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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/335 20060101AFI20241108BHJP
   B41J 2/345 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B41J2/335 101B
B41J2/335 101H
B41J2/345 A
B41J2/345 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021010938
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114596
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 明良
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/031199(WO,A1)
【文献】特開2006-130707(JP,A)
【文献】特開2017-177476(JP,A)
【文献】特開昭62-251158(JP,A)
【文献】特開2011-018496(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0074907(US,A1)
【文献】中国実用新案第201442382(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/335
B41J 2/345
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置された蓄熱層と、
前記蓄熱層上に配置された第1の金属層と、前記蓄熱層上に配置され、前記第1の金属層と離間して配置された第2の金属層とを有する配線と、
前記蓄熱層上に配置され、前記第1の金属層及び前記第2の金属層と電気的に接続する発熱抵抗層と、
を備え
前記発熱抵抗層は、
主走査方向を第1の方向とし、前記第1の方向に延びて配置され、
前記主走査方向と交差する副走査方向を第2の方向とし、前記第2の方向において、前記第1の金属層と前記第2の金属層とに挟まれて配置され、
前記第1の金属層は、
前記第1の方向に延びて配置され、
前記第2の方向において、第3の先端部の断面が、円弧状である、
サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記発熱抵抗層は、
前記基板上のデバイス面を平面視する方向を第3の方向とし、
前記第3の方向で、前記第1の方向に沿って配列された複数の発熱部を有する、
請求項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記第1の金属層は、
前記第の方向において、第2の先端部及び第4の先端部の断面が、円弧状である、
請求項1または2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記第2の金属層は、
前記第1の方向に離間して配置され、
前記第2の方向において、第6の先端部の断面が、円弧状である、
請求項1乃至3の何れか一項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記第2の金属層は、
前記第1の方向において、第5の先端部及び第7の先端部の断面が、円弧状である、
請求項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記第1の金属層は、
第3の方向で、前記第1の方向の第1の先端部と前記第2の方向に延在する第2の先端部との相対角度θが15°以上30°以下である、
請求項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
前記発熱抵抗層は、
前記第1の金属層上の少なくとも一部を覆う、
請求項1乃至6の何れか一項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
前記発熱抵抗層は、
前記第2の金属層上の少なくとも一部を覆う、
請求項1乃至7の何れか一項に記載のサーマルプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、サーマルプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリントヘッドは、発熱抵抗体に接続される配線を導通することで熱を発生させる構成が知られている。例えば、フォトリソグラフィ法により、配線を形成する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-219590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、サーマルプリントヘッドは、近年、低価格化が求められている。このため、配線をフォトリソグラフィ法で形成すると、エッチング処理に時間がかかるので、製造コストが高くなり、また、製造にかかる時間が長くなる。
【0005】
