(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】信号ベクトル導出装置、方法、プログラム、記録媒体
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20241108BHJP
A61B 5/242 20210101ALI20241108BHJP
【FI】
G01R33/02 R
A61B5/242
(21)【出願番号】P 2021074991
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100113354
【氏名又は名称】石井 総
(72)【発明者】
【氏名】緒方 祐史
(72)【発明者】
【氏名】柳田 朋則
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0093964(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0251303(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106970348(CN,A)
【文献】特開2003-38455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02
A61B 5/242
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて前記ベクトルの向きを導出する信号ベクトル導出装置であり、前記センサの測定結果が、前記ベクトルの前記3軸の成分の各々に第一係数を乗じたものの和に比例する信号ベクトル導出装置であって、
前記センサの測定結果と、前記第一係数に第二係数を乗じて得られた値の和とに基づき得られるスペクトルであって、前記信号を出力する信号源の存在するボクセルで極大値をとるスペクトルを導出するスペクトル導出部と、
前記スペクトルを得るために用いられた前記第二係数に基づき、前記ベクトルの向きを導出する向き導出部と、
を備えた信号ベクトル導出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の信号ベクトル導出装置であって、
前記ベクトルが、磁気双極子モーメントまたは電気双極子モーメントである、
信号ベクトル導出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の信号ベクトル導出装置であって、
前記ベクトルが、電気双極子モーメントであり、
前記測定結果の成分と同じ方向の前記ベクトルの成分が0である、
信号ベクトル導出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の信号ベクトル導出装置であって、
前記第一係数が、前記ボクセルの各々と前記センサの各々との間の位置関係に基づき定められる、
信号ベクトル導出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の信号ベクトル導出装置であって、
前記第二係数のいずれか一つまたは二つが0である、
信号ベクトル導出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の信号ベクトル導出装置であって、
前記スペクトルが、MUSIC法に則して求められる、
信号ベクトル導出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の信号ベクトル導出装置であって、
前記スペクトル導出部が、前記センサの測定結果から求められたノイズ部分空間の固有ベクトルに基づき前記スペクトルを導出する、
信号ベクトル導出装置。
【請求項8】
請求項6に記載の信号ベクトル導出装置であって、
前記第一係数に第二係数を乗じて得られた値の和が、MUSIC法における伝達関数である、
信号ベクトル導出装置。
【請求項9】
請求項1に記載の信号ベクトル導出装置であって、
前記極大値が2つ以上存在する、
信号ベクトル導出装置。
【請求項10】
請求項1に記載の信号ベクトル導出装置であって、
前記スペクトルに基づき、前記信号源の存在するボクセルの位置を導出する位置導出部を備えた信号ベクトル導出装置。
【請求項11】
請求項10に記載の信号ベクトル導出装置であって、
前記位置導出部が、各ボクセルにおいて前記スペクトルの各々がとる値の最大値に基づき、前記信号源の存在するボクセルの位置を導出する信号ベクトル導出装置。
【請求項12】
請求項11に記載の信号ベクトル導出装置であって、
前記位置導出部が、
前記最大値の内でも最大の値から所定の範囲内の値をとるボクセルの重心を、前記所定の範囲を増やしながら、前記重心が所定量を超えて変化する回数に1を加えた値が前記信号源の個数になるまで、求め、
前記重心を求めた前記ボクセルを、前記信号源の個数だけクラスタリングし、
クラスタリングされた前記ボクセルの内で、前記スペクトルが最大の値をとるものを前記信号源の存在するボクセルの位置とする、
信号ベクトル導出装置。
【請求項13】
請求項10に記載の信号ベクトル導出装置であって、
