(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】便座ユニット、トイレおよび簡易トイレ
(51)【国際特許分類】
A47K 13/00 20060101AFI20241108BHJP
A47K 13/30 20060101ALI20241108BHJP
A47K 13/12 20060101ALI20241108BHJP
A47K 11/04 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A47K13/00
A47K13/30 A
A47K13/12
A47K11/04
(21)【出願番号】P 2020176785
(22)【出願日】2020-10-21
【審査請求日】2023-05-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】川村 満夫
(72)【発明者】
【氏名】青山 智行
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0104228(KR,A)
【文献】特開平10-276934(JP,A)
【文献】特開2016-059559(JP,A)
【文献】特開2013-094624(JP,A)
【文献】特開2009-284988(JP,A)
【文献】特開2006-037405(JP,A)
【文献】特開2013-022105(JP,A)
【文献】特開2015-012927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 11/04
13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の上プレートと、樹脂製の下プレートとを備えた便座ユニットであって、
前記上プレートは、
環状の上面部と、
前記上面部の内側の縁に沿って下方に延びた内側の上側壁部と、
前記上面部の外側の縁に沿って下方に延びた外側の上側壁部と
を備え、
前記下プレートは、
前記上プレートの上面部の下面に対して間隔を空けて対向した、環状の底面部と、
前記内側の上側壁部よりも前記上プレートの内部側において、前記底面部の内側の周縁部に沿って立ち上がり、前記上プレートの前記内側の上側壁部の裏側に嵌まる、内側の下縁部と、
前記外側の上側壁部よりも前記上プレートの内部側において、前記底面部の外側の周縁部に沿って立ち上がり、前記上プレートの前記外側の上側壁部の裏側に嵌まる、外側の下縁部と、
前記下プレートの後部から後方に延びたアーム部と、
前記アーム部に設けられた回動支持部と
を備え
、
前記上プレートの外側の上側壁部は、前記下プレートの外縁よりも下方に延びており、
前記上プレートの内側の上側壁部は、前記下プレートの底面部の底面と同じ高さまで下方に延びている、
便座ユニット。
【請求項2】
前記上プレートの前記内側の上側壁部の裏側と、前記下プレートの内側の下縁部、および、前記上プレートの前記外側の上側壁部の裏側と、前記下プレートの外側の下縁部は、それぞれスナップフィット構造を有する、
請求項1に記載された便座ユニット。
【請求項3】
前記下プレートの上面には、上方に突出した柱が設けられており、
当該柱の高さは、前記上プレートの上面部に届いていないが、前記上プレートの上面部が弾性変形によって下方に押し下げられた際に当接するように設定されている、請求項1
または2に記載された便座ユニット。
【請求項4】
前記柱の上端部は、前記上プレートの上面部に対して面で当たるように、前記上プレートの上面部に対向した面を有している、請求項
3に記載された便座ユニット。
【請求項5】
前記柱の下端部は、前記下プレートの底面部の他の部位よりも剛性が高い、請求項
3または
4に記載された便座ユニット。
【請求項6】
前記柱の下端部の周りにリブが設けられている、請求項
3から
5までの何れか一項に記載された便座ユニット。
【請求項7】
前記上プレートの裏面に電気回路が取り付けられている、請求項1から
6までの何れか一項に記載された便座ユニット。
【請求項8】
前記電気回路は、ヒーターシートと着座センサーと温度センサーとマイコンのうち少なくとも一つを含む、請求項
7に記載された便座ユニット。
【請求項9】
前記上プレートの後部は、前記下プレートのアーム部の基端部の上面を覆っており、前記上プレートの後部の上縁は、側方に向けて低くなった斜面を有する、請求項1から
8までの何れか一項に記載された便座ユニット。
【請求項10】
前記アーム部は、前記下プレートの後部の両端を除く中間部に設けられており、前記上プレートの後部の上縁は、中央部から両側に向けてそれぞれ低くなった斜面を有する、請求項
9に記載された便座ユニット。
【請求項11】
請求項1から
10までの何れか一項に記載された便座ユニットと、
前記便座ユニットを取り付ける取付部と
を備えた、トイレ。
【請求項12】
請求項1から
10までの何れか一項に記載された便座ユニットと、
