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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】断熱箱体、および冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/06 20060101AFI20241108BHJP
   F25D 23/08 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
F25D23/06 W
F25D23/08 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021036020
(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公開番号】P2022136422
(43)【公開日】2022-09-21
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】内田 武
(72)【発明者】
【氏名】大谷 剛
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-125903(JP,A)
【文献】特開2010-223510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/02 ~ 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内箱と外箱とを有しており、前面に前記内箱の内部空間に連通する間口部が形成されるとともに、上面部、側面部、背面部、および底面部には発泡断熱材が充填される断熱箱体であって、
前記間口部へ前記発泡断熱材を注入する注入口と、
前記底面部を構成する前記外箱の底板上に配置されている真空断熱材と
を備え、
前記真空断熱材は、前記底板の前記間口部側に位置している端辺の左右両側の端部が、角部分を切り欠いた切り欠き形状を有しており、
前記底板は、前記真空断熱材の形状に合わせて窪んだ凹部と、前記凹部の前方、側方、および前記切り欠き形状に沿った外周部分に前記凹部よりも上方に位置する面を有する周縁部と、前記周縁部と前記凹部との間に設けられる傾斜部と、を有し、
前記凹部の側方に形成される前記傾斜部の後端には前記周縁部が形成されていない、
断熱箱体。
【請求項2】
記周縁部よりも、前記真空断熱材が上方に突出している、
請求項1に記載の断熱箱体。
【請求項3】
前記底板の前記凹部の後方には後方へ向かって上方へ傾斜する立ち上がり部が形成されており、
前記凹部の側方に形成される前記傾斜部の後端に、前記立ち上がり部の前面が位置している、
請求項1または2に記載の断熱箱体。
【請求項4】
前記底板の前記間口部側の周縁部に設けられた前記傾斜部の幅は、前記底板の左右側に設けられた前記傾斜部の幅よりも狭い、
請求項1から3の何れか1項に記載の断熱箱体。
【請求項5】
前記底板の前記間口部側の周縁部には、前記発泡断熱材の材料の流れを堰き止める流動規制部材が配置されている、
請求項1から4に記載の断熱箱体。
【請求項6】
前記真空断熱材の前記切り欠き形状は、前記間口部側の端辺に対する切り欠きの角度が45度以上となっている、
請求項1から5の何れか1項に記載の断熱箱体。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の断熱箱体を備えている冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫などに備えられている断熱箱体、およびこの断熱箱体を備えている冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫には、周囲との断熱を行うために、貯蔵空間の外周を覆うように断熱箱体が設けられている。断熱箱体は、外箱と、内箱と、これらの間に充填された断熱材とで構成されている。断熱材としては、例えば、硬質発泡ウレタン断熱材などの発泡断熱材が用いられる。
【0003】
