(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】空気調和機、および、空気調和機の制御方法
(51)【国際特許分類】
F24F 1/0071 20190101AFI20241108BHJP
F24F 11/79 20180101ALI20241108BHJP
【FI】
F24F1/0071
F24F11/79
(21)【出願番号】P 2020181546
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-09-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・ウェブサイトのアドレス 掲載日 令和2年9月29日 (1) https://corporate.jp.sharp/news/200929-a.html https://global.sharp/corporate/news/200929-a.html (2) https://www.amazon.co.jp/stores/page/114E258B-5A6A-4826-825B-ECCD747DF003?ingress=2&visitId=3ba7704c-81c7-494d-b100-83521d4dfd59&ref_=ast_bln (3) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000571.000012900.html 掲載日 令和2年9月30日 https://www.kit.ac.jp/2020/09/0930news-pre 掲載日 令和2年10月2日 https://news-tv.jp/_ct/16960255 https://www.facebook.com/newstv.official/posts/2950887741683524 https://www.instagram.com/p/CF1bQQtjHoK/ https://twitter.com/Newstv_jp/status/1311959088574545920 https://youtu.be/sfADOWv_1vo ・記者会見 会見日 令和2年9月29日 会見場所 シャープ株式会社大阪八尾事業所多目的ホール(大阪府八尾市北亀井町3-1-72) ・刊行物 販売促進資料1「Airest飛沫粒子訴求POP/W260×H130mm」 販売促進資料2「Airest飛沫粒子訴求POP/W900×H180mm」 発行日 令和2年10月22日 公開者 シャープ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】森 洸登
(72)【発明者】
【氏名】楊 迪
(72)【発明者】
【氏名】橋本 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】三代 一寿
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-80735(JP,A)
【文献】特開2004-108651(JP,A)
【文献】特開2020-8226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機であって、
室内機の吹出口に設けられたルーバと、
前記室内機の吸込口から吸い込まれた空気を前記吹出口から吹き出すように送風ファンを回転させるファンモータと、
前記空気調和機の動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、被空調空間において所定の条件が満足された場合に、該被空調空間の空気中の不純物を回収するための空気清浄運転を実行可能であり、
前記制御装置は、前記空気清浄運転において、前記ルーバおよび前記ファンモータの少なくともいずれかを制御して、前記被空調空間の空気を前記吹出口から前記不純物を回収する回収口まで移動させる回収気流であって、前記被空調空間内に気流の衝突を生まない回収気流を生じさせる運転制御部を備
え、
前記運転制御部は、前記空気清浄運転の直前に空気調和運転が実行されていた場合、前記ファンモータの回転数を、直前の前記空気調和運転時の回転数未満となるように制御する、空気調和機。
【請求項2】
空気調和機であって、
室内機の吹出口に設けられたルーバと、
前記室内機の吸込口から吸い込まれた空気を前記吹出口から吹き出すように送風ファンを回転させるファンモータと、
前記空気調和機の動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、被空調空間において所定の条件が満足された場合に、該被空調空間の空気中の不純物を回収するための空気清浄運転を実行可能であり、
前記制御装置は、前記空気清浄運転において、前記ルーバおよび前記ファンモータの少なくともいずれかを制御して、前記被空調空間の空気を前記吹出口から前記不純物を回収する回収口まで移動させる回収気流であって、前記被空調空間内に気流の衝突を生まない回収気流を生じさせる運転制御部を備え、
前記ルーバは、前記吹出口から吹き出される空気の上下方向の風向を調節する上下ルーバを含み、
前記運転制御部は、前記空気清浄運転の開始時に、前記上下ルーバの向きを空気調和運転時よりも速い速度で変更させる、空気調和機。
【請求項3】
前記回収口は、前記室内機に設けられた前記吸込口であり、
前記制御装置は、前記空気清浄運転において、前記吹出口からの風が、水平方向よりも前記吸込口から遠ざかる方向にて吹き出されるように前記ルーバを制御する、請求項1
または2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記吸込口は、前記吹出口よりも、前記被空調空間の天井面側に設けられており、
前記ルーバは、前記吹出口から吹き出される空気の上下方向の風向を調節する上下ルーバを含み、
前記制御装置は、前記空気清浄運転において、前記吹出口から前記被空調空間の床面方向に風が吹き出されるように前記上下ルーバを制御する、請求項
3に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記制御装置は、前記空気清浄運転を開始する直前まで暖房運転を実行していた場合、前記空気清浄運転において、該暖房運転時の前記上下ルーバの角度を、前記床面方向に風が吹き出される最下方向に設定する、請求項
4に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記吸込口は、前記吹出口よりも、前記被空調空間の床面側に設けられており、
前記ルーバは、前記吹出口から吹き出される空気の上下方向の風向を調節する上下ルーバを含み、
前記制御装置は、前記空気清浄運転において、前記吹出口から前記被空調空間の天井面方向に風が吹き出されるように前記上下ルーバを制御する、請求項
3に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記制御装置は、前記空気清浄運転を開始する直前まで冷房運転を実行していた場合、前記空気清浄運転において、該冷房運転時の前記上下ルーバの角度を、前記天井面方向に風が吹き出される最上方向に設定する、請求項
6に記載の空気調和機。
【請求項8】
前記ルーバは、前記吹出口から吹き出す空気の左右方向の風向を調節する左右ルーバを含み、
前記制御装置は、前記空気清浄運転において、前記左右ルーバの動きを停止する、請求項1から
7のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項9】
前記被空調空間を撮影する撮影装置および前記被空調空間で発生する音を取得する音声入力装置の少なくとも1つが、前記制御装置と通信可能に設けられており、
前記制御装置は、
前記撮影装置から取得される映像および前記音声入力装置から取得される音声の少なくとも1つに基づいて、病原体を発出する病原体発出源が前記被空調空間に存在すること、または、前記被空調空間において前記病原体発出源による病原体発出動作が実行されたことを検知して、前記空気清浄運転を開始する、請求項1から
8のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項10】
空気調和機の動作を制御する制御方法であって、
該空気調和機は、
室内機の吹出口に設けられたルーバと、
前記室内機の吸込口から吸い込まれた空気を前記吹出口から吹き出すように送風ファンを回転させるファンモータと、
