IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通テン株式会社の特許一覧

特許7584311冗長電源システムおよび冗長電源制御方法
<>
  • 特許-冗長電源システムおよび冗長電源制御方法 図1
  • 特許-冗長電源システムおよび冗長電源制御方法 図2
  • 特許-冗長電源システムおよび冗長電源制御方法 図3
  • 特許-冗長電源システムおよび冗長電源制御方法 図4
  • 特許-冗長電源システムおよび冗長電源制御方法 図5
  • 特許-冗長電源システムおよび冗長電源制御方法 図6
  • 特許-冗長電源システムおよび冗長電源制御方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】冗長電源システムおよび冗長電源制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241108BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20241108BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20241108BHJP
   G01R 31/52 20200101ALI20241108BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
B60R16/03 A
B60R16/02 650P
G01R31/52
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021007198
(22)【出願日】2021-01-20
(65)【公開番号】P2022111637
(43)【公開日】2022-08-01
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
(72)【発明者】
【氏名】松本 寛
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-162370(JP,A)
【文献】特開2018-140670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
B60R 16/03
B60R 16/02
G01R 31/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次電源から1次負荷へ電力を供給する1次系統と、2次電源から2次負荷へ電力を供給する2次系統との間に設けられる系統間スイッチと、
前記系統間スイッチと並列に設けられる暗電流供給スイッチと、
前記2次電源を前記2次系統に接続切断する2次側スイッチと、
イグニッションがオフ状態のときに、前記系統間スイッチをオフし、前記暗電流供給スイッチをオンし、前記イグニッションがオン状態のときに、前記系統間スイッチをオンし、前記暗電流供給スイッチをオフする制御部と、
前記イグニッションがオフからオンにされた場合に、前記系統間スイッチ、前記暗電流供給スイッチ、および前記2次側スイッチのうち少なくとも1つをオン状態に維持した状態で、前記系統間スイッチ、前記暗電流供給スイッチ、および前記2次側スイッチが固着しているか否かのチェックを行う確認部と
を備えることを特徴とする冗長電源システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記イグニッションがオフからオンにされた場合に、前記暗電流供給スイッチをオンし、
前記確認部は、
前記暗電流供給スイッチがオン状態に維持された状態で、前記2次側スイッチの前記チェックを行う
ことを特徴とする請求項1に記載の冗長電源システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記2次側スイッチがオフ固着およびオン固着していなければ、前記2次側スイッチをオンし、
前記確認部は、
前記2次側スイッチがオン状態に維持された状態で、前記暗電流供給スイッチの前記チェックを行う
ことを特徴とする請求項2に記載の冗長電源システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記暗電流供給スイッチがオフ固着およびオン固着していなければ、前記暗電流供給スイッチをオフし、
前記確認部は、
前記2次側スイッチがオン状態に維持された状態で、前記系統間スイッチの前記チェックを行う
ことを特徴とする請求項3に記載の冗長電源システム。
【請求項5】
前記確認部は、
前記系統間スイッチがオフ固着およびオン固着していなければ、前記1次系統および前記2次系統の電位差を検出し、
前記制御部は、
前記電位差が閾値未満である場合、前記系統間スイッチをオンし、前記電位差が前記閾値以上である場合、前記電位差を前記閾値未満となるように調整してから、前記系統間スイッチをオンする
ことを特徴とする請求項4に記載の冗長電源システム。
【請求項6】
前記系統間スイッチは、
ノーマリオープン型の半導体スイッチであり、