前記位置導出部が既に導出した前記信号源の存在するボクセルの位置に基づき、さらに、ボクセルの大きさを小さくして、前記信号源の存在するボクセルの位置を導出する、
信号ベクトル導出装置。
【請求項14】
所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて前記ベクトルの向きを導出する信号ベクトル導出方法であり、前記センサの測定結果が、前記ベクトルの前記3軸の成分の各々に第一係数を乗じたものの和に比例する信号ベクトル導出方法であって、
前記センサの測定結果と、前記第一係数に第二係数を乗じて得られた値の和とに基づき得られるスペクトルであって、前記信号を出力する信号源の存在するボクセルで極大値をとるスペクトルを導出するスペクトル導出工程と、
前記スペクトルを得るために用いられた前記第二係数に基づき、前記ベクトルの向きを導出する向き導出工程と、
を備えた信号ベクトル導出方法。
【請求項15】
所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて前記ベクトルの向きを導出する信号ベクトル導出処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであり、前記センサの測定結果が、前記ベクトルの前記3軸の成分の各々に第一係数を乗じたものの和に比例するプログラムであって、
前記信号ベクトル導出処理が、
前記センサの測定結果と、前記第一係数に第二係数を乗じて得られた値の和とに基づき得られるスペクトルであって、前記信号を出力する信号源の存在するボクセルで極大値をとるスペクトルを導出するスペクトル導出工程と、
前記スペクトルを得るために用いられた前記第二係数に基づき、前記ベクトルの向きを導出する向き導出工程と、
を備えたプログラム。
【請求項16】
所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて前記ベクトルの向きを導出する信号ベクトル導出処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であり、前記センサの測定結果が、前記ベクトルの前記3軸の成分の各々に第一係数を乗じたものの和に比例する記録媒体であって、
前記信号ベクトル導出処理が、
前記センサの測定結果と、前記第一係数に第二係数を乗じて得られた値の和とに基づき得られるスペクトルであって、前記信号を出力する信号源の存在するボクセルで極大値をとるスペクトルを導出するスペクトル導出工程と、
前記スペクトルを得るために用いられた前記第二係数に基づき、前記ベクトルの向きを導出する向き導出工程と、
を備えた記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場などの信号の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁場の測定結果から信号源の位置を推定する方法(例えば、部分空間法(MUSIC法, SF, WSF等))が知られている(特許文献1、非特許文献1および非特許文献2を参照)。また、生体に関する磁場を測定することも知られている(特許文献2、特許文献3および特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2009-534103号公報
【文献】特開2009-172088号公報
【文献】特開2007-20594号公報
【文献】特開2002-28143号公報
【文献】Ishii H., Niki N., Nakaya Y., Nishitani H., Kang Y.M. (2000)“Algorithm for Magnetocardiography Analysis Based on Multi Channel SQUID andThoracic MR Images” In: Aine C.J., Stroink G., Wood C.C., Okada Y., SwithenbyS.J. (eds) Biomag 96. Springer, New York, NY. pp. 261-262.
【文献】H. Kudo; T. Maemura; T. Saito “Multiple Signal Source Localizationfrom Spatio-Temporal Magnetocardiogram” Proceedings of 1994 IEEE NuclearScience Symposium - NSS'94 pp. 1832-1836
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、磁場などの信号の測定精度の向上を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる信号ベクトル導出装置は、所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて前記ベクトルの向きを導出するものであり、前記センサの測定結果が、前記ベクトルの前記3軸の成分の各々に第一係数を乗じたものの和に比例し、前記センサの測定結果と、前記第一係数に第二係数を乗じて得られた値の和とに基づき得られるスペクトルであって、前記信号を出力する信号源の存在するボクセルで極大値をとるスペクトルを導出するスペクトル導出部と、前記スペクトルを得るために用いられた前記第二係数に基づき、前記ベクトルの向きを導出する向き導出部とを備えるように構成される。