前記便座ユニットを取り付ける取付部を有する樹脂製の枠体と
を備えた、簡易トイレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座ユニット、トイレおよび簡易トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2015-12927号公報には、簡易トイレ(ポータブルトイレとも称される)に関する発明が開示されている。同公報で開示された簡易トイレでは、バケツと、バケツが配置されるバケツ収容部を備えた樹脂製の枠体と、枠体の上に配置される便座とを備えている。便座は、一枚の板状の樹脂成形品で構成されている。
【0003】
特開平9-70375号公報には、簡易トイレ用ではないが、便座ユニットに関する発明が開示されている。ここで開示される便座ユニットは、便座表面板と便座裏板との一対で形成されている。そして、便座表面板と便座裏板のいずれか一方の内周部および外周部に単条の凸状リブを設け、かつ他方の内周部および外周部に凸状リブに嵌合する凹状溝を設けるとともに、この溝にシール材を装着することが開示されている。便座表面板と便座裏板とが嵌め合わされることによって構成される水密性箱体空間内にヒータユニットを収納することが開示されている。ヒータユニットは、便座表面板の内側面に沿って取り付けられている。便座のヒンジは、明記されていないが、便座表面板の後部側面から側方に突出した軸が設けられている。
【0004】
特開2013-94624号公報には、簡易トイレ用ではないが、便座に関する発明が開示されている。ここで開示された便座は、上面に着座面を有する略環状の上部便座ケーシングと、略環状の下部便座ケーシングとを備えている。上部便座ケーシングと下部便座ケーシングとは、相互の内周縁および外周縁で接合され、内部に環状の空洞部が形成されている。上部便座ケーシングと下部便座ケーシングとで囲まれた空間には、ヒーターと断熱材が収容されている。ヒーターは、樹脂材料の絶縁被覆を備えたコードヒータが均熱板に蛇行させて配設されたものである。断熱材は、樹脂材料の発泡体で形成されている。断熱材の上面は、均熱板のコードヒータが配設されていない面に対応する位置に、コードヒータの直径よりも大きい高さの複数の突起を備えている。上部便座ケーシングの着座面の下面には、ヒーターが貼着されている。ヒーターの下方の空洞部には、断熱材が突起を均熱板に当接させて設置されている。そして、断熱材の上面とコードヒータとの間に間隙が確保されることが特徴とされている。便座のヒンジとして、両側後方に斜め上方に突出した支持部に枢支軸が設けられ、本体に対して回動自在に支持されている。かかる支持部は、上部便座ケーシングと下部便座ケーシングとで構成されている。
【0005】
特開2016-59559号公報には、簡易トイレ用ではないが、便座に関する発明が開示されている。ここで開示された便座は、上部便座ケーシングと、下部便座ケーシングとを備えている。上部便座ケーシングは、アルミニウム板をプレス加工することによって形成されている。上部便座ケーシングの表面および裏面には絶縁性と耐熱性を有するポリエステル粉体塗装膜が形成されている。ピンホールの生じにくい粉体塗装を採用することで、絶縁性能が向上する、とされている。また、下部便座ケーシングはABS等の樹脂材料を使用した成型品である。上部便座ケーシングと、下部便座ケーシングとの間には、ヒーターと断熱材が収容されている。ヒーターは、上部便座ケーシングの内面のほぼ全面に粘着剤を介して粘着固定されている。断熱材は、下部便座ケーシングの上に配置されている。断熱材の上面の複数個所には、上方に突出した略円柱状の突起が一体に成型されている。ここで開示される便座ユニットによれば、ヒーターの熱が無駄に断熱材に伝達されることが抑制される、とされている。また、使用者が着座したときに、着座面が変形することにより、着座時に発生する衝撃を緩衝することができる、とされている。同公報では、上部便座ケーシングは、弾性を備えた金属材料であり、樹脂材料からなる下部便座ケーシングの両側後方に、斜め上方に突出した腕部が設けられている。
【0006】
特開2006-94997号公報には、既設のトイレに取り付けられる便器用椅子について開示されている。便座ユニットは、このような便器用椅子にも適用されうる。なお、同公報では、便座および便蓋の蝶着構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-12927号公報
【文献】特開平9-70375号公報
【文献】特開2013-94624号公報
【文献】特開2016-59559号公報