前記暗電流供給スイッチは、
ノーマリクローズ型の半導体スイッチである
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の冗長電源システム。
【請求項7】
1次電源から1次負荷へ電力を供給する1次系統と、2次電源から2次負荷へ電力を供給する2次系統との間に設けられる系統間スイッチと、
前記系統間スイッチと並列に設けられる暗電流供給スイッチと、
前記2次電源を前記2次系統に接続切断する2次側スイッチと
を備える冗長電源システムの制御部が、イグニッションがオフ状態のときに、前記系統間スイッチをオフし、前記暗電流供給スイッチをオンし、前記イグニッションがオン状態のときに、前記系統間スイッチをオンし、前記暗電流供給スイッチをオフする制御工程と
前記冗長電源システムの確認部が、前記イグニッションがオフからオンにされた場合に、前記系統間スイッチ、前記暗電流供給スイッチ、および前記2次側スイッチのうち少なくとも1つをオン状態に維持した状態で、前記系統間スイッチ、前記暗電流供給スイッチ、および前記2次側スイッチが固着しているか否かをチェックする確認工程と
を含むことを特徴とする冗長電源制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、冗長電源システムおよび冗長電源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行中に電源失陥が発生しても、安全な場所まで退避走行させて停車させることができるように、1次電源と2次電源とを備え、一方の電源系統に地絡が発生した場合に、他方の電源から車載機器(負荷)へ電力を供給する冗長電源システムがある。
【0003】
例えば、冗長電源システムは、1次電源から1次負荷へ電力を供給する1次系統と、2次電源から1次負荷と同一の機能を備える2次負荷へ電力を供給する2次系統とを備える。そして、冗長電源システムは、1次系統および2次系統のうち一方の系統に地絡が発生した場合に、他方の系統によってフェイルセーフ制御を行う(例えば、特許文献1参照)。冗長電源システムは、1次系統と2次系統とを接続切断する系統間スイッチおよび2次電源と2次系統とを接続する2次側スイッチなどの複数のスイッチを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-61240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、冗長電源システムでは、イグニッションオフからオンに遷移するときのイニシャルチェックにおいて、2次負荷への電力供給が一時的に遮断されることがある。
【0006】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、イグニッションオフからオンに遷移するときに、2次負荷への電力供給を維持しつつ、各スイッチのイニシャルチェックを行うことができる冗長電源システムおよび冗長電源制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る冗長電源システムは、系統間スイッチと、暗電流供給スイッチと、2次側スイッチと、制御部と、確認部とを備える。系統間スイッチは、1次電源から1次負荷へ電力を供給する1次系統と、2次電源から2次負荷へ電力を供給する2次系統との間に設けられる。暗電流供給スイッチは、前記系統間スイッチと並列に設けられる。2次側スイッチは、前記2次電源を前記2次系統に接続切断する。制御部は、イグニッションがオフ状態のときに、前記系統間スイッチをオフし、前記暗電流供給スイッチをオンし、前記イグニッションがオン状態のときに、前記系統間スイッチをオンし、前記暗電流供給スイッチをオフする。確認部は、前記イグニッションがオフからオンにされた場合に、前記系統間スイッチ、前記暗電流供給スイッチ、および前記2次側スイッチのうち少なくとも1つをオン状態に維持した状態で、前記系統間スイッチ、前記暗電流供給スイッチ、および前記2次側スイッチが固着しているか否かのチェックを行う。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様に係る冗長電源システムおよび冗長電源制御方法は、イグニッションオフからオンに遷移するときに、2次負荷への電力供給を継続しつつ、各スイッチのイニシャルチェックを行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る冗長電源システムの動作説明図である。
図2図2は、実施形態に係る冗長電源システムの動作説明図である。
図3図3は、実施形態に係る冗長電源システムの動作説明図である。
図4図4は、実施形態に係る冗長電源システムの動作説明図である。
図5図5は、実施形態に係る冗長電源システムの動作説明図である。
図6図6は、実施形態に係る冗長電源システムの動作説明図である。