【0006】
上記のように構成された信号ベクトル導出装置は、所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて前記ベクトルの向きを導出するものである。前記センサの測定結果が、前記ベクトルの前記3軸の成分の各々に第一係数を乗じたものの和に比例する。スペクトル導出部が、前記センサの測定結果と、前記第一係数に第二係数を乗じて得られた値の和とに基づき得られるスペクトルであって、前記信号を出力する信号源の存在するボクセルで極大値をとるスペクトルを導出する。向き導出部が、前記スペクトルを得るために用いられた前記第二係数に基づき、前記ベクトルの向きを導出する。
【0007】
なお、本発明にかかる信号ベクトル導出装置は、前記ベクトルが、磁気双極子モーメントまたは電気双極子モーメントであるようにしてもよい。
【0008】
なお、本発明にかかる信号ベクトル導出装置は、前記ベクトルが、電気双極子モーメントであり、前記測定結果の成分と同じ方向の前記ベクトルの成分が0であるようにしてもよい。
【0009】
なお、本発明にかかる信号ベクトル導出装置は、前記第一係数が、前記ボクセルの各々と前記センサの各々との間の位置関係に基づき定められるようにしてもよい。
【0010】
なお、本発明にかかる信号ベクトル導出装置は、前記第二係数のいずれか一つまたは二つが0であるようにしてもよい。
【0011】
なお、本発明にかかる信号ベクトル導出装置は、前記スペクトルが、MUSIC法に則して求められるようにしてもよい。
【0012】
なお、本発明にかかる信号ベクトル導出装置は、前記スペクトル導出部が、前記センサの測定結果から求められたノイズ部分空間の固有ベクトルに基づき前記スペクトルを導出するようにしてもよい。
【0013】
なお、本発明にかかる信号ベクトル導出装置は、前記第一係数に第二係数を乗じて得られた値の和が、MUSIC法における伝達関数であるようにしてもよい。
【0014】
なお、本発明にかかる信号ベクトル導出装置は、前記極大値が2つ以上存在するようにしてもよい。
【0015】
なお、本発明にかかる信号ベクトル導出装置は、前記スペクトルに基づき、前記信号源の存在するボクセルの位置を導出する位置導出部を備えるようにしてもよい。
【0016】
なお、本発明にかかる信号ベクトル導出装置は、前記位置導出部が、各ボクセルにおいて前記スペクトルの各々がとる値の最大値に基づき、前記信号源の存在するボクセルの位置を導出するようにしてもよい。
【0017】
なお、本発明にかかる信号ベクトル導出装置は、前記位置導出部が、前記最大値の内でも最大の値から所定の範囲内の値をとるボクセルの重心を、前記所定の範囲を増やしながら、前記重心が所定量を超えて変化する回数に1を加えた値が前記信号源の個数になるまで、求め、前記重心を求めた前記ボクセルを、前記信号源の個数だけクラスタリングし、クラスタリングされた前記ボクセルの内で、前記スペクトルが最大の値をとるものを前記信号源の存在するボクセルの位置とするようにしてもよい。
【0018】
なお、本発明にかかる信号ベクトル導出装置は、前記位置導出部が既に導出した前記信号源の存在するボクセルの位置に基づき、さらに、ボクセルの大きさを小さくして、前記信号源の存在するボクセルの位置を導出するようにしてもよい。
【0019】
本発明は、所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて前記ベクトルの向きを導出する信号ベクトル導出方法であり、前記センサの測定結果が、前記ベクトルの前記3軸の成分の各々に第一係数を乗じたものの和に比例する信号ベクトル導出方法であって、前記センサの測定結果と、前記第一係数に第二係数を乗じて得られた値の和とに基づき得られるスペクトルであって、前記信号を出力する信号源の存在するボクセルで極大値をとるスペクトルを導出するスペクトル導出工程と、前記スペクトルを得るために用いられた前記第二係数に基づき、前記ベクトルの向きを導出する向き導出工程とを備えた信号ベクトル導出方法である。
【0020】
本発明は、所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて前記ベクトルの向きを導出する信号ベクトル導出処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであり、前記センサの測定結果が、前記ベクトルの前記3軸の成分の各々に第一係数を乗じたものの和に比例するプログラムであって、前記信号ベクトル導出処理が、前記センサの測定結果と、前記第一係数に第二係数を乗じて得られた値の和とに基づき得られるスペクトルであって、前記信号を出力する信号源の存在するボクセルで極大値をとるスペクトルを導出するスペクトル導出工程と、前記スペクトルを得るために用いられた前記第二係数に基づき、前記ベクトルの向きを導出する向き導出工程とを備えたプログラムである。
【0021】
