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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/42 20060101AFI20241108BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20241108BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241108BHJP
   B41J 19/18 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B41J29/42 B
B41J29/38 701
B41J2/01 303
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J19/18 L
B41J19/18 N
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021032851
(22)【出願日】2021-03-02
(65)【公開番号】P2022133904
(43)【公開日】2022-09-14
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】楊 将貴
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-089163(JP,A)
【文献】特開昭62-152771(JP,A)
【文献】韓国登録特許第2149465(KR,B1)
【文献】特開2014-160427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00 - 29/70
B41J 2/01 - 2/21
B41J 3/01 - 3/54
B41J 19/00 - 19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を支持する支持台と、
印刷ヘッドと、
互いに交差する方向を第1方向および第2方向としたとき、前記支持台に支持された媒体と前記印刷ヘッドとを、相対的に前記第1方向または前記第2方向に移動させる移動機構と、
タッチパネル式の表示画面を有する表示装置と、
制御装置と、
を備え、
前記表示画面には、前記第1方向に対応した第1スワイプ方向と、前記第2方向に対応した第2スワイプ方向とが予め設定されており、
前記制御装置は、
利用者が前記表示画面上をスワイプするとき、利用者が前記表示画面に最初に触れた位置である基準位置、前記基準位置からスワイプした方向である移動方向、および、前記基準位置からの移動量を記録する記録部と、
前記第1スワイプ方向および前記第2スワイプ方向に対する前記移動方向に基づいて、前記支持台に支持された媒体に対して前記印刷ヘッドが相対的に移動する方向であるヘッド移動方向を決定する方向決定部と、
前記移動量に基づいて、前記支持台に支持された媒体に対して相対的に移動する前記印刷ヘッドの移動速度であるヘッド移動速度を決定する速度決定部と、
前記支持台に支持された媒体に対して前記印刷ヘッドを前記ヘッド移動方向に前記ヘッド移動速度で相対的に移動させる移動制御部と、
を備えた、プリンタ。
【請求項2】
前記記録部は、前記第1スワイプ方向の移動量である第1移動量、および、前記第2スワイプ方向の移動量である第2移動量を記録し、
前記方向決定部は、前記第1移動量の絶対値が前記第2移動量の絶対値以上の場合、前記ヘッド移動方向を前記第1方向に決定し、前記第1移動量の絶対値が前記第2移動量の絶対値未満の場合、前記ヘッド移動方向を前記第2方向に決定し、
前記速度決定部は、前記第1移動量の絶対値が前記第2移動量の絶対値以上の場合、前記第1移動量を前記移動量として前記ヘッド移動速度を決定し、前記第1移動量の絶対値が前記第2移動量の絶対値未満の場合、前記第2移動量を前記移動量として前記ヘッド移動速度を決定する、請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項3】
前記速度決定部は、前記移動量の絶対値が第1基準移動量以下のとき、前記ヘッド移動速度を0に決定し、前記移動量の絶対値が前記第1基準移動量より大きいとき、前記ヘッド移動速度の絶対値を第1速度に決定する、請求項1または2に記載されたプリンタ。
【請求項4】
前記速度決定部は、前記移動量の絶対値と前記ヘッド移動速度の絶対値とが比例関係であり、前記移動量の絶対値が大きくなるに従って前記ヘッド移動速度の絶対値が大きくなるように、前記移動量の絶対値から前記ヘッド移動速度の絶対値を決定する、請求項1または2に記載されたプリンタ。
【請求項5】
前記速度決定部は、前記移動量の絶対値が第2基準移動量以下のとき、前記ヘッド移動速度を0に決定し、
前記速度決定部は、前記移動量の絶対値が前記第2基準移動量より大きいとき、前記移動量の絶対値と前記ヘッド移動速度の絶対値とが線形関係であり、前記移動量の絶対値が大きくなるに従って前記ヘッド移動速度の絶対値が大きくなるように、前記移動量の絶対値から前記ヘッド移動速度の絶対値を決定する、請求項1または2に記載されたプリンタ。
【請求項6】
前記速度決定部は、前記移動量の絶対値が前記第2基準移動量よりも大きく、かつ、前記第2基準移動量よりも大きい第3基準移動量以下のとき、前記移動量の絶対値と前記ヘッド移動速度の絶対値とが線形関係であり、前記移動量の絶対値が大きくなるに従って前記ヘッド移動速度の絶対値が大きくなるように、前記移動量の絶対値から前記ヘッド移動速度の絶対値を決定し、
前記速度決定部は、前記移動量の絶対値が前記第3基準移動量よりも大きいとき、前記ヘッド移動速度の絶対値を第2速度に決定する、請求項5に記載されたプリンタ。
【請求項7】
前記速度決定部は、前記移動量の絶対値と、前記ヘッド移動速度の絶対値との関係がn次多項式(nは奇数)で示された関係であり、前記移動量の絶対値が第4基準移動量以下のとき、前記移動量の絶対値が大きくなるに従って、単位速度当たりの前記ヘッド移動速度の増加量が大きくなるように、前記移動量の絶対値から前記ヘッド移動速度の絶対値を決定し、前記移動量の絶対値が前記第4基準移動量よりも大きいとき、前記移動量の絶対値が大きくなるに従って、単位速度当たりの前記ヘッド移動速度の増加量が小さくなるように、前記移動量の絶対値から前記ヘッド移動速度の絶対値を決定する、請求項1または2に記載されたプリンタ。