本開示は、製造コスト及び製造にかかる時間を抑制できるサーマルプリントヘッドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の一態様によれば、基板と、基板上に配置された蓄熱層と、蓄熱層上に配置された第1の金属層と、蓄熱層上に配置され、第1の金属層と離間して配置された第2の金属層とを有する配線と、蓄熱層上に配置され、第1の金属層及び第2の金属層と電気的に接続する発熱抵抗層とを備える、サーマルプリントヘッドが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、製造コスト及び製造にかかる時間を抑制できるサーマルプリントヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係るサーマルプリントヘッドの概要的な平面図である。
図2図2は、図1に示す発熱抵抗層周辺Aの拡大図である。
図3図3は、図2のB1-B1線に沿う模式的な断面構造を拡大した図である。
図4A図4Aは、図2のD1-D1線に沿う模式的な断面構造を拡大した図である。
図4B図4Bは、図2のE1-E1線に沿う模式的な断面構造を拡大した図である。
図5図5は、図2のC1-C1線に沿う模式的な断面構造を拡大した図である。
図6図6は、図1に示す発熱抵抗層周辺Aの拡大図A2である。
図7図7は、図6のB2-B2線に沿う模式的な断面構造を拡大した図である。
図8図8は、図6のC2-C2線に沿う模式的な断面構造を拡大した図である。
図9図9は、本実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造における主要な工程フロー図である。
図10A図10Aは、本実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造工程の一工程を示す断面図である。
図10B図10Bは、図10Aに続く一工程を示す断面図である。
図10C図10Cは、図10Bに続く一工程を示す断面図である。
図10D図10Dは、図10Cに続く一工程を示す断面図である。
図11図11は、図1に示す発熱抵抗層周辺Aの拡大図A3である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本実施形態について説明する。以下に説明する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各構成部品の厚みと平面寸法との関係等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
また、以下に示す実施形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものではない。本実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
本実施形態に係るサーマルプリントヘッド10について図面を用いて説明する。ここで、図1は、本実施形態に係るサーマルプリントヘッド10の概略的な平面図である。
【0013】
図2は、図1に示す発熱抵抗層周辺Aの拡大図である。図3は、図2のB1-B1線に沿う模式的な断面構造を拡大した図である。なお、図1に示す平面図のデバイス面をX-Y面とし、X-Y面に垂直な方向をZ軸として説明する。図3は、X軸方向からみたY-Z面である。すなわち、基板1の長手方向をX軸方向、短手方向をY軸方向、厚さ方向をZ軸方向である。以下の説明において、X軸方向を主走査方向、Y軸方向を副走査方向、Z方向を厚さ方向として説明する。なお、主走査方向を第1の方向、副走査方向を第2の方向、厚さ方向を第3の方向とも称する。
【0014】
図4Aは、図2のD1-D1線に沿う模式的な断面構造を拡大した図である。図4Bは、図2のE1-E1線に沿う模式的な断面構造を拡大した図である。また、図4Aは、第2の方向である副走査方向からみたX-Z面である。図4Bは、副走査方向からみたX-Z面である。
【0015】
図5は、図2のC1-C1線に沿う模式的な断面構造を拡大した図である。図5は、副走査方向からみたX-Z面である。
【0016】
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10は、図1、2、及び3に示すように、基板1と、基板1上に配置された蓄熱層2と、蓄熱層2上に配置された共通電極3と、共通電極3と電気的に接続された配線5と、蓄熱層2上に配置され、配線5と電気的に接続された発熱抵抗層6と、配線5と電気的に接続され、発熱抵抗層6を通電し熱を発生させるための通電制御をする駆動回路4と、外部からの端子と共通電極3及び駆動回路4を電気的に接続されたコネクタ7と、配線5及び発熱抵抗層6上に配置された保護層8(図1及び2では省略)を備える。
【0017】
基板1は、図1に示すように、基板1上のデバイス面を平面視して、長方形状の電気的に絶縁材料であり、例えば、アルミナセラミックス、又は、半導体材料からなる基板である。半導体材料は、例えば、シリコン、シリコンカーバイト、ガリウムリン、ガリウムヒ素、インジウムリン、及びガリウムナイトライドなどが挙げられる。
【0018】
基板1の大きさは、限定されないが、一例を挙げると、第1の方向である主走査方向の寸法は、例えば、50mm~150mm程度、第2の方向である副走査方向の寸法は、例えば、2.0mm~10.0mm程度、第3の方向である厚さ方向の寸法は、例えば、500μm~1mm程度であり、望ましくは700μm~800μm程度である。