前記空気調和機の動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御方法は、
前記制御装置が、被空調空間において所定の条件が満足された場合に、該被空調空間の空気中の不純物を回収するための空気清浄運転を実行するステップを含み、
前記空気清浄運転を実行するステップでは、前記制御装置は、前記ルーバおよび前記ファンモータの少なくともいずれかを制御して、前記被空調空間の空気を前記吹出口から前記不純物を回収する回収口まで移動させる回収気流であって、前記被空調空間内に気流の衝突を生まない回収気流を生じさ
せ、前記空気清浄運転の直前に空気調和運転が実行されていた場合、前記ファンモータの回転数を、直前の前記空気調和運転時の回転数未満となるように制御する、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被空調空間の空気中の不純物を取り除く機能が強く求められるようになっている。空気清浄機だけでなく、空気調和機または換気装置などの空調関連機器にも同様の機能が求められる。例えば、特許文献1には、空気中の不純物を装置内に回収し、装置内にて不純物を捕集するなどして、吸気されたときよりもきれいな空気を排出する換気装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、不純物の中には、病原体発出源である生物がくしゃみをするなどして発出される、ウイルスなどの病原体が含まれる。被空調空間に存在する病原体発出源から病原体が発出されたとき、その被空調空間内に病原体が発散してしまい、それを他の在室者が吸い込んでしまうということが問題になっている。
【0005】
そこで、空調関連機器、例えば空気調和機には、被空調空間内に発出された不純物を、できるだけ発散させずに効率よく、不純物を回収するための回収口に向かわせるように、気流を制御することが求められる。
【0006】
本発明の一態様は、不純物を発散させることなく、不純物を含んだ空気を効率よく回収口に向かわせることが可能な空気調和機を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る空気調和機は、室内機の吹出口に設けられたルーバと、前記室内機の吸込口から吸い込まれた空気を前記吹出口から吹き出すように送風ファンを回転させるファンモータと、前記空気調和機の動作を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、被空調空間において所定の条件が満足された場合に、該被空調空間の空気中の不純物を回収するための空気清浄運転を実行するものであり、前記制御装置は、前記空気清浄運転において、前記ルーバおよび前記ファンモータの少なくともいずれかを制御して、前記被空調空間の空気を前記吹出口から前記不純物を回収する回収口まで移動させる回収気流であって、前記被空調空間内に気流の衝突を生まない回収気流を生じさせる運転制御部を備え、前記運転制御部は、前記空気清浄運転の直前に空気調和運転が実行されていた場合、前記ファンモータの回転数を、直前の前記空気調和運転時の回転数未満となるように制御する。
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御方法は、空気調和機の動作を制御する制御方法であって、該空気調和機は、室内機の吹出口に設けられたルーバと、前記室内機の吸込口から吸い込まれた空気を前記吹出口から吹き出すように送風ファンを回転させるファンモータと、前記空気調和機の動作を制御する制御装置とを備え、前記制御方法は、前記制御装置が、被空調空間において所定の条件が満足された場合に、該被空調空間の空気中の不純物を回収するための空気清浄運転を実行するステップを含み、前記空気清浄運転を実行するステップでは、前記制御装置は、前記ルーバおよび前記ファンモータの少なくともいずれかを制御して、前記被空調空間の空気を前記吹出口から前記不純物を回収する回収口まで移動させる回収気流であって、前記被空調空間内に気流の衝突を生まない回収気流を生じさせ、前記空気清浄運転の直前に空気調和運転が実行されていた場合、前記ファンモータの回転数を、直前の前記空気調和運転時の回転数未満となるように制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、不純物を発散させることなく、不純物を含んだ空気を効率よく回収口に向かわせることが可能な空気調和機を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る室内機の外観を示す斜視図である。
【
図3】室内機に設けられるルーバユニットの外観を示す斜視図である。
【
図4】室内機の上下ルーバが閉じた状態の内部構造を示す縦断面図である。
【
図6】室内機が設置された被空調空間の概略を示す斜視図である。
【
図7】被空調空間を室内機から見て右側から見た場合のYZ平面図である。
【
図8】被空調空間を室内機から見て右側から捉えた場合のYZ平面図であり、回収気流を示す図である。
【
図9】被空調空間を室内機から見て右側から捉えた場合のYZ平面図であり、回収気流を示す図である。
【
図10】記憶部に記憶される運転テーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【
図11】室内機の制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
<室内機の外観>
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。本実施形態および他の実施形態では、壁掛け型の室内機と室外機とを備えるセパレートタイプの空気調和機について説明する。ただし、本発明の空気調和機において壁掛け型の室内機に限定されないことは勿論である。
【0012】
図1は、実施形態1に係る空気調和機100の室内機1の外観を示す斜視図である。
図2は、室内機1の他の外観を示す斜視図である。
【0013】
図1および
図2に示すように、室内機1は、外装体として筐体2を備えている。また、室内機1は、筐体2に着脱可能に組み込まれる組込部材として、上下ルーバ13(ルーバ)と、複数の左右ルーバ14(ルーバ)を含むルーバユニット40とを備えている。ここでの着脱可能は、ユーザによって容易に着脱できることをいう。
【0014】
筐体2は、直方体に類似する形状を成している。具体的には、筐体2の前面は、筐体2の背面よりも上下方向の幅が狭く形成されている。このため、筐体2の上面は、背面から前面にかけて緩やかな下り傾斜となるように形成されている。また、筐体2の下面は、背面から前面にかけて緩やかな上り傾斜となるように形成されている。
【0015】
筐体2の上面には、外部からの空気が吸い込まれる吸込口2aが形成されている。吸込口2aには、格子が組み込まれている。また、吸込口2aには、図示しないフィルタが設けられている。フィルタは、空気とともに筐体2の内部に吸い込まれる塵埃などを捕集する。
【0016】
筐体2の下面には、吸込口2aから吸い込まれて筐体2の内部を通過した空気が吹き出される吹出口2bが形成されている。吹出口2bは、細長い長方形の形状に形成されている。吹出口2bには、上下ルーバ13(ルーバ)が回動可能に取り付けられている。
【0017】
上下ルーバ13は、吹出口2bを開閉するとともに、吹出口2bから空気が吹き出される上下方向の向きを定める板状の部材である。上下ルーバ13は、吹出口2bを閉鎖することができるように、吹出口2bとほぼ同じ大きさおよび形状を有するように形成されている。
【0018】
上下ルーバ13の内面3aには、回動支持片3bと、駆動支持片3cとが設けられている。内面3aは、吹出口2bを閉じた状態で筐体2の内部側に位置する面である。回動支持片3bは、上下ルーバ13の長手方向の両端に1つずつ設けられている。回動支持片3bは、内面3aに対して垂直に立ち上がるように形成されている。
【0019】
回動支持片3bには、2つの回動支持片3bが対向する内側面とは反対の外側面に支持軸(不図示)が設けられている。支持軸は、上下ルーバ13の長手方向に突出するように形成されている。支持軸は、筐体2における吹出口2bを形成する壁面に形成された孔(図示せず)に嵌め込まれる。これにより、上下ルーバ13は筐体2に回動可能に支持される。
【0020】
駆動支持片3cは、上下ルーバ13の長手方向の中央部分に設けられている。駆動支持片3cには、一方の回動支持片3bと対向する面に、駆動軸3eが設けられている。駆動軸3eは、上下ルーバ13の長手方向に突出するように設けられている。
