(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】ブース
(51)【国際特許分類】
E04H 1/12 20060101AFI20241108BHJP
A62C 35/02 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
E04H1/12 302Z
A62C35/02 A
(21)【出願番号】P 2020210515
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】日下 篤
(72)【発明者】
【氏名】村上 利造
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特許第6764107(JP,B1)
【文献】特開2003-175122(JP,A)
【文献】実公昭59-000934(JP,Y2)
【文献】韓国登録特許第10-1286188(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/12
A62C 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間と外部空間とを区成する天井を備え、その天井に、消火剤貯蔵容器と消火剤噴射ノズルとを一体的に設けた下方放出型の消火装置を配してなるブースであって、
前記天井は、前記消火剤貯蔵容器を前記外部空間側から載せ置くことができる容器嵌合部を備えたものであり、
前記消火剤貯蔵容器を前記容器嵌合部に担持させた状態で、少なくとも前記消火剤噴射ノズルが前記内部空間に臨むように構成され
、
前記天井が、前記外部空間に露出する外天井板と、前記内部空間に臨む内天井板とを備えたものであり、
前記外天井板に、前記容器嵌合部が設けられているブース。
【請求項2】
前記容器嵌合部に担持された前記消火剤貯蔵容器が前記外部空間に露出するのを防止又は抑制するためのカバーを備えている請求項
1記載のブース。
【請求項3】
前記カバーは、前記消火剤貯蔵容器を前記容器嵌合部に担持させたままで、前記天井に対して着脱し得るものである請求項
2記載のブース。
【請求項4】
前記容器嵌合部は、前記外天井板の所定箇所に前記消火剤貯蔵容器の下半部が上から嵌り込む凹所を設けたものである請求項
1記載のブース。
【請求項5】
前記凹所は、前記外天井板に形成した開口と、この開口の縁部に支持されて当該開口内に配設され前記消火剤貯蔵容器を下から支持する容器支持部材とを備えたものである請求項
4記載のブース。
【請求項6】
前記消火剤貯蔵容器は、上下方向中間位置から下方に向かって平断面形状が漸次小さくなるものであり、
前記凹所は、前記消火剤
貯蔵容器の前記上下方向中間位置よりも下方部位の平断面形状に対応した開口を前記外天井板に設けたものである請求項
4記載のブース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、執務や打ち合わせ等に使用されるブースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外部の騒音や人声の侵入を抑制し、内部空間での集中度を高めることができるブースが知られている。この種のブース業界においては、消防庁から平成30年11月2日に出された「消防用設備等に係る執務資料の送付について」と題する通知(消防予第622号)によって、可動式ブースに住宅用下方放出型自動消火装置(例えば、非特許文献1参照)を設けることにより、従来義務付けられていたスプリンクラーヘッド等の設置が免除され得るとの特例措置が周知徹底された。
【0003】
そのため、近時のこの種ブースでは、自らの天井に下方放出型自動消火装置を設けることが常態化している(例えば、非特許文献2参照)。
【0004】
この種の下方放出型自動消火装置は、消火剤貯蔵容器の下面に消火剤噴射ノズル等を一体的に設けたものが一般的であり、この消火剤貯蔵容器を、例えば、カバー内に収容し取り付けた状態で、そのカバーを消火剤貯蔵容器及び消火剤噴射ノズル等とともにブースの天井に取り付けるようにしている。
【0005】
