(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】ストレッチャブルデバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20241108BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20241108BHJP
H05K 3/12 20060101ALI20241108BHJP
A61B 5/257 20210101ALI20241108BHJP
A61B 5/273 20210101ALI20241108BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H05K1/02 L
H05K1/11 N
H05K3/12 610A
A61B5/257
A61B5/273
H05K3/46 B
(21)【出願番号】P 2021092800
(22)【出願日】2021-06-02
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】浅川 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】宮島 健太郎
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-178121(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0019988(US,A1)
【文献】特開2017-152687(JP,A)
【文献】特開2017-143257(JP,A)
【文献】特開2019-096826(JP,A)
【文献】特開2019-072171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00- 1/02
H05K 1/11
H05K 3/38- 3/42
H05K 3/10- 3/26
H05K 3/46
A61B 5/05- 5/0538
A61B 5/24- 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1レジスト層と、前記第1レジスト層上に設けられた第1導電パターン層と、前記第1導電パターン層を覆う第2レジスト層と、第1レジスト層の前記第1導電パターン層側とは反対側に設けられた生体電極と、前記第2レジスト層上に設けられた第2導電パターン層と、を備え、
前記生体電極と前記第1導電パターン層とが、前記第1レジスト層に形成された第1ビアホールを介して電気的に接続され、
前記第1導電パターン層と前記第2導電パターン層とが、前記第2レジスト層に形成された第2ビアホールを介して電気的に接続され
、
厚さ方向から見て前記第2ビアホールが前記第1ビアホールと異なる任意の位置に配置されている、ストレッチャブルデバイス。
【請求項2】
前記第2ビアホールの直径が2mm超5mm以下であり、前記第2ビアホール上に、前記第2導電パターン層と電気的に接続された電子部品が設けられている、請求項
1に記載のストレッチャブルデバイス。
【請求項3】
第1レジスト層と、前記第1レジスト層上に設けられた第1導電パターン層と、前記第1導電パターン層を覆う第2レジスト層と、第1レジスト層の前記第1導電パターン層側とは反対側に設けられた生体電極と、前記第2レジスト層上に設けられた第2導電パターン層と、を備え、
前記生体電極と前記第1導電パターン層とが、前記第1レジスト層に形成された第1ビアホールを介して電気的に接続され、
前記第1導電パターン層と前記第2導電パターン層とが、前記第2レジスト層に形成された第2ビアホールを介して電気的に接続され、
前記第2ビアホールの直径が2mm超5mm以下であり、前記第2ビアホール上に、前記第2導電パターン層と電気的に接続された電子部品が設けられている、ストレッチャブルデバイス。
【請求項4】
前記第1レジスト層の前記生体電極側の前記生体電極以外の部分に生体適合性の粘着剤層が設けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載のストレッチャブルデバイス。
【請求項5】
前記第1レジスト層及び前記第2レジスト層のヤング率が10MPa以上100MPa以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のストレッチャブルデバイス。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のストレッチャブルデバイスの製造方法であって、
樹脂材料によって前記第1ビアホールを有する前記第1レジスト層を形成する工程と、
導電材によって前記第1導電パターン層を形成する工程と、
樹脂材料によって前記第2ビアホールを有する前記第2レジスト層を形成する工程と、