【請求項8】
音を発する発生器を備え、
前記制御装置は、前記支持台に支持された媒体に対して前記印刷ヘッドを前記ヘッド移動方向に前記ヘッド移動速度で相対的に移動させているときに、前記発生器から音を発する通知部を備えた、請求項1から7までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項9】
前記通知部は、前記移動制御部による前記印刷ヘッドの前記ヘッド移動方向が前記第1方向のとき、前記発生器から第1の音を発し、
前記通知部は、前記移動制御部による前記印刷ヘッドの前記ヘッド移動方向が前記第2方向のとき、前記発生器から前記第1の音とは異なる第2の音を発する、請求項8に記載されたプリンタ。
【請求項10】
前記移動制御部は、前記支持台に支持された媒体に対して前記印刷ヘッドを前記ヘッド移動方向に前記ヘッド移動速度で相対的に移動させて、印刷開始時の前記印刷ヘッドの原点位置を決定する、請求項1から9までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、媒体に対して印刷を行うプリンタが開示されている。この種のプリンタは、媒体を支持する支持台と、インクを吐出する印刷ヘッドとを備えている。印刷ヘッドは、キャリッジに搭載されており、キャリッジは、主走査方向に延びたガイドレールに係合している。
【0003】
上記プリンタでは、キャリッジおよび印刷ヘッドを主走査方向に移動させつつ、印刷ヘッドから媒体にインクを吐出させることで、主走査方向の1ラインにおける印刷が行われる。1ラインの印刷が終了した後、支持台に支持された媒体を副走査方向に搬送する。媒体の搬送後、次の1ラインの印刷が行われる。以下、1ラインの印刷と、媒体の搬送とを繰り返し実行することで、対象の印刷画像を媒体に印刷することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-196537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなプリンタでは、媒体に対する印刷ヘッドの原点位置を調整することが行われる。この印刷ヘッドの原点位置とは、媒体に対する印刷の開始位置のことである。この原点位置の調整は、例えばプリンタに設けられた操作パネルの操作ボタン(例えばカーソルボタン)を利用者が押す。このとき、利用者に押された操作ボタンの種類に応じて、支持台に支持された媒体に対する印刷ヘッドの相対的な位置が手動で変更されて、原点位置が決定される。
【0006】
操作ボタンとして、操作パネルの表示画面上に設けられたタッチパネル式のものがあり得る。タッチパネル式の場合、利用者は、どの操作ボタンを押しているかを確認するために、表示画面を目視しながら操作ボタンを操作することになる。そのため、印刷ヘッドの位置を手動で変更している間、媒体に対する印刷ヘッドの相対的な位置を目視で確認し難かった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、利用者が印刷ヘッドを目視しながら、支持台に支持された媒体に対する印刷ヘッドの相対的な位置を手動で変更させ易いプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプリンタは、媒体を支持する支持台と、印刷ヘッドと、移動機構と、表示装置と、制御装置とを備えている。前記移動機構は、互いに交差する方向を第1方向および第2方向としたとき、前記支持台に支持された媒体と前記印刷ヘッドとを、相対的に前記第1方向または前記第2方向に移動させる。前記表示装置は、タッチパネル式の表示画面を有する。前記表示画面には、前記第1方向に対応した第1スワイプ方向と、前記第2方向に対応した第2スワイプ方向とが予め設定されている。前記制御装置は、記録部と、方向決定部と、速度決定部と、移動制御部とを備えている。前記記録部は、利用者が前記表示画面上をスワイプするとき、利用者が前記表示画面に最初に触れた位置である基準位置、前記基準位置からスワイプした方向である移動方向、および、前記基準位置からの移動量を記録する。前記方向決定部は、前記第1スワイプ方向および前記第2スワイプ方向に対する前記移動方向に基づいて、前記支持台に支持された媒体に対して前記印刷ヘッドが相対的に移動する方向であるヘッド移動方向を決定する。前記速度決定部は、前記移動量に基づいて、前記支持台に支持された媒体に対して相対的に移動する前記印刷ヘッドの移動速度であるヘッド移動速度を決定する。前記移動制御部は、前記支持台に支持された媒体に対して前記印刷ヘッドを前記ヘッド移動方向に前記ヘッド移動速度で相対的に移動させる。
【0009】
上記プリンタによれば、利用者が表示画面上をスワイプした移動方向および移動量に応じて、支持台に対して相対的に移動する印刷ヘッドのヘッド移動方向およびヘッド移動速度を決定することができる。利用者が表示画面をスワイプすることは、表示画面を目視することなく、印刷ヘッドを目視しながら行えることである。よって、利用者が印刷ヘッドを目視しながら、タッチパネル式の表示画面をスワイプすることで、支持台に支持された媒体に対する印刷ヘッドの相対的な位置を手動で変更させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るプリンタの斜視図である。
図2】カバーが開いた状態のプリンタの正面図である。
図3】実施形態に係るプリンタのブロック図である。
図4】表示画面に表示されたメイン画面を示す図である。
図5】表示画面に表示された方向速度設定画面を示す図である。
図6】移動量とヘッド移動速度との関係の一例を示した第1グラフを示す図である。
図7】移動量とヘッド移動速度との関係の一例を示した第2グラフを示す図である。
図8】移動量とヘッド移動速度との関係の一例を示した第3グラフを示す図である。
