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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】テープ貼付装置、及びテープ貼付方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/38 20060101AFI20241108BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20241108BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20241108BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20241108BHJP
【FI】
B29C70/38
B29C70/06
B29C70/54
B29K105:08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021048883
(22)【出願日】2021-03-23
(65)【公開番号】P2022147579
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩光
(72)【発明者】
【氏名】熱田 直行
(72)【発明者】
【氏名】喜多 由起
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/010318(WO,A1)
【文献】米国特許第04461669(US,A)
【文献】特開平05-050571(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0046716(US,A1)
【文献】特開平02-196636(JP,A)
【文献】特開平01-247144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/38
B29C 70/06
B29C 70/54
B29K 105/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープを被貼付面に押圧する貼付ヘッドと、
前記貼付ヘッドが取り付けられ、前記貼付ヘッドの押圧位置を制御するハンドリング部と、を有するテープ貼付装置であって、
前記貼付ヘッドは、前記被貼付面に前記テープを押し付ける押圧部と、
前記ハンドリング部と前記押圧部との間に設けられ、前記押圧部の押し付ける力を制御する荷重制御部と、
前記荷重制御部の機械インピーダンスを調節する機械インピーダンス調節部と、を備えており、
所定の荷重で前記押圧部を被貼付面に押し付けるまでの第1の動作モードと、
前記押圧部が前記被貼付面に対して相対的に移動することにより前記テープを前記被貼付面に貼り付ける第2の動作モードと、を有しており、
前記機械インピーダンス調節部は、前記第1の動作モードにおける前記荷重制御部の機械インピーダンス前記第2の動作モードにおける前記荷重制御部の機械インピーダンスよりも大きくなるよう調節することを特徴とするテープ貼付装置。
【請求項2】
前記貼付ヘッドは、前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を制御するパラレルリンク機構を備えており、
前記パラレルリンク機構は、前記ハンドリング部と接続されるベース部と、前記押圧部が取り付けられるエンド部と、前記ベース部と前記エンド部との間に並列に設けられ、伸縮する前記荷重制御部を有する複数のリンク部を備え、
前記荷重制御部の伸縮動作により各々の前記リンク部の長さを制御することで、前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を前記被貼付面の形状に倣うように制御することを特徴とする請求項1に記載のテープ貼付装置。
【請求項3】
前記荷重制御部は、内部に流体出し入れされるシリンダ部と、前記シリンダ部の内部の圧力に応じて伸縮するロッド部と、を有し、前記シリンダ部の内部は前記ロッド部で2つの部屋に分けられており
前記機械インピーダンス調節部は、前記第1の動作モードにおける前記シリンダ部の両室の圧力の和が、前記第2の動作モードにおける前記前記シリンダ部の両室の圧力の和よりも大きくなるよう、前記部屋それぞれに流体を出し入れさせて圧力を制御することを特徴とする請求項1又は請求項に記載のテープ貼付装置。
【請求項4】
前記機械インピーダンス調節部は、前記第1の動作モードにおいて前記荷重制御部の伸縮動作を外部からロックするロック手段であることを特徴とする請求項1又は請求項に記載のテープ貼付装置。
【請求項5】
テープを被貼付面に押圧する貼付ヘッドと、
前記貼付ヘッドが取り付けられ、前記貼付ヘッドの押圧位置を制御するハンドリング部と、を備え、
前記貼付ヘッドが、前記被貼付面に前記テープを押し付ける押圧部と、
前記ハンドリング部と前記押圧部との間に設けられ、前記押圧部の押し付ける力を制御する荷重制御部と、を備えたテープ貼付装置を用いるテープ貼付方法であって、
所定の荷重で前記押圧部を被貼付面に押し付けるまでの第1の動作工程と、
前記押圧部が前記被貼付面に対して相対的に移動することにより前記テープを前記被貼付面に貼り付ける第2の動作工程と、を有しており、
前記第の動作工程は、前記荷重制御部の機械インピーダンスを前記第の動作工程における前記荷重制御部の機械インピーダンスよりも大きくなるよう調節する機械インピーダンス調節工程を有することを特徴とするテープ貼付方法。
【請求項6】
テープを被貼付面に押圧する貼付ヘッドを備え、
前記貼付ヘッドが、前記被貼付面に前記テープを押し付ける押圧部と、
前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を制御するパラレルリンク機構と、を備えており、
前記パラレルリンク機構が、ベース部と、前記押圧部が取り付けられるエンド部と、
前記ベース部と前記エンド部との間に並列に設けられ、伸縮する荷重制御部を有する複数のリンク部と、を備え、
前記荷重制御部の伸縮動作により各々の前記リンク部の長さを制御することで、前記押圧部の前記押圧位置及び/又は前記押圧姿勢を前記被貼付面の形状に倣うように動作させながら、前記テープを前記被貼付面に貼り付けるテープ貼付装置を用いるテープ貼付方法であって、
所定の荷重で前記押圧部を被貼付面に押し付けるまでの第1の動作工程と、