導電材によって前記第2導電パターン層を形成する工程と、を含む、ストレッチャブルデバイスの製造方法。
【請求項7】
剥離シート上に樹脂材料を印刷し、前記第1ビアホールを有する前記第1レジスト層を形成する、請求項6に記載のストレッチャブルデバイスの製造方法。
【請求項8】
前記第1レジスト層及び前記第1導電パターン層の上に樹脂材料を印刷し、前記第2ビアホールを有する前記第2レジスト層を形成する、請求項6又は7に記載のストレッチャブルデバイスの製造方法。
【請求項9】
第1レジスト層と、前記第1レジスト層上に設けられた第1導電パターン層と、前記第1導電パターン層を覆う第2レジスト層と、第1レジスト層の前記第1導電パターン層側とは反対側に設けられた生体電極と、前記第2レジスト層上に設けられた第2導電パターン層と、を備え、
前記生体電極と前記第1導電パターン層とが、前記第1レジスト層に形成された第1ビアホールを介して電気的に接続され、
前記第1導電パターン層と前記第2導電パターン層とが、前記第2レジスト層に形成された第2ビアホールを介して電気的に接続されているストレッチャブルデバイスの製造方法であって、
樹脂材料によって前記第1ビアホールを有する前記第1レジスト層を形成する工程と、
導電材によって前記第1導電パターン層を形成する工程と、
樹脂材料によって前記第2ビアホールを有する前記第2レジスト層を形成する工程と、
導電材によって前記第2導電パターン層を形成する工程と、を含み、
剥離シート上に樹脂材料を印刷し、前記第1ビアホールを有する前記第1レジスト層を形成し、
前記第1レジスト層及び前記第1導電パターン層の上に樹脂材料を印刷し、前記第2ビアホールを有する前記第2レジスト層を形成する、ストレッチャブルデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレッチャブルデバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路を有するフレキシブルプリント基板に各種の電子部品を実装したストレッチャブルデバイスは、人体に貼り合わせて筋電位等の生体信号を取得するなど、様々な用途へと適用が提案されている。ストレッチャブルデバイスにおいては、両面に回路を設け、ビアホールを通じて両面の回路を電気的に接続する構成が知られている。
【0003】
特許文献1には、ベースフィルムに針を刺してビアホールを設け、ベースフィルムの両面にスクリーン印刷によって回路を設け、ビアホールを通じて両面の回路を電気的に接続することが開示されている。特許文献2には、フォトリソグラフ法によって両面に通じるランドアクセス用開口部(ビアホール)を設ける方法が開示されている。
また、特許文献3には、レジスト層上に導電パターン層を形成すること、及び、前記導電パターン層上にさらに被覆レジスト層を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平06-066549号公報
【文献】特開2006-310689号公報
【文献】特開2019-46619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ビアホールの直径は一般に0.1mm~2mmであるが、ビアホールを介した通電が不安定になりやすい傾向がある。また、特許文献1のようなビアホールでは、直径を大きくすると針を刺す側と反対側のビアホールの周囲が盛り上がってスクリーン印刷の信頼性が低下するため、ビアホールを通じた両面の回路の通電が不安定になりやすい。
【0006】
また、導電性接着剤によって電子部品をビアホール上に実装しようとすると、例えば上面のグランドパターンと下面の生体電極が導電性接着剤を介して短絡するなど、予期せぬ短絡が生じるおそれがある。そのため、電子部品の実装にはそのための引き回し回路が必要であり、製品設計の幅が狭い。また、ベースフィルムを用いると充分な伸縮性を得ることが難しい。
また、特許文献2のようにフォトリソグラフ法でビアホールを形成する方法は、フォトレジストをコーティングし、露光、現像する工程が必要になるため製造が煩雑である。
特許文献3では、レジスト層の両側に設けた導電パターン層や電極をビアホールによって電気的に接続することについては検討されていない。
【0007】
本発明は、ビアホールを介した接続信頼性に優れ、設計の自由度が高く、伸縮性に優れ、簡便に製造できるストレッチャブルデバイス、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]第1レジスト層と、前記第1レジスト層上に設けられた第1導電パターン層と、前記第1導電パターン層を覆う第2レジスト層と、第1レジスト層の前記第1導電パターン層側とは反対側に設けられた生体電極と、前記第2レジスト層上に設けられた第2導電パターン層と、を備え、
前記生体電極と前記第1導電パターン層とが、前記第1レジスト層に形成された第1ビアホールを介して電気的に接続され、
