(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】静電保護素子
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20241108BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20241108BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20241108BHJP
H01L 29/74 20060101ALI20241108BHJP
H01L 21/331 20060101ALI20241108BHJP
H01L 29/73 20060101ALI20241108BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20241108BHJP
H01L 29/866 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H01L27/04 H
H01L27/06 311Z
H01L29/74 F
H01L29/72
H01L29/90 D
(21)【出願番号】P 2021031187
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島 健悟
(72)【発明者】
【氏名】足立 和也
【審査官】石川 雄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-152435(JP,A)
【文献】特表2015-524169(JP,A)
【文献】特開2013-149926(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0151836(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/329
H01L 21/331
H01L 21/822
H01L 27/04
H01L 27/06
H01L 29/73
H01L 29/74
H01L 29/866
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電型の半導体基板の主面に形成された第2の導電型の第1の不純物層と、
前記第1の不純物層の内部に形成された第1の導電型の第2の不純物層と、
前記第1の不純物層の内部の前記第2の不純物層以外の領域に形成された第1の導電型の第1のコンタクト層と、
前記第2の不純物層の内部に形成された第2の導電型の第2のコンタクト層および第3のコンタクト層と、
前記第1のコンタクト層、前記第2のコンタクト層、および前記第3のコンタクト層にスタック構造を介して接続された多層配線と、を含み、
前記スタック構造は、前記第1のコンタクト層、前記第2のコンタクト層、および前記第3のコンタクト層の各々に接続された第1層配線と、前記第1のコンタクト層、前記第2のコンタクト層、および前記第3のコンタクト層の各々の直上で前記第1層配線に接続された第2層配線と、を少なくとも含む
静電保護素子。
【請求項2】
前記多層配線によって接続された前記第1のコンタクト層と前記第2のコンタクト層とが、前記静電保護素子が内蔵された半導体集積回路内の第1の節点に接続され、前記多層配線によって前記第3のコンタクト層が前記半導体集積回路の前記第1の節点より低い電位の第2の節点に接続される
請求項1に記載の静電保護素子。
【請求項3】
前記第2のコンタクト層の周囲に形成されかつ不純物濃度が前記第2のコンタクト層より低い第2の導電型の第3の不純物層、および前記第2の不純物層によって構成されるトリガ構造をさらに含む
請求項1または請求項2に記載の静電保護素子。
【請求項4】
前記第1の不純物層の内部の前記第2の不純物層以外の領域に形成されかつ前記多層配線によって前記第1のコンタクト層および前記第2のコンタクト層と接続された第2の導電型の第4のコンタクト層と、
前記第2の不純物層の内部に形成されかつ前記多層配線によって前記第3のコンタクト層と接続された第5のコンタクト層と、をさらに含み、
前記第4のコンタクト層および前記第5のコンタクト層の各々は前記スタック構造を介して前記多層配線に接続されている
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の静電保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路に適用される素子のひとつとして、静電保護素子がある。静電保護素子とは、半導体集積回路の外部端子(半導体集積回路の外部の構成と接続する端子)から侵入する静電気などのサージ電圧、あるいは電流(以下、「サージ」)から半導体集積回路を保護する素子の総称である。静電保護素子は一般にダイオードを用いて構成されるが、サイリスタを用いて構成する場合もある。サイリスタとは、pnpnの4層構造を有し、主にゲートからカソードへゲート電流を流すことにより、アノードとカソードの間を導通させることができる3端子の半導体素子である。つまり、ゲートを制御することによってアノード、カソード間に流れる主電流を制御することができる半導体素子である。