【0021】
図2に示すように、駆動軸3eは、上下駆動ユニット31によって、支持軸を中心に回動するように駆動される。これにより、上下ルーバ13は、吹出口2bを閉じる閉鎖位置と、吹出口2bを開く開放位置との間で、上下方向に移動するように回動する。
【0022】
上下駆動ユニット31は、レバー31aと、モータ31bとを有している。レバー31aは、モータ31bの回転駆動力を駆動軸3eに伝達する。駆動軸3eは、レバー31aの回動に伴って引き上げられたり、押し下げられたりする。
【0023】
なお、上下ルーバ13は、駆動軸3eで駆動される代わりに、支持軸に駆動力を直接作用させることによって回動してもよい。
【0024】
図3は、室内機1に設けられるルーバユニット40の外観を示す斜視図である。
【0025】
図3に示すように、ルーバユニット40は、複数の左右ルーバ14と、左右駆動ユニット41と、連結バー42とを有している。
図3において、ルーバユニット40は、ケーシング7に直接設けられているように描かれているが、ケーシング7に対して着脱可能に設けられた組込部材として設けられている。また、左右ルーバ14および連結バー42のみがケーシング7に対して着脱可能な組込部材として設けられていてもよい。
【0026】
左右ルーバ14は、吹出口2bにおいて空気が吹き出される左右方向の向きを定める。左右ルーバ14は、上述したケーシング7の平板状の部分に、所定の間隔をおいて筐体2の長手方向に並ぶように配置されている。左右ルーバ14は、翼部4aと、切欠き部4bと、回動支持部4cとを有している。
【0027】
翼部4aは、筐体2の長手方向(左右方向)の空気の流れを定める板状の部分である。
図4に示すように、切欠き部4bは、翼部4aにおける、吹出口2bに向いた前端から後端に向けて連結バー42が通る程度の細い幅を有するように形成されている。回動支持部4cは、回動可能となるようにケーシング7に支持されている。
【0028】
連結バー42は、左右ルーバ14のそれぞれの切欠き部4bを通るように配置されている。連結バー42は、左右ルーバ14の切欠き部4bと係合されている。連結バー42の一端には、被駆動部42aが設けられている。被駆動部42aは、ケーシング7の面に平行であり、かつ筐体2の長手方向に直交するY1方向およびY2方向に長く形成された長孔42bを有している。
【0029】
左右駆動ユニット41は、レバー41aと、モータ41bと、ピン41cとを有している。左右駆動ユニット41は、連結バー42と連動することによって、回転運動を往復運動に変換する。
【0030】
レバー41aは、被駆動部42aに対する空気の流れの下流側から被駆動部42aに延びるように配置されており、先端にピン41cが設けられている。ピン41cは、被駆動部42aの長孔42b内を移動可能となるように長孔42bに嵌め込まれている。ルーバユニット40において、左右ルーバ14および連結バー42のみがケーシング7に対して着脱可能に設けられる場合、ピン41cは、被駆動部42aに対して着脱可能となるように設けられる。モータ41bは、ケーシング7の面に直交する方向に延びる駆動軸を有しており、レバー41aをC1方向およびC1方向とは逆のC2方向に回動させる。
【0031】
モータ41bがレバー41aをC1方向に回転させると、ピン41cは、長孔42b内をY1方向に移動しながら被駆動部42aを筐体2の長手方向の一方であるX1方向に引っ張る。これにより、連結バー42はX1方向(右方向)に移動する。左右ルーバ14は、連結バー42の移動に連動して、X1方向に回動する。
【0032】
一方、モータ41bがレバー41aをC2方向に回転させると、ピン41cは、長孔42b内をY2方向に移動しながら被駆動部42aを筐体2の長手方向の他方であるX2方向(左方向)に押し込む。これにより、連結バー42はX2方向に移動する。左右ルーバ14は、連結バー42の移動に連動して、X2方向に回動する。
【0033】
図4は、室内機1の上下ルーバ13が閉じた状態の内部構造を示す縦断面図である。
図4に示すように、室内機1は、熱交換器5と、送風ファン16と、ケーシング7とを備えている。必要に応じて、室内機1は、さらに、光源ケース8と、光源9と、光触媒シート32とを備えていてもよい。これらは、不活化対象、例えば、バクテリア、ウイルス、菌類、原生動物、寄生虫などの病原体を不活化させる不活化部として機能する。
【0034】
熱交換器5は、第1熱交換部5aと、第2熱交換部5bとを有する。第1熱交換部5aは、吸込口2aの直下から筐体の前面付近にかけて傾斜するように配置されている。第2熱交換部5bは、吸込口2aの直下から筐体の背面付近にかけて傾斜するように配置されている。
【0035】
熱交換器5は、吸込口2aから吸い込まれる空気との間で熱交換する。具体的には、熱交換器5は、冷房運転時には冷媒を気化させる蒸発器として機能し、空気から熱を奪う。一方、熱交換器5は、暖房運転時には冷媒を液化させる凝縮器として機能し、空気に熱を与える。
【0036】
送風ファン16は、第1熱交換部5aおよび第2熱交換部5bのそれぞれの下面に対面する位置に配置されている。送風ファン16は、筐体2の長手方向に延びる軸を中心に、ファンモータ15(モータ)の駆動力によって回転する。送風ファン16は、例えばクロスフローファンであるが、他のファンであってもよい。送風ファン16は、回転することにより、吸込口2aから室内の空気が吸い込んで吹出口2bから室内へ吹き出す気流を生じさせる。
【0037】
ケーシング7は、吹出口2bに空気を導く板状の部材である。ケーシング7は、送風ファン16から空気が送出される筐体2の背面側に、送風ファン16と第2熱交換部5bとの間から、吹出口2b付近の筐体2の下面に至る範囲に設けられている。ケーシング7は、中間部分で筐体2の背面側に膨らむように湾曲するとともに、中間部分から吹出口2b付近にかけて平板状となるように形成されている。また、ケーシング7は、筐体2の両側壁の幅を有するように形成されている。ケーシング7は、筐体2に取り付けられ、筐体2を補強する機能を有することから、筐体2の一部を構成している。
【0038】
<室内機の構成>
図5は、空気調和機100、とりわけ、室内機1の要部構成を示すブロック図である。本実施形態に係る空気調和機100は、室内機1と、圧縮機3などの冷媒回路を備える不図示の室外機と、操作部4とで構成されている。操作部4は、例えば、室内で、室内機1を操作するためのいわゆるリモコンである。
【0039】
空気調和機100は、被空調空間の温度または湿度などを調節したり、あるいは、温度調節を伴わずに風向または風量を調節したりして、被空調空間内の空気を調和する空気調和運転を実行する。本実施形態に係る空気調和機100は、この空気調和運転と同時に並行して、あるいは、空気調和運転から切り替えて、本開示に係る空気清浄運転を実行することができる。空気清浄運転は、風向および風量の少なくともいずれかを調節して、不純物を回収することに適した回収気流を生じさせる運転である。回収気流とは、被空調空間の空気を、室内機1の吹出口から不純物を回収する回収口まで移動させる気流であって、被空調空間内に気流の衝突を生まない気流である。回収気流は、それ自体が吹出口から回収口までの経路において気流の衝突を有しない気流である、とも言える。
【0040】
空気清浄運転は、冷媒回路の駆動を伴っても伴わなくてもいずれでもよい。空気調和機100は、空気調和運転が非稼働であるときに、空気清浄運転を開始し、冷媒回路の駆動を伴わずに、風向および風量の少なくともいずれかを調節して、回収気流を生じさせてもよい。空気調和機100は、空気調和運転の稼動中に空気清浄運転を開始するとき、空気調和運転時の冷媒回路の駆動内容を維持しつつ、風向および風量の少なくともいずれかを調節して、回収気流を生じさせてもよい。あるいは、空気調和機100は、空気調和運転の稼動中に空気清浄運転を開始するとき、空気調和運転時の冷媒回路の駆動を緩めて、風向および風量の少なくともいずれかを調節して、回収気流を生じさせてもよい。あるいは、空気調和機100は、空気調和運転から空気清浄運転に切り替えるとき、空気調和運転時の冷媒回路の駆動を止めて、風向および風量の少なくともいずれかを調節して、回収気流を生じさせてもよい。
【0041】
室内機1は、制御部10(制御装置)と、記憶部11と、室内環境センサ12と、上下ルーバ13(ルーバ)と、左右ルーバ14(ルーバ)と、ファンモータ15と、送風ファン16とを備えている。なお、室内機1は、
図5に示す部材の他にも、