前記第1導電パターン層と前記第2導電パターン層とが、前記第2レジスト層に形成された第2ビアホールを介して電気的に接続されている、ストレッチャブルデバイス。
[2]厚さ方向から見て前記第2ビアホールが前記第1ビアホールと異なる任意の位置に配置されている、[1]に記載のストレッチャブルデバイス。
[3]前記第2ビアホールの直径が2mm超5mm以下であり、前記第2ビアホール上に、前記第2導電パターン層と電気的に接続された電子部品が設けられている、[1]又は[2]に記載のストレッチャブルデバイス。
[4]前記第1レジスト層の前記生体電極側の前記生体電極以外の部分に生体適合性の粘着剤層が設けられている、[1]~[3]のいずれかに記載のストレッチャブルデバイス。
[5]前記第1レジスト層及び前記第2レジスト層のヤング率が10MPa以上100MPa以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のストレッチャブルデバイス。
[6][1]~[5]のいずれかに記載のストレッチャブルデバイスの製造方法であって、
樹脂材料によって前記第1ビアホールを有する前記第1レジスト層を形成する工程と、
導電材によって前記第1導電パターン層を形成する工程と、
樹脂材料によって前記第2ビアホールを有する前記第2レジスト層を形成する工程と、
導電材によって前記第2導電パターン層を形成する工程と、を含む、ストレッチャブルデバイスの製造方法。
[7]剥離シート上に樹脂材料を印刷し、前記第1ビアホールを有する前記第1レジスト層を形成する、[6]に記載のストレッチャブルデバイスの製造方法。
[8]前記第1レジスト層及び前記第1導電パターン層の上に樹脂材料を印刷し、前記第2ビアホールを有する前記第2レジスト層を形成する、[6]又は[7]に記載のストレッチャブルデバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ビアホールを介した接続信頼性に優れ、設計の自由度が高く、伸縮性に優れ、簡便に製造できるストレッチャブルデバイス、及びその製造方法を提供できる。
【0010】
本発明はSDGs目標9「産業と技術革新の基盤」に資すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態のストレッチャブルデバイスの平面図である。
【
図2】
図1のストレッチャブルデバイスのI-I断面図である。
【
図3】
図1のストレッチャブルデバイスのII-II断面図である。
【
図4】
図1のストレッチャブルデバイスを生体電極側から見た底面図である。
【
図5】
図1のストレッチャブルデバイスにおける第1レジスト層の第1導電パターン層側を示した概略図である。
【
図6】実施形態のストレッチャブルデバイスの第2ビアホール上に電子部品を実装した様子を示した断面図である。
【
図7】実施形態のストレッチャブルデバイスの製造方法の一工程を示した平面図である。
【
図8】実施形態のストレッチャブルデバイスの製造方法の一工程を示した断面図である。
【
図9】実施形態のストレッチャブルデバイスの製造方法の一工程を示した断面図である。
【
図10】実施形態のストレッチャブルデバイスの製造方法の一工程を示した断面図である。
【
図11】実施形態のストレッチャブルデバイスの製造方法の一工程を示した断面図である。
【
図12】実施形態のストレッチャブルデバイスの第1ビアホール上に電子部品を実装した様子を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のストレッチャブルデバイスについて、実施形態の一例を示して説明する。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。また、以下の説明では、ストレッチャブルデバイスの生体電極側を「下」、生体電極側とは反対側を「上」とする。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のストレッチャブルデバイス1は、平面視形状が矩形の本体部2と、本体部2の一辺から突出する2つの接続端子3と、を備えている。
また、
図1~3に示すように、ストレッチャブルデバイス1は、第1レジスト層10と、第1導電パターン層12と、第2レジスト層14と、生体電極16と、第2導電パターン層18と、第1グランドパターン層20と、第2グランドパターン層22と、粘着剤層32と、を備える多層構造体である。
【0014】
第1導電パターン層12は、第1レジスト層10上に設けられている。第2レジスト層14は、第1レジスト層10上に第1導電パターン層12を覆うように設けられている。生体電極16及び第1グランドパターン層20は、第1レジスト層10の第1導電パターン層12側とは反対側に設けられている。第2導電パターン層18及び第2グランドパターン層22は、第2レジスト層14上に設けられている。粘着剤層32は、第1レジスト層10の生体電極16側の生体電極16以外の部分に設けられている。