【0003】
サイリスタ型の静電保護素子について開示した文献として、例えば特許文献1が知られている。特許文献1に係る静電保護素子は、第1導電型の半導体基板と、半導体基板に形成された第2導電型ウェルと、第2導電型ウェルに形成され、信号端子に接続された第1導電型拡散層と、半導体基板に形成された第1導電型ウェルAと、第1導電型ウェルAに形成され、接地端子に接続された第2導電型拡散層と、第1導電型ウェルAと離間して半導体基板に形成された第1導電型ウェルBと、第1導電型ウェルBに形成され、接地端子と接続された第1導電型拡散層とを備えている。
【0004】
一方、静電保護素子は、半導体集積回路内の各素子を接続する配線によって半導体集積回路内に配置する。半導体集積回路では、絶縁膜で相互に絶縁された多層の配線も用いられ、ある層の配線から他の層の配線に接続するためには、一般にスルーホールが用いられる。
【0005】
スルーホールについて開示された文献として、特許文献2が知られている。特許文献2に係る半導体集積回路装置は、半導体基板上に3層以上の配線を有し、第1の配線とその上層の第2の配線とを電気的に接続する第1のスルーホールの真上に、第2の配線とその上層の第3の配線とを電気的に接続する第2のスルーホールが配置された半導体集積回路装置であって、配線の少なくとも一部は、スパッタリング法で堆積された接着層と、CVD法で堆積された埋込み層と、スパッタリング法で堆積された低抵抗主導電層と、スパッタリング法またはCVD法で堆積された光反射防止層とからなる積層構造で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-333120号公報
【文献】特開平9-134957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、静電保護素子は、外部端子から入力されたサージを、グランド(接地)等の放電先に電流として逃がす。そのため、サージから半導体集積回路を効果的に保護するためには、静電保護素子において、サージ入力時に該サージを効率よく放電することが求められる。効率よく放電するためには、サージを放電する経路(放電経路)が低抵抗であることが必要である。従って、静電保護素子を半導体集積回路内に配置させるための配線系統も低抵抗であることが好ましい。この点、特許文献2に開示された配線構造を、特許文献1に係る静電保護素子に適用すると、サージの放電経路が、不純物層に形成されたコンタクト層、スルーホール、1層目配線、スルーホール、2層目配線となる。そのため、各々の要素の抵抗が直列に接続され、放電経路の抵抗(放電抵抗)が大きくなる可能性がある。放電抵抗が大きくなると、大きなサージが入力された場合、例えば静電保護素子において過剰な発熱が発生し、半導体集積回路の特性の劣化等の問題が発生することも想定される。
【0008】
本発明は、上記事実を考慮し、多層配線で接続される静電保護素子において、放電経路の抵抗をより低減することが可能な静電保護素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1実施態様に係る静電保護素子は、第1の導電型の半導体基板の主面に形成された第2の導電型の第1の不純物層と、第1の不純物層の内部に形成された第1の導電型の第2の不純物層と、第1の不純物層の内部の第2の不純物層以外の領域に形成された第1の導電型の第1のコンタクト層と、第2の不純物層の内部に形成された第2の導電型の第2のコンタクト層および第3のコンタクト層と、第1のコンタクト層、第2のコンタクト層、および第3のコンタクト層にスタック構造を介して接続された多層配線と、を含み、スタック構造は、第1のコンタクト層、第2のコンタクト層、および第3のコンタクト層の各々に接続された第1層配線と、第1のコンタクト層、第2のコンタクト層、および第3のコンタクト層の各々の直上で第1層配線に接続された第2層配線と、を少なくとも含むものである。
【0010】
第1実施態様に係る静電保護素子によれば、アノードとして機能する第1のコンタクト層、ゲートとして機能する第2のコンタクト層、およびカソードとして機能する第3のコンタクト層の各々が、第1のコンタクト層、第2のコンタクト層、および第3のコンタクト層の各々に接続された第1層配線と、第1のコンタクト層、第2のコンタクト層、および第3のコンタクト層の各々の直上で第1層配線に接続された第2層配線と、を含むスタック構造で接続されている。このことにより、多層配線で接続される静電保護素子において、放電経路の抵抗をより低減することが可能となる。
【0011】
本発明の第2実施態様に係る静電保護素子は、多層配線によって接続された第1のコンタクト層と第2のコンタクト層とが、静電保護素子が内蔵された半導体集積回路内の第1の節点に接続され、多層配線によって第3のコンタクト層が半導体集積回路の第1の節点より低い電位の第2の節点に接続されるものである。
【0012】