近年、断熱性能のさらなる向上を目的として、断熱箱体内に真空断熱材を配置することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。真空断熱材を用いることにより、断熱性能が向上し、断熱箱体の厚みを薄くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-101838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、断熱箱体の厚みが薄くなることで、断熱箱体内の発泡断熱材料が流動する空間が狭くなり、発泡断熱材料が流動し難くなるので、発泡充填過程において発泡断熱材が未充填のボイド(空隙)が発生する可能性がある。
【0006】
一般に、発泡断熱材料は、断熱箱体の背面に設けられた注入口から注入される。断熱箱体内に注入された発泡断熱材料は、先ず、断熱箱体の側面部に流入した後に、化学反応をしながら底面部などへと行き渡り、充填硬化する。そのため、発泡断熱材料が断熱箱体の底面部に流入した時点の粘度は、注入時の粘度と比較して高くなる傾向にあり、断熱箱体の底面部では、発泡断熱材料の流動性がさらに低下する可能性がある。
【0007】
そこで、本発明では、断熱箱体の底面部における発泡断熱材料の流動性を改善することのできる断熱箱体および冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面にかかる断熱箱体は、内箱と外箱とを有している断熱箱体であって、前記断熱箱体内に充填されている発泡断熱材と、前記外箱の底板上に配置されている真空断熱材とを備えている。前記真空断熱材は、前記底板の間口部側に位置している端辺の左右両側の端部が、角部分を切り欠いた切り欠き形状を有している。
【0009】
本発明のもう一つの局面は、上記の本発明の一局面にかかる断熱箱体を備えている冷蔵庫に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一局面によれば、断熱箱体の底面部における発泡断熱材料の流動性を改善することのできる断熱箱体および冷蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態にかかる冷蔵庫の正面部の構成を示す平面図である。
図2図1に示す冷蔵庫の内部構成を示す断面模式図である。
図3図1に示す冷蔵庫を構成する断熱箱体の底面部の内部構成を示す断面図である。
図4図1に示す冷蔵庫を構成する断熱箱体の底面部の構成を示す平面図である。
図5図3に示す断熱箱体の底面部を形成する底板の構成を示す斜視図である。
図6図5に示す底板に真空断熱材を配置した状態を示す斜視図である。
図7図1に示す冷蔵庫の断熱箱体内に断熱材料が注入される様子を示す模式図である。
図8】第1の実施形態にかかる冷蔵庫の断熱箱体の底面部内を断熱材料が流動する様子を示す模式図である。
図9図6に示す真空断熱材の寸法および形状を説明するための模式図である。
図10】第2の実施形態にかかる冷蔵庫を構成する断熱箱体の底面部を形成する底板の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0013】
<第1の実施形態>
(冷蔵庫の全体構成)
先ず、第1の実施形態にかかる冷蔵庫1の全体構成を説明する。図1には、冷蔵庫1を正面から見た外観を示す。図2には、冷蔵庫1の内部構成を示す。
【0014】
冷蔵庫1の外形は、主として断熱箱体50で構成されている。この断熱箱体50によって冷蔵庫1の貯蔵空間が形成される。断熱箱体50によって形成される貯蔵空間は、水平方向に延びる複数の仕切り部58によって、例えば、上段から順に、冷蔵室11と、野菜室12と、製氷室14および第2冷凍室15と、冷凍室13とに区分けされている。
【0015】
冷蔵室11には、左右に分割された観音開き式の冷蔵室扉11aおよび11bが設けられている。野菜室12には、引き出し式の野菜室扉12aが設けられている。冷凍室13には、引き出し式の冷凍室扉13aが設けられている。製氷室14には、引き出し式の製氷室扉14aが設けられている。第2冷凍室15には、引き出し式の冷凍室扉15aが設けられている。
【0016】
以上のように、本実施の形態にかかる冷蔵庫1は、複数の貯蔵空間に区分けされて、冷蔵室11および野菜室12などが設けられている。但し、各貯蔵空間の配置位置については、これに限定はされない。また、各貯蔵空間に設けられている扉の構成も、上記のものに限定はされない。
【0017】