【文献】特開2006-94997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、簡易トイレは、高齢者などの介護用のトイレとして、ベッドサイドに設置されることが多い。簡易トイレは、便座は、傷つき難いこと、汚れにくいこと、がたつかない程度の所要の剛性および適度な可撓性を有することなどが求められる。他方で、簡易トイレは、仮設で設けられるトイレであるため、安価な構成であることが望ましい。さらに、温熱ヒーターを設けたいというニーズもある。ここでは、このようなニーズに合う便座ユニットの新規構成を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここで開示される便座ユニットは、樹脂製の上プレートと、樹脂製の下プレートとを備えている。上プレートは、上面部と、上面部の周りに設けられた上側壁部とを有している。下プレートは、上プレートの上面部の下面に対して間隔を空けて対向した底面部と、底面部の周縁部に設けられ、上プレートの上側壁部の下縁が嵌め合わされた下縁部と、下プレートの後部から後方に延びたアーム部と、アーム部に設けられた回動支持部とを備えている。
【0010】
かかる構成によれば、便座ユニットは、アーム部の基端に所要の剛性を確保しつつ上プレート11の剛性を低く抑えやすい。このため、使用者が座った際の上プレートの弾性変形を許容しつつ、下プレートで上プレートを支える構造を取りやすい。
【0011】
好ましい一形態として、上プレートの上面部の裏面にリブが設けられていないとよい。この場合、リブがないので上プレートの上面部が適度に弾性変形しやすくなる。
【0012】
また、下プレートの上面には、上方に突出した柱が設けられていてもよい。この場合、柱の高さは、上プレートの上面部に届いていないが、上プレートの上面部が弾性変形によって下方に押し下げられた際に当接するように設定されていてもよい。
【0013】
柱の上端部は、上プレートの上面部に対して面で当たるように、上プレートの上面部に対向した面を有していてもよい。柱の下端部は、下プレートの底面部の他の部位よりも剛性が高くてもよい。柱の下端部の周囲は、下プレートの底面部の他の部位よりも高さ方向の肉厚が厚くてもよい。柱の下端部の周りにリブが設けられていてもよい。
【0014】
上プレートの裏面には、電気回路が取り付けられていてもよい。この場合、上プレートの裏面が下プレートで囲われており、上プレートの裏面に取り付けられた電気回路が濡れにくい。電気回路は、ヒーターシートと着座センサーと温度センサーとマイコンのうち少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0015】
上プレートの後部は、下プレートのアーム部の基端部の上面を覆っていてもよい。この場合、上プレートの後部の上縁は、側方に向けて低くなった斜面を有していてもよい。また、アーム部は、下プレートの後部の両端を除く中間部に設けられており、上プレートの後部の上縁は、中央部から両側に向けてそれぞれ低くなった斜面を有していてもよい。
【0016】
ここで開示されるトイレは、上述した何れか1つの便座ユニットと、便座ユニットを取り付ける取付部とを備えている。トイレは、例えば、便座ユニットと、便座ユニットを取り付ける取付部を有する樹脂製の枠体とを備えた、簡易トイレとして構成されうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】
図2は、便座ユニット10の使用状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、便座ユニット10の使用状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、便座ユニット10の使用状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、便座ユニット10を分解した分解斜視図である。
【
図8】
図8は、便座ユニット10のVIII-VIII断面図である。
【
図9】
図9は、便座ユニット10のIX-IX断面図である。
【
図11】
図11は、便座ユニット10のXI-XI断面図である。
【
図12】
図12は、柱54が設けられた部位の断面を示す断面図である。
【
図13】
図13は、便座ユニット10の前部中央の断面図である。
【
図15】
図15は、アーム部55の他の形態を示す斜視図である。
【
図16】
図16は、上プレート11を模式的に示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、ここで開示される便座ユニットの一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、ここで説明する実施形態および実施例は、本願発明の好適な一形態を例示するものであるが、特段の言及がない限りにおいて、本願発明を限定しない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜に省略または簡略化する。上、下、左、右、前、後の向きは、図中、U、D、L、R、F、Rrの矢印でそれぞれ表されている。
【0019】
《便座ユニット10》
図1は、便座ユニット10の平面図である。
図2から
図4は、便座ユニット10の使用状態を示す斜視図である。便座ユニット10は、
