(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】鉄筋結束機
(51)【国際特許分類】
E04G 21/12 20060101AFI20241108BHJP
B25B 25/00 20060101ALI20241108BHJP
E04C 5/16 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
E04G21/12 105E
B25B25/00 A
E04C5/16
(21)【出願番号】P 2021029232
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 仁美
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 祐太
(72)【発明者】
【氏名】水野 峻汰
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-267307(JP,A)
【文献】特開2018-109295(JP,A)
【文献】特開平11-156749(JP,A)
【文献】特開2001-140471(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0293902(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/12
E04C 5/00- 5/20
B25B 25/00
B65B 13/28
B65B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋結束機であって、
送りモータと、
前記送りモータを流れる電流を検出する電流センサと、
前記送りモータの動作を制御する制御ユニットを備えており、
前記送りモータの駆動により、鉄筋の周りにワイヤを送り出す送り出し工程と、
前記ワイヤの先端近傍を把持する把持工程と、
前記送りモータの駆動により、前記ワイヤを引き戻す引き戻し工程と、
前記ワイヤを切断する切断工程と、
前記ワイヤを捩る捩り工程を実行可能であって、
前記制御ユニットが、前記引き戻し工程における前記送りモータを流れる電流値の履歴に基づいて、前記鉄筋の径を判別するように構成されている、鉄筋結束機。
【請求項2】
前記制御ユニットが、前記引き戻し工程において、前記送りモータの始動電流のピークを越えた後、前記送りモータを流れる前記電流値の時間変化率を算出し、前記時間変化率が時間変化率しきい値に達するタイミングに基づいて、前記鉄筋の径を判別するように構成されている、請求項1の鉄筋結束機。
【請求項3】
前記制御ユニットが、前記引き戻し工程において、停止条件が満たされた場合に、前記送りモータを停止するように構成されており、
前記制御ユニットが、前記判別された前記鉄筋の径に応じて、前記停止条件を変更するように構成されている、請求項1または2の鉄筋結束機。
【請求項4】
前記制御ユニットが、前記引き戻し工程において、停止条件が満たされた場合に、前記送りモータを停止するように構成されており、
前記制御ユニットが、前記判別された前記鉄筋の径に応じて、前記停止条件を変更するように構成されており、
前記制御ユニットが、前記引き戻し工程において、前記送りモータの前記始動電流の前記ピークを越えた後の前記送りモータを流れる前記電流値の最小値を特定し、前記送りモータを流れる前記電流値の前記最小値からの増加量を算出するように構成されており、
前記停止条件が、前記増加量が増加量しきい値に達することを含んでおり、
前記制御ユニットが、前記判別された前記鉄筋の径に応じて、前記増加量しきい値を変更するように構成されている、請求項
2の鉄筋結束機。
【請求項5】
鉄筋結束機であって、
送りモータと、
前記送りモータを流れる電流を検出する電流センサと、
前記送りモータの動作を制御する制御ユニットを備えており、
前記送りモータの駆動により、鉄筋の周りにワイヤを送り出す送り出し工程と、
前記ワイヤの先端近傍を把持する把持工程と、
前記送りモータの駆動により、前記ワイヤを引き戻す引き戻し工程と、
前記ワイヤを切断する切断工程と、
前記ワイヤを捩る捩り工程を実行可能であって、
前記制御ユニットが、前記引き戻し工程において、停止条件が満たされた場合に、前記送りモータを停止するように構成されており、
前記制御ユニットが、前記引き戻し工程における前記送りモータを流れる電流値の履歴に応じて、前記停止条件を変更するように構成されている、鉄筋結束機。
【請求項6】
前記制御ユニットが、前記引き戻し工程において、前記送りモータの始動電流のピークを越えた後、前記送りモータを流れる前記電流値の時間変化率を算出し、前記時間変化率が時間変化率しきい値に達するタイミングに応じて、前記停止条件を変更するように構成されている、請求項5の鉄筋結束機。
【請求項7】
前記制御ユニットが、前記引き戻し工程において、前記送りモータの前記始動電流の前記ピークを越えた後の前記送りモータを流れる前記電流値の最小値を特定し、前記送りモータを流れる前記電流値の前記最小値からの増加量を算出するように構成されており、
前記停止条件が、前記増加量が増加量しきい値に達することを含んでおり、
前記制御ユニットが、前記時間変化率が前記時間変化率しきい値に達する前記タイミングに応じて、前記増加量しきい値を変更するように構成されている、請求項6の鉄筋結束機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、鉄筋結束機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄筋結束機が開示されている。前記鉄筋結束機は、送りモータと、前記送りモータを流れる電流を検出する電流センサと、前記送りモータの動作を制御する制御ユニットと、鉄筋の径を判別する判別機構を備えている。前記鉄筋結束機は、前記送りモータの駆動により、鉄筋の周りにワイヤを送り出す送り出し工程と、前記ワイヤを切断する切断工程と、前記ワイヤを捩る捩り工程を実行可能である。前記鉄筋結束機は、前記判別機構によって判別された鉄筋の径に応じた動作を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の鉄筋結束機では、鉄筋の径を判別するための判別機構を設ける必要があり、機械的な構成が複雑なものとなっている。本明細書では、鉄筋結束機において、鉄筋の径を判別するための判別機構を設けることなく、鉄筋の径に応じた動作を実行可能とする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、鉄筋結束機を開示する。前記鉄筋結束機は、送りモータと、前記送りモータを流れる電流を検出する電流センサと、前記送りモータの動作を制御する制御ユニットを備えていてもよい。前記鉄筋結束機は、前記送りモータの駆動により、鉄筋の周りにワイヤを送り出す送り出し工程と、前記ワイヤの先端近傍を把持する把持工程と、前記送りモータの駆動により、前記ワイヤを引き戻す引き戻し工程と、前記ワイヤを切断する切断工程と、前記ワイヤを捩る捩り工程を実行可能であってもよい。前記制御ユニットは、前記引き戻し工程における前記送りモータを流れる電流値の履歴に基づいて、前記鉄筋の径を判別するように構成されていてもよい。
【0006】
本明細書は、別の鉄筋結束機も開示する。前記鉄筋結束機は、送りモータと、前記送りモータを流れる電流を検出する電流センサと、前記送りモータの動作を制御する制御ユニットを備えていてもよい。前記鉄筋結束機は、前記送りモータの駆動により、鉄筋の周りにワイヤを送り出す送り出し工程と、前記ワイヤの先端近傍を把持する把持工程と、前記送りモータの駆動により、前記ワイヤを引き戻す引き戻し工程と、前記ワイヤを切断する切断工程と、前記ワイヤを捩る捩り工程を実行可能であってもよい。前記制御ユニットは、前記引き戻し工程において、停止条件が満たされた場合に、前記送りモータを停止するように構成されていてもよい。前記制御ユニットは、前記引き戻し工程における前記送りモータを流れる電流値の履歴に応じて、前記停止条件を変更するように構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】実施例の鉄筋結束機2の内部構成を示す側面図である。
【
図3】実施例の鉄筋結束機2の送り機構24の斜視図である。
【
図4】実施例の鉄筋結束機2の案内機構26の近傍の断面図である。
【
図5】実施例の鉄筋結束機2について、被操作部材72が初期位置にある状態の保持部82と切断機構28との側面図である。
【
図6】実施例の鉄筋結束機2について、被操作部材72が切断位置にある状態の保持部82と切断機構28との側面図である。
【
図7】実施例の鉄筋結束機2の捩り機構30の斜視図である。
【
図8】実施例の鉄筋結束機2のスクリューシャフト84と、クランプガイド86と、挟持部材90と、付勢部材92との上面図である。
【
図9】実施例の鉄筋結束機2のアウタスリーブ102がクランプガイド86に対して前進位置にある状態の保持部82の断面斜視図である。
【
図10】実施例の鉄筋結束機2の上側挟持部材114の上面図である。
【
図11】実施例の鉄筋結束機2の下側挟持部材116の上面図である。
【
図12】実施例の鉄筋結束機2の挟持部材90の前面図である。
【
図13】実施例の鉄筋結束機2について、案内ピン110が上側案内孔118aと下側案内孔126aとの中間位置にある状態の挟持部材90と案内ピン110との断面斜視図である。
【
図14】実施例の鉄筋結束機2について、案内ピン110が上側案内孔118aと下側案内孔126aとの後部にある状態の挟持部材90と案内ピン110との断面斜視図である。
【
図15】実施例の鉄筋結束機2の回転制限部150の斜視図である。
【
図16】実施例の鉄筋結束機2について、アウタスリーブ102の段差部102aとクランプガイド86の段差部86cとが当接している状態の保持部82の断面斜視図である。
【
図17】実施例の鉄筋結束機2について、ベース部材152と付勢部材162、164とを外した状態の保持部82と回転制限部150との側面図である。
【
図18】実施例の鉄筋結束機2の送りモータ32および捩りモータ76の分解斜視図である。
【
図19】実施例の鉄筋結束機2の送りモータ32および捩りモータ76のステータ174,186とセンサ基板178,190の前面図である。
【
図20】実施例の鉄筋結束機2の制御基板20の回路構成を示す図である。
【
図21】実施例の鉄筋結束機2のインバータ回路212,214の回路構成の例を示す図である。
【
図22】実施例の鉄筋結束機2のモータ制御信号出力先切換回路204の回路構成の例を示す図である。
【
図23】実施例の鉄筋結束機2のモータ制御信号出力先切換回路204の回路構成の別の例を示す図である。
【
図24】実施例の鉄筋結束機2のモータ制御信号出力先切換回路204の回路構成のさらに別の例を示す図である。
【
図25】実施例の鉄筋結束機2のブレーキ回路218,220の回路構成の例を示す図である。
【
図26】実施例の鉄筋結束機2のモータ回転信号入力元切換回路206の回路構成の例を示す図である。
【
図27】実施例の鉄筋結束機2のモータ回転信号入力元切換回路206の回路構成の別の例を示す図である。
【
図28】実施例の鉄筋結束機2のモータ回転信号入力元切換回路206の回路構成のさらに別の例を示す図である。
【
図29】実施例の鉄筋結束機2のMCU202が行う処理のフローチャートである。
【
図30】
図29のS2の送りモータ第1駆動処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図31】
図29のS4の捩りモータ第1駆動処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図32】
図29のS6の送りモータ第2駆動処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図33】実施例の鉄筋結束機2の引き戻し工程における送りモータ32を流れる電流値Iの経時的な変化の例を示すグラフである。
【
図34】実施例の鉄筋結束機2の引き戻し工程において、鉄筋径が大きい場合と、鉄筋径が小さい場合の、ワイヤWと鉄筋Rの関係を模式的に示す図である。
【
図35】
図29のS8の捩りモータ第2駆動処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図36】
図29のS10の捩りモータ第3駆動処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の代表的かつ非限定的な具体例について、図面を参照して以下に詳細に説明する。この詳細な説明は、本発明の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。また、開示された追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善された鉄筋結束機を提供するために、他の特徴や発明とは別に、又は共に用いることができる。
