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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】鞍乗型車両及びその車体フレーム構造
(51)【国際特許分類】
   B62K 11/04 20060101AFI20241108BHJP
   B62J 35/00 20060101ALI20241108BHJP
   B62J 37/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B62K11/04 B
B62J35/00 C
B62J37/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020162378
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022055028
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】柏原 健
(72)【発明者】
【氏名】田村 博志
(72)【発明者】
【氏名】諸冨 啓
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-045184(JP,U)
【文献】特開2007-137406(JP,A)
【文献】特開平01-229791(JP,A)
【文献】特開平09-076972(JP,A)
【文献】特開平07-309272(JP,A)
【文献】特開昭60-197477(JP,A)
【文献】特開2003-127954(JP,A)
【文献】国際公開第2013/179501(WO,A1)
【文献】特開2005-067507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 11/00 - 11/10
B62J 35/00 - 37/00
B62K 3/02 - 3/10
B62K 19/00 - 19/48
B62M 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
車体フレームと、
燃料タンクと、
前記燃料タンクから前記エンジンに燃料を供給する燃料ポンプと、を備える鞍乗型車両であって、
前記車体フレームは、ヘッドパイプと、
前記ヘッドパイプから後下方に延びる1本のメインフレームと、
前記メインフレームの後端部に連結され、車幅方向に延びるクロス部材と、
前記クロス部材から左右一対として後下方に延びるボディフレームと、
左右一対の前記ボディフレームのそれぞれに連結される左右一対のシートレールと、を備え、
前記クロス部材は、パイプによって形成されており、前記燃料ポンプよりも前方に配置され、
左右一対の前記ボディフレームは、前記燃料ポンプを上面視で車幅方向に挟んで配設され、かつ左右の前記ボディフレーム同士が離間した状態で前記クロス部材に接続される、鞍乗型車両。
【請求項2】
エンジンと、
車体フレームと、
燃料タンクと、
前記燃料タンクから前記エンジンに燃料を供給する燃料ポンプと、を備える鞍乗型車両であって、
前記車体フレームは、ヘッドパイプと、
前記ヘッドパイプから後下方に延びる1本のメインフレームと、
前記メインフレームの後端部に連結され、車幅方向に延びるクロス部材と、
前記クロス部材から左右一対として後下方に延びるボディフレームと、
左右一対の前記ボディフレームのそれぞれに連結される左右一対のシートレールと、を備え、
前記クロス部材は、前記燃料ポンプよりも前方に配置され、
左右一対の前記ボディフレームは、前記燃料ポンプを上面視で車幅方向に挟んで配設され、かつ前記クロス部材に接続され、
前記燃料ポンプの上部は、前記燃料タンク内に位置し、前記燃料ポンプの下部は、前記燃料タンクのフランジから下方に露出するようになっている、鞍乗型車両。
【請求項3】
前記燃料タンクは、平面視及び側面視において前記メインフレームと重なるように設けられている、請求項1又は2に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記燃料タンクは、底部において上方に凹む凹部を備えており、