図9】移動量とヘッド移動速度との関係の一例を示した第4グラフを示す図である。
図10】移動量とヘッド移動速度との関係の一例を示した第5グラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るプリンタの実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。
【0012】
図1図2は、それぞれ本実施形態に係るプリンタ10の斜視図、正面図である。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれプリンタ10の前、後、左、右、上、下を示している。また、符号X、Yは、それぞれ副走査方向、主走査方向を示している。例えば主走査方向Yは左右方向である。副走査方向Xは、平面視において主走査方向Yと交差しており、ここでは直交している。副走査方向Xは、例えば前後方向である。本実施形態では、主走査方向Yは第1方向の一例である。副走査方向Xは第2方向の一例である。ただし、これら方向は、説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではない。
【0013】
図2に示すように、プリンタ10は、媒体5にインクを吐出して、媒体5に対して印刷を行う装置である。媒体5は、例えば記録紙であるが、その種類は特に限定されない。本実施形態では、プリンタ10は、インクジェット式のプリンタであるが、印刷の方式は特に限定されない。プリンタ10は、いわゆるフラットベッドタイプのプリンタであり、後述の支持台40(図2参照)が副走査方向Xに移動することで、媒体5も副走査方向Xに移動する。ただし、プリンタ10は、いわゆるロールtoロールタイプのプリンタであってもよく、支持台が移動せずに、支持台に支持された媒体5のみが副走査方向Xに移動するようなものであってもよい。
【0014】
また、本実施形態では、プリンタ10は、カッティングヘッド付きプリンタであり、媒体5をカットするカット機能を有している。ただし、プリンタ10には、カッティングヘッドが設けられておらず、カット機能が有されていなくてもよい。
【0015】
図1に示すように、プリンタ10は、ケース11と、カバー12とを備えている。ケース11は、例えば直方体形状であり、内部空間を有している。当該内部空間において印刷が行われる。図2に示すように、ケース11の前部には開口15が形成されている。カバー12は、開口15を開閉自在にケース11に支持されている。カバー12は、後端を軸に回転可能に構成されている。図1に示すように、カバー12の前部および上部には、窓16が設けられている。窓16は、透明または半透明の部材、例えばアクリル板によって形成されている。利用者は、窓16を通じてケース11の内部空間を視認することができる。
【0016】
次に、プリンタ10の内部構成について説明する。図2に示すように、プリンタ10は、ガイドレール18と、印刷キャリッジ20と、印刷ヘッド22と、カッティングキャリッジ24と、カッティングヘッド26と、光照射装置27と、原点調整発光体28と、を備えている。
【0017】
ガイドレール18は、ケース11の内部空間においてケース11に固定されている。ガイドレール18は、主走査方向Yに延びている。印刷キャリッジ20は、ガイドレール18に摺動自在に係合している。印刷キャリッジ20は、ガイドレール18に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0018】
印刷ヘッド22は、印刷キャリッジ20に設けられている。印刷ヘッド22の数は特に限定されないが、ここでは3つである。印刷ヘッド22は、支持台40に支持された媒体5に向かってインクを吐出する。印刷ヘッド22は、支持台40よりも上方に配置されている。3つの印刷ヘッド22は、主走査方向Yに並んで配置されている。図示は省略するが、各印刷ヘッド22の底面には、インクを吐出する複数のノズルが形成されている。本実施形態では、印刷ヘッド22から吐出されるインクは、光(例えば紫外線や赤外線)が照射されると乾燥が促進される光硬化性インクであるが、当該インクの種類は特に限定されるものではない。また、印刷ヘッド22から吐出されるインクの色も特に限定されず、いわゆるプロセスカラーインクや、クリアインクやホワイトインクなどの特色インクのうちの何れかであってもよい。
【0019】
本実施形態では、印刷ヘッド22は、可撓性を有するインクチューブ(図示せず)を介して、ケース11内に収容されたインクカートリッジ23と連通している。インクカートリッジ23には、印刷ヘッド22から吐出される色のインクが収容されている。
【0020】
カッティングキャリッジ24は、ガイドレール18に摺動自在に係合しており、ガイドレール18に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。また、カッティングキャリッジ24は、印刷キャリッジ20に連結可能に構成されている。カッティングキャリッジ24は、印刷キャリッジ20と連結しているときには、印刷キャリッジ20と共に主走査方向Yに移動可能に構成され、印刷キャリッジ20と連結していないときには、単独で主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0021】
カッティングヘッド26は、カッティングキャリッジ24に設けられている。図示は省略するが、カッティングヘッド26は、カッターを有しており、カッターによって媒体5が切断される。カッティングヘッド26は、カッティングキャリッジ24と共に主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0022】
光照射装置27は、印刷ヘッド22から吐出されたインクに光(例えば紫外線や赤外線)を照射する装置であり、ここでは印刷キャリッジ20に設けられている。本実施形態では、光照射装置27は、印刷キャリッジ20の右側に設けられているが、印刷キャリッジ20の左側や、印刷キャリッジ20の左右両側に設けられてもよいし、カッティングキャリッジ24に設けられてもよい。光照射装置27は、支持台40に支持された媒体5に吐出されたインクに光を照射するように構成されている。