前記押圧部が前記被貼付面に対して相対的に移動することにより前記テープを前記被貼付面に貼り付ける第2の動作工程と、を有しており、
前記第の動作工程は、前記荷重制御部の機械インピーダンスを前記第の動作工程における前記荷重制御部の機械インピーダンスよりも大きくなるよう調節する機械インピーダンス調節工程を有することを特徴とするテープ貼付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ貼付装置、及びテープ貼付方法に関するものであり、より詳細には、テープを被貼付面に貼り付けることにより、繊維強化プラスチック(FRP)成形品などを製造する際に用いられるテープ貼付装置、及びこのテープ貼付装置を用いたテープ貼付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
予め樹脂が含侵された炭素繊維等の繊維束をテープ状に成形したもの(プリプレグテープ、UDテープなどとも呼ぶ)を被貼付面に貼り付けてゆくことで、所望の形状をした繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)成形品を製造する方法が知られている。
【0003】
これらの製法は、ATL(Auto Tape Layup)、ATW(Auto Tape Welding)、AFP(Auto Fiber Placement)などの種々の称呼があるが、これらは厳密に区別されているものでない。本明細書においては、テープを押圧しながら被貼付面に貼り付けていく製法を総称してATLと呼び、その装置(テープ貼付装置)をATL装置と呼ぶこととする。
【0004】
従来のATL装置は、テープを被貼付面に押圧しながら貼り付けるATLヘッドと、このATLヘッドの押圧位置及び/又は押圧姿勢制御する多関節ロボットとを備えている。この多関節ロボットにより、ATLヘッドを制御して被貼付面に押し付けることでテープを貼り付けることができるようになっている。このとき、多関節ロボットによるATLヘッドが被貼付面にテープを押圧する位置及び/又は押圧姿勢の制御は、たとえば、被貼付面を有するワークの3次元設計データに基づく座標データなどを用いて行われている。そして、ATL装置は、座標データなどによって指定されたテープの貼り付けを開始する被貼付面上の所定位置(以下、起点)から、同じく指定されたテープの貼り付けを終了する被貼付面の所定位置(以下、終点)まで、ATLヘッドを点間移動させながらテープを貼り付けるようになっている。このように従来のATL装置では、ATLヘッドを起点から終点へと点間移動させながらテープを貼り付けるようになっているので、このATLヘッドの転換移動の軌跡と、被貼付面の形状との間に誤差がないことが前提のものとなっていた(たとえば、下記特許文献1)。
【0005】
しかし、被貼付面を有するワークは、3次元形状の成形品であり、設計上の形状・寸法に対して形状誤差を有していることが多い。そのため、前述したATLヘッドの点間移動の軌跡と、被貼付面の形状との間に誤差が生じることになり、従来のATLヘッドの押圧位置及び/又は押圧姿勢の制御では、ATLヘッドによる被貼付面へのテープの押圧が過不足する箇所が生じる。すなわち、ワークが形状誤差を有するものであった場合、ATLヘッドによる被貼付面へのテープの押圧状態にばらつきが生じる虞があった。そのため、被貼付面に対するATLヘッドによるテープの押圧状態を一定に保つことが望まれていた。これに対して、たとえば、下記の特許文献2に開示されたATL装置が提案されている。
【0006】
このATL装置100は、図8に示すように、テープ102を押圧しながらワーク105の被貼付面106(以下、被貼付面106)に貼り付ける押圧ローラ103と、この押圧ローラ103の押圧位置及び/又は押圧姿勢を制御するパラレルリンク機構104を備えるATLヘッド101から構成されている。パラレルリンク機構104は、ベース部107と、押圧ローラ103が取り付けられるエンド部108と、これらベース部107とエンド部108との間に並列に設けられ、流体の出し入れにより伸縮する複数のリンク部109を備えている。この複数のリンク部109の長さを制御することで、押圧ローラ103の押圧位置及び/又は押圧姿勢を制御する。これにより、パラレルリンク機構104が、押圧ローラ103を被貼付面106の形状に倣うように移動させながら、テープ102を被貼付面106に押圧して貼り付けるようになっている。すなわち、ATL装置100は、ワーク105が形状誤差を有している場合であっても、パラレルリンク機構104により押圧ローラ103を被貼付面106の形状に倣うように移動させることができるので、押圧ローラ103によるテープ102の押圧状態を一定に保つことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-149730号公報
【文献】国際公開WO2020/184237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記ATL装置100では、テープ102を精度よく貼り付ける動作を行えない場合があった。
【0009】
具体的には、被貼付面106から離隔させた状態でATLヘッド101を移動させる場合と、ATLヘッド101の押圧ローラ103を被貼付面106に押し付けてテープ102を貼り付ける場合とで、ATLヘッド101に求められる機械インピーダンスの最適値が異なっている。仮に機械インピーダンスが一定の条件で動作させた場合、押圧ローラ103のふらつきが生じ、押圧ローラ103が前述した起点に接触できず、所定位置で被貼付面106を押圧できない可能性があった。この場合、押圧ローラ103が起点からずれた位置に接触して押圧することになるので、所定位置とずれた位置にテープ102が貼り付けられることになる。すなわち、テープ102を所定位置に貼り付けることができない場合があった。また、テープ102の貼り付け時に押圧ローラ103が被貼付面106の形状に倣うように移動できない可能性があった。この場合、被貼付面106に対する押圧ローラ103の押圧方向がばらつき、貼り付け時に押圧力の過不足が生じることになる。したがって、上記ATL装置100では、テープ102を精度よく貼り付けることができない場合があった。