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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】分散システム、及びデータ送信方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/07 20060101AFI20241108BHJP
   G06F 11/36 20060101ALI20241108BHJP
   G06F 13/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
G06F11/07 175
G06F11/07 140A
G06F11/07 151
G06F11/36 160
G06F13/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020193217
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022081952
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 忠信
(72)【発明者】
【氏名】新保 健一
(72)【発明者】
【氏名】植松 裕
(72)【発明者】
【氏名】上薗 巧
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0051419(US,A1)
【文献】特開2019-197390(JP,A)
【文献】再公表特許第2017/022022(JP,A1)
【文献】特開2007-257049(JP,A)
【文献】特開平06-019750(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0167633(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111240882(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111209213(CN,A)
【文献】特開2005-300390(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107301120(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104270275(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/07
G06F 11/36
G06F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動稼働可能な移動体及び設備の少なくとも一方であるエッジデバイスと、診断データ計算機と、を備える分散システムであって、
前記エッジデバイスは、
少なくともプロセッシングユニットを含むエッジ内コントローラと、
前記エッジ内コントローラの監視対象となるシステムエレメントと、を有し、
前記プロセッシングユニットは、
前記システムエレメントに生じた異常に起因する前記プロセッシングユニットの異常の有無を診断し、
前記プロセッシングユニットの異常の有無を表す第1の診断データを生成し、
前記第1の診断データを前記プロセッシングユニットの異常状態を複数の状態種別に分類し、種類毎に集約され、かつ、前記エッジデバイスの構成に依存しない第2の診断データに変換し、
前記第2の診断データを前記診断データ計算機に送信し、
前記診断データ計算機は、
前記第2の診断データに基づいて前記プロセッシングユニットの異常の要因を分析する
ことを特徴とする分散システム。
【請求項2】
請求項1に記載の分散システムであって、
前記診断データ計算機は、
前記エッジデバイスの前記システムエレメントに含まれる構成物を表す情報が格納された構成情報データベースを、有し、
前記構成情報データベースを参照し、前記エッジデバイスから送信された前記第2の診断データに基づいて、前記エッジデバイスの前記システムエレメントにおいて異常が発生した前記構成物を特定する
ことを特徴とする分散システム。
【請求項3】
請求項1に記載の分散システムであって、
前記診断データ計算機は、
前記エッジデバイスの前記システムエレメントに含まれる構成物を表す情報が格納された構成情報データベースを、有し、
前記構成情報データベースを参照し、前記エッジデバイスから送信された前記第2の診断データに基づいて、前記エッジデバイスの前記システムエレメントにおいて異常が発生した前記構成物の候補を特定し、
前記候補の詳細な情報を要求する詳細情報要求コマンドを発行して前記エッジデバイスに送信する
ことを特徴とする分散システム。
【請求項4】
請求項3に記載の分散システムであって、
前記エッジデバイスは、
前記診断データ計算機から送信された前記詳細情報要求コマンドに含まれるアドレス情報に対応するレジスタから前記候補の状態データを読み出し、
読み出した前記状態データを前記第2の診断データに格納して前記診断データ計算機に送信する
ことを特徴とする分散システム。
【請求項5】
請求項1に記載の分散システムであって、
前記第2の診断データは、要因特定補助情報を含み、
前記診断データ計算機は、前記要因特定補助情報に基づいて前記プロセッシングユニットの異常の要因を分析する
ことを特徴とする分散システム。
【請求項6】
請求項1に記載の分散システムであって、
前記診断データ計算機は、前記第2の診断データの送信周期の変更を指示する収集タイミング変更コマンドを前記エッジデバイスに送信する
ことを特徴とする分散システム。
【請求項7】
自動稼働可能な移動体及び設備の少なくとも一方であり、少なくともプロセッシングユニットを含むエッジ内コントローラ、及び前記エッジ内コントローラの監視対象となるシステムエレメントを有するエッジデバイスと、診断データ計算機と、を備える分散システムにおけるデータ送信方法であって、
前記プロセッシングユニットによる、
前記システムエレメントに生じた異常に起因する前記プロセッシングユニットの異常の有無を診断し、
前記プロセッシングユニットの異常の有無を表す第1の診断データを生成し、
前記第1の診断データを前記プロセッシングユニットの異常状態を複数の状態種別に分類し、種類毎に集約され、かつ、前記エッジデバイスの構成に依存しない第2の診断データに変換し、
前記第2の診断データを前記診断データ計算機に送信し、
前記診断データ計算機による、
前記第2の診断データに基づいて前記プロセッシングユニットの異常の要因を分析する