そのため、消火剤貯蔵容器をブースの天井に装着する際には、その消火剤貯蔵容器や噴射ノズルが前記カバーに覆われてその全容が作業者からは見え難いことが多く、カバーを天井に取り付けた後に消火剤噴射ノズルの位置が適切でない旨が判明することがある。その結果、カバーを消火剤貯蔵容器とともに天井から取り外し、カバーに対する消火剤貯蔵容器の取付姿勢を修正した上で、再度カバーの取付作業を行うことが必要となり、組立作業が煩雑なものとなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】“SPA-5型スプリンクラーエース取扱説明書 | 日本ドライケミカル株式会社”、[online]、[令和2年12月7日検索]、インターネット<URL:https://www.ndc-group.co.jp/products/fire_extinguisher/data/manual/manual_spa_5_181119_.pdf>
【文献】“TELECUBE by Okamura | 株式会社オカムラ” 、[online]、[令和2年12月7日検索]、インターネット<https://www.okamura.co.jp/product/others/telecube/pdf/telecube_brochure_201905.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、下方放出型の消火装置の取付作業が煩雑であるという課題を解消することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明に係るブースは、内部空間と外部空間とを区成する天井を備え、その天井に、消火剤貯蔵容器と消火剤噴射ノズルとを一体的に設けた下方放出型の消火装置を配してなるブースであって、前記天井は、前記消火剤貯蔵容器を前記外部空間側から載せ置くことができる容器嵌合部を備えたものであり、前記消火剤貯蔵容器を前記容器嵌合部に担持させた状態で、少なくとも前記消火剤噴射ノズルが前記内部空間に臨むように構成され、前記天井が、前記外部空間に露出する外天井板と、前記内部空間に臨む内天井板とを備えたものであり、前記外天井板に、前記容器嵌合部が設けられている。
【0010】
請求項2記載の発明に係るブースは、請求項1記載のものであって、前記容器嵌合部に担持された前記消火剤貯蔵容器が前記外部空間に露出するのを防止又は抑制するためのカバーを備えているものである。
【0011】
請求項3記載の発明に係るブースは、請求項2記載のものであって、前記カバーは、前記消火剤貯蔵容器を前記容器嵌合部に担持させたままで、前記天井に対して着脱し得るものである。
【0012】
請求項4記載の発明に係るブースは、請求項1記載のものであって、前記容器嵌合部は、前記外天井板の所定箇所に前記消火剤貯蔵容器の下半部が上から嵌り込む凹所を設けたものである。
【0013】
請求項5記載の発明に係るブースは、請求項4記載のものであって、前記凹所は、前記外天井板に形成した開口と、この開口の縁部に支持されて当該開口内に配設され前記消火剤貯蔵容器を下から支持する容器支持部材とを備えたものである。
【0014】
請求項6記載の発明に係るブースは、請求項4記載のものであって、前記消火剤貯蔵容器は、上下方向中間位置から下方に向かって平断面形状が漸次小さくなるものであり、前記凹所は、前記消火剤貯蔵容器の前記上下方向中間位置よりも下方部位の平断面形状に対応した開口を前記外天井板に設けたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、消火剤貯蔵容器をカバーのない露出状態で天井の容器嵌合部に載せ置くことにより消火装置を天井に設置することができるため、取付作業の煩雑さを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るブースを示す斜視図。
【
図5】同実施形態に係るブースの天井を取り除いた状態を示す平面図。
【
図10】同実施形態に係るブースの天井を示す分解斜視図。
【
図11】同実施形態に係る消火装置の取付け態様を示す分解斜視図。
【
図12】同実施形態に係るカバーの取付け態様を示す分解斜視図。
【
図13】同実施形態に係る容器支持部材を示す平面図。
【
図14】同実施形態に係る容器支持部材を示す正面図。
【
図15】同実施形態に係る容器支持部材を示す全体斜視図。
【
図16】本発明の第2実施形態に係る消火装置の取付け態様を示す分解斜視図。
【
図17】同実施形態に係る消火装置の取付け部位近傍を示す拡大断面図。
【
図18】同実施形態に係るブースの天井を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
【0018】
<第1実施形態>(
図1~
図15)
