(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】羽根付鋼管杭とその施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/56 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
E02D5/56
(21)【出願番号】P 2021050242
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】重松 秀和
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-069073(JP,A)
【文献】特開平11-303070(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0009022(US,A1)
【文献】特開2009-215808(JP,A)
【文献】特開昭59-109616(JP,A)
【文献】特開2019-173456(JP,A)
【文献】特開2003-293367(JP,A)
【文献】特開2001-311147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根が取り付けられた羽根付鋼管杭を回転力によって地盤に埋設する際の施工方法であって、
前記羽根付鋼管杭の先端部から中心軸に沿って所定長さLぶん上方となる位置に前記羽根が取り付けられた羽根付鋼管杭を採用し、
前記羽根付鋼管杭を
、地盤中の
上側と下側の軟弱層の中間に位置する支持層たる中間層に貫入させる際、貫入に伴い変化する
回転トルクTの平均値を測定し、回転トルクの平均値が施工中において相対的にもっとも小さい値であるT1から、回転トルクの平均値がT2に大きくなったときの前記先端部の到達深度をD1とし、次に回転トルクの平均値がT2からT3に大きくなったときの前記先端部の到達深度をD2とし、D2-D1≧Lであることによって、前記支持層が少なくとも厚さL以上存在することを確認し、前記羽根を前記支持層中に根入れさせることを特徴とする羽根付鋼管杭の施工方法。
【請求項2】
前記所定長さは、前記羽根の外径の3~5倍の長さである、請求項1に記載の羽根付鋼管杭の施工方法。
【請求項3】
前記所定長さは、前記羽根の外径の3~5倍に前記羽根の前記支持層への根入れ深さを加えた長さである、請求項1に記載の羽根付鋼管杭の施工方法。
【請求項4】
前記変化量は、回転トルク、振動、音のいずれかである、請求項1から3のいずれか一項に記載の羽根付鋼管杭の施工方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の施工方法に用いられる羽根付鋼管杭。
【請求項6】
当該鋼管杭のうち前記羽根よりも前記先端部寄りの部分の少なくとも一部の鋼管外径が、前記羽根よりも鋼管基端部側における鋼管外径よりも小さい、請求項5に記載の羽根付鋼管杭。
【請求項7】
前記先端部と前記羽根との間に、前記支持層から反力を受ける受圧面が形成されている、請求項6に記載の羽根付鋼管杭。
【請求項8】
前記受圧面が、前記羽根の直下となる位置に設けられた当該鋼管杭の段部によって形成されている、請求項7に記載の羽根付鋼管杭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽根付鋼管杭とその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤上に建設する構造物用の基礎として羽根付鋼管杭が利用されている。羽根付鋼管杭を施工するにあたっては、杭先端部に螺旋状の羽根が取り付けられた鋼管杭を回転させながら地盤に挿入することが一般的であるといえる(例えば特許文献1参照)。螺旋状の羽根は、施工時においては回転に伴い地中への杭推進力を生じさせ、施工後においては地盤中で当該杭を支持するように機能する。羽根による支持機能を十分に発揮させるには、当該羽根が地盤中の軟弱な層にではなくより強固な層(支持層)に位置していることが重要である(
図12参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、鋼管杭を中間層と言われる支持層(支持層の下に軟弱地盤がある場合、当該支持層を中間層と呼ぶ場合がある)で止める場合に、ボーリング調査を行った位置から離れた場所では当該中間層の厚さが分からないため支持力が担保されているのかどうか把握し難い。敷地の広さに比べてボーリング調査の数が少ない場合や、当該敷地内における中間層の厚さにばらつきがある場合には、特に不安がある。また、中間層を実際に確認するにはボーリング調査を密に行うか、試し掘り(施工前に、杭を打つ位置の近傍を掘削して中間層の厚さを確認する作業)を行う必要があるがこれには相応のコストと時間を要する。例を挙げて説明すれば、当初の計画では十分な厚さの支持層(中間層)があるはずだとしても(