【0009】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本発明を実施する際に必須のものではなく、特に本発明の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、以下の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、請求の範囲に記載されるものの様々な特徴は、本発明の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0010】
本明細書及び/又は請求の範囲に記載された全ての特徴は、実施例及び/又は請求の範囲に記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびに請求の範囲に記載された特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびに請求の範囲に記載された特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
【0011】
1つまたはそれ以上の実施形態において、鉄筋結束機は、送りモータと、前記送りモータを流れる電流を検出する電流センサと、前記送りモータの動作を制御する制御ユニットを備えていてもよい。前記鉄筋結束機は、前記送りモータの駆動により、鉄筋の周りにワイヤを送り出す送り出し工程と、前記ワイヤの先端近傍を把持する把持工程と、前記送りモータの駆動により、前記ワイヤを引き戻す引き戻し工程と、前記ワイヤを切断する切断工程と、前記ワイヤを捩る捩り工程を実行可能であってもよい。前記制御ユニットは、前記引き戻し工程における前記送りモータを流れる電流値の履歴に基づいて、前記鉄筋の径を判別するように構成されていてもよい。
【0012】
上記の引き戻し工程では、鉄筋の周りに送り出されたワイヤが縮径して鉄筋に密着する。この際に、ワイヤが鉄筋への密着を開始するタイミングや、ワイヤが鉄筋への密着を完了するタイミングで、送りモータを流れる電流値の挙動に変化が生じる。鉄筋の径が大きい場合には、ワイヤが鉄筋への密着を開始するタイミングや、ワイヤが鉄筋への密着を完了するタイミングは早くなる。逆に、鉄筋の径が小さい場合には、ワイヤが鉄筋への密着を開始するタイミングや、ワイヤが鉄筋への密着を完了するタイミングは遅くなる。上記の鉄筋結束機では、ワイヤの引き戻し工程における送りモータを流れる電流値の挙動が、鉄筋の径に応じて異なるものとなることに着目して、送りモータを流れる電流値の履歴に基づいて、鉄筋の径を判別する。このような構成とすることによって、鉄筋の径を判別するための判別機構を設けることなく、鉄筋の径に応じた動作を実行可能とすることができる。
【0013】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記制御ユニットは、前記引き戻し工程において、前記送りモータの始動電流のピークを越えた後、前記送りモータを流れる前記電流値の時間変化率を算出し、前記時間変化率が時間変化率しきい値に達するタイミングに基づいて、前記鉄筋の径を判別するように構成されていてもよい。
【0014】
引き戻し工程において、送りモータを流れる電流値は、始動電流のピークまで増加した後、徐々に減少していく。その後、送りモータを流れる電流値は、ワイヤが鉄筋への密着を開始するタイミングで減少から増加に転じ、ワイヤが鉄筋への密着を完了するタイミングで再び増加から減少に転じる。上記の構成によれば、送りモータを流れる電流値が、始動電流のピークを越えた後、減少から増加に転じるタイミング、すなわちワイヤが鉄筋への密着を開始するタイミングで、鉄筋の径を判別することができる。このような構成とすることで、判別された鉄筋の径に応じて、引き戻し工程の後半の動作を実行することができる。
【0015】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記制御ユニットは、前記引き戻し工程において、停止条件が満たされた場合に、前記送りモータを停止するように構成されていてもよい。前記制御ユニットは、前記判別された前記鉄筋の径に応じて、前記停止条件を変更するように構成されていてもよい。
【0016】
引き戻し工程においては、鉄筋の径が大きい場合には、ワイヤが鉄筋への密着を完了するタイミングが早いので、それだけ送りモータを早く停止する必要がある。逆に、鉄筋の径が小さい場合には、ワイヤが鉄筋への密着を完了するタイミングが遅く、それだけ送りモータを遅く停止する必要がある。上記の構成によれば、判別された鉄筋の径に応じて停止条件を変更するので、適切なタイミングで送りモータを停止させることができる。
【0017】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記制御ユニットは、前記引き戻し工程において、前記送りモータの前記始動電流の前記ピークを越えた後の前記送りモータを流れる前記電流値の最小値を特定し、前記送りモータを流れる前記電流値の前記最小値からの増加量を算出するように構成されていてもよい。前記停止条件は、前記増加量が増加量しきい値に達することを含んでいてもよい。前記制御ユニットは、前記判別された前記鉄筋の径に応じて、前記増加量しきい値を変更するように構成されていてもよい。
【0018】
引き戻し工程において、鉄筋の径が大きい場合には、ワイヤが鉄筋への密着を開始するタイミングが早いため、送りモータを流れる電流値は始動電流のピークを越えた後それほど低下しない。このため、始動電流のピークを越えた後の送りモータを流れる電流値の最小値は比較的大きく、ワイヤが鉄筋への密着を完了するまでの電流値の増加量は小さなものとなる。逆に、鉄筋の径が小さい場合には、ワイヤが鉄筋への密着を開始するタイミングが遅いため、送りモータを流れる電流値は始動電流のピークを越えた後に大きく低下する。このため、始動電流のピークを越えた後の送りモータを流れる電流値の最小値は比較的小さく、ワイヤが鉄筋への密着を完了するまでの電流値の増加量は大きなものとなる。上記の構成によれば、判別された鉄筋の径に応じて増加量しきい値を変更するので、適切なタイミングで送りモータを停止させることができる。
【0019】
1つまたはそれ以上の実施形態において、鉄筋結束機は、送りモータと、前記送りモータを流れる電流を検出する電流センサと、前記送りモータの動作を制御する制御ユニットを備えていてもよい。前記鉄筋結束機は、前記送りモータの駆動により、鉄筋の周りにワイヤを送り出す送り出し工程と、前記ワイヤの先端近傍を把持する把持工程と、前記送りモータの駆動により、前記ワイヤを引き戻す引き戻し工程と、前記ワイヤを切断する切断工程と、前記ワイヤを捩る捩り工程を実行可能であってもよい。前記制御ユニットは、前記引き戻し工程において、停止条件が満たされた場合に、前記送りモータを停止するように構成されていてもよい。前記制御ユニットは、前記引き戻し工程における前記送りモータを流れる電流値の履歴に応じて、前記停止条件を変更するように構成されていてもよい。
【0020】
上記の鉄筋結束機では、ワイヤの引き戻し工程における送りモータを流れる電流値の挙動が、鉄筋の径に応じて異なるものとなることに着目して、送りモータを流れる電流値の履歴に基づいて、送りモータの停止条件を変更する。このような構成とすることによって、鉄筋の径を判別するための判別機構を設けることなく、鉄筋の径に応じた動作を実行可能とすることができる。
【0021】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記制御ユニットは、前記引き戻し工程において、前記送りモータの始動電流のピークを越えた後、前記送りモータを流れる前記電流値の時間変化率を算出し、前記時間変化率が時間変化率しきい値に達するタイミングに応じて、前記停止条件を変更するように構成されていてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、送りモータを流れる電流値が、始動電流のピークを越えた後、減少から増加に転じるタイミング、すなわちワイヤが鉄筋への密着を開始するタイミングで、送りモータの停止条件を変更することができる。
【0023】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記制御ユニットは、前記引き戻し工程において、前記送りモータの前記始動電流の前記ピークを越えた後の前記送りモータを流れる前記電流値の最小値を特定し、前記送りモータを流れる前記電流値の前記最小値からの増加量を算出するように構成されていてもよい。前記停止条件は、前記増加量が増加量しきい値に達することを含んでいてもよい。前記制御ユニットは、前記時間変化率が前記時間変化率しきい値に達する前記タイミングに応じて、前記増加量しきい値を変更するように構成されていてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、送りモータを流れる電流値の時間変化率が時間変化率しきい値に達するタイミングに応じて増加量しきい値を変更するので、適切なタイミングで送りモータを停止させることができる。
【0025】
(実施例)
図1に示すように、鉄筋結束機2は、複数の鉄筋RをワイヤWで結束する鉄筋結束機である。例えば、鉄筋結束機2は、直径が15mmよりも小さい(例えば直径が10mmまたは13mmの)小径の鉄筋Rや、直径が15mm以上であり25mmよりも小さい(例えば直径が16mmまたは22mmの)中径の鉄筋Rや、直径が25mm以上の(例えば直径が25mmまたは32mmの)大径の鉄筋RをワイヤWで結束することができる。ワイヤWの直径は、例えば、0.5mmから2.0mmの間の値である。
【0026】
鉄筋結束機2は、本体4と、グリップ6と、バッテリ取付部10と、バッテリBと、リールホルダ12と、を備えている。グリップ6は、作業者が把持するための部材である。グリップ6は、本体4の後側下部に設けられている。グリップ6は、本体4と一体的に形成されている。グリップ6の前側上部には、トリガ8が取り付けられている。グリップ6の内部には、トリガ8が押し込まれたか否かを検出するトリガスイッチ9(
図2参照)が収容されている。バッテリ取付部10は、グリップ6の下部に設けられている。バッテリ取付部10は、グリップ6と一体的に形成されている。バッテリBは、バッテリ取付部10に着脱可能に取り付けられる。バッテリBは、例えばリチウムイオンバッテリのである。リールホルダ12は、本体4の下方に配置されている。リールホルダ12は、グリップ6よりも前方に配置されている。なお、本実施例では、後述する捩り機構30の長手方向を前後方向と呼び、前後方向に直交する方向を上下方向と呼び、前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向と呼ぶ。
【0027】
リールホルダ12は、ホルダハウジング14と、カバー部材16と、を備えている。ホルダハウジング14は、本体4の前側下部と、バッテリ取付部10の前部に取り付けられている。カバー部材16は、ホルダハウジング14の下部の回動軸14a周りに回動可能に、ホルダハウジング14に取り付けられている。ホルダハウジング14とカバー部材16とによって、収容空間12a(
図2参照)が画定されている。収容空間12aには、ワイヤWが巻回されているリール18が配置されている。即ち、リールホルダ12は、リール18を内部に収容している。
【0028】
リールホルダ12の後面には、表示部12bと、操作部12cが設けられている。操作部12cは、鉄筋結束機2の結束力等の各種の設定に関するユーザからの操作を受け入れる。表示部12bは、現在の鉄筋結束機2の設定に関する情報を表示可能である。
【0029】
図2に示すように、鉄筋結束機2は、制御基板20と、表示基板22を備えている。制御基板20は、バッテリ取付部10に収容されている。制御基板20は、鉄筋結束機2の動作を制御する。表示基板22は、リールホルダ12の後部に収容されている。表示基板22は、図示省略の配線によって制御基板20に接続されている。表示基板22は、表示部12bに向けて発光する設定表示LED22a(
図20参照)と、ユーザによる操作部12cへの操作を検知する設定スイッチ22b(
図20参照)を備えている。
【0030】
鉄筋結束機2は、送り機構24と、案内機構26と、切断機構28と、捩り機構30と、を備えている。送り機構24は、本体4の前下部に収容されている。送り機構24は、ワイヤWを案内機構26に送り出す送り出し動作と、ワイヤWを案内機構26から引き戻す引き戻し動作を実行する。案内機構26は、本体4の前部に配置されている。案内機構26は、送り機構24から送り出されたワイヤWを鉄筋Rの周りに円環状に案内する。切断機構28は、本体4の下部に収容されている。切断機構28は、鉄筋Rの周りに巻回された状態のワイヤWを切断する切断動作を実行する。捩り機構30は、本体4に収容されている。捩り機構30は、鉄筋Rの周りのワイヤWを捩る捩り動作を実行する。
【0031】
(送り機構24の構成)
図3に示すように、送り機構24は、送りモータ32と、減速部34と、送り部36を備えている。送りモータ32は、図示省略の配線によって制御基板20に接続されている。送りモータ32は、バッテリBから供給される電力によって駆動する。送りモータ32は、制御基板20によって駆動を制御される。送りモータ32は、減速部34を介して、送り部36の駆動ギヤ42に接続している。減速部34は、例えば遊星歯車機構によって、送りモータ32の回転を減速して駆動ギヤ42に伝達する。