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてされたものであり、テープを精度よく貼り付けることができるテープ貼付装置、及びテープ貼付方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明のテープ貼付装置は、テープを被貼付面に押圧する貼付ヘッドと、前記貼付ヘッドが取り付けられ、前記貼付ヘッドの押圧位置を制御するハンドリング部と、を有するテープ貼付装置であって、前記貼付ヘッドは、前記被貼付面に前記テープを押し付ける押圧部と、前記ハンドリング部と前記押圧部との間に設けられ、前記押圧部の押し付ける力を制御する荷重制御部と、前記荷重制御部の機械インピーダンスを調節する機械インピーダンス調節部と、を備えており、所定の荷重で前記押圧部を被貼付面に押し付けるまでの第1の動作モードと、前記押圧部が前記被貼付面に対して相対的に移動することにより前記テープを前記被貼付面に貼り付ける第2の動作モードと、を有しており、前記機械インピーダンス調節部は、前記第1の動作モードにおける前記荷重制御部の機械インピーダンス前記第2の動作モードにおける前記荷重制御部の機械インピーダンスよりも大きくなるよう調節することを特徴としている。
【0012】
上記テープ貼付装置によれば、第1の動作モードと、第2の動作モードとを有し、機械インピーダンス調節部により第1の動作モードにおける荷重制御部の機械インピーダンス第2の動作モードにおける荷重制御部の機械インピーダンスよりも大きくなるよう調節されるため、第1の動作モード時に押圧部がふらつくことを防ぐことができる。これにより、押圧部がテープを被貼付面の所定位置に精度よく接触させて押圧することが可能となる。したがって、テープを精度よく貼り付けることができる。
【0015】
また、前記貼付ヘッドは、前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を制御するパラレルリンク機構を備えており、前記パラレルリンク機構は、前記ハンドリング部と接続されるベース部と、前記押圧部が取り付けられるエンド部と、前記ベース部と前記エンド部との間に並列に設けられ、伸縮する前記荷重制御部を有する複数のリンク部を備え、前記荷重制御部の伸縮動作により各々の前記リンク部の長さを制御することで、前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を前記被貼付面の形状に倣うように制御する構成としてもよい。
【0016】
この構成によれば、パラレルリンク機構が荷重制御部を含んで構成され、機械インピーダンス調節部により第1の動作モードにおける荷重制御部の機械インピーダンスと第2の動作モードにおける荷重制御部の機械インピーダンスが異なる機械インピーダンスに調節される。これにより、第1の動作モードと第2の動作モードとで荷重制御部の機械インピーダンスをそれぞれの動作モードに適した機械インピーダンスに切り替えることが可能となる。したがって、第2の動作モードにおいてワークの形状誤差に対応しつつ、第1の動作モードにおいて精度よくテープを所定位置に接触させて押圧することが可能となる。
【0017】
また、前記荷重制御部は、前記荷重制御部は、内部に流体出し入れされるシリンダ部と、前記シリンダ部の内部の圧力に応じて伸縮するロッド部と、を有し、前記シリンダ部の内部は前記ロッド部で2つの部屋に分けられており、前記機械インピーダンス調節部は、前記第1の動作モードにおける前記シリンダ部の両室の圧力の和が、前記第2の動作モードにおける前記前記シリンダ部の両室の圧力の和よりも大きくなるよう、前記部屋それぞれに流体を出し入れさせて圧力を制御する構成としてもよい。
【0018】
この構成によれば、余計な機構を必要とせずに荷重制御部の機械インピーダンスを調節することが可能となる。
【0019】
また、前記機械インピーダンス調節部は、前記第1の動作モードにおいて前記荷重制御部の伸縮動作を外部からロックするロック手段である構成としてもよい。
【0020】
この構成によれば、煩雑な制御を必要とせずに荷重制御部の機械インピーダンスを制御することが可能となる。
【0021】
上記課題を解決するために本発明のテープ貼付方法は、テープを被貼付面に押圧する貼付ヘッドと、前記貼付ヘッドが取り付けられ、前記貼付ヘッドの押圧位置を制御するハンドリング部と、を備え、前記貼付ヘッドが、前記被貼付面に前記テープを押し付ける押圧部と、前記ハンドリング部と前記押圧部との間に設けられ、前記押圧部の押し付ける力を制御する荷重制御部と、を備えたテープ貼付装置を用いるテープ貼付方法であって、所定の荷重で前記押圧部を被貼付面に押し付けるまでの第1の動作工程と、前記押圧部が前記被貼付面に対して相対的に移動することにより前記テープを前記被貼付面に貼り付ける第2の動作工程と、を有しており、前記第の動作工程は、前記荷重制御部の機械インピーダンスを前記第の動作工程における前記荷重制御部の機械インピーダンスよりも大きくなるよう調節する機械インピーダンス調節工程を有することを特徴としている。
【0022】
上記テープ貼付方法によれば、第1の動作工程と、第2の動作工程とを有し、第1の動作工程における荷重制御部の機械インピーダンス第2の動作工程における荷重制御部の機械インピーダンスよりも大きくなるよう調節されるため、第1の動作工程において押圧部がふらつくことを防ぐことができる。これにより、押圧部がテープを被貼付面の所定位置に精度よく接触させて押圧することが可能となる。したがって、テープを精度よく貼り付けることができる。
【0023】
上記課題を解決するために本発明のテープ貼付方法は、テープを被貼付面に押圧する貼付ヘッドを備え、前記貼付ヘッドが、前記被貼付面に前記テープを押し付ける押圧部と、前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を制御するパラレルリンク機構と、を備えており、前記パラレルリンク機構が、ベース部と、前記押圧部が取り付けられるエンド部と、前記ベース部と前記エンド部との間に並列に設けられ、伸縮する荷重制御部を有する複数のリンク部と、を備え、前記荷重制御部の伸縮動作により各々の前記リンク部の長さを制御することで、前記押圧部の前記押圧位置及び/又は前記押圧姿勢を前記被貼付面の形状に倣うように動作させながら、前記テープを前記被貼付面に貼り付けるテープ貼付装置を用いるテープ貼付方法であって、所定の荷重で前記押圧部を被貼付面に押し付けるまでの第1の動作工程と、前記押圧部が前記被貼付面に対して相対的に移動することにより前記テープを前記被貼付面に貼り付ける第2の動作工程と、を有しており、前記第の動作工程は、前記荷重制御部の機械インピーダンスを前記第の動作工程における前記荷重制御部の機械インピーダンスよりも大きくなるよう調節する機械インピーダンス調節工程を有することを特徴としている。