本実施形態では、扉が設けられている面を冷蔵庫の正面または前面と呼ぶ。そして、前面を基準にして、冷蔵庫1を通常の状態で設置した場合に存在する位置に基づいて、冷蔵庫1の各面を、上面、側面、背面、及び底面とする。また、冷蔵庫1を設置面に載置した状態で、冷蔵庫1の上下の方向のことを、冷蔵庫1(または、断熱箱体50など)の上下方向という。また、冷蔵庫1を設置面に載置した状態で、冷蔵庫1を正面から見て前後の方向のことを、冷蔵庫1(または、断熱箱体50など)の前後方向という。また、冷蔵庫1の前面側から見て左側に位置する側を、冷蔵庫1の左側と呼び、冷蔵庫1の前面側から見て右側に位置する側のことを、冷蔵庫1の右側と呼ぶ。
【0018】
冷蔵庫1の内部には、冷凍サイクルが設けられている。冷凍サイクルは、冷媒が流通する冷媒管(冷媒流路)を介して、圧縮機31、凝縮器(図示せず)、膨張器(図示せず)、及び、冷却器32が接続されて構成されている。
【0019】
また、冷蔵庫1の内部には、制御部(図示せず)が設けられている。この制御部が、冷凍サイクルの運転の制御を行っている。すなわち、制御部が圧縮機31を駆動させることによって、冷凍サイクルの運転が開始され、サイクル内を冷媒が流通する。図2に示すように、圧縮機31は、冷蔵庫1の底部の背面側に設けられた機械室30内に配置されている。
【0020】
冷却器32は、冷蔵庫1の背面側に設けられた冷却室35内に配置されている。冷却室35内には、冷却器32の他に、冷却ファン33などが備えられている。冷却ファン33は、冷却室35と各貯蔵空間との間で空気を循環させるために設けられている。
【0021】
(断熱箱体の構成)
冷蔵庫1には、各貯蔵空間を周囲から断熱するための断熱構造として、断熱箱体50が設けられている。断熱箱体50は、冷蔵庫1の外周を覆うように設けられている。図2に示すように、断熱箱体50は、主として、外箱60と、内箱70と、真空断熱材51と、発泡断熱材56とを備えている。
【0022】
外箱60は、断熱箱体50の外周面を形成する。内箱70は、断熱箱体50の内周面を形成する。本実施形態では、冷蔵庫1の各面の名称に合わせて、断熱箱体50の各部分の名称を、上面部50a、側面部50b、背面部50c、底面部50d、および間口部50eとする。
【0023】
断熱箱体50の底面部50dの背面側には、機械室30を配置するための空間が形成されている。機械室30は、断熱箱体50の外側に配置される。これは、圧縮機31が運転されることにより、機械室30内の温度が上昇するためである。機械室30は、主として、底面部50dを構成する外箱60の底板62(ボトムプレートとも呼ばれる)で区画されている。
【0024】
このように、機械室30と冷凍室13とは、断熱箱体50によって隔離される。そのため、機械室30内で発生した熱が冷凍室13へ流れ込むことを抑えることができる。
【0025】
真空断熱材51および発泡断熱材56は、外箱60と内箱70との間の空間内に設けられている。真空断熱材51は、VIPとも呼ばれ、薄いシート状または板状の断熱材である。真空断熱材51は、例えば、冷蔵庫1の側面、上面、底面、及び、背面などにそれぞれ配置されている。図2に示すように、真空断熱材51は、断熱箱体50内の外箱60側に配置されている。
【0026】
発泡断熱材56は、例えば、発泡ポリウレタン(硬質ウレタンフォームともいう)などで形成することができる。なお、各貯蔵空間を仕切る仕切り部58(例えば、野菜室12と製氷室14および第2冷凍室15との間の仕切り部58)の内部にも、発泡断熱材56が充填されていてもよい。
【0027】
発泡断熱材56は、液状の発泡ウレタン材料(発泡断熱材の材料、断熱材料とも呼ぶ)を断熱箱体50内に注入し、断熱箱体50内で材料を発泡させることによって、断熱箱体50内に充填される。断熱箱体50の背面部50cには、断熱材料を注入する注入口59が設けられている(図7参照)。本実施形態では、背面部50cの左側の端部近傍に2個の注入口59が設けられ、背面部50cの右側の端部近傍に2個の注入口59が設けられ、合計4個の注入口59が設けられている。但し、注入口59の個数はこれに限定はされない。
【0028】
真空断熱材51は、グラスウールやシリカ粉末等の微細空隙を有する芯材を、ガスバリア性を有する外被材(袋状体、例えばラミネートフィルム)で覆い、外被材の内部を減圧密封して形成される。真空断熱材は、その内部空間を高真空に保ち、気相を伝わる熱量を出来る限り小さくすることにより、高い断熱効果を実現することができる。真空断熱材51を構成する材料については、従来公知のものを用いることができる。