ステップを含むことを特徴とするデータ送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散システム、及びデータ送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載された監視装置が、診断装置やECU、サーバ装置等と通信するためのインタフェースを備え、診断装置からの要求を受け付けると、車両状態に基づいて通信接続先を選択し、接続先から情報を取得して、前記診断装置に送信する構成が記載されている。さらに、上記サーバ装置内では、整備マニュアル(点検手順)が格納されているデータベースを検索して、最適な整備手順を提示することと、この整備手順を更新する場合、常に最新の情報を修理担当者に提示することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-300390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータやエンジンに代表される移動体における移動機構や、アクチュエータに代表される設備における作動機構を制御するエッジデバイス内のコントローラは、自動稼働可能な移動体の実現のために複雑化することが考えられる。この場合、エッジデバイス内コントローラは様々な種類の内部状態を取り得るようになる。そして、これら内部状態(特に異常状態)の解消はエッジデバイスの内部だけで復旧できる種類の内部状態とは限らない。
【0005】
特許文献1に記載の技術では、監視装置がECU内の各部品の内部状態(特に異常状態)を監視し、各部品特有の物理的な状態データを収集して、エッジデバイスの外部に送信している。そのため、エッジデバイスに搭載される部品やハードウェア構成毎にデータの種類、形式が固有のものとなるとともに、物理的なデータをそのまま通信することから送受信するデータ量が多くなる。
【0006】
また、監視装置が収集したデータを受信したサーバ装置では、受信したデータを過去の事例との突合せに使用するだけで、複数種類の現象、データ、及び複合的に発生する異常状態に対応することができない。さらに、サーバ装置では、収集したデータを用いた要因分析を行わず、エッジデバイスと連携してエッジデバイス内のコントローラの内部状態に対処することができない。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、エッジデバイスとクラウドサーバ等の計算機とが連携して、エッジデバイス内のコントローラの内部状態に対処する技術を提供できるようにし、さらに、該連携のためのデータ通信の汎用化、及びデータ通信量の削減を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下のとおりである。
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る分散システムは、自動稼働可能な移動体及び設備の少なくとも一方であるエッジデバイスと、診断データ計算機と、を備える分散システムであって、前記エッジデバイスは、少なくともプロセッシングユニットを含むエッジ内コントローラと、前記エッジ内コントローラの監視対象となるシステムエレメントと、を有し、前記プロセッシングユニットは、前記システムエレメントに生じた異常に起因する前記プロセッシングユニットの異常の有無を診断し、前記プロセッシングユニットの異常の有無を表す第1の診断データを生成し、前記第1の診断データを前記プロセッシングユニットの異常の種別を表す第2の診断データに変換し、前記第2の診断データを前記診断データ計算機に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エッジデバイスとクラウドサーバ等の計算機とが連携して、エッジデバイス内のコントローラの内部状態に対処する技術を提供でき、さらに、該連携のためのデータ通信の汎用化、及びデータ通信量の削減を実現できる。
【0011】
上記した以外の課題、構成、及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は本発明の第1の実施形態に係る分散システムの構成例を示す図である。
図2図2は分散システムの適用例を示す図である。
図3図3は計算機のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4図4はエッジデバイスの構成物における故障要因と診断データの分類方法を示す図である。
図5図5は本発明の第2の実施形態に係る分散システムの構成例を示す図である。
図6図6は診断データのデータ構造の一例を示す図である。
図7図7は状態データの送受信プロトコルの一例を示す図である。
図8図8は本発明の第3の実施形態に係る分散システムの構成例を示す図である。
図9図9は情報提示画面の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0014】
また、以下の実施形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0015】
さらに、以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0016】
同様に、以下の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0017】
また、実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下、本発明の各実施形態について図面を用いて説明する。
【0018】
<本発明の第1の実施形態に係る分散システム10の構成例>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る分散システム10の構成例を示している。
【0019】
分散システム10は、エッジデバイス20、及び、診断データクラウドサーバ(CS)30を備える。エッジデバイス20は、ネットワーク1を介して診断データクラウドサーバ30に接続する。ネットワーク1は、例えば、携帯電話通信網、インターネット(Ethernetを含む)等に代表される双方向通信網である。
【0020】
エッジデバイス20は、例えば自動稼働可能な移動体(例えば車両、ドローン、ロボット)や、設備(例えばロボットアームや工作機械、数値制御旋盤等)が想定される。ここで、自動稼働には自動運転が含まれるものとする。
【0021】
エッジデバイス20は、エッジ内コントローラ21、プロセッシングユニット22、システムエレメント25、及び通信部26を備える。
【0022】