【0019】
蓄熱層2は、図2に示すように、熱伝導性の低い絶縁材料であり、基板1上に配置される。蓄熱層2は、例えば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、あるいは、シリコン酸窒化膜などを用いてもよい。蓄熱層2は、発熱抵抗層6によって発生する熱の一部を一時的に蓄積する。
【0020】
図3に示す蓄熱層2の厚さ方向の厚さは、特に限定されず、例えば、5μm~15μm程度であり、好ましくは5μm~10μm程度である。
【0021】
共通電極3は、図1に示すように、蓄熱層2上に配置され、コネクタ7及び配線5と電気的に接続される。共通電極3は、金属粒子を含み、銅、銀、パラジウム、イリジウム、白金、及び金などであり、金属のイオン化傾向の観点から、銅、銀、白金、及び金であることが好ましい。共通電極3の厚さ方向の厚さは、特に限定されず、例えば、0.2μm~0.8μm程度である。
【0022】
配線5は、図1及、2、及び3に示すように、蓄熱層2上に配置され、共通電極3及び発熱抵抗層6と電気的に接続される。また、配線5は、発熱抵抗層6を介して駆動回路4と電気的に接続される。
【0023】
配線5は、図2、3に示すように、蓄熱層2上に配置された第1の金属層51と、蓄熱層2上に配置され、第1の金属層51と離間して配置された第2の金属層52とを有する。
【0024】
配線5の一部である第1の金属層51は、図1、2に示すように、共通電極3と電気的に接続される。
【0025】
第1の金属層51は、図2に示すように、第1の金属層51の走査方向の端部を第1の先端部201という。また、第1の金属層51は、図2、4Aに示すように、第1の先端部201と交差する走査方向に延伸する端部を第2の先端部202という。また、第1の実施形態においては、第1の先端部201は、第2の先端部202に対して、相対角度が直角である。
【0026】
第1の金属層51は、図2、3に示すように、第1の先端部201から副走査方向に延伸する端部の先を第3の先端部203という。また、第1の金属層51は、図2、4Aに示すように、第2の先端部202と対向する走査方向の端部を第4の先端部204という。
【0027】
配線5の一部である第2の金属層52は、図1、2に示すように、駆動回路4と電気的に接続される。
【0028】
第2の金属層52は、図2、4Bに示すように、副走査方向に延伸する端部を第5の先端部205という。第2の金属層52は、図2、3に示すように、第1の金属層51の第3の先端部203と対向する端部を第6の先端部206という。また、第2の金属層52は、図2、4Bに示すように、第5の先端部205と対向する第2の方向の端部を第7の先端部207という。
【0029】
第1の金属層51は、図3に示すように、副走査方向において、第3の先端部203の断面が、円弧状である。
【0030】
第1の金属層51は、図4Aに示すように、主走査方向において、第2の先端部202及び第4の先端部204の断面が、円弧状である。
【0031】
第2の金属層52は、図3に示すように、副走査方向において、第6の先端部206の断面が、円弧状である。
【0032】
第2の金属層52は、図4Bに示すように、主走査方向において、第5の先端部205及び第7の先端部207の断面が、円弧状である。
【0033】
駆動回路4は、図1、2に示すように、蓄熱層2上に配置され、配線5の一部である第2の金属層52及びコネクタ7と電気的に接続される。また、駆動回路4は、第1の金属層51及び第2の金属層52の1対ごとに通電することで発熱抵抗層6に熱を発生させ制御する。
【0034】
発熱抵抗層6は、図1、2、及び3に示すように、主走査方向に延伸し、第1の金属層51上の少なくとも一部を覆うように配置される。また、発熱抵抗層6は、第2の金属層52上の少なくとも一部を覆うように配置される。
【0035】
発熱抵抗層6は、図2、3、及び5のように、副走査方向において、第1の金属層51と第2の金属層52とに挟まれた位置に配置される。また、発熱抵抗層6は、図2、5に示すように、発熱部61を有する。すなわち、発熱抵抗層6は、図2、5に示すように、基板1上のデバイス面を平面視する方向である厚さ方向で、第1の方向に沿って、配列された複数の発熱部61を有する。
【0036】
複数の発熱部61は、駆動回路4によって部分的に通電されることにより選択的に発熱する。すなわち、1つの発熱部61の発熱によって、1つの印字ドットが形成される。
【0037】
発熱抵抗層6は、図5に示すように、複数のスリット62を有している。スリット62は、隣り合う発熱部61の間に位置しており、保護層8によって形成される。また、スリット62は、図2に示すように、第3の方向から平面視で、隣り合う第1の金属層51及び第2の金属層52との間に設けられている。
【0038】
これにより、複数の発熱部61は、お互いに離間した構成を有する。すなわち、1つの発熱部61に流れる電流は、図2に示すように、例えば、第1の金属層51から発熱抵抗層6を介して第2の金属層52に流れる。以下の説明において、この1つの発熱部61に流れる電流経路を第1の電流経路101という。
【0039】
コネクタ7は、図1に示すように、基板1に配置され、外部からの端子、駆動回路4、及び共通電極3と電気的に接続される。
【0040】