本発明は、所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて前記ベクトルの向きを導出する信号ベクトル導出処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であり、前記センサの測定結果が、前記ベクトルの前記3軸の成分の各々に第一係数を乗じたものの和に比例する記録媒体であって、前記信号ベクトル導出処理が、前記センサの測定結果と、前記第一係数に第二係数を乗じて得られた値の和とに基づき得られるスペクトルであって、前記信号を出力する信号源の存在するボクセルで極大値をとるスペクトルを導出するスペクトル導出工程と、前記スペクトルを得るために用いられた前記第二係数に基づき、前記ベクトルの向きを導出する向き導出工程とを備えた記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態にかかるボクセルVおよび磁気センサMSの斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態にかかる信号ベクトル導出装置1の構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態にかかるボクセルVおよび磁気センサMSの斜視図である。
図2は、本発明の実施形態にかかる信号ベクトル導出装置1の構成を示す機能ブロック図である。
【0025】
図1を参照して、信号源S1および信号源S2が信号を出力する。信号は、所定の方向を有するベクトルmにより表される。ベクトルmは、例えば、磁気双極子モーメントである。なお、信号源の個数は、例えば2個であるが、磁気センサMSの個数未満であれば3個以上であってもよい。ただし、各信号源の出力する信号は、互いに周波数または位相が異なっているものとする。
【0026】
また、信号源S1および信号源S2が存在する空間内の位置は、ボクセルV(例えば、10×10×10=1000個のボクセル)により表される。信号源S1および信号源S2は、それぞれ異なるボクセルVに位置している。なお、1000個のボクセルVの各々を、V1~V1000と表記する。
【0027】
複数(例えば、8行8列の64個)の磁気センサMSは、信号(例えば、磁気双極子モーメント)を受け、互いに直交する3軸X、Y、Zの成分Bx、By、Bzを測定する。なお、64個の磁気センサMSの各々を、MS1~MS64と表記する。
【0028】
ここで、ベクトルrを、信号源(磁気双極子)から磁気センサMSまでの方向ベクトルとすると、磁気センサMSにより測定される磁束密度B(ベクトルrの関数)は、ビオサバールの法則により、式(1)のように表される。ただし、μ0は、磁気定数である。また、ベクトルrは、ボクセルVの各々(V1~V1000)と、磁気センサMSの各々MS1~MS64との間の位置関係といえる。
【0029】
【数1】
式(1)より、Bxは、以下の式(2)のように表される。ただし、rx、ry、rzは、それぞれ、ベクトルrのX成分、Y成分、Z成分である。また、mx、my、mzは、それぞれ、ベクトルmのX成分、Y成分、Z成分である。
【0030】
【数2】
ここで、式(2)のmxの係数をvx1、myの係数をvx2、mzの係数をvx3とすると、式(2)は、式(2’)のように表される。すると、磁気センサMSの測定結果Bxは、ベクトルmの3軸X、Y、Zの成分mx、my、mzの各々にvx1、vx2、vx3(第一係数)を乗じたものの和(vx1mx+vx2my+vx3mz)に比例することなる。
【0031】
式(1)より、Byは、以下の式(3)のように表される。
【0032】
【数3】
ここで、式(3)のmxの係数をvy1、myの係数をvy2、mzの係数をvy3とすると、式(3)は、式(3’)のように表される。すると、磁気センサMSの測定結果Byは、ベクトルmの3軸X、Y、Zの成分mx、my、mzの各々にvy1、vy2、vy3(第一係数)を乗じたものの和(vy1mx+vy2my+vy3mz)に比例することなる。
【0033】
式(1)より、Bzは、以下の式(4)のように表される。
【0034】
【数4】
ここで、式(4)のmxの係数をvz1、myの係数をvz2、mzの係数をvz3とすると、式(4)は、式(4’)のように表される。すると、磁気センサMSの測定結果Bzは、ベクトルmの3軸X、Y、Zの成分mx、my、mzの各々にvz1、vz2、vz3(第一係数)を乗じたものの和(vz1mx+vz2my+vz3mz)に比例することなる。
【0035】
なお、vx1、vx2、vx3、vy1、vy2、vy3、vz1、vz2、vz3(第一係数)は、式(2)~(4)および式(2’)~(4’)を参照して、ベクトルrに基づき定められている。
【0036】
図2を参照して、本発明の実施形態にかかる信号ベクトル導出装置1は、相対位置記録部11、第一係数導出部12、伝達関数導出部13、雑音固有ベクトル導出部14、スペクトル導出部16、向き導出部18、位置導出部19を備える。
【0037】
信号ベクトル導出装置1は、複数のセンサMS1~MS64の測定結果を受けてベクトルmの向きを導出する。
【0038】