図1~
図4に示した部材、および、空気調和機100(いわゆるエアコン)の室内機が一般的に備えている不図示の部材を有していてもよい。例えば、空気調和機100は、エアコンの室外機側の制御部と電気配線を通じて通信する室外機通信部を有していてもよい。また、空気調和機100は、イオン発生装置、外部のネットワーク機器と通信するためのネットワーク通信部、および、操作部4と通信するための赤外線送受信部などを有していてもよい。
【0042】
室内環境センサ12は、被空調空間のあらゆる状態を検知するセンサである。室内環境センサ12は、検知対象に応じて、様々の種類のセンサであり得る。例えば、室内環境センサ12は、被空調空間の温度を測定する温度計、または、湿度を測定する湿度計であってもよい。室内環境センサ12は、人の在不在を検知するための人感センサ、温度センサ、音センサ、明るさセンサ、または、赤外線センサであってもよい。被空調空間を撮影するカメラも室内環境センサ12に含まれる。室内環境センサ12は、被空調空間の空気中の不純物の濃度を計測するセンサであってもよい。例えば、室内環境センサ12としてのホコリセンサは、室内機1の上面の吸込口付近に設けられ、室内機1内に吸い込まれる直前の空気における塵埃の濃度を計測してもよい。
【0043】
上述の各種の室内環境センサ12から出力された検出信号は、制御部10に送信される。制御部10は、各種のセンサから受信した検出信号に基づいて、被空調空間の現在の状態を把握することができる。
【0044】
制御部10は、室内機1の上述の各部の動作を統括的に制御するものであり、機能ブロックとして、運転モード決定部21と、運転条件決定部22と、運転制御部23とを含む。なお、制御部10は、
図5に示す機能の他にも、空気調和機の室内機が一般的に備えている不図示の機能を有していてもよい。
【0045】
記憶部11は、制御部10にて用いられる各種データを記憶するものであり、ROM(read only memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含む。本実施形態では、記憶部11は、一例として、条件情報、設定情報、および、運転テーブルを記憶している。記憶部11は、その他にも、制御部10が実行する不図示の各種プログラムを記憶していてもよい。
【0046】
記憶部11に記憶されている条件情報は、空気清浄運転を開始する条件を定義する情報である。条件情報は、空気清浄運転を開始するべき被空調空間の状態を定義する。具体的には、条件情報は、室内環境センサ12によって取得される計測値、計測値の閾値、計測値の変化量、および、計測値の範囲などを指定してもよい。条件情報は、室内環境センサ12によって取得される検知結果またはそれに基づく判定結果を定義してもよい。条件情報は、さらに、空気清浄運転を終了する条件を定義する情報を含んでいてもよい。
【0047】
設定情報は、空気調和運転に関して、自機に設定されている情報を示す。設定情報は、例えば、設定温度、設定湿度、設定風量、設定風向、および、設定運転モードを含む。これらの設定情報は、ユーザが操作部4を操作して、空気調和機100に対して入力した値であってもよいし、空気調和機100が自動で設定した値であってもよい。設定運転モードは、空気を調和することを目的とする運転様式のいずれかを示す。例えば、設定運転モードとしては、「冷房運転」、「暖房運転」、「除湿運転」および「送風運転」のいずれかが設定される。
【0048】
運転テーブルは、運転モード決定部21によって決定された運転モードと、該運転モードを実現するための運転条件との対応関係を示す参照テーブルである。運転テーブルは、運転条件決定部22が運転条件を決定するために参照される。
【0049】
制御部10の運転モード決定部21は、空気調和機100を稼動させるときの運転モードを決定する。一例として、運転モード決定部21は、空気調和機100に空気調和運転を実行させるとき、さらに、「冷房運転」、「暖房運転」、「除湿運転」および「送風運転」のいずれかの運転様式を決定する。
【0050】
運転モード決定部21は、操作部4から運転の開始を指示する信号を受け付けたとき、記憶部11に記憶されている設定運転モードが示す運転様式を選択してもよい。また、運転モード決定部21は、操作部4から特定の運転モードを指定する信号を受け付けたときに、指定された運転モードおよび運転様式を選択してもよい。
【0051】
さらに、本実施形態では、運転モード決定部21は、室内環境センサ12から取得される検出信号に基づいて、空気清浄運転の実行要否を判断する。具体的には、運転モード決定部21は、上述の検出信号が、記憶部11に記憶されている条件情報において定義された条件を満足すると判定した場合、空気清浄運転を実行することを決定する。なお、空気清浄運転の実行が決定される直前まで、空気調和機100は、空気調和運転を実行していてもよいし、非稼働であってもよい。
【0052】
運転条件決定部22は、運転モード決定部21によって決定された運転モードを実現するための運転条件を決定する。運転条件とは、空気調和機100における、運転制御部23の制御下で動作する制御対象としての各部材に行わせる動作の内容を指す。
【0053】
制御対象が、風向を調節するための上下ルーバ13および左右ルーバ14である場合、これらの部材に対する運転条件は、例えば、ルーバの向きを特定する情報であってもよいし、ルーバの動き、例えば、上下または左右に振れるように動かすか静止かを指定する情報であってもよい。
【0054】
制御対象が、風量を調節する送風ファン16を駆動させるためのファンモータ15である場合、この部材に対する運転条件は、例えば、送風ファン16の回転数を指定する情報であってもよい。
【0055】
制御対象が、温度または湿度を調節するための冷媒回路内で駆動する圧縮機3である場合、この部材に対する運転条件は、例えば、圧縮機3の回転数を指定する情報であってもよい。
【0056】
本実施形態では、運転条件決定部22は、記憶部11に記憶されている運転テーブルを参照し、運転モード決定部21が決定した運転モードに対応する運転条件を、制御対象ごとに特定することができる。
【0057】
運転制御部23は、運転条件決定部22によって決定された運転条件に合致するように、制御対象の各部材を制御する。本実施形態では、運転制御部23は、上下ルーバ13の向きを制御したり、左右ルーバ14の動きを制御したり、ファンモータ15を介して送風ファン16の回転を制御したり、圧縮機3の回転を制御したりする。運転制御部23は、圧縮機3に電気的に接続されて、圧縮機3を直接制御してもよいし、室外機の不図示の制御部と通信して、該室外機の制御部に、圧縮機3を指定の回転数にて駆動させるように指示してもよい。
【0058】
<風向調節機能について>
図6は、室内機1が設置された被空調空間の概略を示す斜視図である。以下の説明では、被空調空間に対して、室内機1が設置された位置から見て、最左、かつ、最下、かつ、最も手前の位置を原点とするXYZ座標系を定義する。XYZ座標系では、室内機1の左右方向をX軸、上下方向をY軸、奥行方向をZ軸とする。被空調空間の最上位は天井面、最下位は床面であるとする。
図7は、被空調空間を室内機1から見て右側から見た場合のYZ平面図である。
【0059】
運転制御部23は、上下ルーバ13の角度を調節することにより、吹出口2bから吹き出される空気の上下方向の風向を調節することができる。本実施形態では、一例として、運転制御部23は、上下ルーバ13の角度を、6段階で調節することができる。具体的には、
図7に示すとおり、運転制御部23は、上下ルーバ13の角度を調節して、風を上下6つの方向(風向wd1~wd6)に吹き分けることができる。風向wd1は、上下ルーバ13で調節可能な風向のうち、最も上向きの最上方向wd1であって、天井面の手前列(ア列)に向かっている。つまり、室内機1は、天井面の室内機1の近位側に風を吹き付けることができる。風向wd6は、上下ルーバ13で調節可能な風向のうち、最も下向きの最下方向wd6であって、床面の手前列(ア列)に向かっている。つまり、室内機1は、床面の室内機1の近位側に風を吹き付けることができる。
【0060】
運転制御部23は、左右ルーバ14の角度を調節することにより、吹出口2bから吹き出される空気の左右方向の風向を調節することができる。本実施形態では、一例として、運転制御部23は、左右ルーバ14の角度を左右に振れさせて、吹き出される風の方向を、最も左向きの最左風向および最も右向きの最右風向の一方から、他方にかけて、順次連続的に変化させることができる。これにより、被空調空間内の空気が攪拌され、被空調空間内の温度または湿度を均質に近づけることができる。