図7図7は、実施形態に係る制御部および確認部が実行するイニシャルチェック処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、冗長電源システムおよび冗長電源制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。以下では、自動運転機能を備える車両に搭載されて負荷へ電力を供給する冗長電源システムを例に挙げて説明するが、実施形態に係る冗長電源システムは、自動運転機能を備えていない車両に搭載されてもよい。
【0011】
図1図6は、実施形態に係る冗長電源システムの動作説明図である。なお、図3図6では、後述する制御部31および確認部32(図1および図2参照)の図示を省略している。図1には、イグニッション(以下、「IG」と記載する)オフ状態の冗長電源システムを示している。図1に示すように、冗長電源システム1は、1次電源10と1次負荷101と2次電源20と2次負荷102と、制御部31と、確認部32とを備える。
【0012】
1次電源10は、例えば、鉛蓄電池である。1次電源10は、1次電源10から1次負荷101へ電力を供給する1次系統110を介して1次負荷101に接続される。ここでは図示を省略しているが、1次電源10は、発電機やDCDCコンバータによって充電される。例えば、エンジン車両の場合、発電機は、エンジンの回転力を電力に変換して発電するオルタネータで1次電源10を充電する。また、電気自動車のように高圧バッテリを備えている車両の場合、高圧バッテリの電圧や、車両の回生エネルギーを電力に変換して発電する発電機の電圧を降圧するDCDCコンバータで1次電源10を充電する。
【0013】
2次電源20は、例えば、リチウムイオンバッテリである。2次電源20は、2次電源から2次負荷102へ電力を供給する2次系統120を介して2次負荷102に接続される。また、冗長電源システム1は、系統間スイッチSW1と、暗電流供給スイッチSW2と、2次側スイッチSW3とを備える。
【0014】
系統間スイッチSW1は、1次系統110と2次系統120との間に設けられる。系統間スイッチSW1は、1次系統110と2次系統120とを接続切断する。暗電流供給スイッチSW2は、系統間スイッチSW1と並列に設けられる。2次側スイッチSW3は、2次電源20と2次系統120との間に設けられる。2次側スイッチSW3は、2次電源20と2次負荷102とを接続切断する。
【0015】
また、冗長電源システム1は、電流センサ41,42と、電圧センサ51,52とを備える。電流センサ41は、系統間スイッチSW1または暗電流供給スイッチSW2を流れる電流を検出して、検出結果を確認部32に出力する。電流センサ41は、2次側スイッチSW3を流れる電流を検出し、検出結果を確認部32に出力する。電圧センサ51は、1次系統110の電圧を検出し、検出結果を確認部32に出力する。電圧センサ52は、2次系統120の電圧を検出し、検出結果を確認部32に出力する。
【0016】
制御部31および確認部32は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。制御部31は、CPUがROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行することにより、系統間スイッチSW1、暗電流供給スイッチSW2、および2次側スイッチSW3のオンオフを制御する。
【0017】
確認部32は、CPUがROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行することにより、系統間スイッチSW1、暗電流供給スイッチSW2、および2次側スイッチSW3が固着しているか否かのチェックを行う。また、確認部32は、1次系統110と2次系統120の電位差の確認なども行う。
【0018】
なお、制御部31および確認部32は、一部または全部がASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0019】
制御部31は、車両のIGがオフ状態のときに、図1に示すように、系統間スイッチSW1をオフし、暗電流供給スイッチSW2をオンし、2次側スイッチSW3をオフする。暗電流供給スイッチSW2は、系統間スイッチSW1よりも少ない電流を流すスイッチである。
【0020】
ここでの少ない電流とは、IGがオフ状態のときに、2次負荷102が最小限必要とする電力に対応する暗電流である。これにより、冗長電源システム1は、IGがオフ状態のときに、図1に点線矢印で示すように、1次電源10から2次負荷102に継続して暗電流を供給することができる。
【0021】
図2には、IGオン状態の冗長電源システム1を示している。図2に示すように、制御部31は、IGがオン状態のときに、系統間スイッチSW1をオンし、暗電流供給スイッチSW2をオフし、2次側スイッチSW3をオンする。これにより、冗長電源システム1は、IGがオン状態のときに、図2に点線矢印で示すように、1次電源10から1次負荷101および2次負荷102に電力を供給する。なお、2次側スイッチSW3はIGがオン状態のときにオフでもよい。それにより、後述する地絡異常が発生するまでの通常状態において2次電源20の放電を防止できる。
【0022】