【0015】
第1レジスト層10及び第2レジスト層14は、絶縁材料からなる層である。
第1レジスト層10及び第2レジスト層14を構成する絶縁材料としては、特に限定されず、絶縁性の樹脂材料が好ましい。樹脂材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素化ビニル-酢酸ビニル共重合体、環化ゴム、クマロン-インデン樹脂を例示できる。
【0016】
第1レジスト層10及び第2レジスト層14を構成する絶縁材料としては、絶縁性及び耐久性に優れる点では、アクリル樹脂が好ましい。また、伸縮性及び弾性に優れる点では、ポリエステル樹脂が好ましい。第1レジスト層10を構成する絶縁材料は、1種でもよく、2種以上でもよい。同様に、第2レジスト層14を構成する絶縁材料は、1種でもよく、2種以上でもよい。第1レジスト層10を構成する絶縁材料と第2レジスト層14を構成する絶縁材料は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0017】
第1レジスト層10の平均厚さは、10μm以上50μm以下が好ましく、15μm以上45μm以下がより好ましく、20μm以上40μm以下がさらに好ましい。第1レジスト層10の平均厚さが前記範囲の下限値以上であれば、絶縁性を確保しやすい。第1レジスト層10の平均厚さが前記範囲の上限値以下であれば、ストレッチャブルデバイス1の薄型化が容易になる。なお、第1レジスト層の平均厚さは、第1レジスト層における任意の5箇所について測定した厚さの平均値である。
【0018】
第2レジスト層14の平均厚さは、第1レジスト層10と同様の理由から、10μm以上50μm以下が好ましく、15μm以上45μm以下がより好ましく、20μm以上40μm以下がさらに好ましい。なお、第2レジスト層の平均厚さは、第2レジスト層における第1導電パターン層を覆う部分の任意の4箇所について測定した厚さの平均値である。
【0019】
第1レジスト層10における後述の導電ライン12aや電子部品が配置される部分の平均厚さは、40μm以上50μm以下が好ましい。これにより、第1レジスト層10の導電ライン12aや電子部品が配置される部分の動きが制限されるため、導電ライン12aが断線や電子部品の脱落が生じにくくなる。第2レジスト層14における導電ライン12aや電子部品が配置される部分の平均厚さも、同様の理由から40μm以上50μm以下が好ましい。
【0020】
第1レジスト層10のヤング率(引張弾性率)は、10MPa以上100MPa以下が好ましく、10MPa以上60MPa以下がより好ましく、10MPa以上30MPa以下がさらに好ましい。第1レジスト層10のヤング率が前記範囲内であれば、ストレッチャブルデバイスのハンドリングの安定性に優れる。また、ストレッチャブルデバイスの追従性が向上し、人体等に貼り合わせた際に延伸が生じても、第1グランドパターン層20及び第1導電パターン層12が断線しにくくなる。
【0021】
第2レジスト層14のヤング率(引張弾性率)は、第1レジスト層10と同様の理由から、10MPa以上100MPa以下が好ましく、10MPa以上60MPa以下がより好ましく、10MPa以上30MPa以下がさらに好ましい。
なお、ヤング率は、JIS K7161:2014又はJIS K7113に規定された方法によって測定される。
【0022】
第1導電パターン層12は、導電材からなる層であり、任意のパターンの回路を形成している。
図5は、第1レジスト層10の第1導電パターン層12側を厚さ方向から見た図であり、第2レジスト層14は省略して示している。
図5に示すように、この例の第1導電パターン層12は、導電ライン12aと、第1電極部12bと、第2電極部12cと、を備えている。
【0023】
導電ライン12a、第1電極部12b及び第2電極部12cは、本体部2における第1レジスト層10上に設けられている。第1電極部12bは本体部2における接続端子3と反対側に設けられ、第2電極部12cは本体部2における接続端子3寄りに設けられている。第1電極部12bと第2電極部12cは導電ライン12aによって電気的に接続されている。導電ライン12aの一方の端部は、接続端子3まで延在しており、接続端子3を介して図示しない検出回路等に電気的に接続される。
【0024】
第1導電パターン層12のパターンは、この例のパターンには限定されない。例えば、導電ライン12a、第1電極部12b及び第2電極部12cは、この例では2つずつ形成されているが、これらの数は2つずつには限定されない。また、導電ライン12aはこの例では直線状であるが、形状及び配置は特に限定されず、適宜設計できる。第1電極部12b及び第2電極部12cの形状は、この例では円形状であるが、矩形状等であってもよい。
【0025】
