(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】ターボ機械ケーシングの冷却装置
(51)【国際特許分類】
F01D 11/24 20060101AFI20241108BHJP
F01D 25/12 20060101ALI20241108BHJP
F01D 25/24 20060101ALI20241108BHJP
F01D 25/26 20060101ALI20241108BHJP
F02C 7/18 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
F01D11/24
F01D25/12 B
F01D25/24 K
F01D25/26 D
F02C7/18 E
(21)【出願番号】P 2020566587
(86)(22)【出願日】2019-05-28
(86)【国際出願番号】 FR2019051258
(87)【国際公開番号】W WO2019229377
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-04-26
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シレ,ブノワ・ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】デカン,ローラン・クロード
(72)【発明者】
【氏名】ペラトン,ベルトラン・ギヨーム・ロビン
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/182740(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/046499(WO,A1)
【文献】米国特許第08869539(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 11/24
F01D 25/12
F01D 25/24- 25/28
F02C 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械(1)の環状ケーシング(18)用の冷却装置(21)であって、ケーシングの軸線(X)周りに円周方向に延在するコレクタハウジング(22)と、円周方向に延在してハウジング(22)の内部容積と接続する少なくとも2つの冷却管(23)とを備え、ハウジング(22)および/または各冷却管(23)が、ケーシング(18)に向かって半径方向に開口している開口部(25)および/または開口部(27)を備え、ハウジング(22)は、ハウジング(22)の円周方向の各側に、4つの円周方向に突出した冷却管接続部分を有し、ハウジング(22)は
、少なくとも1つの凹部領域(29
)を有し、
各凹部領域(29)は、半径方向溝(30)を有し、ハウジング(22)の同じ円周方向側に位置する、それぞれの対となる隣接する管(23)に対して、対応する半径方向溝(30)が、前記隣接する管(23)が延在する半径方向平面の間に軸線方向に位置し、各凹部領域(29)は、さらに、軸方向溝(31)を有し、それぞれの軸方向溝(31)は、ハウジング(22)における対応する底面(32)および2つの対応する側面(33)によって区切られており、前記2つの対応する側面(33)は、前記底面(32)に対して垂直であり、半径方向溝(30)は、ハウジング(22)の半径方向内側端部から半径方向外側端部への半径方向の空気流路を作り、軸方向溝(31)が、ハウジング(22)の軸線方向の第1の端部から第2の端部へ延在する直線状部分を有する、ことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
半径方向溝(30)が、ハウジング(22)の半径方向内側端部から半径方向外側端部まで半径方向に延在する直線部を有することを特徴とする、請求項1に記載の冷却装置(21)。
【請求項3】
各凹部領域(29)が丸みを帯びた領域または接続フィレット(34)によって冷却管接続部分につながっていることを特徴とする、請求項1または2に記載の冷却装置(21)。
【請求項4】
冷却管(23)が、軸線方向に並び半径方向内側に配置された2つの冷却管接続部分のそれぞれに接続されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の冷却装置(21)。
【請求項5】
前記ハウジング(22)の内部容積に開口して前記ハウジング(22)に対して部分的に半径方向外側にある冷却空気供給ダクト(35)を備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の冷却装置(21)。
【請求項6】