【0023】
原点調整発光体28は、印刷ヘッド22やカッティングヘッド26の原点の位置を調整および決定する際に使用されるものである。原点調整発光体28は、例えば印刷キャリッジ20またはカッティングキャリッジ24に設けられており、印刷ヘッド22またはカッティングキャリッジ24と共に主走査方向Yに移動可能に構成されている。原点調整発光体28は、支持台40(または、支持台40に媒体5が支持されているときには媒体5)に照射形状が点状の光を発する。このことで、利用者は、照射形状が点状の光の位置から、印刷ヘッド22またはカッティングヘッド26の位置を把握することができる。なお、原点調整発光体28の種類は特に限定するものではないが、例えばLED(Light Emitting Diode)によって構成されている。原点調整発光体28は、例えばLEDポインタや、レーザポインタである。
【0024】
本実施形態では、図2に示すように、プリンタ10は、支持台40を備えている。支持台40は、媒体5を支持する。ここでは、支持台40に媒体5が載置されている。支持台40は、ガイドレール18、印刷キャリッジ20、印刷ヘッド22、カッティングキャリッジ24、カッティングヘッド26、光照射装置27および原点調整発光体28よりも下方に配置されている。支持台40の上面は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がっている。本実施形態では、支持台40は、昇降可能に構成されている。
【0025】
図3に示すように、プリンタ10は、移動機構30を備えている。移動機構30は、支持台40に支持された媒体5と印刷ヘッド22とを、相対的に主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動させる機構である。本実施形態では、移動機構30は、印刷ヘッド22以外に、印刷キャリッジ20、カッティングキャリッジ24、カッティングヘッド26、光照射装置27および原点調整発光体28と、支持台40に支持された媒体5とを、相対的に主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動させる機構でもある。移動機構30は、ヘッド移動機構32と、媒体移動機構34とを有している。
【0026】
ヘッド移動機構32は、支持台40に支持された媒体5に対して、印刷ヘッド22、カッティングヘッド26および原点調整発光体28などを相対的に主走査方向Yに移動させることが可能なものである。ここでは、カッティングキャリッジ24と印刷キャリッジ20とが連結しているときには、ヘッド移動機構32は、印刷ヘッド22、カッティングヘッド26および原点調整発光体28を主走査方向Yに移動させる。一方、カッティングキャリッジ24と印刷キャリッジ20とが連結していないときには、ヘッド移動機構32は、カッティングヘッド26および原点調整発光体28を主走査方向Yに移動させる。
【0027】
本実施形態では、ヘッド移動機構32は、図示は省略するが、例えばガイドレール18の左右の両端部の周囲に設けられた左右のプーリと、左右のプーリに巻き掛けられたベルトと、一方のプーリに接続されたキャリッジモータとを備えている。ベルトには、カッティングキャリッジ24が固定されている。キャリッジモータが駆動することで、一方のプーリが回転し、左右のプーリの間でベルトが走行する。このことで、カッティングキャリッジ24がガイドレール18に沿って主走査方向Yに移動すると共に、カッティングヘッド26および原点調整発光体28(例えば印刷キャリッジ20とカッティングキャリッジ24が連結しているときは、カッティングヘッド26、印刷ヘッド22および原点調整発光体28)も主走査方向Yに移動する。
【0028】
媒体移動機構34は、例えば印刷ヘッド22およびカッティングヘッド26に対して、支持台40に支持された媒体5を相対的に副走査方向Xに移動させる機構である。本実施形態では、媒体移動機構34は、支持台40を副走査方向Xに移動させることで、媒体5も副走査方向Xに移動させる。媒体移動機構34は、図示は省略するが、例えば副走査方向Xに延びた一対のレールと、一対のレールに摺動自在に係合する摺動部材と、摺動部材に接続されたフィードモータとを備えている。摺動部材には、支持台40が載置されている。本実施形態では、フィードモータが駆動することで、摺動部材が一対のレールに沿って副走査方向Xに移動する。摺動部材の移動に伴い、支持台40、および、支持台40に支持された媒体5も副走査方向Xに移動する。
【0029】
本実施形態では、図3に示すように、プリンタ10は、表示装置50と、発生器55と、制御装置60とを備えている。図1に示すように、表示装置50は、表示画面52を有している。表示画面52は、タッチパネル式である。利用者は、表示画面52上を手でタップ、スワイプ、フリック、ドラッグ、ピンチなどをすることで、プリンタ10を操作することが可能である。本実施形態では、表示装置50は、ケース11に設けられているものである。表示装置50は、ケース11に対して着脱可能なものであってもよい。また、表示装置50は、ケース11に必ずしも設けられている必要はなく、例えばスマートフォンやタブレット端末などの携帯型の端末によって実現されるものであってもよい。
【0030】
図3に示す発生器55は、音を発するものである。発生器55の種類は特に限定されるものではないが、例えばブザーである。発生器55の設置位置も特に限定されず、表示装置50を操作している利用者が発生器55から発せられる音が聞こえる位置であればよい。発生器55は、ケース11(例えばケース11の前部であって、表示装置50の近傍の位置)に固定されている。発生器55は、表示装置50と一体化していてもよい。発生器55を表示装置50の近くに設けることで、表示装置50を操作している利用者が、発生器55から発せられた音を聞き易い。
【0031】
制御装置60は、印刷およびカットに関する制御を行う。制御装置60の構成は特に限定されない。制御装置60は、例えばマイクロコンピュータである。制御装置60は、例えばI/Fと、CPUと、ROMと、RAMと、を備えている。制御装置60は、ケース11の内部に設けられている。ただし、制御装置60は、ケース11の外部に設置されたコンピュータなどで実現されてもよい。この場合、制御装置60は、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されている。
