満たすことにより、ミルクのなめらかさや濃厚感を向上させつつ、後味のすっきり感を低下させない効果を有する飲料を提供できることが示された。ミルクのおいしさを際立たせるために香料と乳原料を調整し、コーヒー固形分を低めに設定することで、飲料の好ましい「コク」が感じられた。
【0040】
<実験2> 香気成分量の違いによる香味への影響を確認する。
29質量%の牛乳、3質量%の砂糖、0.02質量%の食塩、0.1質量%の乳化剤、0.1質量%の重曹、0.015質量%のアセスルファムカリウム、0.0006質量%のスクラロースを含むように、各原料をイオン交換水に溶解した溶液を作製した。当該溶液の糖度は7.0°Bxだった。その後、当該溶液にデキストリン含有量が0.4質量%となるようにデキストリン(「パインデックス(登録商標)#2」マルトデキストリン(DE10~12)松谷化学工業社製)を混合溶解して、ベース液を作製した。得られたベース液は、pHが6.7、乳固形分が3.4質量%、乳脂肪分が1.0質量%、甘味度が7.7であった。
【0041】
当該ベース液に、各香気成分を表3に記載する配合量で添加し、各実施例及び各比較例のサンプルを作製した。
得られた各サンプルについて、比較例4のサンプルを対照として官能評価した。各香気成分の配合量と官能評価の関係について表3に結果を示す。
【0042】
【表3】
【0043】
実験2の結果から、本発明の香気成分の配合量とデキストリン配合量とを満たすことにより、飲料中にコーヒー抽出物を含まない場合であっても、ミルクのなめらかさや濃厚感を向上させつつ、後味のすっきり感を低下させない効果を有する飲料を提供できることが示された。
【0044】
<実験3> 乳固形分量の違いによる香味への影響を確認する。
≪実験3-1≫
14.7質量%の牛乳、3.6質量%の砂糖、0.02質量%の食塩、0.1質量%の乳化剤、0.05質量%の重曹、0.015質量%のアセスルファムカリウム、0.0006質量%のスクラロースを含むように、各原料をイオン交換水に溶解した溶液を作製した。当該溶液の糖度は、5.6°Bxだった。本実験ではこの溶液をベース液とし、ベース液は、糖度が5.6°Bx、pHが6.9、乳固形分が1.7質量%、乳脂肪分が0.5質量%、甘味度が7.6であった。
当該ベース液に各香気成分を表4に示す量で配合させたサンプルを比較例10(対照)とし、実施例20~22は、デキストリン含有量がそれぞれ0.2質量%、0.4質量%、及び、0.6質量%となるように、比較例10のサンプルにデキストリン(「パインデックス(登録商標)#2」マルトデキストリン(DE10~12)松谷化学工業社製)を添加したサンプルとした。そして、比較例11、及び、比較例12は、比較例10のサンプルのデキストリン含有量がそれぞれ0.8質量%、及び、1.0質量%となるようにデキストリン(「パインデックス(登録商標)#2」マルトデキストリン(DE10~12)松谷化学工業社製)を添加したサンプルとした。
得られた各サンプルについて、比較例10のサンプルを対照として官能評価した。比較例10に対するデキストリン配合量と官能評価の関係について表4に結果を示す。
【0045】
【表4】
【0046】
≪実験3-2≫
46.5質量%の牛乳、2.1質量%の砂糖、0.02質量%の食塩、0.1質量%の乳化剤、0.05質量%の重曹、0.015質量%のアセスルファムカリウム、0.0006質量%のスクラロースを含むように、各原料をイオン交換水に溶解して、ベース液を調製した。調製したベース液は、糖度が8.0°Bx、pHが6.6、乳固形分が5.3質量%、乳脂肪分が1.5質量%、甘味度が7.7であった。
当該ベース液に各香気成分を表5に示す量で配合させたサンプルを比較例13(対照)とし、実施例23~25は、デキストリン含有量がそれぞれ0.2質量%、0.4質量%、及び、0.6質量%となるように、比較例13のサンプルにデキストリン(「パインデックス(登録商標)#2」マルトデキストリン(DE10~12)松谷化学工業社製)を添加したサンプルとした。そして、比較例14、及び、比較例15は、比較例13のサンプルのデキストリン含有量がそれぞれ0.8質量%、及び、1.0質量%となるようにデキストリン(「パインデックス(登録商標)#2」マルトデキストリン(DE10~12)松谷化学工業社製)を添加したサンプルとした。