この実施形態は、本発明を2人用のブースBに適用した場合のものである。
【0019】
このブースBは、
図1~
図6に示すように、内部空間ISの下面を塞ぐ底盤1と、内部空間ISの周囲を囲む周壁(前壁2、側壁3、背壁4)と、内部空間ISの上面を塞ぐ天井5とを備えたものであり、その内部空間ISの中央にテーブル6が配されているとともに、そのテーブル6を挟んで両側に椅子7が設けられている。
【0020】
底盤1は、
図1及び
図4に示すように、下面にキャスタ17と、アジャスタ18と、固定具19とを備えている。キャスタ17は、当該ブースBを建築床面Fに沿って移動させるためのものであり、アジャスタ18は移動後に当該ブースBの四隅の高さを調整するためのものであり、固定具19は四隅の高さ調整後に当該ブースBを図示しないアンカーボルト等を用いて建築床面Fに固定するためのものである。
【0021】
周壁たる前壁2は、内部空間ISの前面を塞ぐもので、
図1、
図2、
図5及び
図6に示すように、左固定パネル21と、中央のドアパネル22と、右固定パネル23とを備えている。左固定パネル21、ドアパネル22、及び右固定パネル23は、例えば、合わせガラスを主体に構成されたものであり、ドアパネル22は、左固定パネル21の枠にヒンジ22dを介して開閉可能に蝶持されている。
【0022】
周壁たる側壁3は、
図4及び
図7に示すように、外側板31と、この外側板31の内面に添接された吸音材34と、この吸音材34の内側に配された内装用の吸音パネル35とを具備してなる。外側板31と吸音パネル35との間には空気流路3Fが形成されており、最上段の吸音パネル35の上縁には、内部空間IS内の空気をその空気流路3Fを介して後述する天井5の空気流路5Fに導くための切欠部35aが形成されている。
【0023】
周壁たる背壁4は、
図4~
図6に示すように、例えば、左右対をなす固定パネル41、43を備えたもので、左右の固定パネル41、43間には、中間支柱42が介設されている。固定パネル41、43は、例えば、合わせガラスを主体に構成されたものである。
【0024】
天井5は、内部空間ISと外部空間OSとを区成する二重壁構造のもので、
図4及び
図6~
図12に示すように、外部空間OSに露出する外天井板51と、内部空間ISに臨む内天井板56とを備えてなる。外天井板51は、例えば、板金製のもので、その下面には、左右に延びる横補強材52と前後に延びる縦補強材53とが溶接等により剛結されている。内天井板56は、周縁に上向き折曲部56cを有する平板状のもので、前後両端側には増厚用の補強材58が溶接等により剛結されている。増厚用の補強材58の下面にはナット581が固設されており、外天井板51及び横補強材52を貫通させたボルト580をそのナット581に螺着することによって、内天井板56が横補強材52の下面に止着されている。外天井板51と内天井板56との間には空気が流通可能な空気流路5Fが形成されている。外天井板51には、この空気流路内5Fの空気を外部空間OSに放出するための換気扇57が設けられている。59は、内部空間IS内を照明するためのダウンライトである。
【0025】
また、この天井5には、
図4、
図6、
図8及び
図9に示すように、消火剤貯蔵容器81と消火剤噴射ノズル82とを一体的に設けた下方放出型の消火装置8が配されている。すなわち、この天井5は、消火剤貯蔵容器81を外部空間側OSから載せ置くことができる容器嵌合部5kを備えたものであり、消火剤貯蔵容器81を容器嵌合部5kに担持させた状態で、少なくとも消火剤噴射ノズル82が内部空間ISに臨むように構成されている。
【0026】
詳述すれば、消火装置8は、
図4、
図6及び
図8~
図11に示すように、消火剤貯蔵容器81と、この消火剤貯槽容器81の下端中央に突設された感知センサを有する消火剤噴射ノズル82とを一体的に備えたものである。この実施形態の消火装置8は、長年に亘って販売され周知となっている通常の住宅用下方放出型自動消火装置(日本ドライケミカル株式会社製:SPA-5型スプリンクラーエース)であるため、詳細な構造や作用の説明は省略する。図中83は、消火剤貯蔵容器81の下面に突設された指示圧力計、84は、圧力充填口である。消火剤貯蔵容器81は、上下方向中間位置から下方に向かって平断面形状が漸次小さくなる形状をなしている。具体的には、この実施形態の消火剤貯蔵容器81における各部の平断面が円形であるため、当該消火剤貯蔵容器81の下半部は、下方に向かって円形平断面が漸次小径となる形状をなしている。
【0027】