【0029】
(断熱箱体の底面部の構成)
続いて、断熱箱体50の底面部50dの構成について説明する。図3には、断熱箱体50の底面部50dの縦断面の構成を示す。図4には、断熱箱体50を構成する外箱60の底部分の構成を示す。図4は、外箱60の内部を上方から見た平面図である。図5には、断熱箱体50の底面部50dを構成する底板62の外観を示す。図6には、底板62上に真空断熱材51および発泡スチロール(流動規制部材)41が配置された状態を示す。
【0030】
断熱箱体50の底面部50dは、主として、外箱60の底板62と、内箱70の底面部72と、発泡断熱材56と、真空断熱材51とで構成されている。
【0031】
底板62は、断熱箱体50の底面を形成している。また、底板62は、機械室30の一部の壁部も形成している。底板62は、前方底面部64、立ち上がり部65、および後方部66などを有している。
【0032】
前方底面部64は、底板62の前方側に位置し、断熱箱体50の底面を形成している。前方底面部64は、凹部64a、周縁部68、および傾斜部64bなどを有している。
【0033】
凹部64aは、前方底面部64の大部分の領域を形成している。凹部64aは、その外周に設けられている周縁部68の面よりも下方に位置する面で形成されている。凹部64aは、底板62上に配置される真空断熱材51の形状に合わせて窪んだ形状を有している。
【0034】
周縁部68は、凹部64aの前方および側方の外周部分に設けられている。周縁部68は、左側角部68aおよび右側角部68bを有している。左側角部68aおよび右側角部68bは、上面視で略三角形状を有する平坦な面部である。
【0035】
この左側角部68aおよび右側角部68bの下方には、冷蔵庫1の前脚部が配置される。底板62の左側角部68aおよび右側角部68bに真空断熱材が配置されていると、前脚部の取り付け時や冷蔵庫1の設置時での前脚部への荷重によって、真空断熱材を変形、破壊させてしまう可能性がある。本実施形態のように、真空断熱材51の間口部50e側の端辺に切り欠き部53aおよび53bを設け、真空断熱材51が配置されない左側角部68aおよび右側角部68bを設けることで、前脚部の取り付け位置には真空断熱材51が配置されることなく、底板62の左右両側の端辺により近い位置にまで真空断熱材51を配置させることができる。
【0036】
傾斜部64bは、凹部64aと周縁部68との間に設けられている。傾斜部64bは、凹部64aの面と周縁部68の面との高低差に沿って傾斜している。このような傾斜部64bが設けられていることで、底板62における真空断熱材51の配置領域と、真空断熱材が配置されていない周縁領域との間に溝を形成することができる。そして、底面部50dへ流入した発泡断熱材料がこの溝に流れ込むことで、発泡断熱材料を真空断熱材51の端辺に沿って流動させることができる。また、傾斜部64bによって周縁領域との段差をなだらかにすることができる。そのため、底面部50dへ流入した発泡断熱材料をスムーズに溝に流れ込ませることができる。
【0037】
立ち上がり部65は、断熱箱体50の前後方向の中央部から後方へ向かって上方へ傾斜した形状を有している。この立ち上がり部65の後方に機械室30が位置している。図3などに示すように、底板62上に配置される真空断熱材51の後方部分は、折り曲げられて、立ち上がり部65に立て掛けられるように配置される。
【0038】
後方部66は、底板62の後方側に位置し、機械室30の上面を形成している。
【0039】
内箱70の底面部72は、外箱60の底板62の形状に概ね沿った形状を有している。そして、外箱60の底板62と、内箱70の底面部72との間の空間には、発泡断熱材56および真空断熱材51を含む断熱層が形成されている。
【0040】
底板62上に配置される真空断熱材51は、略長方形の平板形状を有している。但し、真空断熱材51の前方部の左右両端部には、長方形の角部分を斜めに切り欠いたような切り欠き部(切り欠き形状)53aおよび53bが設けられている。後述するように、注入口59から断熱箱体50内に注入された断熱材料は、間口部50e側から断熱箱体50の底面部50dへ流入する。このような切り欠き部53aおよび53bが設けられていることで、底面部50dの間口部50eへ流入した発泡断熱材料を、切り欠き部53aおよび53bの端辺に沿って流動させやすくすることができる。これにより、発泡断熱材料が真空断熱材51上に流通する量を低減することができる。