【0032】
本実施例において、送りモータ32は、ブラシレスモータである。
図18に示すように、送りモータ32は、コイル170が巻回されたティース172を備えるステータ174と、ステータ174の内部に配置されたロータ176と、ステータ174に固定されたセンサ基板178を備えている。ステータ174は、磁性体から構成されている。ロータ176は、周方向に磁極が並んで配置された永久磁石を備えている。
図19に示すように、センサ基板178には、ホールセンサ180が設けられている。ホールセンサ180は、第1ホール素子180a、第2ホール素子180bおよび第3ホール素子180cを備えている。第1ホール素子180a、第2ホール素子180bおよび第3ホール素子180cは、ロータ176からの磁力を検出する。ホールセンサ180は、センサ基板178において、送りモータ32の正回転に対して電気角が25°の進角となり、送りモータ32の逆回転に対して電気角が25°の遅角となる位置に配置されている。なお、本実施例においては、制御基板20は、送りモータ32の逆回転に対しては、電気角60°ごとのパターンを1段階ずらして出力する。このため、送りモータ32の正回転に対しては、25°の進角で制御が行われ、送りモータ32の逆回転に対しては、60°-25°=35°の進角で制御が行われる。
【0033】
図3に示すように、送り部36は、ベース部材38と、ガイド部材40と、駆動ギヤ42と、第1ギヤ44と、第2ギヤ46と、ギヤ支持部材48と、付勢部材52と、を備えている。ガイド部材40は、ベース部材38に固定されている。ガイド部材40は、ガイド孔40aを有している。ガイド孔40aは、下端部が広く上端部が狭いテーパ形状を有している。ガイド孔40aには、ワイヤWが挿通される。
【0034】
駆動ギヤ42は、減速部34に連結している。第1ギヤ44は、ベース部材38に回転可能に支持されている。第1ギヤ44は、駆動ギヤ42と噛み合っている。第1ギヤ44は、駆動ギヤ42の回転により回転する。第1ギヤ44は、溝44aを有する。溝44aは、第1ギヤ44の外周面において、第1ギヤ44の回転方向に沿う方向に形成されている。第2ギヤ46は、第1ギヤ44と噛み合っている。第2ギヤ46は、ギヤ支持部材48に回転可能に支持されている。第2ギヤ46は、溝46aを有している。溝46aは、第2ギヤ46の外周面において、第2ギヤ46の回転方向に沿う方向に形成されている。ギヤ支持部材48は、揺動軸48aを介してベース部材38に揺動可能に支持されている。付勢部材52は、第2ギヤ46が第1ギヤ44に近づく方向に、ギヤ支持部材48を付勢する。これにより、第2ギヤ46が第1ギヤ44に押し当てられる。この結果、第1ギヤ44の溝44aと第2ギヤ46の溝46aとの間にワイヤWが挟持される。ギヤ支持部材48が付勢部材52の付勢力に抗して押し込まれると、第2ギヤ46が第1ギヤ44から離れる。これにより、リール18を交換する場合、第1ギヤ44の溝44aと第2ギヤ46の溝46aとの間にワイヤWを容易に通すことができる。
【0035】
ワイヤWが第1ギヤ44の溝44aと第2ギヤ46の溝46aとの間に挟持された状態で送りモータ32が回転することによって、ワイヤWが移動する。本実施例では、送りモータ32が逆回転すると、駆動ギヤ42が
図3に示す方向D1に回転して、ワイヤWが案内機構26に向けて送り出される。送りモータ32が正回転すると、駆動ギヤ42が
図3に示す方向D2に回転して、ワイヤWが案内機構26から引き戻される。
【0036】
(案内機構26の構成)
図4に示すように、案内機構26は、ワイヤガイド56と、上側案内アーム58と、下側案内アーム60を備えている。ワイヤガイド56の内部には、送り機構24から送り出された後のワイヤWが通過する。ワイヤガイド56の内部には、突起部56aが形成されている。
【0037】
上側案内アーム58は、本体4の前上部に設けられている。上側案内アーム58は、上側案内通路58aを有する。上側案内通路58aには、ワイヤガイド56の内部を通過したワイヤWが通過する。上側案内通路58aには、第1案内ピン61と第2案内ピン62とが配置されている。ワイヤWがワイヤガイド56の突起部56aと、第1案内ピン61と、第2案内ピン62とに接触しながら上側案内通路58aを通過すると、ワイヤWに下向きの巻きぐせが付与される。
【0038】
下側案内アーム60は、本体4の前下部に設けられている。下側案内アーム60は、下側案内通路60aを有する。下側案内通路60aには、上側案内通路58aを通過したワイヤWが通過する。
図4では、下側案内アーム60と捩り機構30とによって隠れて見えないワイヤWの一部が、破線によって図示されている。
【0039】
(切断機構28の構成)
図5に示すように、切断機構28は、切断部材66と、リンク部68と、を備えている。切断部材66は、ワイヤWを切断する部材である。
図4に示すように、切断部材66は、送り機構24から案内機構26に送り出されるワイヤWが通過する通路上に配置されている。ワイヤWは、切断部材66の内部を通過する。切断部材66は、本体4に対して回動軸66a(
図5参照)周りに回動可能に支持されている。切断部材66が
図4に示す方向D3に回転すると、切断部材66によってワイヤWが切断される。
【0040】
図5に示すように、リンク部68は、連結部材70と、被操作部材72と、付勢部材74と、を備えている。連結部材70は、切断部材66と被操作部材72とを連結する。被操作部材72は、本体4に対して回動軸72a周りに回動可能に支持されている。被操作部材72は、通常時、付勢部材74によって、初期位置に付勢されている。付勢部材74による付勢力よりも大きい力が被操作部材72に加わると、被操作部材72は、回動軸72aの周りを回動する。これにより、連結部材70が前方に向けて移動し、切断部材66が回動軸66aの周りを回動する。被操作部材72が回動軸72aの周りを初期位置から
図6に示される所定の位置まで回動すると、切断部材66の回動によりワイヤWが切断される。以下では、前記状態での被操作部材72の位置を、切断位置と呼ぶ。
【0041】
(捩り機構30の構成)
図7に示すように、捩り機構30は、捩りモータ76と、減速部78と、保持部82と、を備えている。捩りモータ76は、図示省略の配線によって制御基板20に接続されている。捩りモータ76は、バッテリBから供給される電力によって駆動する。捩りモータ76は、制御基板20によって駆動を制御される。捩りモータ76は、減速部78を介して、保持部82のスクリューシャフト84に接続されている。減速部78は、例えば遊星歯車機構によって、捩りモータ76の回転を減速してスクリューシャフト84に伝達する。
【0042】
本実施例において、捩りモータ76は、ブラシレスモータである。本実施例では、捩りモータ76は、送りモータ32と同様の構成を備えている。
図18に示すように、捩りモータ76は、コイル182が巻回されたティース184を備えるステータ186と、ステータ186の内部に配置されたロータ188と、ステータ186に固定されたセンサ基板190を備えている。ステータ186は、磁性体から構成されている。ロータ188は、周方向に磁極が並んで配置された永久磁石を備えている。
図19に示すように、センサ基板190には、ホールセンサ192が設けられている。ホールセンサ192は、第1ホール素子192a、第2ホール素子192bおよび第3ホール素子192cを備えている。第1ホール素子192a、第2ホール素子192bおよび第3ホール素子192cは、ロータ188からの磁力を検出する。ホールセンサ192は、センサ基板190において、捩りモータ76の正回転に対して電気角が25°の進角となり、捩りモータ76の逆回転に対して電気角が25°の遅角となる位置に配置されている。なお、本実施例においては、制御基板20は、捩りモータ76の逆回転に対しては、電気角60°ごとのパターンを1段階ずらして出力する。このため、捩りモータ76の正回転に対しては、25°の進角で制御が行われ、捩りモータ76の逆回転に対しては、60°-25°=35°の進角で制御が行われる。
【0043】
本実施例では、捩りモータ76と送りモータ32は、同一の構成を備えている。このため、ステータ174とステータ186には共通の部品が使用されており、ロータ176とロータ188には共通の部品が使用されており、センサ基板178とセンサ基板190には共通の部品が使用されている。
【0044】
図7に示すように、保持部82は、スクリューシャフト84と、クランプガイド86(
図8、
図9参照)と、付勢部材92(
図8、
図9参照)と、スリーブ88と、挟持部材90と、を備えている。
【0045】
スクリューシャフト84は、減速部78に連結している。捩りモータ76が正回転すると、スクリューシャフト84を後方から見て、スクリューシャフト84は左ねじの方向に回転する。捩りモータ76が逆回転すると、スクリューシャフト84を後方から見て、スクリューシャフト84は右ねじの方向に回転する。
【0046】
図8に示すように、スクリューシャフト84は、太径部84aと、細径部84bと、を備えている。太径部84aは、スクリューシャフト84の後部に位置しており、細径部84bは、スクリューシャフト84の前部に位置している。太径部84aの外周面には、螺旋状のボール溝84cが形成されている。ボール溝84cには、ボール94が嵌合する。太径部84aと細径部84bとの段差には、円環状のワッシャ96が配置されている。細径部84bの前部には、係合溝84dが形成されている。
【0047】
図9に示すように、細径部84bの前部は、クランプガイド86の凹部86aに入り込んでいる。クランプガイド86の係合ピン86bは、スクリューシャフト84の細径部84bの係合溝84dに入り込んでおり、係合溝84dの前側面および後側面と係合可能である。クランプガイド86の外周面には、段差部86cが形成されている。段差部86cよりも後方にあるクランプガイド86の外周面は、段差部86cよりも前方にあるクランプガイド86の外周面よりも大径である。
【0048】
また、細径部84bは、付勢部材92に挿通している。付勢部材92は、ワッシャ96とクランプガイド86との間に配置されている。付勢部材92は、クランプガイド86をワッシャ96から離れる方向に付勢する。
【0049】
スクリューシャフト84とクランプガイド86とは、スリーブ88に挿入されている。スリーブ88は、インナスリーブ100と、アウタスリーブ102と、を備えている。インナスリーブ100には、スクリューシャフト84の太径部84aが挿通されている。インナスリーブ100には、ボール穴(図示省略)が形成されている。ボール穴には、ボール94が嵌合する。インナスリーブ100は、ボール溝84cとボール穴との間に嵌合したボール94を介して、即ち、ボールねじを介してスクリューシャフト84と連結している。ボール溝84cが形成されている範囲では、スクリューシャフト84がインナスリーブ100に対して回転すると、インナスリーブ100は、スクリューシャフト84に対して前後方向に移動する。
【0050】
アウタスリーブ102には、スクリューシャフト84とクランプガイド86とインナスリーブ100とが挿入されている。アウタスリーブ102は、前後方向に延びる円筒形状を有する。アウタスリーブ102の内周面には、段差部102aが形成されている。段差部102aよりも前方にあるアウタスリーブ102の内周面は、段差部102aよりも後方にあるアウタスリーブ102の内周面よりも小径である。アウタスリーブ102は、止めねじ106によって、インナスリーブ100に固定されている。アウタスリーブ102は、インナスリーブ100とともに動作(即ち、移動または回転)する。ボール溝84cが形成されている範囲では、スクリューシャフト84がインナスリーブ100に対して回転すると、アウタスリーブ102は、インナスリーブ100とともに、スクリューシャフト84に対して前後方向に移動する。また、スクリューシャフト84がインナスリーブ100に対して回転すると、アウタスリーブ102は、クランプガイド86に対して前進位置と後進位置との間を移動する。以下では、アウタスリーブ102がクランプガイド86に対して前進位置に向かって(即ち、前方に向かって)移動することを、アウタスリーブ102が前進するといい、アウタスリーブ102がクランプガイド86に対して後退位置に向かって(即ち、後方に向かって)移動することを、アウタスリーブ102が後退するという。
【0051】
保持部82は、支持部材104をさらに備えている。支持部材104は、アウタスリーブ102の外周面を覆っている。支持部材104は、アウタスリーブ102に対して回転可能である。支持部材104は、アウタスリーブ102に対して前後方向に移動可能である。アウタスリーブ102は、支持部材104を介して、本体4に支持されている。
【0052】
挟持部材90は、クランプガイド86の前部に支持されている。挟持部材90は、アウタスリーブ102が備える2個の案内ピン110(
図8参照)によって、アウタスリーブ102に対して移動可能に支持されている。挟持部材90は、ワイヤWを挟持する部材である。挟持部材90は、スクリューシャフト84の回転に連動して開閉する。
【0053】
挟持部材90は、上側挟持部材114と、下側挟持部材116と、を備えている。上側挟持部材114は、下側挟持部材116と上下方向に対向している。