ここで、冗長電源システム1は、暗電流供給スイッチSW2を省略することも可能である。ただし、冗長電源システム1は、暗電流供給スイッチSW2を省略すると、電力供給効率が低下し、消費電力が増大するため、暗電流供給スイッチSW2を備えていることが望ましい。
【0023】
具体的には、冗長電源システム1は、暗電流供給スイッチSW2が省略される場合、系統間スイッチSW1として、半導体スイッチが採用される。半導体スイッチには、ノーマリオープン型の半導体スイッチと、ノーマリクローズ型の半導体スイッチがある。
【0024】
ノーマリオープン型の半導体スイッチは、オン状態での抵抗値が小さいため、オン状態での電力ロスが少ない。ただし、ノーマリオープン型の半導体スイッチは、オン状態を維持するために駆動信号が必要なため、IGオフ中にオン状態を維持しようとすると、消費電力が必要になる。
【0025】
一方、ノーマリクローズ型の半導体スイッチは、オン状態を維持するのに駆動信号が不要なため、IGがオフ状態のときにオン状態を維持しても駆動用の消費電流は必要ない。ただし、ノーマリクローズ型の半導体スイッチは、オン状態での抵抗値が大きいため、オン状態での電力ロスが大きい。
【0026】
このため、系統間スイッチSW1でIGオフ中に2次負荷102に電力を供給する場合、次の問題が生じる。
【0027】
系統間スイッチSW1をノーマリクローズ型で構成すると、IGオフ中は系統間スイッチSW1をオン状態に維持するための駆動信号が不要なため、系統間スイッチSW1駆動用の消費電流がない(バッテリ上がりの心配なし)。
【0028】
しかし、IGがオン状態のときの通常動作時に系統間スイッチSW1をオン状態に維持する際の系統間スイッチSW1での電力ロスが大きくなるため、1次電源10から系統間スイッチSW1を介して2次負荷102へ十分な電流を供給することができない。
【0029】
一方、系統間スイッチSW1をノーマリオープン型で構成すると、IGオン中の通常動作時に系統間スイッチSW1をオン状態に維持する際の系統間スイッチSW1での電力ロスが小さいため、1次電源10から系統間スイッチSW1を介して2次負荷102へ十分な電流を供給することができる。
【0030】
しかし、IGオフ中に系統間スイッチSW1のオン状態を維持するのに駆動信号が必要なため駆動用の消費電流が必要となる(バッテリ上がりの心配がある)。このように、系統間スイッチSW1のみでIGオフ中にオン駆動しつつ、IGオン中もオン駆動しようとすると、ノーマリクローズ型とノーマリオープン型のどちらを使用しても実用上の問題が生じる。
【0031】
そこで、冗長電源システム1は、ノーマリオープン型の系統間スイッチSW1と、系統間スイッチSW1に並列接続されるノーマリクローズ型の暗電流供給スイッチSW2とを備える。
【0032】
そして、制御部31は、IGオフ中は、系統間スイッチSW1をオフ(ノーマリ状態)、暗電流供給スイッチSW2をオン(ノーマリ状態)に制御する。これにより、冗長電源システム1では、IGオフ中に系統間スイッチSW1および暗電流供給スイッチSW2の駆動信号が不要となり駆動用の消費電流がなくなる。
【0033】
また、制御部31は、IGオン中は、系統間スイッチSW1をオン(駆動状態)、暗電流供給スイッチSW2をオフ(駆動状態)に制御する。これにより、冗長電源システム1では、系統間スイッチSW1の電力ロスが小さくなり1次電源10から系統間スイッチSW1を介して2次負荷102へ十分な電流を供給することができる。
【0034】
図3には、1次系統110に電源失陥が生じた状態の冗長電源システム1を示している。例えば、図3に示すように、冗長電源システム1は、1次系統110に地絡200などの電源失陥が生じた場合、1次電源10から1次負荷101に電力を供給できなくなる。
【0035】
かかる場合、制御部31は、系統間スイッチSW1および暗電流供給スイッチSW2をオフし、2次側スイッチSW3をオンする。これにより、冗長電源システム1は、2次電源20から2次負荷102に電力を供給し、2次負荷によって車両の退避走行を行わせることができる。
【0036】
また、冗長電源システム1は、IGがオフ状態からオン状態にされた場合、IGオン状態からイニシャル処理が完了になるまでの間に、系統間スイッチSW1、暗電流供給スイッチSW2、および2次側スイッチSW3のイニシャルチェック処理を行う。イニシャル処理とは、IGがオンしてから自動運転可能かどうかをチェックする処理を指す。このイニシャル処理で、制御部31が自動運転可能と判断すると、自動運転許可状態であることを運転者に通知する。
【0037】
イニシャルチェック処理では、2次側スイッチSW3、暗電流供給スイッチSW2、系統間スイッチSW1の順に、固着しているか否かのチェックを行う。このように、冗長電源システム1は、電源失陥発生時に、確実にバックアップができるよう最初に2次側スイッチSW3のチェックを行う。
【0038】
図4には、2次側スイッチSW3のチェックを行うときの冗長電源システム1を示している。図4に示すように、IGがオフ状態からオン状態にされた場合、制御部31は、まず、系統間スイッチSW1をオフ、暗電流供給スイッチSW2をオンのままにしておき、2次側スイッチSW3をオンオフさせる。
