(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】端子台
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20241108BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20241108BHJP
H01F 27/245 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H01F27/29 J
H01F37/00 M
H01F37/00 F
H01F27/29 V
H01F27/245
(21)【出願番号】P 2020189560
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【氏名又は名称】松岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍太
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】実公昭48-003885(JP,Y1)
【文献】実開昭48-092434(JP,U)
【文献】実開昭52-161444(JP,U)
【文献】登録実用新案第3141709(JP,U)
【文献】米国特許第04602235(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/29
H01F 37/00
H01F 27/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに非平行な平面である第1、第2及び第3の外面を有するコアを備えたコイル装置に取り付け可能な端子台であって、
前記コアの前記第1の外面に当てられ、前記コアに対して前記端子台を前記第1の外面に垂直な第1の方向において位置決めする第1の位置決め部と、
前記コアの前記第2の外面に当てられ、前記コアに対して前記端子台を前記第2の外面に垂直な第2の方向において位置決めする第2の位置決め部と、
前記コアの前記第3の外面に当てられ、前記コアに対して前記端子台を前記第3の外面に垂直な第3の方向において位置決めする第3の位置決め部と、
を備え、
前記第1、前記第2及び前記第3の位置決め部が前記端子台の本体に固定されていて、
前記端子台が
、前記コアに対して位置決めされた状態において、前記第1、前記第2及び前記第3の位置決め部がそれぞれ前記コアから離れる方向に
、移動可能となるように構成された、
端子台。
【請求項2】
前記コアが積層鋼板であり、
前記第1及び前記第2の位置決め部が、前記コアと溶接可能な金属から形成された、
請求項1に記載の端子台。
【請求項3】
前記
本体が、樹脂から形成された、
請求項2に記載の端子台。
【請求項4】
前記第3の位置決め部が、樹脂により前記本体と一体に形成された、
請求項3に記載の端子台。
【請求項5】
前記第3の位置決め部が、前記第3の外面と対向する前記本体の一面から突出し、前記端子台が前記コアに対して位置決めされた状態において、前記第3の外面と前記一面との間に所定の距離を確保する、
請求項
1から請求項4のいずれか一項に記載の端子台。
【請求項6】
前記第3の位置決め部が、少なくとも3点で前記第3の外面と接触し、
前記端子台の重心を通る前記第3の外面の垂線が、前記3点を頂点とする三角形を通過するように前記第3の位置決め部が形成された、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の端子台。
【請求項7】
前記第1の位置決め部が、前記第1の外面と平行に配置される平板であり、
前記第2の位置決め部が、前記第2の外面と平行に配置される平板であり、
前記第1及び前記第2の位置決め部が、前記本体に植え込まれた、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の端子台。
【請求項8】
前記第1及び前記第2の位置決め部が一体に形成された、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の端子台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、端子台付きのコイル装置が記載されている。端子台付きのコイル装置は、コイル装置の本体(コア及びコイル)に対して端子台を所定の位置に正確に配置することにより、設置が容易になる。
【0003】