【0032】
制御装置60は、移動機構30(詳しくはヘッド移動機構32および媒体移動機構34)に通信可能に、かつ、電気的に接続されている。また、制御装置60は、印刷ヘッド22、カッティングヘッド26、光照射装置27および原点調整発光体28に通信可能に、かつ、電気的に接続されている。制御装置60は、表示装置50および発生器55に通信可能に、かつ、電気的に接続されており、表示装置50および発生器55を制御する。
【0033】
ところで、利用者は、プリンタ10を使用して媒体5に印刷を行う前、または、媒体5をカットする前において原点位置の調整を行う。印刷前では、印刷ヘッド22の原点位置を調整し、カット前では、カッティングヘッド26の原点位置を調整する。なお、印刷ヘッド22の原点位置の調整と、カッティングヘッド26の原点位置の調整とは、原点位置の調整を行う対象が異なるのみで、基本的な処理手順は同じである。そのため、以下、印刷ヘッド22の原点位置の調整について説明する。カッティングヘッド26の原点位置の調整は、以下の説明において、印刷ヘッド22をカッティングヘッド26に言い換えることで実現される。
【0034】
ここで、印刷ヘッド22の原点位置の調整とは、印刷を開始するときの支持台40に支持されている媒体5に対する印刷ヘッド22の位置を調整するこという。印刷ヘッド22の原点位置の調整とは、印刷開始位置の調整でもあり得る。原点位置の調整では、原点調整発光体28が媒体5に向かって照射形状が点状の光を発する。利用者は、原点調整発光体28から光が発せられながら、媒体5に対する印刷ヘッド22の相対的な位置を手動で変更させることで、原点調整発光体28からの光から印刷ヘッド22の位置を把握し、原点位置を決定する。ここで、印刷ヘッド22の位置を手動で変更するとは、例えば表示装置50を操作してプリンタ10を原点位置調整モードに切り替えて、タッチパネル式の表示画面52に対して利用者が所定の操作を行い、所定の操作に応じて媒体5に対して相対的に印刷ヘッド22を移動させることをいう。以下、支持台40に支持された媒体5に対して相対的に印刷ヘッド22が移動することを、単に印刷ヘッド22が移動するともいう。
【0035】
本実施形態では、タッチパネル式の表示画面52上を利用者がスワイプし、スワイプした方向、および、スワイプしたときの利用者の指の移動量に応じて、媒体5に対して印刷ヘッド22が移動する方向および移動速度を決定する。ここでは、図4に示すように、表示画面52には、第1スワイプ方向Y1、および、第2スワイプ方向X1が予め設定されている。第1スワイプ方向Y1は、図1の主走査方向Yに対応し、第2スワイプ方向X1は、図1の副走査方向Xに対応している。例えば第1スワイプ方向Y1の一方(例えば図4の左方)、および、他方(例えば図4の右方)は、それぞれ主走査方向Yの一方(例えば左方)、および、他方(例えば右方)に対応している。第2スワイプ方向X1の一方(例えば図4の下方)、および、他方(例えば図4の上方)は、それぞれ副走査方向Xの一方(例えば前方)、および、他方(例えば後方)に対応している。
【0036】
本実施形態では、タッチパネル式の表示画面52を利用者がスワイプすることで印刷ヘッド22を相対的に移動させるために、図3に示すように、制御装置60は、記憶部61と、表示部62と、記録部63と、方向決定部64と、速度決定部65と、移動制御部66と、通知部67とを備えている。制御装置60の各部61~67は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば制御装置60の各部61~67は、1つまたは複数のプロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。本実施形態では、制御装置60の各部61~67は、ケース11の内部に設けられた基板などによって実現されている。ただし、制御装置60の各部61~67の一部または全部は、ケース11の外部に設置されたコンピュータによって実現されてもよい。なお、表示部62と、記録部63と、方向決定部64と、速度決定部65と、移動制御部66と、通知部67の具体的な制御などは後述する。
【0037】
次に、タッチパネル式の表示画面52上をスワイプして印刷ヘッド22を手動で移動させて印刷ヘッド22の原点位置を調整する手順について説明する。ここでは、例えば表示画面52上に配置された原点位置調整ボタン(図示せず)を利用者がタップすることで、プリンタ10を原点位置調整モードに切り替える。
【0038】
プリンタ10が原点位置調整モードに切り替えられたとき、図3の表示部62は、図4に示すように、表示画面52にメイン画面DP1を表示する。メイン画面DP1には、開始領域AR11、終了領域AR12および決定領域AR13が配置されている。終了領域AR12を利用者がタッチ(またはタップ)することで、原点位置調整モードが終了する。決定領域AR13を利用者がタッチ(またはタップ)することで、現在の媒体5に対する印刷ヘッド22の実際の位置が原点位置に決定される。
【0039】
なお、本実施形態では、終了領域AR12および決定領域AR13には、タッチ無効機能が設けられている。タッチ無効機能は、領域AR12、AR13をタッチし続けた時間が所定の時間以上の場合、領域AR12、AR13に対応した制御を行わない機能である。例えば決定領域AR13をタッチし続けた時間が所定の時間未満の場合には、印刷ヘッド22の原点位置が決定される。一方、決定領域AR13をタッチし続けた時間が所定の時間以上の場合には、印刷ヘッド22の原点位置の決定は行われない。この場合、表示画面52には、メイン画面DP1の表示が維持される。
【0040】