相対位置記録部11は、ボクセルVの各々1000個と、磁気センサMSの各々MS1~MS64との間の相対位置であるベクトルrを記録する。
【0039】
第一係数導出部12は、相対位置記録部11からベクトルrを読み出し、第一係数vx1、vx2、vx3、vy1、vy2、vy3、vz1、vz2、vz3を導出する(式(2)~(4)および式(2’)~(4’)を参照)。
【0040】
例えば、第一係数vx1は、以下の式(5)のように表される。
【0041】
【数5】
ベクトルrは、ボクセルVの位置と磁気センサMSの位置とによって定まるので、1000×64通りの値をとる。よって、第一係数vx1も、1000×64通りの値をとる。式(5)においては、1行目に磁気センサMS1に関するvx1、2行目に磁気センサMS2に関するvx1、…、64行目に磁気センサMS64に関するvx1を表記している。さらに、式(5)においては、1列目にボクセルV1に関するvx1、2列目にボクセルV2に関するvx1、…、1000列目にボクセルV1000に関するvx1を表記している。例えば、式(5)の1行1000列目の要素vx1(1,1000)は、磁気センサMS1およびボクセルV1000に関するvx1を意味する。すなわち、ベクトルrを、ボクセルV1000から磁気センサMS1までの方向ベクトルとして、式(2)のmxの係数に代入すると、vx1(1,1000)を求めることができる。
【0042】
他の第一係数vx2、vx3、vy1、vy2、vy3、vz1、vz2、vz3も同様に、1000×64通りの値をとる。
【0043】
なお、第一係数vx1は、そのまま用いることも考えられるが、以下の式(6)のように正規化して、以後の処理に使用する。
【0044】
【数6】
ただし、hは行、nは列を示す。すなわち、h行n列目の第一係数vx1を、1、2、…64行n列目の第一係数vx1を2乗して合計し1/2乗したもので割ったものを新たにh行n列目の第一係数vx1とする。
【0045】
他の第一係数vx2、vx3、vy1、vy2、vy3、vz1、vz2、vz3も同様に、正規化する。
【0046】
第一係数導出部12は、上記のようにして正規化した第一係数を出力する。
【0047】
雑音固有ベクトル導出部14は、磁気センサMSの測定結果Bx、By、Bzから、MUSIC法に則して、ノイズ部分空間の固有ベクトルを求める。
【0048】
まず、磁気センサMSの測定結果Bxから以下の式(7)のように、X(t)xを求める。ただし、tは測定を行った時間である。Tは転置を意味する。
【0049】
【数7】
X(t)xは、1行目に時間t1に測定されたBx、2行目に時間t2に測定されたBx、…、N行目に時間tNに測定されたBxを記載し、かつ、1列目に磁気センサM1により測定されたBx、2列目に磁気センサM2により測定されたBx、…、64列目に磁気センサM64により測定されたBxを記載した行列を転置した行列である。
【0050】
X(t)xを用いて、以下の式(8)のように相関行列を求める。
【0051】
【数8】
ただし、Eはアンサンブル平均を意味する。式(8)により、64行64列の行列が得られる。式(8)により得られた相関行列の固有値および固有ベクトルを求める。このようにして得られた固有値のうち、信号源の個数(2個)の分は、大きな値となるが、残りの固有値(64-2=62個)は小さな値となる。そこで、小さな値の固有値に対応する固有ベクトルを求め、ノイズ部分空間の固有ベクトルexとする。ノイズ部分空間の固有ベクトルexは、64行1列のベクトルである。ノイズ部分空間の固有ベクトルexは、小さな値の固有値に対応して62個存在する。
【0052】
なお、ノイズ部分空間の固有ベクトルeyも同様に求めることができる。まず、式(7)のBxをByに置き換え、式(7)および式(8)のX(t)xをX(t)yに置き換えて、式(8)により相関行列を求める。あとは、同様に、小さな値の固有値に対応する固有ベクトルを求め、ノイズ部分空間の固有ベクトルeyとする。ノイズ部分空間の固有ベクトルeyは、64行1列のベクトルである。ノイズ部分空間の固有ベクトルeyは、小さな値の固有値に対応して62個存在する。
【0053】
また、ノイズ部分空間の固有ベクトルezも同様に求めることができる。まず、式(7)のBxをBzに置き換え、式(7)および式(8)のX(t)xをX(t)zに置き換えて、式(8)により相関行列を求める。あとは、同様に、小さな値の固有値に対応する固有ベクトルを求め、ノイズ部分空間の固有ベクトルezとする。ノイズ部分空間の固有ベクトルezは、64行1列のベクトルである。ノイズ部分空間の固有ベクトルezは、小さな値の固有値に対応して62個存在する。
【0054】
伝達関数導出部13は、以下の式(9)、式(10)および式(11)のように、伝達関数vx、vyおよびvzを導出する。第一係数vx1、vx2、vx3に、それぞれ第二係数ax、bx、cxを乗じて得られた値の和を導出する(式(9)参照)。導出結果を、伝達関数vxという。第一係数vy1、vy2、vy3に、それぞれ第二係数ay、by、cyを乗じて得られた値の和を導出する(式(10)参照)。導出結果を、伝達関数vyという。第一係数vz1、vz2、vz3に、それぞれ第二係数az、bz、czを乗じて得られた値の和を導出する(式(11)参照)。導出結果を、伝達関数vzという。