特許文献1のコイル装置では、コアの外側面に台形状の嵌合溝(凹部)を設け、樹脂製の端子台の支柱をコアの嵌合溝に嵌入させることにより、コアに対して端子台が側面方向に位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のコイル装置は、嵌合により位置決めする構成が採用されているため、雄形状(支柱)と雌形状(凹部)の位置を正確に合わせる必要があり、特に大型の端子台では、治具を使用せずに端子台を取り付けることが難しい。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、治具を使用せずに端子台の位置決めを容易に行えるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る端子台は、互いに非平行な平面である第1、第2及び第3の外面を有するコアを備えたコイル装置に取り付け可能な端子台であって、コアの第1の外面に当てられ、コアに対して端子台を第1の外面に垂直な第1の方向において位置決めする第1の位置決め部と、コアの第2の外面に当てられ、コアに対して端子台を第2の外面に垂直な第2の方向において位置決めする第2の位置決め部と、コアの第3の外面に当てられ、コアに対して端子台を第3の外面に垂直な第3の方向において位置決めする第3の位置決め部と、を備え、端子台がコアに対して位置決めされた状態において、第1、第2及び第3の位置決め部がそれぞれコアから離れる方向に移動可能となるように構成されたものである。
【0008】
上記の端子台において、コアが積層鋼板であり、第1及び第2の位置決め部が、コアと溶接可能な金属から形成された構成としてもよい。
【0009】
上記の端子台において、端子台が、樹脂から形成された本体を備えた構成としてもよい。
【0010】
上記の端子台において、第3の位置決め部が、第3の外面と対向する本体の一面から突出し、端子台がコアに対して位置決めされた状態において、第3の外面と一面との間に所定の距離を確保する構成としてもよい。
【0011】
上記の端子台において、第3の位置決め部が、樹脂により本体と一体に形成された構成としてもよい。
【0012】
上記の端子台において、第1の位置決め部が、第1の外面と平行に配置された平板であり、第2の位置決め部が、第2の外面と平行に配置された平板であり、第1及び第2の位置決め部が、本体に植え込まれた構成としてもよい。
【0013】
上記の端子台において、第3の位置決め部が、少なくとも3点で第3の外面と接触し、
端子台の重心を通る第3の外面の垂線が、3点を頂点とする三角形を通過するように第3の位置決め部が形成された構成としてもよい。
【0014】
上記の端子台において、第1及び第2の位置決め部が一体に形成された構成としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態によれば、治具を使用せずに端子台の位置決めを容易に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る端子台付きリアクトルの外観図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る端子台の外観図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る端子台の外観図である。
【
図5】端子台の本体とコアとの位置関係を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態の変形例に係る端子台の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の又は対応する事項には、同一の又は対応する符号を付して、重複する説明を省略する。また、各図において、符号が共通する事項が複数表示される場合は、当該複数の表示の一部について符号の付記を適宜省略する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る端子台40を備えたリアクトル1(コイル装置)の外観図である。
【0019】
以下の説明において、
図1における右上から左下へ向かう方向をX軸方向(第1の方向)、左上から右下へ向かう方向をY軸方向(第2の方向)、下から上へ向かう方向をZ軸方向(第3の方向)と定義する。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに直交する方向である。なお、リアクトル1は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びそれらの中間の方向のいずれの方向を鉛直に向けて使用してもよい。
【0020】
なお、本実施形態のリアクトル1は、Z軸正方向を鉛直上向きにした状態で端子台40が平易に取り付けられるように構成されている。そのため、以下の説明において、Z軸正方向を上、Z軸負方向を下と呼ぶ。
【0021】