図4に示されているように、樹脂製の簡易トイレ1に用いられうる。簡易トイレ1は、便座ユニット10が取り付けられる取付部を有する樹脂製の枠体2を備えているとよい。
図4に示された形態では、枠体2には、汚物が収容されるバケツ3が設置されるバケツ収容部2aを有している。バケツ収容部2aに収容されたバケツ3には蓋3aが取り付けられうる。便座ユニット10は、かかるバケツ収容部2aの上に被さるように設けられる。ここでは、
図4に示されているように、トイレに座った使用者の目線で前後左右が定められており、トイレの正面側が前、背もたれが設けられた側が後である。便座ユニット10においても同様に前後左右が定められている。
【0020】
便座ユニット10は、さらにカバー4が取り付けられる。カバー4は、この実施形態では、ヒンジ4aを介して上方に開かれるとともに、折り曲げられる構造を有している。便座ユニット10は、
図2および
図3に示されているように、枠体2に取り付けられる支持部材2bに取り付けられる。便座ユニット10の後部には、ヒンジ21が設けられている。支持部材2bには、ヒンジ21を支持するための支持部2b1が設けられている。
図4では、便座ユニット10が取り付けられる簡易トイレ1の一形態が示されているに過ぎない。便座ユニット10の用途は、特に言及されない限りにおいて、このような簡易トイレ1に限定されない。
【0021】
この実施形態では、便座ユニット10は、略環状の部材である。より具体的には、この実施形態では、便座ユニット10の開口10aに沿った内縁形状(開口形状)の前と後は、それぞれ円弧である。ここでは、内縁形状(開口形状)の後側の円弧部分10cの曲率は、前側の円弧部分10bよりも大きい。前側の略円弧部分10bと後側の略円弧部分10cとの間、開口形状の両側部10d,10eは、前後の略円弧の接線に沿った直線である。便座ユニット10の外形は、内縁形状(開口形状)を囲う緩やかな曲線10fで形成されている。ただし、便座ユニット10の後部の幅方向の中央部10gは、略直線で形成されている。この実施形態では、便座ユニット10の後部の幅方向の中央部にヒンジが設けられている。なお、便座ユニット10の形状は、特に言及されない限りにおいて、かかる形状に限定されない。例えば、便座ユニット10の形状は、便座ユニット10の前部で便座ユニット10が途切れた、略U型でもよい。また、便座の開口は、前後に長いO型やオーバル形状など、他の形状でもよい。
【0022】
図5は、便座ユニット10を分解した分解斜視図である。便座ユニット10は、
図5に示されているように、上プレート11と下プレート12とを備えている。
図6は、上プレート11の底面図である。
図7は、下プレート12の平面図である。ここで提案された便座ユニット10は、
図1および
図2に示されているように、樹脂製の上プレート11と、樹脂製の下プレート12とを備えている。上プレート11は、便座ユニット10の上面を構成する部材である。下プレート12は、便座ユニット10の下面を構成する部材である。
【0023】
〈上プレート11〉
上プレート11は、
図1および
図2に示されているように、上面部31と、上側壁部32,33とを有している。上面部31は、上述した便座ユニット10の形状に応じた略環状の形状を有している。上側壁部32,33は、上面部31の縁に沿って設けられている。この実施形態では、上面部31は、略環状を有している。上側壁部32は、略環状の上面部31の内側の縁に沿って設けられている。上側壁部33は、外側の縁に沿って設けられている。内側の縁に沿った上側壁部32は、上面部31の縁から滑らかな曲面で徐々に下降している。外側の縁に沿った上側壁部33は、略垂直な面を有している。上面部31と上側壁部33との境界は、それぞれ上面部31から下方に向けて連続した曲面34で構成されている。
【0024】
上面部31の内側面31a(裏面)には、
図6に示されているように、リブのような突起は設けられていない内側面31a(裏面)は、概ね滑らかな平面で形成されている。この実施形態では、下プレート12には、上プレート11の上面部31を支持する柱54が設けられている。上面部31の内側面(裏面)には、下プレート12に設けられた柱54の上方に対向する位置に、柱54が当たる凹み31bが設けられている。上面部31の内側面31a(裏面)には、上面部31のうち前部および後部を除く部位の裏面にリブとなる突起はない。このため、上面部31は、使用者が座った際に掛かる荷重に応じて適度に弾性変形しうる。
【0025】
図6に示されているように、上プレート11の裏側には、具体的には、上プレート11の内外の縁に沿った上側壁部32,33の裏側には、段差32a,33aと、環状の突起32b,33bが周方向に複数形成されている。段差32a,33aは、下プレート12に設けられる爪片52a,53aを受ける部位である。環状の突起32b,33bは、段差32a,33aの近傍に適宜に設けられている。
【0026】
〈下プレート12〉
下プレート12は、
図5および