図10に示すように、上側挟持部材114は、上側基部118と、第1上側突部120と、上側連結部121と、第2上側突部122と、を備えている。上側基部118は、クランプガイド86と案内ピン110とに支持される部分である。上側基部118は、2個の上側案内孔118aを備えている。2個の上側案内孔118aは、互いに同一の形状を有している。2個の上側案内孔118aは、前後方向に延びており、上側基部118を上方から見たとき、後方から前方に向かって右側に傾斜している。
【0054】
第1上側突部120は、上側基部118の左前端部から前方に向かって延びている。上側連結部121は、第1上側突部120の中央右端部から右方向に向かって延びている。第2上側突部122は、上側連結部121から前方に向かって延びている。第1上側突部120と第2上側突部122とは、左右方向に離れている。第1上側突部120と第2上側突部122との間には、第1ワイヤ通路124が形成されている。第1ワイヤ通路124には、送り機構24から送り出された後であって、案内機構26の上側案内通路58aに達する前のワイヤWが通過する。
【0055】
挟持部材90は、
図12に示す第1抜け止め部123をさらに備えている。第1抜け止め部123は、上側挟持部材114と一体的に形成されている。第1抜け止め部123は、第2上側突部122の前端部から下方に向かって延びている。第1抜け止め部123は、前後方向に関して、下側挟持部材116と部分的に重なっている。第1抜け止め部123は、挟持部材90によって挟持されたワイヤWが挟持部材90から抜け出ることを抑制する。
【0056】
図11に示すように、下側挟持部材116は、下側基部126と、第1下側突部128と、下側連結部129と、第2下側突部130と、を備えている。下側基部126は、クランプガイド86と案内ピン110とに支持される部分である。下側基部126は、2個の下側案内孔126aを備えている。下側基部126を上方から見たときの下側案内孔126aの形状は、左右方向に直交する平面に対して、上側基部118を上方から見たときの上側案内孔118aの形状と面対称の関係にある。即ち、2個の下側案内孔126aは、前後方向に延びており、下側基部126を上方から見たとき、後方から前方に向かって左側に傾斜している。
【0057】
第1下側突部128は、下側基部126の右前端部から前方に向かって延びている。下側連結部129は、第1下側突部128の中央左端部から左方に向かって延びている。第2下側突部130は、下側連結部129の中央前端部から前方に向かって延びている。第1下側突部128と第2下側突部130とは、左右方向に離れている。第1下側突部128と第2下側突部130との間には、第2ワイヤ通路132が形成されている。第2ワイヤ通路132には、案内機構26の下側案内通路60aを通過した後のワイヤWが通過する。
【0058】
挟持部材90は、第2抜け止め部131をさらに備えている。第2抜け止め部131は、下側挟持部材116と一体的に形成されている。第2抜け止め部131は、第2下側突部130の左前端部から左方に延びている。第2抜け止め部131は、挟持部材90によって挟持されたワイヤWが挟持部材90から抜け出ることを抑制する。第2抜け止め部131と下側連結部129とは、前後方向に離れている。第2抜け止め部131と下側連結部129との間には、補助通路134が形成されている。
【0059】
図8に示すように、上側挟持部材114と下側挟持部材116とが上下方向に重なり合っている状態で、アウタスリーブ102の案内ピン110は、上側案内孔118aと下側案内孔126aとのそれぞれに挿通されている。アウタスリーブ102がクランプガイド86に対して前後方向に移動すると、案内ピン110は、上側案内孔118a内と下側案内孔126a内を前後方向に移動する。案内ピン110が上側案内孔118aと下側案内孔126aの前部に配置されている場合、
図12に示すように、第1ワイヤ通路124と第2ワイヤ通路132とは開いている。このときの挟持部材90の状態を、全開状態と呼ぶ。
【0060】
アウタスリーブ102がクランプガイド86に対して後退すると、案内ピン110は、上側案内孔118a内と下側案内孔126a内を後方に向かって移動する。上側挟持部材114がクランプガイド86に対して右方向に向かって動くと、下側挟持部材116がクランプガイド86に対して左方向(即ち、上側挟持部材114が移動する方向と反対の方向)に向かって動く。上側挟持部材114が右方向に向かって動く距離は、下側挟持部材116が左方向に向かって動く距離と同一である。挟持部材90を上下方向に見たとき、上側挟持部材114と下側挟持部材116とは、互いに近接する方向に動く。
図13に示すように、案内ピン110が上側案内孔118a内と下側案内孔126a内を中間位置まで移動すると、第2ワイヤ通路132は、第2上側突部122によって塞がれる。一方、第1ワイヤ通路124は、第2下側突部130に形成された補助通路134によって、開いている。このときの挟持部材90の状態を、半開状態と呼ぶ。第2ワイヤ通路132にワイヤWが配置されていた場合、ワイヤWは、第2上側突部122と第1下側突部128との間の第1挟持箇所P1に挟持されて固定される。以下では、第1挟持箇所P1によって挟持されるワイヤWの部分を、第1被挟持箇所WP1と呼ぶ。半開状態では、第1抜け止め部123は、第1挟持箇所P1を前方から塞いでいる。なお、
図13では、前後方向に関する第1抜け止め部123の位置が破線によって図示されている。第1抜け止め部123は、鉄筋R(
図13に図示省略)と第1挟持箇所P1との間に配置されている。
【0061】
図14に示すように、案内ピン110が上側案内孔118aと下側案内孔126aの後部まで移動すると、第1ワイヤ通路124は、第2下側突部130によって塞がれる。第2ワイヤ通路132は、第2上側突部122によって塞がれたままである。このときの挟持部材90の状態を、全閉状態と呼ぶ。第1ワイヤ通路124にワイヤWが配置されていた場合、ワイヤWの第1被挟持箇所WP1が挟持部材90の第1挟持箇所P1によって把持されたまま、ワイヤWは、第1上側突部120と第2下側突部130との間の第2挟持箇所P2に挟持されて固定される。以下では、第2挟持箇所P2によって挟持されるワイヤWの部分を、第2被挟持箇所WP2と呼ぶ。全閉状態では、第1抜け止め部123は、第1挟持箇所P1を前方から塞いでおり、第2抜け止め部131は、第2挟持箇所P2の直下前方に配置されている。なお、
図14では、第2抜け止め部131の前端部が、第1抜け止め部123を示す破線よりも短ピッチの破線によって図示されている。第2抜け止め部131は、鉄筋R(
図14に図示省略)と第2挟持箇所P2との間に配置される。
【0062】
図7に示すように、保持部82は、プッシュプレート140をさらに備えている。プッシュプレート140は、インナスリーブ100の後端部に形成されているリブ100aと、アウタスリーブ102の後端部との間に挟持されている。プッシュプレート140は、捩りモータ76の駆動に伴うスクリューシャフト84の回転によって、インナスリーブ100とアウタスリーブ102とともに、スクリューシャフト84に対して前後方向に移動する。
【0063】
図5、
図6に示すように、プッシュプレート140は、切断機構28の被操作部材72を操作する。
図5に示すように、通常時、プッシュプレート140は、被操作部材72の突片72bから離れている。このとき、被操作部材72は、初期位置に位置している。プッシュプレート140がスクリューシャフト84の回転によってスクリューシャフト84に対して後退すると、プッシュプレート140は、突片72bに当接して被操作部材72を後方に押す。これにより、被操作部材72が回動軸72aの周りを回動し、連結部材70が前方に移動し、切断部材66は回動軸66aの周りを回動する。プッシュプレート140は、被操作部材72を操作することによって、切断部材66を操作することができる。
図6に示すように、被操作部材72が切断位置まで回動すると、切断部材66によって切断部材66の内部を通過するワイヤWが切断される。その後、プッシュプレート140がスクリューシャフト84の回転によってスクリューシャフト84に対して前進すると、被操作部材72は、付勢部材74によって付勢され、回動軸72aの周りを初期位置まで回動する。これにより、連結部材70と切断部材66も、
図5に示す状態に戻る。
【0064】
プッシュプレート140には、初期状態検出マグネット140aと、把持検出マグネット140bが設けられている。
図7に示すように、捩り機構30は、初期状態検出マグネット140aからの磁力を検出する初期状態検出センサ136と、把持検出マグネット140bからの磁力を検出する把持検出センサ138を備えている。初期状態検出センサ136と把持検出センサ138は、本体4に対して位置が固定されている。捩り機構30が初期状態にある時に、初期状態検出センサ136は初期状態検出マグネット140aと対向して配置される。このため、初期状態検出センサ136は、捩り機構30が初期状態にあるか否かを検出することができる。捩り機構30において、挟持部材90が半開状態にある時、すなわち挟持部材90がワイヤWの前端を保持した時に、把持検出センサ138は把持検出マグネット140bと対向して配置される。このため、把持検出センサ138は、捩り機構30において挟持部材90がワイヤWの前端を保持した状態にあるか否かを検出することができる。
【0065】
図7に示すように、アウタスリーブ102の後部外周面には、フィン144が形成されている。フィン144は、前後方向に延びている。フィン144は、アウタスリーブ102の回転を許容または禁止する。本実施例では、アウタスリーブ102の外周面において、8個のフィンが、互いに45度の間隔を有して配置されている。また、本実施例では、フィン144は、7個のショートフィン146と、1個のロングフィン148と、を備えている。ロングフィン148の前後方向の長さは、ショートフィン146の前後方向の長さよりも長い。前後方向において、ロングフィン148の前端部の位置は、ショートフィン146の前端部の位置と同一である。一方、前後方向において、ロングフィン148の後端部は、ショートフィン146の後端部よりも後方にある。
【0066】
鉄筋結束機2は、
図15に示す回転制限部150をさらに備えている。
図17に示すように、回転制限部150は、アウタスリーブ102に近接する位置に配置されている。回転制限部150は、フィン144と協働することにより、アウタスリーブ102の回転を許容または禁止する。
図15に示すように、回転制限部150は、ベース部材152と、上側ストッパ154と、下側ストッパ156と、揺動軸158、160と、付勢部材162、164と、を備えている。ベース部材152は、本体4に対して固定されている。上側ストッパ154は、揺動軸158を介して、ベース部材152に揺動可能に支持されている。上側ストッパ154は、規制片154aを備えている。規制片154aは、上側ストッパ154の下部に位置している。付勢部材162は、規制片154aを外側に開く方向(即ち、規制片154aがベース部材152から離れる方向)に付勢している。
【0067】
スクリューシャフト84を後方から見て、スクリューシャフト84が右ねじの方向に回転する場合、ショートフィン146とロングフィン148とは、規制片154aを押し込む。このため、上側ストッパ154は、アウタスリーブ102の回転を禁止しない。一方、スクリューシャフト84を後方から見て、スクリューシャフト84が左ねじの方向に回転する場合、ショートフィン146とロングフィン148とは、アウタスリーブ102の回転方向に規制片154aと当接する。このため、上側ストッパ154は、アウタスリーブ102の回転を禁止する。スクリューシャフト84を後方から見て、スクリューシャフト84が右ねじの方向に回転する場合は、捩り機構30が鉄筋Rの周りのワイヤWを捩り終わり、初期状態に復帰する場合に該当する。また、スクリューシャフト84を後方から見て、スクリューシャフト84が左ねじの方向に回転する場合は、捩り機構30が鉄筋Rの周りのワイヤWを挟持して捩る場合に該当する。
【0068】
下側ストッパ156は、揺動軸160を介して、ベース部材152に揺動可能に支持されている。下側ストッパ156は、規制片156aを備えている。規制片156aは、下側ストッパ156の上部に位置している。規制片156aは、規制片154aと対向している。規制片156aの後端部は、規制片154aの後端部よりも後方に配置されている。規制片156aの前端部は、規制片154aの前端部よりも後方に配置されている。付勢部材164は、規制片156aを外側に開く方向(即ち、規制片156aがベース部材152から離れる方向)に付勢している。
【0069】
スクリューシャフト84を後方から見て、スクリューシャフト84が右ねじの方向に回転する場合、ショートフィン146とロングフィン148とは、アウタスリーブ102の回転方向に規制片156aと当接する。このため、下側ストッパ156は、アウタスリーブ102の回転を禁止する。一方、スクリューシャフト84を後方からみて、スクリューシャフト84が左ねじの方向に回転する場合、ショートフィン146とロングフィン148とは、規制片156aを押し込む。このため、下側ストッパ156は、アウタスリーブ102の回転を禁止しない。