リアクトル1は、本体1aと、本体1a(具体的には、後述するコア10)に取り付けられた端子台40を備えている。本体1aは、一対の平行な脚部12(
図5)を有するO形のコア10と、コア10の各脚部12に被せられた一対の筒状のボビン30と、各ボビン30に巻き付けられた一対のコイル20を備えている。
【0022】
コア10は、2つのL形コア11(
図5)から組み立てられている。本実施形態のL形コア11は、複数枚の電磁鋼板(例えば、ケイ素鋼板)を積層して、例えば、接着、ろう付け又は溶接等により一体にした積層コアである。
【0023】
コイル20は、エナメル等の絶縁被覆が施された導線を螺旋状に巻いたものである。導線には、例えば、銅やアルミニウム等から形成された平角線や丸線が使用される。より具体的には、本実施形態のコイル20は、平角線をエッジワイズ巻きしたものであるが、導線の断面形状や巻き方はこの構成に限定されない。
【0024】
ボビン30は、コア10とコイル20との間で十分な電気絶縁を確保するために、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)等の電気絶縁性を有する材料から形成される。
【0025】
図2は、端子台40を上方から見た斜視図である。
図3は、端子台40を下方から見た斜視図である。
図4は、端子台40の底面図である。端子台40は、本体41と、4つのバスバー48と、ブラケット43(第1の位置決め部)と、ブラケット44(第2の位置決め部)を備えている。なお、
図4においては、バスバー48の図示が省略されている。
【0026】
端子台40の本体41は、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)等の電気絶縁性を有する材料から形成される。本体41は、インサート成形により、バスバー48と一体に成形されている。
【0027】
バスバー48は、銅やアルミニウム等の導体から形成されている。バスバー48の一端には、コイル20の端部21が、溶接又はろう付けにより接合されている。バスバー48の他端部は、本体41に埋め込まれている。バスバー48の他端には、平座金状(あるいは、円環板状)の端子部48aが形成されている。端子部48aは、上面が露出し、端子42を構成する。
【0028】
本体41には、バスバー48と同数のナット46(
図4)が埋め込まれている。ナット46は、対応するバスバー48の端子部48aと同軸に配置され、ナット46のねじ穴は端子部48aの穴と連絡している。リアクトル1を回路に接続する際には、端子42に回路の配線の先端(例えば圧着端子)を載せて、ナット46にボルト(不図示)を嵌めて締め付けることで、配線が端子42に接続される。
【0029】
図3に示されるように、本体41の下面41aには2つの矩形の溝穴41b及び41cが形成され、溝穴41b及び41cにはブラケット43及び44の一端部がそれぞれ圧入されている。なお、インサート成形により本体41をブラケット43及び44と一体に成形してもよい。
【0030】
図1に示されるように、ブラケット43はX軸方向に対して垂直に(すなわち、第1側面10xと平行に)配置され、ブラケット44はY軸方向に対して垂直に(すなわち、第2側面10yと平行に)配置されている。ブラケット43は、その裏面43b(X軸負方向側の面)がコア10のX軸正方向側の外面である第1側面10x(第1の外面)に重なった状態で、コア10に固定されている。また、ブラケット44は、その裏面44b(Y軸負方向側の面)がコア10のY軸正方向側の外面である第2側面10y(第2の外面)に重なった状態で、コア10に固定されている。このように、ブラケット43及び44がコア10の第1側面10x及び第2側面10yにそれぞれ当てられることにより、水平な二方向(X軸方向及びY軸方向)におけるコア10に対する端子台40の位置決めが行われる。
【0031】
端子台40が位置決めされた状態で、ブラケット43及び44がコア10に固定される。本実施形態のブラケット43及び44は、コア10(積層鋼板)との溶接が可能な鋼板等の金属から形成された部品であり、溶接によりコア10に固定される。ブラケット43及び44を鋼等の強度の高い材料から形成することにより、端子台40に加わるZ軸周りのトルクに対する剛性を高めることができる。溶接以外の固定方法(例えば、ねじ止めや接着等)によってブラケット43及び44をコア10に固定してもよい。その場合は、別の材料(例えば、アルミニウムやマグネシウム合金等の非鉄金属又は樹脂等)から形成されたブラケット43及び44を使用してもよい。例えば、ブラケット43及び44を、本体41と同じ樹脂から、射出成形等により本体41と一体に形成してもよい。
【0032】
