(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】関節軟骨修復のための接着剤を含むスキャフォールド
(51)【国際特許分類】
A61F 2/30 20060101AFI20241108BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20241108BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20241108BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20241108BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20241108BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20241108BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A61F2/30
A61L27/16
A61L27/18
A61L27/20
A61L27/22
A61L27/24
A61L27/58
(21)【出願番号】P 2020569964
(86)(22)【出願日】2019-06-10
(86)【国際出願番号】 US2019036256
(87)【国際公開番号】W WO2019241099
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-06-06
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508127454
【氏名又は名称】オキュジェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】クローム ジェイムズ
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-503222(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0273121(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0193468(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/30
A61L 27/16
A61L 27/18
A61L 27/20
A61L 27/22
A61L 27/24
A61L 27/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節軟骨中の損傷または欠損の処置における使用のための
キットであって、
該キットが
a)マトリックスインプラント、および
b)バリア組成物
を含み、
前記マトリックスインプラントが無細胞マトリックスインプラントであり
;
前記バリア組成物がゲルおよび酵素を含み、該酵素は、適用後該バリア組成物の約90%
を14日以内に分解する
酵素であり、
前記バリア組成物
は軟骨病巣の底部
に適用
され、
前記マトリックスインプラントは
前記適用されたバリア組成物上
に埋め込
まれる、
該キット。
【請求項2】
バリア組成物が軟骨下骨へ適用される、請求項1記載の
キット。
【請求項3】
マトリックスインプラントが、少なくとも一つの治療剤を含む、請求項
1または2記載の
キット。
【請求項4】
無細胞マトリックスインプラントが、I型コラーゲン、II型コラーゲン、IV型コラーゲン、プロテオグリカンを含有するコラーゲン、グリコサミノグリカンを含有するコラーゲン、糖タンパク質を含有するコラーゲン、芳香族有機酸のポリマー、ゼラチン、アガロース、ヒアルロナン、フィブロネクチン、ラミニン、生物活性ペプチド増殖因子、サイトカイン、エラスチン、フィブリン、ポリ乳酸から作られたポリマー、ポリグリコール酸から作られたポリマー、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリアミノ酸、ポリペプチドゲル、およびポリマー性熱可逆性ゲル化ヒドロゲル(TRGH)のうちの1つまたは複数を含む、請求項1記載の
キット。
【請求項5】
前記バリア組成物が、ゼラチン、I型コラーゲン、過ヨウ素酸酸化ゼラチン、光重合性ポリエチレングリコール-co-ポリ(α-ヒドロキシ酸)ジアクリレートマクロマー、メチル化コラーゲンを加えたN-(アシルオキシ)スクシンイミドおよびチオールで誘導体化された4腕のポリエチレングリコール、アルキル化コラーゲンで架橋された誘導体化ポリエチレングリコール(PEG)、テトラ-N-ヒドロキシスクシンイミジルまたはテトラチオール誘導体化PEG、およびメチル化コラーゲンを有する架橋PEGのうちの1つまたは複数を含む、請求項1~
4のいずれか一項記載の
キット。
【請求項6】
前記バリア組成物がシーラントを
さらに含む、請求項1~
5のいずれか一項記載の
キット。
【請求項7】
バリア組成物が軟骨下骨へ適用された後にシーラントがヒドロゲルを形成する、請求項
6記載の
キット。
【請求項8】
バリア組成物またはシーラントがポリマーを含む、請求項
6または7記載の
キット。
【請求項9】
ポリマーが、ゼラチン、ポリエチレングリコール(PEG)、誘導体化PEG、シアノアクリレート、ポリウレタン、ポリ(メチリデンマロネート)、誘導体化ポリビニルアルコール、アクリルポリマー、フィブリン、ゼラチン、カテコール側鎖を有するポリスチレン、ポリエステル、フラグマトポマ・カリフォルニカ(Phragmatopoma californica)によって分泌されるポリマー、ポリエチレングリコールおよびポリラクチドの共重合体、ポリエチレングリコールおよびポリグリコリドの共重合体、ポリエーテル、多糖、酸化多糖、ポリカチオンポリアミン、ポリアニオン、ポリ(エステル尿素)、ポリエチレングリコールおよびポリラクチドまたはポリグリコリドの共重合体、4腕のペンタエリスリトールチオールおよびポリエチレングリコールジアクリレート、4腕のテトラ-N-ヒドロキシスクシンイミジルエステルまたはテトラチオール誘導体化PEG、ゼラチンおよび酸化デンプンから形成されたポリマー、光重合性ポリエチレングリコール-co-ポリ(a-ヒドロキシ酸)ジアクリレートマクロマーから形成されたポリマー、過ヨウ素酸酸化ゼラチン、マレイミジル、スクシンイミジル、フタルイミジルおよび関連活性基で誘導体化された二官能基性ポリエチレングリコールおよび血清アルブミン、ならびにスクシンイミジルエステルおよびチオールで誘導体化された4腕のポリエチレングリコール、ならびにメチル化コラーゲンである、請求項
8記載の
キット。
【請求項10】
ポリマーがゼラチンまたはフィブリンであり、かつ、バリア組成物がトロンビンまたは架橋剤を
さらに含む、請求項
9記載の
キット。
【請求項11】
バリア組成物が、粘度を調節する成分を
さらに含む、請求項1~
10のいずれか一項記載の
キット。
【請求項12】
バリア組成物が安定剤を
さらに含む、請求項1~
11のいずれか一項記載の
キット。
【請求項13】
バリア組成物が構造材料を含む、請求項1~
12のいずれか一項記載の
キット。
【請求項14】
構造材料が、繊維、フィブリン、アルギネート、ヒアルロン酸、ゼラチン、セルロース、またはコラーゲンのうちの1つまたは複数を含む、請求項
13記載の
キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2018年6月11日に出願された米国仮出願第62/683,358号に対する優先権を主張し、この開示は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
軟骨下領域から病巣中への細胞、血液、および他の物質の移動を遮断するために有効なバリア組成物上の関節軟骨病巣中へ、マトリックスインプラントを埋め込む。
【背景技術】
【0003】
背景
関節軟骨は、水分子、膠原線維およびプロテオグリカンから構成される大きな細胞外マトリックス中に組み込まれた軟骨細胞からなる。関節軟骨への損傷は、急性もしくは反復性外傷性損傷または加齢の結果として活動的な個人および高齢者において生じる。そのような損傷は、疼痛をもたらし、可動性に影響を与え、身体障害を生じさせ得る。現在多くの治療方法が使用されている。現在の外科的処置は、マイクロフラクチャー、洗浄、デブリドマン、ドリリング、および摩耗軟骨形成術を含む。
【0004】
洗浄は、塩化ナトリウム、リンゲル、またはリンゲルおよび乳酸塩の溶液での関節の灌注を伴う。デブリドマンは、軟骨の粗面の平滑化および半月板の弛緩部の除去を伴う。これらの技術は一時的な疼痛緩和を提供するが、さらなる治癒の可能性をほとんどまたは全く有さない。一時的な疼痛緩和は、変性軟骨片、タンパク質分解酵素および炎症性メディエーターの除去に起因すると考えられている。
【0005】
マイクロフラクチャーは、損傷した関節軟骨を除去し、続いて、下層の軟骨下骨を物理的に傷つけて骨髄を露出させそして出血させることを伴う。マイクロフラクチャーは、軟骨下骨中へ小さな穴を空けて、軟骨欠損部位中への骨髄由来幹細胞の移動を可能にすることによって行われる。手術は、軟骨欠損の洗浄後に関節鏡検査法によって行われる。外科医は、軟骨下骨中に多数の小さな骨折を作るためにオール(awl)を使用することができる。幹細胞を含有する血液および骨髄が、骨折から滲出し、軟骨構築細胞を放出する血餅を作る。身体は、損傷に対して応答するようにマイクロフラクチャーに応答し、これは新しい置換軟骨の形成をもたらす。血餅は、炎症性サイトカイン、増殖因子および間葉系幹細胞(MSC)を導入し、欠損を満たす。これらの因子、特に幹細胞が、新しい軟骨の産生を可能にする。
【0006】
軟骨病巣中における修復組織と軟骨下骨板との間の連絡は、軟骨修復を促進することができる。Vasara, A.I. et al., OsteoArthritis and Cartilage, 2006, 14:1066-1074(非特許文献1)。マイクロフラクチャーは、7~17年間にわたる長期改善を提供することができる。Steadman, J.R. et al., Arthroscopy, 2003, 9(5):477-484(非特許文献2)。同時に、マイクロフラクチャーは、硝子軟骨よりはむしろ線維軟骨の形成を促進する。マイクロフラクチャーはまた、高齢の患者、過体重の患者、および2.5 cmより大きな軟骨病巣を有する患者の処置において有効性が低い。これらの患者は、線維軟骨がすり減るため、手術後僅か1~2年で症状が再発し得る。その時点で、そのような患者は、関節軟骨修復術に再び取り組まなければならない場合がある。