図12参照)、当該支持層(中間層)の厚さは施工範囲内において一様だとは限らないため、実際には当初計画よりも支持層(中間層)が薄かったということが生じ得る(
図13参照)。その場合、得られる支持力は想定したよりも小さくなってしまうが、そのことを把握することができないためにその施工結果は問題なしということになってしまう(
図13参照)。また、仮に支持層(中間層)の深度が想定していたよりも深い(上側の軟弱層が厚い)ということが把握できたならば(
図14参照)、支持力が小さくなることが推定されるため、地盤を再調査するといったことが必要となる。
【0005】
そこで、本発明は、鋼管杭を施工するすべての地点において必要な中間層の厚さが存在するかどうかを簡便な方法で確認することができるようにした羽根付鋼管杭とその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、羽根が取り付けられた羽根付鋼管杭を回転力によって地盤に埋設する際の施工方法であって、
羽根付鋼管杭の先端部から中心軸に沿って所定長さLぶん上方となる位置に羽根が取り付けられた羽根付鋼管杭を採用し、
羽根付鋼管杭を地盤中の支持層に貫入させる際、貫入に伴い変化する変化量を測定することによって、支持層が少なくとも厚さL以上存在することを確認し、羽根を支持層中に根入れさせるというものである。
【0007】
羽根付鋼管杭の施工中、杭先端部が支持層に到達した時点で抵抗が増し、それ以降は変化量が増えた状態が続く。その後、変化量が増えた状態のまま杭を支持層に貫入させ続けることができれば、この時点で、当該支持層の厚さが少なくとも所定長さL以上あることを確認することができる。羽根が支持層に到達した時点で抵抗がさらに増し、貫入に伴い変化する変化量が変化する。一方、変化量が変化した状態のまま杭を支持層に貫入させ続けるうち、変化量たとえば回転トルクが一層増えるよりも前にいったん減少してしまえば、羽根が支持層に到達するよりも先に先端部が支持層から突き抜けてしまったと考えることできるため、この時点で、当該支持層の厚さが所定長さLに満たないことを確認することができる。
【0008】
上記のごとき羽根付鋼管杭の施工方法において、所定長さLは、一般的に羽根の外径の3~5倍の長さであってもよいし、羽根の外径の3~5倍に羽根の支持層への根入れ深さを加えた長さであってもよい。
【0009】
上記の変化量は、たとえば、回転トルク、振動、音のいずれかである。
【0010】
本発明の別の態様は、上記のごとき施工方法に用いられる羽根付鋼管杭である。
【0011】
上記のごとき羽根付鋼管杭は、当該鋼管杭のうち羽根の取付位置よりも先端部寄りの部分の少なくとも一部の鋼管外径が、取付位置よりも鋼管基端部側における鋼管外径よりも小さいものであってもよい。
【0012】
上記のごとき羽根付鋼管杭の先端部と羽根の取付位置との間に、支持層から反力を受ける受圧面が形成されていてもよい。
【0013】
上記のごとき羽根付鋼管杭において、受圧面が、羽根の直下となる位置に設けられた当該鋼管杭の段部によって形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、鋼管杭を施工するすべての地点において必要な中間層の厚さが存在するかどうかを簡便な方法で確認することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】軟弱層および支持層(中間層)がある地盤の概略をその深度および想定されるN値の変化とともに示す図である。
【
図2】埋設途中の羽根付鋼管杭の先端が地盤中の支持層に到達した状態を示す図である。
【
図3】埋設途中の羽根付鋼管杭の羽根が地盤中の支持層に到達した状態を示す図である。
【
図4】
図3の状態から羽根付鋼管杭をさらに埋設して羽根を根入れした状態を示す図である。
【
図5】羽根付鋼管杭の一例を示す、(A)正面図、(B)右側面図、(C)背面図、(D)左側面図、(E)上面図、(F)底面図からなる六面図である。
【
図6】羽根付鋼管杭の杭先端からの応力分散や杭の受圧面などについて説明する、先端が塞がった構造の杭の(A)正面図(側面図)と(B)支持力に寄与する有効面積(投影面)を示す図である。
【