図7に示されているように、底面部51と、下縁部52,53と、柱54と、アーム部55と、回動支持部56とを備えている。
【0027】
〈底面部51〉
底面部51は、便座ユニット10として、下プレート12に上プレート11が組み合わされた際に、上プレート11の上面部31の内側面31a(裏面)に対して間隔を空けて対向する部位である。この実施形態では、底面部51は、便座ユニット10の平面形状に応じた形状を有する略環状のプレート部材である。
【0028】
〈下縁部52、53〉
下縁部52は、下プレート12の内側の縁に沿っている。下縁部53は、下プレート12の外側の縁に沿っている。下縁部52,53は、底面部51の周縁部に設けられ、上プレート11の上側壁部32の下縁が嵌め合わされる。この実施形態では、下縁部52,53は、それぞれ底面部51の周縁において、立ち上がっている。下縁部52,53には、それぞれ先端に爪片52a,53aと、突起52b,53bが設けられている。爪片52a,53aが設けられた位置は、上プレート11に段差32aが設けられた位置に合っている。突起52b,53bが設けられた位置は、上プレート11に環状の突起32b,33bが設けられた位置に合っている。
【0029】
図8は、便座ユニット10のVIII-VIII断面図である。
図8では、便座ユニット10の内側の縁に設けられた段差32aと爪片52aが示されている。
図9は、便座ユニット10のIX-IX断面図である。
図9では、便座ユニット10の内側の縁に設けられた環状の突起32bと突起52bが示されている。
図10は、便座ユニット10のX-X断面図である。
図10では、便座ユニット10の外側の縁に設けられた段差33aと爪片53aが示されている。
図11は、便座ユニット10のXI-XI断面図である。
図11では、便座ユニット10の外側の縁に設けられた環状の突起33bと突起53bとが示されている。
【0030】
図8および
図9に示されているように、下プレート12の内側の下縁部52は、上プレート11の内側の縁に沿った上側壁部32の内側に収められる。下プレート12の外側の下縁部53は、上プレート11の外側の縁に沿った上側壁部33の内側に収められる。また、上プレート11の前端部には、手掛け部39が設けられている。手掛け部39は、下プレート12から突出するように被さっている。下プレート12は、上プレート11に手掛け部39に対応する部位が凹んでいる。これにより、使用者は、便座ユニット10の前端部の手掛け部39に手を掛けて持ち上げることができる。
【0031】
また、
図8に示されているように、環状の下プレート12の内側の縁に設けられた爪片52aの先端には、爪52a1が設けられている。かかる爪52a1は、爪片52aの先端から下プレート12の外側に向けて突出している。段差32aは、上側壁部32から上プレート11の内側に向けて突出している。爪52a1の上縁は、上端から徐々に下プレート12の外側に向けて傾斜した斜面52a2になっている。下プレート12に上プレート11が被せられるときに爪片52aが弾性的に変形し、爪52a1が段差32aを乗り越えて段差32aに引っ掛かる。
図9に示されているように、爪片52aの近傍に設けられた突起52bは、上プレート11の環状の突起32bに嵌まる。このため、爪片52aの近傍において、下プレート12の変形が規制される。このため、爪片52aと段差32aとの係合が容易に外れない。
【0032】
図10に示されているように、環状の下プレート12の外側の縁に設けられた爪片53aの先端には、爪53a1が設けられている。かかる爪53a1は、爪片53aの先端から下プレート12の外側に向けて突出している。段差33aは、上側壁部33から上プレート11の内側に向けて突出している。爪53a1の上縁は、上端から徐々に下プレート12の外側に向けて傾斜した斜面53a2になっている。下プレート12に上プレート11が被せられるときに爪片53aが弾性的に変形し、爪53a1が段差33aを乗り越えて段差33aに引っ掛かる。
図11に示されているように、爪片53aの近傍に設けられた突起53bは、上プレート11の環状の突起33bに嵌まる。このため、爪片53aの近傍において、下プレート12の変形が規制される。このため、爪片53aと段差33aとの係合が容易に外れない。このように、環状の便座ユニット10の上下のプレート11,12の縁は、いわゆるスナップフィット構造を有する。
【0033】
図5~
図7では、図示は省略されているが、上プレート11と下プレート12が嵌め合わされる周縁部には、適宜にシール材が装着されてもよい。例えば、
図8,
図9,
図10および
図11に示されているように、上プレート11と下プレート12が嵌め合わされる周縁部に沿ってシール材61,62が装着されていてもよい。シール材61,62は、例えば、円柱紐状のゴムで構成されていてもよい。シール材61,62が装着されていることによって、便座ユニット10の内部に水などが浸入するのが防止されうる。
【0034】
この実施形態では、