第2実施態様に係る静電保護素子によれば、サイリスタ型の静電保護素子が半導体集積回路内に接続される。このことにより、半導体集積回路に侵入したサージを効率的に逃がすことができる。
【0013】
本発明の第3実施態様に係る静電保護素子は、第2のコンタクト層の周囲に形成されかつ不純物濃度が第2のコンタクト層より低い第2の導電型の第3の不純物層、および第2の不純物層によって構成されるトリガ構造をさらに含むものである。
【0014】
第3実施態様に係る静電保護素子によれば、第2の不純物層および第3の不純物層により構成されるトリガ構造をさらに含んでいる。このことにより、半導体集積回路内にサージが侵入した場合の静電保護動作をより確実に行うことができる。
【0015】
本発明の第4実施態様に係る静電保護素子は、第1の不純物層の内部の第2の不純物層以外の領域に形成されかつ多層配線によって第1のコンタクト層および第2のコンタクト層と接続された第2の導電型の第4のコンタクト層と、第2の不純物層の内部に形成されかつ多層配線によって第3のコンタクト層と接続された第5のコンタクト層と、をさらに含み、第4のコンタクト層および第5のコンタクト層の各々はスタック構造を介して多層配線に接続されているものである。
【0016】
第4の実施態様に係る静電保護素子によれば、静電保護素子の初期動作において、第4のコンタクト層がアノードの電位を、第5のコンタクト層がカソードの電位を、各々所定の電位に固定することができる。このことにより、静電保護素子の動作を安定させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、多層配線で接続される静電保護素子において、放電経路の抵抗をより低減することが可能な静電保護素子を提供することができる、という優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る静電保護素子の構成の一例を示す断面図である。
【
図2】(a)は本発明の実施の形態に係る静電保護素子の半導体集積回路内の接続の一例、および等価回路を示す回路図であり、(b)はトリガ構造の等価回路を示す回路図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る静電保護素子の放電経路を説明するための断面図である。
【
図4】(a)は本発明の実施の形態に係るスタック構造を説明するための図、(b)は本発明の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る静電保護素子について説明する。以下の説明では、本実施の形態に係る静電保護素子を、サイリスタ型の静電保護素子に適用した形態を例示して説明する。また、本実施の形態に係る静電保護素子は、半導体集積回路に内蔵され、該半導体集積回路の入出力端子等に接続されて、サージ等から内部回路を保護する機能を有している。なお、以下の説明において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与し、重複する説明は適宜省略する。
【0020】
図1から
図4を参照して、本実施の形態に係る静電保護素子10について説明する。
図1は静電保護素子10の断面図を示している。
図1に示すように、静電保護素子10は、半導体基板11、埋込酸化膜12、エピタキシャル層13、トレンチ14a、ポリシリコン14b、絶縁膜15、第1層配線16、絶縁膜17、第2層配線18、保護膜19、N型層20、P型層21、P型層22、N型層23、N型層24、P型層25、N型層26、およびN型層28を含んでいる。
【0021】
図2(a)は、半導体集積回路30内における静電保護素子10の接続の一例を示している。半導体集積回路30は、内部回路32、入力端子34を備え、静電保護素子10は、入力端子34と低電位側の電源(本実施の形態ではグランドとしている)との間に接続されている。サイリスタとしての静電保護素子10は、
図2(a)に示すように、アノードAが入力端子に、カソードCがグランドに接続される、すなわち順方向に接続される。以上の接続により、静電保護素子10は、入力端子34から侵入したサージを、内部回路32の例えば入力バッファ33に到達する前にグランドに逃がすことによって、内部回路32を保護している。なお、静電保護素子10内において静電保護素子10を接続する位置は入力端子34に限られず、例えば出力端子、電源端子等であってもよい。
【0022】
本実施の形態に係る静電保護素子10では、基板の一例としてSOI(Silicon On Insulator)基板を用いている。半導体基板11、埋込酸化膜(BOX:Buried Oxide)12、およびエピタキシャル層13は、SOI基板の一部を構成している。
【0023】
トレンチ14aは、エピタキシャル層13の上面から埋込酸化膜12に至る深さで形成された溝である。トレンチ14aの底部を除く内壁には酸化膜(図示省略)が形成されており、該酸化膜を介してトレンチ14aの内部にはポリシリコン14bが充填されている。トレンチ14aは、静電保護素子10を半導体集積回路30内の他の回路素子から電気的に分離する機能を有している。
【0024】