エッジ内コントローラ21は、1以上のプロセッシングユニット22を有する。プロセッシングユニット22は、システムエレメント25を制御する制御部23、及び、プロセッシングユニット22の状態を表す診断データを生成する診断部24を有する。
【0023】
制御部23は、例えば、システムエレメント25に含まれるセンサ部からのセンシング情報に基づいて、システムエレメント25に含まれるアクチュエータ部を制御する。
【0024】
診断部24は、システムエレメント25の構成物であるセンサ部、電源部、アクチュエータ部等の状態データを収集する際の収集手順(収集の周期を含む)が格納されているシーケンス格納メモリ241を有する。診断部24は、データ収集処理P1、ユニット診断処理P2、データ変換処理P3、及びデータ整形処理P4を実行する。各処理の詳細は後述する。
【0025】
システムエレメント25は、エッジデバイス20の構成物としてのセンサ部、電源部、アクチュエータ部等と、これらの異常を検知する複数の検知部とを有する。センサ部、電源部、アクチュエータ部等は、自身の状態を表す状態データを診断部24に出力する。各検知部は、対応するセンサ部、電源部、アクチュエータ部等の状態を監視し、異常を検知した場合、異常信号S1を診断部24に出力する。
【0026】
通信部26は、診断部24から入力された整形後の第2の診断データを、ネットワーク1を介して診断データクラウドサーバ30に送信する。
【0027】
診断データクラウドサーバ30は、ネットワーク1上に存在する1台以上の計算機からなる。本実施形態においては、診断データクラウドサーバ30等のクラウドサーバに代えて、ローカルに存在する1台以上の計算機を採用してもよい。反対に、ローカルの計算機に代えてクラウドサーバを採用してもよい。
【0028】
診断データクラウドサーバ30は、本発明の診断データ計算機に相当する。診断データクラウドサーバ30は、構成情報データベース31を有する。構成情報データベース31には、エッジデバイス20に固有の識別情報に対応付けてその構成物(センサ部、電源部、アクチュエータ部等)を表す情報が格納されている。また、構成情報データベース31には、エッジデバイス20から送信された第2の診断データが格納される。
【0029】
診断データクラウドサーバ30は、状態診断処理P11、要因分析処理P12、及び部位特定処理P13を実行する。各処理の詳細は後述する。
【0030】
<分散システム10の動作概要>
以上のように構成された分散システム10においては、エッジデバイス20の診断部24が、データ収集処理P1として、シーケンス格納メモリ241に格納された収集手順に従ってシステムエレメント25に含まれる各構成物から状態データを収集する。
【0031】
次に、診断部24が、ユニット診断処理P2として、プロセッシングユニット22の動作状態を監視して異常の有無を診断し、診断結果を表す第1の診断データを生成する。
【0032】
次に、診断部24が、データ変換処理P3として、プロセッシングユニット22に異常がない場合、第1の診断データを、異常がない旨の情報とシステムエレメント25から収集した状態データの一部とを含む第2の診断データに変換する。プロセッシングユニット22に異常がある場合、プロセッシングユニット22の異常状態を複数の状態種別に分類し、分類結果を表す第2の診断データを生成する。なお、第2の診断データは、エッジデバイス20の固有の識別情報を含むものとする。
【0033】
次に、診断部24が、データ整形処理P4として、第2の診断データを診断データクラウドサーバ30に送信するために適したコード化とデータ形式の整形処理を行う。例えば、ネットワーク1がEthernetである場合、Ethernetのデータコンテナに第2の診断データを格納する処理を行う。データ整形処理P4では、通信に利用するプロトコル規格に依存することなく、各通信プロトコルのデータコンテナ内の形式を生成することができる。
【0034】
次に、通信部26が、整形された第2の診断データを、所定の通信プロトコルに従い、ネットワーク1を介して診断データクラウドサーバ30に送信する。
【0035】
なお、データ収集処理P1では、システムエレメント25の各構成物から状態データを収集するだけでなく、各構成物に対応する検知部によって検知された異常信号S1を受信し、異常信号S1の受信に応じて、次のユニット診断処理P2を開始するようにしてもよい。また、各構成物に対応する検知部からの異常信号S1を属性情報として第2の診断データに付記して診断データクラウドサーバ30に送信するようにしてもよい。
【0036】
エッジデバイス20から送信された第2の診断データを受信した診断データクラウドサーバ30では、状態診断処理P11として、エッジデバイス20から送信された第2の診断データに基づいて、エッジデバイス20における異常の有無を診断し、異常があった場合、第2の診断データを要因分析処理P12及び部位特定処理P13に引き継ぐ。
【0037】
次に、要因分析処理P12として、第2の診断データに基づき、異常の原因となった故障要因を分析する。故障要因には、エッジデバイス20のプロセッシングユニット22やシステムエレメント25の構成物等のハードウェアの故障と、ソフトウェアによる動作における異常とが含まれる。
【0038】
故障要因の分析方法は、例えば、第2の診断データに格納されているプロセッシングユニット22の動作状態と故障要因との相関関係をルール化し、そのルールをもとに故障要因を求める。このルールの実装方法は、条件と結果をリスト化しても良く、ニューラルネットワークを利用した機械学習を用いてもよい。つまり、プロセッシングユニット22の動作状態とエッジデバイス内の故障要因との相関を関係付ける形式と探索する方法であればよい。
【0039】
次に、部位特定処理P13として、第2の診断データに含まれるエッジデバイス20の固有の識別情報に基づき、エッジデバイス20のシステムエレメント25の構成物を構成情報データベース31から取得して故障発生部位を特定する。部位を特定する方法は、プロセッシングユニット22の動作状態と故障要因の相関関係を使用して部位を求めてもよい。
【0040】
以上説明したように、分散システム10によれば、エッジデバイス20と、エッジデバイス20の外部の診断データクラウドサーバ30とが連携して、エッジデバイス20内の異常状態に対処する技術を提供することができる。また、エッジデバイス20の構成物(センサ部、電源部、アクチュエータ部等)の物理的な状態データをそのまま診断データクラウドサーバ30に送信せず、プロセッシングユニット22の動作状態を表す第2の診断データに集約して送信するので、エッジデバイス20と診断データクラウドサーバ30との連携のためのデータ通信量の削減とエッジデバイス20の構成に依存しない診断データの汎用化が可能となる。