保護層8は、図3に示すように、配線5及び発熱抵抗層6を覆うように保護膜としてオーバーコート用のガラス層を形成される。
【0041】
[第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10の比較例]
次に、本実施形態に係るサーマルプリントヘッド10の比較例について説明する。以下の説明において、本実施形態に係るサーマルプリントヘッド10の比較例を比較例という。
【0042】
図6は、図1に示す発熱抵抗層周辺Aの拡大図A2である。図7は、図6のB1-B1線に沿う模式的な断面構造を拡大した図である。図7は、主走査方向からみたY-Z面である。図8は、図6のC2-C2線に沿う模式的な断面構造を拡大した図である。図8は、副走査方向からみたX-Z面である。
【0043】
比較例の配線5は、図6に示すように、第3の金属層53と第4の金属層54を有する。配線5の一部である第3の金属層53は、図1、6に示すように、共通電極3と電気的に接続される。また、配線5の一部である第4の金属層54は、図1、6に示すように、駆動回路4と電気的に接続される。
【0044】
配線5の配置の違いは、副走査方において、第1の実施形態の第1の金属層51と第2の金属層52が対向するのに対し、比較例の第3の金属層53と第4の金属層54が主走査方向において交互に配置されている。
【0045】
すなわち、比較例の発熱抵抗層6に流れる電流は、例えば、第4の金属層54の隣り合う第3の金属層53の両方から流れる。以下の説明において、第4の金属層54の隣り合う第3の金属層53の両方から発熱抵抗層6に流れる電流経路を第2の電流経路102という。
【0046】
第3の金属層53は、図6に示すように、第3の金属層53の第1の方向の端部を第8の先端部208という。また、第3の金属層53は、図6に示すように、第8の先端部208と交差する副走査方向に延伸する端部を第9の先端部209という。
【0047】
第3の金属層53は、図6、7に示すように、第8の先端部208から副走査方向に延伸する端部の先を第10の先端部210という。また、第1の金属層51は、図6、8に示すように、第9の先端部209と対向する副走査方向の端部を第11の先端部211という。
【0048】
第3の金属層53は、図7に示すように、副走査方向において、第10の先端部210の断面が、垂直である。
【0049】
第3の金属層53は、図8に示すように、主走査方向において、第9の先端部209及び第11の先端部211の断面が、垂直である。
【0050】
すなわち、配線5の配置の断面の違いは、第1の実施形態のスクリーン印刷による配線5の形成に対し、比較例のフォトリソグラフィ法による配線5の形成によって、先端部が垂直である。
【0051】
次に、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10の製造方法の一例について説明する。第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10を製造するには、半導体プロセスを用いる。
【0052】
図9は、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10の製造における主要な工程フロー図である。図10A~Dは、図9に示す各工程における発熱抵抗層6周辺AのB1-B1線に沿う断面構造である。すなわち、図10A~Dは、主走査方向からみたY-Z面である。
【0053】
まず、図9に示すステップS1は、蓄熱層2の形成工程である。図10Aに示すように、基板1を用意する。第1の実施形態において基板1は、例えば、アルミナセラミックスである。
【0054】
次に、蓄熱層2は、図10Bに示すように、基板1上に例えば、酸化シリコンのガラスペーストをスクリーン印刷法などによって塗布し、ガラスペーストを例えば、1200℃程度で焼成することで形成される。ここで、1200℃程度とは、酸化シリコンのガラスペーストを用いた条件下では1100℃~1300℃までの範囲をいう。
【0055】
図9に示すステップS2は、配線5の一部である第1の金属層51及び第2の金属層52の形成工程である。図10Cに示すように、蓄熱層2上に第1の金属層51及び第2の金属層52を形成する。第1の金属層51及び第2の金属層52の形成には、例えば、スクリーン印刷法を用いる。第1の金属層51及び第2の金属層52の厚さ方向の厚さは、0.2μm~0.8μm程度である。なお、第1の金属層51及び第2の金属層52は、スクリーン印刷法を用いて、複数回に分けて印刷して第1の金属層51及び第2の金属層52の厚さ方向の厚さに形成してもよい。
【0056】
すなわち、第1の金属層51及び第2の金属層52は、スクリーン印刷法によって形成されるため、図10Cに示すように、副走査方向において、第3の先端部203及び第6の先端部の断面が円弧状である。
【0057】
同様に、第1の金属層51は、図4Aで示すように、主走査方向において、第2の先端部202及び第4の先端部204の断面が、円弧状である。また、第2の金属層52は、図4Bで示すように、主走査方向において、第5の先端部205及び第7の先端部207の断面が、円弧状である。
【0058】
第1の金属層51及び第2の金属層52から構成される配線5の幅は、主走査方向において、例えば、約50μm~100μm程度である。また、主走査方向において、配線5と配線5との隣り合う間の距離(配線間のスペース)は、例えば、約70μm~120μm程度である。