かかる消火装置8を載せ置くことができる前述した容器嵌合部5kは、
図11及び
図12に示すように、外天井板51の所定箇所に消火剤貯蔵容器81の下半部が上から嵌り込む凹所51xを設けたものである。凹所51xは、例えば、外天井板51に形成した開口51aと、この開口51aの開口縁部に支持されて当該開口51a内に配設され消火剤貯蔵容器81を下から支持する容器支持部材9とを備えたものである。すなわち、開口51aは、例えば、消火剤貯蔵容器81の上下方向中央部分の直径に略対応する大きさの円形孔である。容器支持部材9は、開口51a内に没入した受皿状のものである。具体的には、この実施形態の容器支持部材9は、
図8、
図9、
図11及び
図13~
図15に示すように、外天井板51よりも低い位置において消火剤貯蔵容器81の下端面を支持する底板部91と、この底板部91から四方に延出し開口51aの縁51bに向かって漸次上昇する傾斜部92と、これら傾斜部92の延出端から水平に延び開口51aの上向き開口端面に溶接等により剛結された水平部93とを備えたものである。この実施形態の容器支持部材9は、板金素材に打ち抜き及び曲げ加工を施すことによって底板部91と、この底板部91から放射状に延びる複数枚の傾斜部92と、これら各傾斜部91の延出端からそれぞれ水平に延びる水平部93とを一体に形成したものである。そして、容器支持部材9の底板部91には、消火剤貯蔵容器81から垂下する消火剤噴射ノズル82との干渉を防止するノズル用の干渉防止孔91aと、指示圧力計83との干渉を防止する圧力計用の干渉防止孔91bと、圧力充填口84との干渉を防止する圧力充填口用の干渉防止孔91cとが形成されている。なお、内天井板56のノズル用の干渉防止孔91aに対応する部位には、ノズル挿通孔56aが穿設されているとともに、圧力計用の干渉防止孔91bに対応する部位には、圧力計挿通孔56bが形成されている。
【0028】
この容器嵌合部5kに消火装置8を担持させるには、容器支持部材9の上面に図示しないジェル等の粘着材を配設しておき、その容器支持部材9上に消火剤貯蔵容器81を載せ置くだけでよい。載せ置く際には、消火剤貯蔵容器81は露出状態にあるため、横から覗き込むことによって消火剤噴射ノズル82や指示圧力計83を対応する干渉防止孔91a、91bに比較的正確に対応させることができ、位置合わせもその時点で行うことができる。このようにして容器嵌合部5kの凹所51xに消火剤貯蔵容器81を載せ置くと、消火剤噴射ノズル82の先端部が内天井板56のノズル挿通孔56aを貫通して内部空間IS内に突出するとともに、指示圧力計83が圧力計挿通孔56bに挿入されて内部空間ISに臨むことになる。
【0029】
外天井板51の上には、
図1~
図4、
図6、
図8、
図9及び
図12に示すように、容器嵌合部5kに担持された消火剤貯蔵容器81が外部空間OSに露出するのを防止するためのカバー50が取着されている。このカバー50は、消火剤貯蔵容器81を容器嵌合部5kに担持させたままで、天井5に対して着脱し得るものである。具体的には、このカバー50は、
図8、
図9及び
図12に示すように、消火剤貯蔵容器81を非接触状態で上から覆う箱形のカバー本体501と、このカバー本体501の前縁及び後縁から外方に延出させた鍔部502とを備えたものであり、それらの鍔部502が外天井板51にボルト503を用いて着脱可能に止着されている。ボルト503は、外天井板51に固設されたナット504に螺着されるようになっている。カバー50は、外天井板51に対して円滑に着脱できるよう、消火剤貯蔵容器81に対しては一切接触しない態様で外天井板51に取付けられている。なお、50aは、容器支持部材9の水平部93との干渉を防止するためにカバー本体501に設けられた切欠部であり、50bは、容器支持部材9の水平部93との干渉を防止するために鍔部502に設けられた切欠部である。
【0030】
内部空間ISに配された前述の椅子7は、
図1及び
図4~
図6に示すように、上面に座78を有した箱状の椅子本体72と、前述した吸音パネル35の下端に連続する背凭れ79とを備えたもので、椅子本体内72には、空気流通室73が形成されている。空気流通室73は、内壁面に吸音材70を添接してなるもので、空気流通室73の一端が底盤1の空気流入口1aを介して外部空間OSに連通しているとともに他端が内部空間ISに開放されている。そのため、天井5の換気扇57を作動させると、外部空間OSの空気が椅子7の空気流通室73を通して内部空間ISに導入され、内部空間ISの空気は側壁3及び天井5の空気流路3F、5Fを通して換気扇57に達して外部に放出される。その結果、内部空間IS内には上昇気流が形成されて換気が効率よく行われる。