【0055】
【数9】
なお、伝達関数vx、vyおよびvzは、MUSIC法における伝達関数である
また、第二係数は、いずれも0以外の値であってもよい。例えば、ax=bx=cx=1(すなわち、vx=vx1+vx2+vx3)でもよいし、ay=by=1、cy=-1(すなわち、vy=vy1+vy2-vy3)でもよいし、az=1、bz=-1、cz=1(すなわち、vz=vz1-vz2+vz3)でもよい。
【0056】
ただし、第二係数のいずれか一つまたは二つが0であってもよい。例えば、ax=1、bx=cx=0(すなわち、vx=vx1)でもよいし、ax=bx=1、cx=0(すなわち、vx=vx1+vx2)でもよい。
【0057】
ここで、(ak、bk、ck)(ただし、k=x、y、z)が、(1,0,0)、(0,1,0)、(0,0,1)、(1,1,0)、(1,-1,0)、(0,1,1)、(0,1,-1)、(1,0,1)、(-1,0,1)、(1,1,1)、(-1,1,1)、(1,-1,1)、(1,1,-1)の13種類あるものとする。これらに対応するvkをそれぞれ、vk1、vk2、…、vk13とする。
【0058】
例えば、(ax、bx、cx)が、(1,0,0)である場合、vx=vx1である。(ax、bx、cx)が、(1,1,0)である場合、vx=vx4=vx1+vx2である。(ax、bx、cx)が、(1,1,-1)である場合、vx=vx13=vx1+vx2-vx3である。
【0059】
例えば、(ay、by、cy)が、(1,0,0)である場合、vy=vy1である。(ay、by、cy)が、(1,1,0)である場合、vy=vy4=vy1+vy2である。(ay、by、cy)が、(1,1,-1)である場合、vy=vy13=vy1+vy2-vy3である。
【0060】
例えば、(az、bz、cz)が、(1,0,0)である場合、vz=vz1である。(az、bz、cz)が、(1,1,0)である場合、vz=vz4=vz1+vz2である。(az、bz、cz)が、(1,1,-1)である場合、vz=vz13=vz1+vz2-vz3である。
【0061】
スペクトル導出部16は、信号源S1、S2の存在するボクセルVで極大値をとるスペクトルを導出する。このようなスペクトルは、MUSIC法に則して求められる。スペクトルの極大値は、信号源の個数に対応して、2つある。なお、信号源の個数が3つ以上あれば、スペクトルの極大値も3つ以上ある。
【0062】
スペクトルは、磁気センサMSの測定結果Bx、By、Bz(から求められたノイズ部分空間の固有ベクトルex、ey、ez)と、第一係数に第二係数を乗じて得られた値の和(すなわち、伝達関数vx、vy、vz)(式(9)、(10)、(11))とに基づき、スペクトル導出部16により導出される。スペクトル導出部16は、伝達関数導出部13の出力する伝達関数vx、vy、vzと、雑音固有ベクトル導出部14の出力するノイズ部分空間の固有ベクトルex、ey、ezとに基づきスペクトルを導出する。
【0063】
スペクトル導出部16は、以下のようにして、スペクトルPx1を導出する。
(1)ノイズ部分空間の固有ベクトルex(64行1列のベクトル)は、62個存在するが、これらのベクトルexを62列並べて、exを64行62列の行列とする。
(2)行列exを転置し、伝達関数vx1(64行1000列の行列)に乗じる。すなわち、exTvx1を求める。これは、62行1000列の行列となる。
(3)(2)で得た行列の各成分を2乗する。
(4)(3)で得た行列の成分を列ごとに合計し、1行に並べて、1行1000列の行列を得る。例えば、(3)で得た行列の1行Q列目+2行Q列目+…+62行Q列目が、(4)で得られる1行1000列の行列の1行Q列目の成分となる(ただし、Qは1~1000の整数)。
(5)(4)で得た行列の各成分の逆数をとると、スペクトルPx1(1行1000列の行列)が得られる。
【0064】
なお、スペクトルPx1の各列は、ボクセルV1~V1000に対応する。他のスペクトルも同様である。
【0065】
スペクトル導出部16は、スペクトルPx2、Px3、…、Px13も導出する。スペクトルPx2、Px3、…、Px13は、上記(2)における伝達関数vx1を、vx2、vx3、…、vx13に置き換えれば、導出することができる。
【0066】
スペクトル導出部16は、スペクトルPy1、Py2、Py3、…、Py13を導出する。上記(1)におけるノイズ部分空間の固有ベクトルexをeyに置き換え、上記(2)における伝達関数vx1を、vy1、vy2、vy3、…、vy13に置き換えれば、スペクトルPy1、Py2、Py3、…、Py13を導出することができる。
【0067】
スペクトル導出部16は、スペクトルPz1、Pz2、Pz3、…、Pz13を導出する。上記(1)におけるノイズ部分空間の固有ベクトルexをezに置き換え、上記(2)における伝達関数vx1を、vz1、vz2、vz3、…、vz13に置き換えれば、スペクトルPz1、Pz2、Pz3、…、Pz13を導出することができる。
【0068】
位置導出部19は、スペクトルPx1、Px2、Px3、…、Px13、Py1、Py2、Py3、…、Py13、Pz1、Pz2、Pz3、…、Pz13に基づき、信号源S1、S2の存在するボクセルVの位置を導出する。