【0061】
(空気清浄運転について)
図8は、被空調空間を室内機1から見て右側から捉えた場合のYZ平面図であり、回収気流を示す図である。
【0062】
空気清浄運転においては、運転制御部23は、上下ルーバ13およびファンモータ15の少なくともいずれかを制御して、被空調空間の空気を吹出口2bから不純物を回収する回収口まで移動させる回収気流を生じさせる。回収気流とは、吹出口2bから回収口までの経路において、気流の衝突を有しない気流であり、したがって、被空調空間内に気流の衝突を生まない気流である。
【0063】
回収口は、例えば、室内機1に設けられた吸込口2aである。運転制御部23は、空気清浄運転において、吹出口2bからの風が、水平方向よりも吸込口2aから遠ざかる方向にて吹き出されるように上下ルーバ13を制御してもよい。一例として、運転制御部23は、空気清浄運転において、吸込口2aから最も遠ざかる方向へ向けて、吹出口2bから風が吹き出されるように上下ルーバ13を制御してもよい。
【0064】
一例として、吸込口2aが、吹出口2bよりも、被空調空間の天井面側に設けられている場合、運転制御部23は、空気清浄運転において、吹出口2bから被空調空間の床面方向に風が吹き出されるように上下ルーバ13を制御してもよい。運転制御部23は、空気清浄運転を実行している間、床面方向に向くように上下ルーバ13を動かした後は、その角度が維持されるように上下ルーバ13を制御してもよい。
【0065】
具体的には、
図8に示すように、運転制御部23は、上下ルーバ13の角度を、床面方向に風が吹き出される最下方向wd6に設定してもよい。運転制御部23は、吸込口2aと吹出口2bとの位置関係が上述のとおりであって、空気清浄運転を実行する直前の空気調和機100の運転状況が、暖房運転、送風運転または非稼働である場合に、空気清浄運転において、上下ルーバ13を最下方向wd6に向けることが好ましい。なお、空気清浄運転を実行する直前において、上下ルーバ13が最下方向wd6を向いている場合には、運転制御部23は、上下ルーバ13を最下方向wd6に維持する。
【0066】
上述の構成によれば、運転制御部23は、吹出口2bから回収口である吸込口2aへと移動する気流であって、それ自体が気流の衝突を有しない、すなわち、被空調空間において気流の衝突を生まない回収気流を発生させることができる。
図8に示す例では、吹出口2bから見て吸込口2aから最も遠ざかる方向、すなわち、最下方向wd6にて、吹出口2bから風を吹き出す。これにより、吹出された空気は、吸込口2aに戻ってくる空気とぶつかることなく、まず、床面手前ア列に向かって移動する。その後、送風の勢いと、コアンダ効果とによって、空気は、被空調空間の各壁面、具体的には、床面、室内機1の遠位側の側壁面、そして、天井面を経由して、吸込口2aに戻る。このように、回収気流においては、吹出口2bから回収口へ向かうまでの経路が、各壁面沿いに輪のように一方通行にて形成される。すなわち、回収気流自体は気流の衝突を有しない。そのため、被空調空間において気流の衝突を生まない回収気流を発生させることができる。結果として、不純物を発散させることなく、不純物を含んだ空気を効率よく回収口に向かわせることが可能な空気調和機を実現することができる。
【0067】
吸込口2aが、吹出口2bよりも、被空調空間の天井面側に設けられている場合、暖房運転から空気清浄運転に切り替えて、運転制御部23が上下ルーバ13の角度を最下方向wd6に設定すると、不純物の回収にとりわけ適した回収気流を生むことができる。
【0068】
上述の構成によれば、吹出口2bから最下方向wd6にて吹き出された温風は、床面ア列に向かって吹出された後、コアンダ効果に促されて床面、室内機1から遠位側の側壁面、天井面へと循環する。天井面を流れる温風は、被空調空間の床面から天井面に向かって押し上げられる暖気の自然対流にも助けられて衝突を生むことなく吸込口2aに戻ることができる。つまり、遠位側の側壁面から天井面を伝って上面の吸込口2aに戻ろうとする温風の気流は、押し上げられる暖気に支えられて、破線矢印のようには落ち込まずに吸込口2aに戻りきることができる。そのため、天井面を伝って戻ってくる温風と、吹出口2bから吹き出される温風との間で、
図8に示すような衝突は生まれない。以上のとおり、被空調空間において気流の衝突を生まない回収気流を発生させることができ、結果として、不純物を発散させることなく、不純物を含んだ空気を効率よく回収口としての吸込口2aに向かわせることができる。
【0069】
なお、他の例として、吸込口2aが、吹出口2bよりも、被空調空間の床面側に設けられている室内機1が想定される。この場合、運転制御部23は、空気清浄運転において、吹出口2bから被空調空間の天井面方向に風が吹き出されるように上下ルーバ13を制御してもよい。
【0070】
図9は、被空調空間を室内機1から見て右側から捉えた場合のYZ平面図であり、回収気流を示す図である。同図に示す室内機1は、吸込口2aが、吹出口2bよりも、被空調空間の床面側に設けられている。
【0071】
上述の他の例において、具体的には、運転制御部23は、上下ルーバ13の角度を、天井面方向に風が吹き出される最上方向wd1に設定してもよい。運転制御部23は、吸込口2aと吹出口2bとの位置関係が上述のとおりであって、空気清浄運転を実行する直前の空気調和機100の運転状況が、冷房運転、送風運転または非稼働である場合に、空気清浄運転において、上下ルーバ13を最上方向wd1に向けることが好ましい。なお、空気清浄運転を実行する直前において、上下ルーバ13が最上方向wd1を向いている場合には、運転制御部23は、上下ルーバ13を最上方向wd1に維持する。
【0072】
吸込口2aが、吹出口2bよりも、被空調空間の床面側に設けられている場合、冷房運転から空気清浄運転に切り替えて、運転制御部23が上下ルーバ13の角度を最上方向wd1に設定すると、不純物の回収にとりわけ適した回収気流を生むことができる。
【0073】
上述の構成によれば、吹出口2bから最上方向wd1にて吹き出された冷風は、天井面ア列に向かって吹出された後、コアンダ効果に促されて天井面、室内機1から遠位側の側壁面、床面へと循環する。床面を流れる冷風は、被空調空間の天井面から床面に向かって垂れ下がる冷気の自然対流にも助けられて衝突を生むことなく吸込口2aに戻ることができる。つまり、遠位側の側壁面から床面を伝ってくる冷風の気流は、垂れ下がる冷気によって、破線矢印のようには浮き上がらずに吸込口2aの下方まで戻ってくることができる。そのため、床面を伝って戻ってこようとする冷風と、吹出口2bから吹き出されて勢いを保ちながら天井面を伝う冷気との間で、
図9に示すような衝突は生まれない。以上のとおり、被空調空間において気流の衝突を生まない回収気流を発生させることができ、結果として、不純物を発散させることなく、不純物を含んだ空気を効率よく回収口としての吸込口2aに向かわせることができる。
【0074】
空気清浄運転においては、運転制御部23は、左右ルーバ14の動きを停止してもよい。左右ルーバ14は、空気調和運転を実行している間に、被空調空間の空気を均質にすることを目的として被空調空間内の空気を攪拌するように左右方向に振れながら動き続けることがある。上述の構成によれば、空気清浄運転時には、左右ルーバ14の左右に振れる動きが停止される。これにより、被空調空間内に気流の衝突が生まれない回収気流を作ることができ、不純物の発散させることなく、不純物を含んだ空気を効率よく回収口に向かわせることができる。
【0075】
<運転テーブル>
図10は、記憶部11に記憶される運転テーブルのデータ構造の一例を示す図である。運転テーブルにおいて、空気調和機100が実行可能な運転モードにつき、該運転モードを実現するために必要な運転条件が、制御対象ごとに定義されている。なお、図示の運転テーブルは、一例として、吸込口2aが、吹出口2bよりも、被空調空間の天井面側に設けられている室内機1に適合するように生成された運転テーブルを示す。
【0076】
運転テーブルは、例えば、冷房運転における制御対象ごとの運転条件と、暖房運転における制御対象ごとの運転条件と、空気清浄運転における制御対象ごとの運転条件とを定義する。図示の運転テーブルにおいては、制御対象として、上下ルーバ13、左右ルーバ14、圧縮機3、および、ファンモータ15の4つの部材に対する運転条件が定義されている。運転テーブルは、図示されている以外にも、除湿運転における運転条件および送風運転における運転条件を定義するカラムを含んでいてもよい。