車幅方向において、前記メインフレームと前記凹部の側壁との間には、所定の隙間が設けられている、請求項1~3のいずれか1つに記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記クロス部材と前記燃料タンクとの間には、緩衝材が設けられている、請求項4記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に及びその車体フレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドパイプから左右一対のメインフレームが延びる車体フレーム構造を有する自動二輪車の場合、フレーム周辺のスペースの自由度が低下するため、例えば、特許文献1に示されるように、ヘッドパイプから1本のメインフレームが延びる車体フレーム構造を有する自動二輪車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-067247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、メインフレームを1本とすることにより、メインフレームに支持され、メインフレームの上部に配置される燃料タンクの容量を大きくことができるが、燃料タンクからエンジンに燃料を供給する燃料ポンプを燃料タンクに取り付ける場合、メインフレームの存在により、燃料ポンプの配置の自由度が小さくなるという課題がある。
【0005】
そこで、本発明では、1本のメインフレームによって大容量の燃料タンクを設けながら、燃料タンクに取り付けられる燃料ポンプの配置位置を確保することができる、鞍乗型車両及びその車体フレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、エンジンと、
車体フレームと、
燃料タンクと、
前記燃料タンクから前記エンジンに燃料を供給する燃料ポンプと、を備える鞍乗型車両であって、
前記車体フレームは、ヘッドパイプと、
前記ヘッドパイプから後下方に延びる1本のメインフレームと、
前記メインフレームの後端部に連結され、車幅方向に延びるクロス部材と、
前記クロス部材から左右一対として後下方に延びるボディフレームと、
左右一対の前記ボディフレームのそれぞれに連結される左右一対のシートレールと、を備え、
前記クロス部材は、前記燃料ポンプよりも前方に配置され、
左右一対の前記ボディフレームは、前記燃料ポンプを上面視で車幅方向に挟んで配設され、かつ前記クロス部材に接続される。
【0007】
前記構成によれば、クロス部材を燃料ポンプよりも前方に配置し、左右一対のボディフレームを、燃料ポンプを上面視で車幅方向に挟んで配設し、かつクロス部材に接続するようにすることによって、燃料ポンプの配置位置を確保することができる。
【0008】
上記実施形態は、さらに、次のような構成を備えるのが好ましい。
【0009】
(1)前記エンジンを支持するエンジン支持ブラケットは、前記クロス部材に取り付けられている。
【0010】
(2)前記燃料ポンプは、前記燃料タンクの後部下面に形成されたフランジに取り付けられている。
【0011】
(3)前記燃料タンクは、平面視及び側面視において前記メインフレームと重なるように設けられている。
【0012】
(4)前記車体フレームは、左右一対の前記シートレールを連結する第1クロスフレームと、
左右一対の前記ボディフレームを連結する第2クロスフレームと、を備え、
リヤサスペンションユニットを支持するサスペンション支持ブラケットは、前記リヤサスペンションユニットの上端部を支持するように設けられ、
前記サスペンション支持ブラケットは、前記第1クロスフレームと前記第2クロスフレームとを連結するように設けられている。
【0013】
(5)前記構成(4)において、前記燃料ポンプは、前記第1クロスフレームの前方であって、前記第2クロスフレームの上方に位置している。
【0014】
(6)前記燃料タンクは、底部において上方に凹む凹部を備えており、
車幅方向において、前記メインフレームと前記凹部の側壁との間には、所定の隙間が設けられている。
【0015】
(7)前記構成(6)において、前記クロス部材と前記燃料タンクとの間には、緩衝材が設けられている。
【0016】
前記構成(1)によれば、エンジン支持ブラケットをメインフレームではなくクロス部材に取り付けることで、エンジンからの荷重が直接メインフレームに伝達されず、クロス部材によって車幅方向に分散させることができる。
【0017】
前記構成(2)によれば、燃料ポンプを燃料タンクの後部下面に取り付けることで、下方に位置する燃料ポンプへ、重力によって燃料が集約されるため、燃料タンク内の燃料の吸引を容易としながら、燃料ポンプをクロス部材の後方に配置できる。
【0018】
前記構成(3)によれば、燃料タンクとメインフレームとが平面視及び側面視でずれた位置にある場合と比べて容量の大きい燃料タンクを配置することができる。
【0019】