【0031】
ここで、
図1はブースBを示す斜視図であり、
図2は同正面図であり、
図3は同平面図である。なお、
図3において、換気扇57は一部破断して示している。
図4は
図3におけるA-A線に沿った断面図である。
図5はブースBの天井5を取り除いた状態を示す平面図である。
図6は
図3におけるX-X線に沿った断面図である。
図7は
図4におけるC部拡大図である。
図8は
図4におけるD部拡大図である。
図9は
図6におけるE部拡大図である。
図10は天井5を示す分解斜視図である。
図11は消火装置8の取付態様を示す分解斜視図である。
図12はカバー50の取付態様を示す分解斜視図である。
図13は容器支持部材9を示す平面図であり、
図14は同正面図であり、
図15は同全体斜視図である。
【0032】
このような構成のものであれば、内部空間IS内で火災が発生した際には、その熱気が直ちに上昇して消火剤噴射ノズル82に組み込まれている感知センサにより感知され、当該消火装置8が作動して消火剤貯蔵容器81内の消火剤が消火剤噴射ノズル82から内部空間IS内に噴射されることになる。
【0033】
しかして、このブースBにおいては、消火剤貯蔵容器81をカバー50のない露出状態で天井5の容器嵌合部5kに載せ置くことにより消火装置8を天井5に設置することができる。その際に噴射ノズル82の位置なども確認しつつ作業を進めることが比較的容易であるため設置位置の修正作業が必要になる可能性を確実に低減させることができる。また、万が一消火剤噴射ノズル82に位置ずれが見つかった場合でも、カバー50のみを外天井板51から一時的に取り外し、容器嵌合部5kに載せてある消火剤貯蔵容器81の載置状態を修正するだけでよい。容器嵌合部5kの容器支持部材9には、図示しないジェル等の粘着材を設けているため、通常のブース使用状態では消火装置8の位置ずれは生じないが、消火剤貯蔵容器81を積極的に持ち上げて位置修正することは容易に行うことができる。粘着材としては、耐震マットで用いられるウレタンエラストマーが望ましいが、粘着性を有した材質であればよく、それに限られることはない。
【0034】
したがって、かかる構成によれば、カバーを介して消火装置を天井に取り付けている従来のものに比べて、消火装置8を正確な位置に取り付けることが容易であり、万が一の位置修正も簡単に行うことができる。そのため、組立や点検等に要する作業効率を無理なく向上させることができる。
【0035】
なお、容器支持部材9の構成は図示例に限られず、例えば、板金素材を塑性変形させて容器支持部材9全体を外天井板51と一体に構成することも考えられる。また、容器支持部材9の一部を外天井板51と一体にすることも考えられ、その一例としては、前述の傾斜板92を開口51aの縁に一体に連続させる構造を挙げることができる。さらに、容器支持体9の一部又は全部を外天井板51と一体化するか別体化するかを問わず、傾斜板92の枚数は3枚あるいは5枚以上の枚数であってもよい。あるいは、傾斜板92を全周に亘って連続させ、容器支持部材9を皿状のものにしてもよい。この場合には、連続した傾斜板92の所要箇所に、消火装置8の消火剤噴射ノズル82や指示圧力計83が内天井板56のノズル挿通孔56aや圧力計挿通孔56bに挿入されるのを確認するための確認窓等を設けておくのが望ましい。
【0036】
<第2実施形態>(
図16~
図18)
この実施形態のブースBBは、容器嵌合部5k以外の構成が、第1実施形態のものと同じであり、同一又は対応する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
しかして、天井5に配される下方放出型の消火装置8は、その消火剤貯蔵容器81が、上下方向中間位置から下方に向かって平断面形状が漸次小さくなるものである。具体的には、
図16に示すように、この消火剤貯蔵容器81における各部の平断面は円形であり、当該消火剤貯蔵容器81の下半部は、
図16~
図18に示すように、下方に向かって円形の平断面が漸次小径となる形状をなしている。容器嵌合部5kは
図17及び