図1は、ブラケット43及び44がコア10に溶接される前の状態を示している。ブラケット43及び44には、コア10の溶接を行う箇所の表面を露出させる開口部43a及び44aがそれぞれ形成されている。
【0033】
図3に示されるように、本体41の下面41aには、下方へ突出する2つの平板状の脚41d及び41e(第3の位置決め部)が形成されている。
【0034】
図5は、コア10と端子台40の本体41との位置関係を示した図である。
図5においては、説明の便宜上、コイル20、ボビン30及び端子台40のバスバー48の図示が省略されている。
【0035】
図5に示されるように、端子台40は、Z軸方向に垂直なコア10の上面10z(第3の外面)に載置される。本体41の下面41aから突出する2つの脚41d及び41eの下面41da及び41ea(
図3)が、コア10の上面10zと接触し、端子台40の本体41は2つの脚41d及び41eによって支持される。2つの脚41d及び41eの下面41da及び41eaは、本体41の下面41aと平行な略一平面上に形成されている。また、コア10の上面10zも略一平面上に形成されている。そのため、端子台40はコア10の上面10zにガタツキなく載置され、Z軸方向において位置決めされる。
【0036】
図4に示されるように、端子台40の2つの脚41d及び41e(具体的には、下面41da及び41ea)の大きさ、形状及び配置は、端子台40の重心Gを通る鉛直線V
Gが下面41daと下面41eaとで挟まれた領域(
図4においてハッチングが付された領域)を通るように決められている。言い換えれば、下面41da及び下面41eaのいずれかに含まれる3点(すなわち、端子台40を支持する3つの支持点)を頂点とする三角形Tの少なくとも1つ(一例を
図4に破線で示す。)に鉛直線V
Gが通るように、下面41da及び41eaの大きさ、形状及び配置が決められている。端子台40を支持する3点を頂点とした三角形Tの領域に重心Gを通る鉛直線V
Gが通るようにすることで、端子台40は当該3点によって安定に支持され、自立することが可能になる。
【0037】
なお、
図4においてハッチングが付された領域(すなわち、下面41daと下面41eaとで囲まれた領域)は、端子台40を支持する任意の3点(すなわち、下面41da及び下面41eaのいずれかに含まれる任意の3点)を頂点とする三角形Tを重ね合わせたものとなっている。
【0038】
端子台40の脚が1つ又は3つ以上の場合についても、いずれかの脚の下面に含まれる点を頂点とする三角形Tの少なくとも1つに鉛直線VGが通るように、各脚の下面の大きさ、形状及び配置を定めることにより、端子台40の自立が可能になる。
【0039】
本実施形態では、端子台40の本体41の下面41aに脚41d及び41eを設けることにより、脚41d及び41eによってコア10の上面10zと本体41の下面41aとの間に所定の距離が確保され、本体41の下面41aがコア10から離れた状態となっている。これに伴い、ブラケット43及び44のZ軸方向における長さが伸ばされ、ブラケット43及び44の溶接箇所(開口部43a及び44a)から本体41に埋め込まれた箇所までの距離(放熱距離)も伸ばされている。そのため、ブラケット43及び44から外気への放熱が増えるため、溶接時にブラケット43及び44の本体41に埋め込まれた箇所の温度が下がり、ブラケット43及び44から伝わる熱による本体41の融解が軽減される。
【0040】
次に、リアクトル1の本体1aに端子台40を取り付ける手順を説明する。リアクトル1の本体1aへの端子台40の取り付けは、コア10の上面10zを鉛直方向上向きにした状態で行われる。
【0041】
まず、端子台40の本体41の下面41aをコア10の上面10zに向けて、端子台40がコア10の上面10zに載置される。具体的には、脚41d及び41eがコア10の上面10zに載り、ブラケット43及び44がコア10から外れるように、端子台40がコア10に載せられる。このとき、端子台40とコア10とを嵌合させる必要がないため、端子台40の正確な位置決めを行う必要は無く、端子台40をコア10上の大凡の取り付け位置に置くだけで良い。端子台40をコア10に載せるだけで、Z軸方向において端子台40が位置決めされる。
【0042】
次に、第1側面10x及び第2側面10yがブラケット43及び44の裏面43b及び44b(
図4)にそれぞれ重なるまで、端子台40をコア10上でスライドさせる。このとき、第1側面10x及び第2側面10yによってブラケット43及び44が正確な位置に案内されるため、ブラケット43及び44が第1側面10x及び第2側面10yにそれぞれ近づく方向に端子台40をスライドさせるだけで、X軸方向及びY軸方向において端子台40が位置決めされる。
【0043】