図7】埋設途中の羽根付鋼管杭の先端が地盤中の支持層を抜けた状態を示す図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態における羽根付鋼管杭の一例を示す、(A)正面図、(B)右側面図、(C)背面図、(D)左側面図、(E)上面図、(F)底面図からなる六面図である。
【
図9】羽根付鋼管杭の杭先端からの応力分散や杭の受圧面などについて説明する、先端が開口した羽根付鋼管杭の一例を示す(A)正面図と(B)底面図である。
【
図10】第2の実施形態における羽根付鋼管杭の杭先端からの応力分散や杭の受圧面などについて説明する、先端が開口した羽根付鋼管杭の一例を示す(A)正面図と(B)底面図である。
【
図11】羽根から先が小径の鋼管とされた羽根付鋼管杭を埋設する途中の様子を示す図である。
【
図12】従来の羽根付鋼管杭を地盤に埋設する際の様子を参考として示す図である。
【
図13】
図12の場合より支持層が薄い(厚みが少ない)地盤に従来の羽根付鋼管杭を埋設する際の様子を参考として示す図である。
【
図14】
図13の場合とは支持層の位置(深さ)が異なる地盤に従来の羽根付鋼管杭を埋設する際の様子を参考として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
図1等に、本発明にかかる羽根付鋼管杭とその施工方法の好適な実施形態を示す。
【0018】
<羽根付鋼管杭の構成>
羽根付鋼管杭10は、杭本体部11、先端部12、羽根13を備える(
図5等参照)。
【0019】
杭本体部11は、たとえば筒状の鋼管で構成されている。筒状の鋼管は、中心軸11Cに沿って形成されている。
【0020】
先端部12は、杭本体部11の一端側であって埋設時に下方を向く掘進側の端部となる部分である(
図5参照)。先端部12は開放でも閉塞でもよく、また支持層への貫入性を良くするために掘削刃や掘削爪などを取り付けても良い。
【0021】
羽根13は、杭本体部11の周面に螺旋状に形成されており(
図5参照)、当該羽根付鋼管杭10を埋設する際、杭本体部11の回転に伴い中心軸11Cまわりに回転し、地盤Gで回転力を鉛直下方への推進力に変換して当該羽根付鋼管杭10を埋設させる。また、埋設後の羽根13は地盤G中で大きな地盤反力を受けることにより、杭本体部11の支持力を得る。羽根13は、上面視にて略円形となるように形成されていて、その羽根径(羽根13の外径)はDwである(
図9等参照)。なお、本実施形態では螺旋状である羽根13を挙げて説明しているがこれは好適な一例にすぎず、羽根13がこれ以外の形状たとえば平板状などであってもよいことはいうまでもない。
【0022】
本実施形態の羽根13は、杭本体部11の先端部12から中心軸11Cに沿って所定長さLぶん上方となる位置に設けられている(
図9等参照)。この所定長さLはさらに厳密に規定されたものであってもよい。一例として、本実施形態では、杭本体部11のもっとも先端(先端部12のうちもっとも端部にある部分)を起点、羽根13のうちもっとも先端部12寄りに位置する部分を終点とした場合の長さを所定長さLとしている。
【0023】
ここで、杭本体部11の先端部12から羽根13までの長さに相当する上記の所定長さLは、羽根の外径の3~5倍の長さに設定してもよいし、この長さにさらに羽根の支持層への根入れ深さを加えた長さに設定してもよい。これについて以下に説明する(
図6等参照)。
【0024】
たとえば閉塞している先端部12とその直近に配置された羽根13とで支持力を得ようとする場合、先端部12と羽根13の両方を足した円形の支持面(受圧面)のすべて(全面積)に地盤反力が作用することになるが(
図6参照)、このような場合であっても、当該支持面(受圧面)に作用する荷重は支持面(本例の場合、先端部12と羽根13の両方の投影面を足した部分)から離れるにつれ(つまりは、先端部12と羽根13からさらに深くなるにつれ)分散する(この現象を本明細書では「応力分散」という)。このような応力分散を考慮すると、当該羽根付鋼管杭10の支持力に影響する地盤深さは羽根径(羽根13の外径)Dwの3~5倍程度であるとも言われていて、これに基づいて考えるならば、この地盤深さ(すなわち3Dw~5Dw)の範囲の地盤の強度が支持力の大きさに影響するということになる(
図12~
図14参照)。3Dw以下だとその下にある軟弱層に羽根からの応力が影響し、杭が沈下する可能性がある。また、5Dw以上だと支持力は問題ないが、杭材料費が高くなる。そうだとすれば、如何にして、支持面の下方の地盤深さ3Dw~5Dwの範囲に固い支持層GSが存在するような形で杭を埋設するかが重要となる、と説明することができる(