【0039】
そして、確認部32は、暗電流供給スイッチSW2がオン状態に維持された状態で、2次側スイッチSW3が固着しているか否かのチェックを行う。確認部32は、2次側スイッチSW3をオンしたときに電流センサ42によって電流が検出され、2次側スイッチSW3をオフしたときに電流センサ42によって電流が検出されなければ、2次側スイッチSW3が固着しておらず正常であると判定する。
【0040】
また、確認部32は、2次側スイッチSW3をオンしたときに電流センサ42によって電流が検出されなければ、2次側スイッチSW3をオフ固着と判定し、2次側スイッチSW3をオフしたときに電流センサ42によって電流が検出されれば、2次側スイッチSW3をオン固着と判定する。冗長電源システム1は、2次側スイッチSW3が正常でないと判定された場合、システムの立ち上げを禁止する。
【0041】
これにより、冗長電源システム1は、1次電源10から暗電流供給スイッチSW2を経由して2次負荷102への電力供給を維持したまま、2次側スイッチSW3の固着チェックを行うことができる。
【0042】
冗長電源システム1は、2次側スイッチSW3が固着していなければ、次に、暗電流供給スイッチSW2のチェックを行う。図5には、暗電流供給スイッチSW2のチェックを行うときの冗長電源システム1を示している。
【0043】
図5に示すように、制御部31は、暗電流供給スイッチSW2のチェックを行う場合、系統間スイッチSW1をオフ、2次側スイッチSW3をオンのままにしておき、暗電流供給スイッチSW2をオンオフさせる。そして、確認部32は、2次側スイッチSW3がオン状態に維持された状態で、暗電流供給スイッチSW2が固着しているか否かのチェックを行う。
【0044】
確認部32は、暗電流供給スイッチSW2をオンしたときに電流センサ41によって電流が検出され、暗電流供給スイッチSW2をオフしたときに電流センサ41によって電流が検出されなければ、暗電流供給スイッチSW2が固着しておらず正常であると判定する。
【0045】
また、確認部32は、暗電流供給スイッチSW2をオンしたときに電流センサ41によって電流が検出されなければ、暗電流供給スイッチSW2をオフ固着と判定し、暗電流供給スイッチSW2をオフしたときに電流センサ41によって電流が検出されれば、暗電流供給スイッチSW2をオン固着と判定する。冗長電源システム1は、暗電流供給スイッチSW2が正常でないと判定された場合、システムの立ち上げを禁止する。
【0046】
これにより、冗長電源システム1は、2次電源20から2次側スイッチSW3を経由して2次負荷102への電力供給を維持したまま、暗電流供給スイッチSW2の固着チェックを行うことができる。
【0047】
冗長電源システム1は、暗電流供給スイッチSW2が固着していなければ、次に、系統間スイッチSW1のチェックを行う。図6には、系統間スイッチSW1のチェックを行うときの冗長電源システム1を示している。
【0048】
図6に示すように、制御部31は、系統間スイッチSW1のチェックを行う場合、暗電流供給スイッチSW2をオフし、2次側スイッチSW3をオンのままにしておき、系統間スイッチSW1をオンオフさせる。そして、確認部32は、2次側スイッチSW3がオン状態に維持された状態で、系統間スイッチSW1が固着しているか否かのチェックを行う。
【0049】
確認部32は、系統間スイッチSW1をオンしたときに電流センサ41によって電流が検出され、系統間スイッチSW1をオフしたときに電流センサ41によって電流が検出されなければ、系統間スイッチSW1が固着しておらず正常であると判定する。
【0050】
また、確認部32は、系統間スイッチSW1をオンしたときに電流センサ41によって電流が検出されなければ、系統間スイッチSW1をオフ固着と判定し、系統間スイッチSW1をオフしたときに電流センサ41によって電流が検出されれば、系統間スイッチSW1をオン固着と判定する。冗長電源システム1は、系統間スイッチSW1が正常でないと判定された場合、システムの立ち上げを禁止する。
【0051】
これにより、冗長電源システム1は、2次電源20から2次側スイッチSW3を経由して2次負荷102への電力供給を維持したまま、系統間スイッチSW1の固着チェックを行うことができる。確認部32は、系統間スイッチSW1が固着していなければ、次に、1次系統110の電位と、2次系統120の電位との電位差を検出する。
【0052】
そして、制御部31は、1次系統110と2次系統120との電位差が閾値未満である場合、系統間スイッチSW1をオンして、冗長電源システム1を図2に示すIGオンの状態にする。
【0053】
また、制御部31は、1次系統110と2次系統120との電位差が閾値以上である場合、1次系統110と2次系統120との電位差を閾値未満となるように調整してから、系統間スイッチSW1をオンして、冗長電源システム1を図2に示すIGオンの状態にする。
【0054】