【0007】
他の選択肢としては、骨軟骨自家移植片移植(OAT)および骨軟骨同種移植片移植(OCA)が挙げられる。しかし、OATは、ドナー部位の病的状態、および大きな病巣を処置することができないことによって制限され、OCAは、疾病伝播および軟骨下骨崩壊の危険性を有する。欠損中への細胞または組織の直接移植および生物学的または人工的代用品での欠損の置換は、現在、外科的介入の僅かな割合しか占めていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Vasara, A.I. et al., OsteoArthritis and Cartilage, 2006, 14:1066-1074
【文献】Steadman, J.R. et al., Arthroscopy, 2003, 9(5):477-484
【発明の概要】
【0009】
一局面において、関節軟骨中の損傷または欠損を処置するための方法を提供する。方法は、マトリックスインプラントを調製する工程、ポリマーを含むバリア組成物を軟骨病巣の底部へ適用する工程、および適用されたバリア組成物上に該インプラントを埋め込む工程を含む。いくつかの態様において、バリア組成物を軟骨下骨へ適用する。
【0010】
いくつかの態様において、バリア組成物は、軟骨下領域から軟骨病巣中への細胞、血液、または他の物質の移動を遮断するために有効である。
【0011】
いくつかの態様において、マトリックスインプラントは無細胞マトリックスインプラントである。いくつかの態様において、無細胞マトリックスインプラントは、I型コラーゲン、II型コラーゲン、IV型コラーゲン、プロテオグリカンを含有するコラーゲン、グリコサミノグリカンを含有するコラーゲン、糖タンパク質を含有するコラーゲン、芳香族有機酸のポリマー、ゼラチン、アガロース、ヒアルロニン(hyaluronin)、フィブロネクチン、ラミニン、生物活性ペプチド増殖因子、サイトカイン、エラスチン、フィブリン、ポリ乳酸から作られたポリマー、ポリグリコール酸から作られたポリマー、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(セバシン酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-εカプロラクトン)、ポリ(乳酸-co-ビニルアルコール)、ポリ(乳酸-co-セバシン酸)、ポリ(グリコール酸-co-εカプロラクトン)、ポリ(グリコール酸-co-ビニルアルコール)、ポリ(グリコール酸-co-セバシン酸)、ポリ(ε-カプロラクトン-co-ビニルアルコール)、ポリ(ε-カプロラクトン-co-セバシン酸)、ポリ(ビニルアルコール-co-セバシン酸)、ポリアミノ酸、ヒドキシポリアミド(hydoxypolyamide)、ポリアミド、およびポリペプチドゲルのうちの1つまたは複数を含む。例示的なヒドロキシポリアミドは、米国特許第8,623,943号;同第9,315,624号;および同第9,505,882号に記載されており、これらの全ては参照により本明細書に組み入れられる。
【0012】
いくつかの態様において、バリア組成物は、以下、または以下から形成された重合生成物のうちの1つまたは複数を含む:ゼラチン、I型コラーゲン、過ヨウ素酸酸化ゼラチン、光重合性ポリエチレングリコール-co-ポリ(α-ヒドロキシ酸)ジアクリレートマクロマー、メチル化コラーゲンを加えたN-(アシルオキシ)スクシンイミドおよびチオールで誘導体化された4腕のポリエチレングリコール、アルキル化コラーゲンで架橋された誘導体化ポリエチレングリコール(PEG)、テトラ-N-ヒドロキシスクシンイミジルまたはテトラチオール誘導体化PEG(例えば、Covidien製のSprayGel Adhesion Barrier System、またはBaxter Healthcare製のCoSeal(商標))、およびメチル化コラーゲンを有する架橋PEG。
【0013】
いくつかの態様において、バリア組成物はシーラントを含む。いくつかの態様において、シーラントは、バリア組成物が軟骨下骨へ適用された後にヒドロゲルを形成する。
【0014】
いくつかの態様において、バリア組成物またはシーラントはポリマーを含む。いくつかの態様において、ポリマーは、ゼラチン、ポリエチレングリコール(PEG)、誘導体化PEG、ポリ(シアノアクリレート)、ポリウレタン、ポリ(メチリデンマロネート)、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ヒドロキシポリアミド、誘導体化ポリビニルアルコール、アクリルポリマー、フィブリン、ゼラチン、カテコール側鎖を有するポリスチレン、ポリエステル、ジヒドロキシチロシンを含むポリペプチド、カテコール側鎖を有するポリ(α-アミノカルボン酸)、フラグマトポマ・カリフォルニカ(Phragmatopoma californica)によって分泌されるポリマー、ポリエチレングリコールおよびポリラクチドの共重合体、ポリエチレングリコールおよびポリグリコリドの共重合体、ポリエーテル、多糖、酸化多糖、ポリカチオンポリアミン、ポリアニオン、ポリ(エステル尿素)、ポリエチレングリコールおよびポリラクチドまたはポリグリコリドの共重合体、4腕のペンタエリスリトールチオールおよびポリエチレングリコールジアクリレート、4腕のテトラ-N-ヒドロキシスクシンイミジルエステルまたはテトラチオール誘導体化PEG、ゼラチンおよび酸化デンプンから形成されたポリマー、光重合性ポリエチレングリコール-co-ポリ(a-ヒドロキシ酸)ジアクリレートマクロマーから形成されたポリマー、過ヨウ素酸酸化ゼラチン、マレイミジル、スクシンイミジル、フタルイミジルおよび関連活性基で誘導体化された二官能基性ポリエチレングリコールおよび血清アルブミン、ならびにスクシンイミジルエステルおよびチオールで誘導体化された4腕のポリエチレングリコール、ならびにメチル化コラーゲンである。いくつかの態様において、ポリマーはゼラチンまたはフィブリンであり、かつ、バリア組成物はトロンビンまたは架橋剤を含む。
【0015】
いくつかの態様において、バリア組成物は、粘度を調節する成分を含む。
【0016】
いくつかの態様において、バリア組成物は安定剤を含む。
【0017】
いくつかの態様において、バリア組成物は、バリア組成物の分解速度を増加させるために有効な酵素を含む。
【0018】
いくつかの態様において、バリア組成物は構造材料をさらに含む。いくつかの態様において、構造材料は、繊維、フィブリン、アルギネート、ヒアルロン酸、ゼラチン、セルロース、またはコラーゲンのうちの1つまたは複数を含む。
【0019】
いくつかの態様において、方法は、マトリックスインプラント上にトップ保護用生分解性ポリマーの層を導入する工程をさらに含む。
【0020】
いくつかの態様において、マトリックス組成物は、細胞接着および/または増殖を増強する成分を含む。
[本発明1001]
(a)マトリックスインプラントを調製する工程;
(b)ポリマーを含むバリア組成物を軟骨病巣の底部へ適用する工程;および
(c)適用されたバリア組成物上に該インプラントを埋め込む工程
を含む、関節軟骨中の損傷または欠損を処置するための方法。
[本発明1002]
バリア組成物を軟骨下骨へ適用する、本発明1001の方法。
[本発明1003]
バリア組成物が、軟骨下骨から軟骨病巣中への細胞、血液、または他の物質の移動を遮断するために有効である、本発明1001の方法。
[本発明1004]
マトリックスインプラントが無細胞マトリックスインプラントである、本発明1001~1003のいずれかの方法。
[本発明1005]
無細胞マトリックスインプラントが、I型コラーゲン、II型コラーゲン、IV型コラーゲン、プロテオグリカンを含有するコラーゲン、グリコサミノグリカンを含有するコラーゲン、糖タンパク質を含有するコラーゲン、芳香族有機酸のポリマー、ゼラチン、アガロース、ヒアルロナン、フィブロネクチン、ラミニン、生物活性ペプチド増殖因子、サイトカイン、エラスチン、フィブリン、ポリ乳酸から作られたポリマー、ポリグリコール酸から作られたポリマー、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリアミノ酸、ポリペプチドゲル、およびポリマー性熱可逆性ゲル化ヒドロゲル(TRGH)のうちの1つまたは複数を含む、本発明1004の方法。
[本発明1006]
前記バリア組成物が、ゼラチン、I型コラーゲン、過ヨウ素酸酸化ゼラチン、光重合性ポリエチレングリコール-co-ポリ(α-ヒドロキシ酸)ジアクリレートマクロマー、メチル化コラーゲンを加えたN-(アシルオキシ)スクシンイミドおよびチオールで誘導体化された4腕のポリエチレングリコール、アルキル化コラーゲンで架橋された誘導体化ポリエチレングリコール(PEG)、テトラ-N-ヒドロキシスクシンイミジルまたはテトラチオール誘導体化PEG、およびメチル化コラーゲンを有する架橋PEGのうちの1つまたは複数を含む、本発明1001~1005のいずれかの方法。
[本発明1007]
前記バリア組成物がシーラントを含む、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
バリア組成物が軟骨下骨へ適用された後にシーラントがヒドロゲルを形成する、本発明1007の方法。
[本発明1009]
バリア組成物またはシーラントがポリマーを含む、本発明1001~1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