【0024】
上記テープ貼付方法によれば、第1の動作工程と、第2の動作工程とを有しており、パラレルリンク機構が荷重制御部を含んで構成され、第1の動作工程における荷重制御部の機械インピーダンス第2の動作工程における荷重制御部の機械インピーダンスよりも大きくなるよう調節されるため、第1の動作工程において押圧部がふらつくことを防ぐことができる。これにより、押圧部がテープを被貼付面の所定位置に精度よく接触させて押圧することが可能となる。また、第2の動作工程における荷重制御部の機械インピーダンスが第1の動作工程における荷重制御部の機械インピーダンスよりも小さくなるよう調節されるため、押圧ローラの位置や姿勢の制御の動作において動きやすくなる。したがって、第2の動作工程においてワークの形状誤差に対応しつつ、第1の動作工程において精度よくテープを所定位置に接触させて押圧することが可能となる。すなわち、テープを精度よく貼り付けることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のテープ貼付装置、及びテープ貼付方法によれば、テープを精度よく貼り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係るATL装置を概略的に示す図である。
図2図1のA-A´矢視図である。
図3】第1の動作モードにおけるATLヘッドを示す図である。
図4】第2の動作モードにおけるATLヘッドを示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係るATL装置を用いたテープ貼付方法のフロー図である。
図6】本発明の一実施形態の係るATL装置の一つのバリエーションを示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係るATL装置の一つのバリエーションを示す図であり、(a)は第1の動作モード時、(b)は第2の動作モード時を示す図である。
図8】従来のATL装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(ATL装置)
以下、本発明の一実施形態におけるATL装置について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、水平方向をX軸方向、Y軸方向と表現し、XY平面と垂直な方向(つまり、鉛直方向)をZ軸方向と表現する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係るATL装置1を概略的に示す図である。図2は、図1のA―A´矢視図である。図3は、第1の動作モードにおけるATLヘッド10を示す図である。図4は、第2の動作モードにおけるATLヘッド10を示す図である。
【0029】
本実施形態におけるATL装置(所謂、テープ貼付装置)1は、図1に示すようにテープTを押圧するATLヘッド(所謂、貼付ヘッド)10と、ATLヘッド10の押圧位置を制御するハンドリング部(所謂、ハンドリングロボット)70とを備えている。なお、ATLヘッド10は、ハンドリング部70に取り付けられている。また、ATL装置1は、テープTを貼り付けるための自身のモード(動作)として、第1の動作モードと、第2の動作モードとを備えている。
【0030】
ATL装置1は、ATLヘッド10及び/又はハンドリング部70のそれぞれを構成する各部の動作により、ATLヘッド10の位置、姿勢を制御しながらテープTをワークWに押圧して貼り付けることにより、テープTで補強された成形品を製造するためのものである。
【0031】
本実施形態におけるワークWは、たとえば、3次元形状を有する成形品であり、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂などの樹脂製の成形品であってもよいし、金属製の成形品などであってもよい。
【0032】
また、本実施形態におけるテープTは、たとえば、繊維束の少なくとも一部に予め樹脂を含侵させてテープ状にしたものであり、熱可塑性の樹脂が含侵されたもの(UDテープとも呼ばれる)や、熱硬化性の樹脂が含侵されたもの(プリプレグテープとも呼ばれる)などが適用される。また、テープTは、炭素繊維を含むものであってもよいし、樹脂テープに多数の短い繊維が混ぜ込まれたものであってもよい。なお、テープTは、ワークWの材質などに応じて、その種類が適宜選択される。また、テープTは、複数のテープが並列に配置された形態のものであってもよい。
【0033】
本実施形態におけるATLヘッド10は、テープTを所定荷重でワークWに押圧するためのものであり(詳細は後述する)、ハンドリング部70に取り付けられている。このハンドリング部70は、ATLヘッド10の押圧位置を制御するためのものである。たとえば、ハンドリング部70は、ATLヘッド10がテープTを押圧している状態で、ワークWの形状に応じてATLヘッド10を移動させる動作を行い、ワークWの被貼付面HにテープTを貼り付ける。また、ハンドリング部70は、ATLヘッド10を少なくともXYZ軸方向に並進運動可能な機構(3自由度)を備えるもの、たとえば、ガントリ構造体72(図1を参照)や多関節ロボット78(図6を参照)などの汎用産業用ロボットで構成されるとよい。このハンドリング部70の動作制御は、ロボット制御部71(図3を参照)により実行される。このロボット制御部71は、たとえば、汎用のコンピュータ装置によって構成されており、ワークWの被貼付面H(以下、被貼付面H)の3次元座標データ、これら3次元座標データなどに基づいて各部の動作を制御するプログラムなどが記憶されている。また、ロボット制御部71は、3次元座標データなどを基に予め、テープTの貼り付けを開始する被貼付面H上の所定位置(以下、起点S)と、テープTの貼り付けを完了する被貼付面H上の所定位置(以下、終点E)を指定している。これらにより、ATLヘッド10の押圧位置が制御されるようになっている。
【0034】
本実施形態では、ハンドリング部70が、図1に示すようなガントリ構造体72で構成されているものを例に説明する。このガントリ構造体72は、ワークWをX軸方向へ移動可能、かつヨー(θz)方向(Z軸回り)に回動可能に支持するXθZ軸ステージ74を備えたX軸直動機構73と、X軸直動機構73の上方にY軸方向に架け渡されたY軸直動機構75と、Y軸直動機構75に支持され、Z軸方向に移動可能なZ軸直動機構76とを備えている。ATLヘッド10は、Z軸直動機構76が備えるATLヘッド取付部77に取り付けられている(詳細は後述する)。