【0070】
なお、鉄筋結束機2の機械的な構成については、上記の構成に種々の変更を加えてもよい。例えば、鉄筋結束機2において、リールホルダ12を、本体4の後部に配置してもよく、送り機構24を、本体4のリールホルダ12と案内機構26の間に配置してもよい。この場合、リール18と、送りモータ32と、捩りモータ76は、いずれもグリップ6よりも上方に配置される。あるいは、制御基板20や表示基板22を、本体4の内部に収容してもよい。この場合、制御基板20や表示基板22は、グリップ6よりも上方に配置される。
【0071】
(鉄筋結束機2の動作)
次に、
図4、
図9、
図16、
図17を参照して、鉄筋結束機2が鉄筋RをワイヤWで結束する動作を説明する。鉄筋結束機2が鉄筋RをワイヤWで結束する際には、送り出し工程と、先端保持工程と、引き戻し工程と、後端保持工程と、切断工程と、引っ張り工程と、捩り工程と、が順に実行される。ここで、鉄筋結束機2が鉄筋RをワイヤWで結束する動作を実行する前の初期状態では、
図9に示すように、スクリューシャフト84の前部のみがインナスリーブ100の内部に配置されている。また、ロングフィン148は、上側ストッパ154の規制片154aと下側ストッパ156の規制片156aとの間に挟まれている。また、アウタスリーブ102は、クランプガイド86に対して前進位置にある。2個の案内ピン110が2個の上側案内孔118aと2個の下側案内孔126aの前部に位置しており、挟持部材90は全開状態にある。
図5に示すように、プッシュプレート140は、被操作部材72の突片72bから離れており、被操作部材72は、初期位置にある。
【0072】
(送り出し工程)
初期状態から、送りモータ32が逆回転すると、送り機構24は、リール18に巻回されているワイヤWを所定長さだけ送り出す。ワイヤWの先端部は、切断部材66の内部、第1ワイヤ通路124、上側案内通路58a、下側案内通路60a、第2ワイヤ通路132を順番に通過する。これにより、
図4に示すように、ワイヤWが鉄筋Rの周りに円環状に巻き回される。
【0073】
(先端保持工程)
この状態から、捩りモータ76が正回転すると、スクリューシャフト84が左ねじの方向に回転する。ロングフィン148は、アウタスリーブ102の回転方向に上側ストッパ154の規制片154aと当接しており、アウタスリーブ102の左ねじの方向の回転が禁止される。このため、アウタスリーブ102は、インナスリーブ100とともにクランプガイド86に対して後退する。アウタスリーブ102の後退に伴い、2個の案内ピン110は、2個の上側案内孔118a内と2個の下側案内孔126a内を前部から中間位置まで移動する。挟持部材90は、全開状態から半開状態に変わり、第2上側突部122と第1下側突部128との間の第1挟持箇所P1に、ワイヤWの先端近傍部(即ち、第1被挟持箇所WP1)が挟持されて固定される。これにより、ワイヤWの先端近傍部が挟持部材90によって保持される。この状態では、第1抜け止め部123は、挟持部材90の第1挟持箇所P1を前方から塞いでいる。
【0074】
(引き戻し工程)
この状態から、捩りモータ76が停止し、送りモータ32が正回転すると、送り部36は、鉄筋Rの周りのワイヤWを引き戻す。ワイヤWの先端部近傍は、挟持部材90によって保持されており、鉄筋Rの周りのワイヤWが縮径する。
【0075】
(後端保持工程)
この状態から、捩りモータ76が再び正回転すると、アウタスリーブ102は、インナスリーブ100とともにクランプガイド86に対してさらに後退する。アウタスリーブ102の後退に伴い、2個の案内ピン110は、2個の上側案内孔118a内と2個の下側案内孔126a内を中間位置から後部まで移動する。挟持部材90は、半開状態から全閉状態に変わり、第1上側突部120と第2下側突部130との間の第2挟持箇所P2に、ワイヤWの後端近傍部(即ち、第2被挟持箇所WP2)が挟持されて固定される。これにより、ワイヤWの後端近傍部が挟持部材90によって保持される。この状態では、第1抜け止め部123は、挟持部材90の第1挟持箇所P1を前方から塞いでおり、第2抜け止め部131は、挟持部材90の第2挟持箇所P2の直下に配置されている。また、第1抜け止め部123と第2抜け止め部131とは、鉄筋RとワイヤWとの間に配置されている。
【0076】
(切断工程)
この状態から、捩りモータ76の正回転に伴いアウタスリーブ102がクランプガイド86に対してさらに後退する。
図6に示すように、プッシュプレート140は、アウタスリーブ102とともに後退しており、被操作部材72の突片72bに当接して後方に向かって押し込む。被操作部材72が回動軸72aの周りを切断位置まで回動すると、切断部材66は、回動軸66aの周りを所定の位置まで回動する。これにより、切断部材66の内部を通過するワイヤWが切断される。鉄筋Rの周りのワイヤWは、挟持部材90によって、ワイヤWの先端部近傍と後端部近傍との2点で保持される。
【0077】
(引っ張り工程)
この状態から、捩りモータ76の正回転に伴いアウタスリーブ102がクランプガイド86に対してさらに後退すると、
図16に示すように、アウタスリーブ102の段差部102aがクランプガイド86の段差部86cに当接する。このため、アウタスリーブ102は、クランプガイド86に対してさらに後退することができず、クランプガイド86と一体となって後退する。これにより、挟持部材90が後退し、即ち、挟持部材90が鉄筋Rから離れる方向に移動し、鉄筋Rの周りのワイヤWが鉄筋Rから離れる方向に引っ張られる。引っ張り工程が実行されている間、第1抜け止め部123は、第1挟持箇所P1の前方を塞いでおり、第2抜け止め部131は、第2挟持箇所P2の直下前方に配置されている。このため、ワイヤWが引っ張られることに伴いワイヤWに付与される張力によって、ワイヤWが挟持部材90に対して前方に移動した場合、ワイヤWの先端近傍部WP1が第1抜け止め部123に当接し、ワイヤWの後端近傍部WP2が第2抜け止め部131に当接する。これにより、ワイヤWは、挟持部材90から抜け出ることなく、鉄筋Rから離れる方向に引っ張られる。
【0078】
(捩り工程)
この状態から、捩りモータ76の正回転に伴いアウタスリーブ102がクランプガイド86とともに後退すると、
図17に示すように、ロングフィン148は、アウタスリーブ102の回転方向に上側ストッパ154の規制片154aと当接しなくなる。これにより、アウタスリーブ102の左ねじの方向の回転が許容される。この状態では、付勢部材92は圧縮されており、クランプガイド86をワッシャ96から離す方向に付勢する付勢力が、付勢部材92からクランプガイド86に付与される。このため、インナスリーブ100のボール穴に嵌合されたボール94と、スクリューシャフト84のボール溝84cとの間に摩擦力が作用する。この結果、クランプガイド86が回転すると、アウタスリーブ102はスクリューシャフト84に対して後退することなく、アウタスリーブ102は、スクリューシャフト84と一体となって左ねじの方向に回転する。これにより、クランプガイド86と挟持部材90とが左ねじの方向に回転し、挟持部材90によって保持されたワイヤWが捩られる。捩り工程が実行されている間、引っ張り工程が実行されている場合と同様に、第1抜け止め部123は、第1挟持箇所P1の前方を塞いでおり、第2抜け止め部131は、第2挟持箇所P2の直下前方に配置されている。このため、ワイヤWが捩られることに伴いワイヤWに付与される張力によって、ワイヤWが挟持部材90に対して前方に移動した場合、ワイヤWの先端近傍部WP1が第1抜け止め部123に当接し、ワイヤWの後端近傍部WP2が第2抜け止め部131に当接する。これにより、ワイヤWは、挟持部材90から抜け出ることなく捩られる。
【0079】
(初期状態復帰工程)
その後、捩りモータ76が逆回転して、スクリューシャフト84が右ねじの方向に回転する。アウタスリーブ102が右ねじの方向に回転し、ショートフィン146またはロングフィン148が下側ストッパ156の規制片156aに当接して、アウタスリーブ102の右ねじの方向の回転が禁止される。クランプガイド86をワッシャ96から離す方向に付勢する付勢力が、付勢部材92からクランプガイド86に付与されており、アウタスリーブ102は、クランプガイド86と一体となって前進する。係合ピン86bが係合溝84dの前端部に当接すると、アウタスリーブ102は、クランプガイド86に対して前進する。2個の案内ピン110が、2個の上側案内孔118a内と2個の下側案内孔126a内を後部から前部まで移動すると、挟持部材90が全開状態に変わる。これにより、挟持部材90に保持されていたワイヤWが挟持部材90から外れる。ショートフィン146が規制片156aに当接していた場合、アウタスリーブ102がクランプガイド86に対して前進して、ショートフィン146が規制片156aの前端部よりも前方に移動すると、アウタスリーブ102が再度右ねじの方向に回転する。ロングフィン148が規制片156aに当接すると、アウタスリーブ102の回転が禁止される。これにより、捩り機構30が初期状態に復帰する。
【0080】
(制御基板20の回路構成)
図20に示すように、制御基板20には、制御電源回路200、MCU(Micro Control Unit)202、モータ制御信号出力先切換回路204、モータ回転信号入力元切換回路206、ゲートドライブ回路208、210、インバータ回路212、214、電流検出回路216、ブレーキ回路218、220等が設けられている。
【0081】
制御電源回路200は、バッテリBから供給される電力を所定の電圧に調整して、MCU202、ブレーキ回路218,220等に電力を供給する。
【0082】
図21に示すように、インバータ回路212は、スイッチング素子222a,222b,224a,224b,226a,226bを備えている。スイッチング素子222a,222b,224a,224b,226a,226bは、電界効果トランジスタであり、詳しくは、絶縁ゲートを有するMOSFETである。スイッチング素子222aは、正極側電位線228とモータ電力線232を接続している。スイッチング素子222bは、負極側電位線230とモータ電力線232を接続している。スイッチング素子224aは、正極側電位線228とモータ電力線234を接続している。スイッチング素子224bは、負極側電位線230とモータ電力線234を接続している。スイッチング素子226aは、正極側電位線228とモータ電力線236を接続している。スイッチング素子226bは、負極側電位線230とモータ電力線236を接続している。正極側電位線228は、バッテリBの正極側電源電位に接続されている。負極側電位線230は、電流検出回路216に接続されている。モータ電力線232,234,236は、送りモータ32のコイル170(
図18、
図19参照)に接続されている。
【0083】
同様に、インバータ回路214は、スイッチング素子238a,238b,240a,240b,242a,242bを備えている。スイッチング素子238a,238b,240a,240b,242a,242bは、電界効果トランジスタであり、詳しくは、絶縁ゲートを有するMOSFETである。スイッチング素子238aは、正極側電位線244とモータ電力線248を接続している。スイッチング素子238bは、負極側電位線246とモータ電力線248を接続している。スイッチング素子240aは、正極側電位線244とモータ電力線250を接続している。スイッチング素子240bは、負極側電位線246とモータ電力線250を接続している。スイッチング素子242aは、正極側電位線244とモータ電力線252を接続している。スイッチング素子242bは、負極側電位線246とモータ電力線252を接続している。正極側電位線244は、バッテリBの正極側電源電位に接続されている。負極側電位線246は、電流検出回路216に接続されている。モータ電力線248,250,252は、捩りモータ76のコイル182(
図18、
図19参照)に接続されている。
【0084】
ゲートドライブ回路208は、モータ制御信号UH1,VH1,WH1,UL1,VL1,WL1に応じて、インバータ回路212の各スイッチング素子222a,224a,226a,222b,224b,226bを導通と非導通の間で切り換えることで、送りモータ32の動作を制御する。なお、送りモータ32が回転している時に、ゲートドライブ回路208がスイッチング素子222a,224a,226a,222b,224b,226bを全て非導通とすると、送りモータ32への電力供給が遮断され、送りモータ32は慣性による回転を継続した後、停止する。また、送りモータ32が回転している時に、ゲートドライブ回路208がスイッチング素子222a,224a,226aを非導通とし、スイッチング素子222b,224b,226bを導通とすると、送りモータ32にはいわゆる短絡ブレーキがかかり、送りモータ32の回転は即座に停止する。なお、以下では、UL1,VL1,WL1が全てH電位であるモータ制御信号UH1,VH1,WH1,UL1,VL1,WL1(この場合、スイッチング素子222b,224b,226bは全て導通となる)を、短絡ブレーキ信号ともいう。
【0085】