図6に示されているように、上プレート11の内側の周縁部には、周方向に間欠的に設けられた段差32aおよび環状の突起32bの内側にシール材61が装着される溝36が設けられている。上プレート11の外側の周縁部に、周方向に間欠的に設けられた段差33aおよび環状の突起33bの外側にシール材62が装着される溝37が設けられている。また、
図7に示されているように、下プレート12には、溝36,37に装着されるシール材61,62が当たる当たり面52c,53cが設けられている。そして、当該溝36,37に装着されたシール材61,62が、当たり面52c,53cに挟まれる。
【0035】
シール材62は、上プレート11の周縁部に沿って周方向に連続していてもよい。この実施形態では、上プレート11と下プレート12が嵌め合わされる外側の周縁部に沿ってシール材62が装着されている。さらに、上プレート11と下プレート12が嵌め合わされる内側の周縁部に沿ってシール材62が装着されていてもよい。なお、シール材62は、適宜に省略されうる。例えば、この実施形態では、
図8,
図9,
図10および
図11に示されているように、上プレート11と下プレート12とが嵌め合わされた部分63,64には、2重に壁が構成されている。このため、毛管現象によって便座ユニット10の内部に水が浸入しにくくなっている。これに限らず、他の工夫によって、便座ユニット10の内部に水が浸入しないように構成されていてもよい。
【0036】
〈柱54〉
下プレート12の上面には、上方に突出した柱54が設けられている。
図12は、柱54が設けられた部位の断面を示す断面図である。
図12では、便座ユニット10の後部中央に設定されたXII-XII断面が図示されている。柱54の高さは、上プレート11の上面部31に届いていないが、上プレート11の上面部31が弾性変形によって下方に押し下げられた際に当接するように設定されている。柱54は、所要の剛性を有しているとよい。この実施形態では、上プレート11の上面部31には、当該柱54が当たる部位に凹み31bが設けられている。柱54の上端部54aは、上プレート11の上面部31に対して面で当たるように、上プレート11の上面部31に対向した面を有している。この実施形態では、柱54は、中空の軸である。
図12に示されているように、柱54の上端部54aは、上面部31に対向した面に沿った形状を有している。
【0037】
柱54の下端部54bは、下プレート12の底面部51の他の部位よりも剛性が高い。この実施形態では、柱54の下端部54bでは、適宜に、底面部51が半球状に盛り上がっている。かかる形状的な特性によって、柱54の下端部54bにおいて底面部51の剛性が高められている。柱54の下端部54bにおいて底面部51の剛性が高めるとの観点において、柱54の下端部54bの周囲では、下プレート12の底面部51の肉厚が、他の部位よりも高さ方向において厚くなっていてもよい。また、この実施形態では、採用されておらず図示は省略するが、柱54の下端部54bの剛性を向上させるとの観点において、柱54の下端部54bの周りにリブが設けられていてもよい。
【0038】
便座ユニット10の上に使用者が座った場合などに、上プレート11の上面部31は、適度に弾性変形する。上プレート11の上面部31は、下プレート12の柱54の上端部54aに当たる。上プレート11の過度な変形が規制される。そして、使用者が座った際に上プレート11の上面部31が安定する。柱54の上端部54aは、上プレート11の上面部31に対して面で当たる。このため、上プレート11の上面部31に局所的な応力集中が緩和される。また、柱54の下端部54bの剛性が適度に高められている。このため、上プレート11と下プレート12がそれぞれ破損しにくい。
【0039】
図13は、便座ユニット10の前部中央の断面図である。
図13では、便座ユニット10の前部中央に前後方向に沿って設定されたXIII-XIII断面が図示されている。この実施形態では、上プレート11と下プレート12の前部には、
図13に示されているように、上プレート11に設けられた突起38と、下プレート12に設けられた段差58とが当たる当たり部が設けられている。突起38は、所要の強度が確保されるように円筒状に設けられている(
図6参照)。段差58は、上プレート11の突起38に対向する位置において下プレート12の下面が盛り上がっているとよい。上プレート11の内側面には、突起38から前後に延びたリブ38a(
図6参照)が設けられている。このように、上面部31の内側面31aには、前部と後部にはリブが設けられていてもよい。これによって、上面部31の前部と後部の剛性を向上させることができる。この場合でも、上面部31のうち前部および後部を除く部位では、裏面にリブがないとよい。これにより、上面部31は、使用者が座った際に、太もも裏や臀部を通じて掛かる荷重に応じて適度に弾性変形しうる。
【0040】