絶縁膜15はエピタキシャル層13上に形成された、電気的分離膜である。本実施の形態に係る静電保護素子10では、一例としてLOCOS(LOCal Oxidation of Silicon)構造による電気的分離を採用している。
図1に示すように、静電保護素子10は2層の配線層を備えている。すなわち、絶縁膜15上に形成された第1層配線16、および第1層配線上に形成された絶縁膜17を挟んで形成された第2層配線18である。ここで、以下、「第1層配線」と「第2層配線」を総称する場合は「配線」という場合がある。第2層配線18上に形成された保護膜19は、静電保護素子10を含む半導体集積回路30の表面全体に亘って形成され、半導体集積回路30を湿気等の外部環境から保護している。
【0025】
N型層20、P型層21、N型層23、N型層24、およびP型層25は、静電保護素子10の機能を発現するサイリスタを構成している。P型層とは、エピタキシャル層13にP型不純物を導入した領域であり、N型層とは、エピタキシャル層13にN型不純物を導入した領域である。なお、N型層20、P型層21、P型層25、N型層24、およびN型層23は、各々本発明に係る「第1の不純物層」、「第2の不純物層」、「第1のコンタクト層」、「第2のコンタクト層」、および「第3のコンタクト層」の一例である。
【0026】
図2(a)に示すように、サイリスタとしての静電保護素子10は、一般に2つのバイポーラ型のトランジスタT1およびトランジスタT2の組み合わせで構成されている。トランジスタT1はPNP型であり、トランジスタT2はNPN型である。
図2には、N型層20、P型層21、N型層23、N型層24、およびP型層25の等価的な位置を併せて示している。すなわち、P型層25、N型層20、およびP型層21が各々トランジスタT1のエミッタ、ベース、およびコレクタの部分に相当し、N型層20、P型層21、およびN型層23が各々トランジスタT2のコレクタ、ベース、およびエミッタの部分に相当する。この場合、トランジスタT1のエミッタ(P型層25に相当する部分)が静電保護素子10のアノードAとなり、トランジスタT2のエミッタ(N型層23に相当する部分)がカソードCとなる。静電保護素子10のアノードAおよびカソードCは、例えば第2層配線によって、各々入力端子34およびグランドに接続される。なお、「入力端子34」および「グランド」は、本発明に係る「第1の節点」および「第2の節点」の一例である。
【0027】
図1に戻って、N型層26は高電位側の電源に接続され、静電保護素子10の起動時初期の不定電位状態を防止するための不純物層である。P型層22は、トリガ構造のアノードの初期状態を特定の電位(本実施の形態ではグランド)にするための不純物層である。なお、「N型層26」および「P型層22」は、各々本発明に係る「第4のコンタクト層」および「第5のコンタクト層」の一例である。
【0028】
本実施の形態に係るサイリスタとしての静電保護素子10は、トリガ構造29を備えている。トリガ構造29は、N型層24、N型層28、およびP型層21を含んで構成され、N型層28は相対的に低濃度のN-型層として、相対的に高濃度のN+型層であるN型層24の周囲に形成されている。本構成は、降伏時の電界を緩和させる(不純物層端部における電界降伏を防ぐ)ために採用されている。「トリガ構造」とは、静電保護素子10の最初の動作において、ある程度の電流を流すことによってNPNのトランジスタT2を動作させるための構造である。すなわちトリガが降伏し、グランドにある程度の電流が流れると、寄生抵抗によってトランジスタT2のベース電位が上昇し、トランジスタT2がオン状態になる。このことにより、サイリスタとしての静電保護素子10の全体をオン状態に移行させる。トリガ構造は、2(b)に示すように、等価的にツェナーダイオード35および抵抗36で表すことができる。すなわち、N型層24がツェナーダイオード35のカソードの位置に対応する。抵抗36が等価的に上記寄生抵抗を表している。なお、本実施の形態では、トリガ構造を備えた静電保護素子10(サイリスタ)を例示して説明するが、トリガ構造は静電保護素子10の起動動作をより確実化するための構成であり、必須の構成ではない。なお、「N型層28」は、本発明に係る「第3の不純物層」の一例である。
【0029】
ここで、上述したように、静電保護素子10では、各不純物層(N型層20、P型層21、P型層22、N型層23、N型層24、P型層25、およびN型層26)から多層配線の2層目以降の上層配線に至るまでの経路の抵抗値を極力低くすることが重要である。
そのために、本実施の形態に係る静電保護素子10では、コンタクトとスルーホールとをスタック構造として一体化する構成を採用した。本実施の形態において、「コンタクト」とは、不純物層に直接接続されたビア構造をいい、「スルーホール」とは、配線間のビア構造をいう。本スタック構造を採用することにより、不純物層から上層配線に到る経路中に配線部分がないので、その分接続抵抗を小さくすることができる。
【0030】