開始領域AR11は、原点位置を調整するために印刷ヘッド22の移動を開始するための領域である。利用者が開始領域AR11をタッチ、言い換えると開始領域AR1でスワイプを開始したとき、スワイプに応じた印刷ヘッド22の移動を開始する。本実施形態では、開始領域AR11をタッチしたとき、開始領域AR11に対応した表示画面52のタッチした位置に、アイコン53が表示される。利用者が開始領域AR11をタッチしたとき、表示部62は、表示画面52に表示される画面を方向速度設定画面DP2(図5参照)に切り替える。アイコン53は、利用者が表示画面52をタッチした位置を示し、図示は省略するが、方向速度設定画面DP2にも配置されるものである。アイコン53は、スワイプしたときの指の位置に応じて移動するものである。
【0041】
図5に示すように、方向速度設定画面DP2は、利用者がスワイプする画面であり、スワイプしたときの移動方向D10および移動量V10(言い換えると移動距離)に応じて、支持台40に支持された媒体5に対して印刷ヘッド22を移動させるための画面である。方向速度設定画面DP2には、スワイプ領域AR21が配置されている。スワイプ領域AR21は、利用者がスワイプする領域であり、スワイプ領域AR21内でスワイプまたはタッチし続けているときに、印刷ヘッド22は移動する。スワイプ領域AR21は、上述の開始領域AR11(図4参照)よりも広い領域である。
【0042】
本実施形態では、図3の記録部63は、利用者が表示画面52上のスワイプ領域AR21内をスワイプするとき、利用者が表示画面52に最初に触れた位置である基準位置P10、基準位置P10からスワイプした方向である移動方向D10、および、基準位置P10からの移動量V10を記録する。ここで、例えば図5に示すように、利用者が点P21から点P22までスワイプした場合について説明する。この場合、点P21が基準位置P10である。基準位置P10は、図4の開始領域AR11で利用者がタッチした位置と同じである。
【0043】
本実施形態では、移動量V10は、例えば点P21から点P22までの距離である。ここでは、移動量V10として、第1移動量V11と第2移動量V12が記録される。第1移動量V11は、第1スワイプ方向Y1における移動量のことである。第2移動量V12は、第2スワイプ方向X1における移動量のことである。本実施形態では、第1移動量V11および第2移動量V12には、マイナスの値が存在するものとする。例えば図5において基準位置P10から右方に移動した場合、第1移動量V11はプラスの値になり、基準位置P10から左方に移動した場合、第1移動量V11はマイナスの値になる。図5において基準位置P10から上方に移動した場合、第2移動量V12はプラスの値になり、基準位置P10から下方に移動した場合、第2移動量V12はマイナスの値になる。
【0044】
本実施形態では、第1移動量V11および第2移動量V12に基づいて移動方向D10を算出することが可能になる。よって、第1移動量V11および第2移動量V12を記録することで、移動方向D10を記録したともいえる。なお、記録部63によって記録された基準位置P10、移動方向D10、および、移動量V10(詳しくは、第1移動量V11、第2移動量V12)に関する情報は、図3の記憶部61に記憶される。
【0045】
次に、図3の方向決定部64は、第1スワイプ方向Y1および第2スワイプ方向X1に対する移動方向D10に基づいて、印刷ヘッド22のヘッド移動方向D50(図5参照)を決定する。本実施形態では、ヘッド移動方向D50は、主走査方向Yおよび副走査方向Xの何れかの方向に決定され、例えば主走査方向Yと副走査方向Xの間の斜めの方向には決定されない。ここでは、記録部63によって記録された第1移動量V11および第2移動量V12に基づいて、ヘッド移動方向D50が決定される。方向決定部64は、第1移動量V11の絶対値が第2移動量V12の絶対値以上の場合、ヘッド移動方向D50を主走査方向Yに決定する。一方、方向決定部64は、第1移動量V11の絶対値が第2移動量V12の絶対値未満の場合、ヘッド移動方向D50を副走査方向Xに決定する。図5の一例では、ヘッド移動方向D50は、主走査方向Yに決定される。
【0046】
次に、図3の速度決定部65は、移動量V10に基づいて印刷ヘッド22の移動速度であるヘッド移動速度S50(図6図10参照)を決定する。本実施形態では、速度決定部65は、第1移動量V11の絶対値が第2移動量V12の絶対値以上の場合、第1移動量V11を移動量V10として、移動量V10に基づいてヘッド移動速度S50を決定する。一方、速度決定部65は、第1移動量V11の絶対値が第2移動量V12の絶対値未満の場合、第2移動量V12を移動量V10として、移動量V10に基づいてヘッド移動速度S50を決定する。図5の一例では、第1移動量V11を移動量V10として、ヘッド移動速度S50が決定される。
【0047】
なお、ヘッド移動速度S50には、プラスおよびマイナスの値が存在する。ここでは、移動量V10がプラスのときにはヘッド移動速度S50がプラスになり、移動量V10がマイナスのときにはヘッド移動速度S50がマイナスになる。例えばヘッド移動方向D50が主走査方向Yである場合、ヘッド移動速度S50がプラスのとき、印刷ヘッド22は右方に移動し、ヘッド移動速度S50がマイナスのとき、印刷ヘッド22は左方に移動する。一方、ヘッド移動方向D50が副走査方向Xである場合、ヘッド移動速度S50がプラスのとき、印刷ヘッド22は後方に移動し、ヘッド移動速度S50がマイナスのとき、印刷ヘッド22は前方に移動する。
【0048】
本実施形態では、ヘッド移動速度S50の絶対値は、移動量V10の絶対値に基づいて決定される。例えばヘッド移動速度S50の絶対値は、図6図10に示す第1グラフG1~第5グラフG5の何れかに基づいて決定されてもよい。図6図10のグラフにおいて、横軸は移動量V10の絶対値を示し、縦軸はヘッド移動速度S50の絶対値を示している。速度決定部65は、図6図10の第1グラフG1~第5グラフG5の何れかを示す数式に基づいて、移動量V10の絶対値からヘッド移動速度S50の絶対値を決定してもよい。
【0049】
図6の第1グラフG1のように、速度決定部65は、移動量V10の絶対値が第1基準移動量V21以下のとき、ヘッド移動速度S50の絶対値を0に決定してもよい。一方、速度決定部65は、移動量V10の絶対値が第1基準移動量V21よりも大きいとき、ヘッド移動速度S50の絶対値を第1速度S51に決定してもよい。このように、第1グラフG1を示す数式に基づいてヘッド移動速度S50の絶対値を決定することで、印刷ヘッド22が移動する際には、ヘッド移動速度S50の絶対値は一定であるため、利用者は、印刷ヘッド22のヘッド移動速度S50を気にすることなく、ヘッド移動方向D50のみを気にしてスワイプすることができる。