【0035】
X軸直動機構73は、X軸ガイド部73aと、X軸ガイド部73aに摺動可能に取り付けられたX軸スライドテーブル73bと、X軸スライドテーブル73b上にヨー(θz)方向に回動自在に設けられたXθZ軸ステージ74とを含んで構成されている。そして、このXθZ軸ステージ74上にワークWが載置されるようになっている。すなわち、X軸直動機構73によりワークWをX軸方向に並進運動させることができ、XθZ軸ステージ74によりワークWをヨー(θz)方向に回動運動させることができるようになっている。
【0036】
Y軸直動機構75は、門型の架台に取り付けられたY軸ガイド部75aと、Y軸ガイド部75aに摺動可能に取り付けられたY軸スライダ75bとを含んで構成されている。また、Z軸直動機構76は、Y軸スライダ75bに取り付けられたZ軸ガイド部76aと、Z軸ガイド部76aに摺動可能に取り付けられたZ軸スライダ76bと、Z軸スライダ76bに取り付けられたATLヘッド取付部77とを含んで構成されている。そして、ATLヘッド取付部77の下端部にATLヘッド10が取り付けられている。すなわち、Y軸直動機構75によりATLヘッド10をY軸方向に並進運動させることができ、Z軸直動機構76によりATLヘッド10をZ軸方向に移動させる(被貼付面Hに対して昇降させる)ことができるようになっている。
【0037】
本実施形態におけるATLヘッド10は、図2図3に示すように被貼付面HにテープTを押し付ける押圧部20と、テープTを押圧部20に向かって送り出すフィーダー40と、このフィーダー40により送り出されたテープTと被貼付面Hの少なくともいずれかを加熱する加熱手段50と、押圧部20の押圧位置及び/又は押圧姿勢を被貼付面Hの形状に倣うように動作するパラレルリンク機構30とを備えている。これらATLヘッド10の各部の動作はATLヘッド制御部11により制御される(詳細は後述する)。
【0038】
押圧部20は、テープTを介して被貼付面Hを押圧し、テープTを被貼付面Hに圧着させるためのものであり、テープTを押圧する押圧ローラ21と、押圧ローラ21を回転可能に支持した状態でパラレルリンク機構30のエンド部32に取り付けられるローラ支持部23とを備えている。押圧ローラ21は、テープTの特性、又はワークWの材質などに応じて、樹脂ローラ、弾性ローラ、又は金属ローラなどで構成される。また、押圧ローラ21のサイズ(直径、幅)は、使用するテープTの種類やサイズ、ワークWの種類や形状に応じて適宜選択される。なお、別の構成例では、押圧ローラ21に代えて、押圧シュー等の押圧部材を用いてもよい。
【0039】
フィーダー40は、テープTを搬送して押圧ローラ21と被貼付面Hとの間へとテープTを送り出すためのものであり、本実施形態では部材60を介して押圧ローラ21の回転軸部22に取り付けられている。このフィーダー40は、たとえば、一組の搬送ベルト対41を有しており、図示しないモータの動力により搬送ベルト対41を回転駆動させてテープTを搬送するようになっている。なお、フィーダー40は、ボビンからテープTを巻き出す巻き出し機構が搭載されたものでもよいし、予め所定の長さに裁断されたテープTを供給するものであってもよい。また、ATLヘッド10とは別に載置された巻き出し機構からテープを巻き出し、搬送経路にそってフィーダー40までテープTを供給する構成としてもよい。
【0040】
加熱手段50は、フィーダー40により送りされたテープTと被貼付面Hの少なくともいずれかを加熱するためのものであり、テープTや被貼付面Hを非接触で加熱可能なもの、たとえば、赤外線ランプ、レーザー、IRランプなどの輻射光源や熱風ノズルなどの熱風源などで構成されるとよい。なお、加熱手段50は、必須の要素ではなく、テープTなどへの加熱処理が不要である場合は、ATLヘッド10に加熱手段を設けない構成としてもよいし、部材60に加熱手段50の着脱部を設けて、加熱手段50を着脱可能な構成としてもよい。
【0041】
パラレルリンク機構30は、被貼付面Hの形状に倣うように押圧部20の押圧位置及び/又は押圧姿勢を制御するためのものである。このパラレルリンク機構30は、図2図3に示すようにハンドリング部70に取り付けられるベース部31と押圧部20が取り付けられるエンド部32と、ベース部31とエンド部32との間に並列に設けられる複数のリンク部33とを備えている。そして、これら複数のリンク部33の長さを制御することで押圧ローラ21の押圧位置及び/又は押圧姿勢を制御するようになっている。
【0042】
各リンク部33は、自身の両端にユニバーサルジョイント、又は球面ジョイントなどの自在継手35a、35bと、これら自在継手の間に設けられ、流体の出し入れにより伸縮する荷重制御部34(詳細は後述する)とを備えている。この荷重制御部34が伸縮動作をすることで、リンク部33の長さが制御されるようになっている。すなわち、パラレルリンク機構30は、複数のリンク部33の各々の長さが荷重制御部34の伸縮動作によって制御されることにより、エンド部32の位置(並進3方向)や姿勢(回転3方向)を変化させることができるようになっている。すなわち、パラレルリンク機構30は、並進3方向(XYZ軸方向)、回転3方向(XYZ軸の各軸回り)に運動することで、押圧ローラ103の押圧位置や押圧姿勢を制御するようになっている。
【0043】
パラレルリンク機構30は、一般的に3本~6本のリンク部33で構成されるが、押圧ローラ21の押圧位置及び/又は押圧姿勢を被貼付面Hの形状に倣うように動作させることが可能であれば、リンク部33の本数は特に限定しない。なお、仮に、このリンク部33の本数を少なくした場合、パラレルリンク機構30の構成を簡素化することができ、リンク部33の本数を多くした場合、エンド部32に取り付けられる部品の支持力が高まり、パラレルリンク機構30の動作に伴うモーメントの影響を受けづらくすることができるようになっている。
【0044】
荷重制御部34は、各々のリンク部33の長さを制御することで、押圧ローラ21の押圧位置及び/又は押圧姿勢を制御するためのものであり、自身が伸縮することで押圧ローラ21を所定の荷重で被貼付面Hに押し付けるためのものでもある。この荷重制御部34は、図3に示すように流体(本実施形態では、空気)が供給されるシリンダ部34aと、シリンダ部34aの内圧に応じて進退(変位)するロッド部34bとを備えている。また、ATLヘッド10は、シリンダ部34aの内圧を検出する圧力センサ34fと、ロッド部34bの変位を検出する変位センサ34c(たとえば、磁気式のリニアエンコーダなど)をさらに備えている。