【0041】
<分散システム10の適用例>
次に、図2は、図1に示された分散システム10の適用例である分散システム1000におけるデータの流れを示している。
【0042】
分散システム1000は、多層化されており、1台以上のエッジデバイス20、データマネジメント層40に含まれる1台以上のクラウドサーバ(または計算機)、及び、データ活用層50に含まれる1台以上のクラウドサーバ(または計算機)を含む。
【0043】
なお、分散システム1000において、図1の診断データクラウドサーバ30は、診断データ管理クラウドサーバ301と分析アウトソーシングクラウドサーバ302とに分割されている。診断データ管理クラウドサーバ301はデータマネジメント層40に配置され、分析アウトソーシングクラウドサーバ302はデータ活用層50に配置されている。
【0044】
エッジデバイス20は、エッジ内コントローラ21、移動・作動機構251、及び、センサ252を有する。
【0045】
エッジ内コントローラ21は、例えばECU(Electronic Control Unit)等からなり、移動・作動機構251を制御する。移動・作動機構251は、移動機構及び作動機構の少なくとも一方である。移動機構は、例えば移動体におけるエンジンやモータ等である。作動機構は、例えば設備におけるモータや油圧等のアクチュエータである。移動・作動機構251は、システムエレメント25(図1)の構成物であるアクチュエータ部に相当する。センサ252は、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機等である。センサ252は、システムエレメント25(図1)に含まれるセンサ部とそれに対応する検知部に相当する。
【0046】
移動・作動機構251に関連し、「作動」とは、少なくとも「ある動作を行うことによって、機器がその操作された指令どおりの状態の変化を行うこと(JIS B 0132準拠)。」を意味する。
【0047】
以下の説明では、説明を簡略化するため、エッジデバイス20が移動体であり、移動・作動機構251が移動機構である場合を例にして説明する。また、エッジ内コントローラ21を、ECTL(Edge Controller)21と略称する。
【0048】
ECTL21は、エッジデバイス20の自動稼働を実現するための処理の少なくとも一部を担当する。そのため、ECTL21は、ハードウェア又はソフトウェアの視点で複雑化しつつある。例えば、ハードウェアの複雑化の例としては、機械学習処理導入や各種センサやカメラからのデータ入力をリアルタイムに認知、判断する処理導入のために、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ニューラルネットワーク専用プロセッサや、その他機械学習を加速させるハードウェアが含まれる場合もある。
【0049】
データマネジメント層40は、説明を簡略化するために導入した仮想的な層又はグループである。データマネジメント層40に含まれるクラウドサーバ(または計算機)は、主に、エッジデバイス20が生成したデータを格納する用途に用いられる。
【0050】
なお、データマネジメント層40は、前述した用途以外のクラウドサーバ(または計算機)が含まれてもよい。また、データマネジメント層40から、前述した用途のクラウドサーバ(または計算機)が省かれていてもよい。
【0051】
同図の場合、データマネジメント層40は、エッジデバイス製造会社計算機41、エッジデータ配信会社クラウドサーバ(CS)42、及び、診断データ管理クラウドサーバ(CS)301を含む。
【0052】
エッジデバイス製造会社計算機41は、エッジデバイス20を設計、または製造する会社が有する計算機である。当該製造会社は、自社製品の開発や保守のためにエッジデバイス20に関するエッジデータを管理しているため、便宜上、データマネジメント層40に含めている。エッジデバイス製造会社計算機41は、エッジデータのアップデートデータD23をエッジデータ配信会社クラウドサーバ42に送信する。
【0053】
エッジデータ配信会社クラウドサーバ42は、エッジデバイス20に関するエッジデータを格納し、他のクラウドサーバからの要求に応じて、無加工又は加工後のエッジデータD25を要求元のクラウドサーバに送信する。エッジデータD25は、例えば、エッジデバイス20の構成物に関する情報等が想定される。
【0054】
ここで、データの加工とは、例えば、データの表現形式の変更、差分値の計算、統計値の計算、暗号化、復号化、圧縮、非圧縮、不要なデータの除去、冗長コードの付与または除去、データ抽出等であるが、処理主体が受信したデータを一部又は全てを変更して送信するのであれば、それを加工とみなしてもよい。
【0055】
診断データ管理クラウドサーバ301は、ECTL21の内部状態を示し、ECTL21の外部から診断するための診断データ(以後、エッジ内コントローラ診断データ、ECTL診断データとも称する)D11を格納し、他のクラウドサーバからの要求に応じて無加工又は加工後の診断データD21,D27を送信する。なお、ECTL診断データはエッジデータの一例である。
【0056】
なお、一視点として、データマネジメント層40に含まれるクラウドサーバ(または計算機)を有する会社は、エッジデバイス20やそのパーツの設計や製造を行う会社、またはエッジデータの配信を担当する会社と見做してもよい。当該視点からみると、通信会社や、スマートフォンにて実行されるカーナビゲーションプログラムを提供する会社や、移動機構の製造会社のクラウドサーバは、データマネジメント層40に含まれると見做すことができる。
【0057】
データ活用層50は、説明を簡略化するために導入した仮想的な層又はグループである。データ活用層50に含まれるクラウドサーバ(または計算機)は、データマネジメント層40に含まれるクラウドサーバと比較して、サービス提供により近い部分を担う用途に用いられる。
【0058】
データ活用層50に含まれるクラウドサーバによって提供されるサービスとしては、エッジデバイス20を利用したり、エッジデバイス20に関連するエンティティを対象としたり、エッジデバイス20そのものを対象としたりするエッジデバイス関連サービスが想定される。
【0059】
ここで、エンティティとは、例えば、人間の集合や集団、動物、装置(信号機、エッジデバイス20を運搬する船、エッジデバイス20の外部でエッジデバイス20の自動稼働を支援する装置)が想定される。
【0060】
同図の場合、データ活用層50は、ディーラ/修理会社クラウドサーバ(CS)51、保険会社クラウドサーバ(CS)52、運輸会社クラウドサーバ(CS)53、MaaS会社クラウドサーバ(CS)54、レンタル会社クラウドサーバ(CS)55、及び分析アウトソーシングクラウドサーバ(CS)302を含む。