冷却管(23)は、少なくとも2つの第1の冷却管(23)および少なくとも2つの第2の冷却管(23)を備え、第1および第2の冷却管(23)がそれぞれハウジング(22)の両側に円周方向に延在し、2つの第1の冷却管が第1の
半径方向溝(30)によって分離され、2つの第2の冷却管が第2の
半径方向溝(30)によって分離されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の冷却装置(21)。
【請求項7】
円周方向に並ぶ一対の冷却管接続部分を有する部分におけるハウジング(22)の円周方向寸法と、円周方向に並ぶ一対の軸方向溝(31)を有する部分におけるハウジング(22)の円周方向寸法との比が、0.2~0.7であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の冷却装置(21)。
【請求項8】
ターボ機械(1)の環状ケーシング(18)と、前記ケーシング(18)に取り付けられ、前記ケーシング(18)を取り囲む、請求項1~7のいずれか1項に記載の冷却装置(21)とを備える、ターボ機械組立体。
【請求項9】
請求項8に記載の少なくとも1つのターボ機械組立体を備える、ターボ機械(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばダブルフローターボ機械などのターボ機械ケーシングの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、ダブルフローおよびダブルスプールを備えたターボ機械1を示す。ターボ機械の軸線はXで示され、回転部品の回転軸に対応している。以下では、軸線方向および半径方向と言う用語をX軸線と関連付けて定義する。
【0003】
ターボ機械1は、ガスが流れる方向の上流から下流に、送風機2と、低圧圧縮機3と、高圧圧縮機4と、燃焼室5と、高圧タービン6と、低圧タービン7とを有している。
【0004】
ファン2からの空気は、第1の環状流路9に流入する一次流れ8と、第1の環状流路10を取り囲む第2の環状流路11に流入する二次流れ10とに分割される。
【0005】
低圧圧縮機3、高圧圧縮機4、燃焼室5、高圧タービン6および低圧タービン7は、第1のセクション9に配置されている。
【0006】
高圧タービン6のロータと高圧圧縮機4のロータとは、高圧体を形成するために第1のシャフト12を介して回転結合されている。
【0007】
低圧タービン7のロータと低圧圧縮機3のロータとは、低圧体を形成するために第2のシャフト13を介して回転結合され、送風機2は、例えば遊星歯車列を介して低圧圧縮機3のロータに直接接続することができる。
【0008】
図2に最もよく示されているように、低圧タービン7は、特に、可動ホイール14および固定部品を有する、異なる連続したステージを有する。インペラは、ブレード16が取り付けられたディスク15を有する。ブレード16の端部は、摩耗性材料からなる固定リング17によって取り囲まれており、前記リング17はタービンケーシング18に固定されている。弁19は、インペラ14の下流に配置されている。弁19およびリング17は、ケーシング18の半径方向内面から延在するフランジまたはフック20によってケーシングに取り付けられている。
【0009】
ターボ機械の高効率を保証するために、個々のステージのインペラ14を通過しない空気の流れは制限されなければならない。すなわち、ブレード16の半径方向外端部と摩耗性材料で作られたリング17との間の漏れは制限されなければならない。これを行うために、この境界面でクリアランスをチェックしなければならない。このクリアランスが、ケーシング18の温度、そして、特にリング17を支持するフックまたはフランジ20を含む前記ケーシング18の領域に依存するからである。
【0010】
燃焼室5からの一次空気流は高温であり、タービン6、7の固定部品および可動部品のような下流の部品を加熱する。
【0011】
前述のクリアランスを制御し、タービンの様々な静止部品および可動部品のいかなる早期の劣化をも回避するために、ターボ機械の環境に容易に統合できる、効果的な冷却手段を提供する必要がある。
【0012】
本願出願人に代わって、特許出願である仏国特許発明第3021700号明細書は、
図3に見られる低圧タービン7のケーシング18の冷却装置21を開示し、この装置は、コレクタボックス22を有し、各コレクタボックス22は軸線方向に延在するチャネルを形成する。
【0013】
装置21はまた、コレクタボックス22の両側に円周方向に延在する管23を含む。これらの管23はランプとも呼ばれ、円形断面の湾曲した管によって形成され、各管23は、例えば約90°の角度でケーシングの周りに円周方向に延在する。
【0014】
各管23は、対応するコレクタボックス22のチャネルへの空気入口開口部と、閉鎖された遠位端部とを有する。各管23はまた、ケーシング18に対向する空気噴出開口部を有する円筒壁を有し、ケーシング18に対向する開口部を通して開く前に、冷却空気がマニホルド22に流入し、次いで管23に流入してケーシングを冷却することができるようになっている。これは、空気がケーシング18に衝突するため、衝突冷却と呼ばれる。