【0041】
以下では、底板62上に配置される真空断熱材51の各端辺を、冷蔵庫1内における配置位置に基づいて、前方端辺51a、側方端辺51bおよび51bと呼ぶ。切り欠き部53aは、左側の側方端辺51bと、前方端辺51aとの間に位置している。また、切り欠き部53bは、右側の側方端辺51bと、前方端辺51aとの間に位置している。
【0042】
底板62の凹部64aの間口部50e側は、真空断熱材51の切り欠き部53aおよび53bの形状に合わせて、前方側の左右両側の角部が取り除かれた形状を有している。また、凹部64aの前方端辺および側方端辺に隣接して設けられている傾斜部64bも、真空断熱材51の切り欠き部53aおよび53bの形状に合わせて設けられている。
【0043】
底面部50dの間口部50eへ流入した発泡断熱材料は、切り欠き部53aおよび53bの端辺に沿って流動し、前方端辺51a側および側方端辺51b側に分流する。側方端辺51b側に流通した発泡断熱材料は、真空断熱材51の側方端辺51bによって真空断熱材51側への流動が制限されるため、側方端辺51bに沿って上方に流動しやすくなる。一方、前方端辺51a側に流通した発泡断熱材料は、真空断熱材51の前方端辺51aによって真空断熱材51側、すなわち上方への流動が制限されるため、左右方向の流動が主となるが、左右方向の他端側から発泡断熱材料が流動してくるため、流動抵抗が増加する。これにより、真空断熱材51の側方端辺51bに沿うように発泡断熱材料を誘導させることができる。
【0044】
真空断熱材51は、底板62の周縁部68よりも上方に突出していることが好ましい。これは、例えば、凹部64aの深さよりも真空断熱材51の厚さを大きくすることで可能となる。これにより、真空断熱材51の前方端辺51a側、側方端辺51b、および切り欠き部53a、53bに沿って流動する発泡断熱材料が、真空断熱材51の上に乗り上がることを抑制でき、より効果的に真空断熱材51の側方端辺51bに沿うように発泡断熱材料を誘導させることができる。
【0045】
真空断熱材51に形成された切り欠き部53aおよび53bは、例えば以下のようにして形成することができる。
【0046】
先ず、真空断熱材の芯材となるグラスウールなどを、切欠き部を有する所定形状に成形する。切欠き部の成形については、例えば、長方形あるいは正方形に成形されたシート状の芯材の角部分を切断することによって行うことができる。
【0047】
以上のようにして所定形状に成形された芯材を、袋状の外被材の中へ入れる。そして、芯材の角部分が切断された箇所に対応する外被材の角部分を内側に折り曲げる。これにより、切り欠き部53aおよび53bを有する真空断熱材51が得られる。
【0048】
また、凹部64aの外周に設けられた傾斜部64bのうち、真空断熱材51の側方端辺51bに対向する傾斜部64bの幅は、前方端辺51aに対向する傾斜部64bの幅よりも大きくなっていることが好ましい。すなわち、間口部50e側に位置する傾斜部64bの幅がより狭くなっていることが好ましい。
【0049】
底面部50dの間口部50eへ流入した発泡断熱材料は、切り欠き部53aおよび53bの端辺に沿って前方端辺51a側および側方端辺51b側に分流することになる。上記のように、前方端辺51aに対向する傾斜部64bの幅を狭くすることで、前方端辺51a側への流通量を減らすことができる。したがって、後述の発泡スチロール41を設けた場合と同様の効果を奏することができる。
【0050】
また、図6に示すように、底板62の間口部50e側に、断熱箱体50内に注入された発泡断熱材料の流れを堰き止めるための発泡スチロール41が配置されていてもよい。発泡スチロール41は、真空断熱材51の前方端辺51aの前方側であって、底板62の左右方向の略中央部に配置されている。発泡スチロール41は、例えば、直方体、角柱体などの形状を有している。これにより、底面部50dの間口部50eへ流入する断熱材料の流れを堰き止めることができる。
【0051】
このような発泡スチロール41が設けられていることで、先ず、断熱箱体50の側面部50bに流入し、その後、間口部50e側から底面部50dへ流入した発泡断熱材料を、間口部50eの左右方向の中央部へ流れ込みにくくさせることができる。そして、間口部50e側から底面部50dへ流入した発泡断熱材料を、底板62の側端部から底面部50dの後方側へより流入しやすくさせることができる。