第1導電パターン層12の導電ライン12aの平均厚さは、パターン形成の容易性及び導電性に優れる点から、5μm以上50μm以下が好ましく、5μm以上30μm以下がより好ましい。なお、導電ラインの平均厚さは、導電ライン12aにおける任意の4箇所について測定した厚さの平均値である。
【0026】
導電ライン12aの平均幅は、パターン形成の容易性及び導電性に優れる点から、10μm以上300μm以下が好ましく、15μm以上250μm以下がより好ましい。なお、導電ラインの平均幅は、導電ライン12aにおける任意の4箇所について測定した幅の平均値である。
【0027】
第1導電パターン層12の電極部(第1電極部12b、第2電極部12c)の平均厚さは、0.02μm以上5μm以下が好ましい。なお、電極部の平均厚さは、導電ライン12aにおける任意の4箇所について測定した厚さの平均値である。
【0028】
第1導電パターン層12を構成する導電材としては、特に限定されず、例えば、導電粒子とバインダー樹脂とを含む導電ペーストを例示できる。導電粒子としては、例えば、銀粒子、ニッケル粒子、銅粒子、ニッケル粒子を銀メッキした粒子、銅粒子を銀メッキした粒子、カーボンブラック、カーボンナノチューブを例示できる。第1導電パターン層12を構成する導電材は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0029】
第2導電パターン層18は、導電材からなる層であり、任意のパターンの回路を形成している。
図1に示すように、この例の第2導電パターン層18は、導電ライン18aと、導電ライン18aと電気的に接続されている電極部18bと、を備えている。電極部18bは、厚さ方向から見た平面視で第1導電パターン層12の第2電極部12cと同じ位置に配置されている。導電ライン18aの電極部18bとは反対側の端部は、接続端子3まで延在しており、接続端子3を介して図示しない検出回路等に電気的に接続される。
【0030】
第2導電パターン層18のパターンは、この例のパターンには限定されない。例えば、導電ライン18a及び電極部18bは、この例では2つずつ形成されているが、これらの数は2つには限定されない。電極部18bの形状は、円形状であるが、矩形状等であってもよい。
【0031】
第2導電パターン層18における導電ライン18aの平均厚さ、幅、電極部18bの平均厚さの好ましい範囲は、第1導電パターン層12における導電ライン12aの平均厚さ、幅、電極部の平均厚さの好ましい範囲と同様である。
【0032】
第2導電パターン層18を構成する導電材としては、特に限定されず、例えば、第1導電パターン層12を構成する導電材として例示したものと同じものを例示できる。第2導電パターン層18を構成する導電材は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0033】
生体電極16は、筋電位等の生体信号を取得するための電極である。例えばストレッチャブルデバイス1を人体に貼り付ける場合、生体電極16が配置されている側を人体に向け、生体電極16が人体に接触するようにストレッチャブルデバイス1を貼り付ける。
生体電極16としては、特に限定されず、目的の生体信号に応じて公知の生体電極を適宜選択できる。生体電極16を構成する材料としては、例えば、第1導電パターン層12で例示した導電材の他、生体適合性を考慮し金、プラチナ、塩化銀を例示できる。生体電極16の形状、厚さ等の寸法は、用途に応じて適宜設計できる。
【0034】
図2に示すように、第1レジスト層10における第1電極部12bが配置されている部分には、第1レジスト層10を厚さ方向に貫通する第1ビアホール24が形成されている。また、第1ビアホール24内には導電材が充填されて導通部26が形成されている。導通部26は、下端側で生体電極16と電気的に接続され、上端側で第1電極部12bと電気的に接続されている。これにより、生体電極16と第1導電パターン層12とは、第1レジスト層10に形成された第1ビアホール24を介して電気的に接続されている。
【0035】
第1ビアホール24の数は、この例では2個であるが、2個には限定されず、1個であってもよく、3個以上であってもよい。
第1ビアホール24を第1レジスト層10の厚さ方向に垂直に切断した断面形状は、特に限定されず、例えば、円形状、三角形状、矩形状を例示できる。なかでも、第1ビアホール24は、円形状が好ましい。
【0036】
第1ビアホール24の直径は、2mm以上5mm以下が好ましく、2mm以上4mm以下がより好ましい。第1ビアホール24の直径が前記範囲の下限値以上であれば、生体電極16と第1導電パターン層12の接続信頼性が向上する。第1ビアホール24の直径が前記範囲の上限値を超えると、ビアホール埋めが困難となりスクリーン印刷における信頼性が低下する。なお、第1ビアホール24の断面形状が正円でない場合、第1ビアホール24の断面形状の外接円の直径を第1ビアホール24の直径とする。