【0050】
図7の第2グラフG2は、移動量V10の絶対値と、ヘッド移動速度S50の絶対値とが比例関係を示すグラフである。速度決定部65は、図7に示すように、移動量V10の絶対値が大きくなるに従って、ヘッド移動速度S50の絶対値が大きくなるように、移動量V10の絶対値からヘッド移動速度S50の絶対値が決定されてもよい。このように、第2グラフG2を示す数式に基づいてヘッド移動速度S50の絶対値を決定することで、利用者のスワイプの移動量V10に応じてヘッド移動速度S50を詳細に設定することができる。
【0051】
図8の第3グラフG3は、移動量V10の絶対値が第2基準移動量V22よりも大きいとき、移動量V10の絶対値と、ヘッド移動速度S50の絶対値とが線形関係になるグラフである。速度決定部65は、図8に示すように、移動量V10の絶対値が第2基準移動量V22以下のとき、ヘッド移動速度S50の絶対値を0に決定してもよい。一方、速度決定部65は、移動量V10の絶対値が第2基準移動量V22よりも大きいとき、移動量V10の絶対値とヘッド移動速度S50の絶対値とが線形関係であり、移動量V10の絶対値が大きくなるに従ってヘッド移動速度S50の絶対値が大きくなるように、移動量V10の絶対値からヘッド移動速度S50の絶対値が決定されてもよい。このように、第3グラフG3を示す数式に基づいてヘッド移動速度S50の絶対値を決定することで、例えば利用者が表示画面52のスワイプ領域AR21(図5参照)を誤ってスワイプした場合であっても、移動量V10が第2基準移動量V22以下であれば、印刷ヘッド22を移動させないようにすることができる。
【0052】
図9の第4グラフG4は、移動量V10の絶対値が第2基準移動量V22よりも大きく、かつ、第3基準移動量V23以下のとき、移動量V10の絶対値と、ヘッド移動速度S50の絶対値とが線形関係になるグラフである。ここで、第3基準移動量V23は、第2基準移動量V22よりも大きい。速度決定部65は、図9に示すように、移動量V10の絶対値が第2基準移動量V22よりも大きく、かつ、第3基準移動量V23以下のとき、移動量V10の絶対値とヘッド移動速度S50の絶対値とが線形関係であり、移動量V10の絶対値が大きくなるに従ってヘッド移動速度S50の絶対値が大きくなるように、移動量V10の絶対値からヘッド移動速度S50の絶対値が決定されてもよい。また、速度決定部65は、移動量V10の絶対値が第3基準移動量V23よりも大きいとき、ヘッド移動速度S50の絶対値を第2速度S52に決定してもよい。このように、第4グラフG4を示す数式に基づいてヘッド移動速度S50の絶対値を決定することで、ヘッド移動速度S50の絶対値の上限値を設定することができる。よって、移動量V10が想定以上に大きい場合であっても、ヘッド移動速度S50が速くなり過ぎることを抑制することができる。
【0053】
図10の第5グラフG5は、移動量V10の絶対値と、ヘッド移動速度S50の絶対値との関係が、n次多項式(nは奇数)で示されたグラフである。ただし、第5グラフG5は、いわゆるロジスティック曲線で示されたグラフであってもよい。なお、計算量を考慮すると、ロジスティック曲線よりもn次多項式の方が、計算量が少ないため、第5グラフG5はn次多項式の方が好ましい。速度決定部65は、移動量V10の絶対値が第4基準移動量V24以下のとき、移動量V10の絶対値が大きくなるに従って、単位速度当たりのヘッド移動速度S50の増加量が大きくなるように(すなわち、曲線L51の関係になるように)、移動量V10の絶対値からヘッド移動速度S50の絶対値が決定されてもよい。また、速度決定部65は、移動量V10の絶対値が第4基準移動量V24よりも大きいとき、移動量V10の絶対値が大きくなるに従って、単位速度当たりのヘッド移動速度S50の増加量が小さくなるように(すなわち、曲線L52の関係になるように)、移動量V10の絶対値からヘッド移動速度S50の絶対値が決定されてもよい。本実施形態では、移動量V10の絶対値が第4基準移動量V24のとき、ヘッド移動速度S50の絶対値が第3速度S53になる。この第4基準移動量V24と第3速度S53とを示す点P51が、変曲点になる。このように、第5グラフG5を示す数式に基づいてヘッド移動速度S50の絶対値を決定することで、例えば印刷ヘッド22の移動速度が低速および高速の場合に、移動量V10に応じてヘッド移動速度S50の絶対値を詳細に決定することができる。
【0054】
以上の図6図10に示すグラフG1~G5で示される数式などを使用してヘッド移動速度S50の絶対値が決定される。方向決定部64によってヘッド移動方向D50が決定され、かつ、速度決定部65によってヘッド移動速度S50が決定された後、図3の移動制御部66は、支持台40に支持された媒体5に対して印刷ヘッド22を相対的に移動させる。ここでは、移動制御部66は、支持台40に対して印刷ヘッド22をヘッド移動方向D50にヘッド移動速度S50で移動させるように、移動機構30を制御する。なお、本実施形態では、印刷ヘッド22が移動する際、原点調整発光体28と共に移動する。そのため、利用者は、原点調整発光体28から発せられた光が照射された媒体5の位置から印刷ヘッド22の位置を把握することができる。
【0055】
本実施形態では、図5に示すように、方向速度設定画面DP2のスワイプ領域AR21で利用者がスワイプしている間、印刷ヘッド22の移動が行われる。例えば利用者がスワイプして基準位置P10からの移動量V10が一定または変化している間、言い換えると利用者がスワイプ領域AR21をタッチし続けている間(例えば表示画面52に触れ続けている間)、基準位置P10からのタッチしている位置に応じて、ヘッド移動方向D50およびヘッド移動速度S50が適宜変更されながら、印刷ヘッド22が移動する。なお、利用者がスワイプを終了したとき、すなわち表示画面52に表示されたスワイプ領域AR21から指を離したとき、印刷ヘッド22の移動が終了する。言い換えると、利用者のスワイプが終了されたとき、ヘッド移動速度S50は0になる。利用者がスワイプを終了したとき、表示部62は、図4に示すように、表示画面52にメイン画面DP1を表示する。