【0061】
ディーラ・修理会社クラウドサーバ51は、エッジデバイス20の修理や保守の手配、エッジデバイス20の修理を行うディーラや修理会社の業務を支援するため、エッジデータD25または分析アウトソーシングクラウドサーバ302から提供される分析後データD32を受け取り、保守サービス(故障予防、改修等)、または修理サービス(事故対応)に必要な情報を生成してユーザに提示する。
【0062】
保険会社クラウドサーバ52は、エッジデバイス20を利用して所定の機能を発揮する会社の業務に関係する所定のリスクを引き受ける保険会社にて、エッジデータD25または分析アウトソーシングクラウドサーバ302から提供される分析後データD32を参照して保険料率を決定するための一部または全ての処理を実行する。なお、保険会社が引き受けるリスクは、エッジデバイス20を利用するエンティティに関係するリスクであってもよい。例えば、個人が契約する自動車保険等が想定される。
【0063】
運輸会社クラウドサーバ53は、エッジデバイス20を直接的に利用するか、または他の運輸会社のサービスを用いて運輸業を営む運輸会社にて、エッジデータD25または分析アウトソーシングクラウドサーバ302から提供される分析後データD32に基づいて運輸サービスを提供するための処理を実行する。当該処理の一例は、エッジデバイス20の配車計画、運賃の計算、運賃を含むサービス仕様改訂のための分析処理等が想定される。
【0064】
MaaS(Mobility as a Service)会社クラウドサーバ54は、エッジデバイス20を直接的に利用するか、または他社のサービスを用いて移動手段の提供サービスを営むMaaS会社の業務を支援するため、エッジデータD25または分析アウトソーシングクラウドサーバ302から提供される分析後データD31を受け取り、保有車両の保守計画等に必要な情報を生成する。当該情報は、MaaS会社の社員等に提供される。
【0065】
レンタル会社クラウドサーバ55は、MaaS会社クラウドサーバ54と同様、エッジデバイス20を直接的に利用するか、または他社のサービスを用いて移動手段の提供サービスを営むレンタル会社の業務を支援するため、エッジデータD25または分析アウトソーシングクラウドサーバ302から提供される分析後データD31を受け取り、保有車両の保守計画等に必要な情報を生成する。当該情報は、レンタル会社の社員等に提供される。
【0066】
分析アウトソーシングクラウドサーバ302は、データ活用層50に含まれる会社の、サービス提供、またはサービスの改善に必要なサービス関連分析処理のアウトソーシング先となるクラウドサーバである。分析アウトソーシングクラウドサーバ302は、本実施形態では診断データ(特にECTL診断データ)D11の分析のアウトソーシングを担当しているが、データマネジメント層40に含まれるエッジデバイス製造会社等の分析のアウトソーシングを担当することもできる。なお、分析アウトソーシングクラウドサーバ302によるサービス関連分析処理は、後述する各ソリューションにおけるエッジデバイス20またはECTL21の内部状態に関する要因分析処理に相当する。
【0067】
なお、データマネジメント層40とデータ活用層50との分け方は同図に示された例に限らず、さらに排他的でなくてもよい。例えば、通信会社のクラウドサーバは、前述したエッジデータの配信に関する視点では、データマネジメント層40に含まれるエッジデータ配信会社クラウドサーバ42に相当するが、エッジデバイス20に「通信サービス」を提供する視点では、データ活用層50に含まれるとも考えられる。
【0068】
さらに、別の視点として、データ活用層50に含まれるクラウドサーバを有する会社は、エッジデバイス20やそのパーツの設計または製造を行わない会社と見做すことができる。
【0069】
<クラウドサーバを構成する計算機100の構成例>
次に、診断データクラウドサーバ30等のクラウドサーバを成す計算機100のハードウェア構成の一例を示している。
【0070】
計算機100は、プロセッサ101、メモリ102、外部記憶装置103、音声出力装置104、生体情報入力装置105、入力装置106、出力装置107、及び通信装置108がデータバス109を介して接続されて構成される。
【0071】
プロセッサ101は、CPU、GPU、FPGA等からなり、計算機100の全体を制御する。メモリ102は、例えばRAM(Random Access Memory)等の主記憶装置である。外部記憶装置103は、デジタル情報を記憶可能なHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置である。
【0072】
音声出力装置104は、スピーカ等からなる。生体情報入力装置105は、カメラ、視線入力装置、マイクロフォン等からなる。入力装置106は、キーボード、マウス、タッチパネル等からなる。出力装置107は、ディスプレイ、プリンタ等からなる。
【0073】
通信装置108は、NIC(Network Interface Card)等からなる。通信装置108は、有線通信及び無線通信の少なくとも一方により、同一のネットワークに接続された他の装置との通信を行う。その通信には、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)によるパケット通信を採用するが、これに限られるものではなく、UDP(User Datagram Protocol)等の他のプロトコルによる通信を採用してもよい。
【0074】
なお、計算機100のハードウェア構成は上述した例に限らず、上述した一部の構成要素を省いたり、他の構成要素を含んだりしてよい。また、計算機100は、サーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ、ノート型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、テレビジョン装置等の各種の情報処理装置であってもよい。
【0075】
計算機100は、OS(Operating System)、ミドルウェア、アプリケーションプログラム等のプログラムを記憶したり、外部から読み込んだりすることができ、これらのプログラムをプロセッサ101が実行することにより、各種の処理を実行できる。
【0076】
<エッジデバイス20の構成物における故障要因と診断データの分類方法>
次に、図4は、エッジデバイス20の構成物における故障要因と診断データの分類方法を示している。
【0077】