同様に、ゲートドライブ回路210は、モータ制御信号UH2,VH2,WH2,UL2,VL2,WL2に応じて、インバータ回路214の各スイッチング素子238a,240a,242a,238b,240b,242bを導通と非導通の間で切り換えることで、捩りモータ76の動作を制御する。なお、捩りモータ76が回転している時に、ゲートドライブ回路210がスイッチング素子238a,240a,242a,238b,240b,242bを全て非導通とすると、捩りモータ76への電力供給が遮断され、捩りモータ76は慣性による回転を継続した後、停止する。また、捩りモータ76が回転している時に、ゲートドライブ回路210がスイッチング素子238a,240a,242aを非導通とし、スイッチング素子238b,240b,242bを導通とすると、捩りモータ76にはいわゆる短絡ブレーキがかかり、捩りモータ76の回転は即座に停止する。なお、以下では、UL2,VL2,WL2が全てH電位であるモータ制御信号UH2,VH2,WH2,UL2,VL2,WL2(この場合、スイッチング素子238b,240b,242bは全て導通となる)を、短絡ブレーキ信号ともいう。
【0086】
図20に示すように、電流検出回路216は、インバータ回路212およびインバータ回路214と、バッテリBの負極側電源電位の間に配置されている。電流検出回路216は、インバータ回路212およびインバータ回路214を流れる電流の大きさを検出する。電流検出回路216は、検出された電流値を、MCU202に出力する。
【0087】
MCU202は、モータ制御信号出力ポート202aと、モータ回転信号入力ポート202bと、汎用入出力ポート202cを備えている。モータ制御信号出力ポート202aは、ブラシレスモータへのモータ制御信号UH,VH,WH,UL,VL,WLの出力のために設けられており、汎用入出力ポート202cよりも高速での信号処理が可能である。モータ回転信号入力ポート202bは、ブラシレスモータからのホールセンサ信号Hu,Hv,Hwの入力のために設けられており、汎用入出力ポート202cよりも高速での信号処理が可能である。表示基板22の設定表示LED22aおよび設定スイッチ22b、トリガスイッチ9、初期状態検出センサ136、把持検出センサ138、電流検出回路216は、MCU202の汎用入出力ポート202cに接続されている。
【0088】
MCU202のモータ制御信号出力ポート202aは、モータ制御信号出力先切換回路204に接続されている。モータ制御信号出力先切換回路204は、MCU202の汎用入出力ポート202cから出力される切換信号SWに応じて、モータ制御信号出力ポート202aから出力されるモータ制御信号UH、VH,WH,UL,VL,WLの出力先を、ゲートドライブ回路208とゲートドライブ回路210の間で切り換える。
【0089】
図22に示すように、モータ制御信号出力先切換回路204は、デマルチプレクサ260を備える構成としてもよい。MCU202から出力される切換信号SWがH電位の場合に、デマルチプレクサ260は、MCU202から出力されるモータ制御信号UHを、ゲートドライブ回路208にモータ制御信号UH1として出力する。MCU202から出力される切換信号SWがL電位の場合に、デマルチプレクサ260は、MCU202から出力されるモータ制御信号UHを、ゲートドライブ回路210にモータ制御信号UH2として出力する。なお、ここでは理解を容易にするため、モータ制御信号UHに対応する構成のみ説明したが、モータ制御信号出力先切換回路204は、他のモータ制御信号VH,WH,UL,VL,WLについても同様の構成を備えている。
【0090】
あるいは、
図23に示すように、モータ制御信号出力先切換回路204は、FET262,264と、NOTゲート266を備える構成としてもよい。MCU202から出力される切換信号SWがH電位の場合に、FET262はオンとなり、FET264はオフとなる。この場合、モータ制御信号出力先切換回路204は、MCU202から出力されるモータ制御信号UHを、ゲートドライブ回路208にモータ制御信号UH1として出力する。MCU202から出力される切換信号SWがL電位の場合に、FET262はオフとなり、FET264はオンとなる。この場合、モータ制御信号出力先切換回路204は、MCU202から出力されるモータ制御信号UHを、ゲートドライブ回路210にモータ制御信号UH2として出力する。なお、ここでは理解を容易にするため、モータ制御信号UHに対応する構成のみ説明したが、モータ制御信号出力先切換回路204は、他のモータ制御信号VH,WH,UL,VL,WLについても同様の構成を備えている。
【0091】
あるいは、
図24に示すように、モータ制御信号出力先切換回路204は、NORゲート268,270と、NOTゲート272,274を備える構成としてもよい。MCU202から出力される切換信号SWがH電位の場合に、NORゲート268はMCU202から出力されるモータ制御信号UHを出力し、NORゲート270はL電位を出力する。この場合、モータ制御信号出力先切換回路204は、MCU202から出力されるモータ制御信号UHを、ゲートドライブ回路208にモータ制御信号UH1として出力する。MCU202から出力される切換信号SWがL電位の場合に、NORゲート268はL電位を出力し、NORゲート270はMCU202から出力されるモータ制御信号UHを出力する。この場合、モータ制御信号出力先切換回路204は、MCU202から出力されるモータ制御信号UHを、ゲートドライブ回路210にモータ制御信号UH2として出力する。なお、ここでは理解を容易にするため、モータ制御信号UHに対応する構成のみ説明したが、モータ制御信号出力先切換回路204は、他のモータ制御信号VH,WH,UL,VL,WLについても同様の構成を備えている。
【0092】
図25に示すように、ブレーキ回路218は、モータ制御信号出力先切換回路204からゲートドライブ回路208に出力される、モータ制御信号UL1,VL1,WL1の信号線に接続されている。ブレーキ回路218は、MCU202の汎用入出力ポート202cから出力されるブレーキ信号BR1に応じて、送りモータ32に短絡ブレーキをかける。ブレーキ回路218は、トランジスタ274a,274b,274c,274dと、抵抗器276a,276b,276c,276d,276e,276f,276g,276hを備えている。MCU202から入力されるブレーキ信号BR1がL電位の場合、トランジスタ274aがオフとなり、トランジスタ274b、274c、274dが何れもオフとなるので、ゲートドライブ回路208には、モータ制御信号出力先切換回路204から出力されたモータ制御信号UL1,VL1,WL1がそのまま入力される。MCU202から入力されるブレーキ信号BR1がH電位の場合、トランジスタ274aがオンとなり、トランジスタ274b、274c、274dが何れもオンとなるので、ゲートドライブ回路208に入力されるモータ制御信号UL1,VL1,WL1は、全てH電位となる。この場合、ゲートドライブ回路208には短絡ブレーキ信号が入力され、送りモータ32には短絡ブレーキがかけられる。
【0093】
同様に、ブレーキ回路220は、モータ制御信号出力先切換回路204からゲートドライブ回路210に出力される、モータ制御信号UL2,VL2,WL2の信号線に接続されている。ブレーキ回路220は、MCU202の汎用入出力ポート202cから出力されるブレーキ信号BR2に応じて、捩りモータ76に短絡ブレーキをかける。ブレーキ回路220は、ブレーキ回路218と同様の構成を備えている。ブレーキ回路220は、トランジスタ278a,278b,278c,278dと、抵抗器280a,280b,280c,280d,280e,280f,280g,280hを備えている。MCU202から入力されるブレーキ信号BR2がL電位の場合、トランジスタ278aがオフとなり、トランジスタ278b、278c、278dが何れもオフとなるので、ゲートドライブ回路210には、モータ制御信号出力先切換回路204から出力されたモータ制御信号UL2,VL2,WL2がそのまま入力される。MCU202から入力されるブレーキ信号BR2がH電位の場合、トランジスタ278aがオンとなり、トランジスタ278b、278c、278dが何れもオンとなるので、ゲートドライブ回路210に入力されるモータ制御信号UL2,VL2,WL2は、全てH電位となる。この場合、ゲートドライブ回路210には短絡ブレーキ信号が入力され、捩りモータ76には短絡ブレーキがかけられる。
【0094】
図20に示すように、送りモータ32のホールセンサ180と、捩りモータ76のホールセンサ192は、モータ回転信号入力元切換回路206に接続されている。モータ回転信号入力元切換回路206は、MCU202のモータ回転信号入力ポート202bに接続されている。モータ回転信号入力元切換回路206は、MCU202から出力される切換信号SWに応じて、送りモータ32からのホールセンサ信号Hu1,Hv1,Hw1と、捩りモータ76からのホールセンサ信号Hu2,Hv2,Hw2のうちの何れか一方を、MCU202のモータ回転信号入力ポート202bに入力する。
【0095】
図26に示すように、モータ回転信号入力元切換回路206は、マルチプレクサ282を備える構成としてもよい。MCU202から出力される切換信号SWがH電位の場合に、マルチプレクサ282は、送りモータ32からのホールセンサ信号Hu1を、ホールセンサ信号HuとしてMCU202に出力する。MCU202から出力される切換信号SWがL電位の場合に、マルチプレクサ282は、捩りモータ76からのホールセンサ信号Hu2を、ホールセンサ信号HuとしてMCU202に出力する。なお、ここでは理解を容易にするため、ホールセンサ信号Huに対応する構成のみ説明したが、モータ回転信号入力元切換回路206は、他のホールセンサ信号Hv,Hwについても同様の構成を備えている。
【0096】
あるいは、
図27に示すように、モータ回転信号入力元切換回路206は、FET284,286と、NOTゲート288を備える構成としてもよい。MCU202から出力される切換信号SWがH電位の場合に、FET284はオンとなり、FET286はオフとなる。この場合、モータ回転信号入力元切換回路206は、送りモータ32からのホールセンサ信号Hu1を、ホールセンサ信号HuとしてMCU202に出力する。MCU202から出力される切換信号SWがL電位の場合に、FET284はオフとなり、FET286はオンとなる。この場合、モータ回転信号入力元切換回路206は、捩りモータ76からのホールセンサ信号Hu2を、ホールセンサ信号HuとしてMCU202に出力する。なお、ここでは理解を容易にするため、ホールセンサ信号Huに対応する構成のみ説明したが、モータ回転信号入力元切換回路206は、他のホールセンサ信号Hv,Hwについても同様の構成を備えている。
【0097】
あるいは、
図28に示すように、モータ回転信号入力元切換回路206は、NORゲート290,292,294と、NOTゲート296を備える構成としてもよい。MCU202から出力される切換信号SWがH電位の場合に、NORゲート290は送りモータ32からのホールセンサ信号Hu1を反転して出力し、NORゲート292はL電位を出力するので、NORゲート294は送りモータ32からのホールセンサ信号Hu1を出力する。この場合、モータ回転信号入力元切換回路206は、送りモータ32からのホールセンサ信号Hu1を、ホールセンサ信号HuとしてMCU202に出力する。MCU202から出力される切換信号SWがL電位の場合に、NORゲート290はL電位を出力し、NORゲート292は捩りモータ76からのホールセンサ信号Hu2を反転して出力するので、NORゲート294は捩りモータ76からのホールセンサ信号Hu2を出力する。この場合、モータ回転信号入力元切換回路206は、捩りモータ76からのホールセンサ信号Hu2を、ホールセンサ信号HuとしてMCU202に出力する。なお、ここでは理解を容易にするため、ホールセンサ信号Huに対応する構成のみ説明したが、モータ回転信号入力元切換回路206は、他のホールセンサ信号Hv,Hwについても同様の構成を備えている。
【0098】
なお、
図20に示すように、送りモータ32のホールセンサ180と、捩りモータ76のホールセンサ192は、MCU202の汎用入出力ポート202cにも接続されている。MCU202は、汎用入出力ポート202cに入力される、送りモータ32からのホールセンサ信号Hu1,Hv1,Hw1と、捩りモータ76からのホールセンサ信号Hu2,Hv2,Hw2を監視することができる。
【0099】
(MCU202が実行する処理)
MCU202は、トリガスイッチ9がオフからオンに切り換わると、
図29の処理を実行する。
図29の処理では、MCU202は、S2の送りモータ第1駆動処理(
図30参照)、S4の捩りモータ第1駆動処理(
図31参照)、S6の送りモータ第2駆動処理(
図32参照)、S8の捩りモータ第2駆動処理(
図35参照)、S10の捩りモータ第3駆動処理(
図36参照)を順に実行する。
【0100】
(送りモータ第1駆動処理)
以下では
図30を参照しながら、送りモータ第1駆動処理の詳細について説明する。S12では、MCU202は、切換信号SWとしてH電位を出力し、モータ制御信号出力先切換回路204とモータ回転信号入力元切換回路206を、それぞれ送りモータ32側に切り換える。
【0101】
S14では、MCU202は、送りモータ32を逆回転させるように、モータ制御信号UH,VH,WH,UL,VL,WLを出力する。これによって、送りモータ32が逆回転し、ワイヤWを送り出す送り出し工程が開始される。