前記構成(4)によれば、リヤサスペンションユニットからの荷重がサスペンション支持ブラケットを介して第1クロスフレーム及び第2クロスフレームに伝達されるので、直接メインフレームに伝達されず、荷重を分散させることができる。
【0020】
前記構成(5)によれば、各フレーム間のスペースを有効活用してポンプを配置することができる。
【0021】
前記構成(6)によれば、凹部とメインフレームとの間にハーネスやブレーキ配管等の配管を配設できる。
【0022】
前記構成(7)によれば、緩衝材によって燃料タンクの振動を抑制することができる。
【0023】
本発明の他の実施形態は、鞍乗型車両の車体フレーム構造において、
ヘッドパイプと、
前記ヘッドパイプから後下方に延びる1本のメインフレームと、
前記メインフレームの後端部に連結され、車幅方向に延びるクロス部材と、
前記クロス部材から左右一対として後下方に延びるボディフレームと、
左右一対の前記ボディフレームのそれぞれに連結される左右一対のシートレールと、を備える。
【0024】
前記構成によれば、メインフレームの後端部に車幅方向に延びるクロス部材を設け、左右一対のボディフレームをクロス部材から後下方に延びるように設けることで、燃料タンクの燃料を吸入する燃料ポンプの配置位置を確保することができる。
【発明の効果】
【0025】
要するに、本発明によると、燃料タンクの配設の自由度を大きくできる、鞍乗型車両及びその車体フレーム構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る自動二輪車の全体側面図である。
図2】自動二輪車の車体フレームの斜視図である。
図3】車体フレームの側面図である。
図4】車体フレームの上面図である。
図5】車体フレームに燃料タンク、エンジン、リヤサスペンションユニットを含めた斜視図である。
図6】燃料タンクが車体フレームに支持されていることを示す斜視図である。
図7図6を下方から見た斜視図である。
図8図6を下方から見た図7とは別の角度の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両の一例として、自動二輪車を説明する。なお、説明の都合上、自動二輪車の進行方向を自動二輪車及び各部品の「前方」とし、自動二輪車に搭乗する乗員が前方を見たときの車幅方向における左右を、自動二輪車及び各部品の「左右」として、説明する。
【0028】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る自動二輪車10の全体側面図である。図1に示されるように、自動二輪車10は前輪11と後輪12とを備え、前輪11は略上下方向に延びるフロントフォーク13の下部にて回転自在に支持されている。フロントフォーク13は、ステアリングシャフト14に支持されている。ステアリングシャフト14は、ヘッドパイプ31によって回転自在に支持されている。ステアリングシャフト14の上端部に設けられたアッパーブラケット15には、左右に延びるバー型のステアリングハンドル16が取り付けられている。したがって、運転者がステアリングハンドル16を左右に揺動させることによって、ステアリングシャフト14を回転軸として、前輪11が操舵される。
【0029】
メインフレーム32は、ヘッドパイプ31から後下方へ延設され、メインフレーム32の後方に位置するボディフレーム34の後部には、スイングアーム17の前端部がピボットシャフト18で支持される。スイングアーム17の後端部には、後輪12が回転自在に支持される。
【0030】
メインフレーム32の上方であって、ステアリングハンドル16の後方には、燃料タンク41が配置され、燃料タンク41の後方には、運転者用のシート19が配置されている。燃料タンク41の下方には、エンジン51が配置されている。そして、エンジン51の動力がチェーン等を介して後輪12に伝達される。
【0031】
燃料タンク41の後部底面には、燃料タンク41内の燃料を吸引し、エンジン51に燃料を供給する燃料ポンプ42が取り付けられている。燃料ポンプ42は、燃料タンク41の底面から上方に進むにつれて前方に傾斜するよう設けられている。
【0032】
(車体フレーム構造)
図2は、自動二輪車10の車体フレーム30の斜視図であり、図3は車体フレーム30の側面図、図4は車体フレーム30の上面図である。図2図4に示されるように、車体フレーム30は、自動二輪車10の車体構造を形成するフレームを含み、ヘッドパイプ31と、ヘッドパイプ31から後下方に延びる1本のメインフレーム32と、メインフレーム32の後端部に連結され、車幅方向に延びるクロス部材33と、クロス部材33から左右一対として後下方に延びるボディフレーム34と、左右一対のボディフレーム34のそれぞれに連結される左右一対のシートレール35と、ヘッドパイプ31から略下方に延びる1本のダウンフレーム36と、ダウンフレーム36の下端部に接続された左右一対のロアフレーム37と、左右一対のボディフレーム34の後部から後上方に延びる左右一対のリヤフレーム38と、を備えている。