【0037】
第2レジスト層14における第1導電パターン層12の第2電極部12cと第2導電パターン層18の電極部18bが配置されている部分には、第2レジスト層14を厚さ方向に貫通する第2ビアホール28が形成されている。また、第2ビアホール28内には導電材が充填されて導通部30が形成されている。導通部30は、下端側で第1導電パターン層12の第2電極部12cと電気的に接続され、上端側で第2導電パターン層18の電極部18bと電気的に接続されている。これにより、第1導電パターン層12と第2導電パターン層18は、第2レジスト層14に形成された第2ビアホール28を介して電気的に接続されている。
【0038】
このように、ストレッチャブルデバイス1では、生体電極16と第1導電パターン層12とが第1ビアホール24の導通部26を介して電気的に接続され、第1導電パターン層12と第2導電パターン層18が第2ビアホール28の導通部30を介して電気的に接続されている。そのため、生体電極16から取得した生体信号を、第1導電パターン層12及び第2導電パターン層18を通じて、接続端子3から検出回路等へ送信することができる。導通部26,30を構成する導電材としては、特に限定されず、例えば、第1導電パターン層12で例示した導電材と同じ導電材を例示できる。
【0039】
図1に示すように、厚さ方向から見た平面視で、第2ビアホール28は第1ビアホール24と異なる位置に配置されている。第1導電パターン層12及び第2導電パターン層18のパターンを調節し、導電ライン12aを引き回すことで、第2ビアホール28の位置は第1ビアホール24の位置にかかわらず任意に設定できる。これにより、第1ビアホール24の位置の位置に関係なく接続端子3の位置を自由に設定できるため、設計の自由度が高くなる。
【0040】
第2ビアホール28の数は、この例では2個であるが、2個には限定されず、1個であってもよく、3個以上であってもよい。
第2ビアホール28を第2レジスト層14の厚さ方向に垂直に切断した断面形状は、特に限定されず、例えば、円形状、三角形状、矩形状を例示できる。なかでも、第2ビアホール28は、円形状が好ましい。
【0041】
第2ビアホール28の直径は、2mm超5mm以下が好ましく、2mm以上4mm以下がより好ましい。第2ビアホール28の直径が前記範囲の下限値より大きければ、第1導電パターン層12と第2導電パターン層18の接続信頼性が向上する。また、例えば
図6に示すように、導電性接着剤34を使用して、第2ビアホール28上に第2導電パターン層18と電気的に接続された電子部品36を安定して設置できる。これにより、生体電極16から取得された生体信号を直接電子部品36に送ることが可能になる。第2ビアホール28の直径が前記範囲の上限値を超えると、ビアホール埋めが困難となりスクリーン印刷における信頼性が低下する。なお、第2ビアホール28の断面形状が正円でない場合、第1ビアホール24の断面形状の外接円の直径を第2ビアホール28の直径とする。
【0042】
電子部品36としては、特に限定されず、例えば、通信デバイスを例示できる。
導電性接着剤34としては、特に限定されず、例えば、銅ペースト、銀ペースト、ニッケルペースト等が挙げられ、バインダーを使用する場合はエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等を例示できる。導電性接着剤34としては、1種でもよく、2種以上でもよい。
導電性接着剤34の厚さは、10μm以上50μm以下が好ましい。導電性接着剤34の厚さが前記範囲内であれば、第2導電パターン層18と電子部品36とを安定して接着しやすい。
【0043】
第1グランドパターン層20は、導電材からなる層であり、接地されている。第1レジスト層10の生体電極16側、すなわち人体等に向けられる側に第1グランドパターン層20が設けられることにより、生体電極16によって取得する生体信号以外のノイズを低減できる。
【0044】
図4に示すように、この例の第1グランドパターン層20は、ストレッチャブルデバイス1を生体電極16側から見た底面視において、接続端子3側のみを開放した生体電極16の三方を囲う3本の直線部分からなる。第1グランドパターン層20のパターンは、この例の態様には限定されず、ノイズを効果的に低減できる範囲で適宜設計できる。
【0045】
第2グランドパターン層22は、導電材からなる層であり、接地されている。第2レジスト層14の上面、すなわち人体等に向けられる側とは反対側に第2グランドパターン層22が設けられることにより、生体電極16から第1導電パターン層12、第2導電パターン層18を通じて送る生体信号以外のノイズを低減できる。
図1に示すように、この例の第2グランドパターン層22のパターンは、第1グランドパターン層20と同様のパターンになっている。第2グランドパターン層22のパターンは、この例の態様には限定されず、ノイズを効果的に低減できる範囲で適宜設計できる。