【0102】
S16では、MCU202は、ワイヤWの送り出し量が所定値に達するまで待機する。ワイヤWの送り出し量は、例えば、ホールセンサ信号Hu,Hv,Hwをカウントすることで算出することができる。ワイヤWの送り出し量が所定値に達すると(YESとなると)、処理はS18に進む。
【0103】
S18では、MCU202は、送りモータ32を停止させるように、モータ制御信号UH,VH,WH,UL,VL,WLとして短絡ブレーキ信号を出力する。また、MCU202は、ブレーキ信号BR1としてH電位を出力する。これによって、送りモータ32にブレーキがかけられる。S18の処理の後、
図30の処理は終了する。
【0104】
(捩りモータ第1駆動処理)
以下では
図31を参照しながら、捩りモータ第1駆動処理の詳細について説明する。S22では、MCU202は、切換信号SWとしてL電位を出力し、モータ制御信号出力先切換回路204とモータ回転信号入力元切換回路206を、それぞれ捩りモータ76側に切り換える。
【0105】
S24では、MCU202は、捩りモータ76を正回転させるように、モータ制御信号UH,VH,WH,UL,VL,WLを出力する。これによって、捩りモータ76が正回転し、ワイヤWの先端を保持する先端保持工程が開始される。
【0106】
S26では、MCU202は、ワイヤWの先端が保持されるまで待機する。ワイヤWの先端が保持されたか否かは、把持検出センサ138の検出信号に基づいて判断することができる。ワイヤWの先端が保持されると(YESとなると)、処理はS28へ進む。
【0107】
S28では、MCU202は、捩りモータ76を停止させるように、モータ制御信号UH,VH,WH,UL,VL,WLとして短絡ブレーキ信号を出力する。また、MCU202は、ブレーキ信号BR2としてH電位を出力する。これによって、捩りモータ76にブレーキがかけられる。S28の処理の後、
図31の処理は終了する。
【0108】
(送りモータ第2駆動処理)
以下では
図32を参照しながら、送りモータ第2駆動処理の詳細について説明する。S32では、MCU202は、切換信号SWとしてH電位を出力し、モータ制御信号出力先切換回路204とモータ回転信号入力元切換回路206を、送りモータ32側に切り換える。
【0109】
S34では、MCU202は、送りモータ32を正回転させるように、モータ制御信号UH,VH,WH,UL,VL,WLを出力する。これによって、送りモータ32が正回転し、ワイヤWを引き戻す引き戻し工程が開始される。
【0110】
S36では、MCU202は、S34で送りモータ32の駆動を開始してからの経過時間(以下では送りモータ駆動時間ともいう)が所定の上限時間以上であるか否かを判断する。S36で送りモータ駆動時間が上限時間以上である場合(YESの場合)、MCU202は、送りモータ32が何らかの異常によって正常に回転していないと判断して、S38でエラー処理を実行する。S36で送りモータ駆動時間が上限時間に満たない場合(NOの場合)、処理はS40へ進む。
【0111】
S40では、MCU202は、ワイヤWの引き戻し量が所定の上限値以上であるか否かを判断する。ワイヤWの引き戻し量は、例えば、ホールセンサ信号Hu,Hv,Hwをカウントすることで算出することができる。S40でワイヤWの引き戻し量が上限値以上である場合(YESの場合)、MCU202は、ワイヤWの先端が正常に把持されていないと判断して、S38でエラー処理を実行する。S40でワイヤWの引き戻し量が上限値に満たない場合(NOの場合)、処理はS42へ進む。
【0112】
S42以降の処理では、MCU202は、電流検出回路216で検出される、送りモータ32を流れる電流値Iの履歴に基づいて、ワイヤWの引き戻しが完了したか否かを判断する。以下では、
図33、
図34を参照して、送りモータ32を流れる電流値Iの経時的な変化について説明する。
【0113】
図33では、鉄筋径が大きい場合の電流値Iの経時的な変化を破線で示しており、鉄筋径が小さい場合の電流値Iの経時的な変化を実線で示している。
図33に示すように、時刻t0で送りモータ32が駆動を開始すると、電流値Iは時刻t1で始動電流のピークまで増加した後、徐々に減少していく。その後、ワイヤWが鉄筋Rに密着し始めると、電流値Iは再び増加に転じる(鉄筋径が大きい場合は時刻t2、鉄筋径が小さい場合は時刻t4)。その後、ワイヤWが完全に鉄筋Rに密着すると、電流値Iは再び減少に転じる(鉄筋径が大きい場合は時刻t3、鉄筋径が小さい場合は時刻t5)。
【0114】
図34は、
図33の時刻t1、t2、t3、t4、t5における、ワイヤWと鉄筋Rの関係を模式的に示している。鉄筋径が大きい場合には、ワイヤWが鉄筋Rへの密着を開始するタイミングが早く(時刻t2)、ワイヤWが鉄筋Rへの密着を完了するタイミングも早い(時刻t3)。このため、
図33に実線で示すように、電流値Iは早いタイミングで減少から増加に転じ、その後も早いタイミングで増加から減少に転じる。また、始動電流のピークを越えた後の電流値Iの最小値Imin1はそれほど低い値とならず、その後の電流値Iの増加量ΔI1もそれほど大きな値とはならない。これに対して、
図34に示すように、鉄筋径が小さい場合には、ワイヤWが鉄筋Rへの密着を開始するタイミングが遅く(時刻t4)、ワイヤWが鉄筋Rへの密着を完了するタイミングも遅い(時刻t5)。このため、
図33に破線で示すように、電流値Iは遅いタイミングで減少から増加に転じ、その後も遅いタイミングで増加から減少に転じる。また、始動電流のピークを越えた後の電流値Iの最小値Imin2は低い値となり、その後の電流値Iの増加量ΔI2は大きな値となる。
【0115】
そこで、本実施例では、MCU202は、電流値Iが始動電流のピークを越えた後、減少から増加に転じるタイミング、すなわち電流値Iの時間変化率dI/dtが時間変化率しきい値α以上となるタイミングに基づいて、鉄筋径の判別を行う。また、MCU202は、判別された鉄筋径に基づいて、引き戻しの完了の判定条件を変更する。
【0116】
図32のS42では、MCU202は、電流値Iが始動電流のピークを越えているか否かを判断する。例えば、MCU202は、送りモータ駆動時間が所定の下限時間を超えている場合に、電流値Iが始動電流のピークを越えていると判断する。電流値Iが始動電流のピークを越えていない場合(NOの場合)、処理はS36へ戻る。始動電流のピークを越えている場合(YESの場合)、処理はS44へ進む。
【0117】
S44では、MCU202は、鉄筋径を判別済みであるか否かを判断する。いまだ鉄筋径の判別が行われていない場合(NOの場合)、処理はS46へ進む。すでに鉄筋径の判別を行っている場合(YESの場合)、処理はS56へ進む。
【0118】
S46では、MCU202は、送りモータ32の電流値Iの最小値Iminを更新する。具体的には、MCU202は、現在検出されている電流値Iが、記憶されている最小値Iminに比べて低い場合には、最小値Iminを電流値Iで置き換える。
【0119】
S48では、MCU202は、送りモータ32の電流値Iの時間変化率dI/dtを算出する。
【0120】
S50では、MCU202は、S48で算出された時間変化率dI/dtが時間変化率しきい値α以上であるか否かを判断する。時間変化率しきい値αは、予め設定されている正の定数である。dI/dtがαに満たない場合(NOの場合)、処理はS36へ戻る。dI/dtがα以上の場合(YESの場合)、処理はS52へ進む。
【0121】
S52では、MCU202は、送りモータ駆動時間に基づいて、鉄筋径を特定する。例えば、S52の時点での送りモータ駆動時間が第1所定時間に満たない場合には、MCU202は、鉄筋径を大径であると判断する。また、S52の時点での送りモータ駆動時間が第1所定時間以上であり、かつ第1所定時間よりも大きい第2所定時間に満たない場合には、MCU202は、鉄筋径が中径であると判断する。さらに、S52の時点での送りモータ駆動時間が第2所定時間以上である場合には、MCU202は、鉄筋径が小径であると判断する。
【0122】
S54では、MCU202は、S52で判別された鉄筋径に基づいて、電流値Iの増加量しきい値ΔImaxを設定する。増加量しきい値ΔImaxは、鉄筋径が大きいほど、小さい値に設定される。
【0123】
S56では、MCU202は、現在の電流値IからS46で更新された最小値Iminを減算して、電流値Iの増加量ΔIを算出する。
【0124】
S58では、MCU202は、S56で算出された増加量ΔIが、S54で設定された増加量しきい値ΔImax以上であるか否かを判断する。増加量ΔIが増加量しきい値ΔImaxに満たない場合(NOの場合)、処理はS36へ戻る。
【0125】
S58で、増加量ΔIが増加量しきい値ΔImax以上の場合(YESの場合)、MCU202は、ワイヤWの引き戻しが完了したと判断し、処理はS60へ進む。
【0126】
S60では、MCU202は、送りモータ32を停止させるように、モータ制御信号UH,VH,WH,UL,VL,WLとして短絡ブレーキ信号を出力する。また、MCU202は、ブレーキ信号BR1としてH電位を出力する。これによって、送りモータ32にブレーキがかけられる。S60の処理の後、
図32の処理は終了する。
【0127】
なお、
図32のS52において、MCU202は、S34で送りモータ32の駆動を開始してからの経過時間(送りモータ駆動時間)に基づいて、鉄筋径を判別している。これとは異なり、MCU202は、例えば、送りモータ32の始動電流のピークのタイミングを特定しておいて、S52において、始動電流のピークからの経過時間に基づいて、鉄筋径を判別する構成としてもよい。
【0128】
図32の処理においては、MCU202は、送りモータ32を流れる電流値Iについて、始動電流のピークを越えた後の最小値Iminを特定し、最小値Iminからの増加量ΔIが増加量しきい値ΔImaxに達した時に、送りモータ32を停止させている。これとは異なり、MCU202は、例えば、S50で送りモータ32を流れる電流値Iの時間変化率dI/dtが時間変化率しきい値αに達したタイミングからの経過時間が、時間しきい値に達した時に、送りモータ32を停止する構成としてもよい。この場合、S52で特定された鉄筋径が大きい場合には、時間しきい値を小さい値に設定し、鉄筋径が小さい場合には、時間しきい値を大きい値に設定することで、
図32の処理と同様に、鉄筋径に応じて送りモータ32の停止条件を変更することができる。
【0129】
図32の処理において、MCU202は、送りモータ32を流れる電流値Iの時間tに関する履歴に基づいて、鉄筋径を特定し、送りモータ32の停止条件を変更している。これとは異なり、MCU202は、例えば、送りモータ32を流れる電流値Iの、送りモータ32の回転回数Nに関する履歴に基づいて、鉄筋径を特定し、送りモータ32の停止条件を変更してもよい。例えば、MCU202は、S48において、送りモータ32の電流値Iの、送りモータ32の回転回数Nに関する変化率dI/dNを算出し、S50において、算出された変化率dI/dNが変化率しきい値βに達したか否かを判断する構成としてもよい。
【0130】
(捩りモータ第2駆動処理)
以下では
図35を参照しながら、捩りモータ第2駆動処理の詳細について説明する。S62では、MCU202は、切換信号SWとしてL電位を出力し、モータ制御信号出力先切換回路204とモータ回転信号入力元切換回路206を、捩りモータ76側に切り換える。
【0131】
S64では、MCU202は、捩りモータ76を正回転させるように、モータ制御信号UH,VH,WH,UL,VL,WLを出力する。これによって、捩りモータ76が正回転し、ワイヤWの後端を保持する後端保持工程と、ワイヤWを切断する切断工程と、ワイヤWを引っ張る引っ張り工程と、ワイヤWを捩る捩り工程が、順に実行されていく。
【0132】
S66では、MCU202は、ワイヤWの捩りが完了するまで待機する。例えば、MCU202は、電流検出回路216で検出される電流値が、ワイヤWの結束力の設定値に応じた所定値以上となった場合に、ワイヤWの捩りが完了したと判断する。この所定値は、送りモータ第2駆動処理で判別された鉄筋径に応じて異なる値としてもよいし、鉄筋径に関わらず一定の値としてもよい。ワイヤWの捩りが完了すると(YESとなると)、処理はS68へ進む。
【0133】
S68では、MCU202は、捩りモータ76を停止させるように、モータ制御信号UH,VH,WH,UL,VL,WLとして短絡ブレーキ信号を出力する。これによって、捩りモータ76にブレーキがかけられる。S68の後、
図35の処理は終了する。
【0134】
(捩りモータ第3駆動処理)
以下では
図36を参照しながら、捩りモータ第3駆動処理の詳細について説明する。
【0135】
S72では、MCU202は、捩りモータ76を逆回転させるように、モータ制御信号UH,VH,WH,UL,VL,WLを出力する。これによって、捩りモータ76が逆回転し、捩り機構30が初期状態に復帰する初期状態復帰工程が開始される。
【0136】
S74では、MCU202は、捩り機構30が初期状態に復帰するまで待機する。捩り機構30が初期状態に復帰したか否かは、初期状態検出センサ136の検出信号に基づいて判断することができる。捩り機構30が初期状態に復帰すると(YESとなると)、処理はS76へ進む。
【0137】