【0033】
メインフレーム32は、円形断面を有するパイプによって形成されており、ヘッドパイプ31からクロス部材33まで直線的に延びている。メインフレーム32は、自動二輪車10の車体の車幅方向中心を通過するようになっており、メインフレーム32の後端は、エンジン51の上面の後端よりも前方に位置している。
【0034】
クロス部材33は、円形断面を有するパイプによって形成されており、メインフレーム32に対して直交するように車幅方向に直線的に延びている。クロス部材33は、メインフレーム32から車幅方向に同じ長さだけ突出しており、クロス部材33の内径は、メインフレーム32の内径より小さくなっている。クロス部材33は、平面視において、エンジン51と重なるように配置され、一対のロアフレーム37の車幅方向寸法よりも小さい車幅方向寸法を有している。
【0035】
メインフレーム32の後端部は、クロス部材33の外形に合うように切り欠かれている。メインフレーム32は、クロス部材33の突出部が嵌合するように形成されている。
【0036】
ボディフレーム34は、円形断面を有するパイプによって形成されており、クロス部材33の後面から、メインフレーム32に対して対称となるように左右一対として後下方に延びている。ボディフレーム34の内径は、クロス部材33の内径より小さくなっている。左右一対のボディフレーム34は、車幅方向に延びる中間クロスフレーム341(第2クロスフレーム)によって連結されている。すなわち、ボディフレーム34では、クロス部材33及び中間クロスフレーム341によって、架橋構造が形成されている。
【0037】
側面視において、クロス部材33の近傍において、メインフレーム32の延びる延在方向とボディフレーム34の延びる延在方向とが角度を有している、すなわち、メインフレーム32とボディフレーム34とが側面視で屈曲するようクロス部材33に連結されている。
【0038】
ボディフレーム34の前端部は、それぞれ車幅方向に間隔をあけて設けられ、クロス部材33の外形に合うように切り欠かれている。ボディフレーム34は、ボディフレーム34の切り欠きにクロス部材33の突出部が嵌合するように形成されている。
【0039】
ボディフレーム34の車幅方向外側端は、クロス部材33の車幅方向外側端よりも内側に位置し、ボディフレーム34の車幅方向内側端は、メインフレーム32の車幅方向外側端よりも外側に位置する。ボディフレーム34は、クロス部材33から後方に進むにつれて車幅方向外側に広がるようになっている。
【0040】
クロス部材33とボディフレーム34との間には、ガセット(補強板)331が設けられている。補強板331は、厚み方向が上下方向であり、車幅方向に延びる板状に形成されている。補強板331の前端部はクロス部材33に溶接され、補強板331の車幅方向端部は、それぞれボディフレーム34の車幅方向内側面に溶接されている。
【0041】
シートレール35は、円形断面を有するパイプによって形成されており、シート19の下方に位置しており、左右一対のボディフレーム34から左右一対として略真っ直ぐ後方に延びている。左右一対のシートレール35は、前後方向に複数配置された車幅方向に延びるクロスフレームによって連結されており、左右一体としてシート19を支持するようになっている。すなわち、シートレール35では、クロス部材33及びクロスフレームによって、架橋構造が形成されている。
【0042】
クロスフレームは、前方に位置する前方フレーム(第1クロスフレーム)351、前方フレーム351の後方に位置する中央フレーム352、中央フレーム352の後方に位置する後方フレーム353を備えている。
【0043】
シートレール35は、ボディフレーム34から後方に進むにつれて車幅方向内側に傾斜しており、最前方に位置する第1クロスフレーム351から後方に進むにつれて車幅方向外側に傾斜している。より具体的には、左右のシートレール35の車幅方向間隔は、最前方に位置する前方フレーム351まで、後方に向かって減少するようになっており、前方フレーム351の後方から中央フレーム352近傍まで、後方に向かって増加し、中央フレーム352近傍から後方に向かって略一定となり、後端部で減少するようになっている。そして、シートレール35の車幅方向間隔は、第1クロスフレーム351付近で最も狭くなっている、また、シートレール35の内径は、ボディフレーム34の内径より小さくなっている。
【0044】