エッジデバイス20の構成物(システムエレメント25のセンサ部、電源部、アクチュエータ部等(図1))において物理的な故障201が発生した場合、該故障201はエッジデバイス20が有する機能に対する異常として発現する(機能障害202)。該機能障害202はエッジデバイス20が有する機能障害を検知する機構によって検知される。そして、その検知結果203は異常の状態や検知状況の種類毎に集約された診断データ204に変換される。
【0078】
例えば、センサ252が出力したデータを伝送するバスが断線する「オープン」の故障201が発生した場合、機能障害202として「データ通信異常」が発現する。そして、プロセッシングユニット22では「データ通信異常」によって引き起こされた現象を「リードバック検知」という状態を表す第1の診断データとして捉え、「リードバック検知」を「データ不一致」という状態を表す診断データ(第2の診断データ)204に変換する。
【0079】
なお、エッジデバイス20の構成物の異常状態を「オープン」、「配線間ショート」、「電源ショート」等の物理的な現象として捉えるとその種類は非常に多くなり、システムエレメント25の構成物毎に様々な現象を扱うことになることからも多様な種類のデータを扱う必要がある。しかしながら、本実施形態では、これらをプロセッシングユニット22の状態として集約することにより、診断データクラウドサーバ30aに送信するデータ(第2の診断データ)の種類を大幅に削減することができる。
【0080】
<本発明の第2の実施形態に係る分散システム10の構成例>
図5は、本発明の第2の実施形態に係る分散システム10の構成例を示している。
【0081】
分散システム10は、分散システム10図1)と同様の機能に加えて、診断データクラウドサーバ30からエッジデバイス20に対して詳細な状態データを要求することができるようになされている。
【0082】
分散システム10は、分散システム10に対して、診断データクラウドサーバ30が実行する処理に関連情報検索処理P14を追加し、エッジデバイス20の診断部24にアドレス格納メモリ242を設けたものである。
【0083】
分散システム10において、診断データクラウドサーバ30は、エッジデバイス20からエッジデバイス20のプロセッシングユニット22における異常状態が集約された第2の診断データを受信すると、状態診断処理P11として、エッジデバイス20から送信された第2の診断データに基づいて、エッジデバイス20における異常の有無を診断し、異常があった場合、第2の診断データを要因分析処理P12及び部位特定処理P13に引き継ぐ。
【0084】
次に、要因分析処理P12として、第2の診断データに基づき、異常の原因となった故障要因を分析する。次に、部位特定処理P13として、第2の診断データに含まれるエッジデバイス20の固有の識別情報に基づき、エッジデバイス20のシステムエレメント25の構成物を構成情報データベース31から取得して故障発生部位を特定する。
【0085】
そして、異常部位特定の確からしさを向上させるため、または、より詳細なシステムエレメント25の異常発生部位を特定するため、関連情報検索処理P14を実行する。具体的には、部位特定処理P13で異常部位の候補として特定された構成物を指定する情報を含む詳細情報要求コマンドを発行し、ネットワーク1を介してエッジデバイス20に送信する。
【0086】
詳細情報要求コマンドは、例えば、システムエレメント25の構成物であるカメラモジュール内のカメラ、画像処理LSI(Large Scale Integration)、画像メモリのいずれに異常があったかを特定し、さらに部品レベルでの部位特定をするために、画像処理LSI内部の状態が格納されたレジスタのアクセス位置アドレスを含む。
【0087】
エッジデバイス20では、診断データクラウドサーバ30からの詳細情報要求コマンドを通信部26が受信し、詳細情報要求コマンドに格納しているシステムエレメント25の状態が格納されたレジスタを読み出すためのアクセス位置アドレスを診断部24のアドレス格納メモリ242に格納する。また、その収集手順をシーケンス格納メモリ241に格納する。ここで、アクセス位置アドレスとは、例えば、プロセッシングユニット22で管理しているシステムエレメント25の各種レジスタのアクセス空間アドレスである。
【0088】
この後、診断部24が、データ収集処理P1として、アクセス位置アドレスに格納されている状態データを読み出し、ユニット診断処理P2として状態データを含む第1の診断データを生成し、データ変換処理P3として第1の診断データを第2の診断データに変換し、データ整形処理P4として台2の診断データを整形して、通信部26が診断データクラウドサーバ30に送信する。
【0089】
以上に説明した分散システム10によれば、分散システム10と同様の作用・効果に加え、診断データクラウドサーバ30において、エッジデバイス20におけるシステムエレメント25のどの部位に異常が発生したのかを細粒度で弁別することが可能となる。
【0090】
次に、図6は、エッジデバイス20から診断データクラウドサーバ30に送信される第2の診断データのデータ構造の一例を示している。
【0091】
データ変換処理P3にて変換された第2の診断データには、診断データ種類フィールド、ドメイン名称フィールド、プロセッサI/Fフィールド、データ収集時刻フィールド、及び状態データフィールドが設けられている。
【0092】
診断データ種類フィールドには、異常状態を集約、分類した診断データの種類が格納される。具体的には、例えば、診断データ種類としては、周期観測データ、ビットエラー、データ不一致、テストエラー、データ数誤り、タイムアウト、レンジ違反、データ順序違反、エレメントエラー、ウオッチドック(WD)エラー、プロセッシングユニットエラー通知、メモリ異常、プロセッシングユニット例外エラー等が格納される。
【0093】
ドメイン名称フィールドには、プロセッシングユニット22で異常を検知した入出力I/Fの種類を表すドメイン名称が格納される。ドメイン名称としては、例えば、デジタルI/O、メモリバス、通信バス、割込み等がある。
【0094】
プロセッサI/Fフィールドには、異常を検知したプロセッシングユニット22における信号名称が格納される。具体的には、例えば、信号名称としては、ピングループ、ピン番号等が格納される。
【0095】
データ収集時刻フィールドには、状態データを検知、収集した時刻が格納される。具体的には、例えば、異常検知時刻、診断データ収集時刻等が格納される。
【0096】
状態データフィールドには、定期的なエッジデバイス20の状態監視の際に状態データが格納される。具体的には、例えば、システムエレメント25の状態データ、エッジデバイス20の外部との入出力データ等が格納される。
【0097】