S76では、MCU202は、捩りモータ76を停止させるように、モータ制御信号UH,VH,WH,UL,VL,WLとして短絡ブレーキ信号を出力する。これによって、捩りモータ76にブレーキがかけられる。S76の後、
図36の処理は終了する。
【0138】
以上のように、1つまたはそれ以上の実施形態において、鉄筋結束機2は、送りモータ32と、送りモータ32を流れる電流を検出する電流検出回路216(電流センサの例)と、送りモータ32の動作を制御するMCU202(制御ユニットの例)を備えている。鉄筋結束機2は、送りモータ32の駆動により、鉄筋Rの周りにワイヤWを送り出す送り出し工程と、ワイヤWの先端近傍を把持する把持工程と、送りモータ32の駆動により、ワイヤWを引き戻す引き戻し工程と、ワイヤWを切断する切断工程と、ワイヤWを捩る捩り工程を実行可能である。MCU202は、引き戻し工程における送りモータ32を流れる電流値Iの履歴に基づいて、鉄筋Rの径を判別するように構成されている。
【0139】
上記の引き戻し工程では、鉄筋Rの周りに送り出されたワイヤWが縮径して鉄筋Rに密着する。この際に、ワイヤWが鉄筋Rへの密着を開始するタイミングや、ワイヤWが鉄筋Rへの密着を完了するタイミングで、送りモータ32を流れる電流値Iの挙動に変化が生じる。鉄筋Rの径が大きい場合には、ワイヤWが鉄筋Rへの密着を開始するタイミングや、ワイヤWが鉄筋Rへの密着を完了するタイミングは早くなる。逆に、鉄筋Rの径が小さい場合には、ワイヤWが鉄筋Rへの密着を開始するタイミングや、ワイヤWが鉄筋Rへの密着を完了するタイミングは遅くなる。上記の鉄筋結束機2では、ワイヤWの引き戻し工程における送りモータ32を流れる電流値Iの挙動が、鉄筋Rの径に応じて異なるものとなることに着目して、送りモータ32を流れる電流値Iの履歴に基づいて、鉄筋Rの径を判別する。このような構成とすることによって、鉄筋Rの径を判別するための判別機構を設けることなく、鉄筋Rの径に応じた動作を実行可能とすることができる。
【0140】
1つまたはそれ以上の実施形態において、MCU202は、引き戻し工程において、送りモータ32の始動電流のピークを越えた後、送りモータ32を流れる電流値Iの時間変化率dI/dtを算出し、前記時間変化率dI/dtが時間変化率しきい値αに達するタイミングに基づいて、鉄筋Rの径を判別するように構成されている。
【0141】
引き戻し工程において、送りモータ32を流れる電流値Iは、始動電流のピークまで増加した後、徐々に減少していく。その後、送りモータ32を流れる電流値Iは、ワイヤWが鉄筋Rへの密着を開始するタイミングで減少から増加に転じ、ワイヤWが鉄筋Rへの密着を完了するタイミングで再び増加から減少に転じる。上記の構成によれば、送りモータ32を流れる電流値Iが、始動電流のピークを越えた後、減少から増加に転じるタイミング、すなわちワイヤWが鉄筋Rへの密着を開始するタイミングで、鉄筋Rの径を判別することができる。このような構成とすることで、判別された鉄筋Rの径に応じて、引き戻し工程の後半の動作を実行することができる。
【0142】
1つまたはそれ以上の実施形態において、MCU202は、引き戻し工程において、停止条件が満たされた場合に、送りモータ32を停止するように構成されている。MCU202は、判別された鉄筋Rの径に応じて、停止条件を変更するように構成されている。
【0143】
引き戻し工程においては、鉄筋Rの径が大きい場合には、ワイヤWが鉄筋Rへの密着を完了するタイミングが早いので、それだけ送りモータ32を早く停止する必要がある。逆に、鉄筋Rの径が小さい場合には、ワイヤWが鉄筋Rへの密着を完了するタイミングが遅く、それだけ送りモータ32を遅く停止する必要がある。上記の構成によれば、判別された鉄筋Rの径に応じて停止条件を変更するので、適切なタイミングで送りモータ32を停止させることができる。
【0144】
1つまたはそれ以上の実施形態において、MCU202は、引き戻し工程において、送りモータ32の始動電流のピークを越えた後の送りモータ32を流れる電流値Iの最小値Iminを特定し、送りモータ32を流れる電流値Iの最小値Iminからの増加量ΔIを算出するように構成されている。停止条件は、増加量ΔIが増加量しきい値ΔImaxに達することを含んでいる。MCU202は、判別された鉄筋Rの径に応じて、増加量しきい値ΔImaxを変更するように構成されている。
【0145】
引き戻し工程において、鉄筋Rの径が大きい場合には、ワイヤWが鉄筋Rへの密着を開始するタイミングが早いため、送りモータ32を流れる電流値Iは始動電流のピークを越えた後それほど低下しない。このため、始動電流のピークを越えた後の送りモータ32を流れる電流値Iの最小値Iminは比較的大きく、ワイヤWが鉄筋Rへの密着を完了するまでの電流値Iの増加量ΔIは小さなものとなる。逆に、鉄筋Rの径が小さい場合には、ワイヤWが鉄筋Rへの密着を開始するタイミングが遅いため、送りモータ32を流れる電流値Iは始動電流のピークを越えた後に大きく低下する。このため、始動電流のピークを越えた後の送りモータ32を流れる電流値Iの最小値Iminは比較的小さく、ワイヤWが鉄筋Rへの密着を完了するまでの電流値Iの増加量ΔIは大きなものとなる。上記の構成によれば、判別された鉄筋Rの径に応じて増加量しきい値ΔImaxを変更するので、適切なタイミングで送りモータ32を停止させることができる。
【0146】
1つまたはそれ以上の実施形態において、鉄筋結束機2は、送りモータ32と、送りモータ32を流れる電流を検出する電流検出回路216(電流センサの例)と、送りモータ32の動作を制御するMCU202(制御ユニットの例)を備えている。鉄筋結束機2は、送りモータ32の駆動により、鉄筋Rの周りにワイヤWを送り出す送り出し工程と、ワイヤWの先端近傍を把持する把持工程と、送りモータ32の駆動により、ワイヤWを引き戻す引き戻し工程と、ワイヤWを切断する切断工程と、ワイヤWを捩る捩り工程を実行可能である。MCU202は、引き戻し工程において、停止条件が満たされた場合に、送りモータ32を停止するように構成されている。MCU202は、引き戻し工程における送りモータ32を流れる電流値Iの履歴に応じて、停止条件を変更するように構成されている。
【0147】
上記の鉄筋結束機2では、ワイヤWの引き戻し工程における送りモータ32を流れる電流値Iの挙動が、鉄筋Rの径に応じて異なるものとなることに着目して、送りモータ32を流れる電流値Iの履歴に基づいて、送りモータ32の停止条件を変更する。このような構成とすることによって、鉄筋Rの径を判別するための判別機構を設けることなく、鉄筋Rの径に応じた動作を実行可能とすることができる。
【0148】
1つまたはそれ以上の実施形態において、MCU202は、引き戻し工程において、送りモータ32の始動電流のピークを越えた後、送りモータ32を流れる電流値Iの時間変化率dI/dtを算出し、時間変化率dI/dtが時間変化率しきい値αに達するタイミングに応じて、停止条件を変更するように構成されている。
【0149】
上記の構成によれば、送りモータ32を流れる電流値Iが、始動電流のピークを越えた後、減少から増加に転じるタイミング、すなわちワイヤWが鉄筋Rへの密着を開始するタイミングで、送りモータ32の停止条件を変更することができる。
【0150】
1つまたはそれ以上の実施形態において、MCU202は、引き戻し工程において、送りモータ32の始動電流のピークを越えた後の送りモータ32を流れる電流値Iの最小値Iminを特定し、送りモータ32を流れる電流値Iの最小値Iminからの増加量ΔIを算出するように構成されている。停止条件は、増加量ΔIが増加量しきい値ΔImaxに達することを含んでいる。MCU202は、時間変化率dI/dtが時間変化率しきい値αに達する前記タイミングに応じて、増加量しきい値ΔImaxを変更するように構成されている。
【0151】
上記の構成によれば、送りモータ32を流れる電流値Iの時間変化率dI/dtが時間変化率しきい値αに達するタイミングに応じて増加量しきい値ΔImaxを変更するので、適切なタイミングで送りモータ32を停止させることができる。
【符号の説明】
【0152】
2 :鉄筋結束機
4 :本体
6 :グリップ
8 :トリガ
9 :トリガスイッチ
10 :バッテリ取付部
12 :リールホルダ
12a :収容空間
12b :表示部
12c :操作部
14 :ホルダハウジング
14a :回動軸
16 :カバー部材
18 :リール
20 :制御基板
22 :表示基板
22a :設定表示LED
22b :設定スイッチ
24 :送り機構
26 :案内機構
28 :切断機構
30 :捩り機構
32 :送りモータ
34 :減速部
36 :送り部
38 :ベース部材
40 :ガイド部材
40a :ガイド孔
42 :駆動ギヤ
44 :第1ギヤ
44a :溝
46 :第2ギヤ
46a :溝
48 :ギヤ支持部材
48a :揺動軸
52 :付勢部材
56 :ワイヤガイド
56a :突起部
58 :上側案内アーム
58a :上側案内通路
60 :下側案内アーム
60a :下側案内通路
61 :第1案内ピン
62 :第2案内ピン
66 :切断部材
66a :回動軸
68 :リンク部
70 :連結部材
72 :被操作部材
72a :回動軸
72b :突片
74 :付勢部材
76 :捩りモータ
78 :減速部
82 :保持部
84 :スクリューシャフト
84a :太径部
84b :細径部
84c :ボール溝
84d :係合溝
86 :クランプガイド
86a :凹部
86b :係合ピン
86c :段差部
88 :スリーブ
90 :挟持部材
92 :付勢部材
94 :ボール
96 :ワッシャ
100 :インナスリーブ
100a :リブ
102 :アウタスリーブ
102a :段差部
104 :支持部材
106 :止めねじ
110 :案内ピン
114 :上側挟持部材
116 :下側挟持部材
118 :上側基部
118a :上側案内孔
120 :第1上側突部
121 :上側連結部
122 :第2上側突部
123 :第1抜け止め部
124 :第1ワイヤ通路
126 :下側基部
126a :下側案内孔
128 :第1下側突部
129 :下側連結部
130 :第2下側突部
131 :第2抜け止め部
132 :第2ワイヤ通路
134 :補助通路
136 :初期状態検出センサ
138 :把持検出センサ
140 :プッシュプレート
140a :初期状態検出マグネット
140b :把持検出マグネット
144 :フィン
146 :ショートフィン
148 :ロングフィン
150 :回転制限部
152 :ベース部材
154 :上側ストッパ
154a :規制片
156 :下側ストッパ
156a :規制片
158 :揺動軸
160 :揺動軸
162 :付勢部材
164 :付勢部材
170 :コイル
172 :ティース
174 :ステータ
176 :ロータ
178 :センサ基板
180 :ホールセンサ
180a :第1ホール素子
180b :第2ホール素子
180c :第3ホール素子
182 :コイル
184 :ティース
186 :ステータ
188 :ロータ
190 :センサ基板
192 :ホールセンサ
192a :第1ホール素子
192b :第2ホール素子
192c :第3ホール素子
200 :制御電源回路
202a :モータ制御信号出力ポート
202b :モータ回転信号入力ポート
202c :汎用入出力ポート
204 :モータ制御信号出力先切換回路
206 :モータ回転信号入力元切換回路
208 :ゲートドライブ回路
210 :ゲートドライブ回路
212 :インバータ回路
214 :インバータ回路
216 :電流検出回路
218 :ブレーキ回路
220 :ブレーキ回路
222a :スイッチング素子
222b :スイッチング素子
224a :スイッチング素子
224b :スイッチング素子
226a :スイッチング素子
226b :スイッチング素子
228 :正極側電位線
230 :負極側電位線
232 :モータ電力線
234 :モータ電力線
236 :モータ電力線
238a :スイッチング素子
238b :スイッチング素子
240a :スイッチング素子
240b :スイッチング素子
242a :スイッチング素子
242b :スイッチング素子
244 :正極側電位線
246 :負極側電位線
248 :モータ電力線
250 :モータ電力線
252 :モータ電力線
260 :デマルチプレクサ
262 :FET
264 :FET
266 :NOTゲート
268 :NORゲート
270 :NORゲート
272 :NOTゲート
274 :NOTゲート
274a :トランジスタ
274b :トランジスタ
274c :トランジスタ
274d :トランジスタ
276a :抵抗器
276b :抵抗器
276c :抵抗器
276d :抵抗器
276e :抵抗器
276f :抵抗器
276g :抵抗器
276h :抵抗器
278a :トランジスタ
278b :トランジスタ
278c :トランジスタ
278d :トランジスタ
280a :抵抗器
280b :抵抗器
280c :抵抗器
280d :抵抗器
280e :抵抗器
280f :抵抗器
280g :抵抗器
280h :抵抗器
282 :マルチプレクサ
284 :FET
286 :FET
288 :NOTゲート
290 :NORゲート
292 :NORゲート
294 :NORゲート
296 :NOTゲート