かかる調整としては、次の処理を行えばよい。すなわち、制御部31が、1次電源10に接続されるオルタネータまたはDCDCコンバータに電圧操作を指令することで調整するか、あるいは、制御部31が、1次負荷101または2次負荷102で電力を消費させる指令を実施することで調整すればよい。例えば、1次系統110の電圧を上げることで調整する場合、制御部31はオルタネータまたはDCDCコンバータに昇圧を指示する。また、一方の系統の電圧を下げることで調整する場合、制御部31はその系統の負荷を駆動する指示を行い電力を消費させることでその系統の電圧を低下させる。
【0055】
これにより、冗長電源システム1は、1次系統110と2次系統120との電位差が閾値以上のまま系統間スイッチSW1を接続することによる系統間スイッチSW1の破損を防止することができる。
【0056】
次に、図7を参照して実施形態に係る制御部および確認部が実行する処理の一例について説明する。図7は、実施形態に係る制御部および確認部が実行するイニシャルチェック処理の一例を示すフローチャートである。制御部31および確認部32は、IGがオフからオンにされた場合に、イニシャルチェック処理を実行する。
【0057】
図7に示すように、IGがオフからオンにされると、制御部31および確認部32は、2次側スイッチSW3のオン/オフチェックを行う(ステップS101)。このとき、制御部31は、暗電流供給スイッチSW2をオンし、2次側スイッチSW3をオンオフさせる。確認部32は、暗電流供給スイッチSW2がオン状態に維持された状態で、2次側スイッチSW3が固着しているか否かのチェックを行う。
【0058】
そして、確認部32は、2次側スイッチSW3が正常か否かを判定する(ステップS102)。確認部32は、2次側スイッチSW3が固着していれば、2次側スイッチSW3を異常と判定し(ステップS102,No)、システムの立ち上げを禁止して(ステップS113)、処理を終了する。
【0059】
確認部32は、2次側スイッチSW3が固着していなければ、2次側スイッチSW3を正常と判定する(ステップS102,Yes)。制御部31は、2次側スイッチSW3が正常と判定されると、2次側スイッチSW3のオンを実施する(ステップS103)。
【0060】
その後、制御部31および確認部32は、暗電流供給スイッチSW2のオン/オフチェックを行う(ステップS104)。このとき、制御部31は、暗電流供給スイッチSW2をオンオフさせる。確認部32は、2次側スイッチSW3がオン状態に維持された状態で、暗電流供給スイッチSW2が固着しているか否かのチェックを行う。
【0061】
そして、確認部32は、暗電流供給スイッチSW2が正常か否かを判定する(ステップS105)。確認部32は、暗電流供給スイッチSW2が固着していれば、暗電流供給スイッチSW2を異常と判定し(ステップS105,No)、システムの立ち上げを禁止して(ステップS113)、処理を終了する。
【0062】
確認部32は、暗電流供給スイッチSW2が固着していなければ、暗電流供給スイッチSW2を正常と判定する(ステップS105,Yes)。制御部31は、暗電流供給スイッチSW2が正常と判定されると、暗電流供給スイッチSW2のオフを実施する(ステップS106)。
【0063】
その後、制御部31および確認部32は、系統間スイッチSW1のオン/オフチェックを行う(ステップS107)。このとき、制御部31は、系統間スイッチSW1をオンオフさせる。確認部32は、2次側スイッチSW3がオン状態に維持された状態で、系統間スイッチSW1が固着しているか否かのチェックを行う。
【0064】
そして、確認部32は、系統間スイッチSW1が正常か否かを判定する(ステップS108)。確認部32は、系統間スイッチSW1が固着していれば、系統間スイッチSW1を異常と判定し(ステップS108,No)、システムの立ち上げを禁止して(ステップS113)、処理を終了する。
【0065】
確認部32は、系統間スイッチSW1が固着していなければ、系統間スイッチSW1を正常と判定し(ステップS108,Yes)、1次系統110と2次系統120との電位差が閾値未満か否かを判定する(ステップS109)。
【0066】
制御部31は、1次系統110と2次系統120との電位差が閾値以上であると確認部32によって判定される場合(ステップS109,No)、1次系統110と2次系統120との電位差を調整し(ステップS112)、処理をステップS109へ移す。
【0067】
制御部31は、1次系統110と2次系統120との電位差が閾値未満であると確認部32によって判定される場合(ステップS109,Yes)、系統間スイッチSW1のオンを実施して(ステップS111)、処理を終了する。
【0068】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 冗長電源システム
10 1次電源
20 2次電源
31 制御部
32 確認部
41,42 電流センサ
51,52 電圧センサ
101 1次負荷
102 2次負荷
110 1次系統
120 2次系統
SW1 系統間スイッチ
SW2 暗電流供給スイッチ
SW3 2次側スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7