【0046】
第1グランドパターン層20及び第2グランドパターン層22を構成する導電材としては、特に限定されず、例えば、第1導電パターン層12を構成する導電材として例示したものと同じものを例示できる。第1グランドパターン層20を構成する導電材は、1種でもよく、2種以上でもよい。同様に、第2グランドパターン層22を構成する導電材は、1種でもよく、2種以上でもよい。
第1グランドパターン層20及び第2グランドパターン層22の平均厚さ、平均幅等の寸法は、適宜設定できる。
【0047】
図2に示すように、第1レジスト層10の生体電極16側の生体電極16以外の部分には、生体適合性の粘着剤層32が設けられている。これにより、粘着剤層32を介してストレッチャブルデバイス1を人体等に容易に貼り付けることができる。第1レジスト層10の生体電極16側に粘着剤層32を設ける場合、第1グランドパターン層20は粘着剤層32から露出していてもよく、第1グランドパターン層20で覆われていてもよい。
【0048】
ストレッチャブルデバイス1では、第1レジスト層10及び第2レジスト層14によって、生体電極16、第1グランドパターン層20と、第1導電パターン層12、第2導電パターン層18及び第2グランドパターン層22と、接続端子3の銀粒子のイオンマイグレーションの発生が抑制される。
【0049】
(製造方法)
本発明のストレッチャブルデバイスの製造方法は、本発明のストレッチャブルデバイスを製造する方法である。以下、本発明のストレッチャブルデバイスの製造方法の一例として、ストレッチャブルデバイス1の製造方法について説明する。ストレッチャブルデバイス1の製造方法は、以下の工程(a)~(f)を含む。
(a)導電材によって生体電極16及び第1グランドパターン層20を形成する工程。
(b)樹脂材料によって第1ビアホール24を有する第1レジスト層10を形成する工程。
(c)導電材によって第1導電パターン層12を形成する工程。
(d)樹脂材料によって第2ビアホール28を有する第2レジスト層14を形成する工程。
(e)導電材によって第2導電パターン層18及び第2グランドパターン層22を形成する工程。
(f)粘着剤によって粘着剤層32を形成する工程。
【0050】
例えば、工程(a)では、
図7に示すように、剥離シート40上に導電材を印刷し、生体電極16及び第1グランドパターン層20を形成する。次いで、
図8に示すように、工程(b)において、剥離シート40上の生体電極16及び第1グランドパターン層20のさらに上に、樹脂材料を印刷し、乾燥、硬化することで、第1ビアホール24を有する第1レジスト層10を形成する。
【0051】
印刷を用いることで、生体電極16及び第1グランドパターン層20を容易に形成できる。また、第1レジスト層10の形成に印刷を用いることで、第1ビアホール24が形成された第1レジスト層10でも容易に形成できる。さらに、剥離シート40を用いて第1レジスト層10を形成することで、ストレッチャブルデバイス1の薄型化が容易になる。
【0052】
生体電極16及び第1グランドパターン層20を形成する印刷法としては、例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、インクジェット印刷を例示でき、電気抵抗、製造コスト削減の点から、スクリーン印刷法が好ましい。
第1レジスト層10を形成する印刷法としては、例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法を例示できる。なかでも、製造コスト削減の点から、スクリーン印刷法が好ましい。
【0053】
剥離シート40としては、第1レジスト層10から剥離可能なものであればよく、例えば、表面に剥離層が設けられた樹脂フィルムを例示できる。
剥離層を形成する剥離剤としては、特に限定されず、例えば、ノンシリコーンの離型剤を塗布し、乾燥、硬化することで離型層を形成できる。
【0054】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリカーボネートフィルム、ABS樹脂フィルム等の熱可塑性樹脂フィルム、及びこれらのいずれか2つ以上が積層された積層フィルムを例示できる。これら樹脂フィルムの中では、耐薬品性、耐溶剤性、平滑性に優れ、強靭な点から、ポリエステルフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。
【0055】
剥離シート40の平均厚さは、印刷性が向上し、製造コストが削減される点から、25μm以上200μm以下が好ましく、50μm以上150μm以下がより好ましい。
【0056】
図9に示すように、工程(c)において、印刷によって第1ビアホール24内に導電材を充填して導通部26を形成し、さらに第1レジスト層10上に導電材を印刷して第1導電パターン層12を形成する。