ダウンフレーム36は、円形断面を有するパイプによって形成されており、ヘッドパイプ31から略下方に直線的に延びている。ダウンフレーム36の内径は、メインフレーム32の内径と略等しくなっている。
【0045】
メインフレーム32とダウンフレーム36とは、前後方向に延びる補強フレーム321によって連結されている。メインフレーム32、ダウンフレーム36及び補強フレーム321によって、それらの連結部分が自動二輪車10の側面視で三角形状を形成するように設けられている。また、クロス部材33は、メインフレーム32と補強フレーム321との連結位置の近傍に位置している。
【0046】
ロアフレーム37は、円形断面を有するパイプによって形成されており、ダウンフレーム36の下端部から左右一対として後方に延びており、左右一対のボディフレーム34の下端部に連結されている。左右のロアフレーム37の車幅方向間隔は、上面視において、ダウンフレーム36との接続部からクロス部材33の近傍まで、後方に向かって増加するようになっており、クロス部材33の近傍からボディフレーム34との接続部まで、後方に向かって略一定となっている。ロアフレーム37の内径は、ボディフレーム34の内径と略等しくなっている。
【0047】
リヤフレーム38は、円形断面を有するパイプによって形成されており、ボディフレーム34の後部から左右一対として後上方に延びており、左右一対のシートレール35の後部に連結されている。リヤフレーム38の内径は、シートレール35の内径と略等しくなっている。
【0048】
(エンジン、燃料タンク、燃料ポンプ)
図5は、車体フレーム30に燃料タンク41、エンジン51、リヤサスペンションユニット60を含めた斜視図である。図5に示されるように、エンジン51を支持するエンジン支持ブラケット52は、クロス部材33に取り付けられている。より具体的には、エンジン支持ブラケット52は、クロス部材33の車幅方向中央部に1個として取り付けられており、エンジン51のシリンダヘッドカバー51aの後端部を車幅方向外方から挟むように支持している。エンジン支持ブラケット52は、シリンダヘッドカバー51aの後端部を挟むように、車幅方向に間隔を有する左右一対の挟持板を備えている。
【0049】
図6は、燃料タンク41が車体フレーム30に支持されていることを示す斜視図であり、図7は、図6を下方から見た斜視図であり、図8は、図6を下方から見た図7とは別の角度の斜視図である。図6図8に示されるように、燃料タンク41は、メインフレーム32を上方から囲むように設けられており、メインフレーム32に支持されている。燃料タンク41は、平面視及び側面視においてメインフレーム32と重なるように設けられている。また、シートレール35に載置されている面が、燃料タンク41の下端面となっている。
【0050】
燃料タンク41は、底部において上方に凹む凹部41aを備えており、車幅方向において、メインフレーム32と凹部41aの側壁との間には、所定の隙間D1が設けられている。そして、隙間D1を利用して、凹部41aとメインフレーム32との間に電源供給等に用いられるハーネス71やブレーキ配管72等の配管が配設されている。
【0051】
クロス部材33の車幅方向寸法は、凹部41aのメインフレーム32が嵌まる部分の車幅方向寸法と略同じとなっており、凹部41aの車幅方向寸法は、クロス部材33の前端部まで一定となっており、クロス部材33よりも後方に進むにつれて増加するようになっている。
【0052】
また、燃料タンク41とクロス部材33との間には、燃料タンク41からの振動がクロス部材33へ伝達することを抑制する緩衝材73が設けられている。
【0053】
燃料ポンプ42は、燃料タンク41の後部底面に形成されたフランジ41bに取り付けられており、燃料ポンプ42の上部は燃料タンク41内に位置し、燃料ポンプ42の下部は、燃料タンク41のフランジ41bから下方に露出するようになっている。燃料ポンプ42は、上方に向かって前方に傾斜するようフランジ41bに取り付けられている。フランジ41bは、ボディフレーム34とシートレール35との連結部近傍に配置されている。フランジ41bは多角形状に形成されている。車体フレーム30に関して、クロス部材33は、第1クロスフレーム351と略同じ車幅方向長さを有しており、上面視において、クロス部材33、第1クロスフレーム351、ボディフレーム34、シートレール35で区画されており、多角形状、より具体的には6角形状に形成されている。そして、フランジ41bは、フランジ41bの車幅方向外側端が、ボディフレーム34とシートレール35との連結位置に近接した向きとなるよう配置される。
【0054】