次に、ブラケット43及び44がコア10の第1側面10x及び第2側面10yに溶接される。次に、各コイル20の端部21が端子台40の対応するバスバー48の一端部に接合されて、リアクトル1が完成する。
【0044】
本実施形態では、端子台40に設けられた第1の位置決め部(ブラケット43)、第2の位置決め部(ブラケット44)及び第3の位置決め部(脚41d及び41e)により、直交3方向(言い換えれば、互いに非平行な3方向)においてコア10に対して端子台40が位置決めされる。
【0045】
本実施形態の端子台40は、端子台40をコア10上の所定の取り付け位置に配置したときに、端子台40がコア10と嵌合しないように構成されている。端子台40の3つの位置決め部(第1、第2及び第3の位置決め部)も、コア10と嵌合しないように設けられている。
【0046】
すなわち、コア10上の所定の取り付け位置に配置された端子台40は、上記の3方向において移動の自由度が与えられている。具体的には、取り付け位置に配置された端子台40は、X軸正方向、Y軸正方向、及びZ軸正方向において移動が妨げられていない。言い換えれば、端子台40は、コア10に対して位置決めされた状態において、3つの位置決め部がコア10(第1側面10x、第2側面10y及び上面10z)から離れる方向に移動可能となるように構成されている。
【0047】
そのため、端子台40をコア10の上面10zに載置する際に、端子台40をコア10に嵌合させるための精密な位置決めは不要であり、コア10に端子台40を載置する作業が容易になっている。また、端子台40をコア10の上面10zに載置するだけで、端子台40がZ軸方向に位置決めされるようになっている。しかも、端子台40は自立できるため、Z軸方向に位置決めした状態が自然に維持される。
【0048】
また、X軸及びY軸方向の位置決めも、ブラケット43及び44がコア10の第1側面10x及び第2側面10yにそれぞれ当たるまで端子台40をコア10上でスライドさせるだけで、容易に行うことができる。
【0049】
本実施形態によれば、端子台40と嵌合するための嵌合構造をコア10に設ける必要がないため、コアの製造コストを増大させることがない。また、本実施形態によれば、端子台40を取り付けるために専用のコア10を用意する必要がないため、部品の共通化を妨げることもない。また、本実施形態によれば、コア10に嵌合構造を設けることによるリアクトルの本体1aの性能の低下も回避することができる。
【0050】
図6は、本発明の実施形態の変形例である端子台40Aの底面図である。本変形例では、上記の実施形態のブラケット43とブラケット44を一体化したL字状のブラケット45が、端子台40Aの本体41Aの下面41Aaに植え込まれている。ブラケット43及び44を一体化することにより、部品点数が減り、生産コストの低減が可能になる。
【0051】
一方、上記の実施形態では、分離した2つのブラケット43及び44が端子台40の長手方向に間隔を広くとって配置されている。これにより、端子台40に加わるZ軸周りのトルクに対する剛性が高められている。
【0052】
また、ブラケット43及び44は、互いに異なる水平方向に(具体的には、ブラケット43はY軸方向に、ブラケット44はX軸方向に)延びているため、端子台40に加わるZ軸周りのトルクに対する剛性が高くなっている。変形例のブラケット45についても、X軸方向に延びる部分とY軸方向に延びる部分を有するため、Z軸周りのトルクに対する剛性が高くなっている。
【0053】
以上が本発明の実施形態の説明であるが、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば明細書中に記載された一つ以上の実施形態の技術構成の少なくとも一部と公知の技術構成とを適宜組み合わせたものも本発明の範囲に含まれる。
【0054】
上記の実施形態では、コア10の互いに垂直な3つの外面(第1側面10x、第2側面10y及び上面10z)にブラケット43(第1位置決め部)、ブラケット44(第2位置決め部)及び脚41d、41e(第3位置決め部)を当てることによってコア10に対する端子台40の位置決めが行われるが、本発明はこの構成に限定されない。各位置決め部が当てられるコア10の3つの外面は、互いに非平行であれば、互いに垂直でなくてもよい。
【0055】
上記の実施形態のコア10は電磁鋼板を積層した積層コアであるが、他の種類のコア(例えば、フェライトコア、ダストコア、ナノクリスタルコア、磁性体の粒子を含む樹脂から形成されたメタルコンポジットコア等)を使用することもできる。溶接が難しい種類のコアを使用する場合は、例えば、ねじ止めや接着等の別の固定方法によってコア10にブラケット43、44が固定される。
【0056】