導通部26及び第1導電パターン層12を形成する印刷法としては、工程(a)で例示した印刷法と同じ印刷法を例示でき、電気抵抗、製造コスト削減の点から、スクリーン印刷法が好ましい。
【0057】
図10に示すように、工程(d)において、第1レジスト層10及び第1導電パターン層12の上に樹脂材料を印刷し、乾燥、硬化することで、第2ビアホール28を有する第2レジスト層14を形成する。第2レジスト層14の形成に印刷を用いることで、第2ビアホール28が形成された第2レジスト層14でも容易に形成できる。
第2レジスト層14を形成する印刷法としては、工程(b)で例示した印刷法と同じ印刷法を例示でき、製造コスト削減の点から、スクリーン印刷法が好ましい。
【0058】
図11に示すように、工程(e)において、印刷によって第2ビアホール28内に導電材を充填して導通部30を形成し、さらに第2レジスト層14上に導電材を印刷して第2導電パターン層18及び第2グランドパターン層22を形成する。
導通部30、第2導電パターン層18及び第2グランドパターン層22を形成する印刷法としては、工程(a)で例示した印刷法と同じ印刷法を例示でき、電気抵抗、製造コスト削減の点から、スクリーン印刷法が好ましい。
【0059】
工程(f)では、剥離シート40を第1レジスト層10から剥離した後、第1レジスト層10の生体電極16側の生体電極16以外の部分に粘着剤を塗布し、粘着剤層32を形成する。そして、必要に応じて、周縁部をトリミングして体裁を整え、ストレッチャブルデバイス1を得る。
なお、剥離シート40を第1レジスト層10から剥離するタイミングは、工程(f)には限定されず、工程(b)で第1レジスト層10を形成した後であれば適宜設定できる。
【0060】
以上説明したように、本発明では、第1レジスト層と第2レジスト層の間に第1導電パターンが設けられ、さらに第1レジスト層側に生体電極、第2レジスト層側に第2導電パターン層が設けられる。そして、生体電極と第1導電パターン層とが第1レジスト層に形成された第1ビアホールを介して電気的に接続され、第1導電パターン層と第2導電パターン層とが第2レジスト層に形成された第2ビアホールを介して電気的に接続される。このように、本発明のストレッチャブルデバイスは、多層構造間に通電機能を持たせたものである。
【0061】
本発明では、第1レジスト層と第2レジスト層の間の第1導電パターン層のパターンは、生体電極やグランドパターン層がないため特に制限なく設計できる。そのため、第1導電パターン層のパターンを調節して導電ラインを自在に引き回し、第2ビアホールを第1ビアホールとは異なる任意の位置にすることで、接続端子の位置を自由に変更できる。また、従来のストレッチャブルデバイスでは、ベースフィルムに形成したビアホール上に電子部品を電気的に接続する態様とすると、電子部品を接着している導電性接着剤を介して生体電極とベースフィルム上のグランドパターン層との間で短絡が生じるおそれがある。これに対し、本発明では、第2ビアホールと第1ビアホールを異なる位置に配置できるため、例えば
図12に示すように第2レジスト層14上の第1ビアホールが位置する部分に電子部品50を設ける態様でも、電子部品50を接着している導電性接着剤を介した生体電極16と第2グランドパターン層22との間の短絡が抑制される。このように、本発明は設計の自由度が高い。
【0062】
また、第1ビアホールと第2ビアホールは、印刷によって第1レジスト層及び第2レジスト層の形成と同時に形成できるうえ、針等を刺して形成する場合のようなホールの周囲の盛り上がりも生じないため、ビアホールを介した接続信頼性にも優れる。また、ベースフィルムを用いずに、印刷によって薄型の第1レジスト層及び第2レジスト層を形成できるため、伸縮性にも優れる。
【0063】
また、本発明では、第2ビアホールの直径を大きくしても第2ビアホールを介した接続信頼性を確保できるため、第2ビアホール上に導電性接着剤を用いて電子部品を安定して電気的に接続することもできる。
また、本発明のストレッチャブルデバイスは、各層を印刷によって簡便に形成できるため、フォトリソグラフ法を採用する場合に比べて簡便に製造できる。
【0064】
なお、本発明は、前記したストレッチャブルデバイス1及びその製造方法には限定されない。例えば、第1レジスト層の生体電極側に粘着剤層が設けられていないストレッチャブルデバイスであってもよい。その他、本発明は様々な形態で実施でき、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
1…ストレッチャブルデバイス、2…本体部、3…接続端子、10…第1レジスト層、12…第1導電パターン層、14…第2レジスト層、16…生体電極、18…第2導電パターン層、20…第1グランドパターン層、22…第2グランドパターン層、24…第1ビアホール、26…導通部、28…第2ビアホール、30…導通部、32…粘着剤層、34…導電性接着剤、36…電子部品、40…剥離シート。