燃料ポンプ42は、自動二輪車10の車幅方向中央部に設けられ、前方フレーム(第1クロスフレーム)351の前方であって、中間クロスフレーム341(第2クロスフレーム)の上方に位置している。また、上面視において、燃料ポンプ42は、クロス部材33、ボディフレーム34、シートレール35及び前方フレーム351によって囲まれている。燃料ポンプ42は、ボディフレーム34に沿うように傾斜して延びている。そして、クロス部材33、前方フレーム351、及びそれらの間に位置するボディフレーム34及びシートレール35は、燃料タンク41の底面に形成された凹部41a内に位置するようになっている。また、上面視において、クロス部材33の車幅方向長さは、燃料ポンプ42の車幅方向長さより長くなっている。
【0055】
(リヤサスペンションユニット)
後輪12からの振動を抑制するリヤサスペンションユニット60は、車体フレーム30に支持され衝撃を吸収するショックアブソーバ61と、車体フレーム30に支持され、ショックアブソーバ61及び後輪12に連結されて上下に変位可能なスイングアーム17と、を備えている。リヤサスペンションユニット60を支持するサスペンション支持ブラケット62は、ショックアブソーバ61の上端部を支持するように設けられ、サスペンション支持ブラケット62は、前方フレーム(第1クロスフレーム)351と中間クロスフレーム(第2クロスフレーム)341とを連結している。
【0056】
前記構成の自動二輪車10によれば、次のような効果を発揮できる。
【0057】
(1)メインフレーム32を1本とすることによって、2本の場合と比べて燃料タンク41のスペースを広く確保することができ、燃料タンク41の容量を大きくすることができる。
【0058】
(2)メインフレーム32の後端部に車幅方向に延びるクロス部材33を設け、左右一対のボディフレーム34をクロス部材33から後下方に延びるように設けることで、燃料タンク41の燃料を吸入する燃料ポンプ42の配置位置を確保することができる。
【0059】
(3)1本のメインフレーム32と左右一対のボディフレーム34とを車幅方向に延びるクロス部材33を介して連結することにより、車体フレーム30の回転方向におけるねじりに対する剛性を向上させることができる。
【0060】
(4)エンジン支持ブラケット52をメインフレーム32ではなくクロス部材33に取り付けることで、エンジン51からの荷重が直接メインフレーム32に伝達されず、クロス部材33によって車幅方向に分散させることができる。
【0061】
(5)燃料ポンプ42を燃料タンク41の後部下面に取り付けることで、下方に位置する燃料ポンプ42へ、重力によって燃料が集約されるため、燃料タンク41内の燃料の吸引を容易としながら、燃料ポンプ42をクロス部材33の後方に配置できる。
【0062】
(6)燃料タンク41は、平面視及び側面視においてメインフレーム32と重なるように設けられているので、燃料タンク41とメインフレーム32とが平面視及び側面視でずれた位置にある場合と比べて容量の大きい燃料タンク41を配置することができる。
【0063】
(7)リヤサスペンションユニット60を支持するサスペンション支持ブラケット62は、リヤサスペンションユニット60の上端部を支持するように設けられ、サスペンション支持ブラケット62は、前方フレーム(第1クロスフレーム)351と中間クロスフレーム(第2クロスフレーム)341とを連結するように設けられている。その結果、リヤサスペンションユニット60からの荷重がサスペンション支持ブラケット62を介して前方フレーム(第1クロスフレーム)351及び中間クロスフレーム(第2クロスフレーム)341に伝達されるので、直接メインフレーム32に伝達されず、荷重を分散させることができる。
【0064】
(8)燃料ポンプ42は、前方フレーム(第1クロスフレーム)351の前方であって、中間クロスフレーム(第2クロスフレーム)341の上方に位置しているので、各フレーム間のスペースを有効活用して燃料ポンプ42を配置することができる。
【0065】
(9)車幅方向において、メインフレーム32と凹部41aの側壁との間には、所定の隙間D1が設けられているので、凹部41aとメインフレーム32との間にハーネス71やブレーキ配管72等の配管を配設できる。
【0066】
(10)クロス部材33と燃料タンク41との間には、緩衝材73が設けられているので、緩衝材73によって燃料タンク41の振動を抑制することができる。
【0067】
(11)ボディフレーム34では、クロス部材33及び中間クロスフレーム341によって、架橋構造が形成されているので、車体フレーム30のねじりに対する剛性を向上させることができる。
【0068】