上記の実施形態では、コア10とボビン30が別の部材として分離しているが、例えばインサート成形により、コア10とボビン30とを一体化してもよい。また、コア10の表面の全体又は大半を電気絶縁性の樹脂材料で被覆してもよい。この場合は、例えば、ねじ止めや接着等の別の固定方法によって被覆されたコア10にブラケット43、44が取り付けられる。
【0057】
上記の実施形態では、コア10とコイル20との間の十分な電気絶縁性を確保するために、両者の間にボビン30を介在させているが、本発明はこの構成に限定されない。例えばコイル20又はコア10に厚い絶縁被覆を設ける等して、コア10とコイル20との間に十分な電気絶縁が確保されていれば、ボビン30を介さずにコア10にコイル20を直接装着してもよい。
【0058】
上記の実施形態では、2つのL形コア11から組み立てられたO形のコア10が使用されているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、2つのU形コアから組み立てられたO形コアや、E形コアとI形コア、あるいは、2つのE形コアから組み立てられた8字形コアを使用してもよい。
【0059】
上記の実施形態では、リアクトル1は、2つのコイル20を備えているが、1つ又は3つ以上の複数のコイル20を備えていてもよい。
【0060】
上記の実施形態では、2つのコイル20の両端がそれぞれ端子台40に接続されているが、2つのコイル20を直列に連結して、連結後のコイル20の2つの端部21のみを端子台40に接続する構成としてもよい。
【0061】
上記の実施形態では、端子台40に4つの端子42が設けられているが、端子台40の端子42の数は、コイル20の数や接続構成に応じて変更することができる。例えば、リアクトルが単一のコイル20を備える場合は、端子台40には例えば2つ以上の端子42が設けられる。また、例えば、リアクトルが3つのコイル20を備える場合は、端子台40には例えば6つ以上の端子42が設けられる。なお、複数のコイル20が直列に連結される場合は、端子台40には2つ以上の端子42を設ければよい。
【0062】
上記の実施形態では、ブラケット43及び44は板状であるが、コア10に対する位置決めが可能であれば、別の形状(例えば、円柱状、角柱状、球状、その他の異形等)としてもよい。
【0063】
上記の実施形態では、単一のブラケット43及び44を備えているが、ブラケット43及び44のいずれかを複数備えた構成としてもよい。
【0064】
上記の実施形態では、脚41d及び41eは板状であるが、コア10に対する位置決めが可能であれば、別の形状(例えば、円柱状、角柱状、半球状、環状、枠状、その他の異形等)としてもよい。
【0065】
上記の実施形態では、端子台40の本体41に2つの脚41d及び41eが設けられているが、1つ又は3つ以上の脚を設けてもよい。
【0066】
上記の実施形態では、例えば射出成形等により端子台40の本体41と一体に脚41d及び41eが形成されているが、本発明はこの構成に限定されない。本体41と脚41d及び41eを個別に作製して、ねじ止め、接着、圧入、融着等の固定方法により本体41に脚41d及び41eを取り付けてもよい。
【0067】
上記の実施形態では、断面積が小さい2つの脚41d及び41eのみがZ軸方向に伸ばされているが、本体41の全体をZ軸方向に伸ばした構成としてもよい。この場合、例えば、コア10の上面10zと接触する本体41の下面41a全体が第3の位置決め部となる。このような構成とすることにより、コア10の上面10zにガタツキなく本体41が載置され、Z軸方向において本体41を位置決めすることができる。
【0068】
しかし、本体41の全体をZ軸方向に伸ばした場合、コア10の上面10zに対して本体41を精度良く位置決めするには、本体41の下面41a全体を平らに(すなわち、良好な平面度で)形成する必要がある。すなわち、本体41に高い成形精度が要求されるため、本体41の生産性が低下し得る。上記の実施形態のように、脚41d及び41eのみをZ軸方向に伸ばす構成とすることにより、高い成形精度が要求される、コア10の上面10zと接触する第3の位置決め部の下面の面積を小さくすることができ、生産性が向上する。また、上記の実施形態のように、Z軸方向に伸ばす部分(すなわち、脚41d及び41e)の断面積を小さくすることにより、端子台40の本体41の形成に必要な材料を減らすことができる。
【符号の説明】
【0069】
1 リアクトル
1a 本体
10 コア
10x 第1側面(第1の外面)
10y 第2側面(第2の外面)
10z 上面(第3の外面)
20 コイル
30 ボビン
40 端子台
41d 脚(第3の位置決め部)
41e 脚(第3の位置決め部)
40A 端子台
41A 本体
43 ブラケット(第1の位置決め部)
44 ブラケット(第2の位置決め部)
45 ブラケット(第2の位置決め部)
48 バスバー