【0045】
シリンダ部34aは、圧力センサ34fを介してサーボバルブ34dに接続されている。サーボバルブ34dは、圧縮した空気を出力する空気圧供給部34e(たとえば、コンプレッサなど)に接続されており、シリンダ部34a内への空気の流量や排気量を調整し、シリンダ部34aの両室の圧力を制御できるようになっている。これにより、ロッド部34bの変位が制御されるようになっている。
【0046】
圧力センサ34fで検出された圧力信号と、変位センサ34cで検出された変位信号は、それぞれATLヘッド制御部11に出力される。このATLヘッド制御部11は、たとえば汎用のコンピュータ装置により構成されており、ワークWの被貼付面Hの3次元形状データの他、これら3次元座標データ、圧力信号、変位信号などに基づいてATLヘッド10各部の動作を制御するプログラムなどが記憶されている。
【0047】
ATLヘッド制御部11は、たとえば、圧力センサ34fや変位センサ34cから取り込んだ検出信号を制御パラメータとして用いて、各荷重制御部34のサーボバルブ34dの動作を制御し、各荷重制御部34のシリンダ部34aの内圧、及び/又はロッド部34bの変位を制御する処理を実行する。これにより、エンド部の位置(並進)や姿勢(回転)を変化させて、押圧ローラ21の押圧位置及び/又は押圧姿勢が被貼付面Hの形状に倣うように駆動制御できるようになっている。すなわち、被貼付面Hに対する押圧ローラ21の押圧方向(荷重方向)が法線方向(被貼付面Hに対して直交する方向)となるように制御できる。これにより、押圧ローラ21により均一な荷重を付与することが可能となる。また、前述した被貼付面Hの3次元座標データと実際の被貼付面Hとの間に形状誤差があった場合であっても、形状誤差を吸収するよう押圧ローラ21の押圧位置及び/又は押圧姿勢を柔軟に制御することができるので、押圧ローラ21による被貼付面HへのテープTの押圧状態を一定に保つことが可能となる。したがって、テープTを被貼付面Hに精度よく貼り付けることができる。
【0048】
上記のようなハンドリング部70と、ATLヘッド10とを備えるATL装置1により、テープTを押圧し、押圧ローラ21の押圧位置及び/又は押圧姿勢を制御しながらテープTをワークWの被貼付面Hに貼り付けることができる。
【0049】
ATL装置1の動作について説明する。まず、ハンドリング部70、本実施形態では、ガントリ構造体72のX軸直動機構73、XθZ軸ステージ74およびY軸直動機構75により、ATLヘッド10を被貼付面H上の起点S上に位置決めする。次いで、Z軸直動機構76により、ATLヘッド10を被貼付面Hに向かって降下させ、押圧ローラ21を被貼付面H上の起点Sに接触させる。そして、押圧ローラ21を所定の荷重で被貼付面Hに押し付ける。この押圧ローラ21を所定の荷重で被貼付面Hに押し付けるまでの動作を本実施形態では、第1の動作モードとする。そして、Y軸直動機構75によりATLヘッド10を被貼付面Hに対して相対移動(被貼付面H上の終点Eまで)させながらテープTを押圧して被貼付面Hに貼り付ける。このATLヘッド10が被貼付面H上の起点Sから終点Eまで移動させられながら、テープTを押圧して被貼付面Hに貼り付ける一連の動作を本実施形態では、第2の動作モードとする。この第2の動作モード時に、押圧ローラ21の押圧位置及び/又は押圧姿勢を被貼付面Hの形状に倣うよう動作させるために、パラレルリンク機構30の各荷重制御部34の機械インピーダンスを比較的小さくしている。すなわち、第1の動作モードと第2の動作モードとで機械インピーダンスを異ならせ(切り替え)、各リンク部33の長さを変化させやすくしている。
【0050】
ここでいう、機械インピーダンスとは、機械構造物に周期的な加振力を加えたときの力と構造物上のある点の応答速度の比のことで、振動の応答特性、つまり力を加えたときの物質(本発明では、荷重制御部34)の動きにくさのことである。この荷重制御部34の動きにくさの度合を本発明では、機械インピーダンスの大小で表す。すなわち、本実施形態では、荷重制御部34の機械インピーダンスが大きくなると荷重制御部34が伸縮しにくくなり、荷重制御部34の機械インピーダンスが小さくなると荷重制御部34が伸縮しやすくなる。ここで、本実施形態のように複数の荷重制御部34を有する構成においては、各荷重制御部34の機械インピーダンスを大きくすることで、パラレルリンク機構30のすべての動作(押圧ローラ21の位置や姿勢の制御)において動きにくくなり、各荷重制御部34の機械インピーダンスを小さくすることで、パラレルリンク機構30のすべての動作(押圧ローラ21の位置や姿勢の制御)において動きやすくなる。
【0051】
ここで、本発明では、ATLヘッド10が、機械インピーダンス調節部(不図示)をさらに備えている。機械インピーダンス調節部は、荷重制御部34の機械インピーダンスを調節するためのものである。この機械インピーダンス調節部は、機械インピーダンスが第1の動作モード時と第2の動作モード時のそれぞれで最適となるよう、機械インピーダンスを調節するようになっている。なお、本実施形態では、サーボバルブ34dが機械インピーダンス調節部である。この機械インピーダンス調節部は、各荷重制御部34のシリンダ部34aの内圧を制御することで、荷重制御部34の機械インピーダンスを調節している(シリンダ部34aの内圧が大きくなると荷重制御部34の機械インピーダンスが大きくなり、シリンダ部34aの内圧が小さくなると荷重制御部34の機械インピーダンスが小さくなる)。なお、ここでいうシリンダ部34aの内圧とは、シリンダ部34a内の両室の圧力の和を指す。
【0052】
そして、本発明では、機械インピーダンス調節部により第1の動作モードにおける各荷重制御部34のシリンダ部34aの内圧が、第2の動作モードにおける各荷重制御部34のシリンダ部34aの内圧よりも大きくなるよう制御される。すなわち、第1の動作モードにおける各荷重制御部34のシリンダ部34aの内圧P図3を参照)と第2の動作モードにおける各荷重制御部34のシリンダ部34aの内圧P図4を参照)との関係が少なくとも内圧P>内圧Pとなるようモードごとに各荷重制御部34のシリンダ部34aの内圧が制御されている。すなわち、第1の動作モードにおける各荷重制御部34の機械インピーダンスが、第2の動作モードにおける各荷重制御部34の機械インピーダンスよりも大きくなっている。これにより、第1の動作モード時にパラレルリンク機構30のすべての動作(押圧ローラ21の位置や姿勢の制御)において動きにくくなるので、押圧ローラ21がふらつくことを防ぐことができ、位置ずれを生じさせることなく、押圧ローラ21を起点Sに接触させることができる。すなわち、テープTを所定位置で精度よく押圧することができるようになっている。