得られた各サンプルについて、比較例13のサンプルを対照として官能評価した。比較例13に対するデキストリン配合量と官能評価の関係について表5に結果を示す。
【0047】
【表5】
【0048】
≪実験3-3≫
ベース液は、上記実験3-1で調製したものと同じものとした。このベース液にデキストリン含有量が0.4質量%となるようにデキストリン(「パインデックス(登録商標)#2」マルトデキストリン(DE10~12)松谷化学工業社製)を添加したサンプルを比較例16(対照)とした。
実施例26、及び、実施例27は、比較例16に各香気成分を表6に示す量で配合させたサンプルとした。
得られた各サンプルについて、比較例16のサンプルを対照として官能評価した。比較例16に対する各香気成分の配合量と官能評価の関係について表6に結果を示す。
【0049】
【表6】
【0050】
≪実験3-4≫
29.3質量%の牛乳、2.9質量%の砂糖、0.02質量%の食塩、0.1質量%の乳化剤、0.05質量%の重曹、0.015質量%のアセスルファムカリウム、0.0006質量%のスクラロースを含むように、各原料をイオン交換水に溶解して、ベース液を調製した。調製したベース液は、糖度が7.0°Bx、pHが6.7、乳固形分が3.4質量%、乳脂肪分が1.0質量%、甘味度が7.7であった。
このベース液にデキストリン含有量が0.4質量%となるようにデキストリン(「パインデックス(登録商標)#2」マルトデキストリン(DE10~12)松谷化学工業社製)を添加したサンプルを比較例17(対照)とした。
実施例28、及び、実施例29は、比較例17に各香気成分を表7に示す量で配合させたサンプルとした。
得られた各サンプルについて、比較例17のサンプルを対照として官能評価した。比較例17に対する各香気成分の配合量と官能評価の関係について表7に結果を示す。
【0051】
【表7】
【0052】
≪実験3-5≫
ベース液は、上記実験3-2で調製したものと同じものとした。このベース液にデキストリン含有量が0.4質量%となるようにデキストリン(「パインデックス(登録商標)#2」マルトデキストリン(DE10~12)松谷化学工業社製)を添加したサンプルを比較例18(対照)とした。
実施例30、及び、実施例31は、比較例18に各香気成分を表8に示す量で配合させたサンプルとした。
得られた各サンプルについて、比較例18のサンプルを対照として官能評価した。比較例18に対する各香気成分の配合量と官能評価の関係について表8に結果を示す。
【0053】
【表8】
【0054】
実験3の結果から、乳固形分量が1.7質量%と非常に低い場合であっても、本発明の香気成分の配合量とデキストリン配合量とを満たすことにより、同様にミルクのなめらかさや濃厚感を向上させつつ、後味のすっきり感を低下させない効果を有する飲料を提供できることが示された。
【0055】
<実験4> デキストリンの違いによる香味への影響を確認する。
29.3質量%の牛乳、2.9質量%の砂糖、0.02質量%の食塩、0.1質量%の乳化剤、0.05質量%の重曹、0.015質量%のアセスルファムカリウム、0.0006質量%のスクラロースを含むように、各原料をイオン交換水に溶解して、溶液を得た。この溶液は、糖度が7.0°Bxであった。この溶液に各香気成分を表9に示す配合量で配合させたサンプルをベース液とした。ベース液は、pHが6.7、乳固形分が3.4質量%、乳脂肪分が1.0質量%、甘味度が7.7であった。
【0056】
【表9】
【0057】
当該ベース液を比較例19(対照)とし、実施例32~35は、比較例19のサンプルに異なる種類のデキストリンを、それぞれ含有量が0.4質量%となるように添加したサンプルとした。
得られた各サンプルについて、比較例19のサンプルを対照として官能評価した。比較例19に対するデキストリンの種類と官能評価の関係について表10に結果を示す。
【0058】
【表10】
【0059】
実験4の結果から、デキストリンのDE値に左右されることなく、本発明の乳固形分量と香気成分の配合量とを満たすことにより、同様にミルクのなめらかさや濃厚感を向上させつつ、後味のすっきり感を低下させない効果を有する飲料を提供できることが示された。しかしながら、DE10~12のデキストリンを用いる場合に、特に好ましい効果が得られることが確認された。