【0069】
スペクトル導出部16の出力するスペクトルは、以下の式(12)のように表される。
【0070】
【数10】
各ボクセルにおいてスペクトルの各々がとる値の最大値P(すなわち、式(12)の各列における最大値)を求める(式(13)を参照)。
【0071】
【数11】
Pにおいて、極大値をとる列(ボクセルに対応)が信号源の個数(2つ)現れるので、その列に対応するボクセルが、信号源S1、S2の存在するボクセルである。極大値をとる列の検出法を、以下に説明する。
【0072】
図3は、最大値Pのグラフの一例である。
図3において、縦軸はスペクトルの値、横軸はボクセル(V1~V1000)を示す。
【0073】
図3を参照して、ボクセルV750において最大値P(のスペクトル)の値がSP1(極大値)、ボクセルV250において最大値P(のスペクトル)の値がSP2(極大値)をとるものとする。ただし、SP1がSP2よりも大きいものとする。
【0074】
位置導出部19は、最大値Pの内でも最大の値SP1から所定の範囲内(例えば、最大値Pの値が0.95SP1以上)の値をとるボクセルの重心を、所定の範囲を増やしながら(例えば、最大値Pの値が0.95SP1以上→0.90SP1以上→0.85SP1以上→…というように0.05SP1ずつ所定の範囲を広げる)、重心が所定量を超えて変化する回数に1を加えた値が信号源の個数(2個)になるまで、求める。
【0075】
最大値Pの内でも最大の値SP1から近傍におけるボクセルの重心は、おおむねボクセルV750である。しかし、最大の値SP1から所定の範囲が広がって、SP2を含むようになると、ボクセルの重心がボクセルV750から、かなり小さくなる。すると、重心が所定量を超えて変化するので、その回数(1回)に1を加えた値が信号源の個数(2個)になるので、ボクセルの重心を求めることを終了する。
【0076】
次に、重心を求めたボクセルを、信号源の個数(2個)だけクラスタリングする。例えば、教師なし機械学習のKmeansクラスタリングを行い、信号源の数だけラベリングする。
【0077】
最後に、クラスタリングされたボクセルの内で、スペクトルが最大の値をとるものを信号源の存在するボクセルの位置とする。
【0078】
なお、位置導出部19は、このようにして既に導出した信号源の存在するボクセルの位置に基づき、さらに、ボクセルの大きさを小さくして、信号源の存在するボクセルの位置を導出するようにしてもよい。このようにして、信号源の存在するボクセルの位置を、高精度かつ高速に計算することができる。
【0079】
向き導出部18は、位置導出部19から信号源S1、S2に対応する(すなわち、Pにおいて極大値をとる)Pkj(ただし、k=x、y、zかつj=1、2、3、…)を受ける。さらに、向き導出部18は、信号源S1、S2に対応するPkjを得るために用いられた第二係数に基づき、ベクトルmの向きを導出する。
【0080】
例えば、向き導出部18に、位置導出部19から信号源S1およびS2に対応するスペクトルとして、750列目(ボクセルV750)のPx13(Py13またはPz13)および250列目(ボクセルV250)のPx4(Px4またはPz4)が与えられたとする。
【0081】
すると、向き導出部18は、ボクセルV750の信号源S1におけるベクトルmの向きとして、Px13(Py13またはPz13)を得るために用いられた第二係数(ak、bk、ck)(ただし、k=x、y、z)は、(1,1,-1)である。よって、向き導出部18は、ボクセルV750の信号源S1におけるベクトルmの向きを、ベクトル(1,1,-1)に平行であると導出する。ただし、ベクトル(1,1,-1)は、X成分1、Y成分1、Z成分-1のベクトルである。
【0082】
さらに、向き導出部18は、ボクセルV250の信号源S2におけるベクトルmの向きとして、Px4(Px4またはPz4)を得るために用いられた第二係数(ak、bk、ck)(ただし、k=x、y、z)は、(1,1,0)である。よって、向き導出部18は、ボクセルV250の信号源S2におけるベクトルmの向きを、ベクトル(1,1,0)に平行であると導出する。ただし、ベクトル(1,1,0)は、X成分1、Y成分1、Z成分0のベクトルである。
【0083】
次に、本発明の実施形態の動作を説明する。
【0084】
第一係数導出部12により、相対位置記録部11からベクトルrが読み出され、第一係数vx1、vx2、vx3、vy1、vy2、vy3、vz1、vz2、vz3が導出される(式(2)~(4)および式(2’)~(4’)を参照)。
【0085】
なお、第一係数は、1000×64通りの値をとり(式(5)参照)、正規化されて(式(6)参照)、伝達関数導出部13に与えられる。
【0086】
伝達関数導出部13によって、第一係数および第二係数ax、bx、cx、ay、by、cy、az、bz、czに基づき、伝達関数vx、vy、vzが導出される(式(9)、式(10)および式(11)参照)。
【0087】
雑音固有ベクトル導出部14によって、磁気センサMSの測定結果Bx、By、Bzから、MUSIC法に則して、ノイズ部分空間の固有ベクトルex、ey、ezが導出される。
【0088】