図18に示すように、外天井板51の所定箇所に消火剤貯蔵容器81の下半部が上から嵌り込む凹所を設けたものであり、凹所51xの具体例としては、消火剤貯蔵容器81の上下方向中間位置よりも下方部位の平断面形状に対応した開口を外天井板51に設けたものを挙げることができる。詳述すれば、凹所51xは、消火剤貯蔵容器81における上下方向中間位置と下端位置との中間に位置する部位の平断面形状に対応する円形の開口51aを外天井板51に穿設したものであり、この凹所51xに消火剤貯蔵容器81の下半部を嵌め合わせることによって、当該消火剤貯蔵容器81の下半部下面が開口51aの縁51bに当接し担持されることになる。この担持状態で、消火剤貯蔵容器81から垂下する消火装置8の消火剤噴射ノズル82や指示圧力計83が内天井板56のノズル挿通孔56aや圧力計挿通孔56bに挿入されることになる。
【0038】
なお、凹所51xは、外天井板51に円形の開口51aを設けたものに限らず、消火剤貯蔵容器81の平断面形状に対応させて種々の形状のものにしてもよい。また、凹所51xは、外天井板51に開口51aを設けただけのものではなく、開口51aの縁51bにゴムや合成樹脂製の緩衝材を設けたもの等であってもよい。
【0039】
ここで、
図16は消火装置8の取付態様を示す分解斜視図である。
図17は
図8に対応する拡大断面図である。
図18は
図9に対応する拡大断面図である。
【0040】
このような構成のブースBBにおいては、消火剤貯蔵容器81をカバー50のない露出状態で天井5の容器嵌合部5kに載せ置くことにより消火装置8を天井5に設置することができる。その際に噴射ノズル82の位置なども確認しつつ作業を進めることが比較的容易であるため設置位置の修正作業が必要になる可能性を確実に低減させることができる。すなわち、消火剤貯蔵容器81を外天井板51の開口51aに完全に嵌め込むまでは、開口51aの縁51bと消火剤貯蔵容器81との間に隙間が存在するため、消火剤噴射ノズル82や指示圧力計83が内天井板56のノズル挿通孔56aや圧力計挿通孔56bに接近する様子は作業者から視認し易くなっている。そのため、消火剤貯蔵容器81を所望の位置に載せ置くことが容易となる。
【0041】
消火剤貯蔵容器81は、外天井板51の開口51aにテーパー嵌合的に載せ置かれるため、通常のブース使用状態では消火装置8の位置ずれは生じないが、消火剤貯蔵容器81を積極的に持ち上げて位置修正することは容易に行うことができる。
【0042】
したがって、かかる構成によれば、カバー50を介して消火装置8を天井に取り付けている従来のものに比べて、消火装置8を正確な位置に取り付けることが容易であり、万が一の位置修正も簡単に行うことができる。そのため、組立や点検等に要する作業効率を無理なく向上させることができる。
【0043】
なお、本発明は、以上説明した第1実施形態や第2実施形態のものに限定されたいのは勿論であり、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0044】
例えば、天井は、二重壁構造のものに限られないが、前述の実施形態の天井のように外部空間に露出する外天井板と、内部空間に臨む内天井板とを備えたものであれば、防音性が良好なものになるだけでなく、外天井板を、消火装置を担持するための部材として利用することができるため、部品点数の増加を抑制することができる。
【0045】
カバーは省略してもよいが、消火装置に埃が付着するのを防止したり外観を良好なものにする上では設けておくのが望ましい。そして、このカバーが消火剤貯蔵容器を容器嵌合部に担持させたままで天井に対して着脱し得るものであれば、点検作業等をより円滑に行うことができる。
【0046】
容器嵌合部は、必ずしも外天井板の上面よりも下方に凹んだ形状のものである必要はないが、第1、第2実施形態のように外天井板の所定箇所に前記消火剤貯蔵容器の下半部が上から嵌り込む凹所を設けたものにすれば、消火剤貯蔵容器の下側が天井内に埋没した状態となる。そのため、消火剤貯蔵容器が外部に大きく突出するのを抑制することができ、カバーを設ける場合には、カバーの小型化をも促進することが可能となる。
【0047】
前述した第1、第2実施形態では、本発明を2人用のブースに適用した場合のものを示しているが、本発明を1人用のブースや3人以上用のブースに適用してももちろんよい。
【0048】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変形してよい。
【符号の説明】
【0049】
B、BB…ブース
5…天井
51…外天井板
56…内天井板
50…カバー
5k…容器嵌合部
51x…凹所
51a…開口
8…消火装置
81…消火剤貯蔵容器
82…消火剤噴射ノズル
9…容器支持部材
IS…内部空間
OS…外部空間