ポリマーが、ゼラチン、ポリエチレングリコール(PEG)、誘導体化PEG、シアノアクリレート、ポリウレタン、ポリ(メチリデンマロネート)、誘導体化ポリビニルアルコール、アクリルポリマー、フィブリン、ゼラチン、カテコール側鎖を有するポリスチレン、ポリエステル、フラグマトポマ・カリフォルニカ(Phragmatopoma californica)によって分泌されるポリマー、ポリエチレングリコールおよびポリラクチドの共重合体、ポリエチレングリコールおよびポリグリコリドの共重合体、ポリエーテル、多糖、酸化多糖、ポリカチオンポリアミン、ポリアニオン、ポリ(エステル尿素)、ポリエチレングリコールおよびポリラクチドまたはポリグリコリドの共重合体、4腕のペンタエリスリトールチオールおよびポリエチレングリコールジアクリレート、4腕のテトラ-N-ヒドロキシスクシンイミジルエステルまたはテトラチオール誘導体化PEG、ゼラチンおよび酸化デンプンから形成されたポリマー、光重合性ポリエチレングリコール-co-ポリ(a-ヒドロキシ酸)ジアクリレートマクロマーから形成されたポリマー、過ヨウ素酸酸化ゼラチン、マレイミジル、スクシンイミジル、フタルイミジルおよび関連活性基で誘導体化された二官能基性ポリエチレングリコールおよび血清アルブミン、ならびにスクシンイミジルエステルおよびチオールで誘導体化された4腕のポリエチレングリコール、ならびにメチル化コラーゲンである、本発明1009の方法。
[本発明1011]
ポリマーがゼラチンまたはフィブリンであり、かつ、バリア組成物がトロンビンまたは架橋剤を含む、本発明1010の方法。
[本発明1012]
バリア組成物が、粘度を調節する成分を含む、本発明1001~1011のいずれかの方法。
[本発明1013]
バリア組成物が安定剤を含む、本発明1001~1012のいずれかの方法。
[本発明1014]
バリア組成物が、バリア組成物の分解速度を増加させるために有効な酵素を含む、本発明1001~1013のいずれかの方法。
[本発明1015]
バリア組成物が構造材料を含む、本発明1001~1014のいずれかの方法。
[本発明1016]
構造材料が、繊維、フィブリン、アルギネート、ヒアルロン酸、ゼラチン、セルロース、またはコラーゲンのうちの1つまたは複数を含む、本発明1015の方法。
[本発明1017]
マトリックスインプラント上に保護用生分解性ポリマーを導入する工程をさらに含む、本発明1001~1016のいずれかの方法。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】軟骨下骨上のインプラントの組織学的分析を示し、上パネル中の画像の一部が下パネル中に拡大表示されている。左パネルは、縫合細胞構築物が骨の上に埋め込まれた後の組織を示し、ここで、接着剤が細胞構築物の下に適用された。中央パネルは、細胞構築物が骨の上に埋め込まれた後の組織を示し、ここで、接着剤が細胞構築物の下に適用された。右パネルは、縫合細胞構築物が接着剤無しで骨の上に埋め込まれた後の組織を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
定義:
特に定義されない限り、本明細書に使用される専門用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0023】
用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、量の限定を意味せず、しかしむしろ、参照される要素の「少なくとも1つ」の存在を意味する。
【0024】
用語「軟骨」は、本明細書において使用される場合、細胞外マトリックス中に組み込まれた軟骨細胞を含有する特殊なタイプの結合組織を指す。軟骨の生化学的組成はタイプによって異なるが、一般に、コラーゲン、他のマイナーな型(例えば、IX型およびXI型)と共に主にII型軟骨、プロテオグリカン、他のタンパク質、および水を含む。いくつかのタイプの軟骨が当技術分野において認識されており、例えば、硝子軟骨、関節軟骨、肋軟骨、線維軟骨、半月板軟骨、弾性軟骨、耳介軟骨、および黄色軟骨を含む。
【0025】
用語「軟骨細胞」は、本明細書において使用される場合、軟骨組織の成分を産生することができる細胞を指す。
【0026】
用語「支持マトリックス」は、軟骨細胞の成長および三次元増殖のためのおよび新しい硝子軟骨の構築のためまたは骨病巣中への骨軟骨細胞の移動のための、構造支持を提供する、活性化された移動する軟骨細胞または骨細胞を受けるのに適している、生物学的に許容されるゾル-ゲルまたはコラーゲン性スポンジ、スキャフォールド、ハニカム、ヒドロゲル、生物学的に許容される材料を意味する。
【0027】
本発明者らは、線維軟骨ではなく健康な硝子軟骨の形成は、軟骨下骨上に置かれたバリア組成物の少なくとも1つの層上の生分解性無細胞マトリックスインプラントを軟骨病巣中へ配置することによって促進されることを見出した。理論によって拘束されることを望まないが、バリア組成物は、軟骨下領域から病巣中への細胞、血液または流体の移動を遮断するために有効であり、これらのうちのいずれも病巣内の線維軟骨形成を促進する傾向があり得る。本発明者らは、遮断が、インプラントに由来する軟骨細胞、周囲の健康な軟骨組織、および滑液または滑膜中に存在する滑膜幹細胞がインプラント中の軟骨を発達させることを可能にし得ることを見出した。滑膜および他の隣接組織から移動する細胞は軟骨性硫酸化グリコサミノグリカンを産生し得る。バリア組成物中のシーラントおよび接着剤成分は、軟骨下骨の浸透を妨げ、骨浮腫を予防し、軟骨下骨がインプラントとは無関係に完全に治癒することを可能にすることができる。骨浮腫は、変形性関節症へ至る疼痛および変性の源である。本明細書に記載される方法は、骨浮腫のリスクを軽減することおよび線維軟骨よりも硝子軟骨の形成を促進することを含む、マイクロフラクチャーに勝る利点を提供する。
【0028】
マトリックス
関節軟骨中の損傷または欠損の処置における使用のためのマトリックスインプラントを提供する。マトリックスインプラントは、軟骨病巣の底部、例えば軟骨下骨へ適用されるポリマーを含むバリア組成物上に配置されるように構成される。
【0029】
様々な態様において、マトリックスは、二もしくは三次元構造組成物、または二もしくは三次元構造へ変換され得る組成物である。いくつかの態様において、マトリックスは、スポンジ様構造またはハニカム様格子である。
【0030】
いくつかの態様において、マトリックスは支持マトリックスである。いくつかの態様において、支持マトリックスは、I型コラーゲン、II型コラーゲン、IV型コラーゲン、ゼラチン、アガロース、プロテオグリカン、グリコサミノグリカンもしくは糖タンパク質を含有するコラーゲン、芳香族有機酸のポリマー、フィブロネクチン、ラミニン、生物活性ペプチド増殖因子、サイトカイン、エラスチン、フィブリン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸もしくはポリアミノ酸のようなポリ酸から作られたポリマー、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸から作られたポリマー、ポリグリコール酸から作られたポリマー、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(セバシン酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-εカプロラクトン)、ポリ(乳酸-co-ビニルアルコール)、ポリ(乳酸-co-セバシン酸)、ポリ(グリコール酸-co-εカプロラクトン)、ポリ(グリコール酸-co-ビニルアルコール)、ポリ(グリコール酸-co-セバシン酸)、ポリ(ε-カプロラクトン-co-ビニルアルコール)、ポリ(ε-カプロラクトン-co-セバシン酸)、ポリ(ビニルアルコール-co-セバシン酸)、ポリアミノ酸、ヒドキシポリアミド、ポリアミド、吸収性εカプロラクトンポリマー、ポリペプチドゲル、それらの共重合体およびそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数から調製される。ゲル溶液マトリックスはポリマー性熱可逆性ゲル化ヒドロゲルであり得る。支持マトリックスは、以下の特性のうちの1つまたは複数を有し得る:生体適合性、生分解性、親水性、非反応性、中性電荷、および規定の構造。
【0031】
いくつかの態様において、マトリックスは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸を含むポリエステル、またはポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、およびポリ(セバシン酸)を含む共重合体と、多糖をインキュベートするか、またはからませることによって調製される。多糖は酸化されてもよい。
【0032】
いくつかの態様において、マトリックスは、コラーゲン、ヒアルロナン、およびコンドロイチン硫酸のうちの1つまたは複数を含む。
【0033】
いくつかの態様において、バリア組成物は、以下、または以下から形成された重合生成物のうちの1つまたは複数を含む:ゼラチン、I型コラーゲン、過ヨウ素酸酸化ゼラチン、光重合性ポリエチレングリコール-co-ポリ(α-ヒドロキシ酸)ジアクリレートマクロマー、メチル化コラーゲンを加えたN-(アシルオキシ)スクシンイミドおよびチオールで誘導体化された4腕のポリエチレングリコール、アルキル化コラーゲンで架橋された誘導体化ポリエチレングリコール(PEG)、テトラ-N-ヒドロキシスクシンイミジルまたはテトラチオール誘導体化PEG (例えば、Covidien製のSprayGel Adhesion Barrier System、またはBaxter Healthcare製のCoSeal(商標))、およびメチル化コラーゲンを有する架橋PEG。
【0034】
いくつかの態様において、バリア組成物はシーラントを含む。いくつかの態様において、シーラントは、バリア組成物が軟骨下骨へ適用された後にヒドロゲルを形成する。
【0035】
いくつかの態様において、バリア組成物またはシーラントはポリマーを含む。いくつかの態様において、ポリマーは、ゼラチン、ポリエチレングリコール(PEG)、誘導体化PEG、ポリ(シアノアクリレート)、ポリウレタン、ポリ(メチリデンマロネート)、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ヒドロキシポリアミド、誘導体化ポリビニルアルコール、アクリルポリマー、フィブリン、ゼラチン、カテコール側鎖を有するポリスチレン、ポリエステル、ジヒドロキシチロシンを含むポリペプチド、カテコール側鎖を有するポリ(α-アミノカルボン酸)、フラグマトポマ・カリフォルニカによって分泌されるポリマー、ポリエチレングリコールおよびポリラクチドの共重合体、ポリエチレングリコールおよびポリグリコリドの共重合体、ポリエーテル、多糖、酸化多糖、ポリカチオンポリアミン、ポリアニオン、ポリ(エステル尿素)、ポリエチレングリコールおよびポリラクチドまたはポリグリコリドの共重合体、4腕のペンタエリスリトールチオールおよびポリエチレングリコールジアクリレート、4腕のテトラ-N-ヒドロキシスクシンイミジルエステルまたはテトラチオール誘導体化PEG、ゼラチンおよび酸化デンプンから形成されたポリマー、光重合性ポリエチレングリコール-co-ポリ(a-ヒドロキシ酸)ジアクリレートマクロマーから形成されたポリマー、過ヨウ素酸酸化ゼラチン、マレイミジル、スクシンイミジル、フタルイミジルおよび関連活性基で誘導体化された二官能基性ポリエチレングリコールおよび血清アルブミン、ならびにスクシンイミジルエステルおよびチオールで誘導体化された4腕のポリエチレングリコール、ならびにメチル化コラーゲンである。いくつかの態様において、ポリマーはゼラチンまたはフィブリンであり、かつ、バリア組成物はトロンビンまたは架橋剤を含む。