【0053】
一方で、第2の動作モード時には、各荷重制御部34の機械インピーダンスが第1の動作モードにおける各荷重制御部34の機械インピーダンスよりも小さくなっている。これにより、パラレルリンク機構30のすべての動作(押圧ローラ21の位置や姿勢の制御)において動きやすくなるので、押圧ローラ21が被貼付面Hの形状に倣うようにパラレルリンク機構30の動作を制御することができるようになっている。すなわち、被貼付面Hに対して押圧ローラ21の押圧方向を常に法線方向にすることが可能であり、テープTへの押圧力が過不足することを防ぐことができる。これらにより、テープTを被貼付面Hにより精度よく貼り付けることが可能となる。
【0054】
このように、上記実施形態におけるATL装置1によれば、機械インピーダンス調節部が、第1の動作モード時と第2の動作モード時のそれぞれで荷重制御部34の機械インピーダンスを最適値になるよう調節するので、第1の動作モード時には、押圧ローラ21がふらつくことを防ぐことができ、押圧ローラ21が位置ずれすることなく、テープTを被貼付面H上の起点Sに接触させて押圧することが可能となる。また、第2の動作モード時には、押圧ローラ21が被貼付面Hの形状に倣うようにパラレルリンク機構30の動作を制御することができるので、被貼付面Hに対して押圧ローラ21の押圧方向を常に法線方向にすることができ、押圧力が過不足することを防ぐことが可能となる。したがって、テープTを所定位置に精度よく貼り付けることが可能となる。すなわち、従来のATL装置と比べてテープTの貼り付け精度を向上させることができる。
【0055】
(テープ貼付方法)
以下、本発明の一実施形態に係るATL装置1を用いたテープ貼付方法について、図5を参照しながら説明する。なお、前述した装置構成と同様な構成については同様の符号を付し、詳細な説明は省略する。なお、下記ステップS3を第1の動作工程、ステップS4からステップS6を第2の動作工程として説明する。
【0056】
本実施形態におけるテープ貼付方法は、まずロボット制御部71が、ハンドリング部70、本実施形態ではガントリ構造体72のX軸直動機構73を動作させて、ワークWが載置されたXθZ軸ステージ74をX軸方向に移動させ、Y軸直動機構75を動作させてワークWの被貼付面Hの起点Sの直上に押圧ローラ21が配置されるようにATLヘッド10を移動させる(ステップS1)。このとき、必要に応じて、始点Sから終点Eまで、押圧ローラ21が移動する軌跡が直線になるよう、XθZ軸ステージ74を回動させる。
【0057】
次に、機械インピーダンス調節部により各荷重制御部34のシリンダ部34aの内圧を制御し、各荷重制御部34の機械インピーダンスを第2の動作工程における各荷重制御部34の機械インピーダンスよりも大きくする(ステップS2)。そして、Z軸直動機構76により押圧ローラ21を被貼付面Hに向かって降下させ、押圧ローラ21を被貼付面H上の起点Sに接触させて所定の荷重で押し付ける(ステップS3)。
【0058】
次に、機械インピーダンス調節部により各荷重制御部34のシリンダ部34aの内圧を制御し、各荷重制御部34の機械インピーダンスを第1の動作工程における各荷重制御部34の機械インピーダンスよりも小さくする(ステップS4)。
【0059】
次に、ATLヘッド制御部11が、ATLヘッド10の各部を動作させて被貼付面HへのテープTの貼り付けを開始し、テープTを被貼付面H上の起点Sから終点Eまで貼り付けていく(ステップS5)。具体的には、ATLヘッド制御部11は、フィーダー40を動作させて、テープTを押圧ローラ21と被貼付面Hの間へと搬送する。また、ATLヘッド制御部11は、パラレルリンク機構30を動作させて(必要であれば、ロボット制御部71によりガントリ構造体72も動作させてもよい)、押圧ローラ21によりテープTを被貼付面Hに押し付ける。さらに、ATLヘッド制御部11は、加熱手段50による加熱処理を開始し、テープT及び/又は被貼付面Hの加熱を行う。そして、ATLヘッド制御部11が、パラレルリンク機構30による押圧ローラ21の押圧位置及び/又は押圧姿勢の動作制御を行う。また、ロボット制御部71が、ガントリ構造体72の動作の制御を行う。これらATLヘッド制御部11とロボット制御部71の制御により、ATLヘッド10は、被貼付面Hに対して相対移動することによってテープTを被貼付面Hに貼り付けていく。すなわち、被貼付面H上の起点Sから終点EまでのテープTの貼付経路に沿ってテープTを被貼付面Hに貼り付けていく。このとき、押圧ローラ21の押圧位置及び/又は押圧姿勢が被貼付面Hの形状に倣うようにパラレルリンク機構30の各部の動作を制御する。
【0060】
次に、押圧ローラ21が、被貼付面H上の終点Eに到達したときテープTの貼り付け動作を完了する処理を行う(ステップ6)。具体的には、ATLヘッド制御部11が、押圧ローラ21が終点Eに到達したか否かを判断し、終点Eに到達していないと判断すれば、図5のステップS5を継続する一方、終点Eに到達したと判断すれば、貼り付け動作を完了する処理を行う。すなわち、ATLヘッド制御部11がフィーダー40に設けられた切断部(不図示)によりテープTを切断する制御、加熱手段50による加熱動作の停止制御、及び押圧ローラ21により押圧動作の解除制御を行い、1ライン分のテープTの貼り付けを終了する。
【0061】
そして、被貼付面HへのテープTの貼り付けが、すべて完了したか否かを判断し、すべて完了していないと判断すればステップS1に戻り、ガントリ構造体72によりATLヘッド10を次の起点Sの直上に移動させて、被貼付面HのテープTを順次並べて貼り付けていく制御を行う。一方、すべて完了したと判断すれば、すべての動作を終了する。
【0062】