図3を参照して、静電保護素子10に流れる電流の経路(電流経路)、および電流経路上の寄生抵抗について説明する。メインの電流Is1が、N型層20、P型層21を介してアノードAからカソードCに向かってながれ、トリガの電流Is2がトリガ構造のカソードであるN型層24からカソードCに向かって流れる。この電流の経路上には。コンタクトとスルーホールとによる寄生抵抗として、N型層26、P型層25、N型層24、N型層23、およびP型層22の位置に、各々抵抗Rp2、Rp3、Rp4、Rp5、およびRp6が存在する。また、N型層20、およびP型層21の合計の抵抗Rp1が存在する。例えば、アノードAからカソードCに流れる主たる電流Is1の経路上には。抵抗Rp3、Rp1、およびRp5が存在する。静電保護素子10では、このコンタクトとスルーホールによって発生する寄生抵抗を極力低減するために、これらの位置にスタック構造を採用している。
【0031】
図4(a)を参照して、本実施の形態に係るスタック構造についてより詳細に説明する。
図4(a)は、一例として、P型層22上に形成されたスタック構造を示しているが、他のスタック構造も同様の構成となっている。上述したように、静電保護素子10は、絶縁膜15上に形成された第1層配線16、第1層配線16と絶縁膜17を挟んで第1層配線16の上部に形成された第2層配線18の2層配線を備えている。
図4(a)に示すように、本実施の形態に係るスタック構造27は、P型層22に接続された第1層配線16、P型層22の直上において第1層配線16にスルーホールを介して接続された第2層配線18を含んでいる。このスタック構造27によれば、P型層22から第2層配線18に至る経路上に第1層配線16自体が存在しないため、当該経路上の抵抗を極力低減することが可能となっている。このことにより、電流Is1、Is2の経路上の抵抗、すなわち、放電抵抗を極力小さくすることが可能となっている。
【0032】
図4(b)を参照して、スタック構造27の効果について説明する。
図4(b)は、アノードA-カソードC間の電圧V(V:ボルト)に対する電流I(A:アンペア)の変化(以下、「V-I特性」)を示している。
図4(b)<1>は、本実施の形態に係るスタック構造27を採用し、第1層配線16自体の抵抗をなくした場合の本実施の形態に係るV-I特性、
図4(b)<2>は、本実施の形態に係るスタック構造27を採用せず、第1層配線16自体の抵抗が存在する場合の従来技術に係るV-I特性を、各々示している。
【0033】
図4(b)<1>、<2>の各々について、V-I特性を直線近似し、抵抗を算出すると、本実施の形態に係るV-I特性を直線L1で近似し求めた抵抗R1(=V/I)は、従来技術に係るV-I特性を直線L2で近似し求めた抵抗R2(V/I)より明らかに小さい。実際の計算によると、R1≒R2/4、すなわち、本例では本実施の形態に係るスタック構造27を用いた場合、従来技術に係る配線と比較して配線抵抗が1/4程度となった。従って、本実施の形態に係るスタック構造27が配線経路の抵抗削減に有効に寄与していることがわかる。
【0034】
スタック構造27を含む静電保護素子10の製造方法は、概略以下のとおりである。
すなわち、まず半導体基板11上に、各不純物層(N型層20、P型層21、P型層22、N型層23、N型層24、P型層25、N型層26、およびN型層28)を形成する。
その後、絶縁膜15を形成する。
その後、絶縁膜15の、P型層22、N型層23、N型層24、P型層25、およびN型層26に対応する位置にスルーホールを形成する。
その後、全面に第1層配線16を形成し、パターニングする。
その後、絶縁膜17を形成する。
その後、絶縁膜17の、P型層22、N型層23、N型層24、P型層25、およびN型層26に対応する位置にスルーホールを形成する。すなわち、絶縁膜15のスルーホールの直上に絶縁膜17のスルーホールを形成する。
その後、全面に1層配線18を形成し、パターニングする。
その後、保護膜19を形成する。
【0035】
なお、上記実施の形態に係る静電保護素子では、静電保護素子を構成する素子としてサイリスタを適用した形態を例示して説明したが、これに限られず、例えばダイオードを適用した形態としてもよい。
【0036】
また、上記実施の形態では2層の配線によってスタック構造を形成する形態を例示して説明したが、これに限られず、3層以上の多層配線にスタック構造を形成する形態としてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10・・・静電保護素子、11・・・半導体基板、12・・・埋込酸化膜、13・・・エピタキシャル層、14a・・・トレンチ、14b・・・ポリシリコン、15・・・絶縁膜、16・・・第1層配線、17・・・絶縁膜、18・・・第2層配線、19・・・保護膜、20・・・N型層、21・・・P型層、22・・・P型層、23・・・N型層、24・・・N型層、25・・・P型層、26・・・N型層、27・・・スタック構造、28・・・N型層、29・・・トリガ構造、30・・・半導体集積回路、32・・・内部回路、33・・・入力バッファ、34・・・入力端子、35・・・ツェナーダイオード、36・・・抵抗、A・・・アノード、C・・・カソード、Rp1~Rp6・・・抵抗、T1、T2・・・トランジスタ