【0036】
いくつかの態様において、マトリックス組成物は、細胞接着および/または増殖を増強する成分を含む。
【0037】
様々な態様において、マトリックスは、不織三次元オープンセルドマトリックスを形成するように構成された複数の繊維から形成された生体適合性ポリマーを含む三次元セルスキャフォールドである。オープンセルドマトリックスは所定の形状を有し得る。オープンセルドマトリックスは所定の細孔容積フラクションを有し得る。オープンセルドマトリックスは所定の細孔形状を有し得る。例えば、マトリックス中の細孔はハニカム格子を形成し得る。オープンセルドマトリックスは所定の細孔径を有し得る。
【0038】
様々な態様において、マトリックスまたは支持マトリックスは、規定の細孔径を有する。異なる細孔径は、例えば、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第8,906,686号に記載されるような、マトリックス中への軟骨細胞のより速いまたはより遅い浸潤、細胞のより速いまたはより遅い成長および増殖、ならびに、最終的に、新軟骨構築物中の細胞のより高いまたはより低い密度を可能にする。マトリックス細孔径は、例えば、ゲル溶液のpH、コラーゲン濃度、および凍結乾燥条件を変えることによって調節され得る。マトリックスの細孔径は、50~500μm、100~300μm、または150~250μmであり得る。
【0039】
様々な態様において、マトリックスは、多孔性であってもなくてもよく、コーク(caulk)として適用することができる。そのようなマトリックスはポリマー性熱可逆性ゲル化ヒドロゲル(TRGH)を含み得る。コークは患者自身の滑液を使用して再構成され得、これは、マトリックスに細胞が播種されることを可能にし得る。スポンジ様材料もまた、埋め込み前に滑液で浸漬され得る。マトリックスは、適用後に硬化させ得る。
【0040】
いくつかの態様において、マトリックスは少なくとも1つの治療剤を含む。治療剤は、例えば、抗感染症剤、鎮痛剤、鎮痛薬、または抗炎症剤、および免疫抑制剤であり得る。
【0041】
バリア組成物
関節軟骨中の損傷または欠損の処置における使用のためのバリア組成物を提供する。バリア組成物を軟骨病巣の底部、例えば軟骨下骨へ適用する。マトリックスインプラントをバリア組成物上に配置する。いくつかの態様において、トップ保護用生分解性ポリマーをマトリックスインプラント上に配置する。
【0042】
本明細書に記載されるような軟骨下骨上へのバリア組成物の配置は、手術中の洗浄後の病巣の完全性の保護を可能にし得、軟骨欠損の部位中への軟骨下細胞および細胞産物の移動を防ぎ得る。理論によって拘束されることを望まないが、そのような移動の防止は、健康な硝子軟骨が形成するための環境を作り、一方でまた、軟骨下骨を介して骨髄からマトリックスへ移動する幹細胞による線維軟骨の形成を防止する。
【0043】
バリア組成物はシーラントを含み得る。シーラントは、特定の範囲の接着および凝集特性を有する、生物学的に許容される典型的に急速にゲル化する製剤である。シーラントは、接着および/または粘着特性を有する生物学的に許容される急速ゲル化性合成化合物であり得る。様々な態様において、シーラントは、ヒドロゲル、例えば、誘導体化ポリエチレングリコール(PEG)であり、これは、コラーゲン化合物、典型的にアルキル化コラーゲンで好ましくは架橋されている。ヒドロゲルは、バリア組成物が軟骨下骨へ適用された後に形成され得る。シーラントの例としては、商標CoSeal(商標)の下でCohesion Technologies, Palo Alto, Calif.から市販されている、テトラ-N-ヒドロキシスクシンイミジルまたはテトラチオール誘導体化PEG、またはその組み合わせ(J. Biomed. Mater. Res Appl. Biomater., 58:545-555 (2001));急速にマトリックスを形成する二部分ポリマー組成物、ここで、化合物のうちの少なくとも1つはポリマー性、例えば、ポリアミノ酸、多糖、ポリアルキレンオキシドまたはポリエチレングリコールであり、2つの部分は共有結合によって連結されている(参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,312,725号);ならびに、メチルコラーゲンを有する架橋PEG、例えば、メチル-コラーゲンを有する架橋ポリエチレングリコールヒドロゲルが挙げられるが、これらに限定されない。シーラントは、組織と、特に軟骨下骨と接触すると急速にゲル化または結合し得る。
【0044】
様々な態様において、バリア組成物はポリマーを含む。バリア組成物中の例示的なポリマーとしては、ゼラチンおよび酸化デンプン、4腕のペンタエリスリトールテトラチオールおよびポリエチレングリコールジアクリレート、光重合性ポリエチレングリコール-co-ポリ(a-ヒドロキシ酸)ジアクリレートマクロマーから形成されたポリマー、過ヨウ素酸酸化ゼラチン、マレイミジル、スクシンイミジル、フタルイミジルおよび関連活性基で誘導体化された二官能基性ポリエチレングリコールおよび血清アルブミン、ならびにスクシンイミジルエステルおよびチオールで誘導体化された4腕のポリエチレングリコール、ならびにメチル化コラーゲンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
いくつかの態様において、バリア組成物は、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール系材料、または架橋ポリエチレングリコールを含む。例示的なポリエチレングリコール(PEG)系材料としては、CT-3、Coseal(登録商標)(Baxter)、Adherus(登録商標)(Hyperbranch Medical Technology)、およびResure(登録商標)(Ocular Therapeutics)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、バリア組成物は、架橋ポリエチレングリコールおよびメチル化コラーゲン、例えば、CT-3を含む。いくつかの態様において、バリア組成物は細胞に無害である。
【0046】
いくつかの態様において、バリア組成物はシアノアクリレートまたはシアノアクリレート系接着剤を含む。シアノアクリレート系接着剤の例としては、Dermabond(登録商標)(Ethicon)、Integuseal(登録商標)(Kimberly Clark)、Surgiseal(登録商標)(Adhezion)、Histoacryl(登録商標)(Aesculap)、Actabond(商標)(Bergen)、およびIndermil(登録商標)(Covidien)が挙げられるが、これらに限定されない。シアノアクリレートは、水または湿気の存在下で軟骨下骨へ結合し得る。シアノアクリレートは様々な鎖長を有し得、これらは結合および生分解性の程度に影響を与え得る。様々な態様において、バリア組成物は迅速に適用され得る。様々な態様において、シアノアクリレートまたはシアノアクリレート系接着剤は、バリア組成物が感染に耐えることを可能にする。
【0047】
いくつかの態様において、バリア組成物はポリウレタンまたはポリウレタン系接着剤を含む。ポリウレタン系接着剤の例としては、TissuGlu(登録商標)(Cohera)が挙げられるが、これに限定されない。いくつかの態様において、ポリウレタンおよびポリウレタン系接着剤は、例えば、ジイソシアン酸イソホロンでヒマシ油を修飾することによって、またはポリカプロラクトンジオールおよびジイソシアン酸ヘキサメチレンを反応させることによって、増強された生分解性を有する。ポリウレタンはポリカプロラクトンジオールに基づき得る。
【0048】
いくつかの態様において、バリア組成物はポリ(メチリデンマロネート)またはポリ(メチリデンマロネート)系接着剤を含む。ポリ(メチリデンマロネート)系接着剤の例としては、Bondease(登録商標)(Optmed)が挙げられるが、これに限定されない。バリア組成物は、軟骨下骨上へペーストされてもよく、またはアプリケータを使用して軟骨下骨へ適用されてもよい。ポリ(メチリデンマロネート)またはポリ(メチリデンマロネート)系接着剤を含むバリア組成物は、接着剤がセットされた後、迅速な乾燥時間を有し得る。
【0049】
いくつかの態様において、バリア組成物は、誘導体化ポリビニルアルコールまたは誘導体化ポリビニルアルコール系材料を含む。誘導体化ポリビニルアルコール系材料の例はAeriseal(登録商標)(Pulmonx)である。誘導体化ポリビニルアルコールは、水を添加することによってなど、ヒドロゲルとして製剤化され得る。そのような誘導体化ポリビニルアルコール系ヒドロゲルは硝子軟骨と同様の特性を有し得、その結果、バリア組成物の適用は痛みの軽減および関節機能の改善に寄与し得る。
【0050】
いくつかの態様において、バリア組成物はアクリルまたはアクリル系材料を含む。
【0051】
いくつかの態様において、バリア組成物はフィブリンまたはフィブリン系シーラントを含む。フィブリン系シーラントの例としては、Tisseel(登録商標)(Baxter)およびEvicel(登録商標)(Ethicon)が挙げられるが、これらに限定されない。バリア組成物は、2つの別個の組成物、例えば、フィブリノーゲン系組成物およびトロンビン系組成物の混合で形成され得、ここで、混合されるとフィブリンが形成される。混合および適用は、2つ以上のチャンバを有するアプリケータまたは注射器の使用によって促進され得る。フィブリン系シーラントは、他のタイプのシーラントと比較して低い毒性を有し得る。フィブリン系シーラントは、他のタイプのシーラントと比べてより生分解性かつ生体適合性であり得る。様々な態様において、フィブリン系シーラントは、ウイルスおよび他の病原体を除去するために滅菌される。様々な態様において、フィブリンまたはフィブリン系シーラントを含むバリア組成物は、露出した軟骨下骨上へペーストされてもよく、またはスプレーされてもよい。