【0077】
運転条件決定部22は、例えば、運転モード決定部21が空気清浄運転の実行を決定したとき、運転テーブルを記憶部11から読み出す。そして、運転条件決定部22は、運転テーブルにおける空気清浄運転のカラムを参照し、上下ルーバ13、左右ルーバ14、圧縮機3、および、ファンモータ15の4つの部材に対する運転条件を決定する。
【0078】
運転条件決定部22は、空気清浄運転の直前の空気調和機100の稼動状況に応じて、上下ルーバ13の方向を決定してもよい。一例として、運転条件決定部22は、運転テーブルにしたがって、直前の運転モードが暖房運転か、送風運転か、あるいは、空気調和機100が非稼働であった場合、空気清浄運転における上下ルーバ13の方向を最下方向と決定する。運転条件決定部22は、直前の運転モードが冷房運転であった場合は、冷房運転時の現行の上下ルーバ13の方向を維持することを決定してもよい。
【0079】
運転条件決定部22は、運転テーブルにしたがって、空気清浄運転において、左右ルーバ14の動きを停止すると決定してもよい。運転条件決定部22は、運転テーブルにしたがって、空気清浄運転において、圧縮機3については、空気清浄運転の直前の回転数を維持することを決定してもよい。
【0080】
運転条件決定部22は、空気清浄運転の直前の空気調和機100の稼動、非稼働に応じて、ファンモータ15の回転数を決定してもよい。一例として、運転条件決定部22は、運転テーブルにしたがって、空気調和機100が直前まで稼動していた場合には、その直前の稼動時におけるファンモータ15の回転数を維持することを決定してもよい。そして、空気調和機100が直前まで非稼働であった場合には、回収気流を発生させるために適した所定の回転数にてファンモータ15を駆動させることを決定してもよい。
【0081】
このような運転テーブルを参照することにより、運転条件決定部22は、回収気流を発生させるための運転条件を、直前までの空気調和機100の稼動状況に応じて適切に決定することができる。
【0082】
<処理フロー>
図11は、室内機1の制御部10が実行する処理の流れを示すフローチャートである。本実施形態では、一例として、室内環境センサ12は、空気調和機100が稼動中か非稼動かにかかわらず、被空調空間に係る各種の状態を監視または計測し、その検出信号を制御部10に出力しているものとする。しかし、他の例では、室内環境センサ12は設けられず、運転モード決定部21は、室内環境センサ12から出力される検出信号によらずに、予め定められた条件(例えば、決まった時刻、決まった時間間隔)にて、空気清浄運転を実行してもよい。
【0083】
ステップS101では、運転モード決定部21は、室内環境センサ12から検出信号を取得する。運転モード決定部21は、1以上の室内環境センサ12から取得した1以上の検出信号を分析して、被空調空間の状態を判断する。一例として、運転モード決定部21は、必要に応じて、検出信号と、記憶部11に記憶されている条件情報とを比較してもよい。
【0084】
ステップS102では、運転モード決定部21は、検出信号の分析または比較の結果に基づいて、空気清浄運転開始の条件が成立したか否かを判定する。一例として、運転モード決定部21は、被空調空間において病原体発出動作がなされたか否かを判定する。
【0085】
「病原体発出動作」とは、動物または人などの「病原体発出源」によって行われる、病原体を発出し得る動作を指す。病原体発出動作としては、例えば、くしゃみ、激しい運動、大声出すなどの動作が想定されている。別の例では、運転モード決定部21は、「病原体発出源」が被空調空間に入室したことに基づいて、空気清浄運転開始の条件が成立したと判定してもよい。この条件は、記憶部11の条件情報において予め定義されていてもよい。
【0086】
運転モード決定部21は、被空調空間において、病原体発出動作がなされていないと判定した場合には、S102のNOからS103に処理を進める。一方、運転モード決定部21は、被空調空間において、病原体発出動作がなされたと判定した場合には、S102のYESからS104に処理を進める。
【0087】
例えば、室内環境センサ12が被空調空間を撮影する撮影装置である場合、撮影装置が取得した検出信号、すなわち、映像に、病原体発出動作が写っていることに基づいて、運転モード決定部21は、空気清浄運転開始の条件が成立したと判定してもよい。室内環境センサ12が、被空調空間で発生する音を取得する音声入力装置であるとする。この場合は、運転モード決定部21は、音声入力装置が取得した検出信号、すなわち、音声に、病原体発出動作を示す音(くしゃみ音、咳音など)が含まれていることに基づいて、空気清浄運転開始の条件が成立したと判定してもよい。
【0088】
ステップS103では、運転モード決定部21は、運転モードの変更を行わず、したがって、現行の稼動状況が維持される。
【0089】
ステップS104では、運転モード決定部21は、空気清浄運転を実行することを決定する。以上のとおり、運転モード決定部21は、撮影装置から取得される映像および音声入力装置から取得される音声の少なくとも1つに基づいて、病原体を発出する病原体発出源が被空調空間に存在すること、または、被空調空間において病原体発出源により病原体発出動作が実行されたことを検知して、空気清浄運転を開始することを決定してもよい。
【0090】
ステップS105では、運転条件決定部22は、運転テーブルにしたがって、左右ルーバ14を停止させることを決定する。運転制御部23は、左右ルーバ14を停止する。S104で開始された空気清浄運転の前から、左右ルーバ14が動いていなかった場合には、運転制御部23は、左右ルーバ14の停止の状態を維持する。
【0091】
ステップS106では、運転条件決定部22は、S104の空気清浄運転前において、冷房運転が実行されていたか否かを判定する。冷房運転が実行されていた場合には、運転条件決定部22は、S106のYESからS107へ処理を進める。非稼働を含め、冷房運転以外の稼動状況であった場合には、運転条件決定部22は、S106のNOからS108へ処理を進める。
【0092】
ステップS107では、運転条件決定部22は、運転テーブルにしたがって、左右ルーバ14以外の他の制御対象の部材について運転条件を変更しないことを決定する。すなわち、空気清浄運転において、左右ルーバ14が停止される以外は、空気清浄運転前の冷房運転における運転条件が維持される。これにより、空気調和機100は、左右ルーバ14の動きを止めて、空気清浄運転が開始される前の空気調和運転時よりも気流の衝突を抑制することができ、不純物の発生を可能な限り抑えることができる。
【0093】
ステップS108では、運転条件決定部22は、運転テーブルにしたがって、上下ルーバ13の向きを最下方向にすることを決定する。運転制御部23は、この決定にしたがって、上下ルーバ13の向きを最下方向に設定する。運転制御部23は、空気清浄運転を終了させるまで、上下ルーバ13の向きを最下方向に維持してもよい。
【0094】
ステップS109では、運転条件決定部22は、S104の空気清浄運転前において、空気調和機100が非稼働であったか否かを判定する。非稼働であった場合には、運転条件決定部22は、S109のYESからS110へ処理を進める。冷房運転以外の空気調和運転が実行されていた場合には、運転条件決定部22は、S109のNOからS111へ処理を進める。
【0095】
ステップS110では、運転条件決定部22は、運転テーブルにしたがって、ファンモータ15を所定の回転数にて駆動させることを決定する。運転制御部23は、決定された所定の回転数にてファンモータ15を駆動させる。これにより、空気調和機100は、非稼働の状態から、空気清浄運転稼動の状態へと遷移する。具体的には、S108にて定められた風向にて所定の風量の風を吹き出すことにより、被空調空間に、回収気流を生むことができる。空気清浄運転によって回収気流を発生させることにより、該空気清浄運転前よりも効率的に不純物を回収することができる。
【0096】
ステップS111では、運転条件決定部22は、運転テーブルにしたがって、ルーバ以外の他の制御対象の部材について運転条件を変更しないことを決定する。すなわち、回収気流を生むために、左右ルーバ14が停止され、上下ルーバ13の風向が調節されるが、温度および風量に関しては空気清浄運転前の暖房運転または送風運転の運転条件が維持される。これにより、直前の空気調和運転によりもたらされた快適性を損なわずに、また、該空気調和運転により生じた既存の気流に阻害されることなく、被空調空間に回収気流を生むことができる。空気清浄運転によって回収気流を発生させることにより、該空気清浄運転前よりも効率的に不純物を回収することができる。