上記テープ貼付方法では、第1の動作工程と第2の動作工程のそれぞれで荷重制御部34の機械インピーダンスが最適値になるよう調節するので、第1の動作工程では、パラレルリンク機構30のすべての動作(押圧ローラ21の位置や姿勢の制御)において動きにくくなる。これにより、押圧ローラ21がふらつくことを防ぐことができるので、押圧ローラ21が位置ずれすることなく、テープTを被貼付面H上の起点Sに接触させて押圧することが可能となる。また、第2の動作工程では、パラレルリンク機構30のすべての動作(押圧ローラ21の位置や姿勢の制御)において動きやすくなる。これにより、押圧ローラ21が被貼付面Hの形状に倣うようにパラレルリンク機構30の動作を制御することができるので、被貼付面Hに対して押圧ローラ21の押圧方向を常に法線方向にすることができ、押圧力が過不足することを防ぐことが可能となる。したがって、テープTを所定位置に精度よく貼り付けることが可能となる。すなわち、従来のテープ貼付方法と比べてテープTの貼り付け精度を向上させることができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳述したが、上記実施形態における構成、及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の追加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。たとえば、上記実施形態では、ATLヘッド10が、パラレルリンク機構30を備えているものを例に説明したが、ATLヘッド10がパラレルリンク機構30を備えずに、一つの荷重制御部34のみを備えているものであってもよい。たとえば、図6に示すようにATLヘッド10が、ハンドリング部70と押圧ローラ21との間に一つの荷重制御部34を備えている構成をしてもよい。このような場合であっても、第1の動作モード(第1の動作工程)の直前に機械インピーダンス調節部により、各荷重制御部34の機械インピーダンスを第2の動作モード(第2の動作工程)時における荷重制御部34の機械インピーダンスよりも大きくすることで、押圧ローラ21のふらつきを防ぐことができる。これにより、第1の動作モード時にテープTを位置ずれすることなく、起点Sに接触させることが可能となる。
【0064】
また、上記実施形態では、荷重制御部34のシリンダ部34aの内圧が、空気の出し入れにより制御されることを例に説明したが、流体であればこれに限られない(たとえば、油などの液体など)。また、機械インピーダンス調節部はサーボバルブ34dに限られない(たとえば、電空レギュレータなど)。
【0065】
また、上記実施形態では、機械インピーダンス調節部がサーボバルブ34dであり、各荷重制御部34のシリンダ部34aの内圧を制御することで、各荷重制御部34の機械インピーダンスを調節する例について説明したが、各荷重制御部34の伸縮動作を外部からロックするものであってもよい。たとえば、図7(a)、図7(b)に示すように機械インピーダンス調節部は、たとえばクランプ36で構成されてもよい。そして、第1の動作モード時には、図7(a)に示すように各荷重制御部34のロッド部34bをクランプ36によりロックすることで、荷重制御部34の機械インピーダンスを第2の動作モードにおける荷重制御部34の機械インピーダンスよりも大きくする。一方、第2の動作モード時には、図7(b)に示すように各荷重制御部34のロッド部34bのロックを解除するようになっている。
【0066】
また、上記実施形態では、機械インピーダンス調節部による荷重制御部34の機械インピーダンスを第2の動作モード(第2の動作工程)における荷重制御部34の機械インピーダンスよりも大きくなるよう調節する制御は、第1の動作モード(第1の動作工程)の直前に行うことを例に説明したが、これに限られず、少なくとも押圧ローラ21が被貼付面Hに接触させられ、所定の荷重で押し付けられるまでに行われるとよい。
【0067】
また、第1の動作モード(第1の動作工程)と第2の動作モード(第2の動作工程)とで、それぞれ最適な動作をさせるために少なくとも機械インピーダンスが異なっていればよい。場合によっては第1の動作モード(第1の動作工程)における機械インピーダンスが第2の動作モード(第2の動作工程)における機械インピーダンスよりも大きくなっていてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、フィーダー40が部材60を介して押圧ローラ21の回転軸部22に取り付けられているものを例に説明したが、この部材60が回動部材60であってもよい。具体的には、図3に示すように回動部材60が、押圧ローラ21の回転軸部22に回動可能に取り付けられている。この回動部材60には、回動動作部80と連結するための回動継手83が設けられている。そして、回動動作部80は、エンド部32上にベース部31に向けて立設される直動動作手段81と、この直動動作手段81が有するシリンダ部81a内の圧力を制御してロッド部81bを変位させることで上下方向に直動される直動部材82と、直動部材82と回動部材60との間に、両端が回動継手83を介して回動可能に取り付けられるリンクアーム84とを備えている。これにより、パラレルリンク機構30の動作に合わせて、フィーダー40の姿勢を制御することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 ATL装置(テープ貼付装置)
10 ATLヘッド(貼付ヘッド)
11 ATLヘッド制御部
20 押圧部
21 押圧ローラ
22 回転軸部
23 ローラ支持部
30 パラレルリンク機構
31 ベース部
32 エンド部
33 リンク部
34 荷重制御部
34a シリンダ部
34b ロッド部
34c 変位センサ
34d サーボバルブ
34e 空気圧供給部
34f 圧力センサ
35a、35b 自在継手
36 クランプ
40 フィーダー(搬送手段)
41 搬送ベルト対
50 加熱手段
60 部材(回動部材)
70 ハンドリング部
71 ロボット制御部
72 ガントリ構造体
73 X軸直動機構
73a X軸ガイド部
73b X軸スライドテーブル
74 XθZ軸ステージ
75 Y軸直動機構
75a Y軸ガイド部
75b Y軸スライダ
76 Z軸直動機構
76a Z軸ガイド部
76b Z軸スライダ
77 ATLヘッド取付部
78 多関節ロボット
80 回動動作部
81 直動動作手段
81a シリンダ部
81b ロッド部
82 直動部材
83 回動継手
84 リンクアーム
T テープ
W ワーク
H 被貼付面
S 起点
E 終点
内圧
内圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8