図6参照)。しかして、本実施形態では、支持面の下方の地盤深さ3Dw~5Dwの範囲に固い支持層GSが存在するようなことに適した構造の羽根付鋼管杭10および当該杭の施工方法を提言する。
【0025】
<羽根付鋼管杭の施工方法>
本実施形態では、上記のごとき構造の羽根付鋼管杭10を以下のように施工することで、支持面の下方において十分な支持力が得られるようにする。以下、図に示しながら説明する(
図1~
図4等参照)。
【0026】
まず、羽根付鋼管杭10を埋設する場合に実際にあり得るパターンの地盤Gとして、地表GLの直下が軟弱層GW1であり、その下方が支持層GSであり、さらにその下方が別の軟弱層GW2である地盤Gを想定する(
図1参照)。なお、わかりやすく表示するため、図中では支持層GSの部分を他よりも濃く表している。図示するとおり、この地盤Gにおける支持層GSは、上側の軟弱層GW1および下側の軟弱層GW2の中間に位置しており、その態様から、このような支持層は「中間層」と呼ばれる場合がある。このようないわば軟弱な地盤Gに羽根付鋼管杭10を施工するにあたっては、羽根13による支持機能を十分に発揮させるべく、軟弱層GWよりも強固な支持層GSに当該羽根13が位置するように施工することが重要であることは先述のとおりである。このような施工をするべく、本実施形態では以下のごとき手法を採用する。
【0027】
すなわち、本実施形態では、羽根付鋼管杭10を未掘削の地盤G中に貫入させる際、貫入に伴い変化する変化量たとえば回転トルクを測定し、当該回転トルクの値を確認しながら施工する。回転トルクは、とくに図示していないが、たとえばリーダー、オーガー、振れ止め装置、トルク計などを有する杭打機を用いて羽根付鋼管杭10を回転させるような場合であれば、トルク計を使って計測することができる。また、本実施形態では、上から軟弱層GW―支持層GS―軟弱層GWであると想定した所定の地盤GにおけるN値をあらかじめ想定ないし設定しておき、上記のようにして計測される回転トルクTをN値と比べながら地盤Gの様子を探る(
図1等参照)。
【0028】
羽根付鋼管杭10の施工開始時点からその先端部12が支持層GSに到達するまでの間、当該羽根付鋼管杭10は軟弱層GW1の中を貫入した状態にある(
図2参照)。そのため、その間の回転トルクは施工中において相対的にもっとも小さい値になる。本実施形態では、この間の回転トルクTの平均値をT1とする(
図2参照)。また、このときの先端部12に到達深度を仮にD1とおく(
図2参照)。
【0029】
先端部12が支持層GSに到達した後は、主に当該先端部12を介して羽根付鋼管杭10に作用する抵抗が増大する結果、回転トルクTが大きくなる。このときの回転トルクの平均値をT2とする(
図3参照)。また、羽根13が支持層GSに到達したときの先端部12の到達深度をD2とする(
図3参照)。
【0030】
上記のごとく、貫入に伴い変化する回転トルクの値を確認しながら施工することで、当該施工箇所における支持層GSの厚さを把握することが可能である。すなわち、貫入に伴う回転トルクの値の変化が上記のようであれば、当該地点における支持層GSの厚さは少なくとも所定長さL以上あると推定される。そのような推定に基づき支持層GSの厚さに問題がないとの判断が得られたら、羽根付鋼管杭10をさらに回転させてある程度の深さたとえば先端部12の到達深度がD3となるまで貫入させ、羽根13を支持層GSに根入れする(
図4参照)。このような手法によれば、事前に調査をすることなく、羽根付鋼管杭10を実際に埋設する当該地点において施工しながら必要な支持層(中間層)GSの厚さが存在するかどうか確認しながら施工することが可能となる。また、上記の根入れ分をあらかじめ考慮し、長さLを、羽根径Dwの3~5倍の長さ(3Dw~5Dw)に、支持層GSへの羽根13の根入れ深さを加えた長さに設定してもよい。こうした場合には、根入れ後の状態において羽根13の下方に必要な支持層GSの厚さ(少なくとも3Dw)が存在するかどうか確認しながら施工することが可能となる。
【0031】
上記は、いわば想定したとおりの回転トルク値の変化が得られた場合であるが、逆にそうではない変化があったような場合には、支持層GSの厚さが十分だとは推定できない場合がある。すなわち、羽根13が支持層GSに到達するよりも前に先端部12が支持層GS(の最下部)から抜け出てしまった場合には(
図7参照)、回転トルクTがT2からT3へ増大するよりも前に減少するということが生じ得る。このような場合には支持力の低減を検討し、増杭を打つといった対応をとることがその対処法として考えられる。
【0032】
[第2の実施形態]