【0015】
ハウジングの半径方向内側部分はまた、冷却のためにハウジングに対向する空気放出開口部を有する。
【0016】
ケーシングと反対側のハウジングの領域は、これらの領域の冷却が不十分であるために、厳しい熱応力によって損傷を受けていることが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
より詳細には、本発明は、これらの問題に対する単純で、効率的かつ費用対効果の高い解決策を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的のために、本発明は、ターボ機械の環状ケーシングの冷却装置であって、ケーシングの軸線周りに円周方向に延在するように意図されたコレクタハウジングと、円周方向に延在してハウジングの内部容積に接続された少なくとも2つの冷却管とを備え、ハウジングおよび/または各管は、ケーシングに向かって半径方向に開口する噴出開口部を有し、ハウジングと一体に形成された管接続部が、ハウジングから円周方向に突出して延在し、それらの間に、ハウジングの内側から外側へ半径方向の空気流路を許容するハウジングの少なくとも1つの凹部領域を形成することを特徴とする装置を提供する。
【0020】
凹部領域は、内側から外側へ半径方向に延在することができる。凹部領域は、ハウジングの半径方向内側端部からハウジングの半径方向外側端部まで延在してもよい。換言すれば、凹部領域は、ハウジングの外側で半径方向に開口することもできる。
【0021】
あるいは、凹部領域は、ハウジングの半径方向寸法の一部のみに亘って延在し、ハウジングの半径方向中央領域内に開口してもよい。
【0022】
凹部領域は、ハウジング内の少なくとも1つの穴によって形成することができる。換言すれば、凹部領域は、閉鎖部分を有してもよい。
【0023】
あるいは、凹部領域は、少なくとも1つの溝によって形成することもできるし、より一般的には、開口部を有し、円周方向に開口することもできる。
【0024】
全ての場合、凹部領域は、ケーシングに衝撃を与えた冷却空気の一部を取り出して別の領域に排出することを可能にする。これにより、ハウジングとケーシングの間に冷却空気の一部が閉じ込められてケーシングの関連領域が非常に高温になり、それによって、領域の早期の損傷を引き起こすことが回避される。
【0025】
これに対して本発明では、凹部領域は、より良い空気循環を可能にし、それによってケーシングへの加熱および損傷を回避する。
【0026】
各凹部領域は、ハウジングの半径方向内側端部から半径方向外側端部まで半径方向に延在する直線状部分を有することができる。
【0027】
凹部領域の半径方向の直線状部分は、溝または穴によって形成することができる。
【0028】
各凹部領域は、ハウジングの第1の軸線方向端部から第2の軸線方向端部まで円周方向に延在する直線状部分を有することができる。
【0029】
凹部領域の円周方向に延在する直線状部分は、溝または穴によって形成することができる。
【0030】
各凹部領域は、丸みを帯びた領域またはフィレットによって管接続部分に接続される。
【0031】
このようにして、凹部領域内の空気流の中での圧力損失が制限される。
【0032】
管は、ハウジングの半径方向内側部分に配置された管接続部に接続することができる。
【0033】
冷却装置は、ハウジングの内部容積内に、部分的にはハウジングの半径方向外側に、冷却空気供給ライン開口部を有することができる。
【0034】
供給ラインは、半径方向に向いた方向でハウジング内に導くことができる。供給ラインは、ハウジングの軸線方向中央領域で開口してもよい。
【0035】
冷却装置は、少なくとも2つの第1の管および、少なくとも2つの第2の管を備えてもよく、第1の管および第2の管は、それぞれハウジングの両側に円周方向に延在し、、ハウジングは、2つの第1の管の間に軸線方向に位置する少なくとも1つの第1の凹部領域と、2つの第2の管の間に軸線方向に位置する少なくとも1つの第2の凹部領域とを画定する。
【0036】
各管接続領域におけるハウジングの円周方向寸法と各凹部領域におけるハウジングの円周方向寸法との比は、0.2~0.7の間であってもよい。
【0037】
本発明はまた、ターボ機械の環状ケーシング、例えば環状タービンケーシングを備え、前記ケーシングに取り付けられ、前記ケーシングを取り囲む、前述した形式の冷却装置を備えることを特徴とする組立体に関する。
【0038】
また、本発明は、少なくとも前述の形式の組立体を備えるターボ機械に関する。
【0039】