【0052】
いくつかの態様において、バリア組成物は、ゼラチンおよびトロンビン、またはゼラチンおよびトロンビンの混合物を含む。バリア組成物はフィブリンをさらに含み得る。そのようなバリア組成物の例としては、Surgiflo(登録商標)(Ethicon)およびFloseal(登録商標)(Baxter)が挙げられるが、これらに限定されない。バリア組成物は、2つの別個の組成物、例えば、流動性ゼラチンおよびフィブリノーゲンを含む組成物とトロンビンを含む組成物との混合で形成され得る。混合および適用は、2つ以上のチャンバを有するアプリケータまたは注射器の使用によって促進され得る。いくつかの態様において、フィブリン系シーラントの90%が8週間以内に分解する。様々な態様において、フィブリン系シーラントは、ウイルスおよび他の病原体を除去するために滅菌される。様々な態様において、バリア組成物は、露出した軟骨下骨上へペーストされてもよく、またはスプレーされてもよい。
【0053】
いくつかの態様において、バリア組成物は、1つまたは複数の化学架橋剤と共にアルブミンを含む。バリア組成物は、2つの別個の組成物、例えば、アルブミンを含む組成物および化学架橋剤(例えば、グルタルアルデヒド)を含む組成物の混合で形成され得る。混合および適用は、2つ以上のチャンバを有するアプリケータまたは注射器の使用によって促進され得る。そのようなバリア組成物の例としては、Bioglue(登録商標)(Cryolife)、Progel(商標)(Neomend)、およびPreveleak(登録商標)(Mallinckrodt Pharma)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
様々な態様において、バリア組成物は、米国特許第6,312,725号および同第6,624,245号のいずれかに、ならびにWallace, D.G., et al., J. Biomed. Mater. Res., 2001, 58:545-555、Hill, A. et al., J. Biomed. Mater. Res., 2001, 58:308-312、およびWise, P.E. et al., The American Surgeon, 68:553-562 (2002)に記載されるポリマーを含み、これらは全て参照により本明細書に組み入れられる。例えば、CT-3ポリマーは米国特許第6,312,725号に記載されている。
【0055】
いくつかの態様において、バリア組成物は、例えば、米国特許公報第2009/0036611号に記載されるような、カテコール側鎖を有するポリスチレンを含み、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0056】
いくつかの態様において、バリア組成物はポリエステル系シーラント、またはポリエステルを含む。ポリエステル系シーラントの例は、Mahdavi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2008, vol. 105, p. 2307に記載される、ポリ(グリセロールセバセートアクリレート)である。接着を増強するために、ポリ(グリセロール-co-セバセートアクリレート)は、Mahdaviらによって記載されるような、ヤモリの足に見られる接着表面に基づくパターンで成型され得る。
【0057】
いくつかの態様において、バリア組成物は、例えば、米国特許公報第2016/0206300号に記載されるような、サンドキャッスルワームグルーを含む。サンドキャッスルワーム(フラグマトポマ・カリフォルニカ)は、数時間で硬化して接着剤を形成するポリマー性接着液を合成することができる。サンドキャッスルワームグルーはポリフェノール性タンパク質を含み得る。
【0058】
いくつかの態様において、バリア組成物は、米国特許第7,964,207号に記載される、KRYPTONITE(商標)骨基質製品を含み、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0059】
いくつかの態様において、バリア組成物は、ゼラチンおよび酸化デンプンの水溶液を混合することによって形成されるゼラチンおよび酸化デンプンを含むゲルから調製されたポリマーを含む。ゲルは、デンプン分子上のアルデヒド基と組織のタンパク質上のアミノ基との反応を通して組織へ結合することができる。いくつかの態様において、接着結合強度は約100 N/mである。いくつかの態様において、弾性率は約8 x 106 Paである。ゲル化シーラントは、ゼラチンのペプチド結合およびデンプンのグリコシド結合を切断する酵素によって分解される。いくつかの態様において、バリア組成物の90%が14日間で分解する。
【0060】
いくつかの態様において、バリア組成物は、ポリエチレングリコールおよびポリラクチドまたはポリグリコリドの共重合体から作製されたポリマーであって、アクリレート側鎖をさらに含有し、かつ、いくつかの活性化分子の存在下で、光によってゲル化される、ポリマーを含む。
【0061】
いくつかの態様において、バリア組成物は、水溶性ポリマー領域を含むポリマーを含む。例示的なポリマーとしては、ポリエーテル、例えば、ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリエチレンオキシド-co-ポリプロピレンオキシド(「PPO」)、co-ポリエチレンオキシドブロックまたはランダム共重合体、およびポリビニルアルコール(「PVA」)、ポリ(ビニルピロリジノン)(「PVP」)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(サッカライド)、例えば、デキストラン、キトサン、アルギネート、カルボキシメチルセルロース、酸化セルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよび/またはヒドロキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ならびにタンパク質、例えば、アルブミン、コラーゲン、カゼイン、およびゼラチンが挙げられる。マクロマーの水溶性領域(例えば、PEG)は、約3,500ダルトン~約40,000ダルトン(例えば、約3,500ダルトン~約35,000ダルトン、または約3,500ダルトン~約30,000ダルトン、または約3,500ダルトン~約25,000ダルトン)の平均分子量を有し得る。いくつかの態様において、PEGは、約3,500ダルトン~約20,000ダルトン(例えば、約3,500~約15,000ダルトン、または約3,500ダルトン~約10,000ダルトン、または約3,500ダルトン~約5,000ダルトン)の平均分子量を有する。例えば、PEGは、約35,000ダルトンまたは約25,000ダルトンの平均分子量を有し得る。いくつかの態様において、PEGは、約3,500ダルトン~約40,000ダルトンの平均分子量を有し得る。例えば、PEGは約25,000ダルトンの平均分子量を有し得る。他の態様において、PEGは約35,000ダルトンの平均分子量を有し得る。
【0062】
いくつかの態様において、バリア組成物は、PEG系材料、例えば、Duraseal(商標)(Covidien)、Coseal(登録商標)(Cohesion Technologies)、およびAdvaSeal(商標)(Ethicon)を含む。PEGを含むバリア組成物およびPEG系材料を含むバリア組成物は、高い接着強度、軟骨下骨との生体適合性、および可撓性を有し得る。
【0063】
バリア組成物はポリカチオンポリアミンおよび少なくとも1つのポリアニオンを含み得、ここで、少なくとも1つの生分解性ポリカチオンポリアミンは、米国特許第8,283,384号に記載されるような、修飾ゼラチンを含み、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。いくつかの態様において、ゼラチンはエチレンジアミンで修飾されている。いくつかの態様において、ポリアニオンはポリリン酸化合物である。
【0064】
バリア組成物は、国際特許公報第WO2017/189534号(これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)に記載されるような、リン酸基を含む1つまたは複数の側鎖を有するPEUポリマー骨格を含むポリ(エステル尿素)(PEU)系接着剤および二価金属塩を含む架橋剤を含み得る。いくつかの態様において、二価金属塩は、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、またはカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムおよび亜鉛の任意の組み合わせの塩を含む。
【0065】
様々な態様において、バリア組成物はコンドロイチン硫酸を含む。コンドロイチン硫酸は、メタクリレート基およびアルデヒド基のような、官能基を含むように修飾され得る。コンドロイチン硫酸は、例えば、光開始剤でのUV架橋によって、ヒドロゲルを形成するために架橋され得る。
【0066】
様々な態様において、バリア組成物は、複数の異なるポリマー、シーラントおよび/または接着剤を含む。バリア組成物中に存在する各ポリマー、シーラント、または接着剤の特性は、存在する他のポリマー、シーラントまたは接着剤の利点および欠点を補い得る。例えば、バリア組成物は2つのポリマーで製剤化され得、一方のポリマーは、他方のポリマーと比較した場合、より速い分解および生体再吸収速度、しかしより低い接着強度を有する。そのようなバリア組成物は、許容される分解、生体再吸収および接着強度を有し得る。
【0067】