羽根付鋼管杭10として、杭本体部11の外径が途中で変わる構造のものを採用してもよい。以下、このような羽根付鋼管杭10の具体例を挙げつつ、本発明の第2の実施形態として説明する
図8、
図10等参照)。
【0033】
本実施形態の羽根付鋼管杭10は、杭本体部11のうち、羽根13の取付位置(符号P
13で示す)よりも先端部12寄りの部分の鋼管外径(符号Dp2で示す)が、取付位置P
13よりも基端部14側における鋼管外径(符号Dp1で示す)よりも、段部15の部分で小さくなる(Dp2<Dp1)、いわば2段構造の形状となっている(
図10等参照)。このような構造の羽根付鋼管杭10は、受圧面(
図10等において符号16で示す)を実質的に広げ、地盤Gから受ける地盤反力をより大きくさせることを可能とする。
【0034】
すなわち、鋼管外径が均一である羽根付鋼管杭10の場合(なお、ここでは先端部12は開口しているものとする)、先端部12と羽根13の両方の投影面積を足した環状部分が受圧面16となり当該受圧面16に地盤反力が作用することになるが、上述した応力分散の影響を考慮に含めると実質的に受圧面16として機能するのは羽根13の部分のみである。したがって、実際のところは先端部12の面積が受圧面16に含まれず、羽根13の部分の面積のみが実質的な受圧面16として有効ということになる(
図9参照)。この点、本実施形態では、杭本体部11の鋼管外径を段部15を介して2段構造とすることにより実質的に受圧面16として機能する面を羽根13の近傍に増やすことを可能にしている(
図10参照)。より具体的には、羽根13の投影面積のみならず、環状の段部15の面積ぶんも実質的に受圧面16として機能することから、そのぶん、受圧面16として機能する面が増大する。このように、羽根付鋼管杭10の先端部12と羽根13の取付位置P
13との間に、支持層GSから反力を受ける受圧面16を形成することで、当該羽根付鋼管杭10が地盤Gから受ける支持力をより効果的に生じさせることが可能となる(
図11等参照)。また、ここまでの説明から明らかなとおり、応力分散の影響を考慮すると、受圧面(本実施形態の場合であれば、段部15によって増大する受圧面)16は、支持力をより効果的に生じさせるという観点からすれば、羽根13の直下となる位置などできるだけ羽根13に近い位置に設けられることが好ましい。
【0035】
なお、本実施形態では、段部15を境にして外径が変わる段付き構造の杭本体部11からなる羽根付鋼管杭10を示したが(
図8等参照)、これは応力分散の影響を考慮しつつ支持力をより効果的に生じさせるための構造の好適な一例にすぎない。特に図示することはしないが、このほか、段部を増やして外径が多段階的に変わる構造、途中にテーパー部を含む構造などとすることももちろん可能であり、外径が途中で変わる具体的な形態が等に限定されることはない。
【0036】
また、上記のごとく外径が途中で変わる羽根付鋼管杭10を施工するにあたっては、先端部12の形状や大きさ、段部15の有無やその位置といった違いが回転トルクの大きさや変化の様子に何かしらの影響を及ぼすはずであるが、貫入に伴い変化する変化量としての回転トルクを測定し、当該回転トルクの値に基づき軟弱層GW1や支持層GSの厚さを検出しながら施工を進めるという基本的な点においては第1の実施形態で説明した施工方法と共通する。
【0037】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態では、貫入に伴い変化する変化量として回転トルクを測定することについて説明したが、変化を示すパラメーターの好適な一例にすぎない。このほか、例えば、貫入に伴い変化する振動や音、とくに、先端部12が軟弱層GW1から支持層GSへあるいはこれとは逆へと突き進んだ際に変化する振動や音を変化量とて利用することも当然に可能である。振動や音は掘削装置にセンサーを取り付けて測定する方法などがあるが、杭打ち機のオペレータや工事管理者が掘削装置に発生する振動や音の変化から経験的に判断することも有効である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、羽根付鋼管杭、および該杭を回転力によって地盤に埋設する際の施工に適用して好適である。
【符号の説明】
【0039】
10…羽根付鋼管杭
11…羽根付鋼管杭の杭本体部
11C…中心軸
12…羽根付鋼管杭の先端部
13…(螺旋状の)羽根
14…羽根付鋼管杭の基端部
15…段部
16…受圧面
Dp1…太い部分の鋼管外径
Dp2…細い部分の鋼管外径
Dw…羽根径
G…地盤
GL…地表
GS…支持層(中間層)
GW1…軟弱層
GW2…軟弱層
L…先端部から羽根までの所定長さ
P13…羽根の取付位置