【0052】
(断熱箱体の製造方法)
続いて、断熱箱体50の製造方法について説明する。図7には、断熱箱体50に断熱材料を注入する様子を示す。図7では、断熱箱体50の背面部50cに設けられている各注入口59から注入される断熱材料の流れを矢印で示す。図8には、断熱箱体50の底面部50dに流入した断熱材料の流れを矢印で示す。
【0053】
先ず、外箱60の各面部の内側面の所定の位置に、真空断熱材51、放熱パイプ(図示せず)などの部材を取り付ける。また、内箱70の所定の位置に、庫内電装ユニット、各種配線などの部品を取り付ける。
【0054】
続いて、内箱70の外周を覆うように外箱60の各面部を取り付ける。これにより、断熱箱体50の外形が形成される。
【0055】
その後、断熱箱体50の背面部50cを上にした状態で、背面部50cに形成された注入口59より液体状の発泡断熱材の材料(発泡ウレタン材料)を注入する。このとき、注入口59には、断熱材料の注入装置の注入ノズルが差し込まれる。注入ノズルから断熱箱体50内へ吐出された発泡断熱材の材料は、外箱60と内箱70との間の空間内で前面側(間口部50e側)から背面側へと順に発泡して体積を増加しながら充填されていく。発泡した断熱材はその後、硬化する。
【0056】
すなわち、断熱箱体50の背面部50cを上にした状態で各注入口59から断熱材料を注入すると、断熱材料は重力によって、断熱箱体50内の側面部50bを通って、最下方に位置する間口部50eへ向かって流れ落ちる(図7参照)。
【0057】
近年の冷蔵庫では、より大きな庫内空間を確保するなどの目的で、断熱箱体50の壁部の薄型化が望まれている。例えば、断熱箱体の底面部に関しては、従来の断熱箱体では約40mm程度の厚さを有しているのに対して、薄型化を実現させた断熱箱体では、底面部の厚さは約30mm程度にすることが検討されている。
【0058】
本実施形態では、断熱箱体50の底面部50dでは、内箱70の底面部72と、底板62の前方底面部64上に配置された真空断熱材51との間の隙間G1(図3参照)の大きさは、約15mm以上約25mm以下の範囲内となっている。また、底板62の立ち上がり部65では、内箱70の底面部72と真空断熱材51との間の隙間はさらに狭くなり、最も隙間が狭くなる部分では、隙間G2(図3参照)の大きさは、約5mm以上約15mm以下となっている。
【0059】
断熱箱体50の壁部の厚さが薄くなることで、壁部内において断熱材料が流動する空間が狭くなり、断熱材料が流動し難くなる。断熱箱体50の内部に真空断熱材51が設けられていると、断熱材料の流動空間はより狭くなる。これにより、断熱箱体50内において、注入された断熱材料の発泡充填過程において、特に真空断熱材51よりも断熱材料の充填方向における下流側に、発泡断熱材が未充填のボイド(空隙)が発生する可能性が高まる。
【0060】
本実施形態にかかる断熱箱体50では、真空断熱材51の間口部50e側に位置している端辺の左右両側の端部に切り欠き部53aおよび53bを設けている。また、断熱箱体50の底板62の前方底面部64に、真空断熱材51の形状に合わせた凹部64aおよび傾斜部64bを形成している。
【0061】
この構成によれば、断熱箱体50の側面部50bの間口部50e側から底面部50dへ流入した断熱材料を、真空断熱材51の配置されていない底板62の左右両側の側端部の方へ誘導させることができる(図8参照)。これにより、真空断熱材51と内箱70の底面部72との間の狭い空間に流れ込む断熱材料の量を減らすことができ、断熱箱体50の底面部50d内へ流入した断熱材料の断熱箱体内での充填性を向上させることができる。
【0062】
断熱箱体内での充填性を向上することで、真空断熱材51の側方端辺51bと、底板62の側方端辺62bとの間の隙間G3(図9参照)の大きさを小さくすることができる。例えば、隙間G3の大きさを約50mm以下とすることができる。また、より好ましくは、隙間G3の大きさを約40mm以下とすることができる。これにより、底板62上に配置される真空断熱材51の配置面積をより大きくすることができる。すなわち、断熱箱体50の底面部50dのより広い範囲に、真空断熱材51を配置することができる。