(12)シートレール35では、クロス部材33及び前方フレーム(第1クロスフレーム)351、中央フレーム352、後方フレーム353によって、架橋構造が形成されているので、車体フレーム30のねじりに対する剛性を向上させることができる。
【0069】
(13)上面視において、燃料ポンプ42よりもクロス部材33の車幅方向長さが長くなるように構成されているので、燃料ポンプ42とボディフレーム34との干渉を防止できる。
【0070】
(14)クロス部材33、前方フレーム(第1クロスフレーム)351、及びそれらの間に位置するボディフレーム34及びシートレール35は、燃料タンク41の底面に形成された凹部41a内に位置するようになっているので、燃料タンク41の底面の凹部41aの空間に車体フレーム30の一部を有効に配置することができる。
【0071】
(15)側面視において、クロス部材33の近傍において、メインフレーム32の延びる延在方向とボディフレーム34の延びる延在方向とが角度を有している、すなわち、メインフレーム32とボディフレーム34とが側面視で屈曲するようクロス部材33に連結されている。その結果、メインフレーム32とボディフレーム34とが側面視で平行である場合と比べ、燃料タンク41の容量を増加させることができる。
【0072】
(16)シートレール35の車幅方向間隔が、第1クロスフレーム351付近で狭くなっている、すなわち、運転者の脚部分においてシートレール35の幅が狭くなっているので、自動二輪車10の乗り心地を向上させることができる。
【0073】
(17)メインフレーム32は、クロス部材33の突出部が嵌合するように形成されているので、メインフレーム32とクロス部材33とを突き合わせで溶接を行うことが容易である。
【0074】
(18)クロス部材33は、平面視において、一対のロアフレーム37の車幅方向寸法よりも小さい車幅方向寸法を有しているので、燃料タンク41の容量がクロス部材33によって小さくなることを抑制できる。
【0075】
(19)ボディフレーム34の車幅方向内側端は、メインフレーム32の車幅方向外側端よりも外側に位置するので、メインフレーム32にボディフレーム34が連結される場合に比べて、メインフレーム32の後端部近傍で広い空間を確保することが容易である。
【0076】
(20)ボディフレーム34は、クロス部材33から後方に進むにつれて車幅方向外側に広がるようになっているので、クロス部材33が大型化することを抑制できる。
【0077】
(21)メインフレーム32、ダウンフレーム36及び補強フレーム321によって、それらの連結部分が自動二輪車10の側面視で三角形状を形成するように設けられているので、車体フレーム30の支持剛性を向上させることができる。
【0078】
(22)クロス部材33は、メインフレーム32と補強フレーム321との連結位置の近傍に位置しているので、クロス部材33に伝達された荷重を補強フレーム321によって分散させることができる。
【0079】
上記実施形態では、自動二輪車10を例として説明しているが、本発明は、自動二輪車に限定されず、自動二輪車以外も含む鞍乗型車両にも適用可能である。なお、本発明は、自動二輪車のうち、モトクロス車両、不整地用のダートタイヤを装着する車両、保安部品が装着されない車両に特に好適に用いられる。
【0080】
特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、各種変形及び変更を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明では、燃料タンクの配設の自由度を大きくできる、鞍乗型車両及びその車体フレーム構造を提供できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0082】
10 自動二輪車
11 前輪 12 後輪 13 フロントフォーク 14 ステアリングシャフト
15 アッパーブラケット 16 ステアリングハンドル 17 スイングアーム
18 ピボットシャフト 19 シート
30 車体フレーム
31 ヘッドパイプ 32 メインフレーム 321 補強フレーム
33 クロス部材 331 補強板
34 ボディフレーム 35 シートレール 36 ダウンフレーム
37 ロアフレーム
41 燃料タンク
42 燃料ポンプ
51 エンジン 52 エンジン支持ブラケット
60 リヤサスペンションユニット
61 ショックアブソーバ 62 サスペンション支持ブラケット
71 ハーネス 72 ブレーキ配管 73 緩衝材
図1
図2
図3
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図8