【0056】
なお、本実施形態では、図3の通知部67は、移動制御部66によって印刷ヘッド22をヘッド移動方向D50にヘッド移動速度S50で移動させている間、発生器55から音を発する。言い換えると、通知部67は、利用者が表示画面52に表示されたスワイプ領域AR21上をスワイプしている間、発生器55から音を発する。このことで、利用者がスワイプをして印刷ヘッド22が移動している間には、音が発せられるため、利用者は印刷ヘッド22が移動していることを聴覚的に分かり易い。
【0057】
本実施形態では、通知部67は、ヘッド移動方向D50に応じて異なる音を発生器55から発してもよい。例えば通知部67は、ヘッド移動方向D50が主走査方向Yのとき、発生器55から第1の音を発するように構成されていてもよい。また、通知部67は、ヘッド移動方向D50が副走査方向Xのとき、発生器55から第1の音とは異なる第2の音を発するように構成されていてもよい。このことで、発生器55から発せられる音の種類が第1の音か第2の音かを聞き分けることによって、印刷ヘッド22の相対的な移動方向が主走査方向Yか副走査方向Xであるかが分かることができる。よって、利用者は、印刷ヘッド22の移動方向が聴覚的に分かり易い。
【0058】
以上、本実施形態では、図2に示すように、プリンタ10は、媒体5を支持する支持台40と、印刷ヘッド22と、移動機構30(図3参照)と、タッチパネル式の表示画面52を有する表示装置50(図1参照)と、制御装置60と、を備えている。移動機構30は、支持台40に支持された媒体5と印刷ヘッド22とを、相対的に主走査方向Yまたは副走査方向Xに移動させる。図4に示すように、表示画面52には、主走査方向Yに対応した第1スワイプ方向Y1と、副走査方向Xに対応した第2スワイプ方向X1とが予め設定されている。図3に示すように、制御装置60は、記録部63と、方向決定部64と、速度決定部65と、移動制御部66とを備えている。記録部63は、図5に示すように、利用者が表示画面52上をスワイプするとき、利用者が表示画面52に最初に触れた位置である基準位置P10、基準位置P10からのスワイプした方向である移動方向D10、および、基準位置P10からの移動量V10を記録する。方向決定部64は、第1スワイプ方向Y1および第2スワイプ方向X1に対する移動方向D10に基づいて、支持台40に支持された媒体5に対して印刷ヘッド22が相対的に移動する方向であるヘッド移動方向D50を決定する。速度決定部65は、移動量V10に基づいて、支持台40に支持された媒体5に対して相対的に移動する印刷ヘッド22の移動速度であるヘッド移動速度S50(図6図10参照)を決定する。移動制御部66は、支持台40に支持された媒体5に対して印刷ヘッド22をヘッド移動方向D50にヘッド移動速度S50で相対的に移動させる。
【0059】
このことによって、利用者が表示画面52上をスワイプした移動方向D10および移動量V10に応じて、支持台40に対して相対的に移動する印刷ヘッド22のヘッド移動方向D50およびヘッド移動速度S50を決定することができる。利用者が表示画面52上をスワイプすることは、表示画面52を目視することなく、印刷ヘッド22を目視しながら行えることである。よって、利用者が印刷ヘッド22を目視しながら、タッチパネル式の表示画面52をスワイプすることで、支持台40に支持された媒体5に対する印刷ヘッド22の相対的な位置を手動で変更させることができる。
【0060】
本実施形態では、図3の移動制御部66は、支持台40に支持された媒体5に対して印刷ヘッド22をヘッド移動方向D50にヘッド移動速度S50で相対的に移動させて、印刷開始時の印刷ヘッド22の原点位置を決定する。このように、利用者が印刷ヘッド22を目視しながら、印刷ヘッド22の相対的な位置を手動で変更させることができるため、印刷ヘッド22の原点位置の調整を容易に行うことができる。
【0061】
本実施形態では、図3の記録部63は、図5に示すように、第1スワイプ方向Y1の移動量である第1移動量V11、および、第2スワイプ方向X1の移動量である第2移動量V12を記録する。図3の方向決定部64は、第1移動量V11の絶対値が第2移動量V12の絶対値以上の場合、ヘッド移動方向D50を主走査方向Yに決定する。また、方向決定部64は、第1移動量V11の絶対値が第2移動量V12の絶対値未満の場合、ヘッド移動方向D50を副走査方向Xに決定する。速度決定部65は、第1移動量V11の絶対値が第2移動量V12の絶対値以上の場合、第1移動量V11を移動量V10としてヘッド移動速度S50を決定する。また、速度決定部65は、第1移動量V11の絶対値が第2移動量V12の絶対値未満の場合、第2移動量V12を移動量V10としてヘッド移動速度S50を決定する。例えば利用者が印刷ヘッド22を主走査方向Yに移動させて、副走査方向Xに移動させたくないときがあり得る。この場合、利用者は、表示画面52を第2スワイプ方向X1にスワイプせずに、第1スワイプ方向Y1にのみスワイプすることは困難であり、僅かながら第2スワイプ方向X1にスワイプする可能性があり得る。しかしながら、本実施形態では、第1移動量V11と第2移動量V12のうち大きい方の移動量に対応した方向をヘッド移動方向D50に決定する。そのため、利用者が意図する方向に印刷ヘッド22を移動させ易い。
【0062】
なお、本実施形態では、利用者がスワイプした移動方向D10に応じて、印刷ヘッド22が主走査方向Yおよび副走査方向Xの両方に相対的に移動可能に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0063】
5 媒体
10 プリンタ
22 印刷ヘッド
30 移動機構
40 支持台
50 表示装置
52 表示画面
55 発音器
60 制御装置
63 記録部
64 方向決定部
65 速度決定部
66 移動制御部
67 通知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10