【0063】
なお、底面部50dの間口部50eへ流入した断熱材料を、底板62の側方端辺62b側へより多く流入させるために、真空断熱材51の切り欠き部53aおよび53bの傾斜角度A(図9参照)は、45度以上とすることが好ましい。ここで、傾斜角度Aは、真空断熱材51の前方端辺51aに対する切り欠き形状の角度である。
【0064】
なお、本実施形態では、真空断熱材51の切り欠き部53aおよび53bは、略長方形の真空断熱材の角部分を斜めに切り落とした形状を有しているが、切り欠き部の形状は、これに限定はされない。真空断熱材51の切り欠き部は、例えば、略長方形の真空断熱材の角部分を四角形状や、扇形状に切り落としたような形状を有していてもよい。
【0065】
(第1の実施形態のまとめ)
以上のように、本実施形態にかかる冷蔵庫1は、断熱箱体50を備えている。断熱箱体50は、内箱70と外箱60とを有している。断熱箱体50内には、発泡断熱材56が充填されている。また、断熱箱体50内の外箱60側には真空断熱材51が配置されている。断熱箱体50の背面には、発泡断熱材の材料を注入する少なくとも一つの注入口59が設けられている。
【0066】
断熱箱体50の底面部50dには、底板62が設けられている。この底板62上には、真空断熱材51が配置されている。この真空断熱材51は、間口部50e側に位置している端辺の左右両側の端部が、角部分を切り欠いた切り欠き形状を有している。すなわち、真空断熱材51には、切り欠き部53aおよび53bが設けられている。
【0067】
上記の構成によれば、真空断熱材51に切り欠き部53aおよび53bが設けられていることで、断熱箱体50の側面部50bから底面部50dの間口部50eへ流入した断熱材料の流動性が、真空断熱材51の影響で低下することを抑えることができる。
【0068】
したがって、本実施形態にかかる断熱箱体50によれば、発泡断熱材料の注入時に、断熱箱体内で発泡断熱材料をより流動させやすくすることのできる構成とすることができる。これにより、断熱箱体50の側面部の薄型化を実現しつつ、断熱箱体50の内部において、発泡断熱材が充填されない箇所が発生する可能性を低減させることができる。
【0069】
また、本実施形態のように、真空断熱材51の間口部50e側の端辺に切り欠き部53aを設けることで、底板62の前方側の角部(すなわち、左側角部68aおよび右側角部68b)に真空断熱材51が配置されない領域を設けることができる。これにより、底板62の前方部に取り付けられる調節脚部の取り付け位置には真空断熱材51が配置されることなく、底板62の左右両側の端辺により近い位置にまで真空断熱材51を配置させることができる。
【0070】
この構成により、断熱箱体50の底面部50dのできるだけ広範囲に、真空断熱材51を配置することができる。したがって、断熱箱体50の底面部50dの断熱性を向上させることができる。
【0071】
<第2の実施形態>
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。図10には、第2の実施形態にかかる冷蔵庫1に備えられている断熱箱体50の底板62の構成を示す。以下では、第1の実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0072】
本実施形態にかかる冷蔵庫1において、断熱箱体50の底面部50dは、主として、外箱60の底板62と、内箱70の底面部72と、発泡断熱材56と、真空断熱材51とで構成されている。これらの各部材は、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。
【0073】
図10には、底板62上に真空断熱材51が配置された状態を示す。図10図6とを比較すればわかるように、本実施形態にかかる構成では、底板62の間口部50e側に発泡スチロール41は設けられていない。それ以外については、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。
【0074】
このように、本発明の一実施形態にかかる構成では、発泡スチロールなどの流動規制部材は、設けられていなくてもよい。
【0075】
<第3の実施形態>