スペクトル導出部16により、伝達関数vx、vy、vzおよびノイズ部分空間の固有ベクトルex、ey、ezに基づき、スペクトルPx1、Px2、Px3、…、Px13、Py1、Py2、Py3、…、Py13、Pz1、Pz2、Pz3、…、Pz13が導出される(式(12)参照)。
【0089】
位置導出部19により、各ボクセルにおいてスペクトルの各々がとる値の最大値P(すなわち、式(12)の各列における最大値)が求められる(式(13)および
図3を参照)。最大値Pに基づき、信号源S1、S2の存在するボクセル250、750が導出される。
【0090】
向き導出部18により、信号源S1、S2に対応するPkjを得るために用いられた第二係数に基づき、ベクトルmの向きが導出される。
【0091】
本発明の実施形態によれば、磁場などの信号の測定精度が向上する。
【0092】
例えば、伝達関数vkが、vk1、vk2、vk3のみである場合、ベクトルmの向きが、X方向、Y方向またはZ方向に平行な場合しか、ベクトルmの向きを測定できない。ベクトルmの向きが、それ以外の向き、例えば、ベクトル(1,1,0)(すなわち、X成分1、Y成分1、Z成分0のベクトル)に平行である場合は、ベクトルmの向きを測定できない。
【0093】
しかし、本発明の実施形態によれば、伝達関数vkが、vk1、vk2、vk3、…、vk13と多くの種類があるので、ベクトルmの向きが、X方向、Y方向およびZ方向に平行ではない場合であっても、ベクトルmの向きを測定できる。
【0094】
なお、本発明の実施形態においては、信号のベクトルを磁気双極子モーメントであるとしてきたが、信号のベクトルは磁気双極子モーメントに限定されない。信号のベクトルは、例えば、電気双極子モーメント(ベクトルp)であってもよい。
【0095】
磁気センサMSにより測定される磁束密度B(ベクトルrの関数)は、式(14)のように表される。
【0096】
【数12】
式(14)より、Bxは、以下の式(15)のように表される。ただし、px、py、pzは、それぞれ、ベクトルpのX成分、Y成分、Z成分である。
【0097】
【数13】
ここで、式(15)のpxの係数をvx1、pyの係数をvx2、pzの係数をvx3とすると、式(15)は、式(15’)のように表される。すると、磁気センサMSの測定結果Bxは、ベクトルpの3軸X、Y、Zの成分px、py、pzの各々にvx1、vx2、vx3(第一係数)を乗じたものの和(vx1px+vx2py+vx3pz)に比例することなる。ただし、測定結果Bxの成分と同じ方向(X方向)のベクトルの成分(px)は0であり、それに乗じられる第一係数vx1は1である。
【0098】
式(14)より、Byは、以下の式(16)のように表される。
【0099】
【数14】
ここで、式(16)のpxの係数をvy1、pyの係数をvy2、pzの係数をvy3とすると、式(16)は、式(16’)のように表される。すると、磁気センサMSの測定結果Byは、ベクトルpの3軸X、Y、Zの成分px、py、pzの各々にvy1、vy2、vy3(第一係数)を乗じたものの和(vy1px+vy2py+vy3pz)に比例することなる。ただし、測定結果Byの成分と同じ方向(Y方向)のベクトルの成分(py)は0であり、それに乗じられる第一係数vy2は1である。
【0100】
式(14)より、Bzは、以下の式(17)のように表される。
【0101】
【数15】
ここで、式(17)のpxの係数をvz1、pyの係数をvz2、pzの係数をvz3とすると、式(17)は、式(17’)のように表される。すると、磁気センサMSの測定結果Bxは、ベクトルpの3軸X、Y、Zの成分px、py、pzの各々にvz1、vz2、vz3(第一係数)を乗じたものの和(vz1px+vz2py+vz3pz)に比例することなる。ただし、測定結果Bzの成分と同じ方向(Z方向)のベクトルの成分(pz)は0であり、それに乗じられる第一係数vz3は1である。
【0102】
信号ベクトル導出装置1の構成および動作は、信号のベクトルが磁気双極子モーメント(ベクトルm)の場合と同様であり、説明を省略する。
【0103】
また、上記の実施形態は、以下のようにして実現できる。CPU、ハードディスク、メディア(USBメモリ、CD-ROMなど)読み取り装置を備えたコンピュータに、上記の各部分、例えば相対位置記録部11、第一係数導出部12、伝達関数導出部13、雑音固有ベクトル導出部14、スペクトル導出部16、向き導出部18および位置導出部19を実現するプログラムを記録したメディアを読み取らせて、ハードディスクにインストールする。このような方法でも、上記の機能を実現できる。
【符号の説明】
【0104】
1 信号ベクトル導出装置
11 相対位置記録部
12 第一係数導出部
13 伝達関数導出部
14 雑音固有ベクトル導出部
16 スペクトル導出部
18 向き導出部
19 位置導出部
MS 磁気センサ
V ボクセル
B 磁束密度
vx1、vx2、vx3、vy1、vy2、vy3、vz1、vz2、vz3 第一係数
ak、bk、ck 第二係数
vk1、vk2、…、vk13 伝達関数
S1、S2 信号源
m ベクトル(磁気双極子モーメント)
ex、ey、ez ノイズ部分空間の固有ベクトル
P 最大値