様々な態様において、バリア組成物はヒドロゲルの形態であり得る。ヒドロゲルは、十分な厚さのものであり得、その結果、バリア組成物は、軟骨下腔からの細胞、血液、破片、および流体の移動を有効に遮断する。例示的なヒドロゲルおよびその成分は、米国特許第7,009,034号に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。ヒドロゲルは、PEGをキトサンで架橋することによって形成され得る。別の例示的なヒドロゲルは、デンドロンのチオール残基およびPEGマクロマー間にチオエステル結合を形成することによって合成され得る。
【0068】
いくつかの態様において、バリア組成物は酸化多糖、例えば、デキストランおよび/またはキトサンを含む。デキストランは、いくつかの分岐構造を有する複合多糖であり、キトサンと異なり、反応性アミノ基を有さない。酸化デキストランは、キトサン塩酸塩と反応し、組織へ接着することができるゲルを形成する。酸化多糖は、様々な材料で架橋され得るか、または一緒に混合され得る。例示的な酸化デキストラン由来シーラントは:Balakrishnan, et al., Acta Biomater. 2017, vol 53, p. 343; Lisman, et al., J. Biomater. Appl. 2014, vol. 28, p 1386; Araki, et al., J. Torac. Cardiovasc Surg. 2007, v. 134, p. 1241に記載されている。例示的なキトサン由来シーラントは、Hoque, et al. Mol. Pharm. 2017, vol. 14, p. 1218; Nie, et al. Carbohydr. Polym. 2013, vol 96, p. 342; Medina, et al., Otolaryngol. Head Neck Surg. 2012, vol. 147, p. 357に記載されている。コンドロイチン硫酸由来シーラントの例は、Elisseeff et al., Mil. Med. 2014, vol. 179, p. 686に記載されている。
【0069】
様々な態様において、バリア組成物は、粘度を調節する成分を含む。そのような成分としては、例えば、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(「ジグリム」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、デキストラン、硫酸デキストラン、ポリビニルピロリドン(PVP)、それらの組み合わせなどが挙げられ得る。本開示の組成物の粘度を調節するために使用され得る増粘剤としては、ポリシアノアクリレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸-グリコール酸共重合体、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ペクチン、それらの組み合わせなどが挙げられる。
【0070】
様々な態様において、バリア組成物は安定剤を含む。好適な安定剤としては早期重合を防ぐもの、例えば、キノン、ヒドロキノン、ヒンダードフェノール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール、ベンゾキノン、2-ヒドロキシベンゾキノン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、t-ブチルヒドロキノン、それらの組み合わせなどが挙げられ得る。好適な安定剤としてはまた、無水物、シリルエステル、スルトン(例えば、α-クロロ-α-ヒドロキシ-o-トルエンスルホン酸-γ-スルトン)、二酸化硫黄、硫酸、スルホン酸、亜硫酸、ラクトン、三フッ化ホウ素、有機酸、硫酸アルキル、亜硫酸アルキル、3-スルホレン、アルキルスルホン、アルキルスルホキシド、メルカプタン、硫化アルキル、それらの組み合わせなどが挙げられ得る。いくつかの態様において、無水物、例えば、無水マレイン酸、セバシン酸無水物、および/またはアゼライン酸無水物が安定剤として使用され得る。他の態様において、抗酸化剤、例えば、ビタミンE、ビタミンK1、桂皮酸、および/またはフラバノンが安定剤として使用され得る。
【0071】
様々な態様において、安定剤は、バリア組成物の約0.01~約10重量パーセントの量で存在する。いくつかの態様において、安定剤は、バリア組成物の約0.1~約2重量パーセントの量で存在する。
【0072】
いくつかの態様において、その分解速度を増加させるためにバリア組成物へ酵素が添加され得る。好適な酵素としては、例えば、ペプチドヒドロラーゼ、例えば、エラスターゼ、カテプシンG、カテプシンE、カテプシンB、カテプシンH、カテプシンL、トリプシン、ペプシン、キモトリプシン、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(γ-GTP)など;糖鎖ヒドロラーゼ、例えば、ホスホリラーゼ、ノイラミニダーゼ、デキストラナーゼ、アミラーゼ、リゾチーム、オリゴサッカラーゼなど;オリゴヌクレオチドヒドロラーゼ、例えば、アルカリホスファターゼ、エンドリボヌクレアーゼ、エンドデオキシリボヌクレアーゼなどが挙げられる。いくつかの態様において、酵素が添加される場合、酵素は、その放出速度を制御するためにリポソームまたはマイクロスフェア中に含まれ得、それによってバリア組成物の分解速度を制御する。
【0073】
様々な態様において、バリア組成物は1型コラーゲンをさらに含む。理論によって拘束されることを望まないが、1型コラーゲンは、バリア組成物の表面上の細胞移動を可能にし得、軟骨下骨からの血液の凝固を刺激し得る。
【0074】
様々な態様において、バリア組成物は水和形態である。
【0075】
いくつかの態様において、バリア組成物は、マトリックスインプラントが埋め込み後コラーゲン病巣または欠損中に確実に留まることを可能にすることができる。マトリックスインプラントを縫合する必要性がない場合がある。
【0076】
マトリックス系は無細胞マトリックスであり得る。無細胞マトリックスは、核成分および細胞成分が構造細胞外マトリックスから除去されるように脱細胞化された組織であり得る。無細胞マトリックスは、器官または器官の分離された部分を含む、組織から調製され得る。例示的な組織としては、心臓弁、小腸粘膜下組織、真皮、羊膜、膀胱、網、心膜、靭帯、血管などが挙げられる。一態様において、組織としては網および真皮が挙げられるが、これらに限定されない。別の態様において、組織は真皮である。組織は、ヒト、ヤギ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマなどを含むが、これらに限定されない、様々な哺乳動物源から得てもよい。組織は、組織保存、脱細胞、洗浄、汚染除去および貯蔵のような工程を含む、従来技術によって脱細胞化され得る。
【0077】
無細胞マトリックス層は、典型的に約50ミクロン~約200ミクロンの厚さを有する薄いシート中へ無細胞マトリックスを分けることによって得ることができる。
【0078】
マトリックスは少なくとも1つの増殖因子をさらに含み得、これは、上皮細胞増殖因子(EGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、トランスホーミング増殖因子β(TGF-β)、骨形態形成タンパク質(BMP)、増殖分化因子、抗背側化形態形成タンパク質1(ADMP-1)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF) ヘッジホッグタンパク質、インスリン様増殖因子、血小板由来増殖因子(PDGF)、インターロイキン(IL)、コロニー刺激因子(CSF)、および/またはアクチビンであり得る。加えて、これらの態様のマトリックスはコラーゲンをさらに含むことができる。
【0079】
いくつかの態様において、マトリックスは軟骨下骨へ固定され得る。固定具の例としては、ステープル、ダーツ、ピン、ネジ、縫合糸、グルーまたは鋲が挙げられるが、これらに限定されない。他の局面において、プロテーゼはプロテーゼプレートであり得る。
【0080】
いくつかの態様において、マトリックスは少なくとも1つの治療剤をさらに含む。様々な態様において、治療剤は、非限定的に、抗感染症剤、鎮痛剤、鎮痛薬、または抗炎症剤、および免疫抑制剤であり得る。
【0081】
いくつかの態様において、抗感染症剤は、抗生物質、例えば、ゲンタマイシン、ジベカシン、カネンドマイシン、リビドマイシン、トブラマイシン、アミカシン、フラジオマイシン、シソマイシン、テトラサイクリン、塩酸塩、オキシテトラサイクリン、塩酸塩、ロリテトラサイクリン、ドキシサイクリン塩酸塩、アンピシリン、ピペラシリン、チカルシリン、セファロチン、セファロリジン、セフォチアム、セフスロジン、セフィネノキシム(cefinenoxime)、セフィネタゾール(cefinetazole)、セファゾリン、セフォタキシム、セフォペラゾン、セフチゾキシム、モキソラクタム(moxolactam)、ラタモキセフ、チエナマイシン、スルファゼシン、アズトレオナムまたはその組み合わせである。
【0082】
いくつかの態様において、鎮痛剤または鎮痛薬は、モルヒネ、非ステロイド性抗炎症(NSAID)薬、オキシコドン、モルヒネ、フェンタニル、ヒドロコドン、ナプロキシフェン(naproxyphene)、コデイン、アセトアミノフェン、ベンゾカイン、リドカイン、プロカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、メピバカイン、クロロプロカイン、テトラカイン、コカイン、エチドカイン、プリロカイン、プロカイン、クロニジン、キシラジン、メデトミジン、デクスメデトミジン、またはVR1アンタゴニストである。
【0083】
いくつかの態様において、バリア組成物は、20~400 gf/cm2の範囲内の接着強度を有する。いくつかの態様において、バリア組成物は、20~100 gf/cm2、40~120 gf/cm2、60~150 gf/cm2、80~200 gf/cm2、100~300 gf/cm2、200~400 gf/cm2、20~40 gf/cm2、30~50 gf/cm2、40~60 gf/cm2、50~70 gf/cm2、60~80 gf/cm2、70~90 gf/cm2、80~100 gf/cm2、90~110 gf/cm2、100~120 gf/cm2、110~130 gf/cm2、120~150 gf/cm2、140~170 gf/cm2、160~200 gf/cm2、180~220 gf/cm2、200~240 gf/cm2、220~260 gf/cm2、240~280 gf/cm2、260~300 gf/cm2、280~320 gf/cm2、300~350 gf/cm2、320~370 gf/cm2、または350~400 gf/cm2の範囲内の接着強度を有する。