本発明は、添付の図面を参照して、非限定的な例として与えられる以下の説明を読むと、より良く理解され、本発明の他の詳細、特徴、および利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】従来技術のダブルフローターボジェットエンジンの軸断面図である。
【
図2】従来技術のターボジェットエンジンの一部の軸断面図であり、特に低圧タービンを図示するものである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る冷却装置の一部の斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る冷却装置の一部の概略図でである。
【
図6】
図4に対応する図であり、本発明の代替実施形態を図示するものである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図4~
図5は、本発明の一実施形態に係るターボ機械1のケーシング18用冷却装置21の一部を示す。説明において、「軸線方向」、「半径方向」および「円周方向」という用語は、ケーシング18の軸線に対して定義され、これはターボ機械1の軸線Xにも対応する。
【0042】
本装置は、ケーシング18の軸線に沿って延在し、中空であり、且つ内部容積を区切るコレクタハウジング22を備える。
【0043】
ハウジング22の両側に円周方向に延在する冷却管23は、ハウジング22の内部容積に接続されている。
【0044】
例えば、各管23は、公知のように、ハウジング22内に開口する第1の円周方向端部24と、第2の閉じた円周方向端部とを有する。各管23は円形断面を有し、各管23の半径方向内側部分に空気噴出開口部25が形成されており、噴出開口部25はケーシング18に対向して開口している。各管23は、ケーシング18の周囲に、用途に応じて変化し得る角度範囲に亘って円周方向に延在する。例えば、各管23は、円周方向に約90度または180度で延在している。
【0045】
管23は、ハウジング22の半径方向内側部分26に接続されている。
【0046】
空気噴出開口部27もハウジング22の半径方向内側部分、特にハウジングに対向する半径方向内面28上に形成され、前記開口部27はケーシング18に向かって開口する。
【0047】
ハウジング22の穴26および管23の穴は、円周の周りに均等に分布しており、ここでは同じ半径面内に位置している。開口部25、28の間のピッチは、用途に応じて固定または可変とすることができる。例えば、開口部25、28は円形断面を有する。
【0048】
ハウジング22は、凹部領域29によって形成された空気通路を有する。各空気通路または凹部領域29は、特に、ハウジング22の半径方向内端から半径方向外端まで半径方向に延在する溝によって形成された直線部30を有する。各凹部領域29は、その端部において軸線方向に延在する溝開口部によって形成される直線状部分31を更に備える。
【0049】
ハウジング22の同じ円周方向側に位置する、隣接する管23の各対に対して、対応する半径方向溝30は、前記隣接する管23が延在する半径方向平面の間に軸線方向に位置する。
【0050】
各溝30、31は、底面32および2つの側面33によって区切られている。
図4および
図5に図示された実施形態では、側面33は平坦であり、底面32に対して垂直である。
図6に図示した別の実施形態では、側面33および底面32は、接続フィレット領域または丸みを帯びた領域34を有していてもよい。
【0051】
各管23の接続領域におけるハウジング22の円周方向寸法と、各凹部領域29におけるハウジング22の円周方向寸法との比は、0.2~0.7の間であってもよい。
【0052】
更に、冷却装置21は、ハウジング22の内部容積内に、ハウジング22の外側の部分的に半径方向に、かつハウジング22の軸方向中央領域に開口する冷却空気供給ライン35を有する。
【0053】
供給ライン35は、半径方向に向けられた方向でハウジング22内に通じる。
【0054】
運転中、冷却空気は供給ライン35を経てハウジング内部22に供給される。次いで、この冷却空気は、種々の冷却管23の間に均等に分配される。ハウジング22内の空気の一部は、ハウジング22の開口部28を通ってケーシング18に向かって噴出される。管23内の空気の一部は、ハウジング23の開口部を通ってケーシング18に向かって噴出される。この冷却空気はケーシング18に衝突し、その温度を下げる。ケーシング18を冷却するために使用される空気は、管23の間の軸方向に区切られた空間に排出されるだけでなく、凹部領域29を通っても排出される。特に、ケーシング18と接触して加熱された冷却空気の一部は、半径方向溝30および/または軸方向溝31を通って半径方向外方に排出される。
【0055】
これにより、ケーシング18の冷却が改善され、ハウジング22の下、すなわちハウジング22とケーシング18との間の半径方向への熱風の滞留が回避される。