ドメイン名称フィールド、プロセッサI/Fフィールド、データ収集時刻フィールド、及び状態データフィールドに格納される情報は、本発明の要因特定補助情報に相当し、要因分析処理P12に利用される。
【0098】
なお、第2の診断データのデータ構造は、図示した例に限らず、エッジデバイス20の種類や要因分析の方法に合わせて変更してもよい。
【0099】
次に、図7は、エッジデバイス20と診断データクラウドサーバ30との間の送受信プロトコルの一例を示している。
【0100】
エッジデバイス20では、診断部24が、所定の周期で定期的にシステムエレメント25の状態を監視し、システムエレメント25の状態に起因するプロセッシングユニット22の状態を表す第2の診断データを診断データクラウドサーバ30に送信する。
【0101】
なお、該所定の周期は、予め設定されているが、後述する第3の実施形態では診断データクラウドサーバ30側から変更が可能である。
【0102】
診断データクラウドサーバ30では、受信した第2の診断データを構成情報データベース31に格納する。格納された第2の診断データは、履歴情報として故障の要因分析に利用される。また、エッジデバイス20に異常が発生した場合、診断部24が、異常発生を示す第2の診断データを診断データクラウドサーバ30に送信する。(図1のデータ収集処理P1、ユニット診断処理P2、データ変換処理P3、及びデータ整形処理P4)。
【0103】
診断データクラウドサーバ30では、該第2の診断データに基づいて要因分析及び発生部位特定処理を実行する。そして、詳細情報収集する場合、診断データクラウドサーバ30が詳細情報要求コマンドを発行してエッジデバイス20に送信する(図5の関連情報検索処理P14)。エッジデバイス20では、受信した詳細情報要求コマンドに従い、状態データを読み出し、第2の診断データに変換して診断データクラウドサーバ30に送信する。
【0104】
この後、エッジデバイス20では診断データクラウドサーバ30に対し、所定の周期で定期的に第2の診断データを送信することになる。
【0105】
図7からわかるように、エッジデバイス20は診断データクラウドサーバ30に対して所定の周期で定期的にプロセッシングユニット22に状態を表す第2の診断データを送信することができる。また、エッジデバイス20は異常が発生した場合、その旨を表す第2の診断データを診断データクラウドサーバ30に対して所定の周期で定期的に第2の診断データを送信することができる。
【0106】
<本発明の第3の実施形態に係る分散システム10の構成例>
図8は、本発明の第3の実施形態に係る分散システム10の構成例を示している。
【0107】
分散システム10は、分散システム10図1)と同様の機能に加えて、エッジデバイス20から診断データクラウドサーバ30に対して定期的に第2の診断データを送信する周期を診断データクラウドサーバ30側から変更できるようになされている。
【0108】
分散システム10は、分散システム10図1)に対して、診断データクラウドサーバ30に診断結果メモリ32を設けて診断結果統計処理P15を追加し、エッジデバイス20の診断部24にアドレス格納メモリ242を設けたものである。
【0109】
分散システム10において、診断データクラウドサーバ30は、エッジデバイス20からエッジデバイス20のプロセッシングユニット22における異常状態が集約された第2の診断データを受信すると、状態診断処理P11として、エッジデバイス20から送信された第2の診断データに基づいて、エッジデバイス20における異常の有無を診断し、異常があった場合、第2の診断データを要因分析処理P12及び部位特定処理P13に引き継ぐ。
【0110】
次に、要因分析処理P12として、第2の診断データに基づき、異常の原因となった故障要因を分析する。次に、部位特定処理P13として、第2の診断データに含まれるエッジデバイス20の固有の識別情報に基づき、エッジデバイス20のシステムエレメント25の構成物を構成情報データベース31から取得して故障発生部位を特定し、故障発生部位を診断結果メモリ32に格納するとともに、診断結果統計処理P15に引き継ぐ。なお、エッジデバイス20に異常がない場合にはエッジデバイス20からの定期的な第2の診断データを診断結果統計処理P15に引き継ぐ。
【0111】
診断結果統計処理P15では、エッジデバイス20に異常がある場合の故障発生部位や、エッジデバイス20に異常がない場合の第2の診断データを基にして統計処理を行い、異常等の発生が懸念されるシステムエレメント25の構成物の候補を導出する。
【0112】
統計処理としては、例えば、システムエレメント25内のデータ通信部分のエラー頻度の変化を監視し、時系列的な変化量を算出し、その変化量の傾きが所定の閾値を超えた場合、そのデータ通信部分の定期的な状態データ収集の間隔を短くしたり、関連するシステムエレメント25内の状態データ(ステータスレジスタ等)を読み出したりする等の、収集シーケンスを変更するための収集タイミング変更コマンドをエッジデバイス20に送信する。エッジデバイス20では、収集タイミング変更コマンドに基づいてシーケンス格納メモリ241に格納されている収集手順を変更したり、アドレス格納メモリ242のアドレスを変更したりする。これにより、エッジデバイス20では、診断データクラウドサーバ30に対して第2の診断データを定期的に送信する周期が変更される。
【0113】
以上に説明した分散システム10によれば、分散システム10と同様の作用・効果に加え、エッジデバイス20に機能障害が発現する前に、その予兆を捉えることが可能となる。
【0114】
<情報提示画面600の表示例>
次に、図9は、例えば、ディーラ・修理会社クラウドサーバ51(図2)等の情報提示画面600の表示例を示している。情報提示画面600は、エッジデバイス20に発生した故障の要因分析結果や詳細な状態データを要求するためのものである。
【0115】
情報提示画面600は、診断データクラウドサーバ30による故障の要因分析結果及び状態データ収集結果が表示される。具体的には、所定の周期で定期的に収集した第2の診断データを状態診断処理P11によって診断した結果が時系列に表示される。エッジデバイス20に異常がない場合は、異常がない旨の情報と定期的に収集した状態データが表示される。エッジデバイス20に異常が発生した場合は、異常発生を知らせるメッセージが表示されるとともに、要因分析処理P12及び部位特定処理P13による処理結果が関連部位(異常部位候補)として表示される。さらに、関連情報検索処理P14によって詳細情報要求コマンドを発行した場合には、詳細情報要求コマンドの種類とアドレス情報とが表示され、要因分析結果と詳細情報要求の処理の流れが時系列的に表示される。