なお、この実施形態では、便座ユニット10の上プレート11と下プレート12とは嵌め合わされてねじ止めされていない。しかし、上プレート11と下プレート12とは、適宜にねじ止めされてもよい。例えば、上プレート11のうち剛性を高めたい部位は、適宜に下プレート12にねじ止めされていてもよい。本発明者の検討では、上プレート11のうち、両側部の後部などは、大きな荷重が掛かりやすい。このため、当該部位では、上プレート11が下プレート12にねじ止めされてもよい。例えば、図示は省略するが、上述した実施形態における下プレート12に設けられる柱54のうち、両側部の後部の柱54Aにねじ穴を設け、これに対向する上プレート11の下面にねじがねじ込まれるためのボス穴が設けられてもよい。この場合には、当該ボス穴の周りにリブが設けられてもよい。このように、上プレート11と下プレート12とは、適宜にねじ止めされていてもよい。この場合でも、上プレート11は、ねじ止めされた部位を除いて弾性変形が許容されうる。上プレート11と下プレート12とをねじ止めする位置は、適宜に変更されてもよい。
【0041】
アーム部55は、便座ユニット10の下プレート12の後部から後方に延びている。回動支持部56は、アーム部55に設けられている。この便座ユニット10では、上プレート11と下プレート12とからなり、回動支持部56が設けられるアーム部55が、下プレート12に設けられている。アーム部55の基端は、所要の剛性を要する。便座ユニット10は、下プレート12にアーム部55が設けられていることによって、アーム部55の基端に所要の剛性を確保しつつ上プレート11の剛性を低く抑えやすい。このため、使用者が座った際の上プレート11の弾性変形を許容しつつ、下プレート12で上プレート11を支える構造を取りやすい。便座ユニット10は、所要の剛性と適度な可撓性を両立させることができる。この実施形態では、アーム部55は、下プレート12の後部から後方に突出している。アーム部55は、下プレート12の後部の左右幅方向の中央部の左右2箇所に設けられている。アーム部55は、左右横向きに配置された筒状の部位を備えている。アーム部55の両側は端面を有している。回動支持部56は、左右のアーム部55のそれぞれ外側の端面に設けられている。この実施形態では、回動支持部56として、左右のアーム部55のそれぞれ外側の端面に軸を装着する開口が形成されている。
【0042】
図14は、アーム部55の斜視図である。上プレート11の後部は、
図14に示されているように、下プレート12のアーム部55の基端部の上面を覆っている。上プレート11の後部の上縁35は、側方に向けて低くなった斜面を有している。この実施形態では、アーム部55は、下プレート12の後部の両端を除く中間部に設けられている。上プレート11の後部の上縁35は、中央部から左右両側に向けてそれぞれ低くなった斜面35a,35bを有している。この場合、便座ユニット10の上面部31の後部から上プレート11の後部の上縁35に溢れた液体は、上縁35の斜面35a,35bを伝って、便座ユニット10の後部の両側に流れ落ちていく。このため、アーム部55の方が汚れにくい。
【0043】
なお、上述した実施形態では、アーム部55は、下プレート12の後部の左右幅方向の中央部の左右2箇所に設けられている。アーム部55の形状は、かかる形態に限定されない。
図15は、アーム部55の他の形態を示す斜視図である。アーム部55は、
図15に示されているように、下プレート12の後部の中央部に左右幅方向に沿って一体に延びた上面55aと、左右両側の端面55b,55cを有していてもよい。そして、アーム部55の両側の端面55b,55cに回動支持部56が設けられているとよい。
【0044】
この実施形態では、上プレート11の後部の上縁35に設けられる斜面は、中央部が高くなって両側に低くなっている。かかる形態に限定されず、上プレート11の後部の上縁35に設けられる斜面は、片側に向けて低くなるように斜面していてもよい。便座ユニット10の下プレート12は、樹脂成形品でありうる。このように、便座ユニット10は、便座部分の形状は、変わらないが、アーム部55の形状が既存のトイレに合うように変更したい場合がある。この場合、下プレート12を成形するための金型が、部分的に変更できるように構成されているとよい。
【0045】
図16は、上プレート11を模式的に示す底面図である。
図16では、上プレート11の裏面にヒーターシートが取り付けられた形態が模式的に示されている。
図16に示されているように、上プレート11の裏面には、電気回路70が取り付けられていてもよい。上プレート11の裏側には、下プレート12が取り付けられている。このため、上プレート11の裏面に取り付けられた電気回路70が濡れにくい。
【0046】