【0097】
<作用効果>
上述の構成および方法によれば、室内機1の制御部10は、空気中の不純物を効率よく回収するための運転である空気清浄運転を実行することができる。空気清浄運転は、空気調和運転実行中でも、非稼働時でも、必要に応じて適宜に実行されればよい。例えば、空気清浄運転は、被空調空間において所定の条件が満たされたときに実行されてもよい。所定の条件は、限定されないが、一例として、動物や人など“ウイルス発出源”が入室したこと、くしゃみ、激しい動き、大声など“ウイルス発出源”による“ウイルス発出動作”が行われたこと、などと定められていてもよい。
【0098】
空気清浄運転では、制御部10の運転制御部23によって上下ルーバ13、左右ルーバ14およびファンモータ15の少なくともいずれかが制御されることにより、それ自体が気流の衝突を有しない、すなわち、被空調空間において気流の衝突を生まない回収気流を発生させることができる。このような空気清浄運転が実行されることにより、気流の衝突によって不純物を発散させることなく、不純物を含んだ空気を効率よく回収口に向かわせることができる。
【0099】
〔変形例〕
(空気清浄運転下での風量制御)
運転条件決定部22は、空気清浄運転の直前に空気調和運転が実行されていた場合、空気清浄運転下における風量を変更することを決定してもよい。具体的には、運転条件決定部22は、ファンモータ15の回転数を、直前の空気調和運転時の回転数未満となるように決定してもよい。これにより、空気調和運転から空気清浄運転に切り替えられたとき、風量は切り替え前と比較して弱められる。そのため、空気清浄運転時に、在室者に対して、風の当たり方に関して不快感または違和感を与えずに、風向を変更することができる。
【0100】
(空気清浄運転下での風向制御)
運転制御部23は、空気清浄運転の開始に際して、上下ルーバ13の向きを変更するとき、空気調和運転時に変更するときよりも早い速度で、向きの変更を行ってもよい。これにより、上下ルーバ13の向きが変更中である時間を短くし、風向をすばやく、最上方向wd1または最下方向wd6に向けることができる。そのため、多くの場合被空調空間の中段あたりにいる在室者に直接風が当たる時間を短くして、在室者に対して不快感または違和感を与えないようにすることができる。
【0101】
(空気清浄運転の開始通知)
室内機1は、音声出力部、表示部、または、在室者が携帯する通信端末装置に対して情報を通信する通信部を備えていてもよい。そして、室内機1の制御部10は、報知部を備えていてもよい。報知部は、運転制御部23が空気清浄運転を開始するときに、空気清浄運転が開始される旨を通知する開始通知を出力するものである。報知部は、音声データとしての開始通知を音声出力部から出力してもよい。報知部は、テキストデータまたは画像データとしての開始通知を表示部に出力してもよい。報知部は、任意のデータ形式の開始通知を在室者の通信端末装置に送信してもよい。
【0102】
(在室者の不在を想定した空気清浄運転~(1))
空気清浄運転で生じる回収気流は、被空調空間に居る在室者の活動によって発出した病原体を、他の在室者が吸気しないように、発散を抑制しつつすばやく室内機1に回収することに寄与する。したがって、空気清浄運転は、被空調空間に在室者がいる間に実行されることが有益である。
【0103】
しかし、被空調空間が、さまざまな利用者が入れ替わりで次々に使用する空間(会議室、自習室、カラオケボックス、飲食店の個室など)である場合には、在室者の不在期間に、集中的に空気清浄運転を実行することも有益である。
【0104】
本変形例では、記憶部11に記憶されている条件情報は、開始条件として、「在室者が退室したことを検知したとき」と定義されていてもよい。あるいは、条件情報は、在室者の退室と判断し得る各種センサの閾値を開始条件として保持してもよい。運転モード決定部21は、室内環境センサ12から供給される検出信号に基づいて、在室者の退室を検知した場合に、空気清浄運転の開始を決定する。
【0105】
在室者が不在である期間の空気清浄運転においては、在室者の快適性よりも回収効率または省エネルギー化を優先することができる。したがって、本変形例では、運転テーブルにおいて、人が不在のときの空気清浄運転に関する運転条件が定義されていてもよく、運転制御部23は、該運転テーブルにしたがって、人が不在のときの空気清浄運転を実行してもよい。例えば、人が不在時の空気清浄運転において、運転制御部23は、ファンモータ15の回転数を最大にして、最大風量にて回収気流を発生させてもよい。例えば、運転制御部23は、人が不在時の空気清浄運転においては、圧縮機3の回転速度を落とすかまたは停止して、温度または湿度の調節を伴わずに風向および風量の制御によって回収気流を発生させてもよい。
【0106】
(在室者の不在を想定した空気清浄運転~(2))
室内機1は、被空調空間を使用する利用者が携帯する通信端末装置と通信する通信部を備えていてもよい。そして、運転モード決定部21は、通信部が通信端末装置から取得した位置情報に基づく利用者の位置が、被空調空間の位置まで所定距離未満に近づいたときに、空気清浄運転を開始することを決定してもよい。
【0107】
このようにすれば、利用者が被空調空間を使用する直前に、空気清浄運転をあらかじめ実行しておくことができ、利用者が使用する頃には被空調空間の空気を清浄に保つことができる。
【0108】
(不活化部)
室内機1の回収口としての吸込口2aには、不活化対象、例えば、バクテリア、ウイルス、菌類、原生動物、寄生虫などの病原体を捕捉可能な高性能空気清浄フィルタが、不活化部として設けられていてもよい。例えば、吸込口2aの全面にHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)が設けられていてもよい。
【0109】
他の例では、不活化部として、
図2に示すとおり、上下ルーバ13の面状に形成された内面3a(面状部)には、光触媒シート32が不活化部として張り付けられていてもよい。光触媒シート32は、光(特に紫外光)が照射されることによって、光触媒反応を生じるように光触媒を担持している。
【0110】
光触媒シート32は、図示はしないが、ベースとなる基材層と、光触媒を担持する光触媒層と、張り付けられる張付層とを有している。光触媒層は、光触媒となる物質(例えば二酸化チタン)が基材層の表面側に塗布されるなどによって形成されている。張付層は、基材層の裏面側に設けられ、粘着剤などによって形成されている。
【0111】
高いエネルギーを有する紫外光などの光を光触媒シート32の光触媒層に照射すると、光触媒層の触媒反応によって空気中の酸素および水分からOHラジカルなどの活性酸素を生成する。このOHラジカルは、強い酸化力を有しており、その酸化力によってウイルス、菌などの不活化対象を不活化する。
【0112】
(除湿運転)
空気調和機100は、冷房運転と同様に被空調空間に室温よりも温度が低い冷風をもたらす方式の除湿運転(弱冷房除湿)を、空気調和運転として実行してもよい。この場合、運転条件決定部22は、弱冷房除湿方式の除湿運転を冷房運転と同等に扱ってもよい。例えば、運転条件決定部22は、
図11に示すステップS106において、空気清浄運転前に除湿運転が実行されていた場合には、S106のYESからS107へ処理を進めてもよい。
【0113】
空気調和機100は、冷風の排出を伴わない除湿運転(再熱除湿)を、空気調和運転として実行してもよい。この場合、運転条件決定部22は、再熱除湿方式の除湿運転を送風運転と同等に扱ってもよい。例えば、運転条件決定部22は、
図11に示すステップS106において、空気清浄運転前に除湿運転が実行されていた場合には、S106のNOからS108へ処理を進めた後、S109のNOからS111へ処理を進めてもよい。
【0114】
〔ソフトウェアによる実現例〕
空気調和機100の制御ブロック(特に、運転モード決定部21、運転条件決定部22、および、運転制御部23)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0115】