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。実施形態にかかる冷蔵庫1において、断熱箱体50の底面部50dは、主として、外箱60の底板62と、内箱70の底面部72と、発泡断熱材56と、真空断熱材51とで構成されている。底板62以外の各部材は、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。
【0076】
本実施形態にかかる構成では、底板62の間口部50e側に発泡スチロール41は設けられていない。その代わりに、本実施形態では、底板62の間口部50eの左右方向の中央部に、断熱材料の流れを堰き止めるための突起部が設けられている。この突起部は、流動規制部材に相当する。
【0077】
このような突起部が設けられていることで、先ず、断熱箱体50の側面部50bに流入し、その後、間口部50e側から底面部50dへ流入した発泡断熱材料を、間口部50eの左右方向の中央部へ流れ込みにくくさせることができる。そして、間口部50e側から底面部50dへ流入した発泡断熱材料を、底板62の側端部から底面部50dの後方側へより流入しやすくさせることができる。
【0078】
(まとめ)
本発明の一局面にかかる断熱箱体(例えば、断熱箱体50)は、内箱(例えば、内箱70)と外箱(例えば、外箱60)とを有している。この断熱箱体は、前記断熱箱体内に充填されている発泡断熱材(例えば、発泡断熱材56)と、前記外箱の底板(例えば、底板62)上に配置されている真空断熱材(例えば、真空断熱材51)とを備えている。前記真空断熱材は、前記底板の間口部(例えば、間口部50e)側に位置している端辺の左右両側の端部が、角部分を切り欠いた切り欠き形状(例えば、切り欠き部53a、切り欠き部53b)を有している。
【0079】
上記の本発明の一局面にかかる断熱箱体(例えば、断熱箱体50)において、前記底板(例えば、底板62)は、前記真空断熱材(例えば、真空断熱材51)の形状に合わせて窪んだ凹部(例えば、凹部64a)を有しており、前記凹部の周囲となる前記底板の周縁部(例えば、周縁部68)よりも、前記真空断熱材が上方に突出していてもよい。
【0080】
上記の本発明の一局面にかかる断熱箱体(例えば、断熱箱体50)において、前記底板の周縁部(例えば、周縁部68)と前記凹部との間には、傾斜部(例えば、傾斜部64b)が設けられていてもよい。
【0081】
上記の本発明の一局面にかかる断熱箱体(例えば、断熱箱体50)において、前記底板(例えば、底板62)の前記間口部(例えば、間口部50e)側の周縁部(例えば、周縁部68)に設けられた前記傾斜部(例えば、傾斜部64b)の幅は、前記底板の左右側に設けられた前記傾斜部の幅よりも狭くなっていてもよい。
【0082】
上記の本発明の一局面にかかる断熱箱体(例えば、断熱箱体50)において、前記底板(例えば、底板62)の前記間口部(例えば、間口部50e)側の周縁部(例えば、周縁部68)には、前記発泡断熱材(例えば、発泡断熱材56)の材料の流れを堰き止める流動規制部材(例えば、発泡スチロール41、底板62の突起部)が配置されていてもよい。
【0083】
上記の本発明の一局面にかかる断熱箱体(例えば、断熱箱体50)において、前記真空断熱材(例えば、真空断熱材51)の前記切り欠き形状(例えば、切り欠き部53a、切り欠き部53b)は、前記間口部(例えば、間口部50e)側の端辺に対する切り欠きの角度(例えば、傾斜角度A)が45度以上となっていてもよい。
【0084】
本発明のもう一つの局面にかかる冷蔵庫(例えば、冷蔵庫1)は、上記の本発明の何れかの局面にかかる断熱箱体(例えば、断熱箱体50)を備えている。
【0085】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した異なる実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 :冷蔵庫
41 :発泡スチロール(流動規制部材)
50 :断熱箱体
50d :(断熱箱体の)底面部
50e :(断熱箱体の)間口部
51 :真空断熱材
53a :(真空断熱材の)切り欠き部(切り欠き形状)
53b :(真空断熱材の)切り欠き部(切り欠き形状)
56 :発泡断熱材
59 :注入口
60 :外箱
62 :(外箱の)底板
64a :(底板の)凹部
64b :(底板の)傾斜部
70 :内箱
A :傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10