【0059】
図9に示すステップS3は、発熱抵抗層6の形成工程である。なお、発熱抵抗層6は、スクリーン印刷法を用いる。発熱抵抗層6は、図1、2及び図10Dに示すように、発熱抵抗層6のペーストを蓄熱層2上に配線5の一部を覆うように所定の位置に帯状に印刷する。また、発熱抵抗層6は、図2に示すように、発熱部61を有し、各配線5ごとに複数の発熱部61を形成してもよい。
【0060】
発熱抵抗層6は、発熱抵抗層6のペーストを印刷した後、乾燥させ、800℃~850℃程度で焼成して形成する。発熱抵抗層6の厚さ方向の厚さは、例えば、4μm~6μm程度である。
【0061】
発熱抵抗層6のペーストは、導電物質及びガラスを含有する。発熱抵抗層6の導電物質は、例えば、酸化ルテニウム、窒化タンタル、タンタル、及び銀パナジウムなどを用いてもよい。
【0062】
第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10の製造工程において、発熱抵抗層6形成の工程以降は、公知であるので、工程の説明を省略する。
【0063】
以上の工程によって、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10が完成される。
【0064】
次に、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10の作用について説明する。
【0065】
第1の実施形態によると、図9に示すように、基板1上に形成する蓄熱層2、配線5、及び発熱抵抗層6において、全てスクリーン印刷法を用いることで、配線5の一部である第1の金属層51及び第2の金属層52の先端部が円弧状に形成される。そして、発熱抵抗層6は、複数の発熱部61を有するように配置される。このことにより、複数の発熱部61は、駆動回路4によって部分的に通電されることにより選択的に発熱する。すなわち、1つの発熱部61の発熱によって、1つの印字ドットが形成することができる。
【0066】
また、第1の実施形態によると、フォトリソグラフィ法による露光装置を使用することないため、レジストの塗布及びエッチングの工程がない。したがって、製造にかかる時間を抑制することができる。また、ステップS1~S3を全てスクリーン印刷法を用いることで、製造工程を簡略化できるので、製造コストを低減することができる。
【0067】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10について図面を用いて説明する。ここで、図11は、図1に示す発熱抵抗層周辺Aの拡大図A3である。
【0068】
第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10は、図11に示すように、第1の先端部201は、厚さ方向で、主走査方向の第1の先端部201と副走査方向に延在する第2の先端部202との相対角度θが15°以上30°以下である。すなわち、配線5の第1の先端部201と第2の先端部202との相対角度θが斜めに傾いていてもよい。また、配線5である他の第1の金属層51及び第2の金属層52が同様に斜めに傾いていてもよい。また、同様に、発熱抵抗層6が斜めに傾いていてもよい。他の構成は、第1の実施形態と同じである。
【0069】
次に、第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10の作用について説明する。
【0070】
スクリーン印刷を用いると、印刷ピッチに限界がある。これに対して、第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10によれば、配線5である第1の金属層51及び第2の金属層52と、発熱抵抗層6とを斜めに配置されることにより、印字品質(解像度)を向上することができる。
【0071】
また、本実施形態によると、他の作用は、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10と同様である。
【0072】
以上説明したように、本実施の形態によれば、製造コスト及び製造にかかる時間を抑制できるサーマルプリントヘッド10及びその製造方法を提供することができる。
【0073】
[その他の実施形態]
上述のように、いくつかの実施形態について記載したが、開示の一部をなす論述及び図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。このように、本実施形態は、ここでは記載していない様々な実施形態等を含む。
【符号の説明】
【0074】
1 基板
2 蓄熱層
3 共通電極
4 駆動回路
5 配線
51 第1の金属層
52 第2の金属層
6 発熱抵抗層
61 発熱部
62 スリット
7 コネクタ
8 保護層
10 サーマルプリントヘッド
101 第1の電流経路
102 第2の電流経路
201 第1の先端部
202 第2の先端部
203 第3の先端部
204 第4の先端部
205 第5の先端部
206 第6の先端部
207 第7の先端部
θ 第1の先端部と第2の先端部との相対角度
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11