後者の場合、空気調和機100は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば少なくとも1つのプロセッサ(制御装置)を備えていると共に、前記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な少なくとも1つの記録媒体を備えている。そして、前記コンピュータにおいて、前記プロセッサが前記プログラムを前記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。前記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。前記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、前記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、前記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して前記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、前記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0116】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る空気調和機100は、室内機1の吹出口2bに設けられたルーバ(上下ルーバ13、左右ルーバ14)と、前記室内機の吸込口2aから吸い込まれた空気を前記吹出口から吹き出すように送風ファン16を回転させるファンモータ15と、前記空気調和機の動作を制御する制御装置(制御部10)とを備え、前記制御装置は、被空調空間において所定の条件が満足された場合に、該被空調空間の空気中の不純物を回収するための空気清浄運転を実行するものであり、前記制御装置は、前記空気清浄運転において、前記ルーバおよび前記ファンモータの少なくともいずれかを制御して、前記被空調空間の空気を前記吹出口から前記不純物を回収する回収口まで移動させる回収気流であって、前記被空調空間内に気流の衝突を生まない回収気流を生じさせる運転制御部23を備える。
【0117】
なお、上述の制御装置は、被空調空間において所定の条件が満足された場合に、前記空気清浄運転を実行することを決定する運転モード決定部21と、空気清浄運転を実現するために、ルーバおよびファンモータの少なくともいずれかを含む制御対象に行わせる動作の内容を示す運転条件を決定する運転条件決定部22と、決定された運転条件にて動作するようにルーバおよびファンモータの少なくともいずれかを制御する運転制御部23とを備えていてもよい。
【0118】
上述の構成によれば、制御装置は、被空調空間において所定の条件が満たされると、空気清浄運転を実行する。所定の条件は、限定されないが、一例として、「動物や人など“ウイルス発出源”が入室すること」であってもよいし、「くしゃみ、激しい動き、大声など“ウイルス発出源”による“ウイルス発出動作”が行われること」であってもよい。
【0119】
空気清浄運転では、制御装置によってルーバおよびファンモータの少なくともいずれかが制御されることにより、被空調空間において気流の衝突を生まない回収気流を発生させることができる。このような空気清浄運転が実行されることにより、気流の衝突によって不純物を発散させることなく、不純物を含んだ空気を効率よく回収口に向かわせることができる。
【0120】
本発明の態様2に係る空気調和機では、前記態様1において、前記回収口は、前記室内機に設けられた前記吸込口2aであり、前記制御装置は、前記空気清浄運転において、前記吹出口からの風が、水平方向よりも前記吸込口から遠ざかる方向にて吹き出されるように前記ルーバを制御してもよい。例えば、制御装置は、前記吸込口から最も遠ざかる方向へ向けて前記吹出口から風が吹き出されるように前記ルーバを制御してもよい。
【0121】
上述の構成によれば、制御装置は、吹出口から吹き出される風の流れと吸込口に戻ってくる空気の流れとの衝突を生むことのない回収気流を作ることができる。一例を挙げると、回収気流は、吹出口から、吹出された後、コアンダ効果に促されて、被空調空間の各壁面(例えば、床面、室内機の遠位側の側壁面、天井面)を経由して吸込口に戻る気流である。
【0122】
本発明の態様3に係る空気調和機では、前記態様2において、前記吸込口は、前記吹出口よりも、前記被空調空間の天井面側に設けられており、前記ルーバは、前記吹出口から吹き出される空気の上下方向の風向を調節する上下ルーバ13を含み、前記制御装置は、前記空気清浄運転において、前記吹出口から前記被空調空間の床面方向(風向wd6)に風が吹き出されるように前記上下ルーバを制御してもよい。
【0123】
本発明の態様4に係る空気調和機では、前記態様3において、前記制御装置は、前記空気清浄運転を開始する直前まで暖房運転を実行していた場合、前記空気清浄運転において、該暖房運転時の前記上下ルーバの角度を、前記床面方向に風が吹き出される最下方向wd6に設定してもよい。
【0124】
本発明の態様5に係る空気調和機では、前記態様2において、前記吸込口は、前記吹出口よりも、前記被空調空間の床面側に設けられており、前記ルーバは、前記吹出口から吹き出される空気の上下方向の風向を調節する上下ルーバ13を含み、前記制御装置は、前記空気清浄運転において、前記吹出口から前記被空調空間の天井面方向(風向wd1)に風が吹き出されるように前記上下ルーバを制御してもよい。
【0125】
本発明の態様6に係る空気調和機では、前記態様5において、前記制御装置は、前記空気清浄運転を開始する直前まで冷房運転を実行していた場合、前記空気清浄運転において、該冷房運転時の前記上下ルーバの角度を、前記天井面方向に風が吹き出される最上方向wd1に設定してもよい。
【0126】
本発明の態様7に係る空気調和機では、前記態様1から6のいずれかにおいて、前記ルーバは、前記吹出口から吹き出す空気の左右方向の風向を調節する左右ルーバ14を含み、前記制御装置は、前記空気清浄運転において、前記左右ルーバの動きを停止してもよい。
【0127】
本発明の態様8に係る空気調和機では、前記態様1から7のいずれかにおいて、前記被空調空間を撮影する撮影装置および前記被空調空間で発生する音を取得する音声入力装置の少なくとも1つが、前記制御装置と通信可能に設けられており、前記制御装置は、前記撮影装置から取得される映像および前記音声入力装置から取得される音声の少なくとも1つに基づいて、病原体を発出する病原体発出源が前記被空調空間に存在すること、または、前記被空調空間において前記病原体発出源による病原体発出動作が実行されたことを検知して、前記空気清浄運転を開始してもよい。
【0128】
本発明の態様9に係る制御方法は、空気調和機の動作を制御する制御方法であって、該空気調和機は、室内機の吹出口に設けられたルーバと、前記室内機の吸込口から吸い込まれた空気を前記吹出口から吹き出すように送風ファンを回転させるファンモータと、前記空気調和機の動作を制御する制御装置とを備え、前記制御方法は、前記制御装置が、被空調空間において所定の条件が満足された場合に、該被空調空間の空気中の不純物を回収するための空気清浄運転を実行するステップ(S104~S111)を含み、前記空気清浄運転を実行するステップでは、前記制御装置は、前記ルーバおよび前記ファンモータの少なくともいずれかを制御して、前記被空調空間の空気を前記吹出口から前記不純物を回収する回収口まで移動させる回収気流であって、前記被空調空間内に気流の衝突を生まない回収気流を生じさせる。
【0129】
本発明の各態様に係る空気調和機100は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを空気調和機100が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより空気調和機100をコンピュータにて実現させる空気調和機100の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0130】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0131】
1 室内機
3 圧縮機
4 操作部
10 制御部(制御装置)
11 記憶部
12 室内環境センサ
13 上下ルーバ(ルーバ)
14 左右ルーバ(ルーバ)
15 ファンモータ
16 送風ファン
21 運転モード決定部
22 運転条件決定部
23 運転制御部
100 空気調和機
2a 吸込口
2b 吹出口
wd1 最上方向(天井面方向)
wd6 最下方向(床面方向)