【0084】
様々な態様において、バリア組成物およびマトリックスの一方または両方を、軟骨欠損の部位中へ注入するかまたは埋め込むことができる。様々な構成において、組織増殖の必要がある部位は、非限定的に、真皮、回旋筋腱板腱、アキレス腱、靱帯、例えば、前十字靱帯(ACL)、後十字靱帯(PCL)、内側側副靱帯、外側側副靱帯もしくは歯周靱帯(periodontal figment)、括約筋、例えば、肛門括約筋、尿道括約筋、食道括約筋または洞括約筋、脱出組織、例えば、腹部ヘルニア、クーパーヘルニア、横隔膜ヘルニア、上腹壁ヘルニア、大腿ヘルニア、切開創ヘルニア、鼡径ヘルニア、椎間板ヘルニア、リトレヘルニア、閉鎖孔ヘルニア、パンタロンヘルニア、会陰ヘルニア、腹膜前ヘルニア、リヒターヘルニア、坐骨ヘルニア、滑脱ヘルニア、スピゲリウスヘルニアもしくは臍ヘルニア、椎間板核、椎間板輪、骨膜組織、神経組織、例えば、中枢神経系組織(脊髄組織を含む)および脱髄神経組織、神経トンネル、例えば骨組織を横断する神経トンネル、僧帽弁、三尖弁、大動脈弁、肺動脈弁、ステントを含む血管組織、狭窄心臓血管組織、肋軟骨、半月板軟骨、喉頭蓋軟骨、喉頭軟骨、例えば、披裂軟骨、輪状軟骨、楔状軟骨および小角軟骨、外耳軟骨、または耳管軟骨を含み得る。
【実施例】
【0085】
本発明を以下の実施例によってさらに説明および実証する。しかし、本明細書中のいかなる箇所におけるこれらのおよび他の実施例の使用も、一例に過ぎず、本発明のまたはいかなる例示された用語の範囲および意味も決して限定しない。同様に、本発明は、本明細書に記載されるいかなる特定の好ましい態様にも限定されない。実際に、本発明の多くの改変物および変形物が、本明細書を読めば当業者に明らかであり得、そのような変形物は、精神または範囲において本発明から逸脱することなく作製することができる。本発明は、従って、添付の特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の全範囲と共に添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。
【0086】
実施例1
ブタを、少なくとも1つの対照群が存在する少なくとも2つの群に分割する。各試験群にはバリア組成物が適用され、対照群にはバリア組成物が適用されない。全ての群において、膝関節の大腿骨内側顆の体重負荷領域中に軟骨欠損を作る。
【0087】
各試験群において、バリア組成物を軟骨下骨上へ適用する。様々なバリア組成物を試験するために、複数の試験群を作ることができる。全ての群において、いずれかのバリア組成物を適用した後、同じマトリックスを適用する。マトリックスおよびマトリックス上の任意のトップポリマーバリアの適用に関する条件は、全ての試験群および対照群間で同一であるべきである。
【0088】
1ヶ月で、および追加の期間で、バリア組成物が軟骨病巣中への軟骨下成分、例えば細胞および流体の移動を妨げるかどうかを決定するために試験を行う。そのような試験は、組織学的分析および線維軟骨形成の程度のアッセイを含み得る。
【0089】
炎症の評価、組織学的グレーディング、ならびに手術後の動物の可動性の改善の割合および程度の測定のような、追加の試験を行ってもよい。
【0090】
軟骨下成分の移動の最適な防止、最小の炎症、および線維軟骨に対する硝子軟骨の最も高い相対的形成を提供するバリア組成物を、次いで、ヒト患者および動物患者への臨床における適用についてさらに試験する。
【0091】
実施例2
ブタにおける試験のために以下のようにスキャフォールドを調製した。ハニカム型多孔性コラーゲンスポンジ(直径5 mmおよび厚さ1 mm、Koken, Tokyo, Japan)を、25μlの冷0.3%中和コラーゲン溶液(Vitrogen, Cohesion Tech, Palo Alto, CA)中に浸漬し、次いで37℃で1時間インキュベートした。中和コラーゲン溶液は固化し、スポンジ内のコラーゲンゲルから構成された無細胞スキャフォールドを形成した。
【0092】
ブタ関節軟骨からバイオプシーを採取し、バイオプシーを刻み、次いで、37℃で18時間ローテーター上において、100μg/mlペニシリンおよび100単位/mlストレプトマイシン(P/S, Invitrogen)を有するHam’s F-12 (F-12, Invitrogen)中に溶解された1.5 mg/mlコラゲナーゼ(CLS 1, Worthington, Freehold, NJ)中においてそれを消化することによって、接着剤および縫合糸と共に埋め込まれる操作細胞構築物を調製した。未消化組織を、セルストレーナー(70μmメッシュ, BD Biosciences, Franklin Lakes, NJ)を使用して除去した。単離されたブタ関節軟骨細胞(pAC)を、1000 rpmで10分間の遠心分離によってPBSで2回リンスした。生存細胞および死細胞を、血球計およびトリパンブルー色素排除法を使用してカウントした。各バイオプシーでの細胞生存率は95%超であった。
【0093】
pACを単層培養皿(直径100 mm)へ播種し、37℃、空気中5% CO2で5日間、10%ウシ胎仔血清(FBS, Invitrogen)およびP/Sが補われたDMEM/F-12中においてインキュベートした。コラーゲンゲル/スポンジスキャフォールド中へpACを播種する前に、pACを0.05%トリプシン-EDTA (Invitrogen)で培養皿から採取した。ウシ皮膚由来の0.3%ペプシン消化酸可溶性コラーゲンの溶液(Cohesion, Palo Alto, CA)を、1/10体積の10x PBSおよび0.1N NaOHで中和した。25μlのこの中和コラーゲン溶液中に懸濁された300,000個のpACを、テフロン製皿(Saint-Gobain Performance Plastics, Courbevoie, France)上へ置き、高い流体表面張力に起因して所望の領域内に細胞懸濁液を維持した。ハニカム型細孔から構成された丸いコラーゲンスポンジ(直径5 mmおよび厚さ1.5 mm、Koken, Tokyo, Japan)を細胞懸濁液上へ置き、溶液を吸収させた。これらの細胞構築物を37℃で1時間インキュベートし、コラーゲン溶液をゲルへ固化させた。培地を次いで皿へ添加した。
【0094】
培地中において12時間インキュベーション後、細胞構築物を、バイオリアクターへ接続された耐圧培養チャンバ(TEP-1, PURPOSE, Shizuoka, Japan)へ移し、7日間、37℃、空気中5% CO2で、0~0.5 MPa、0.5Hzでの周期的な静水圧(HP)および0.05 ml/分での培地補充を用いてインキュベートした。次いで、細胞構築物を従来の12-ウェル培養プレート(各ウェルは2 mlの培地中に1つの細胞構築物を含有する)へ次いで移し、大気圧、37℃、および空気中5% CO2でさらに14日間インキュベートした。培養培地を週2回交換した。サロゲートを含む細胞構築物を、埋め込みのために第21日に採取した。サロゲート構築物の細胞生存率および細胞型を組織学的に評価した。
【0095】
実施例3
5つの異なる操作細胞構築物をブタ中へ埋め込み、それらの特性を比較した。5つの構築物は、a)エンプティー欠損対照(「エンプティー」)、b)接着剤および縫合糸と共に埋め込まれた無細胞スキャフォールド対照(「スキャフォールド」)、c)接着剤および縫合糸と共に埋め込まれた操作細胞構築物(「細胞-構築物」)、d)接着剤単独と共に埋め込まれた操作細胞構築物(「接着剤-細胞-構築物」)、およびe)軟骨下骨上へ縫合糸単独と共に埋め込まれた操作細胞構築物(「縫合-細胞-構築物」)であった。
【0096】
2回の手術をブタにおいて行った。動物研究についてのプロトコルは、Charles River Laboratories (Worcester, MA)の動物実験委員会によって承認された。体重30~45 kgの去勢された12~15月齢の雄性ブタ16匹(Micro-Yucatan, Charles River Laboratories)を、最初の手術前に1週間超、馴化させた。0.04 mg/kg硫酸アトロピン(Patterson, Devens, MA)、0.55 mg/kg酒石酸ブトルファノール(Patterson)、1.5 mg/kgキシラジン(VEDCO, St. Joseph, MO)、および20 mg/kgケタミン塩化水素(VEDCO)の筋肉注射で動物麻酔を導入し、イソフルラン(Patterson)を使用する吸入麻酔で維持した。右膝関節を前外側に開き、膝蓋骨を内側に脱臼させて滑車および内側顆を露出させた。
【0097】
1回目の手術中、右膝の非体重負荷部位由来の軟骨片を収集して細胞構築物を生成し、2つの全層軟骨欠損を体重負荷部位に作った。欠損の一部は空のままにしておき(エンプティーとして使用するため)、他の部分には無細胞スキャフォールドを埋め込んだ(スキャフォールドとして使用するため)。同じ動物からの軟骨の収集の4週間後、2回目の手術中、操作細胞構築物を左膝の体重負荷部位に外科的に作られた欠損中へ埋め込んだ。
【0098】
ブタにおいて、8つの膝が、各々において作られた2つのエンプティーを有し、8つの膝が、各々において埋め込まれた2つのスキャフォールドを有し、8つの膝が、各々において埋め込まれた2つの細胞-構築物を有し、4つの膝が、各々において埋め込まれた2つの接着剤-細胞-構築物を有し、4つの膝が、各々において埋め込まれた2つの縫合-細胞-構築物を有した。エンプティー、スキャフォールド、および細胞-構築物埋め込みについての各手術後2週間で、関節腔、欠損、およびインプラントを評価するために関節鏡検査法を行った。操作細胞構築物の埋め込みから6ヶ月後(またはエンプティー欠損作製および無細胞スキャフォールド埋め込みのためのバイオプシー後7ヶ月で)、処置部位の組織学的評価のために動物を安楽死させた。
【0099】
外科処置中、少量の軟骨組織片(バイオプシー)を滑車頭部から採取した。およそ40 mgのバイオプシーを得、P/Sを含むCa2+およびMg2+フリーのダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS; Invitrogen, Carlsbad, CA)中に維持した。