【0116】
同図の場合、情報提示画面600には、要因分析の対象のエッジデバイス20を示す名称・型番を表示する表示領域601、利用エンティティの履歴を表示する表示領域602、及び分析結果を表示する表示領域603が設けられている。
【0117】
表示領域601には、例えば要因分析の対象のエッジデバイスが自動車である場合には車両種類、型式、構成情報ID等が表示される。表示領域602には、当該エッジデバイス20を利用したエンティティのIDが履歴形式で表示される。なお、表示領域602には、その他の履歴(例えば、稼働開始日、メンテナンス履歴)が表示するようしてもよい。
【0118】
表示領域603には、プロセッサユニット(PU)状態、異常状態の構成物のID、異常状態発生の日時、プロセッシングユニットの状態表示、異常発生部位候補、コマンド発行ログ、異常要因を示す情報等が表示される。ただし、上述した項目すべての表示が必須ではない。ここで、異常要因には、発生した異常要因に応じて、ソフトウェア異常かハードウェア異常かを判断する情報も含まれる。ソフトウェア異常とハードウェア異常とでは、解消の方法が大きく異なることが多いためである。
【0119】
このような情報提示画面600を表示することにより、ディーラや修理会社では、迅速にエッジデバイス20が異常状態であって修理が必要であることを把握することができる。また、ディーラや修理会社が設計データを用いて、交換が必要な部品の特定する必要がないため、ディーラや修理会社ではより幅広い人が修理に従事できる。
【0120】
上述したディーラや修理会社向けのソリューションは、レンタル会社やMaaS会社に対しても適用できる。しかしながら、レンタル会社やMaaS会社は、ディーラや修理会社と比較すると、エッジデバイス20に対して細やかな修理は行わない。一方で、レンタル会社やMaaS会社が提供するサービスの場合、エッジデバイス20が正常に稼働しているからこそサービスの利用者から適正な費用を得られる。
【0121】
エッジデバイス20の異常状態からの復旧時間をより短縮させるための情報は、位置、緊急度、対応必要時間である。レンタル会社やMaaS会社はこれら要素を考慮の上で適切な復旧方法を選択することができる。情報提示画面600を提供されることで可能となる復旧方法は、例えば以下のようなものが想定される。
【0122】
方法1:異常状態発生位置が、レンタル会社又はMaaS会社の拠点位置より遠いエッジデバイス20を優先して復旧作業する。当該優先が反映される例としては代替用のエッジデバイス20の手配である。
【0123】
方法2:緊急度が低い異常状態を緊急度が高い異常状態になる前に解消する。本実施形態の場合、ECTL21の内部状態に基づいて細やかに緊急対応度を決定できるため、このようなことが可能となる。なお、この緊急度は、分析アウトソーシングクラウドサーバ302で分析処理としてECTL診断データの相関性解析を行い、分析後データとして該相関性を得て、緊急度設定に考慮してもよい。例えば単体ではエッジデバイス20に致命的ではない異常状態であれば優先度を低とすることができるが、相関性が高い異常状態が緊急度の高いものであれば、前者の異常状態を低よりも高い中や高にする。
【0124】
方法3:緊急度に基づいた復旧作業の優先付けを実施する。特に同じエッジデバイス20内で緊急度の異なる異常状態が発生した場合は、緊急度の高い異常状態の解消を行うことで緊急度が低い異常状態も解消していることがある。
【0125】
次に、本ソリューションを保険会社に適用した場合について説明する。
【0126】
保険の契約条件は、保険料が低額であっても、保険金支払いの条件が厳しいと契約エンティティが契約に至らない。一方で、保険金支払いの条件を緩和し過ぎると保険会社の収支が悪化し過ぎてサービスが継続できない。そこで、分析アウトソーシングクラウドサーバ302が提供する加工後のデータを参照するようにすれば、エッジデバイス20の内部の異常状態の発生頻度も踏まえて保険金支払い条件を設定することができる。
【0127】
例えば、特定の条件(例えばエッジデバイス20の種類、利用環境、利用エンティティの種類)で、エッジデバイス20の内部の異常状態の発生頻度が高くなることが分かれば、当該条件の場合の保険料を高め、反対に発生頻度が低い条件の場合は保険料を低くする、といった保険料の適正化が可能となる。
【0128】
またエッジデバイス20の状態を監視することで、機能障害が発現する前に対処することが可能となり、事故や故障による機会損失を防ぐ確率を高める。その場合、保険支払いを軽減することができ、保険料率を下げることが可能となる。このメリットは、自動稼働の普及によってエッジデバイス20が関連する異常が多くなる場合はより大きなメリットとなる。
【0129】
本発明に係る技術は、分散システム、及びデータ送信方法に限られず、計算機、コンピュータ読み取り可能なプログラム等の様々な態様で提供できる。
【0130】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えたり、追加したりすることが可能である。
【0131】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0132】
1・・・ネットワーク、20・・・エッジデバイス、21・・・エッジ内コントローラ、22・・・プロセッシングユニット、23・・・制御部、24・・・診断部、25・・・システムエレメント、26・・・通信部、30・・・診断データクラウドサーバ、31・・・構成情報データベース、32・・・診断結果メモリ、40・・・データマネジメント層、41・・・エッジデバイス製造会社計算機、42・・・エッジデータ配信会社クラウドサーバ、50・・・データ活用層、51・・・ディーラ・修理会社クラウドサーバ、52・・・保険会社クラウドサーバ、53・・・運輸会社クラウドサーバ、54・・・MaaS会社クラウドサーバ、55・・・レンタル会社クラウドサーバ、100・・・計算機、101・・・プロセッサ、102・・・メモリ、103・・・外部記憶装置、104・・・音声出力装置、105・・・生体情報入力装置、106・・・入力装置、107・・・出力装置、108・・・通信装置、109・・・データバス、241・・・シーケンス格納メモリ、242・・・アドレス格納メモリ、251・・・移動・作動機構、252・・・センサ、301・・・診断データ管理クラウドサーバ、302・・・分析アウトソーシングクラウドサーバ、600・・・情報提示画面、601・・・表示領域、602・・・表示領域、603・・・表示領域、1000・・・分散システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9