電気回路70は、例えば、ヒーターシート71や、着座センサー72や、温度センサー73や、マイコン74などを含んでいてもよい。ヒーターシート71は、上プレート11の上面部31の裏面に貼り付けられた均熱板71aと、均熱板71aに蛇行するように貼り付けられたコードヒータ71bとで構成されていてもよい。均熱板71aは、上プレート11の上面部31の裏面に応じた形状を有しているとよい。均熱板71aは、例えば、銅やアルミニウムやステンレスなどの熱伝導率が高い金属箔で構成されているとよい。銅やアルミニウムのように、上面部31の裏面に応じた形状に沿って形状を整えやすい材料が好ましい。ヒーターシート71は、例えば、接着剤や両面テープなどによって、上プレート11の上面部31の裏面に貼り付けられうる。この実施形態では、下プレート12の後部に、電気回路70に接続される電気コードを挿通させる開口59が設けられている。図示は省略するが、当該開口59には、例えば、ゴム製のグロメットが装着され、グロメットを通じて、電気コードが便座ユニット10の外に挿通されているとよい。
【0047】
着座センサー72は、使用者が座ったことを検知するセンサーである。着座センサー72は、例えば、静電容量型のセンサーで構成されうる。温度センサー73は、均熱板71aに取り付けられているとよい。コードヒータ71b、着座センサー72および温度センサー73は、マイコン74に接続されている。マイコン74は、例えば、着座センサー72での検知を基に、コードヒータ71bへの通電が切り替えられるように構成されていてもよい。マイコン74は、例えば、温度センサー73での検知を基に、温調制御が施されるように構成されていてもよい。また、マイコン74は、便座ユニット10の外部に設けられる操作装置75に接続されていてもよい。操作装置75は、例えば、ヒーターシート71のON/OFFや、温度調整の基準値を設定できるように構成されているとよい。
【0048】
なお、着座センサー72は、静電容量型のセンサーを例示したが、他の方式でもよい。例えば、着座センサー72は、上面部31の歪みを検知する重量センサーとしてもよい。具体的な図示は省略するが、着座センサー72は、下プレート12の柱54が当たる凹み31bに設け、下プレート12の柱54に着座センサー72を抑えるための当たり面が設けられていてもよい。また、温度センサー73での検知を基にフィードバック制御により温度が調整される形態を例示したがかかる形態に限定されない。例えば、温度センサー73はなくても良い。この場合、使用者の体感に応じて使用者の操作に応じてコードヒータ71bの出力を調整されるように構成されているとよい。この場合、操作装置75には、コードヒータ71bの出力を調整するための操作部が設けられているとよい。
【0049】
ここで開示される便座ユニット10は、適宜に種々のトイレに適用されうる。トイレは、便座ユニット10を取り付けるための取付部を有しているとよい。例えば、
図4に示されているように、便座ユニット10を取り付ける取付部を有する樹脂製の枠体2を備えた簡易トイレ1として構成されてもよい。便座ユニット10が適用されるトイレは、樹脂製の簡易トイレに限定されない。一部、木製の枠を備えた家具調の簡易トイレでもよい。また、既設の和式トイレに設置される便器用椅子や、既設の洋式トイレの便座にも適用されうる。
【0050】
以上の通りに、ここで開示される便座ユニットの一実施形態を種々説明したが、ここで開示される便座ユニットは、上述した実施形態に限定されない。また、ここで開示される便座ユニットは、種々変更でき、特段の問題が生じない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わされうる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、便座ユニット、トイレおよび簡易トイレとして産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 簡易トイレ
2 枠体
2a バケツ収容部
2b 支持部材
2b1 支持部
3 バケツ
3a 蓋
4 カバー
4a カバー4のヒンジ
10 便座ユニット
10a 開口
10b,10c 円弧部分
10d,10e 両側部
10f 内縁形状(開口形状)を囲う緩やかな曲線
10g 便座ユニット10の後部の幅方向の中央部
11 上プレート
12 下プレート
21 便座ユニット10のヒンジ
31 上面部
31a 内側面
31b 凹み
32,33 上側壁部
32a,33a 段差
32b,33b 環状の突起
34 上面部31から下方に向けて連続した曲面
35 上プレート11の後部の上縁
35a,35b 中央部から左右両側に向けてそれぞれ低くなった斜面
36,37 溝
38 突起
38a リブ
39 手掛け部
51 底面部
52,53 下縁部
52a,53a 爪片
52a1,53a1 爪
52a2,53a2 斜面
52b,53b 突起
52c,53c 当たり面
54 柱
54a 柱54の上端部
54b 柱54の下端部
55 アーム部
55a 上面
55b,55c 端面
56 回動支持部
58 段差
59 開口
61,62 シール材
63,64 上プレート11と下プレート12とが嵌め合わされた部分
70 電気回路
71 ヒーターシート
71a 均熱板
71b コードヒータ
72 着座センサー
73 温度センサー
74 マイコン
75 操作装置