【0100】
軟骨下骨への損傷を回避するために注意を払いながら、皮膚パンチ(5 mm)、ビーバーブレードおよびキュレットを使用して、内側および遠位大腿顆の体重負荷部位に、直径5 mmであった2つの全層欠損を作った。4匹の動物をエンプティー対照として指定し、4匹の動物を無細胞スキャフォールド対照群として指定した。
【0101】
細胞構築物を埋め込むために、左膝関節を前外側に開き、膝蓋骨を内側に脱臼させて大腿骨内側顆を露出させた。エンプティー欠損および無細胞スキャフォールド対照について使用した同じ方法を適用して、2つの軟骨欠損(直径5 mm)を顆上に作った。細胞構築物を欠損中に置き、各構築物を4つの吸収性および2つの非吸収性着色縫合糸で縫合し、構築物を接着剤(CT-3)で覆った。膝蓋骨を整復し、傷を吸収性縫合糸(0 PDS-II)で層状に閉じた。次いで動物に自由にケージ活動をさせた。
【0102】
接着剤-細胞-構築物埋め込みのために、細胞構築物を、接着剤でコートされた欠損中に置き、細胞構築物を接着剤単独で覆った。各構築物を関節鏡による確認のために2つの非吸収性着色縫合糸で縫合した。縫合-細胞-構築物を接着剤無しで欠損中に置き、各構築物を4つの吸収性および2つの非吸収性着色縫合糸で縫合した。
【0103】
無細胞スキャフォールド対照群中の動物の膝の右側において、2つの無細胞スキャフォールドを埋め込んだ。簡潔に述べると、無細胞スキャフォールドをポリエチレングリコール(PEG)/コラーゲン系組織接着剤(CT-3, Angiotech, Vancouver, Canada)と共に欠損中へ埋め込み、関節鏡による評価中のマーカーとして使用するために4つの吸収性(8-0 Vicryl, Ethicon, Somerville, NY)および2つの非吸収性青色縫合糸(8-0 Proline, Ethicon)を使用する6つのステッチで各スキャフォールドを縫合した。縫合後、インプラントの表面をCT-3接着剤で覆った。膝蓋骨を整復した後、傷を吸収性縫合糸(0 PDS-II, ポリジオキサノン, Ethicon)で層状に閉じた。
【0104】
動物をケージ中に個々に収容し、自由にケージ活動をさせた。滑りおよび手術後の膝関節へのさらなる外傷を防ぐために、各ケージ中の床を厚いゴムシートで覆った。
【0105】
エンプティー欠損対照の作製、スキャフォールドの埋め込み、細胞-構築物の埋め込み、接着剤-細胞-構築物の埋め込み、および縫合糸-細胞-構築物の埋め込みを伴う各開膝手術から2週間後に、構築物が欠損内に確実に留まっていることを確認するために、軟骨表面を関節鏡で評価した。インプラントが部位に残っていなかった場合、組織学サンプルを評価から除外した。また、観察された欠損は乳白色であり、隣接軟骨の表面と外観が同一であった。実際、色標識縫合糸無しで操作構築物または埋め込まれた無細胞構築物は見つからず、これは、接着剤および構築物が隣接組織からの細胞移動を阻止しなかったことを示唆している。
【0106】
操作細胞構築物埋め込み後6ヶ月(バイオプシーおよび無細胞スキャフォールド埋め込み後7ヶ月)での細胞-構築物、接着剤-細胞-構築物、および縫合糸-細胞-構築物群に対して巨視的および組織学的評価を行うことによって、外科用接着剤の有効性を分析した。使用した動物を検死前に安楽死させた。
【0107】
関節表面を評価し、ここで、エンプティー欠損対照、埋め込まれた無細胞スキャフォールド、および埋め込まれた操作細胞構築物の位置を、全体的解剖学的所見に基づいて特定した:周囲のホスト軟骨と比較した場合の、欠損中の充填組織の視覚的特徴、充填率、色、およびホスト組織との表面一体化。巨視的画像をデジタルカメラ(Coolpix E-995, Nikon USA, NY)で記録した。修復された軟骨を、次いで、軟骨下骨および隣接軟骨と共に採取し、4%パラホルムアルデヒド(JT Baker, Phillipsburg, NJ)中に固定し、そして4℃で穏やかなローテーター上において7日間PBS (pH 7.4)中に溶解させた。固定組織を、次いで、1~2週間、5%ギ酸およびクエン酸ナトリウム溶液(Sigma-Aldrich)中において脱灰し、パラフィン中に包埋した。4μm厚縦断連続切片を切り出し、次いでヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)またはサフラニンOファストグリーンのいずれかで染色した。
【0108】
加えて、II型コラーゲン抗体を使用する免疫染色を行った。免疫組織化学的分析のために、切片をキシレン中において脱パラフィンし、段階的エタノールおよびPBSで再水和した。エピトープを効率的に露出させるために、切片を37℃で1時間700 U/mlウシ精巣ヒアルロニダーゼ(Sigma)および2 U/mlプロナーゼXIV (Sigma)中においてインキュベートした。切片を、次いで、II型コラーゲンに対するポリクローナル抗体(Southern Biotech, Birmingham, AL)中においてインキュベートした。
【0109】
組織学データを
図1に示す。「細胞構築物 接着剤+縫合糸」および「細胞構築物 接着剤単独」群は手術中に接着剤バリア(CT-3シーラント)を有し、一方、「細胞構築物 縫合糸単独」群は手術中にシーラントが適用されなかった。「細胞構築物 接着剤+縫合糸」および「細胞構築物 接着剤単独」群において、インプラントからの軟骨下骨の明確な線引きがあり、健康な骨組織がインプラントの下に出現した。「細胞構築物 縫合糸単独」群において、他の群と比較した場合、骨中への縫合細胞インプラントの有意により大きな浸透があった。
【0110】
Sellers et al., J. Bone Joint Surg. Am., 1997, 79(10):1452-63によって開発された組織学的グレーディングスケールの改変版を使用して、組織学的所見を次いで採点した。3人の研究者が以下の基準を使用して縦断切片を盲検的に評価した:1)欠損の充填、2)ホスト隣接軟骨との一体化、3)サフラニンOファストグリーンでのマトリックス染色(異染性)、4)軟骨細胞形態、5)欠損全体内の構造、6)表面構造、および7)浸透。細胞-構築物群は接着剤および縫合糸を有し、縫合-細胞-構築物群は縫合糸のみを有し、接着剤-細胞構築物群は接着剤のみを有した。スコアを下記表1に示す。
【0111】
【表1】
データは平均値±SDとして示される。
a、示される群間でp < 0.05;b、示される群間でp < 0.05。
【0112】
表1中の隣接軟骨との一体化に関して、再生組織と隣接軟骨との間の連続性の欠如またはギャップの数をカウントし、分類した。再生組織は、エンプティー内のギャップと比べて有意により少ない数のギャップを伴って細胞-構築物と一体化した(P<0.05)。接着剤-構築物および縫合-構築物の一体化は、ギャップの数が細胞-構築物と類似していた(表1)。
【0113】
サフラニンOファストグリーン染色は、関節軟骨の主成分である硫酸化軟骨基質の質を示した。スキャフォールド内および細胞-構築物内の再生組織は、隣接軟骨と比較して量が僅かに低下した。接着剤-細胞-構築物および縫合-細胞-構築物のマトリックス染色は、それらの硫酸化軟骨基質の質が細胞-構築物の質と類似していたことを明らかにした(表1)。
【0114】
再生組織内の軟骨細胞形態は、健康な非核濃縮核、軟骨細胞形状および細胞外マトリックスの質を示すことから、この特徴を分析した。接着剤-細胞-構築物および縫合-細胞-構築物の軟骨細胞は、形態が細胞-構築物と類似していた(表1)。
【0115】
表1中の「欠損全体内の構造」分類は、間隙または裂け目として現れる緩いテクスチャーを時には有する、再生組織の密度の評価である。接着剤-細胞-構築物および縫合-細胞-構築物は、再生組織の密度が細胞-構築物と類似していた。
【0116】
表1において、「欠損での表面構造」分類は、体重負荷および関節荷重ストレスに耐える再生組織の表面の能力を表す。細胞構築物内の再生組織の表面の大部分は、多層組織で一貫して覆われており、隣接軟骨の表面移行帯へ延びていた。接着剤-細胞-構築物および縫合-細胞-構築物の表面構造は、グレードが細胞-構築物と類似していた(表1)。
【0117】
表1中の「浸透」分類は、軟骨下骨中の浮腫形成を表し、欠損の完全な回復を決定するために重要である。軟骨下骨への縫合-細胞-構築物の浸透は、細胞-構築物および接着剤-細胞-構築物の浸透よりも有意により大きかった(P < 0.05, 表1)。
【0118】
接着剤-細胞-構築物および縫合-細胞-構築物中のII型コラーゲンは、強度が細胞-構築物と類似していた。
【0119】
実施例4
軟骨欠損、軟骨に対する損傷、または膝中の軟骨病巣を有するヒト患者は手術を受ける。軟骨病巣が既に存在しない場合、そのような病巣は、軟骨欠損または軟骨に対する損傷の部位から軟骨を除去することによって作られ得る。
【0120】
ポリエチレングリコールを含むバリア組成物の第1層を病巣中へ導入し、軟骨下骨になど、病巣の底部に配置する。バリア組成物が3~15分以内に流動性液体またはペーストから耐荷重性ゲルへと急速にゲル化するように、バリア組成物は製剤化されている。腔中への、血液感染性因子、細胞および細胞破片のような、外来成分の軟骨下細胞の侵入を防ぎそして移動を遮断するために有効となるように、バリア組成物を硬化または固化させる。
【0121】
軟骨病巣の寸法に合うように支持マトリックスを切断する。次いで、支持マトリックスを軟骨病巣中へ埋め込む。縫合は行わない。少なくとも1つの層のシーラントを、埋め込まれた支持マトリックス上に加える。次いで、傷を縫合する。
【0122】
痛みおよび可動性の改善について評価するために、患者を最初は2週間毎に検査する。
* * *
【0123】
本発明は、本明細書に記載される特定の態様によって範囲が限定されるものではない。実際に、本明細書に記載されるものに加えて本発明の様々な改変物が、前述の説明および添付の図から当業者に明らかとなるだろう。そのような改変物は添付の特許請求の範囲の範囲内に入るように意図される。全ての値は近似であり、説明のために提供されることが、さらに理解される。
【0124】
特許、特許出願、刊行物、製品説明、およびプロトコルが、本出願の全体にわたって引用され、これらの開示は、全ての目的について参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。